JP7428089B2 - 印刷装置、その制御方法及びプログラム - Google Patents

Description

本発明は、印刷装置、その制御方法及びプログラムに関する。

従来の印刷装置として、特許文献１の印刷装置が知られている。この印刷装置では、印刷ジョブでのトータルの印刷ヘッドの移動距離が最小になるように、計画的に印刷方法を決定している。

特開２００５－２１２２３２号公報

上記特許文献１の印刷装置では、印刷ジョブの印刷開始に先立って、印刷ジョブの全てを受信した上で、これに基づいて印刷方法を決定している。このため、複数の部数を印刷する場合、１部目の印刷に時間を要してしまう。

本発明はこのような事態に鑑み、迅速に印刷を行うことができる印刷装置、その制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。

本発明のある態様に係る印刷装置は、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行し、前記第１決定処理では、２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する。

本発明のある態様に係る印刷装置の制御方法は、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、制御装置と、を備えた印刷装置の制御方法であって、前記制御装置は、同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行し、前記第１決定処理では、２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する。

本発明のある態様に係るプログラムは、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、制御装置と、を備えた印刷装置に、同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行させ、前記第１決定処理では、２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定させる。

本発明は、以上に説明した構成を有し、迅速に印刷を行うことができる印刷装置、その制御方法及びプログラムを提供することができるという効果を奏する。

本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。

本発明の実施の形態に係る印刷装置を上方から視た概略図である。 図１の印刷装置の構成を示す機能ブロック図である。 図１のキャリッジの移動速度と位置との関係を示すグラフである。 図４（ａ）は、次回のパスの吐出領域の左端が今回のパスの吐出領域の左端よりもこの間のキャリッジの左移動端位置よりも遠い場合の図１のキャリッジの移動速度と位置との関係を示すグラフである。図４（ｂ）は、次回のパスの吐出領域の左端が今回のパスの吐出領域の左端よりもこの間のキャリッジの左移動端位置よりも近い場合の図１のキャリッジの移動速度と位置との関係を示すグラフである。 図１の印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。 変形例１に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。 変形例２に係る印刷装置の制御方法の一例を示すフローチャートである。 変形例４に係る印刷装置の制御方法における１部目の印刷処理の一例を示すフローチャートである。

以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。

［実施の形態］
＜印刷装置の構成＞
本発明の実施の形態に係る印刷装置１０は、図１に示すように、インク等の液体を印刷媒体Ａに吐出して印刷する装置であって、例えば、インクジェットプリンタである。印刷装置１０は、シリアルヘッド方式が採用され、筐体１１、ヘッド３０、走査装置１３、貯留タンク１４、プラテン１５、搬送装置１６及び制御装置２０を備えている。

なお、プラテン１５よりもヘッド３０側を上と称し、その反対側を下と称する。また、搬送装置１６により印刷媒体Ａを搬送する方向（搬送方向）を前と称し、その反対側を後と称する。走査装置１３によりヘッド３０を往復移動する方向（走査方向）の往路方向及び復路方向のうち、一方側を右方向と称し、他方側を左方向と称する。この走査方向は、搬送方向に交差（例えば、直交）する。但し、印刷装置１０の配置方向はこれに限定されない。また、制御装置２０の詳細については後述する。

ヘッド３０は、ノズル３１、駆動素子３２（図２）及び流路形成体を有している。流路形成体は、その内部に液体流路が形成され、その下面（吐出面３３）にノズル３１が開口している。複数のノズル３１は、前後方向に並んで、複数（例えば、４列）のノズル列を構成している。駆動素子３２は、圧電素子等により構成され、液体流路の容積を変更するように駆動する。これにより、ノズル３１の開口のメニスカスが振動し、液体の粒（液滴）が吐出され、印刷媒体Ａに画像が印刷される。

走査装置１３は、例えば、キャリッジ１２ａ、２本のガイドレール１３ａ、走査モータ１３ｂ（図２）、無端ベルト１３ｃを有している。キャリッジ１２ａは、ヘッド３０を支持しており、ヘッド３０を右方向及び左方向に往復移動する。ガイドレール１３ａは、左右方向に延び、キャリッジ１２ａを支持している。無端ベルト１３ｃは、ガイドレール１３ａに沿って左右方向に延び、キャリッジ１２ａに固定されており、走査モータ１３ｂにプーリを介して連結されている。走査モータ１３ｂの駆動に応じて無端ベルト１３ｃが走行することにより、キャリッジ１２ａ及びこれに支持されているヘッド３０はガイドレール１３ａに沿って左右方向に往復移動する。

貯留タンク１４は、例えば、筐体１１に脱着可能なカートリッジであり、液体の種類ごとに設けられている。例えば、４つの貯留タンク１４があり、ブラック、イエロ、シアン、マゼンタのインクをそれぞれ貯留している。各貯留タンク１４は、ヘッド３０の液体流路にチューブによって接続され、対応するノズル列のノズル３１に液体を供給する。

プラテン１５は、平坦な上面を有し、その上面に印刷媒体Ａが配置される。プラテン１５は、印刷媒体Ａと、これに対向して設けられるヘッド３０の吐出面３３との間の距離を決める。

搬送装置１６は、例えば、２本の搬送ローラ１６ａ、及び、搬送モータ１６ｂ（図２）を有している。２本の搬送ローラ１６ａは、前後方向においてプラテン１５を挟み、回転軸が左右方向に延びるように互いに平行に配置されている。搬送ローラ１６ａは、搬送モータ１６ｂに連結されており、搬送モータ１６ｂの駆動によって回転し、印刷媒体Ａをプラテン１５上において前方に搬送する。

＜制御装置の構成＞
制御装置２０は、図２に示すように、コンピュータ及びネットワーク等の外部装置ＢにＩ／Ｆを介して接続され、外部装置Ｂから印刷ジョブ等の各種データを受信する。印刷ジョブは、印刷媒体Ａに画像を印刷するためのデータであって、例えば、画像データ及び書式データを含んでいる。

