以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、レーザ加工装置の基本的な構成、作用、効果及び変形例について説明する。
[レーザ加工装置の構成]
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと、光源ユニット8と、制御部9と、を備えている。以下、第1方向をX方向、第1方向に垂直な第2方向をY方向、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
移動機構6は、固定部61と、1対の移動部63,64と、1対の取付部65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。つまり、装置フレーム1aに対しては、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動することができる。移動部63,64のそれぞれは、第1及び第2水平移動機構(水平移動機構)をそれぞれ構成する。取付部65,66のそれぞれは、第1及び第2鉛直移動機構(鉛直移動機構)をそれぞれ構成する。
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。つまり、支持部7は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動することができ、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、対象物100を支持する。対象物100は、例えば、ウェハである。
図1及び図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L1(「第1レーザ光L1」とも称する)を照射する。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L2(「第2レーザ光L2」とも称する)を照射する。レーザ加工ヘッド10A,10Bは、照射部を構成する。
光源ユニット8は、1対の光源81,82を有している。光源81は、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光源81の出射部81aから出射され、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82は、レーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、光源82の出射部82aから出射され、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(支持部7、複数の移動機構5,6、1対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源ユニット8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウェハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
続いて、一方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点(集光領域の一部)が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
なお、上述した加工の一例では、光源81は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力し、光源82は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L2を出力する。そのようなレーザ光が対象物100の内部に集光されると、レーザ光の集光点に対応する部分においてレーザ光が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
パルス発振方式によって出力されたレーザ光が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光の集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光の集光点の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。設定されるラインの形状は、格子状に限定されず、環状、直線状、曲線状及びこれらの少なくとも何れかを組合せた形状であってもよい。
[レーザ加工ヘッドの構成]
図3及び図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、を備えている。
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも小さい。なお、第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離と等しくてもよいし、或いは、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも大きくてもよい。
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61とは反対側に位置しており、第2壁部22は、固定部61側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(図2参照)。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
入射部12は、第5壁部25に取り付けられている。入射部12は、筐体11内にレーザ光L1を入射させる。入射部12は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における入射部12と第2壁部22との距離は、X方向における入射部12と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における入射部12と第4壁部24との距離は、X方向における入射部12と第3壁部23との距離よりも小さい。
入射部12は、光ファイバ2の接続端部2aが接続可能となるように構成されている。光ファイバ2の接続端部2aには、ファイバの出射端から出射されたレーザ光L1をコリメートするコリメータレンズが設けられており、戻り光を抑制するアイソレータが設けられていない。当該アイソレータは、接続端部2aよりも光源81側であるファイバの途中に設けられている。これにより、接続端部2aの小型化、延いては、入射部12の小型化が図られている。なお、光ファイバ2の接続端部2aにアイソレータが設けられていてもよい。
調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13が有する各構成は、筐体11内に設けられた光学ベース29に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11内の領域を第3壁部23側の領域と第4壁部24側の領域とに仕切るように、筐体11に取り付けられている。光学ベース29は、筐体11と一体となっている。調整部13が有する各構成は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。調整部13が有する各構成の詳細については後述する。
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26aに挿通された状態で(図5参照)、第6壁部26に配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。集光部14は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における集光部14と第2壁部22との距離は、X方向における集光部14と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における集光部14と第4壁部24との距離は、X方向における集光部14と第3壁部23との距離よりも小さい。
図5に示されるように、調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、を有している。入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33は、Z方向に沿って延在する直線(第1直線)A1上に配置されている。アッテネータ31及びビームエキスパンダ32は、直線A1上において、入射部12とミラー33との間に配置されている。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。
調整部13は、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を更に有している。調整部13の反射型空間光変調器34及び結像光学系35、並びに、集光部14は、Z方向に沿って延在する直線(第2直線)A2上に配置されている。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
直線A1及び直線A2は、Y方向に垂直な平面上に位置している。直線A1は、直線A2に対して第2壁部22側(一方の壁部側)に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して直線A1上を進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、直線A2上を進行して集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
ダイクロイックミラー15は、直線A2上において、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型であってもよい。
測定部16は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。測定部16は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。測定部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測定光L10を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された測定光L10を検出する。つまり、測定部16から出力された測定光L10は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14を介して測定部16で検出される。
より具体的には、測定部16から出力された測定光L10は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられたビームスプリッタ20及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15及びビームスプリッタ20で順次に反射され、測定部16に入射し、測定部16で検出される。
観察部17は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。観察部17は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。観察部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)を観察するための観察光L20を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された観察光L20を検出する。つまり、観察部17から出力された観察光L20は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14を介して観察部17で検出される。
より具体的には、観察部17から出力された観察光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15で反射され、ビームスプリッタ20を透過して観察部17に入射し、観察部17で検出される。なお、レーザ光L1、測定光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
駆動部18は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に沿って移動させる。
回路部19は、筐体11内において、光学ベース29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、調整部13、測定部16及び観察部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測定部16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光L1の集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。なお、筐体11には、回路部19を制御部9(図1参照)等に電気的に接続するための配線が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、図2に示されるように、1対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている。
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
[作用及び効果]
レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1を出力する光源が筐体11内に設けられていないため、筐体11の小型化を図ることができる。更に、筐体11において、第3壁部23と第4壁部24との距離が第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さく、第6壁部26に配置された集光部14がY方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成(例えば、レーザ加工ヘッド10B)が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。よって、レーザ加工ヘッド10Aは、集光部14をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに好適である。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、Y方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域に他の構成(例えば、回路部19)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、集光部14が、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第2壁部22側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、測定部16及び観察部17が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に配置されており、回路部19が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側に配置されており、ダイクロイックミラー15が、筐体11内において調整部13と集光部14との間に配置されている。これにより、筐体11内の領域を有効に利用することができる。更に、レーザ加工装置1において、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいた加工が可能となる。また、レーザ加工装置1において、対象物100の表面の観察結果に基づいた加工が可能となる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。これにより、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいてレーザ光L1の集光点の位置を調整することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33が、Z方向に沿って延在する直線A1上に配置されており、調整部13の反射型空間光変調器34、結像光学系35及び集光部14、並びに、集光部14が、Z方向に沿って延在する直線A2上に配置されている。これにより、アッテネータ31、ビームエキスパンダ32、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、直線A1が、直線A2に対して第2壁部22側に位置している。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域において、集光部14を用いた他の光学系(例えば、測定部16及び観察部17)を構成する場合に、当該他の光学系の構成の自由度を向上させることができる。
以上の作用及び効果は、レーザ加工ヘッド10Bによっても同様に奏される。
また、レーザ加工装置1では、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14が、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11においてレーザ加工ヘッド10B側に片寄っており、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14が、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11においてレーザ加工ヘッド10A側に片寄っている。これにより、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを互いに近付けることができる。よって、レーザ加工装置1によれば、対象物100を効率良く加工することができる。
また、レーザ加工装置1では、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動する。これにより、対象物100をより効率良く加工することができる。
