電力変換装置は、電力変換のための複数のパワー半導体素子を1つのパッケージに集積した半導体モジュールが用いられている。半導体モジュールは、さらに、パワー半導体素子を駆動するためのドライバや動作異常を検出して保護する機能を有する制御IC(Integrated Circuit)を備えたIPM(Intelligent Power Module)が知られている。
図9は三相交流モータを駆動するインバータ装置を構成した従来の半導体モジュールの一例を示す回路図、図10は従来の半導体モジュールの下アームの制御ICにおける過電流検出回路の接続関係を示す回路図である。
従来の半導体モジュール100は、図9に示したように、3組のハーフブリッジ回路を備え、三相のインバータ回路を構成している。この半導体モジュール100は、パワー半導体素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とこのIGBTに逆並列接続したFWD(Free Wheeling Diode)とを使用している。
半導体モジュール100において、第1のハーフブリッジ回路は、上アームにおけるU相のIGBT101およびFWD102と下アームにおけるX相のIGBT103およびFWD104とを直列に接続して構成されている。第2のハーフブリッジ回路は、上アームにおけるV相のIGBT105およびFWD106と下アームにおけるY相のIGBT107およびFWD108とを直列に接続して構成されている。第3のハーフブリッジ回路は、上アームにおけるW相のIGBT109およびFWD110と下アームにおけるZ相のIGBT111およびFWD112とを直列に接続して構成されている。
U相、V相およびW相のIGBT101,105,109のコレクタ端子は、正極電源端子P(以下、P端子という。)に接続され、X相、Y相およびZ相のIGBT103,107,111のエミッタ端子は、負極電源端子N(以下、N端子という。)に接続されている。P端子は、電源150の正極端子に接続され、N端子は、電源140の負極端子に接続されている。U相のIGBT101のエミッタ端子とX相のIGBT103のコレクタ端子との接続部は、モータ150のU相の入力端子に接続されている。V相のIGBT105のエミッタ端子とY相のIGBT107のコレクタ端子との接続部は、モータ150のV相の入力端子に接続されている。W相のIGBT109のエミッタ端子とZ相のIGBT111のコレクタ端子との接続部は、モータ150のW相の入力端子に接続されている。
IGBT101,103,105,107,109,111は、コレクタ電流に比例した電流を出力することができるセンスIGBTを内蔵し、エミッタ端子とは別にセンスエミッタ端子を備えている。IGBT101,103,105,107,109,111のゲート端子、センスエミッタ端子および補助エミッタ端子は、それぞれ制御IC113,114,115,116,117,118のOUT端子、OC端子およびGND端子に接続されている。上アームのU相、V相およびW相の制御IC113,115,117は、Vcc端子およびGND端子を有し、Vcc端子およびGND端子は、それぞれ電源119,120,121の正極端子および負極端子に接続されている。下アームのX相、Y相およびZ相の制御IC114,116,118は、Vcc端子およびGND端子を有し、Vcc端子およびGND端子は、それぞれ共通の電源122の正極端子および負極端子に接続されている。
なお、制御IC113,114,115,116,117,118のVin端子は、対応するIGBT101,103,105,107,109,111を駆動する入力信号の入力端子であり、それぞれ半導体モジュール100の図示しない入力端子に接続されている。半導体モジュール100の図示しない入力端子は、上位の制御装置に接続される。
N端子のライン(以下、Nラインという。)に見られるコイルは、X相、Y相およびZ相のIGBT103,107,111が実装されるプリント基板の電流経路における寄生インダクタンスLxp,Lyp,Lzpを示している。
制御IC113,114,115,116,117,118は、過電流検出回路をそれぞれ有している。それぞれの過電流検出回路は、対応するIGBT101,103,105,107,109,111のセンスエミッタ端子からOC端子にセンス電流を受け、主電流(コレクタ電流)があらかじめ設定した値に達したか否かを判断する。過電流検出回路が主電流の過電流状態を検出すると、制御IC113,114,115,116,117,118は、対応するIGBT101,103,105,107,109,111を停止するなどの保護動作に遷移する。
ここで、電源122の負極端子が接続されるグランドラインを共通の基準電位とした下アームにおける制御IC114,116,118は、図10に示したように、それぞれ過電流検出回路114a,116a,118aを有している。また、半導体モジュール100内では、X相のIGBT103、Y相のIGBT107およびZ相のIGBT111がこの順番にN端子から離れる方向に配置されているとする。
X相の過電流検出回路114aは、電流センス抵抗123と、基準電圧源124と、比較器125とを有している。制御IC114のOC端子は、電流センス抵抗123の一方の端子と比較器125の反転入力端子とに接続され、電流センス抵抗123の他方の端子は、GND端子に接続されている。基準電圧源124の正極端子は、比較器125の非反転入力端子に接続され、基準電圧源124の負極端子は、GND端子に接続されている。比較器125の出力端子は、制御IC114の図示しない保護回路に接続されている。