画像データは、例えば、印刷対象の画像を複数の画素に分割して表したラスタデータであって、画素の位置情報及び色情報を含む。色情報としては、例えば、Ｒ（赤）Ｇ（緑）Ｂ（青）の階調値で表されたＲＧＢ値、及び、Ｃ（シアン）Ｍ（マゼンダ）Ｙ（イエロ）Ｋ（ブラック）の階級値で表されたＣＭＹＫ値が例示される。また、書式データは、印刷する方式を示すデータであって、例えば、同一画像を印刷する部数（印刷部数）及び印刷モード等の情報を含んでおり、例えば、ユーザが入力装置により入力した情報であってもよい。

また、制御装置２０は、位置検出センサ２４に接続されている。この位置検出センサ２４は、左右方向におけるキャリッジ１２ａの位置を検出するためのセンサであって、例えば、エンコーダである。位置検出センサ２４は、キャリッジ１２ａの検出位置を制御装置２０に出力する。

制御装置２０は、演算処理部２１、記憶部２２及び波形生成部２３を有している。記憶部２２は、演算処理部２１がアクセス可能なメモリであって、ＲＡＭ及びＲＯＭ等により構成されている。ＲＡＭは、各種データを一時的に記憶する。この各種データとしては、印刷ジョブ、演算処理部２１により変換されたデータ、及び、位置検出センサ２４により検出された位置情報が例示される。ＲＯＭは、各種データ処理を行うためのプログラムを記憶している。なお、プログラムは、外部装置Ｂから取得されたものであってもよく、また、他の記憶媒体に記憶されていてもよい。

演算処理部２１は、ＣＰＵ等のプロセッサ、及び、ＡＳＩＣ等の集積回路等により構成されている。演算処理部２１は、ＲＯＭに記憶されたプログラムを実行することにより、駆動素子３２、走査モータ１３ｂ及び搬送モータ１６ｂを制御して、各種処理を行う。例えば、制御装置２０は、印刷処理及び第１決定処理を実行する。これらの処理については後述する。

波形生成部２３は、駆動素子３２に出力される駆動信号の波形を規定する波形信号を生成する。波形生成部２３は、専用の回路であってもよく、演算処理部２１及び記憶部２２により構成されていてもよい。波形信号は、例えば、パルス信号であって、ノズル３１から吐出される液滴の量が異なる複数種類の波形信号を含んでいる。

演算処理部２１は、印刷ジョブに基づいて、複数種類の波形信号から１種類の波形信号を、ノズル３１毎及び駆動周期毎に選択し、波形選択データを生成する。この際、演算処理部２１は、印刷ジョブに基づいた１滴ごとの液滴量に応じて、波形選択データを生成する。

制御装置２０はヘッド駆動回路２５に接続され、ヘッド駆動回路２５は駆動素子３２に接続されている。制御装置２０は波形信号及び波形選択データをヘッド駆動回路２５に出力し、ヘッド駆動回路２５は波形信号及び選択データから駆動素子３２の駆動信号に変換し、駆動信号を駆動素子３２に出力する。これにより、駆動素子３２が駆動信号に応じて駆動して、液体流路の容積が変更し、ノズル３１の液体に圧力が付与され、印刷ジョブに応じた量の液滴がノズル３１から吐出される。

また、制御装置２０は、走査駆動回路２６を介して走査モータ１３ｂに接続され、搬送駆動回路２７を介して搬送モータ１６ｂに接続されている。制御装置２０は、印刷ジョブに基づいて走査駆動回路２６によって走査モータ１３ｂの駆動を制御する。制御装置２０は、印刷ジョブに基づいて搬送駆動回路２７によって搬送モータ１６ｂの駆動を制御する。これにより、走査モータ１３ｂ及び搬送モータ１６ｂの駆動及び停止タイミング、回転速度、並びに、回転量等が制御され、キャリッジ１２ａの移動及び印刷媒体Ａの搬送が制御される。

＜印刷処理＞
制御装置２０は、同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、キャリッジ１２ａを往路方向及び復路方向に移動させながらヘッド３０から液体を吐出させて印刷する印刷処理を実行する。

印刷処理では、制御装置２０は、外部装置Ｂから取得した印刷ジョブを記憶部２２に記憶し、印刷ジョブをパス毎の印刷ジョブに分割し記憶部２２に記憶する。この印刷ジョブの画像データがＲＧＢ値である場合、制御装置２０は、所定の対応関係に基づいてＲＧＢ値をＣＭＹ値に変換する。また、制御装置２０は、誤差拡散法に従ったハーフトーン処理を画像データに行ってもよい。なお、外部装置Ｂは印刷ジョブをパス毎に分割して、分割した印刷ジョブを印刷装置１０に出力してもよい。この場合、制御装置２０は、取得した印刷ジョブを記憶部２２に記憶する。

制御装置２０は、分割された複数の印刷ジョブを順次、ヘッド駆動回路２５、走査駆動回路２６及び搬送駆動回路２７に出力することにより、印刷ジョブに基づいてパスと搬送動作とが交互に実行される。パスは、吐出パス及び非吐出パスを含む。吐出パスは走査動作及び吐出動作を含み、非吐出パスは吐出動作を含まず走査動作を含む。吐出動作では、ノズル３１から液体が吐出される。搬送動作では、印刷媒体Ａが前方に所定又は印刷ジョブに応じた距離に搬送される。

走査動作では、キャリッジ１２ａが右方向又は左方向に移動される。キャリッジ１２ａは、パス毎に右方向と左方向と移動方向を交互に代える。これにより、キャリッジ１２ａは、右方向に移動したパスの次のパスでは、その反対側の左方向に移動し、さらに次のパスではその反対側の右方向に移動する。

双方向印刷では、キャリッジ１２ａが右方向及び左方向のいずれか一方向に移動する吐出パスによりパス画像が印刷され、これに続いて搬送動作が行われた後、キャリッジ１２ａが他方向に移動する吐出パスによりパス画像が印刷される。このように、吐出パスと搬送動作とが交互に繰り返されて、各吐出パスによるパス画像が印刷媒体Ａの搬送方向に並んで、印刷ジョブに相当する画像が印刷される。このため、右方向への移動パス及び左方向への移動パスのいずれのパスにおいてもパス画像が形成される。

片方向印刷では、右方向及び左方向のいずれか一方向にキャリッジ１２ａを移動しながら液体を吐出するが、このパスに搬送動作を介して続く次のパスでは他方向へキャリッジ１２ａを移動する際には液体を吐出しない。このため、片方向印刷では、吐出パスと非吐出パスとは搬送動作を挟んで交互に実行され、このうち吐出パスにてパス画像が形成される。