また、レーザ加工装置1では、支持部7が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動し、Z方向に平行な軸線を中心線として回転する。これにより、対象物100をより効率良く加工することができる。
[変形例]
例えば、図6に示されるように、入射部12、調整部13及び集光部14は、Z方向に沿って延在する直線A上に配置されていてもよい。これによれば、調整部13をコンパクトに構成することができる。その場合、調整部13は、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有していなくてもよい。また、調整部13は、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有していてもよい。これによれば、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。
また、筐体11は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23及び第5壁部25の少なくとも1つがレーザ加工装置1の取付部65(又は取付部66)側に配置された状態で筐体11が取付部65(又は取付部66)に取り付けられるように、構成されていればよい。また、集光部14は、少なくともY方向において第4壁部24側に片寄っていればよい。これらによれば、Y方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。また、Z方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、対象物100に集光部14を近付けることができる。
また、集光部14は、X方向において第1壁部21側に片寄っていてもよい。これによれば、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第1壁部21側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。その場合、入射部12は、X方向において第1壁部21側に片寄っていてもよい。これによれば、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第2壁部22側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
また、光源ユニット8の出射部81aからレーザ加工ヘッド10Aの入射部12へのレーザ光L1の導光、及び光源ユニット8の出射部82aからレーザ加工ヘッド10Bの入射部12へのレーザ光L2の導光の少なくとも1つは、ミラーによって実施されてもよい。図7は、レーザ光L1がミラーによって導光されるレーザ加工装置1の一部分の正面図である。図7に示される構成では、レーザ光L1を反射するミラー3が、Y方向において光源ユニット8の出射部81aと対向し且つZ方向においてレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向するように、移動機構6の移動部63に取り付けられている。
図7に示される構成では、移動機構6の移動部63をY方向に沿って移動させても、Y方向においてミラー3が光源ユニット8の出射部81aと対向する状態が維持される。また、移動機構6の取付部65をZ方向に沿って移動させても、Z方向においてミラー3がレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向する状態が維持される。したがって、レーザ加工ヘッド10Aの位置によらず、光源ユニット8の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に確実に入射させることができる。しかも、光ファイバ2による導光が困難な高出力長短パルスレーザ等の光源を利用することもできる。
また、図7に示される構成では、ミラー3は、角度調整及び位置調整の少なくとも1つが可能となるように、移動機構6の移動部63に取り付けられていてもよい。これによれば、光源ユニット8の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に、より確実に入射させることができる。
また、光源ユニット8は、1つの光源を有するものであってもよい。その場合、光源ユニット8は、1つの光源から出力されたレーザ光の一部を出射部81aから出射させ且つ当該レーザ光の残部を出射部82bから出射させるように、構成されていればよい。
また、レーザ加工装置1は、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えていてもよい。1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1でも、集光部14の光軸に垂直なY方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。よって、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1によっても、対象物100を効率良く加工することができる。また、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1において、取付部65がZ方向に沿って移動すれば、対象物100をより効率良く加工することができる。また、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1において、支持部7が、X方向に沿って移動し、Z方向に平行な軸線を中心線として回転すれば、対象物100をより効率良く加工することができる。
また、レーザ加工装置1は、3つ以上のレーザ加工ヘッドを備えていてもよい。図8は、2対のレーザ加工ヘッドを備えるレーザ加工装置1の斜視図である。図8に示されるレーザ加工装置1は、複数の移動機構200,300,400と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと、1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dと、光源ユニット(図示省略)と、を備えている。
移動機構200は、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの方向に沿って支持部7を移動させ、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
移動機構300は、固定部301と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)305,306と、を有している。固定部301は、装置フレーム(図示省略)に取り付けられている。1対の取付部305,306のそれぞれは、固定部301に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。
移動機構400は、固定部401と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)405,406と、を有している。固定部401は、装置フレーム(図示省略)に取り付けられている。1対の取付部405,406のそれぞれは、固定部401に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、X方向に沿って移動することができる。なお、固定部401のレールは、固定部301のレールと立体的に交差するように配置されている。
レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構300の取付部305に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Aから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構300の取付部306に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Bから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。
レーザ加工ヘッド10Cは、移動機構400の取付部405に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Cは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Cから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。レーザ加工ヘッド10Dは、移動機構400の取付部406に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Dは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Dから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。
図8に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成は、図1に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成と同様である。図8に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dの構成は、図1に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10BをZ方向に平行な軸線を中心線として90°回転した場合の1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成と同様である。
例えば、レーザ加工ヘッド10Cの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10D側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Cの集光部14は、Y方向において第4壁部24側(すなわち、レーザ加工ヘッド10D側)に片寄っている。
レーザ加工ヘッド10Dの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10C側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Dの集光部14は、Y方向において第4壁部24側(すなわち、レーザ加工ヘッド10C側)に片寄っている。
以上により、図8に示されるレーザ加工装置1では、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを互いに近付けることができる。また、1対のレーザ加工ヘッド10C,10DのそれぞれをX方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Cの集光部14とレーザ加工ヘッド10Dの集光部14とを互いに近付けることができる。
また、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置は、対象物100の内部に改質領域を形成するためのものに限定されず、他のレーザ加工を実施するためのものであってもよい。
次に、各実施形態を説明する。以下、上述した実施形態と重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
図9に示されるレーザ加工装置101は、対象物100に集光点(少なくとも集光領域の一部)を合わせてレーザ光を照射することにより、対象物100に改質領域を形成する。レーザ加工装置101は、対象物100にトリミング加工及び剥離加工を施し、半導体デバイスを取得(製造)する。トリミング加工は、対象物100において不要部分を除去するための加工である。剥離加工は、対象物100の一部分を剥離するための加工である。
対象物100は、例えば円板状に形成された半導体ウェハを含む。対象物としては特に限定されず、種々の材料で形成されていてもよいし、種々の形状を呈していてもよい。対象物100の表面100aには、機能素子(不図示)が形成されている。機能素子は、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。
図10(a)及び図10(b)に示されるように、対象物100には、有効領域R及び除去領域Eが設定されている。有効領域Rは、取得する半導体デバイスに対応する部分である。例えば有効領域Rは、対象物100を厚さ方向から見て中央部分を含む円板状の部分である。除去領域Eは、対象物100における有効領域Rよりも外側の領域である。除去領域Eは、対象物100において有効領域R以外の外縁部分である。例えば除去領域Eは、有効領域Rを囲う円環状の部分である。除去領域Eは、対象物100を厚さ方向から見て周縁部分(外縁のベベル部)を含む。
対象物100には、剥離予定面としての仮想面M1が設定されている。仮想面M1は、改質領域の形成を予定する面である。仮想面M1は、対象物100のレーザ光入射面である裏面100bに対向する面である。仮想面M1は、裏面100bに平行な面であり、例えば円形状を呈している。仮想面M1は、仮想的な領域であり、平面に限定されず、曲面ないし3次元状の面であってもよい。有効領域R、除去領域E及び仮想面M1の設定は、制御部9において行うことができる。有効領域R、除去領域E及び仮想面M1は、座標指定されたものであってもよい。
対象物100には、トリミング予定ラインとしてのラインM3が設定されている。ラインM3は、改質領域の形成を予定するラインである。ラインM3は、対象物100の外縁の内側において環状に延在する。ここでのラインM3は、円環状に延在する。ラインM3は、対象物100の内部における仮想面M1よりもレーザ光入射面とは反対側の部分にて、有効領域Rと除去領域Eとの境界に設定されている。ラインM3の設定は、制御部9において行うことができる。ラインM3は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。ラインM3は、座標指定されたものであってもよい。
図9に示されるように、レーザ加工装置101は、ステージ107、レーザ加工ヘッド10A、第1Z軸レール106A、Y軸レール108、撮像部110、GUI(Graphical User Interface)111、及び、制御部9を備える。ステージ107は、対象物100が載置される支持部である。ステージ107は、上記支持部7(図1参照)と同様に構成されている。本実施形態のステージ107には、対象物100の裏面100bをレーザ光入射面側である上側にした状態(表面100aをステージ107側である下側にした状態)で、対象物100が載置される。ステージ107は、その中心に設けられた回転軸Cを有する。回転軸Cは、Z方向に沿って延びる軸である。ステージ107は、回転軸Cを中心に回転可能である。ステージ107は、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により回転駆動される。
レーザ加工ヘッド10Aは、ステージ107に載置された対象物100に第1レーザ光L1(図11(a)参照)をZ方向に沿って照射し、当該対象物100の内部に改質領域を形成する。レーザ加工ヘッド10Aは、第1Z軸レール106A及びY軸レール108に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、第1Z軸レール106Aに沿ってZ方向に直線的に移動可能である。レーザ加工ヘッド10Aは、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により、Y軸レール108に沿ってY方向に直線的に移動可能である。レーザ加工ヘッド10Aは、照射部を構成する。
レーザ加工ヘッド10Aは、上述したように反射型空間光変調器34を備えている。レーザ加工ヘッド10Aは、測距センサ36を備えている。測距センサ36は、対象物100のレーザ光入射面に対して測距用レーザ光を出射し、当該レーザ光入射面によって反射された測距用の光を検出することで、対象物100のレーザ光入射面の変位データを取得する。測距センサ36としては、第1レーザ光L1と別軸のセンサである場合、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。測距センサ36としては、第1レーザ光L1と同軸のセンサである場合、非点収差方式等のセンサを利用することができる。レーザ加工ヘッド10Aの回路部19(図3参照)は、測距センサ36で取得した変位データに基づいて、集光部14がレーザ光入射面に追従するように駆動部18(図5参照)を駆動させる。これにより、対象物100のレーザ光入射面と第1レーザ光L1の集光点である第1集光点との距離が一定に維持されるように、当該変位データに基づき集光部14がZ方向に沿って移動する。
第1Z軸レール106Aは、Z方向に沿って延びるレールである。第1Z軸レール106Aは、取付部65を介してレーザ加工ヘッド10Aに取り付けられている。第1Z軸レール106Aは、第1レーザ光L1の第1集光点がZ方向(仮想面M1と交差する方向)に沿って移動するように、レーザ加工ヘッド10AをZ方向に沿って移動させる。第1Z軸レール106Aは、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。
Y軸レール108は、Y方向に沿って延びるレールである。Y軸レール108は、第1Z軸レール106Aに取り付けられている。Y軸レール108は、第1レーザ光L1の第1集光点がY方向(仮想面M1に沿う方向)に沿って移動するように、レーザ加工ヘッド10AをY方向に沿って移動させる。Y軸レール108は、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図8参照)のレールに対応する。
撮像部110は、第1レーザ光L1の入射方向に沿う方向から対象物100を撮像する。撮像部110は、アライメントカメラAC及び撮像ユニットIRを含む。アライメントカメラAC及び撮像ユニットIRは、レーザ加工ヘッド10Aと共に取付部65に取り付けられている。アライメントカメラACは、例えば、対象物100を透過する光を用いてデバイスパターン等を撮像する。これにより得られる画像は、対象物100に対する第1レーザ光L1の照射位置のアライメントに供される。