Y相の過電流検出回路116aは、電流センス抵抗126と、基準電圧源127と、比較器128とを有している。制御IC116のOC端子は、電流センス抵抗126の一方の端子と比較器128の反転入力端子とに接続され、電流センス抵抗126の他方の端子は、GND端子に接続されている。基準電圧源127の正極端子は、比較器128の非反転入力端子に接続され、基準電圧源127の負極端子は、GND端子に接続されている。比較器128の出力端子は、制御IC116の図示しない保護回路に接続されている。
Z相の過電流検出回路118aは、電流センス抵抗129と、基準電圧源130と、比較器131とを有している。制御IC118のOC端子は、電流センス抵抗129の一方の端子と比較器131の反転入力端子とに接続され、電流センス抵抗129の他方の端子は、GND端子に接続されている。基準電圧源130の正極端子は、比較器131の非反転入力端子に接続され、基準電圧源130の負極端子は、GND端子に接続されている。比較器131の出力端子は、制御IC118の図示しない保護回路に接続されている。
以上の過電流検出回路114a,116a,118aにおいて、IGBT103,107,111がターンオンされると、コレクタ電流は、それぞれのエミッタ端子EからNラインを介してN端子に流れる。このとき、OC端子には、IGBT103,107,111のセンスエミッタ端子からコレクタ電流に比例したセンス電流が供給される。このセンス電流は、電流センス抵抗123,126,129を流れることによって電圧に変換され電流検出信号Vsenseとなる。この電流検出信号Vsenseは、比較器125,128,131によって基準電圧源124,127,130の基準電圧と比較される。電流検出信号Vsenseが基準電圧源124,127,130の基準電圧に達していない通常時では、比較器125,128,131は、ハイ(H)レベルの保護動作信号を出力する。電流検出信号Vsenseが基準電圧源124,127,130の基準電圧以上に上昇する異常時では、比較器125,128,131は、ロー(L)レベルの保護動作信号を出力する。
X相のIGBT103がターンオンしたときのコレクタ電流は、そのエミッタ端子EからNラインを通ってN端子に流れる。このとき、Nラインの寄生インダクタンスLxpの作用によりN端子から見たエミッタ端子Eの電位が上昇する。また、Y相のIGBT107がターンオンしたとき、コレクタ電流は、そのエミッタ端子EからNラインを通ってN端子に流れるので、Nラインの寄生インダクタンスLyp,Lxpの作用によりN端子から見たエミッタ端子Eの電位が上昇する。同様に、Z相のIGBT111がターンオンしたとき、コレクタ電流は、そのエミッタ端子EからNラインを通ってN端子に流れるので、Nラインの寄生インダクタンスLzp,Lyp,Lxpの作用によりN端子から見たエミッタ端子Eの電位が上昇する。これらの電位の上昇は、補助エミッタ端子EEを介して制御IC114,116,118のGND端子に伝えられるので、制御IC114,116,118のグランド電位が上昇する。このグランド電位が上昇すると、電流検出信号Vsenseが変化する。この電流検出信号Vsenseの変化は、N端子からの距離が近いX相の過電流検出回路114aが小さく、N端子からの距離が遠いZ相の過電流検出回路118aが大きくなる。
このように、半導体モジュール100内で配置されるIGBT103,107,111の位置によって、検出される電流検出信号Vsenseの値にばらつきが生じることになる。特に、三相のインバータ回路を構成している半導体モジュール100では、すべての相で同じ特性を有していることが望まれる。
過電流検出回路114a,116a,118aにあるようなばらつきに対して、過電流判定を同じになるように補正する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の技術によれば、電流検出信号と比較される基準電圧を可変できる構成とし、基準電圧を、コレクタ電流が過電状態に達したときの電流検出信号の電圧に設定している。
以下、本発明の実施の形態について、電源端子がパッケージの両側に設けられた三相交流モータ用の半導体モジュールに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一の符号で示される部分は、同一の構成要素を示し、端子名とその端子における電圧、信号などは、同じ符号を用いることがある。
図1は本発明の実施の形態に係る半導体モジュールの構成例を示した回路図である。
図1に示した本発明の半導体モジュール10は、基本的には、図9に示した従来の構成と同じである。すなわち、半導体モジュール10は、U相のIGBT11およびFWD12とX相のIGBT13およびFWD14とを直列に接続した第1のハーフブリッジ回路を有している。第2のハーフブリッジ回路は、V相のIGBT15およびFWD16とY相のIGBT17およびFWD18とを直列に接続して構成されている。第3のハーフブリッジ回路は、W相のIGBT19およびFWD20とZ相のIGBT21およびFWD22とを直列に接続して構成されている。
IGBT11,13,15,17,19,21は、それぞれ制御IC23,24,25,26,27,28によって駆動するよう接続されている。上アームのU相、V相およびW相の制御IC23,25,27は、電源29,30,31によってそれぞれ給電され、下アームのX相、Y相およびZ相の制御IC24,26,28は、共通の電源32によって給電される。
第1のハーフブリッジ回路の出力は、モータ1のU相の入力端子に接続され、第2のハーフブリッジ回路の出力は、モータ1のV相の入力端子に接続され、第3のハーフブリッジ回路の出力は、モータ1のW相の入力端子に接続されている。