このような印刷処理において、制御装置２０の演算処理部２１は、１部目の印刷処理の印刷開始時に、キャリッジ１２ａを所定の方向に移動させ、その移動方向を所定の方向から反対の方向に変え、これを交互に変更させながら、印刷処理を進めていく。例えば、プラテン１５よりも右側においてヘッド３０の吐出面３３をキャップで覆っている場合、ヘッド３０からキャップを外してから、第１部目の印刷処理を開始する。この場合には、所定の方向は、キャップからプラテン１５に向かう左方向であってもよい。また、キャップをヘッド３０から外した後に、プラテン１５よりも左側の受け部においてヘッド３０から液体を吐出してフラッシングを実行してから、第１部目の印刷処理を開始する。この場合には、所定の方向は、受け部からプラテン１５に向かう右方向であってもよい。

制御装置２０は、印刷ジョブに基づいてパスを実行する度に、キャリッジ１２ａが右方向又は左方向に移動する。演算処理部２１は、パス毎に、キャリッジ１２ａの移動範囲の左移動端位置及び右移動端位置を位置検出センサ２４から取得し、各移動端位置とパスとを対応付けて記憶部２２に記憶する。これらの位置は座標位置、又は、エンコーダの目盛りにより記憶部２２に記憶されていてもよい。これをパス毎に行うことにより、１部目の印刷処理の複数のパスについてキャリッジ１２ａの各移動端位置が蓄積される。

右端位置は、パスにおいて、キャリッジ１２ａが移動する範囲における右端の位置であって、右方向に移動したキャリッジ１２ａが移動停止する位置、又は、左方向に移動するキャリッジ１２ａが移動開始する位置である。左端位置は、パスにおいて、キャリッジ１２ａが移動する範囲における左端の位置であって、左方向に移動したキャリッジ１２ａが移動停止する位置、又は、右方向に移動するキャリッジ１２ａが移動開始する位置である。

制御装置２０は、印刷ジョブで指定された印刷部数の印刷処理が終了するまで、当該印刷ジョブを記憶部２２に記憶したままにしておく。そして、制御装置２０は、各部を印刷する際、記憶部２２に記憶された印刷ジョブを複製しながら印刷処理を行う。そして、指定された部数を印刷すると、制御装置２０は、当該印刷ジョブを記憶部２２から削除する。

なお、印刷ジョブは、書式データを含んでいなくてもよい。この場合、制御装置２０は、同一画像の印刷部数に等しい数の印刷ジョブを外部装置Ｂから取得する。制御装置２０は、取得した印刷ジョブを記憶部２２に記憶して、印刷ジョブをパス毎に分割して記憶部２２に記憶する。そして、制御装置２０は、印刷ジョブに相当する画像の印刷が終了する度に、当該印刷ジョブを記憶部２２から消去する。

＜第１決定処理＞
制御装置２０は、印刷処理による１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動結果に基づき、２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向を決定する第１決定処理を実行する。この第１決定処理では、制御装置２０は、２部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離が１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離以下になるように、２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向を決定する。

なお、以下では、双方向印刷の場合の第１決定処理について説明する。しかしながら、片方向印刷についても、双方向印刷と同様に第１決定処理が行われる。この場合、吐出パス及び非吐出パスのいずれのパスにおけるキャリッジ１２ａの移動距離が各部の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離に含まれる。

具体的には、１部目の印刷処理が終了すると、制御装置２０の演算処理部２１は、１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの各移動端位置をパス毎に記憶部２２から取得する。そして、制御装置２０は、右移動端位置と左移動端位置との間の距離をパス毎に算出し、全てのパスの距離を合計して、１部目の印刷処理におけるキャリッジ１２ａの移動距離を算出する。なお、各パスのキャリッジ１２ａの移動距離は１つ又は複数のパスが終了する度に算出されてもよい。

ここで、制御装置２０は、キャリッジ１２ａの移動方向に応じた加速距離Ｄ及び減速距離Ｅの相違に基づいて、キャリッジ１２ａの各移動端位置を調整してもよい。例えば、図３に示すように、キャリッジ１２ａが右方向に移動するパス（右方向パス）において、左移動端位置Ｌｒから最初の吐出位置（吐出領域Ｃの左吐出端位置Ｃｌ）に到達する前に、所定の速度まで加速する。そして、左吐出端位置Ｃｌから、パスにおいて最後の吐出位置（吐出領域Ｃの右吐出端位置Ｃｒ）に到達するまで所定の速度で定速移動し、右吐出端位置Ｃｒから減速して右移動端位置Ｒｒで停止する。

この加速及び減速はキャリッジ１２ａの移動方向により互いに反対になる。このため、キャリッジ１２ａが左右方向に移動するパス（左方向パス）では、右移動端位置Ｒｌから吐出領域Ｃの右吐出端位置Ｃｒに到達する前に加速する。そして、キャリッジ１２ａがこの右吐出端位置Ｃｒから左吐出端位置Ｃｌまでの吐出領域Ｃにおいて定速移動し、左吐出端位置Ｃｌから減速して左移動端位置Ｌｌで停止する。

この加速距離Ｄと減速距離Ｅとが互いに異なる場合、各移動端位置がキャリッジ１２ａの移動方向に応じて異なる。例えば、減速距離Ｅが加速距離Ｄよりも短い場合、左方向パスの右移動端位置Ｒｌは右方向パスの右移動端位置Ｒｒよりも右側に位置し、左方向パスの左移動端位置Ｌｌは右方向パスの左移動端位置Ｌｒよりも右側に位置する。

よって、制御装置２０は、右方向パスの左移動端位置Ｌｒから所定の加速距離Ｄを引いた左吐出端位置Ｃｌを特定し、この左吐出端位置Ｃｌに所定の減速距離Ｅを足すことにより、左方向パスの左移動端位置Ｌｌを演算することができる。また、右方向パスの右移動端位置Ｒｒから所定の減速距離Ｅを引いた右吐出端位置Ｃｒを特定し、この右吐出端位置Ｃｒに所定の加速距離Ｄを足すことにより、左方向パスの右移動端位置Ｒｌを演算することができる。なお、左方向パスから右方向パスの各移動端位置を演算する場合も、上記と同様である。そして、制御装置２０は、求めた各移動端位置に基づいてキャリッジ１２ａの移動距離を算出する。