撮像ユニットIRは、対象物100を透過する光により対象物100を撮像する。例えば、対象物100がシリコンを含むウェハである場合、撮像ユニットIRにおいては近赤外領域の光が用いられる。撮像ユニットIRは、光源と、対物レンズと、光検出部と、を有する。光源は、対象物100に対して透過性を有する光を出力する。光源は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、例えば近赤外領域の光を出力する。光源から出力された光は、ミラー等の光学系によって導光されて対物レンズを通過し、対象物100に照射される。
対物レンズは、対象物100のレーザ光入射面とは反対側の面で反射された光を通過させる。つまり、対物レンズは、対象物100を伝搬(透過)した光を通過させる。対物レンズの開口数(NA)は、例えば0.45以上である。対物レンズは、補正環を有している。補正環は、例えば対物レンズを構成する複数のレンズにおける相互間の距離を調整することにより、対象物100内において光に生じる収差を補正する。光検出部は、対物レンズを通過した光を検出する。光検出部は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光を検出する。撮像ユニットIRは、対象物100の内部に形成された改質領域、及び、改質領域から延びる亀裂の少なくとも何れかを撮像することができる。つまり、レーザ加工装置101においては、撮像ユニットIRを用いて、非破壊にてレーザ加工の加工状態を確認できる。撮像ユニットIRは、対象物100の内部におけるレーザ加工の加工状態を監視(内部監視)する加工状態監視部を構成する。
GUI111は、各種の情報を表示する。GUI111は、例えばタッチパネルディスプレイを含む。GUI111には、ユーザのタッチ等の操作により、加工条件に関する各種の設定が入力される。GUI111は、ユーザからの入力を受け付ける入力部を構成する。
制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。制御部9は、レーザ加工装置101の各部を制御し、各種機能を実現する。
制御部9は、ステージ107と、レーザ加工ヘッド10Aと、上記移動機構6(図1参照)又は上記移動機構300(図1参照)と、を少なくとも制御する。制御部9は、ステージ107の回転、レーザ加工ヘッド10Aからの第1レーザ光L1の照射、及び、第1レーザ光L1の第1集光点の移動を制御する。制御部9は、ステージ107の回転量に関する回転情報(以下、「θ情報」ともいう)に基づいて、各種の制御を実行可能である。θ情報は、ステージ107を回転させる駆動装置の駆動量から取得されてもよいし、別途のセンサ等により取得されてもよい。θ情報は、公知の種々の手法により取得することができる。ここでのθ情報は、対象物100が0°方向の位置に位置するときの状態を基準にした回転角度を含む。
制御部9は、ステージ107を回転させながら、対象物100におけるラインM3(有効領域Rの周縁)に沿った位置に第1集光点を位置させた状態で、θ情報に基づいてレーザ加工ヘッド10Aにおける第1レーザ光L1の照射の開始及び停止を制御することにより、有効領域Rの周縁に沿って改質領域を形成させるトリミング処理を実行する。トリミング処理は、トリミング加工を実現する制御部9の処理である。本実施形態のトリミング処理では、剥離処理(後述の第1加工処理)の前に、ラインM3に沿って、対象物100の内部における仮想面M1よりもレーザ光入射面とは反対側の部分に、第1レーザ光L1を照射して改質領域を形成する。
制御部9は、ステージ107を回転させながら、レーザ加工ヘッド10Aから第1レーザ光L1を照射させると共に、第1集光点のY方向における移動を制御することにより、対象物100の内部において仮想面M1に沿って改質領域を形成させる剥離処理を実行する。剥離処理は、剥離加工を実現する制御部9の処理である。制御部9は、GUI111の表示を制御する。GUI111から入力された各種の設定に基づいて、トリミング処理及び剥離処理を実行する。
改質領域の形成及びその停止の切り替えは、次のようにして実現することができる。例えば、レーザ加工ヘッド10Aにおいて、第1レーザ光L1の照射(出力)の開始及び停止(ON/OFF)を切替えることで、改質領域の形成と当該形成の停止とを切り替えることが可能である。具体的には、レーザ発振器が固体レーザで構成されている場合、共振器内に設けられたQスイッチ(AOM(音響光学変調器)、EOM(電気光学変調器)等)のON/OFFが切り替えられることで、第1レーザ光L1の照射の開始及び停止が高速に切り替えられる。レーザ発振器がファイバレーザで構成されている場合、シードレーザ、アンプ(励起用)レーザを構成する半導体レーザの出力のON/OFFが切り替えられることで、第1レーザ光L1の照射の開始及び停止が高速に切り替えられる。レーザ発振器が外部変調素子を用いている場合、共振器外に設けられた外部変調素子(AOM、EOM等)のON/OFFが切り替えられることで、第1レーザ光L1の照射のON/OFFが高速に切り替えられる。
或いは、改質領域の形成及びその停止の切り替えは、次のようにして実現してもよい。例えば、シャッタ等の機械式機構を制御するによって第1レーザ光L1の光路を開閉し、改質領域の形成と当該形成の停止とを切り替えてもよい。第1レーザ光L1をCW光(連続波)へ切り替えることで、改質領域の形成を停止させてもよい。反射型空間光変調器34の液晶層に、第1レーザ光L1の集光状態を改質できない状態とするパターン(例えば、レーザ散乱させる梨地模様のパターン)を表示することで、改質領域の形成を停止させてもよい。アッテネータ等の出力調整部を制御し、改質領域が形成できないように第1レーザ光L1の出力に低下させることで、改質領域の形成を停止させてもよい。偏光方向を切り替えることで、改質領域の形成を停止させてもよい。第1レーザ光L1を光軸以外の方向に散乱させて(飛ばして)カットすることで、改質領域の形成を停止させてもよい。
次に、レーザ加工装置101を用いて、対象物100にトリミング加工及び剥離加工を施し、半導体デバイスを製造(取得)する方法の一例について、以下に説明する。以下に説明する製造方法は、トリミング加工及び剥離加工によって対象物100から取り除く除去部分(対象物100において半導体デバイスとして用いられない部分)について、リユース可能な方法である。
まず、裏面100bをレーザ光入射面側にした状態でステージ107上に対象物100を載置する。対象物100において機能素子が搭載された表面100a側は、支持基板ないしテープ材が接着されて保護されている。
続いて、トリミング加工を実施する。具体的には、図11(a)に示されるように、ステージ107を一定の回転速度で回転しながら、対象物100のラインM3上の位置に第1集光点P1を位置させた状態で、レーザ加工ヘッド10Aにおける第1レーザ光L1を照射する。当該第1レーザ光L1の照射を、第1集光点P1のZ方向の位置を変えて繰り返し行う。つまり、図10(b)及び11(b)に示されるように、剥離処理の前に、ラインM3に沿って、対象物100の内部における仮想面M1よりもレーザ光入射面とは反対側の部分に改質領域43を形成する。
続いて、剥離加工を実施する。具体的には、図12(a)に示されるように、ステージ107を一定の回転速度で回転させながら、レーザ加工ヘッド10Aから第1レーザ光L1を照射すると共に、第1集光点P1が仮想面M1の外縁側から内側にY方向に沿って移動するように、レーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動する。これにより、図12(b)及び図12(c)に示されるように、対象物100の内部において仮想面M1に沿って、回転軸C(図9参照)の位置を中心とする渦巻き状(インボリュート曲線)に延びる改質領域4を形成する。形成した改質領域4は、複数の改質スポットを含む。これにより、図13(a)に示されるように、仮想面M1に渡る改質領域4及び改質領域4の改質スポットから延びる亀裂を境界として、対象物100の一部を剥離する。これと共に、ラインM3に沿う改質領域43及び改質領域43の改質スポットから延びる亀裂を境界として、除去領域Eを取り除く。
なお、対象物100の剥離及び除去領域Eの除去は、例えば吸着冶具を用いて行ってもよい。対象物100の剥離は、ステージ107上で実施してもよいし、剥離専用のエリアに移動させて実施してもよい。対象物100の剥離は、エアーブロー又はテープ材を利用して剥離してもよい。外部応力だけで対象物100を剥離できない場合には、対象物100に反応するエッチング液(KOH又はTMAH等)で改質領域4,43を選択的にエッチングしてもよい。これにより、対象物100を容易に剥離することが可能となる。ステージ107を一定の回転速度で回転させたが、当該回転速度は変化させてもよい。例えばステージ107の回転速度は、改質領域4に含まれる改質スポットのピッチが一定間隔となるように変化させてもよい。
続いて、図13(b)に示されるように、対象物100の剥離面100hに対して、仕上げの研削又は砥石等の研磨材による研磨を行う。エッチングにより対象物100を剥離している場合、当該研磨を簡略化することができる。以上の結果、半導体デバイス100kが取得される。
次に、本実施形態の剥離加工に関して、より詳細に説明する。
図14(a)に示されるように、剥離加工の対象となる対象物100には、ライン(加工用ライン)M11が設定されている。ラインM11は、改質領域4の形成を予定するラインである。ラインM11は、対象物100において周縁側から内側に向かって渦巻き状に延在する。換言すると、ラインM11は、ステージ107の回転軸C(図9参照)の位置を中心とする渦巻き状(インボリュート曲線)に延びる。ラインM11は、並ぶように配された複数の並行ラインM11aを有する加工用ラインである。例えば渦巻き状における一周部分が、1つの並行ラインM11aを構成する。ラインM11は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。ラインM11は、座標指定されたものであってもよい。
図14(a)及び図14(b)に示されるように、対象物100は、レーザ光入射面である裏面100bに対して交差する側面を有するベベル部(周縁部分)BBを有する。ベベル部BBは、例えば強度向上のための面取り面である。ベベル部BBは、対象物100の周縁の角が曲面(R面)にされて成る。ベベル部BBは、例えば、対象物100において周縁から200~300μm内側までの間の部分である。
対象物100には、アライメント対象100nが設けられている。例えばアライメント対象100nは、対象物100の0°方向の位置に対してθ方向(ステージ107の回転軸C回りの回転方向)に一定の関係を有する。0°方向の位置とは、θ方向において基準となる対象物100の位置である。例えばアライメント対象100nは、対象物100の周縁側に形成されたノッチである。なお、アライメント対象100nは、特に限定されず、対象物100のオリエンテーションフラットであってもよいし、機能素子のパターンであってもよい。
制御部9は、ベベル部BBを含むベベル周辺部(第1部分)100Xに、第1加工条件で第1レーザ光L1を照射させる第1加工処理を実行する。制御部9は、第1加工処理の後、対象物100においてベベル周辺部100Xよりも内側の内周部(第2部分)100Yに、第1加工条件とは異なる第2加工条件で第1レーザ光L1を照射させる第2加工処理を実行する。第1加工処理及び第2加工処理は、剥離処理に含まれる。対象物におけるベベル周辺部100X及び内周部100Yの広さは、GUI111を介して入力することができる。
第1加工処理及び第2加工処理では、図15に示されるように、ラインM11の延在方向C1(加工進行方向)と直交する直交方向に対して傾斜する傾斜方向C2に沿って一列に並ぶ複数の改質スポットSAが仮想面M1上に形成されるように、第1レーザ光L1が分岐される。第1レーザ光L1の分岐は、例えば反射型空間光変調器34(図5参照)を利用して実現することができる。
図示される例では、第1レーザ光L1が4分岐され、4つの改質スポットSAが形成される。分岐された4つの改質スポットSAのうち隣接する一対の改質スポットSAについて、ラインM11の延在方向C1における間隔が分岐ピッチBPxであり、延在方向C1の直交方向における間隔が分岐ピッチBPyである。連続する2パルスの第1レーザ光L1の照射で形成される一対の改質スポットSAについて、延在方向C1における間隔がパルスピッチPPである。延在方向C1と傾斜方向C2と間の角度が分岐角度αである。
第1加工処理及び第2加工処理では、第1レーザ光L1を対象物100に照射させると共に、周縁から内側に向かって渦巻き状のラインM11に沿って第1集光点P1の位置を対象物100に対して相対的に移動させ、当該ラインM11に沿って改質領域4を形成する。つまり、第1及び第2加工処理では、対象物100において改質領域4を形成する領域を、周縁から内側へ向かう第1方向に変遷させる。
第1加工条件及び第2加工条件は、一本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合に、対象物100の内部の加工状態(以下、単に「加工状態」ともいう)が後述のスライシングハーフカット状態(第1スライシング状態)になる条件である。第1加工条件及び第2加工条件は、並ぶように配された複数の並行ラインを有する加工用ラインであるラインM11に沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合に、加工状態が後述のスライシングフルカット状態(第2スライシング状態)になる条件である。
第1加工条件は、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態になる条件である。第2加工条件は、第1規定量よりも多い第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態になる条件である。第1加工条件及び第2加工条件の具体的なパラメータとしては、第1レーザ光L1の分岐数、分岐ピッチBPy,BPx、パルスエネルギ、パルスピッチ及びパルス幅、並びに加工速度等が挙げられる。加工状態がスライシングハーフカット状態になる加工条件は、加工状態がスライシングハーフカット状態になるように公知技術に基づきパラメータが適宜設定された加工条件である。加工状態がスライシングフルカット状態になる加工条件は、加工状態がスライシングフルカット状態になるように公知技術に基づきパラメータが適宜設定された加工条件である。例えば第1加工条件は、分岐数は4、分岐ピッチBPyが20μm、分岐ピッチBPxが30μm、パルスエネルギは16.73μJ、加工速度は800mm/s、パルスピッチは10μm、パルス幅は700nsである。例えば第2加工条件は、分岐ピッチBPyが30μmである以外は第1加工条件と同じである。
ここで、剥離加工において見出された加工状態について、以下に説明する。
図16(a)及び図17(a)は、スライシングステルス状態を示す画像である。図16(b)及び図17(b)は、スライシングハーフカット状態を示す画像である。図18(a)は、第1規定量のレーザ加工後の加工状態であってスライシングフルカット状態を示す画像である。図18(b)は、第2規定量のレーザ加工後の加工状態であってスライシングフルカット状態を示す画像である。
図16(a)~図18(b)は、レーザ光入射面から撮像ユニットIRで撮像した、仮想面M1の位置における画像である。図16(a)及び図16(b)は、一本の加工用ライン(並行ライン)に沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合の加工状態である。図17(a)~図18(b)は、複数本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合の加工状態である。加工用ラインは、図示において左右に直線状に延びるように設定されている。図16(a)~図18(b)に示されるように、加工状態は、パルスエネルギ及び分岐ピッチ等により、3段階に変化することがわかる。
図16(a)及び図17(a)に示されるように、スライシングステルス(SST)状態は、改質領域4に含まれる複数の改質スポット(打痕)SAから亀裂が伸展していない、又は、当該亀裂が繋がっていない状態である。スライシングステルス状態は、改質スポットSAのみが観察できる状態である。スライシングステルス状態では、亀裂の伸展がないため、加工用ラインの数を増加させてもスライシングフルカット状態へ状態変化することはない。
図16(b)及び図17(b)に示されるように、スライシングハーフカット(SHC)状態は、改質領域4に含まれる複数の改質スポットSAから延びる亀裂が、加工用ラインに沿う方向に伸展する状態である。画像において、スライシングハーフカット状態では、改質スポットSAと加工用ラインに沿った染みが確認できる。加工状態がスライシングハーフカット状態となるように加工用ラインの数を増加させることで、スライシングフルカット状態に変化するが、加工条件によってスライシングフルカット状態に変化する当該加工用ラインの数が変化する。また、スライシングフルカット状態を発生させるためには、一本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合の加工状態として、スライシングハーフカット状態が必要不可欠となることがわかる。
スライシングフルカット(SFC)状態は、改質領域4に含まれる複数の改質スポットSAから延びる亀裂が、複数の加工用ラインに沿う方向及び加工用ラインと交差する方向に伸展して互いに繋がる状態である。スライシングフルカット状態は、改質スポットSAから延びる亀裂が、画像上において左右上下に伸展し、複数の加工用ラインを跨いで繋がっている状態である。図18(a)及び図18(b)に示されるように、スライシングフルカット状態は、画像上において改質スポットSAが確認できない状態(当該亀裂により形成された空間ないし隙間が確認される状態)である。スライシングフルカット状態は、複数の加工用ラインの間を跨ぐ亀裂の繋がりによって発生する状態であることから、一本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合には、発生し得ない。