IGBT11,13,15,17,19,21は、また、センスIGBTを内蔵し、それらのセンスエミッタ端子は、それぞれ制御IC23,24,25,26,27,28が有する過電流検出回路のOC端子に接続されている。
この半導体モジュール10は、さらに、外部の電源2を接続するP端子およびN端子を有している。半導体モジュール10の内部では、P端子は、正極の電源ラインを介して上アームのIGBT11,15,19のコレクタ端子に接続され、N端子は、負極のNラインを介して下アームのIGBT13,17,21のエミッタ端子に接続されている。図示の例では、X相、Y相およびZ相のIGBT13,17,21がN端子からNラインに沿ってこの順に配置されているとする。このため、Nラインでは、N端子とX相のIGBT13のエミッタ端子との間におけるプリント基板の配線の寄生インダクタンスLxpが存在する。N端子とY相のIGBT17のエミッタ端子との間のNラインには、寄生インダクタンスLxp,Lypが存在し、N端子とZ相のIGBT21のエミッタ端子との間のNラインには、寄生インダクタンスLxp,Lyp,Lzpが存在する。
下アームの制御IC24,26,28は、また、それぞれPh1端子およびPh2端子を有し、そのPh1端子およびPh2端子のグランドラインへの接続の仕方によって、X相、Y相およびZ相のいずれであるかを識別している。図示の例では、制御IC24は、Ph1端子およびPh2端子のいずれもグランドラインへ接続されていないので、X相であると識別する。制御IC26は、Ph1端子がグランドラインへ接続されているので、Y相であると識別し、制御IC28は、Ph2端子がグランドラインへ接続されているので、Z相であると識別する。
次に、下アームの制御IC24,26,28がX相、Y相およびZ相のどれかという識別結果に基づいて、過電流検出回路で行われる基準電圧および電流センス抵抗の補正動作について順次説明する。
図2は第1の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御ICの過電流検出回路の一例を示す回路図である。なお、下アームの制御IC24,26,28の過電流検出回路は、同じ回路構成を有しているので、図2では、代表して、X相の制御IC24について説明する。
第1の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御IC24の過電流検出回路は、OC端子にIGBT13のセンスエミッタ端子から供給されるセンス電流を受けて電流検出信号Vsenseに変換する電流センス抵抗Rsを有している。過電流検出回路は、また、過電流検出用の比較器40と、比較器40の基準電圧を生成するために、相識別回路50および可変基準電圧回路60を備えている。
相識別回路50は、抵抗R1,R2と、インバータ回路51,52と、アンド回路53,54,55とを有している。抵抗R1,R2の一方の端子は、Vdd電源のラインに接続され、抵抗R1の他方の端子は、制御IC24のPh1端子に接続され、抵抗R2の他方の端子は、制御IC24のPh2端子に接続されている。Ph1端子は、また、インバータ回路52の入力端子とアンド回路53,55の一方の入力端子とに接続されている。Ph2端子は、また、インバータ回路51の入力端子とアンド回路54の一方の入力端子とアンド回路55の他方の入力端子とに接続されている。インバータ回路51の出力端子は、アンド回路53の他方の入力端子に接続され、インバータ回路52の出力端子は、アンド回路54の他方の入力端子に接続されている。アンド回路53の出力端子は、識別信号Sizを出力し、アンド回路54の出力端子は、識別信号Siyを出力し、アンド回路55の出力端子は、識別信号Sixを出力する。
可変基準電圧回路60は、抵抗R11,R12,R13,R14と、トランスミッションゲート61,62,63とを有している。抵抗R11の一方の端子は、Vdd電源のラインに接続され、抵抗R11の他方の端子は、抵抗R12の一方の端子とトランスミッションゲート63の入力端子とに接続されている。抵抗R12の他方の端子は、抵抗R13の一方の端子とトランスミッションゲート62の入力端子とに接続されている。抵抗R13の他方の端子は、抵抗R14の一方の端子とトランスミッションゲート61の入力端子とに接続され、抵抗R14の他方の端子は、グランドラインに接続されている。トランスミッションゲート61,62,63の出力端子は、比較器40の非反転入力端子に接続されている。トランスミッションゲート61,62,63の制御入力端子には、相識別回路50が出力する識別信号Six,Siy,Sizが入力される。
ここで、相識別回路50のPh1端子およびPh2端子は、X相の制御IC24については、図1に示したように、いずれもグランドラインに接続されていないので、Hレベルになっている。このため、Ph1端子およびPh2端子のHレベルを両入力端子に受けるアンド回路55のみがHレベルの識別信号Sixを出力する。
なお、Y相の制御IC26では、Ph1端子のみがグランドラインに接続されているので、Ph1端子がLレベル、Ph2端子がHレベルになっている。このとき、アンド回路54のみ両入力端子にHレベルが入力されるので、アンド回路54は、Hレベルの識別信号Siyを出力することになる。Z相の制御IC28では、Ph2端子のみがグランドラインに接続されているので、Ph1端子がHレベル、Ph2端子がLレベルになっている。このとき、アンド回路53のみ両入力端子にHレベルが入力されるので、アンド回路53は、Hレベルの識別信号Sizを出力することになる。