また、制御装置２０は、今回のパスにおける吐出領域Ｃの各吐出端位置と、次のパスにおける吐出領域Ｃの各吐出端位置との位置関係に基づいて、キャリッジ１２ａの各移動端位置を調整してもよい。例えば、図４（ａ）及び図４（ｂ）に示すように、今回のパスでは左方向パスにて印刷し、次回のパスでは右方向パスにて印刷する。制御装置２０は、今回吐出領域Ｃ１の終点（左吐出端位置Ｃｌ１）から左方向に減速距離Ｅを足した左移動端位置Ｌ１、及び、次回吐出領域Ｃ２の始点（左吐出端位置Ｃｌ２）から左方向に加速距離Ｄを足した左移動端位置Ｌ２を算出する。

図４（ａ）に示す場合、次回のパスの左移動端位置Ｌ２が今回のパスの左移動端位置Ｌ１よりも、次回のパスにおける移動方向（右方向）にある。この場合、制御装置２０は、次回のパスにおいて左移動端位置Ｌ１から左移動端位置Ｌ２へ移動方向の反対側（左方向）にキャリッジ１２ａを戻す必要がない。このため、制御装置２０は、今回のパスにおける左移動端位置Ｌ１を、今回のパスの左移動端位置Ｌとして記憶部２２に記憶する。これにより、今回のパスにおいてキャリッジ１２ａを左移動端位置Ｌ（Ｌ１）まで左方向に移動させた後、次回のパスにおいてキャリッジ１２ａを左移動端位置Ｌ（Ｌ１）から右方向に移動させる。

一方、図４（ｂ）に示す場合、次回のパスの左移動端位置Ｌ２が今回のパスの左移動端位置Ｌ１よりも、次回のパスにおける移動方向（右方向）の反対方向（左方向）にある。この場合、次回のパスにおいて次回吐出領域Ｃ２のために左移動端位置Ｌ１から左移動端位置Ｌ２へ移動方向の反対側（左方向）にキャリッジ１２ａを移動させないように、制御装置２０は、次回のパスにおける左移動端位置Ｌ２を今回のパスの左移動端位置Ｌとして記憶部２２に記憶する。これにより、今回のパスにおいてキャリッジ１２ａを左移動端位置Ｌ（Ｌ２）まで左方向に移動させた後、次回のパスにおいてキャリッジ１２ａを左移動端位置Ｌ（Ｌ２）から右方向に移動させる。

このように、制御装置２０は、キャリッジ１２ａの各移動端位置を今回吐出領域Ｃ１及び次回吐出領域Ｃ２の位置関係に基づいて調整して、キャリッジ１２ａの移動距離を算出する。なお、今回吐出領域Ｃ１の右吐出端位置Ｃｒと次回吐出領域Ｃ２の右吐出端位置Ｃｒとの位置関係に基づいたキャリッジ１２ａの右移動端位置の調整は、上記今回吐出領域Ｃ１の左吐出端位置Ｃｌ１と次回吐出領域Ｃ２の左吐出端位置Ｃｌ１との位置関係に基づいたキャリッジ１２ａの左移動端位置Ｌの調整と同様である。また、加速距離Ｄと減速距離Ｅとが互いに同じ場合、今回吐出領域Ｃ１の吐出端位置と次回吐出領域Ｃ２の吐出端位置との位置関係に基づいてキャリッジ１２ａの動端位置を調整してもよい。

このようにして、制御装置２０は、２部目の印刷開始時のキャリッジ１２ａの移動方向を右方向及び左方向とした場合のそれぞれについて、各パスのキャリッジ１２ａの移動距離を算出し、２部目の印刷における全パスの移動距離を合計して、２部目の印刷での移動距離を算出する。そして、制御装置２０は、右方向の移動距離と左方向の移動距離を比較して、移動距離が短い方の移動方向を２部目の最初の移動方向として決定して記憶部２２に記憶する。

２部目の印刷開始時の移動方向が１部目の印刷開始時の移動方向と同じ場合、２部目の印刷での移動距離は１部目の印刷での移動距離と同じになる。一方、２部目の印刷開始時の移動方向が１部目の印刷開始時の移動方向と異なる場合、２部目の印刷での移動距離は１部目の印刷での移動距離よりも短くなる。よって、第１決定処理では、２部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離が１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離以下になる。

なお、制御装置２０は、キャリッジ１２ａの所定の定速時の速度、加速度及び減速度に基づいて、キャリッジ１２ａの定速時の距離、加速距離Ｄ及び減速距離Ｅから定速時の時間、加速時間及び減速時間をそれぞれ求めることができる。このため、上記の方法で移動距離を求めてこれを移動時間に変換することにより、制御装置２０は、第１決定処理では、２部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動時間が１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動時間以下になるように、２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向を決定することができる。

また、吐出領域で移動するキャリッジ１２ａの速度は、印刷モードによって異なる。キャリッジ１２ａの速度は、画質を印刷速度より優先する高画質モードよりも、印刷速度を画質より優先する高速モードで速い。キャリッジ１２ａの移動速度が速くなるほど、加速距離Ｄ及び減速距離Ｅが長くなる。よって、加速距離Ｄ及び減速距離Ｅが印刷モードにより変化し、この加速距離Ｄ及び減速距離Ｅと印刷モードとの対応関係は予め記憶部２２に記憶されている。制御装置２０は、この所定の対応関係に基づいて、印刷モードに応じた加速距離Ｄ及び減速距離Ｅを取得して、これにより１部目のキャリッジ１２ａの各移動端位置を調整してもよい。

＜印刷装置の制御方法＞
印刷装置１０の制御方法は、例えば、図５のフローチャートに沿って制御装置２０により実行される。まず、制御装置２０は、印刷ジョブを取得すると（ステップＳ１）、１部目の印刷処理を実行する（ステップＳ２）。この際、制御装置２０は、印刷ジョブをパス毎に分割し、この印刷ジョブを各駆動回路に出力していく。これにより、印刷ジョブに基づいたパス画像がパス毎に印刷媒体Ａに印刷されると、印刷媒体Ａが前方に搬送される。これが繰り返されて、パス画像が前後方向に並んで、印刷ジョブに基づいた画像が形成される。