スライシングフルカット状態とは、第1スライシングフルカット状態と、第2スライシングフルカット状態と、を含む。第1スライシングフルカット状態は、第1規定量のレーザ加工後に発生するスライシングフルカット状態である(図18(a)参照)。第2スライシングフルカット状態は、第1規定量よりも多い第2規定量のレーザ加工後に発生するスライシングフルカット状態である(図18(a)参照)。
第1規定量のレーザ加工は、例えば100本未満の複数の並行ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合である。第1規定量のレーザ加工とは、例えば、対象物100における改質領域4を形成する領域のインデックス方向の幅が12mm未満の場合である。インデックス方向は、レーザ光入射面から見て加工用ラインの延在方向に直交する方向である。第2規定量のレーザ加工とは、例えば100本以上の複数の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合である。第2規定量のレーザ加工とは、例えば、対象物100における改質領域4を形成する領域のインデックス方向の幅が12mm以上の場合である。第1規定量及び第2規定量は特に限定されず、種々のパラメータ量であってもよい。第1規定量及び第2規定量は、例えば加工時間であってもよい。第1規定量及び第2規定量は、複数のパラメータ量の組合せであってもよい。
なお、図16(a)~図18(b)は撮像ユニットIRで撮像した画像であるが、通常のIRカメラで撮影した場合も、図16(a)~図18(b)と同様の画像が得られる。図16(a)~図18(b)の結果は、対象物100の形状及び大きさ等に特に限定されず、対象物100がホールウェハ又は小片ウェハであっても、図16(a)~図18(b)と同様の結果が得られる。図16(a)~図18(b)の結果はレーザ加工のみの結果(応力を加えないことを前提に実施した結果)である。100本未満の複数の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合であっても、対象物100に応力を加えることでスライシングフルカット状態となる場合がある。
制御部9は、GUI111を介したユーザからの入力に基づいて、第1加工条件及び第2加工条件を設定する。GUI111の表示及び入力に関しては、後述する。制御部9は、撮像ユニットIRの撮像結果、すなわち対象物100の内部の加工状態を、GUI111に表示させる。
撮像ユニットIRは、渦巻き状のラインM11に沿って改質領域4が形成された場合の加工状態がスライシングハーフカット状態であるかを監視する。撮像ユニットIRは、第1加工処理において、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態であるか(つまり、第1スライシングフルカット状態であるか)を監視する。撮像ユニットIRは、第2加工処理において、第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態であるか(つまり、第2スライシングフルカット状態であるか)を監視する。状態を監視することは、当該状態を見張るような作用を実現すること、及び/又は、当該状態を判別可能な情報を取得(例えば画像取得)すること、を含む。
制御部9は、撮像ユニットIRの監視結果に基づいて、第1加工処理における第1規定量のレーザ加工後の加工状態が第2スライシングフルカット状態か否か、及び、第2加工処理における第2規定量のレーザ加工後の加工状態が第2スライシングフルカット状態か否かを判定する。加工状態の判定は、公知の種々の画像処理手法を用いて行うことができる。加工状態の判定は、ディープラーニングによって得られる学習済みモデル(AI;人工知能)を利用して行ってもよい。これらについては、制御部9における他の判定について同様である。
次に、上述した剥離加工について、図19のフローチャートを参照しつつ詳説する。
本実施形態の剥離加工は、第1加工処理にて亀裂をベベル部BBに到達させた後に第2加工処理を行い、対象物100の剥離を実現する。具体的には、制御部9によりレーザ加工装置101の各部を制御し、以下の各処理を実行する。
まず、アライメントカメラACが対象物100のアライメント対象100nの直上に位置し且つアライメント対象100nにアライメントカメラACのピントが合うように、ステージ107を回転させると共にレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108及び第1Z軸レール106Aに沿って移動させる。アライメントカメラACにより撮像を行う。アライメントカメラACの撮像画像に基づいて、対象物100の0度方向の位置を取得する。また、アライメントカメラACの撮像画像に基づいて、対象物100の直径を取得する。なお、対象物100の直径は、ユーザからの入力により設定されてもよい。
続いて、図9及び図20(a)に示されるように、ステージ107を回転させ、対象物100を0度方向の位置に位置させる。Y方向において第1集光点P1が剥離開始所定位置に位置するように、レーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる。Z方向において第1集光点P1が仮想面M1に位置するように、レーザ加工ヘッド10Aを第1Z軸レール106Aに沿って移動させる。例えば剥離開始所定位置は、対象物100よりも離れた所定位置である。
続いて、ステージ107の回転を開始する。測距センサによる裏面100bの追従を開始する。なお、測距センサの追従開始の前に、第1集光点P1の位置が、測距センサの測長可能範囲内であることを予め確認する。ステージ107の回転速度が一定(等速)になった時点で、レーザ加工ヘッド10Aによる第1レーザ光L1の照射を開始する。
ベベル周辺部100Xに第1加工条件で第1レーザ光L1を照射しながら、第1集光点P1がY方向に沿って内周側へ移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる(ステップS1,第1加工工程)。上記ステップS1では、対象物100において改質領域4を形成する領域を、周縁から内側へ向かう第1方向E1に変遷させる。上記ステップS1では、インデックス方向を第1方向E1としてレーザ加工を行う。上記ステップS1では、渦巻き状のラインM11に沿って、周縁から内側に向かうように第1集光点P1を移動させて改質領域4を形成する。上記ステップS1では、第1レーザ光L1の照射を開始するタイミングは、第1レーザ光L1の光軸が未だ対象物100外に位置するときであってもよいし、ベベル周辺部100Xに位置するときであってもよい。
第1規定量の第1加工工程の加工後、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を停止し、第1加工工程を停止する。撮像ユニットIRの撮像結果に基づいて、第1規定量の加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否かを判定する(ステップS2)。上記ステップS2でYesの場合、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を再び開始し、第1加工工程を再開する(ステップS3)。これにより、ベベル周辺部100Xでは、改質領域4が渦巻き状のラインM11に沿って形成され、加工状態がスライシングフルカット状態となる(図20(b)参照)。
続いて、図9及び図21(a)に示されるように、ステージ107を回転させた状態で、内周部100Yに第2加工条件で第1レーザ光L1を照射しながら、第1集光点P1がY方向に沿って内周側へ移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる(ステップS4,第2加工工程)。上記ステップS4では、インデックス方向を第1方向E1としてレーザ加工を行う。上記ステップS4では、渦巻き状のラインM11に沿って、周縁から内側に向かうように第1集光点P1を移動させて改質領域4を形成する。
第2規定量の第2加工工程の加工後、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を停止し、第2加工工程を停止する。撮像ユニットIRの撮像結果に基づいて、第2規定量の加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否かを判定する(ステップS5)。上記ステップS5でYesの場合、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を再び開始し、第2加工工程を再開する(ステップS6)。これにより、内周部100Yでは、改質領域4が渦巻き状のラインM11に沿って形成され、加工状態がスライシングフルカット状態となる(図21(b)参照)。
以上により、仮想面M1の全域に改質領域4がラインM11に沿って形成され、加工が完了する(ステップS7)。撮像ユニットIRの撮像結果に基づいて、加工完了後の加工状態が仮想面M1の全域でスライシングフルカット状態か否かを判定する(ステップS8)。上記ステップS8でYesの場合、剥離加工が正常に完了したとして、処理を正常終了する。一方、上記ステップS2でNo、上記ステップS5でNo、又は、上記ステップS8でNoの場合、加工状態にエラーがあると判定し、例えば加工状態のエラーをGUI111を介して報知する(ステップS9)。例えば上記ステップS9の後、別途の工程(例えば後述の第4実施形態の処理)によって、第1加工条件及び第2加工条件が再設定される。
なお、ベベル周辺部100Xのインデックス方向の幅が35mm以下の場合、第2加工処理時にベベル部BBの反りが発生する場合がある。ベベル周辺部100Xのインデックス方向の幅が35mmよりも大きい場合、第1加工処理時にベベル部BBの反りが発生する場合がある。
図22は、仮想面M1に沿って形成された改質領域4から延びる亀裂を説明するための対象物100の平面図である。図23は、図22の対象物100の亀裂を観察した結果を示す図である。図22は、レーザ光入射面から対象物100を見た状態を示す。ここでの実験では、対象物100において、外周部100Gと、それよりも内周側の内周部100Fと、において、並設された複数の直線状の加工用ラインに沿って改質領域4を形成している。そして、内周部100Fのインデックス方向後側(外周部100G側)の亀裂と、内周部100Fのインデックス方向前側の亀裂と、外周部100Gのインデックス方向前側の亀裂と、について、設定された加工用ラインの数である加工ライン数を変えて観察している。
図中において、左右方向がスキャン方向(加工用ラインの延在方向)であり、上下方向がインデックス方向である。第1レーザ光L1の分岐数は4、分岐ピッチBPyは20μm、分岐ピッチBPxは30μm、パルスエネルギは16.73μJ、加工速度は800mm/s、パルスピッチは10μm、パルス幅は700nsである。対象物100は、(100)面を主面とするシリコンウェハである。対象物100の厚さは775μmである。
図22及び図23に示されるように、インデックス方向前側では、亀裂伸展量にバラつきが大きく、加工ライン数に依存しない。インデックス方向後側では、加工ライン数の増加とともに亀裂伸展量も大きくなる。亀裂は、インデックス方向と逆方向(インデックス方向後側)に伸展することがわかる。当該亀裂の亀裂伸展量は、加工ライン数に依存することがわかる。すなわち、仮想面M1に沿って改質領域4を形成する場合、その改質領域4から仮想面M1に沿って延びる亀裂の伸展方向は、対象物100において改質領域4を形成する領域の変遷方向(インデックス方向)に大きく寄与することが見出される。具体的には、当該亀裂は、当該変遷方向とは逆方向に安定的に亀裂が伸展しやすいことが見出される。
また、加工条件Iを用いて、加工状態がスライシングフルカット状態となるように、ベベル部BBを有するウェハにレーザ加工を行った。実験結果は、以下の通りである。なお、改質エリアの幅は、そのインデックス方向における幅である。「×」はNo Good、「△」はGood、「○」はVery Goodをそれぞれ意味する。
<加工条件I>
分岐数4、分岐ピッチBPy20μm、分岐ピッチBPx30μm、加工速度800mm、周波数80kHz
<実験結果>
改質エリアの幅10mm(加工ライン数500本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅20mm(加工ライン数1000本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅25mm(加工ライン数1252本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅30mm(加工ライン数1500本):ベベル部BBまでの亀裂到達△
改質エリアの幅35mm(加工ライン数1752本):ベベル部BBまでの亀裂到達○(反り量0.3mm)
また、加工条件IIを用いて、加工状態がスライシングハーフカット状態となるように、ベベル部BBを有するウェハにレーザ加工を行った。実験結果は、以下の通りである。実験結果は、以下の通りである。なお、改質エリアの幅は、そのインデックス方向における幅である。「×」はNo Good、「△」はGood、「○」はVery Goodをそれぞれ意味する。
<加工条件II>
分岐数4、分岐ピッチBPy30μm、分岐ピッチBPx30μm、加工速度800mm、周波数80kHz
<実験結果>
改質エリアの幅10mm(加工ライン数333本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅20mm(加工ライン数666本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅25mm(加工ライン数833本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅30mm(加工ライン数1000本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
改質エリアの幅100mm(加工ライン数3333本):ベベル部BBまでの亀裂到達×
これらの実験結果から、改質エリアの加工状態がスライシングフルカット状態であると、亀裂がベベル部BBまで到達できることがわかる。改質エリアの加工状態がスライシングハーフカット状態であると、亀裂がベベル部BBまで到達困難であることがわかる。すなわち、ベベル部BBに亀裂を伸展させるためには、少なくとも改質エリアの加工状態がスライシングフルカット状態であることが求められる。
以上、レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、ベベル周辺部100Xにおいて改質領域4を形成する領域を、周縁から内側へ向かう第1方向E1に変遷させる。つまり、第1レーザ光L1のインデックス方向を第1方向E1としている。これにより、第1方向E1とは逆方向である内側から周縁に向かう方向に当該亀裂が安定的に伸展しやすくなる。改質領域4における第1方向E1とは逆方向の内側から周縁に向かう方向に、当該亀裂が安定的に伸展しやすくなる。その結果、加工が困難なベベル部BBにおいても当該亀裂を形成することが可能となり、対象物100を確実に剥離することが可能となる。また、ベベル周辺部100Xよりも内側の内周部100Yでは、所望の加工条件を第2加工条件としたレーザ加工が可能となり、タクトアップ等々の種々のニーズに応じたレーザ加工が可能となる。
レーザ加工装置101の第1加工処理及びレーザ加工方法の第1加工工程では、対象物100において周縁から内側に向かって渦巻き状に延在するラインM11に沿って、改質領域4を周縁から内側に向かって形成する、又は、対象物100において周縁から内側に並ぶ直線状の複数の並行ラインに沿って、複数の改質領域4を周縁から内側の順に形成する。これにより、ベベル部BBを含むベベル周辺部100Xにおいて改質領域4を形成する領域を周縁から内側へ向かう第1方向E1に変遷させることを、具体的に実現できる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、第1加工条件及び第2加工条件は、一本の加工用ラインに沿ってレーザ光を照射して改質領域を形成した場合に、加工状態がスライシングハーフカット状態になる条件である。このような加工条件により、対象物100を確実に剥離することが可能となる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、第1加工条件及び第2加工条件は、複数の並行ラインを有する加工用ライン(渦巻き状のラインM11及び複数の直線状のライン)に沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合に、加工状態がスライシングフルカット状態になる条件である。このような加工条件により、対象物100を確実に剥離することが可能となる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、第1加工条件は、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態になる条件である。第2加工条件は、第1規定量よりも多い第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態になる条件である。この場合、第2加工条件によれば、第1加工条件に比べて、形成される改質領域4に含まれる複数の改質スポットSAを粗にして効率よくレーザ加工することが可能となる。タクトアップしたレーザ加工が可能となる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、剥離加工(剥離処理)の前に、対象物100の周縁の内側に環状に延在するラインM3に沿って対象物100の内部における仮想面M1よりも表面100a側の部分に改質領域43を形成するトリミング加工(トリミング処理)を行う。これにより、ラインM3の周縁側の部分を除去するトリミング加工を実現できる。対象物100を剥離する前にトリミング加工を行うことができるため、剥離後にトリミング加工を行う場合に比べて、剥離により発生する亀裂を通過するように第1レーザ光L1を照射することを避けることができる。また、トリミング加工及び剥離加工によって対象物100から取り除く除去部分について、リユース可能である。