X相の制御IC24では、相識別回路50は、Hレベルの識別信号Sixを出力しているので、可変基準電圧回路60では、識別信号Sixを受けるトランスミッションゲート61が導通制御される。このとき、他の識別信号Siy,Sizは、Lレベルであるため、識別信号Siy,Sizを受けるトランスミッションゲート72,71は、非導通制御される。この結果、可変基準電圧回路60は、電圧Vddを抵抗R11-R13と抵抗R14とで分圧した電圧Vref1が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に与えられる。
なお、Y相の制御IC26では、相識別回路50は、識別信号Siyを出力するので、可変基準電圧回路60では、トランスミッションゲート62が導通制御される。このため、可変基準電圧回路60は、電圧Vddを抵抗R11,R12と抵抗R13,R14とで分圧した電圧Vref2が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に与えられる。
同様に、Z相の制御IC28では、相識別回路50は、識別信号Sizを出力するので、可変基準電圧回路60では、トランスミッションゲート63が導通制御される。このため、可変基準電圧回路60は、電圧Vddを抵抗R11と抵抗R12-R14とで分圧した電圧Vref3が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に与えられる。
以上のように、X相の過電流検出回路では、N端子に最も近いIGBT13がターンオンしたときのエミッタ電位の上昇が最も少ないので比較器40の基準電圧も最も小さな電圧Vref1に設定している。同様に、Y相およびZ相の過電流検出回路では、IGBT17,21のエミッタ電位の上昇が順次大きくなるのに応じて比較器40の基準電圧も順次大きな電圧Vref2,Vref3に設定している。このため、X相、Y相およびZ相の過電流検出回路は、同じ電流値で過電流状態を検出することになる。
図3は第2の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御ICの過電流検出回路の一例を示す回路図である。第2の実施の形態の過電流検出回路は、第1の実施の形態の過電流検出回路が比較器40に印加する基準電圧を相ごとに変更していたのに対し、比較器40に印加する電流検出信号Vsenseを相ごとに変更している。なお、図3では、第2の実施の形態のX相の制御IC24aを示し、Y相およびZ相の制御ICについては、このX相の制御IC24aを参照して説明する。
第2の実施の形態の過電流検出回路は、過電流検出用の比較器40とその過電流検出閾値の電圧を出力する基準電圧源41とを有している。過電流検出回路は、また、OC端子にIGBT13のセンスエミッタ端子から供給されるセンス電流を電流検出信号Vsenseに変換する可変抵抗回路70と相識別回路50とを備えている。なお、相識別回路50は、図2に示したものと同じであるため、ここでは、その詳細な説明は省略する。
可変抵抗回路70は、電流センス抵抗Rs1,Rs2,Rs3とトランスミッションゲート71,72,73とを有している。電流センス抵抗Rs1の一方の端子は、OC端子とトランスミッションゲート71の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs1の他方の端子は、電流センス抵抗Rs2の一方の端子とトランスミッションゲート72の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs2の他方の端子は、電流センス抵抗Rs3の一方の端子とトランスミッションゲート73の入力端子とに接続され、電流センス抵抗Rs3の他方の端子は、グランドラインに接続されている。トランスミッションゲート71,72,73の出力端子は、比較器40の反転入力端子に接続されている。
X相の制御IC24aでは、相識別回路50は、Hレベルの識別信号Sixを出力しているので、可変抵抗回路70では、トランスミッションゲート71が導通制御されている。このとき、他の識別信号Siy,Sizは、Lレベルであるため、トランスミッションゲート72,73は非導通である。
したがって、電流センス抵抗Rs1,Rs2,Rs3により電圧に変換された電流検出信号Vsenseは、分圧比がゼロで減衰されることなく比較器40の反転入力端子に供給される。
このとき、Y相の制御IC26の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Siyを出力しているので、可変抵抗回路70では、トランスミッションゲート72が導通制御される。これにより、可変抵抗回路70では、電流センス抵抗Rs1-Rs3により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1と電流センス抵抗Rs2,Rs3との分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
Z相の制御IC28の過電流検出回路では、相識別回路50がHレベルの識別信号Sizを出力しているので、可変抵抗回路70では、トランスミッションゲート73が導通制御される。これにより、可変抵抗回路70では、電流センス抵抗Rs1-Rs3により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1,Rs2と電流センス抵抗Rs3とによる分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