この際、制御装置２０は、各パスにおけるキャリッジ１２ａの右移動端位置及び左移動端位置を取得して記憶部２２に記憶する。そして、制御装置２０は、加減速移動距離、及び、今回と次回との吐出領域の位置関係に基づいてキャリッジ１２ａの各移動端位置を調整する。そして、制御装置２０は、２部目の印刷開始時が右方向及び左方向のそれぞれの場合について、各移動端位置に基づいて各パスにおけるキャリッジ１２ａの移動距離を算出し、これを合計した移動距離を算出する。

そして、制御装置２０は、１部目の印刷での移動距離に基づいて第１決定処理を実行する（ステップＳ３）。この第１決定処理では、制御装置２０は、２部目の印刷開始時が右方向の場合の移動距離と左方向の場合の移動距離とを比較し、移動距離が短い方の印刷開始時の方向を求める。これにより、制御装置２０は、２部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離が１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離以下になるように、２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向を決定し記憶部２２に記憶する。

制御装置２０は、第１決定処理により決定された移動方向にキャリッジ１２ａを移動しながら、２部目以降の印刷処理を実行し、１部目と同じ画像を印刷する（ステップＳ４）。そして、印刷ジョブに基づいた全ての部数の印刷処理が終了するまで（ステップＳ５：ＮＯ）、制御装置２０は印刷処理を実行する（ステップＳ４）。全ての部数の印刷処理が終了すると（ステップＳ５：ＹＥＳ）、制御装置２０は制御を終了する。

このように、第１決定処理では、２部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離が１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離以下になるように、２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向を決定する。これにより、１部目の印刷を行った上で、そのヘッド３０の移動結果に基づいて２部目の印刷方法を決定する。このため、１部目の印刷を速やかに開始することができ、また、決定された印刷方法によって２部目以降の印刷時間の短縮化を図ることができる。

また、制御装置２０は、印刷処理では、１部目の印刷開始時に、キャリッジ１２ａを往路方向及び復路方向のうちのいずれか所定の方向に移動させる。制御装置２０は、第１決定処理では、２部目以降の印刷開始時にキャリッジ１２ａを往路方向及び復路方向のうちのいずれに移動させるか、を決定する。これにより、１部目の印刷では、ヘッド３０の移動方向を決定する時間が省け、１部目の印刷を速やかに開始することができる。

＜変形例１＞
変形例に１に係る印刷装置１０では、上記実施の形態において、制御装置２０は、印刷ジョブに基づき同一画像を印刷する部数が３部以上であるか否かを判定する第１判定処理を実行する。印刷処理では、第１判定処理にて部数が３部以上であると判定した場合、第１決定処理により決定された移動方向に基づいて２部目以降の印刷を実行する。第１判定処理にて部数が３部未満であると判定した場合、第１決定処理を実行しない。

具体的には、印刷装置１０の制御方法は、図６に示すフローチャートに従って制御装置２０により実行される。この図６に示すフローチャートでは、図５のフローチャートのステップＳ１とステップＳ２との間にステップＳ６の処理が実行され、ステップＳ６とステップＳ５とのステップＳ７の処理が実行される。

すなわち、制御装置２０は、印刷ジョブを取得すると（ステップＳ１）、印刷ジョブの書式データを参照して、書式データにおける同一画像を印刷する部数（印刷部数）が３部以上か否かを判定する（ステップＳ６）。ここで、印刷部数が３部未満であれば（ステップＳ６：ＮＯ）、制御装置２０は、１部又は２部の印刷処理を実行する。これにより、印刷ジョブに基づく画像が１部又は２部印刷される。この場合、制御装置２０は、１部目の印刷処理においてキャリッジ１２ａの移動端位置を位置検出センサ２４から取得し記憶部２２に記憶しなくてもよい。

印刷部数が２部である場合、制御装置２０は、１部目の印刷開始時のキャリッジ１２ａの移動方向を所定の方向とし、その後、移動方向をパス毎に右方向及び左方向の交互に変える。そして、制御装置２０は、２部目の印刷開始時の移動方向を、１部目の印刷処理における最後のパスの移動方向の反対方向とし、キャリッジ１２ａを移動させる。それから、制御装置２０は、キャリッジ１２ａの移動方向をパス毎に交互に変えながら、印刷処理を進めていく。このように、印刷部数が少ない場合には第１決定処理を省くことにより、印刷時間の短縮化を図ることができる。

一方、ステップＳ６において、印刷部数が３部以上である場合（ステップＳ６：ＹＥＳ）、制御装置２０は、１部目の印刷処理が実行する（ステップＳ２）。そして、制御装置２０は、１部目の印刷での移動距離に基づいて第１決定処理を実行して、２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向を決定し記憶部２２に記憶する（ステップＳ３）。制御装置２０は、印刷ジョブに基づいた全ての部数の印刷処理が終了するまで（ステップＳ５：ＮＯ）、決定された移動方向にキャリッジ１２ａを移動しながら第２部目以降の印刷処理を実行する（ステップＳ４）。そして、制御装置２０は、全ての部数の印刷処理が終了すると（ステップＳ５：ＹＥＳ）、制御装置２０は制御を終了する。

＜変形例２＞
変形例２に係る印刷装置１０では、変形例１において、制御装置２０は、第１判定処理により印刷ジョブに基づき同一画像を印刷する部数が３部以上であると判定した場合に、１部目の印刷においてキャリッジ１２ａが往路方向に移動するパスの数と復路方向に移動するパスの数との合計数が、奇数か否かを判定する第２判定処理を実行する。制御装置２０は、第２判定処理によりパスの数が奇数であると判定した場合に、２部目以降で連続する２部のうちの第１部目の印刷開始時におけるキャリッジ１２ａの移動方向を、往路方向及び復路方向のうち、２部を印刷するのに要するキャリッジ１２ａの移動時間又は移動距離が短くなる方の方向に決定する第２決定処理と、を実行する。第２判定処理によりパスの数が奇数ではないと判定した場合には、第１決定処理を実行する。

なお、片方向印刷では、吐出パス及び非吐出パスが交互に実行され、吐出パスにてパス画像が形成されるため、各部の印刷でのパスの合計数は偶数になる。よって、第２決定処理は双方向印刷の場合に実行される。但し、片方向印刷の場合に第２決定処理が実行されてもよい。