レーザ加工装置101の第2加工処理及びレーザ加工方法の第2加工工程では、対象物100において改質領域4を形成する領域を、第1方向E1に変遷させる。つまり、第2加工処理ないし第2加工工程の第1レーザ光L1のインデックス方向を、第1方向E1としている。これにより、対象物100を確実に剥離することが可能となる。
上述したように、複数の並行ラインを有する加工用ラインに沿って改質領域4が形成された場合の加工状態がスライシングフルカット状態でないと、対象物100を剥離することが困難であることが見出される。そこで、レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、ラインM11に沿って改質領域4が形成された場合の加工状態がスライシングフルカット状態であるかを監視する。当該監視結果によれば、対象物100を剥離できるか否かを容易に把握することが可能となる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、第1加工処理(第1加工工程)において、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態であるかを監視する。第2加工処理(第2加工工程)において、第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態であるかを監視する。これによれば、第1加工処理(第1加工工程)により対象物100を剥離できるか否かを容易に把握することができる。第2加工処理(第2加工工程)により対象物100を剥離できるか否かを容易に把握することができる。
レーザ加工装置101では、制御部9は、撮像ユニットIRの監視結果に基づいて、第1加工処理における第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否か、及び、第2加工処理における第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否かを判定する。この場合、制御部9により、監視結果から加工状態がスライシングフルカット状態か否かを自動で判定することができる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、加工完了後の加工状態がスライシングフルカット状態であるかを更に監視する。これにより、加工完了後において、対象物100を剥離できることを把握することが可能となる。なお、加工完了後に加工状態がスライシングフルカット状態であるかを判定する上記ステップS8及びそれに関する各処理は、省略することもできる。
ちなみに、本実施形態では、撮像ユニットIRは、一本の加工用ラインに沿って改質領域4が形成された場合の加工状態がスライシングハーフカット状態であるかを監視してもよい。例えば、加工用ラインが複数のラインを含む場合、そのうちの何れか一本に沿って改質領域4が形成された場合の加工状態を監視してもよい。また例えば、加工用ラインが渦巻き状のラインM11である場合、そのうちの一周部分のラインに沿って改質領域4が形成された場合の加工状態を監視してもよい。
この場合、制御部9は、撮像ユニットIRの監視結果に基づいて、一本の加工用ラインに沿って改質領域4が形成された場合の加工状態がスライシングハーフカット状態か否かを判定してもよい。これにより、監視結果から加工状態がスライシングハーフカット状態か否かを自動で判定することができる。一本の加工用ラインに沿って改質領域4が形成された場合の加工状態がスライシングハーフカット状態では無い(スライシングステルス状態である)場合、加工状態にエラーがあると判定し、例えば加工状態のエラーをGUI111を介して報知すると共に、別途に加工条件を再設定してもよい。
本実施形態では、ベベル周辺部100Xに対して第1加工処理(第1加工方法)を行い、内周部100Yに対して第2加工処理(第2加工処理)を行ったが、第2加工処理(第2加工処理)を行わずに、対象物100の全域に第1加工処理(第1加工処理)を行ってもよい。
本実施形態に係る第2加工処理(第2加工工程)では、図24(a)及び図24(b)に示されるように、改質領域4を形成する領域を、第2方向E2に変遷させてもよい。具体的には、インデックス方向を第1方向E1としてベベル周辺部100Xにレーザ加工を施し、ベベル周辺部100Xに改質領域4を、渦巻き状の外縁から内周に向かうようにラインM11に沿って形成する。その後、インデックス方向を第2方向E2として内周部100Yにレーザ加工を施し、渦巻き状の内周から外縁に向かうようにラインM11に沿って、内周部100Yに改質領域4を形成する。
このように、第2加工処理(第2加工工程)の第1レーザ光L1のインデックス方向を第2方向E2とする場合でも、対象物100を確実に剥離することが可能となる。なお、この場合には、インデックス方向におけるベベル周辺部100Xの距離は、予め設定された所定距離以下であってもよい。所定距離以下は、例えば35mm以下の距離であり、具体的には20mmである。これにより、対象物100に割れを発生させずに剥離させることができる。
本実施形態では、第1加工処理(第1加工工程)と第2加工処理(第2加工工程)との順序を入れ替え、第2加工処理の後に第1加工処理を行ってもよい。この場合、ベベル周辺部100Xの加工中に割れが発生しやすいが、ベベル周辺部100Xは少なくとも剥離可能である。本実施形態では、第1加工処理のインデックス方向が第1方向E1であれば、その他の加工条件(第1及び第2加工処理の順序、並びに、第1及び第2加工処理の加工状態等)については特に限定されないが、以上に説明した加工条件であれば、確実に対象物100を剥離させることが可能となる。
レーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、ユーザからの入力をGUI111により受け付け、GUI111の入力に基づいて第1加工条件及び第2加工条件の少なくとも何れかを制御部9により設定することができる。第1加工条件及び第2加工条件を所望に設定することができる。以下、GUI111に表示する設定画面について、例示する。
図25は、GUI111の設定画面の例を示す図である。図25に示される設定画面は、量産時又はユーザによる加工条件の決定時に使用される。図25に示される設定画面は、複数の加工方法から何れか選択する加工方法選択ボタン201と、ベベル周辺部100Xの広さを設定する入力欄202と、内周部100Yの広さを設定する入力欄203と、詳細設定へ移行する詳細ボタン204と、を含む。複数の加工方法は、第1加工処理におけるインデックス方向、第2加工処理におけるインデックス方向、及び、第2加工処理の有無、が異なる。第2加工処理が無い場合(つまり、第1加工処理で全面加工を行う場合)の入力欄202aには、全面という選択肢が用意されている。
図26は、GUI111の設定画面の他の例を示す図である。図26に示される設定画面は、例えば詳細ボタン204(図25参照)がユーザによりタッチされた場合の詳細設定時の画面である。図26に示される設定画面は、加工条件を選択する加工条件選択ボタン211と、第1レーザ光L1の分岐数を入力又は選択する分岐数欄212と、1本の加工用ラインに沿ったレーザ加工の後に次の加工用ラインまでの移動する距離であるインデックスを入力するインデックス欄213と、分岐数及びインデックスの入力又は表示を行うイメージ図214と、Z方向における改質スポットSAの位置を入力する加工Zハイト欄215と、加工速度を入力する加工速度欄216と、加工条件の切替方法を選択する条件切替方法ボタン217と、を含む。
加工条件選択ボタン211では、第1加工条件及び第2加工条件の何れを設定するかを選択できる。インデックス欄213によれば、分岐数が1の場合には、その入力値分だけ自動でインデックス方向にレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。分岐数を1よりも大きくした場合には、以下の計算式に基づくインデックスだけ、インデックス方向にレーザ加工ヘッド10Aを自動で移動させる。
インデックス=(分岐数)×インデックス入力値
イメージ図214は、インデックス入力値の表示部214aと、各改質スポットSAの出力を入力する出力入力欄214bと、を含む。加工速度欄216は、実際はステージ107が回転するため、回転数としてもよい。加工速度欄216では、入力された加工速度から自動で回転数に置き換えて表示してもよい。条件切替方法ボタン217では、第1加工処理の完了時に自動で第2加工処理を続行するか、第1加工処理の完了時に一度装置を停止して状態監視を実施してから第1加工処理を続行するかを選択する。
図27は、GUI111の設定画面の管理者モードの例を示す図である。図27に示される設定画面は、第1レーザ光L1の分岐方向を選択する分岐方向選択ボタン221と、第1レーザ光L1の分岐数を入力又は選択する分岐数欄222と、分岐ピッチBPxを入力する分岐ピッチ入力欄223と、分岐ピッチBPxの列数を入力する分岐ピッチ列数入力欄224と、分岐ピッチBPyを入力する分岐ピッチ入力欄225と、インデックスを入力するインデックス欄226と、分岐数に基づく光軸イメージ図227と、第1レーザ光L1のスキャン方向が一方向(往路)か他方向(復路)かを選択する往路復路選択ボタン228と、各種の数値のバランスを自動で調整するバランス調整開始ボタン229と、を含む。
分岐数及び分岐ピッチBPx,BPyが入力された時点で、光軸の距離を自動で計算し、計算値が結像光学系35(図5参照)の関係でエラーとなる距離の場合、GUI111にその旨を表示させる。当該計算のために、結像光学系35に関する情報を入力させてもよい。分岐方向選択ボタン221で分岐方向として垂直を選択した場合、光軸イメージ図227では、複数の分岐ピッチ227aは非表示としてもよい。分岐数の大小によって、光軸イメージ図227の分岐ピッチ227a,227bのマスを増減させてもよい。光軸イメージ図227では、分岐ピッチ列数入力欄224及び分岐ピッチ入力欄225の入力値が適応されるが、各チェック欄CKにチェックを入れると、チェックを入れたチェック欄CKに対応する分岐ピッチ227a,227bの距離を変更することができる。
図28は、剥離加工における最適なパルスエネルギの調査例を示す図である。図28では、一本の加工用ラインに沿ってレーザ加工した場合の加工状態と、複数の加工用ライン(並行ライン)に沿ってレーザ加工した後の剥離の可否と、を示す。第1レーザ光L1の分岐数は4、分岐ピッチBPx,BPyはともに30μm、加工速度は800mm/s、パルスピッチは10μm、パルス幅は700nsである。図中の「SST」は、スライシングステルス状態を意味する。図中の「SHC」は、スライシングハーフカット状態を意味する。図28に示されるように、スライシングハーフカット状態が発生する最適パルスエネルギは、9.08~56μJの範囲であることがわかる。また特に、パルスエネルギが12.97~25μJには、問題なく剥離が可能であることがわかる。なお、パルスピッチが10μmよりも大きい場合、最適パルスエネルギは図中の当該実験結果よりも高くなる傾向がある。パルスピッチが10μmよりも小さい場合、最適パルスエネルギは図中の当該実験結果よりも小さくなる傾向がある。
本実施形態では、制御部9により加工状態を自動的に判定したが、撮像ユニットIRの監視結果に基づいてユーザが加工状態を判定してもよい。加工状態がスライシングフルカット状態であるとの判定は、加工状態がスライシングハーフカット状態及びスライシングステルス状態ではないとの判定に相当する。
一般的な剥離加工においては、形成される改質領域4に含まれる複数の改質スポットSAのピッチを密にし、剥離予定面としての仮想面M1に改質スポットSAを敷き詰めることで、対象物100を剥離する場合がある。この場合、加工条件としては、改質スポットSAから亀裂が比較的伸びない条件(例えば、レーザ光の波長が短波長(1028nm)、パルス幅が50nsec、パルスピッチが1~10μm(特に、1.5~3.5μm))が選択される。これに対し、本実施形態では、加工条件として、仮想面M1に沿って亀裂が伸びる条件を選択している。例えば、仮想面M1に沿って改質領域4を形成するための第1レーザ光L1の加工条件として、第1レーザ光L1の波長が長波長(例えば1099nm)、パルス幅が700nsecを選択している。その結果、新たな加工状態(スライシングハーフカット状態及びスライシングフルカット等)を見出すことに至っている。
本実施形板において、制御部9は、ベベル周辺部100Xに第1加工条件とは異なる他の加工条件で第1レーザ光L1を照射させる第3加工処理を、第1加工処理の途中に実行してもよい。換言すると、ベベル周辺部100Xに第1加工条件とは異なる他の加工条件で第1レーザ光L1を照射する第3加工工程を、第1加工工程の途中に実行してもよい。当該他の加工条件は、特に限定されず種々の条件であってもよい。当該他の加工条件は。例えば、対象物100の内部の加工状態がスライシングステルス状態、スライシングハーフカット状態又はスライシングフルカット状態となるときの加工条件であってもよい。この場合でも、対象物100を確実に剥離することは可能である。第3加工処理(第3加工工程)における加工用ラインのインデックス方向の間隔は、第1加工処理(第1加工工程)における加工用ラインのインデックス方向の間隔よりも広くてもよい。
本実施形態では、第1加工処理(第1加工工程)と第2加工処理(第2加工工程)とを切り替える際には、加工を一旦止めて切り替えてもよいし、加工を止めることなく切り替えてもよい。本実施形態では、第1加工処理(第1加工工程)と第3加工処理(第3加工工程)とを切り替える際には、加工を一旦止めて切り替えてもよいし、加工を止めることなく切り替えてもよい。加工を止めることなく加工処理(加工工程)を切り替える場合には、加工条件をゆるやかに切り替えてもよい。例えば、第1加工条件と第2加工条件との違いが分岐ピッチBPyだけであった場合、分岐ピッチBPyを20μmから30μmへ変更するに際して、加工を止めて切り替えるのではなく、分岐ピッチBPyを徐々に(20μm、21μm、22μm、23μm・・・30μmと順に)ステージ107の回転を止めることなく変更してもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
上記第1実施形態では、第1及び第2加工処理で剥離加工を実現するのに対して、本実施形態では、1つの加工処理で剥離加工を実現する。すなわち、図29(a)及び図29(b)に示されるように、本実施形態では、1つの加工条件でベベル周辺部100X及び内周部100Yを含む対象物100の全域をレーザ加工する点で上記第1実施形態と異なる。
制御部9は、対象物100の全域に第2加工条件で第1レーザ光L1を照射させる加工処理を実行する。具体的には、第2加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射させると共に、周縁から内側に向かって渦巻き状のラインM11に沿って第1集光点P1の位置を対象物100に対して相対的に移動させ、当該ラインM11に沿って改質領域4を形成する。つまり、対象物100において改質領域4を形成する領域を、周縁から内側へ向かう第1方向E1に変遷させる。
制御部9は、レーザ加工後の対象物100を吸着する吸着冶具をZ方向回りにひねるように動作させる。これにより、対象物100に対して剥離するように外部応力を印加することができる。
次に、本実施形態の剥離加工について図30のフローチャートを参照しつつ詳説する。
本実施形態の剥離加工では、制御部9によりレーザ加工装置101の各部を制御し、以下の各処理を実行する。すなわち、ステージ107の回転を開始する。第2加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射しながら、第1集光点P1がY方向に沿って内周側へ移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる(ステップS11,加工工程)。
上記ステップS11では、インデックス方向を第1方向E1としてレーザ加工を行う。上記ステップS11では、渦巻き状のラインM11に沿って、周縁から内側に向かうように第1集光点P1を移動させて改質領域4を形成する。上記ステップS11において、第1レーザ光L1の照射を開始するタイミングは、第1レーザ光L1の光軸が未だ対象物100外に位置するときであってもよいし、ベベル周辺部100Xに位置するときであってもよい。
第2規定量の加工工程の加工後、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を停止し、当該加工工程を停止する。撮像ユニットIRの撮像結果に基づいて、第2規定量の加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否か(つまり、第2スライシングフルカット状態か否か)を判定する(ステップS12)。上記ステップS12でYesの場合、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を再び開始し、当該加工工程を再開する(ステップS13)。これにより、対象物100では、改質領域4が渦巻き状のラインM11に沿って形成され、加工状態がスライシングフルカット状態となる(図29(b)参照)。以上により、仮想面M1の全域に改質領域4がラインM11に沿って形成され、加工が完了する(ステップS14)。
撮像ユニットIRの撮像結果に基づいて、加工完了後の加工状態が仮想面M1の全域でスライシングフルカット状態か否かを判定する(ステップS15)。上記ステップS15でYesの場合、対象物100の一部が剥離するように応力を印加する(ステップS16)。上記ステップS16では、例えば対象物100を吸着している吸着冶具をZ方向回りにひねることで、当該対象物100に外部応力を印可してもよい。その後、剥離加工が正常に完了したとして、処理を正常終了する。一方、上記ステップS12でNo、又は、上記ステップS15でNoの場合、加工状態にエラーがあると判定し、例えば加工状態のエラーをGUI111を介して報知する(ステップS17)。例えば上記ステップS17の後には、別途の工程(例えば後述の第4実施形態の処理)によって、第2加工条件が再設定される。
以上、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法においても、上記第1実施形態と同様な効果を奏する。本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、レーザ加工のみで加工状態をスライシングフルカット状態とし、応力印加で対象物100を剥離させることができる。