このように、IGBT13,17,21がターンオンすることでエミッタ端子の電位がばらばらに上昇するが、その上昇分を可変抵抗回路70で補正したことにより、それぞれの過電流検出回路は、同じ電流値で過電流状態を検出することになる。
以上の半導体モジュール10は、外部の電源2を接続するためのP端子およびN端子がパッケージの片側の辺に備えたものであるが、次に、外部の電源2を接続するための電源端子がパッケージの対向する両側に備えた半導体モジュールへの適用について説明する。この場合、外部の電源2を一方の側の電源端子に接続した場合と他方の側の電源端子に接続した場合とで、電源2を接続した電源端子から見たX相、Y相およびZ相のIGBT13,17,21までの距離が変化することになる。
図4は本発明の実施の形態に係る半導体モジュールの別の構成例を示した回路図である。
図4に示した半導体モジュール10aは、パッケージの一方の側(図の左側)に正極電源端子P1(以下、P1端子という。)および負極電源端子N1(以下、N1端子という。)が設けられている。パッケージの図の右側には、正極電源端子P2(以下、P2端子という。)および負極電源端子N2(以下、N2端子という。)が設けられている。
半導体モジュール10aの内部では、P1端子とP2端子とがラインによって接続され、N1端子とN2端子とがNラインによって接続されている。N1端子とN2端子との間では、N1端子からNラインに沿ってX相、Y相およびZ相のIGBT13,17,21がこの順に配置されているとする。このため、Nラインでは、N1端子とX相のIGBT13のエミッタ端子との間にプリント基板の配線の寄生インダクタンスLxpが存在する。N1端子とY相のIGBT17のエミッタ端子との間のNラインには、寄生インダクタンスLxp,Lypが存在し、N1端子とZ相のIGBT21のエミッタ端子との間のNラインには、寄生インダクタンスLxp,Lyp,Lzpが存在する。
半導体モジュール10aは、また、P1端子のある側にP3端子(電源接続端子)を備えている。このP3端子は、電源2をP1端子およびN1端子に接続するときに、電源2の正極端子が接続される端子である。したがって、このP3端子は、電源2を反対側のP2端子およびN2端子に接続するときには、何も接続されない。
P3端子は、抵抗R21の一方の端子に接続され、抵抗R21の他方の端子は、抵抗R22の一方の端子に接続され、抵抗R22の他方の端子は、N1端子が接続されたNラインに接続されている。抵抗R21および抵抗R22の共通の接続部は、下アームの制御IC33,34,35のVp3端子に接続されている。これにより、制御IC33,34,35は、抵抗R21および抵抗R22の分圧回路から電源2の電圧を分圧した電圧Vp3を受けたとき、電源2がP1端子およびN1端子に接続されていると判断する。
下アームの制御IC33,34,35は、自身がX相、Y相およびZ相のいずれであるかを識別するPh1端子およびPh2端子を有している。図示の例では、制御IC33は、Ph1端子およびPh2端子のいずれもグランドラインへ接続していないので、X相であると識別する。制御IC34は、Ph1端子がグランドラインへ接続しているので、Y相であると識別し、制御IC35は、Ph2端子がグランドラインへ接続しているので、Z相であると識別する。
次に、電源2がP1端子およびN1端子に接続したかP2端子およびN2端子に接続したかという条件と、下アームの制御IC33,34,35がX相、Y相およびZ相のどれかという条件とに基づいて、過電流検出回路で行われる動作について説明する。
図5は第3の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御ICの過電流検出回路の一例を示す回路図である。なお、この図5において、図2に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。また、下アームの制御IC33,34,35の過電流検出回路は、同じ回路構成を有しているので、図5では、代表して、X相の制御IC33について説明する。なお、第3の実施の形態に係る半導体モジュールでは、Y相のIGBT17がX相のIGBT13寄りに配置されており、したがって、電源2がP1端子に接続した場合とP2端子に接続した場合とでも、過電流検出回路の検出ばらつきがあるものとしている。
第3の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御IC33の過電流検出回路は、OC端子にIGBT13のセンスエミッタ端子から供給されるセンス電流を受けて電流検出信号Vsenseに変換する電流センス抵抗Rsと過電流検出用の比較器40とを有している。過電流検出回路は、また、比較器40の基準電圧を生成するために、相識別回路50、可変基準電圧回路60a、電源接続端子電圧検出回路80および選択信号生成回路90を備えている。
電源接続端子電圧検出回路80は、抵抗R31,R32と比較器81とを有している。抵抗R31の一方の端子は、Vdd電源のラインに接続され、抵抗R31の他方の端子は、抵抗R32の一方の端子と比較器81の反転入力端子とに接続されている。抵抗R32の他方の端子は、グランドラインに接続されている。比較器81の非反転入力端子は、制御IC33のVp3端子に接続され、Vp3端子は、外部の電源2の電圧を分圧する抵抗R1および抵抗R2の接続点に接続されている。