具体的には、印刷装置１０の制御方法は、図７に示すフローチャートに従って制御装置２０により実行される。この図７に示すフローチャートでは、図６のフローチャートのステップＳ２とステップＳ４との間にステップＳ８及びＳ９の処理が実行される。

すなわち、制御装置２０は、印刷ジョブを取得し（ステップＳ１）、この書式データに基づいて、同じ画像を印刷する部数が３部以上であれば（ステップＳ６：ＹＥＳ）、制御装置２０は、１部目の印刷処理が実行する（ステップＳ２）。ここで、制御装置２０は、印刷処理の進行において右方向にキャリッジ１２ａが移動したパスの数、及び、左方向にキャリッジ１２ａが移動したパスの数をカウントしていく。そして、制御装置２０は、右方向のパスの数と左方向のパスの数とを合計して、１部目の印刷処理におけるパスの合計数を算出する。

制御装置２０は、パスの合計数が奇数であるか否かを判定する（ステップＳ８）。パスの合計数が偶数である場合には（ステップＳ８：ＮＯ）、連続する２部のうちの第１部目（例えば、２部目）の印刷開始時のキャリッジ１２ａの移動方向と、第１部目に続く第２部目（例えば、３部目）の印刷開始時のキャリッジ１２ａの移動方向とは互いに同じになる。よって、制御装置２０は、２部目以降において１部ずつキャリッジ１２ａの移動方向を判定すればよいため、第１決定処理を実行する（ステップＳ３）。これにより、２部目の印刷処理におけるキャリッジ１２ａの移動方向を決定すれば、３部目以降についてもこの移動方向により印刷処理が進行される。

一方、ステップＳ８において、１部目のパスの合計数が奇数である場合には（ステップＳ８：ＹＥＳ）、第１部目（例えば、２部目）の印刷開始時のキャリッジ１２ａの移動方向と、第１部目に後続する第２部目（例えば、３部目）の印刷開始時のキャリッジ１２ａの移動方向とは互いに反対になる。よって、制御装置２０は、２部目以降において２部ずつキャリッジ１２ａの移動方向を判定するため、第２決定処理を実行する（ステップＳ９）。

ここで、１部目の印刷処理におけるパス毎のキャリッジ１２ａの左移動端位置及び右移動端位置が記憶部２２に記憶されている。制御装置２０は、キャリッジ１２ａの移動方向に応じて、加減速移動距離、及び、今回と次回との吐出領域の位置関係に基づいてキャリッジ１２ａの各移動端位置を調整する。そして、制御装置２０は、この各移動端位置に基づいて第１部目をキャリッジ１２ａの移動方向を所定の方向とし、第２部目の移動方向をその反対方向とし、この場合の第１部目の印刷での移動距離、及び、第２部目の印刷での移動距離を算出し、これを合計した２部ずつの合計移動距離を算出する。また、制御装置２０は、この各移動端位置に基づいて第２部目をキャリッジ１２ａの移動方向を所定の方向とし、第１部目の移動方向をその反対方向とし、この場合の第１部目の印刷での移動距離、及び、第２部目の印刷での移動距離を算出し、これを合計した２部ずつの合計移動距離を算出する。

そして、制御装置２０は、第１部目を所定の方向で移動開始した場合の合計移動距離と、第１部目を反対方向で移動開始した場合の合計移動距離とを比較する。制御装置２０は、この比較結果、合計移動距離が短い方の移動方向を２部目の印刷開始時の移動方向として決定して記憶部２２に記憶する。

制御装置２０は、決定された移動方向にキャリッジ１２ａを移動しながら２部目以降の印刷処理を実行する（ステップＳ４）。そして、制御装置２０は、全ての部数の印刷処理が終了すると（ステップＳ５：ＹＥＳ）、制御装置２０は制御を終了する。このように、１部目のパスの合計数が奇数である場合、連続する２部の第１部目の移動方向が決まれば第２部目の移動方向が決まるため、これらをまとめることにより、キャリッジ１２ａの移動方向を効率的に判定することができる。

＜変形例３＞
変形例３に係る印刷装置１０では、上記実施の形態及び変形例１～２のいずれかにおいて、制御装置２０は、印刷処理においてキャリッジ１２ａの移動速度を、ヘッド３０から液体を吐出させる範囲（吐出領域）に応じて変更する速度変更処理を実行する。制御装置２０は、速度変更処理により変更されたキャリッジ１２ａの移動速度に基づいて第１決定処理を実行する。

具体的には、制御装置２０は、１部目の印刷処理の際に、各パスにおけるキャリッジ１２ａの移動範囲の各移動端位置と共に、各パスにおける吐出領域の各吐出端位置を、位置検出センサ２４から取得し記憶部２２に記憶しておく。制御装置２０は、移動端位置及び吐出端位置に基づいて速度変更処理を実行する。

例えば、図４（ａ）に示すように、制御装置２０は、右吐出端位置Ｃｒと左吐出端位置Ｃｌ１との間の今回吐出領域Ｃ１、及び、右吐出端位置Ｃｒと左吐出端位置Ｃｌ２との間の次回吐出領域Ｃ２では、キャリッジ１２ａを定速移動させる。これにより、キャリッジ１２ａの移動速度の変化に起因する液体の着弾位置のずれが低減され、着弾位置ずれによる画質の低下を抑制することができる。

これに対し、左移動端位置Ｌから加速距離Ｄを足した加速終了位置Ｆから次回吐出領域Ｃ２の始点（左吐出端位置Ｃｌ２）までの範囲（非吐出領域Ｇ）は、ヘッド３０から液体を吐出しない。このため、制御装置２０は、非吐出領域Ｇにおけるキャリッジ１２ａの移動速度を、今回吐出領域Ｃ１及び前回吐出領域Ｃ２における移動速度よりも速くする。このように速度変更処理を実行することにより、キャリッジ１２ａの移動時間を短縮することができる。