なお、本実施形態では、加工状態がスライシングハーフカット状態となる条件を加工条件としてもよい。また、加工状態が第1スライシングフルカット状態となる条件を加工条件としてもよい。加工状態が第1スライシングフルカット状態となる加工条件では、応力を印加する上記ステップS16は省略してもよい。
本実施形態では、応力印加の手法及び構成は特に限定されない。例えば、物理的な応力印加(吸着、加圧又は水圧等)により、亀裂を伸展させて剥離してもよい。また例えば、レーザ予備加熱及び超音波等により応力を印加し、亀裂を伸展させて剥離してもよい。
図31は、第2実施形態の変形例に係る剥離加工を示すフローチャートである。変形例では、レーザ加工及び応力印加により加工状態をスライシングフルカット状態として剥離する。変形例では、図30に示す処理に代えて、図31に示す次の各処理を実施する。すなわち、ステージ107の回転を開始し、第3加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射しながら、第1集光点P1がY方向に沿って内周側へ移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる(ステップS21)。第3加工条件は、一本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合に加工状態がスライシングハーフカット状態になる条件であって、並ぶように配された複数の並行ラインを有する加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合に加工状態がスライシングフルカット状態にならない条件である。このような第3加工条件は、加工状態がスライシングハーフカット状態になり且つスライシングフルカット状態にならないように公知技術に基づき各種のパラメータが適宜設定されて成る。これにより、仮想面M1の全域に改質領域4がラインM11に沿って形成され、加工が完了する(ステップS22)。加工状態がスライシングフルカット状態となるように対象物100に応力を印加する(ステップS23)。
撮像ユニットIRの撮像結果に基づいて、加工完了後の加工状態が仮想面M1の全域でスライシングフルカット状態か否かを判定する(ステップS24)。上記ステップS24でYesの場合、剥離加工が正常に完了したとして、処理を正常終了する。一方、上記ステップS24でNoの場合、加工状態にエラーがあると判定し、例えば加工状態のエラーをGUI111を介して報知する(ステップS25)。このような変形例に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法においても、上記と同様な効果を奏する。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
本実施形態の剥離加工では、レーザ加工ヘッド10Aの測距センサ36(図9参照)は、ベベル部BBの高さ(変位)を検出することで、ベベル部BBの反りを監視する。本実施形態の剥離加工では、制御部9によりレーザ加工装置101の各部を制御し、図32に示す以下の各処理を実行する。
ステージ107の回転を開始する。第1加工条件で第1レーザ光L1をベベル周辺部100Xに照射しながら、第1集光点P1がY方向に沿って内周側へ移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる(ステップS31)。第1加工条件又は第2加工条件で第1レーザ光L1を内周部100Yに照射しながら、第1集光点P1がY方向に沿って内周側へ移動するようにレーザ加工ヘッド10AをY軸レール108に沿って移動させる(ステップS32)。上記ステップS31,S32では、渦巻き状のラインM11に沿って、周縁から内側に向かうように第1集光点P1を移動させて改質領域4を形成する。
ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を停止し、内周部100Yに対するレーザ加工を停止する。測距センサ36の検出結果に基づいて、ベベル部BBに反りが発生したか否かを判定する(ステップS33)。上記ステップS33では、測距センサ36で検出したベベル部BBの高さが、予め設定された所定高さ以上である場合、ベベル部BBに反りが発生したと判定する。
上記ステップS33でYesの場合、ステージ107の回転及び第1レーザ光L1の照射等を再び開始し、内周部100Yに対するレーザ加工を再開する(ステップS34)。その後、仮想面M1の全域に改質領域4がラインM11に沿って形成され、加工が完了する(ステップS35)。一方、上記ステップS33でNoの場合、加工状態にエラーがあると判定し、例えば加工状態のエラーをGUI111を介して報知する(ステップS36)。例えば上記ステップS36の後には、別途の工程(例えば後述の第4実施形態の処理)によって、第1加工条件及び第2加工条件が再設定される。
以上、本実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工方法においても、上記第1実施形態と同様な効果を奏する。また、ベベル部BBの内部まで亀裂が仮想面M1に沿って伸展すると、ベベル部BBに反りが生じることが見出される。このことから、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、ベベル部BBの反りを監視(外観監視)することで、ベベル部BBにおける亀裂の到達を把握することができる。
なお、ベベル部BBの反りが顕著になると、レーザ加工装置1とベベル部BBとが接触してしまう可能性がある。よって、本実施形態では、上記ステップS33でYesの場合、ベベル部BBの反りの大きさを測距センサ36の検出結果から算出し、ベベル部BBの反りの大きさが予め設定された規定値以上であれば、エラーを報知する上記ステップS36の処理へ移行してもよい。
ところで、対象物100における周縁から一定距離(例えば35mm)以上内側の位置までの部分に、加工状態が第1スライシングフルカット状態となるようにレーザ加工を施すと、ベベル部BBが反る傾向がある。当該レーザ加工の後、対象物100の内周から周縁に向かう第2方向E2をインデックス方向としてレーザ加工を更に施すと、対象物100が当該反りの応力によって割れてしまうおそれがある。そこでこの場合には、第2方向E2をインデックス方向としてレーザ加工を施す前に反りが発生していないことを監視することで、対象物100の割れを事前に防ぐことが可能となる。
本実施形態では、ベベル部BBの反りを監視する周縁監視部として測距センサ36を用いたが、これに限定されない。ベベル部BBの外観を監視できれば周縁監視部として種々の装置を用いることができ、例えば観察カメラ又は非接触センサが挙げられる。非接触センサを用いてベベル部BBの反りを監視する場合には、レーザ加工を停止せずにリアルタイムで、ベベル部BBの反りの有無及び反り量をモニタリングできる。本実施形態では、制御部9によりベベル部BBの反りを判定したが、測距センサ36の検出結果に基づいてユーザがベベル部BBの反りを判定してもよい。本実施形態は、第1実施形態のみならず、第2実施形態にも適用することができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点を説明し、第1実施形態と重複する説明を省略する。
本実施形態では、対象物100の内部の加工状態がスライシングハーフカット状態となるときの加工条件であるハーフカット加工条件を、実際に対象物100にレーザ加工を施すのに先立って事前に決定する(見極める)。
すなわち、制御部9は、一本の加工用ラインに沿って、ハーフカット加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射させて、改質領域4を対象物100に形成する1ライン加工(第2前処理)を実行する。撮像ユニットIRは、1ライン加工により一本の加工用ラインに沿って改質領域4を形成した場合の加工状態を映す1ライン画像(第2画像)を取得する。制御部9は、1ライン画像に映る加工状態を判定し、当該判定結果に応じてハーフカット加工条件を変更する。具体的には、制御部9は、1ライン画像に映る加工状態がスライシングハーフカット状態か否かを判定し、スライシングハーフカット状態ではない場合にハーフカット加工条件を変更する。ハーフカット加工条件は、上述した第1及び第2加工条件の前提となる条件である。制御部9は、GUI111の入力に基づいて、ハーフカット加工条件(第2前処理の加工条件)を設定する。
図33は、ハーフカット加工条件を決定する場合の処理の例を示すフローチャートである。ハーフカット加工条件を決定する場合には、制御部9によりレーザ加工装置101の各部を制御し、図33に例示する以下の各処理を実行する。
まず、一本の加工用ラインに沿って、設定されているハーフカット加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射して、改質領域4を対象物100に形成する(ステップS41、1ライン加工)。上記ステップS41で改質領域4を形成した場合の加工状態を映す1ライン画像を、撮像ユニットIRにより取得する(ステップS42)。1ライン画像に基づいて、加工状態がスライシングハーフカット状態か否かを判定する(ステップS43)。
上記ステップS43でYesの場合、現在設定されているハーフカット加工条件を最終的な加工条件として決定する(ステップS44)。上記ステップS43でNoの場合、ハーフカット加工条件を調整する(ステップS45)。上記ステップS45では、例えば、第1レーザ光L1のパルスエネルギを最適化(図28参照)、及び/又は、分岐ピッチBPy,BPxないしパルスピッチを狭める。上記ステップS45の後、上記ステップS41に戻る。なお、上記ステップS41のハーフカット加工条件の初期値は、GUI111を介してユーザが設定することができる。
また、本実施形態では、対象物100の内部の加工状態が第1スライシングフルカット状態となるときの加工条件である第1加工条件を、実際に対象物100にレーザ加工を施すのに先立って事前に決定する(見極める)。
すなわち、制御部9は、並ぶように配された複数のライン(並行ライン)を有する加工用ラインに沿って、第1加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射させて、改質領域4を対象物100に形成する複数ライン加工(第1前処理)を実行する。撮像ユニットIRは、複数ライン加工により改質領域4を形成した場合の加工状態を映す複数ライン画像(第1画像)を取得する。制御部9は、複数ライン画像に映る加工状態を判定し、当該判定結果に応じて第1加工条件を変更する。制御部9は、GUI111の入力に基づいて、第1加工条件を設定する。
撮像ユニットIRは、複数ライン画像として、第1規定量のレーザ加工後の加工状態を映す第1複数ライン画像を取得する。制御部9は、第1複数ライン画像に基づいて、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否か(つまり、第1スライシングフルカット状態か否か)を判定する。制御部9は、加工状態が第1スライシングフルカット状態ではない場合に、第1加工条件を変更する。
図34は、第1加工条件を決定する場合の処理の例を示すフローチャートである。第1加工条件を決定する場合には、制御部9によりレーザ加工装置101の各部を制御し、図34に例示する以下の各処理を実行する。
まず、並ぶように配された複数の並行ラインに沿って、設定されている第1加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射して、改質領域4を対象物100に形成する(ステップS51、複数ライン加工)。上記ステップS51で改質領域4を形成した場合の加工状態であって第1規定量のレーザ加工後の加工状態を映す第1複数ライン画像を、撮像ユニットIRにより取得する(ステップS52)。第1複数ライン画像に基づいて、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態(第1スライシングフルカット状態)か否かを判定する(ステップS53)。
上記ステップS53でYesの場合、現在設定されている第1加工条件を最終的な加工条件として決定する(ステップS54)。上記ステップS52でNoの場合、第1加工条件を調整する(ステップS55)。上記ステップS55では、例えば、第1レーザ光L1のパルスエネルギを最適化(図28参照)、及び/又は、分岐ピッチBPy,BPxないしパルスピッチを狭める。上記ステップS55の後、上記ステップS51に戻る。なお、上記ステップS51の第1加工条件の初期値は、GUI111を介してユーザが設定することができる。
また、本実施形態では、対象物100の内部の加工状態が第2スライシングフルカット状態となるときの加工条件である第2加工条件を、実際に対象物100にレーザ加工を施すのに先立って事前に決定する(見極める)。
すなわち、制御部9は、並ぶように配された複数のライン(並行ライン)を有する加工用ラインに沿って、第2加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射させて、改質領域4を対象物100に形成する複数ライン加工(第1前処理)を実行する。撮像ユニットIRは、複数ライン加工により改質領域4を形成した場合の加工状態を映す複数ライン画像(第1画像)を取得する。制御部9は、複数ライン画像に映る加工状態を判定し、当該判定結果に応じて第2加工条件を変更する。制御部9は、GUI111の入力に基づいて、第2加工条件を設定する。
撮像ユニットIRは、複数ライン画像として、第2規定量のレーザ加工後で且つ応力印加後の加工状態を映す第2複数ライン画像を取得する。応力印加は、例えば上記ステップS16(図30参照)の応力印加と同様にして実現できる。制御部9は、第2複数ライン画像に基づいて、第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否か(つまり、第2スライシングフルカット状態か否か)を判定する。制御部9は、加工状態が第2スライシングフルカット状態ではない場合に、第2加工条件を変更する。
或いは、撮像ユニットIRは、複数ライン画像として、第1規定量のレーザ加工後の加工状態を映す第1複数ライン画像を取得する。制御部9は、第1複数ライン画像に基づいて、加工状態が第1スライシングフルカット状態か否かを判定する。加工状態が第1スライシングフルカット状態の場合、制御部9は第2加工条件を変更する。加工状態が第1スライシングフルカット状態ではない場合、撮像ユニットIRは、複数ライン画像として、第2規定量のレーザ加工後の加工状態を映す第2複数ライン画像を取得する。制御部9は、第2複数ライン画像に基づいて、加工状態が第2スライシングフルカット状態か否かを判定する。制御部9は、加工状態が第2スライシングフルカット状態ではない場合、第2加工条件を変更する。
図35は、第2加工条件を決定する場合の処理の例を示すフローチャートである。第2加工条件を決定する場合には、制御部9によりレーザ加工装置101の各部を制御し、図35に例示する以下の各処理を実行する。
まず、並ぶように配された複数の並行ラインに沿って、設定されている第2加工条件で第1レーザ光L1を対象物100に照射して、改質領域4を対象物100に形成する(ステップS61、複数ライン加工)。第1規定量のレーザ加工後の加工状態を映す第1複数ライン画像を、撮像ユニットIRにより取得する(ステップS62)。第1複数ライン画像に基づいて、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態(第1スライシングフルカット状態)か否かを判定する(ステップS63)。
上記ステップS63でNOの場合、つまり、加工状態がスライシングステルス状態又はスライシングハーフカット状態の場合、引き続き複数ライン加工を実施する(ステップS64)。第2規定量のレーザ加工後の加工状態を映す第2複数ライン画像を、撮像ユニットIRにより取得する(ステップS65)。第2複数ライン画像に基づいて、第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態(第2スライシングフルカット状態)か否かを判定する(ステップS66)。
上記ステップS66でYESの場合、現在設定されている第2加工条件を最終的な加工条件として決定する(ステップS67)。上記ステップS63でYESの場合、第2加工条件を調整する(ステップS68)。上記ステップS68では、例えば分岐ピッチBPy,BPxないしパルスピッチを広げる。
上記ステップS66でNOの場合、第2加工条件を調整する(ステップS69)。上記ステップS69では、例えば第1レーザ光L1のパルスエネルギを最適化(図28参照)、及び/又は、分岐ピッチBPy,BPxないしパルスピッチを狭める。上記ステップS68又は上記ステップS69の後、上記ステップS61に戻る。なお、上記ステップS61の第2加工条件の初期値は、GUI111を介してユーザが設定することができる。
以上、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法においても、上記第1実施形態と同様な効果を奏する。また、対象物100の剥離と、複数の並行ラインを有する加工用ラインに沿って改質領域4を形成した場合の加工状態と、の間には、相関があることが見出される。そこで、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、複数の並行ラインを有する加工用ラインに沿って改質領域4を形成した場合の加工状態を映す複数ライン画像を取得する。この複数ライン画像に基づくことで、対象物100を剥離できるように加工条件を策定することが可能となる。したがって、対象物100を確実に剥離することが可能となる。
対象物100の剥離と、一本の加工用ラインに沿って改質領域4を形成した場合の加工状態と、の間には、相関があることが見出される。そこで、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、一本の加工用ラインに沿って改質領域4を形成した場合の加工状態を映す1ライン画像を取得する。この1ライン画像に基づくことで、対象物100を剥離できるようにハーフカット加工条件を策定することが可能となる。対象物100を確実に剥離することが可能となる。