選択信号生成回路90は、インバータ回路91と、アンド回路92-97と、オア回路98,99とを有している。インバータ回路91の入力端子は、電源接続端子電圧検出回路80の比較器81の出力端子と、アンド回路92-94の一方の入力端子とに接続され、インバータ回路91の出力端子は、アンド回路95-97の一方の入力端子に接続されている。アンド回路92,95の他方の入力端子は、相識別回路50のアンド回路53の出力端子に接続され、アンド回路93,96の他方の入力端子は、相識別回路50のアンド回路54の出力端子に接続され、アンド回路94,97の他方の入力端子は、相識別回路50のアンド回路55の出力端子に接続されている。オア回路98の一方の入力端子は、アンド回路94の出力端子に接続され、オア回路98の他方の入力端子は、アンド回路95の出力端子に接続されている。オア回路99の一方の入力端子は、アンド回路92の出力端子に接続され、オア回路99の他方の入力端子は、アンド回路97の出力端子に接続されている。オア回路99の出力端子は、選択信号SHを出力し、アンド回路96の出力端子は、選択信号SM1を出力し、オア回路98の出力端子は、選択信号SLを出力し、アンド回路93の出力端子は、選択信号SM2を出力する。
可変基準電圧回路60aは、抵抗R11,R12,R13,R14,R15と、トランスミッションゲート61,62,63,64とを有している。抵抗R11の一方の端子は、Vdd電源のラインに接続され、抵抗R11の他方の端子は、抵抗R12の一方の端子とトランスミッションゲート64の入力端子とに接続されている。抵抗R12の他方の端子は、抵抗R13の一方の端子とトランスミッションゲート63の入力端子とに接続されている。抵抗R13の他方の端子は、抵抗R14の一方の端子とトランスミッションゲート62の入力端子とに接続されている。抵抗R14の他方の端子は、抵抗R15の一方の端子とトランスミッションゲート61の入力端子とに接続され、抵抗R15の他方の端子は、グランドラインに接続されている。トランスミッションゲート61,62,63,64の出力端子は、比較器40の非反転入力端子に接続されている。トランスミッションゲート61,62,63,64の制御入力端子には、選択信号生成回路90が出力する選択信号SL,SM2,SM1,SHが入力される。
ここで、図4に示したように、半導体モジュール10aのP3端子に電源2の正極端子が接続されていると、電源接続端子電圧検出回路80には、電源2の電圧を分圧した所定の値の電圧Vp3が入力される。この電圧Vp3は、抵抗R31,R32によって出力される基準電圧よりも高くしてあるので、比較器81は、Hレベルの信号を出力する。一方、半導体モジュール10aのP3端子に電源2の正極端子が接続されていないと、電源接続端子電圧検出回路80には、ほぼグランドレベルの電圧Vp3が入力される。このとき、比較器81は、Lレベルの信号を出力する。
相識別回路50は、X相の制御IC33の場合、Hレベルの識別信号Sixを出力する。なお、Y相の制御IC34の場合、相識別回路50は、Hレベルの識別信号Siyを出力し、Z相の制御IC35の場合、相識別回路50は、Hレベルの識別信号Sizを出力する。
ここで、電源接続端子電圧検出回路80がHレベルの信号を出力し、相識別回路50がHレベルの識別信号Sixを出力すると、選択信号生成回路90では、アンド回路94のみHレベルの信号を出力する。このアンド回路94が出力するHレベルの信号は、オア回路98に入力され、オア回路98は、Hレベルの選択信号SLを出力し、可変基準電圧回路60aのトランスミッションゲート61を導通制御する。このとき、他の識別信号Siy,Sizは、Lレベルであるため、アンド回路92,93は、Lレベルの信号を出力し、アンド回路95,96,97も一方の入力端子にインバータ回路91のLレベルの信号を受けていてLレベルの信号を出力している。このため、アンド回路93,96およびオア回路99は、Lレベルの選択信号SM2,SM1,SHを出力するので、制御入力端子にLレベルの選択信号SM2,SM1,SHを受けるトランスミッションゲート62,63,64は、非導通制御される。この結果、可変基準電圧回路60aは、電圧Vddを抵抗R11-R14と抵抗R15とで分圧した電圧Vref1が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に与えられる。
なお、Y相の制御IC34では、相識別回路50は、識別信号Siyを出力するので、選択信号生成回路90は、アンド回路93がHレベルの選択信号SM2を出力する。これにより、可変基準電圧回路60aは、電圧Vddを抵抗R11-R13と抵抗R14,R15とで分圧した電圧Vref2が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に与えられる。Z相の制御IC35では、相識別回路50は、識別信号Sizを出力するので、選択信号生成回路90は、アンド回路92がHレベルの信号を出力し、オア回路99がHレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変基準電圧回路60aは、電圧Vddを抵抗R11と抵抗R12-R15とで分圧した電圧Vref4が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に与えられる。
以上のように、X相の過電流検出回路では、IGBT13のエミッタ電位の上昇が少ないのに応じて比較器40の基準電圧も小さな電圧Vref1に設定している。同様に、Y相およびZ相の過電流検出回路では、IGBT17,21のエミッタ電位の上昇が順次大きくなるのに応じて比較器40の基準電圧も順次大きな電圧Vref2,Vref4に設定している。このため、X相、Y相およびZ相の過電流検出回路は、同じ電流値で過電流状態を検出することになる。