よって、制御装置２０は、第１決定処理において、キャリッジ１２ａの移動方向に応じて、加減速移動距離、及び、今回と次回との吐出領域の位置関係に基づいてキャリッジ１２ａの各移動端位置を調整する。そして、制御装置２０は、この各移動端位置に基づいてキャリッジ１２ａの移動距離を算出し、キャリッジ１２ａの所定の移動速度に基づいて移動距離を移動時間に変換する。ここで、制御装置２０は、非吐出領域Ｇの移動速度を吐出領域の移動速度よりも速くする速度変更処理によって、キャリッジ１２ａの移動時間を調整する。

このようにして、制御装置２０は、２部目を所定の方向で移動開始した場合の移動時間、及び、２部目を反対方向で移動開始した場合の移動時間を算出する。そして、制御装置２０はこれらを比較して、移動時間が短い方の移動方向を２部目の印刷開始時の移動方向として決定して記憶部２２に記憶する。

このように、制御装置２０は、速度変更処理により変更されたキャリッジ１２ａの移動速度に基づいて第１決定処理を実行する。これにより、吐出領域における画質の低下を抑制しつつ、第１決定された印刷方向によって２部目以降の印刷時間の短縮化を図ることができる。

＜変形例４＞
変形例４に係る印刷装置１０では、上記実施の形態及び変形例１～３のいずれかにおいて、制御装置２０は、印刷ジョブにおける印刷する画像の色情報に基づいて往路方向及び復路方向のいずれか一方の方向で印刷せずに他方の方向で印刷する片側印刷を実行するか否かを判定する第３判定処理を、２部目の印刷処理で実行せずに１部目の印刷処理で実行する。また、制御装置２０は、２部目の印刷処理における片側印刷の実行回数が少なくなるように第１決定処理を実行する。

具体的には、図１に示すように、ヘッド３０には、例えば、４本のノズル列が設けられている。４本のノズル列は、シアンインクを吐出するためのシアンノズル列、マゼンダインクを吐出するためのマゼンダノズル列、イエロインクを吐出するためのイエロノズル列、及び、ブラックインクを吐出するためのブラックノズル列を有している。例えば、シアンノズル列がブラックノズル列よりも左側になるように、これらはこの順で左右方向に並んでいる。

キャリッジ１２ａが左方向に移動しながら、ブラックインク以外の色インクを吐出する場合、上下方向の印刷媒体Ａ側からシアンインク、マゼンダインク及びイエロインクの順にインクが重なる。一方、キャリッジ１２ａが右方向に移動しながら、色インクを吐出する場合には、上下方向の印刷媒体Ａ側からイエロインク、マゼンダインク及びシアンインクの順にインクが重なる。このように、キャリッジ１２ａの移動方向が反対になると、インクの重なる順が反対になる。この重なり方によって、重なって形成された色は互いに異なって見える場合があり、この場合には片側印刷を実行する。

そこで、印刷ジョブに基づいて片側印刷を実行するか否かを判定する。例えば、制御装置２０は、図５～７に示すステップＳ２の１部目の印刷処理において、図８に示すフローチャートに従ってステップＳ２ａ～２ｆの処理を実行する。なお、片側印刷は、キャリッジ１２ａの移動方向によって色の見え方が異なる部分を含むパスにおいて実行される。このため、片側印刷は、印刷ジョブの全パスで行われる双方向印刷及び片方向印刷において、全部又は一部のパスにて実行される。

すなわち、１部目の印刷処理において、制御装置２０は、パス毎に分割された印刷ジョブを取得すると（ステップＳ２ａ）、第３判定処理を実行する（ステップＳ２ｂ）。第３判定処理では、制御装置２０は、印刷ジョブの画像データに基づいて、印刷対象の画像をパス画像に分割し、パス画像を所定面積の複数のブロックに分割する。そして、制御装置２０は、ブロックに含まれる複数のＲＧＢ値を画像データから取得し、ＲＢＧ値に相当する重みを取得する。このＲＢＧ値と重みとは予め設定され、記憶部２２に記憶されている。重みは、画像を観察する観察者が知覚する色の相違であってインクの重なり順の違いに起因する色の相違の度合いである。重みが大きいほど、右方向の移動において吐出された液体が重なった色と、左方向の移動において吐出された液体が重なった色との相違の度合いが大きくなる。

制御装置２０は、ブロックに含まれる複数の重みを合計し、この合計値をブロックの面積で割り、単位面積当たりの重みを算出する。制御装置２０は、各ブロックについて単位面積当たりの重みを算出すると、所定の閾値を超えるブロックがあるか否かを判定する。閾値を超えるブロックでは、移動方向の違いに起因する色の相違の度合いが所定値よりも大きい。

このため、制御装置２０は、所定の閾値を超えるブロックを含むパス画像については、その直前のパスのキャリッジ１２ａの移動方向にかかわらず、所定の方向（例えば、往路方向）にキャリッジ１２ａを移動させる片側印刷を行うと判定する（ステップＳ２ｂ：ＹＥＳ）。そして、制御装置２０は、このパスについて印刷ジョブに基づき片側印刷すると共に（ステップＳ２ｃ）、片側印刷するパスを記憶部２２に記憶する。この片側印刷では、制御装置２０は、キャリッジ１２ａを所定の方向に移動させながらヘッド３０から液体を吐出させてパス画像を印刷する。このパス画像は、移動方向に応じた色の相違が比較的大きい色を有するが、所定の方向で印刷されるため、色の相違が目立つことが抑制される。

これに対し、制御装置２０は、パス画像が所定の閾値を超えるブロックを含まない場合には（ステップＳ２ｂ：ＮＯ）、このパス画像について通常印刷を実行する（ステップＳ２ｄ）。この通常印刷では、直前のパスのキャリッジ１２ａの移動方向の反対方向にキャリッジ１２ａを移動させながら、ヘッド３０から液体を吐出させる。これにより、キャリッジ１２ａは１つ前のパスの方向の反対方向に移動するため、印刷時間の短縮化を図ることができる。

そして、制御装置２０は、１部目の印刷処理における全てのパスが終了していなければ（ステップＳ２ｅ：ＮＯ）、印刷媒体Ａの搬送動作を行った上（ステップＳ２ｆ）、ステップＳ２ａの処理に戻り、これ以降の処理を繰り返す。一方、制御装置２０は、１部目の印刷処理における全てのパスが終了していれば（ステップＳ２ｅ：ＹＥＳ）、１部目の印刷処理を終了する。