本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、1ライン画像に映る加工状態を判定する。当該判定結果に応じてハーフカット加工条件を変更する。この場合、ハーフカット加工条件を、1ライン画像に応じて自動的に変更することができる。
一本の加工用ラインに沿って改質領域4を形成した場合の加工状態がスライシングハーフ状態でないと、対象物100の剥離が困難になることが見出される。そこで、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、1ライン画像に映る加工状態がスライシングハーフカット状態ではない場合に、ハーフカット加工条件を変更する。これにより、対象物100を剥離できるようにハーフカット加工条件を策定することが可能となる。
本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、複数ライン画像に映る加工状態を判定する。当該判定結果に応じて、第1及び第2加工条件を変更する。この場合、第1及び第2加工条件を、第1画像に応じて自動的に変更することができる。
複数の並行ラインを有する加工用ラインに沿って改質領域4を形成する際、第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態となるようにレーザ加工を行うと、対象物100を確実に剥離し得ることが見出される。そこで、本実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工方法では、第1複数ライン画像に基づいて第1規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否かを判定し、スライシングフルカット状態ではない場合に第1加工条件を変更する。これにより、対象物100を確実に剥離し得る第1加工条件を策定することが可能となる。
複数の並行ラインを有する加工用ラインに沿って改質領域4を形成する際、第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態となるようにレーザ加工を行うと、タクトの悪化を抑えつつ対象物100を剥離し得ることが見出される。そこで、本実施形態のレーザ加工装置101及びレーザ加工方法では、第2複数ライン画像に基づいて第2規定量のレーザ加工後の加工状態がスライシングフルカット状態か否かを判定し、スライシングフルカット状態ではない場合に第2加工条件を変更する。これにより、タクトの悪化を抑えつつ対象物100を剥離し得る第2加工条件を策定することが可能となる。
本実施形態では、ハーフカット加工条件、第1加工条件及び第2加工条件を決定したが、これらの少なくとも何れかを決定すればよい。例えば撮像ユニットIRでスライシングハーフカット状態を確認できない場合には、第1加工条件及び第2加工条件の少なくとも何れかのみを決定してもよい。本実施形態では、制御部9により加工状態を自動的に判定したが、撮像ユニットIRの撮像結果に基づいてユーザが加工状態を判定してもよい。上記ステップS51,S61が第1前工程を構成し、上記ステップS52,S62が第1撮像工程を構成する。本実施形態は、第1実施形態のみならず、第2実施形態又は第3実施形態にも適用することができる。
本実施形態において加工条件を決定する際に用いられる対象物100としては、例えば剥離加工等により最終的に半導体デバイス(製品)とはならないプラクティス用のウェハである条件決定用のウェハと、例えば剥離加工等により最終的に半導体デバイスとなるプロダクション用のウェハである半導体デバイス用のウェハと、が挙げられる。前者の場合には、ウェハの全体領域の何れかに加工用ラインを設定して、加工条件を決定してもよい。後者の場合には、ウェハにおける剥離品質に影響が少ない外縁領域に加工用ラインを設定して、加工条件を決定し、そのまま連続して、決定した当該加工条件で剥離加工を実施してもよい。後者は、例えば、ウェハの裏面膜がバラつく等のために1枚毎に加工条件を調整する必要がある場合に、採用してもよい。
[変形例]
以上、本発明の一態様は、上述した実施形態に限定されない。
上記実施形態では、剥離加工により対象物100を剥離する前に、改質領域43を形成するトリミング加工を行ったが、図36(a)及び図36(b)に示されるように、剥離加工により対象物100を剥離した後に、トリミング加工により除去領域Eを除去してもよい。この場合においても、剥離加工によって対象物100から取り除く除去部分について、リユース可能である。
また、図37(a)及び図37(b)に示されるように、剥離加工により対象物100の有効領域Rの内部に仮想面M1に沿って改質領域4を形成した後、トリミング加工で除去領域Eを除去してもよい。また、図38(a)及び図38(b)に示されるように、トリミング加工で除去領域Eを除去した後、剥離加工により対象物100を剥離してもよい。
上記実施形態では、加工用ラインは渦巻き状のラインM11に限定されず、種々の形状の加工用ラインが対象物100に設定されていてもよい。例えば図39に示されるように、直線状の複数のライン(並行ライン)M12が、所定方向に並ぶように対象物100に設定されていてもよい。これらの複数のラインM12は、ライン(加工用ライン)M20に含まれる。ラインM12は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。ラインM12は、座標指定されたものであってもよい。並ぶように配された複数のラインM12は、その一部又は全部が繋がっていてもよいし、繋がっていなくてもよい。
上記実施形態は、照射部として複数のレーザ加工ヘッドを備えていてもよい。照射部として複数のレーザ加工ヘッドを備える場合、上述の第1加工処理(第1加工工程)、第2加工処理(第2加工工程)、第1前処理(第1前工程)及び第2前処理(第2前工程)のそれぞれにおいて、複数のレーザ加工ヘッドを用いてレーザ加工を実施してもよい。
上記実施形態では、反射型空間光変調器34を採用したが、空間光変調器は反射型のものに限定されず、透過型の空間光変調器を採用してもよい。上記実施形態では、対象物100の種類、対象物100の形状、対象物100のサイズ、対象物100が有する結晶方位の数及び方向、並びに、対象物100の主面の面方位は特に限定されない。
上記実施形態では、対象物100の裏面100bをレーザ光入射面としたが、対象物100の表面100aをレーザ光入射面としてもよい。上記実施形態では、改質領域は、例えば対象物100の内部に形成された結晶領域、再結晶領域、又は、ゲッタリング領域であってもよい。結晶領域は、対象物100の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、一旦は蒸発、プラズマ化あるいは溶融した後、再凝固する際に単結晶あるいは多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域であり、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。上記実施形態は、アブレーション等の加工へ適用されてもよい。
上記実施形態のレーザ加工において、第2加工処理では、装置の限界(ステージ107の回転速度が最大回転速度)に達してしまうと、改質領域4に含まれる改質スポットSAのピッチが詰まる可能性が生じ得る。この場合、当該ピッチが一定間隔となるように、その他の加工条件を変更してもよい。
別の変形例について以下に説明する。
図40に示されるように、レーザ加工装置1Aは、アライメントカメラAC及び撮像ユニットIRを備えている点、並びに、レーザ加工ヘッド(第1照射部)10Bが旋回機構67を介して取付部66に取り付けられている点で、上述したレーザ加工装置1と主に相違している。本実施形態では、レーザ加工装置1Aは、表面100a(以下、「第1主面100a」ともいう)及び表面100b(以下、「第2主面100b」ともいう)を有する対象物100にトリミング加工及び剥離加工を施し、半導体デバイスを取得(製造)する。トリミング加工は、対象物100において不要部分を除去するための加工である。剥離加工は、対象物100の一部分を剥離するための加工である。まず、レーザ加工装置1Aの構成について、上述したレーザ加工装置1との相違点を中心に説明する。なお、図40においては、装置フレーム1a、光源ユニット8等の図示が省略されている。
図40に示されるように、アライメントカメラAC及び撮像ユニットIRは、レーザ加工ヘッド(第2照射部)10Aと共に取付部65に取り付けられている。アライメントカメラACは、例えば、対象物100を透過する光を用いてデバイスパターン等を撮像する。アライメントカメラACにより得られる画像に基づいて、対象物100に対するレーザ光L1の照射位置のアライメント等が実施される。撮像ユニットIRは、対象物100を透過する光により対象物100を撮像する。例えば、対象物100がシリコンを含むウェハである場合、撮像ユニットIRにおいては、近赤外領域の光が用いられる。撮像ユニットIRにより得られる画像に基づいて、対象物100の内部に形成された改質領域及び当該改質領域から延びる亀裂の状態の確認等が実施される。
レーザ加工ヘッド10Bは、旋回機構67を介して取付部66に取り付けられている。旋回機構67は、X方向に平行な軸線を中心線として旋回可能となるように取付部66に取り付けられている。これにより、移動機構6は、レーザ加工ヘッド10Bの集光部(第1集光部)14の光軸が対象物100の第2主面100bに平行なY方向(対象物の表面に垂直な方向と交差する第1方向)に沿った状態、又はレーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸が第2主面100bに垂直なZ方向(第2方向)に沿った状態となるように、レーザ加工ヘッド10Bの向きを変えることができる。なお、レーザ加工装置1Aにおいて、集光部14の光軸が第1方向に沿った状態とは、当該光軸が第1方向に対して10°以下の角度を成す状態を意味し、集光部14の光軸が第2方向に沿った状態とは、当該光軸が第2方向に対して10°以下の角度を成す状態を意味する。
次に、レーザ加工装置1Aの加工対象である対象物100について説明する。対象物100は、例えば円板状に形成された半導体ウェハを含む。対象物100は、種々の材料で形成されていてもよいし、種々の形状を呈していてもよい。対象物100の第1主面100aには、機能素子(図示省略)が形成されている。機能素子は、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。
図41(a)及び(b)に示されるように、対象物100には、有効部分RR及び周縁部分EEが設定されている。有効部分RRは、取得する半導体デバイスに対応する部分である。有効部分RRは、例えば、対象物100を厚さ方向から見た場合に中央部分を含む円板状の部分である。周縁部分EEは、対象物100における有効部分RRよりも外側の領域である。周縁部分EEは、対象物100において有効部分RR以外の外縁部分である。周縁部分EEは、例えば、有効部分RRを囲う円環状のベベル部分(ベベル部)である。
対象物100には、剥離予定面としての仮想面M1が設定されている。仮想面M1は、改質領域の形成を予定する面である。仮想面M1は、対象物100のレーザ光入射面である第2主面100bと向かい合う面(すなわち、第2主面100bに対向する面)である。仮想面M1は、第1領域M1a及び第2領域M1bを含んでいる。第1領域M1aは、仮想面M1のうち有効部分RRに位置する領域である。第2領域M1bは、仮想面M1のうち周縁部分EEに位置する領域である。仮想面M1は、第2主面100bに平行な面であり、例えば円形状を呈している。仮想面M1は、仮想的な領域であり、平面に限定されず、曲面ないし3次元状の面であってもよい。有効部分RR、周縁部分EE及び仮想面M1の設定は、制御部9において行うことができる。有効部分RR、周縁部分EE及び仮想面M1は、座標指定されたものであってもよい。
対象物100には、トリミング予定ラインとしてのラインM3が設定されている。ラインM3は、改質領域の形成を予定するラインである。ラインM3は、対象物100の外縁の内側において環状に延在する。ラインM3は、例えば、円環状に延在する。ラインM3は、対象物100の内部における仮想面M1よりもレーザ光入射面とは反対側の部分にて、有効部分RRと周縁部分EEとの境界に設定されている。ラインM3の設定は、制御部9において行うことができる。ラインM3は、座標指定されたものであってもよい。
次に、レーザ加工装置1Aを用いて、対象物100にトリミング加工及び剥離加工を施し、半導体デバイスを製造(取得)する方法の一例について、説明する。以下に説明する製造方法は、トリミング加工及び剥離加工によって対象物100から取り除く除去部分(対象物100において半導体デバイスとして用いられない部分)について、リユース可能な方法である。
まず、図40に示されるように、第2主面100bをレーザ光入射面側にした状態で、支持部7に対象物100を支持させる。対象物100において機能素子が形成された第1主面100a側には、支持基板等の基板が接合されているか、或いはテープ材が貼り付けられている。
続いて、図42及び図43(a)に示されるように、対象物100にトリミング加工を施す。具体的には、ラインM3の上方にレーザ加工ヘッド10Aの集光部(第2集光部)14が位置し、且つラインM3上の位置にレーザ光L1の第1集光点P1(以下、単に「集光点P1」ともいう)が位置するように、移動機構5が支持部7を移動させると共に移動機構6がレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。そして、移動機構5が回転軸C(以下、「軸線C」ともいう)を中心線として支持部7を一定の回転速度で回転させながら、ラインM3上の位置にレーザ光L1の集光点P1を位置させた状態で、レーザ加工ヘッド10Aからレーザ光L1を出射させる。このようなレーザ光L1の照射を、集光点P1のZ方向の位置を変えて繰り返し行う。これにより、図43(b)に示されるように、剥離処理の前に、対象物100の内部における仮想面M1(図41参照)よりもレーザ光入射面とは反対側の部分に、ラインM3(図41参照)に沿って改質領域43を形成する。なお、対象物100に対するトリミング加工では、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14の光軸がZ方向に沿っており、対象物100の第2主面100bがレーザ光L1の入射面である。
続いて、図42及び図44(a)に示されるように、対象物100の有効部分RRに剥離加工を施す。具体的には、移動機構5が軸線Cを中心線として支持部7を一定の回転速度で回転させながら、レーザ加工ヘッド10Aからレーザ光L1を出射させると共に、仮想面M1の第1領域M1a(図41参照)において集光点P1が外側から内側にY方向に沿って移動するように、移動機構6がレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。これにより、図44(b)及び(c)に示されるように、対象物100の内部に、第1領域M1a(図41参照)に沿って、渦巻き状(インボリュート曲線)に延びる改質領域4を形成する。なお、対象物100の有効部分RRに対する剥離加工では、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14の光軸がZ方向に沿っており、対象物100の第2主面100bがレーザ光L1の入射面である。このように、対象物100の有効部分RRに対する剥離加工では、制御部9は、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14の光軸がZ方向に沿った状態で、有効部分RRの内部に第1領域M1aに沿って改質領域4が形成されるように、支持部7、レーザ加工ヘッド10A、及び複数の移動機構5,6を制御する。
続いて、図45及び図46に示されるように、対象物100の周縁部分EEに剥離加工を施す。具体的には、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿った状態となるように、移動機構6がレーザ加工ヘッド10Bの向きを変え、図41及び図47に示されるように、仮想面M1の第2領域M1b上の位置にレーザ光L2の集光点P2が位置するように、移動機構5が支持部7を移動させると共に移動機構6がレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。そして、移動機構5が軸線Cを中心線として支持部7を一定の回転速度で回転させながら、第2領域M1b上の位置にレーザ光L2の集光点P2を位置させた状態で、レーザ加工ヘッド10Bからレーザ光L2を出射させる。これにより、周縁部分EEの内部に、第2領域M1bに沿って改質領域4aを形成する。この改質領域4aからは、内側(すなわち、第1領域M1aに沿った改質領域4側)及び外側(すなわち、対象物100の側面EE1側)に亀裂4bが延びる。
なお、対象物100の周縁部分EEに対する剥離加工では、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿っており、対象物100の側面EE1がレーザ光L2の入射面である。図46及び図47に示されるように、側面EE1は、第1主面100a及び第2主面100bと交差する側面のうち、第1主面100a及び第2主面100bに垂直な面(第1主面100a及び第2主面100bに平行な方向から見た場合に垂直な面)である。側面EE2は、第1主面100a及び第2主面100bと交差する側面のうち、第1主面100aと側面EE1との間及び第2主面100bと側面EE1との間に形成された面取り面であり、例えば、外側に凸のラウンド状を呈している。側面EE1,側面EE2は、周縁部分EEに含まれている。本実施形態では、側面EE1,EE2は、ベベル部分を構成している。
以上のように、対象物100の周縁部分EEに対する剥離加工では、制御部9は、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿った状態で、周縁部分EEの内部に改質領域4aが形成されるように、支持部7、レーザ加工ヘッド10B、及び複数の移動機構5,6を制御する。また、制御部9は、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿った状態で、対象物100の第2主面100bに垂直な軸線Cを中心線として支持部7が回転するように、移動機構5を制御する。なお、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿った状態において、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14から出射されるレーザ光L2の偏光方向は、レーザ光L2の集光点P2が対象物100に対して移動する方向に沿っている。