次に、半導体モジュール10aのP2端子およびN2端子に電源2を接続し、P3端子には何も接続していない場合、電源接続端子電圧検出回路80には、0ボルト(V)の電圧Vp3が入力されるので、比較器81は、Lレベルの信号を出力する。このとき、選択信号生成回路90では、Lレベルの信号を受けてインバータ回路91がHレベルの信号を出力し、アンド回路95-97は、一方の入力端子にHレベルの信号を入力するので、他方の入力端子に応じた論理レベルの出力信号を出力することになる。
すなわち、選択信号生成回路90は、相識別回路50からHレベルの識別信号Sixを受けると、アンド回路97がHレベルの信号を出力し、オア回路99がHレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変基準電圧回路60aは、トランスミッションゲート64が導通制御されて、電圧Vref4が基準電圧として設定される。また、選択信号生成回路90が相識別回路50からHレベルの識別信号Siyを受けると、アンド回路96がHレベルの選択信号SM1を出力する。これにより、可変基準電圧回路60aは、トランスミッションゲート63が導通制御されて、電圧Vref3が基準電圧として設定される。選択信号生成回路90が相識別回路50からHレベルの識別信号Sizを受けると、アンド回路95がHレベルの信号を出力し、オア回路98がHレベルの選択信号SLを出力する。これにより、可変基準電圧回路60aは、トランスミッションゲート61が導通制御されて、電圧Vref1が基準電圧として設定される。
半導体モジュール10aのP2端子およびN2端子に電源2を接続した場合、N2端子に近いZ相のIGBT21のエミッタ電位の上昇が小さく、N2端子から最も遠いX相のIGBT13のエミッタ電位の上昇が大きい。この場合、可変基準電圧回路60は、基準電圧をZ相、Y相およびX相の順に大きくなるよう設定したことで、X相、Y相およびZ相の過電流検出回路は、同じ電流値で過電流状態を検出することになる。なお、Y相のIGBT17がX相のIGBT13寄りに配置されているとして説明したが、Y相のIGBT17がZ相のIGBT21寄りに配置されている場合、Y相の制御IC34では、選択信号生成回路90は、アンド回路93がHレベルの選択信号SM2を出力するよう変更すればよい。
図6は第4の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御ICの過電流検出回路の一例を示す回路図である。第4の実施の形態の過電流検出回路は、第2の実施の形態の過電流検出回路が比較器40に印加する基準電圧を変えていたのに対し、比較器40に印加する電流検出信号Vsenseを変えている。なお、この図6において、図3および図5に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。この図6においても、第4の実施の形態のX相の制御IC33aを示し、Y相およびZ相の制御ICについては、このX相の制御IC33aを参照して説明する。
第4の実施の形態の過電流検出回路は、過電流検出用の比較器40とその過電流検出閾値の電圧を出力する基準電圧源41とを有している。過電流検出回路は、また、OC端子にIGBT13のセンスエミッタ端子から供給されるセンス電流を電流検出信号Vsenseに変換する可変抵抗回路70aを備えている。
可変抵抗回路70aは、電流センス抵抗Rs1,Rs2,Rs3,Rs4と、トランスミッションゲート71,72,73,74とを有している。電流センス抵抗Rs1の一方の端子は、OC端子とトランスミッションゲート71の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs1の他方の端子は、電流センス抵抗Rs2の一方の端子とトランスミッションゲート72の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs2の他方の端子は、電流センス抵抗Rs3の一方の端子とトランスミッションゲート73の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs3の他方の端子は、電流センス抵抗Rs4の一方の端子とトランスミッションゲート74の入力端子とに接続され、電流センス抵抗Rs4の他方の端子は、グランドラインに接続されている。トランスミッションゲート71,72,73,74の出力端子は、比較器40の反転入力端子に接続されている。
ここで、半導体モジュール10aのP3端子に電源2の正極端子が接続されている場合について説明する。このとき、N1端子に距離的に近いX相のIGBT13のエミッタ端子で電位の上昇が最も小さく、Z相のIGBT21のエミッタ端子で電位の上昇が最も大きくなる。P3端子に電源2が接続されている場合、電源接続端子電圧検出回路80の比較器81は、Hレベルの信号を出力している。
相識別回路50では、X相の制御IC33aのPh1端子およびPh2端子がHレベルになっているので、アンド回路55は、Hレベルの識別信号Sixを出力し、識別信号Siy,Sizは、Lレベルになっている。
このため、選択信号生成回路90では、アンド回路94がHレベルの信号を出力し、オア回路98がHレベルの選択信号SLを出力し、可変抵抗回路70aのトランスミッションゲート71を導通制御する。このとき、他の識別信号Siy,Sizは、Lレベルであるため、選択信号生成回路90のアンド回路93,96およびオア回路99が出力する選択信号SM2,SM1,SHは、Lレベルであり、トランスミッションゲート72,73,74は非導通である。
したがって、電流センス抵抗Rs1,Rs2,Rs3,Rs4により電圧に変換された電流検出信号Vsenseは、分圧比がゼロで減衰されることなく比較器40の反転入力端子に供給される。