この第３判定処理を、２部目の印刷処理で実行せずに１部目の印刷処理で実行する。これにより、第２印刷処理にて第３判定処理が省かれるため、印刷時間の短縮化を図ることができる。

そして、図５～図７に示すステップＳ３の処理にて、制御装置２０は、２部目の印刷処理における片側印刷の実行回数が少なくなるように第１決定処理を実行してもよい。この場合、制御装置２０は、右方向に印刷を開始した場合及び左方向に印刷を開始した場合のそれぞれについて、パスの順に移動方向を右方向及び左方向に交互に割り当てていく。そして、制御装置２０は、この割り当てた方向が、片側印刷のパスにおいて所定の方向になるパスが、その反対の方向になるパスよりも多くなるように、２部目の印刷処理におけるキャリッジ１２ａの移動方向を決定する。これにより、２部目の印刷における片側印刷の実行回数が少なくなり、片側印刷するためにキャリッジ１２ａを移動する距離を低減する。よって、２部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離が１部目の印刷でのキャリッジ１２ａの移動距離以下になるように２部目以降のキャリッジ１２ａの移動方向が決定されるため、印刷時間の短縮化を図ることができる。

なお、上記実施の形態及び全変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び／又は機能の詳細を実質的に変更できる。

本発明の液体吐出装置、その制御方法及びプログラムは、迅速に印刷を行うことができる印刷装置、その制御方法及びプログラム等として有用である。

１０ ：印刷装置
１２ａ ：キャリッジ
２０ ：制御装置
３０ ：ヘッド

Claims (7)

1. 液体を吐出するヘッドと、
   前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、
   制御装置と、を備え、
   前記制御装置は、
   同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、
   前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行し、
   前記第１決定処理では、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定し、
   前記印刷ジョブに基づき前記同一画像を印刷する部数が３部以上であるか否かを判定する第１判定処理を実行し、
   前記第１判定処理にて前記部数が３部以上であると判定した場合、前記印刷処理では前記第１決定処理により決定された前記移動方向に基づいて２部目以降の印刷を実行し、
   前記第１判定処理にて前記部数が３部未満であると判定した場合、前記第１決定処理を実行せずに前記印刷処理を実行する、印刷装置。
2. 前記制御装置は、
   前記印刷処理では、１部目の印刷開始時に、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向のうちのいずれか所定の方向に移動させ、
   前記第１決定処理では、２部目以降の印刷開始時に前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向のうちのいずれに移動させるか、を決定する、請求項１に記載の印刷装置。
3. 前記制御装置は、
   前記第１判定処理により前記印刷ジョブに基づき前記同一画像を印刷する部数が３部以上であると判定した場合に、１部目の印刷において前記キャリッジが前記往路方向に移動するパスの数と前記復路方向に移動するパスの数との合計数が、奇数か否かを判定する第２判定処理と、
   前記第２判定処理により前記パスの数が奇数であると判定した場合に、２部目以降で連続する２部のうちの第１部目の印刷開始時における前記キャリッジの移動方向を、前記往路方向及び前記復路方向のうち、前記２部を印刷するのに要する前記キャリッジの移動時間又は移動距離が短くなる方の方向に決定する第２決定処理と、を実行し、
   前記第２判定処理により前記パスの数が奇数ではないと判定した場合には、前記第１決定処理を実行する、請求項１に記載の印刷装置。
4. 前記制御装置は、
   前記印刷処理において前記キャリッジの移動速度を、前記ヘッドから前記液体を吐出させる範囲に応じて変更する速度変更処理を実行し、
   前記速度変更処理により変更された前記キャリッジの移動速度に基づいて前記第１決定処理を実行する、請求項１～３のいずれか一項に記載の印刷装置。
5. 液体を吐出するヘッドと、
   前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、
   制御装置と、を備え、
   前記制御装置は、
   同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、
   前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行し、
   前記第１決定処理では、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定し、
   前記印刷ジョブにおける印刷する画像の色情報に基づいて前記往路方向及び前記復路方向のいずれか一方の方向で印刷せずに他方の方向で印刷する片側印刷を実行するか否かを判定する第３判定処理を、２部目の前記印刷処理で実行せずに１部目の前記印刷処理で実行し、
   ２部目の前記印刷処理における前記片側印刷の実行回数が少なくなるように前記第１決定処理を実行する、印刷装置。
6. 液体を吐出するヘッドと、
   前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、
   制御装置と、を備えた印刷装置の制御方法であって、
   前記制御装置は、
   同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、
   前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行し、
   前記第１決定処理では、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定し、
   前記印刷ジョブに基づき前記同一画像を印刷する部数が３部以上であるか否かを判定する第１判定処理を実行し、
   前記第１判定処理にて前記部数が３部以上であると判定した場合、前記印刷処理では前記第１決定処理により決定された前記移動方向に基づいて２部目以降の印刷を実行し、
   前記第１判定処理にて前記部数が３部未満であると判定した場合、前記第１決定処理を実行せずに前記印刷処理を実行する、
   印刷装置の制御方法。
7. 液体を吐出するヘッドと、
   前記ヘッドを支持し、往路方向及び復路方向に往復移動するキャリッジと、
   制御装置と、を備えた印刷装置に、
   同一画像を複数部印刷する印刷ジョブに基づき、前記キャリッジを前記往路方向及び前記復路方向に移動させながら前記ヘッドから液体を吐出させて印刷する印刷処理と、
   前記印刷処理による１部目の印刷での前記キャリッジの移動結果に基づき、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定する第１決定処理と、を実行させ、
   前記第１決定処理では、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動時間が１部目の印刷での前記キャリッジの移動時間以下になるように、又は、
   ２部目の印刷での前記キャリッジの移動距離が１部目の印刷での前記キャリッジの移動距離以下になるように、２部目以降の前記キャリッジの移動方向を決定させ、
   前記印刷ジョブに基づき前記同一画像を印刷する部数が３部以上であるか否かを判定する第１判定処理を実行させ、
   前記第１判定処理にて前記部数が３部以上であると判定した場合、前記印刷処理では前記第１決定処理により決定された前記移動方向に基づいて２部目以降の印刷を実行させ、
   前記第１判定処理にて前記部数が３部未満であると判定した場合、前記第１決定処理を実行せずに前記印刷処理を実行させる、
   プログラム。

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