続いて、図48(a)に示されるように、仮想面M1(図41参照)に渡る改質領域及び改質領域から延びる亀裂を境界として、対象物100の一部を剥離する。これと共に、ラインM3(図41参照)に沿う改質領域及び改質領域から延びる亀裂を境界として、周縁部分EEを取り除く。なお、対象物100の一部の剥離及び周縁部分EEの除去は、例えば吸着冶具を用いて実施してもよい。対象物100の一部の剥離は、支持部7上で実施してもよいし、剥離専用のエリアに移動させて実施してもよい。対象物100の一部の剥離は、エアーブロー又はテープ材を利用して実施してもよい。外部応力だけで対象物100を剥離することができない場合には、対象物100に反応するエッチング液(KOH又はTMAH等)で改質領域4,43を選択的にエッチングしてもよい。これにより、対象物100を容易に剥離することができる。支持部7を一定の回転速度で回転させたが、当該回転速度は変化させてもよい。例えば支持部7の回転速度は、改質領域4に含まれる改質スポットのピッチが一定間隔となるように変化させてもよい。
続いて、図48(b)に示されるように、対象物100の剥離面100hに対して、仕上げの研削又は砥石等の研磨材による研磨を実施する。エッチングにより対象物100を剥離している場合、当該研磨を簡略化することができる。以上の結果、半導体デバイス100kが取得される。
なお、一般的な剥離加工においては、形成される改質領域4に含まれる複数の改質スポットのピッチを密にし、剥離予定面としての仮想面M1に改質スポットを敷き詰めることで、対象物100を剥離する場合がある。この場合、加工条件としては、改質スポットから亀裂が比較的伸びない条件(例えば、レーザ光の波長が短波長(1028nm)、パルス幅が50nsec、パルスピッチが1~10μm(特に、1.5~3.5μm))が選択される。これに対し、本実施形態では、加工条件として、仮想面M1に沿って亀裂が伸びる条件を選択している。例えば仮想面M1の第1領域M1aに沿って改質領域4を形成するためのレーザ光L1の加工条件として、レーザ光L1の波長が長波長(例えば1099nm)、パルス幅が700nsecを選択している。
[作用及び効果]
レーザ加工装置1Aでは、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸が対象物100の第2主面100bに垂直な方向と交差するY方向に沿った状態で、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14からレーザ光L2が集光されつつ出射させられることにより、対象物100の周縁部分EEの内部に改質領域4aが形成される。これにより、例えば、強度向上のために対象物100の側面EE1,EE2が面取り面を含んでいるような場合にも、対象物100のうち当該側面EE1,EE2を含む周縁部分EEの内部にレーザ光L2を適切に集光させることができる。よって、レーザ加工装置1Aによれば、対象物100の周縁部分EEの内部に改質領域4aを精度良く形成することができる。
図49(a)は、対象物の周縁部分の断面写真を示す図であり、図49(b)は、図49(a)の一部を拡大した断面写真を示す図である。図49(a)及び(b)に示される例では、対象物はシリコンウェハであり、周縁部分はベベル部分である。当該ベベル部分の水平方向(シリコンウェハの主面に平行な方向)の幅は、200~300μm程度であり、当該ベベル部分を構成する側面のうちシリコンウェハの主面に垂直な面の垂直方向(シリコンウェハの主面に垂直な方向)の幅は、100μm程度であった。図49(a)及び(b)に示される例では、ベベル部分を構成する側面のうちシリコンウェハの主面に垂直な面をレーザ光入射面として、ベベル部分の外側からベベル部分の内部に水平方向に沿ってレーザ光を集光させた。その結果、周縁部分の内部に、改質領域、並びに、当該改質領域から内側及び外側に水平方向に沿って延びる亀裂が形成された。当該亀裂の延び量は、120μm程度であった。
また、レーザ加工装置1Aでは、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14の光軸が対象物100の第2主面100bに垂直なZ方向に沿った状態で、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14からレーザ光L1が集光されつつ出射させられることにより、対象物100の有効部分RRの内部に仮想面M1に沿って改質領域4が形成される。これにより、対象物100の有効部分RRの内部に仮想面M1に沿って改質領域4を精度良く形成することができる。
また、レーザ加工装置1Aでは、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿った状態で、第2主面100bに垂直な軸線Cを中心線として支持部7が回転させられて、対象物100の周縁部分EEの内部に改質領域4aが形成される。これにより、対象物100の周縁部分EEの内部に改質領域4aを効率良く形成することができる。
また、レーザ加工装置1Aでは、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がY方向に沿った状態において、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14から出射されるレーザ光L2の偏光方向が、レーザ光L2の集光点P2が対象物100に対して移動する方向に沿っている。これにより、対象物100の周縁部分EEの内部において改質領域4aから対象物100の第2主面100bに平行な方向に延びる亀裂4bの延び量を大きくすることができる。
なお、以上に説明した変形例では、例えば、移動機構5,6は、支持部7及びレーザ加工ヘッド10Aの少なくとも1つを移動させるように構成されていればよい。同様に、移動機構5,6は、支持部7及びレーザ加工ヘッド10Bの少なくとも1つを移動させるように構成されていればよい。
また、制御部9は、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸がZ方向に沿った状態で、対象物100の有効部分RRの内部に仮想面M1に沿って改質領域4が形成されるように、支持部7、レーザ加工ヘッド10B及び移動機構5,6を制御してもよい。これにより、レーザ加工ヘッド10Aと共に或いはレーザ加工ヘッド10Aに代わって、対象物100の有効部分RRの内部に仮想面M1に沿って改質領域4を精度良く形成することができる。
また、レーザ加工ヘッド10Bが、その集光部14の光軸がZ方向に沿った状態及びその集光部14の光軸がY方向に沿った状態の両方の状態で、対象物100に改質領域4を形成する場合には、レーザ加工装置1Aは、レーザ加工ヘッド10Aを備えていなくてもよい。
また、レーザ加工ヘッド10Bは、その集光部14の光軸がY方向に沿った状態で、対象物100の周縁部分EEに改質領域4aを形成することを、専用として実施するものであってもよい。その場合にも、レーザ加工装置1Aが対象物100の周縁部分EEに改質領域4aを形成することを、専用として実施するものであるときには、レーザ加工装置1Aは、レーザ加工ヘッド10Aを備えていなくてもよい。
また、レーザ加工装置1Aでは、図50に示されるように、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸が対象物100の第2主面100bに垂直な方向(すなわち、Z方向)と交差する方向のうちY方向以外の方向に沿った状態で、対象物100の周縁部分EEの内部に改質領域4aが形成されるように、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14からレーザ光L2が集光されつつ出射させられてもよい。これにより、周縁部分EEを構成する側面EE1,EE2の形状等に応じて、レーザ光L2が周縁部分EEの内部に適切に集光されるように、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸の角度を調整することができる。なお、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14の光軸が対象物100の第2主面100bに垂直な方向と交差する方向(対象物の表面に垂直な方向と交差する第1方向)は、例えば、対象物100の第2主面100bに垂直な方向に対して10~90°の角度を成す方向、又は対象物100の第2主面100bに垂直な方向に対して30~90°の角度を成す方向である。
また、上記実施形態では、対象物100の有効部分RRに剥離加工を施した後に、対象物100の周縁部分EEに剥離加工を施したが、対象物100の周縁部分EEに剥離加工を施した後に、対象物100の有効部分RRに剥離加工を施してもよい。また、上記実施形態では、対象物100の第2主面100bをレーザ光入射面としたが、対象物100の第1主面100aをレーザ光入射面としてもよい。また、レーザ加工装置1Aは、アブレーション等の加工に適用されてもよい。
また、対象物100の種類、対象物100の形状、対象物100のサイズ、対象物100が有する結晶方位の数及び方向、並びに、対象物100の主面の面方位は、特に限定されない。また、改質領域は、対象物100の内部に形成された結晶領域、再結晶領域又はゲッタリング領域等であってもよい。結晶領域は、対象物100の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、蒸発、プラズマ化又は溶融した後に再凝固する際に、単結晶又は多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域である。
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
図51~図53は、他の変形例に係るレーザ加工装置及びそれを用いて半導体デバイスを製造する方法(レーザ加工方法)を説明するための対象物の側面図である。本発明の一態様では、以下のように加工してもよい。
すなわち、まず、第2主面100bをレーザ光入射面側にした状態で、対象物100を支持する。対象物100において機能素子が形成された第1主面100a側には、支持基板等の基板が接合されているか、或いはテープ材が貼り付けられている。
続いて、図51(a)に示されるように、対象物100を一定の回転速度で回転させながら、ラインM3(図10(b)参照)上の位置に第1レーザ光L1の集光点P1を位置させた状態で第1レーザ光L1を照射する。ラインM3は、上述したように、トリミング予定ラインであって、対象物100の外縁の内側において環状に延在する。このような第1レーザ光L1の照射を、集光点P1のZ方向の位置を変えて繰り返し行う。これにより、図51(b)に示されるように、対象物100の内部における仮想面M1(図10(b)参照)よりもレーザ光入射面とは反対側の部分に、ラインM3に沿って改質領域43を形成する。仮想面M1は、上述したように、剥離予定面であって、対象物100の第2主面100bに対向する。
続いて、図52(a)に示されるように、対象物100において周縁部分(外縁のベベル部)EEを除く外周部分である第1部分NR1に、分断力弱条件(第1加工条件)で第1レーザ光L1を照射する。具体的には、対象物100を一定の回転速度で回転させながら、第1部分NR1において、仮想面M1(図10(b)参照)上でラインM3(図10(b)参照)よりも内側の位置に集光点P1を位置させ、分断力弱条件で第1レーザ光L1を照射する。これと共に、当該集光点P1を仮想面M1に沿って移動させる。これにより、第1部分NR1に仮想面M1(図10(b)参照)に沿って改質領域4aを形成する。改質領域4aからラインM3よりも外側(周縁部分EE)には、亀裂が延びていない。
分断力弱条件は、第1規定量よりも多い第2規定量のレーザ加工後の加工状態が第1スライシング状態になる条件である。なお、このとき、分断力弱条件に代えて、分断力中条件(第1加工条件)としてもよい。分断力中条件は、第2規定量のレーザ加工後の加工状態が第2スライシング状態になる条件である。
第1規定量のレーザ加工は、例えば100本未満の複数の並行ライン(並ぶように配された複数の加工用ライン)に沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合である。第1規定量のレーザ加工とは、例えば、対象物100における改質領域4を形成する領域のインデックス方向の幅が12mm未満の場合である。インデックス方向は、レーザ光入射面から見て加工用ラインの延在方向に直交する方向である。第2規定量のレーザ加工とは、例えば100本以上の複数の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合である。第2規定量のレーザ加工とは、例えば、対象物100における改質領域4を形成する領域のインデックス方向の幅が12mm以上の場合である。第1規定量及び第2規定量は特に限定されず、種々のパラメータ量であってもよい。第1規定量及び第2規定量は、例えば加工時間であってもよい。第1規定量及び第2規定量は、複数のパラメータ量の組合せであってもよい。
第1スライシング状態は、スライシングハーフカット状態である。スライシングハーフカット(SHC)状態は、改質領域4に含まれる複数の改質スポットから延びる亀裂が、加工用ラインに沿う方向(スキャン方向)に伸展する状態である。画像を取得した場合、画像においては、スライシングハーフカット状態では、改質スポットと加工用ラインに沿った染みとが確認できる。加工状態がスライシングハーフカット状態となるように加工用ラインの数を増加させることで、後述のスライシングフルカット状態に変化するが、加工条件によってスライシングフルカット状態に変化する当該加工用ラインの数が変化する。また、スライシングフルカット状態を発生させるためには、一本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合の加工状態として、スライシングハーフカット状態が必要不可欠となる。
第2スライシング状態は、スライシングフルカット状態である。スライシングフルカット(SFC)状態は、改質領域4に含まれる複数の改質スポットから延びる亀裂が、複数の加工用ラインに沿う方向及び加工用ラインと交差する方向に伸展して互いに繋がる状態である。画像を取得した場合、画像においては、スライシングフルカット状態は、改質スポットから延びる亀裂が、左右上下に伸展し、複数の加工用ラインを跨いで繋がっている状態である。スライシングフルカット状態は、画像上において改質スポットが確認できない状態(当該亀裂により形成された空間ないし隙間が確認される状態)である。スライシングフルカット状態は、複数の加工用ラインの間を跨ぐ亀裂の繋がりによって発生する状態であることから、一本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合には、発生し得ない。
続いて、図52(b)及び図52(c)に示されるように、対象物100において第1部分NR1よりも内側の第2部分NR2に、分断力強条件(第2加工条件)で第1レーザ光L1を照射させる。具体的には、対象物100を一定の回転速度で回転させながら、対象物100の中央部分である第2部分NR2において、仮想面M1(図10(b)参照)上の位置に集光点P1を位置させ、分断力強条件で第1レーザ光L1を照射する。これと共に、当該集光点P1を仮想面M1に沿って移動させる。これにより、第2部分NR2に仮想面M1(図10(b)参照)に沿って改質領域4cを形成する。改質領域4cからは、外側(すなわち、対象物100の側面側)に亀裂が積極的に伸ばされる。分断力強条件は、第1規定量のレーザ加工後の加工状態が第2スライシング状態になる条件である。
続いて、改質領域4及び/又は改質領域4の改質スポットから延びる亀裂と、改質領域43及び/又は改質領域43の改質スポットから延びる亀裂と、を境界として、対象物100の一部を剥離する(図53参照)。対象物100の一部の剥離は、例えば吸着冶具、エアーブロー及びテープ材を利用して実施してもよい。外部応力だけで対象物100を剥離することができない場合には、対象物100に反応するエッチング液(KOH又はTMAH等)で改質領域4,43を選択的にエッチングしてもよい。
以上に説明したように、他の変形例では、対象物100における第1部分NR1に第1加工条件でレーザ加工する第1加工処理と、対象物100において第1部分NR1よりも内側の第2部分NR2に第2加工条件でレーザ加工する第2加工処理と、を実行する。第1加工条件は、第2規定量のレーザ加工後の加工状態が第1スライシング状態又は第2スライシング状態になる条件であり、第2加工条件は、第1規定量のレーザ加工後の加工状態が第2スライシング状態になる条件であり、第1部分NR1は、周縁部分EEを除く部分である。このようなレーザ加工は、対象物100の一部を、図53に示されるように剥離する(対象物100において周縁部分EEを含まない一部を剥離する)場合に特に有効である。つまり、周縁部分EEに亀裂を延ばさない剥離加工を効果的に行うことができる。剥離した対象物100の一部では、周縁部分EEが含まれないことから、位置合わせ及びその他の加工が容易になる。剥離した対象物100の一部では、後段に貼り合わせ工程がある場合、その張り合わせ工程での位置合わせが容易になる。
図54(a)及び図54(b)は、レーザ光入射面から撮像ユニットIRで撮像した、仮想面M1の位置における画像である。図54(a)及び図54(b)は、複数本の加工用ラインに沿って第1レーザ光L1を照射して改質領域4を形成した場合の加工状態である。加工用ラインは、図示において左右に直線状に延びるように設定されている。図54(a)及び図54(b)は、図17(b)と同様のスライシングハーフカット(SHC)状態を示す写真図である。図54(a)及び図54(b)に示されるように、スライシングハーフカット状態は、改質領域4に含まれる複数の改質スポットSAから延びる亀裂について、途切れている領域を部分的に有していてもよい。また、スライシングハーフカット状態は、加工用ラインに沿った染みについて、未発生の領域を部分的に有していてもよい。