このとき、Y相の制御IC34の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Siyを出力しているので、選択信号生成回路90は、アンド回路93がHレベルの選択信号SM2を出力し、可変抵抗回路70aでは、トランスミッションゲート72が導通制御される。これにより、可変抵抗回路70aでは、電流センス抵抗Rs1-Rs4により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1と電流センス抵抗Rs2-Rs4との分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
Z相の制御IC35の過電流検出回路では、相識別回路50がHレベルの識別信号Sizを出力しているので、選択信号生成回路90は、アンド回路92がHレベルの信号を出力し、オア回路99がHレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変抵抗回路70aでは、トランスミッションゲート74が導通制御されるので、電流センス抵抗Rs1-Rs4により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1-Rs3と電流センス抵抗Rs4とによる分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
以上のように、N1端子からの距離が最も近いX相の過電流検出回路では、IGBT13のエミッタ電位の上昇が少ないのに応じて比較器40に供給される電流検出信号Vsenseの分圧比をゼロに設定している。N1端子からの距離が順次遠くなるY相およびZ相の過電流検出回路では、電流検出信号Vsenseの分圧比を順次大きく設定している。このため、X相、Y相およびZ相の過電流検出回路は、同じ電流値で過電流状態を検出することになる。
次に、半導体モジュール10aのP2端子およびN2端子に電源2が接続されている場合について説明する。このとき、N2端子に距離的に近いZ相のIGBT21のエミッタ端子で電位の上昇が最も小さく、X相のIGBT13のエミッタ端子で電位の上昇が最も大きくなる。P3端子には電源2が接続されないので、電源接続端子電圧検出回路80の比較器81は、Lレベルの信号を出力して、選択信号生成回路90のアンド回路92-94を無効にし、アンド回路95-97を有効にする。
このため、選択信号生成回路90は、相識別回路50から識別信号Sixが入力されると、アンド回路97がHレベルの信号を出力し、オア回路99がHレベルの選択信号SHを出力し、可変抵抗回路70aのトランスミッションゲート74を導通制御する。これにより、可変抵抗回路70aでは、電流センス抵抗Rs1-Rs4により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1-Rs3と電流センス抵抗Rs4との分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
このとき、Y相の制御IC34の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Siyを出力しているので、選択信号生成回路90では、アンド回路96がHレベルの選択信号SM1を出力し、可変抵抗回路70aでは、トランスミッションゲート73が導通制御される。これにより、可変抵抗回路70aでは、電流センス抵抗Rs1-Rs4により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1,Rs2と電流センス抵抗Rs3,Rs4との分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
Z相の制御IC35の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Sizを出力しているので、選択信号生成回路90は、アンド回路95がHレベルの信号を出力し、オア回路98がHレベルの選択信号SLを出力し、可変抵抗回路70aでは、トランスミッションゲート71が導通制御される。これにより、電流センス抵抗Rs1-Rs4により電圧に変換された電流検出信号Vsenseは、減衰されることなく比較器40の反転入力端子に供給されることになる。
図7は第5の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御ICの過電流検出回路の一例を示す回路図である。第5の実施の形態の過電流検出回路は、電源2がP1端子に接続した場合とP2端子に接続した場合とに応じて比較器40に印加する基準電圧をX相およびZ相のみ可変するものである。なお、この図7において、図5に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。この図7では、第5の実施の形態のX相の制御IC33bを示し、Y相およびZ相の制御ICについては、このX相の制御IC33bを参照して説明する。
第5の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御IC33bでは、第3の実施の形態に係る半導体モジュールの選択信号生成回路90および可変基準電圧回路60aを簡略化した選択信号生成回路90aおよび可変基準電圧回路60bを備えている。
選択信号生成回路90aにおいて、インバータ回路91の入力端子は、電源接続端子電圧検出回路80の出力端子とアンド回路92,94の一方の入力端子とに接続され、インバータ回路91の出力端子は、アンド回路95,97の一方の入力端子に接続されている。アンド回路92,95の他方の入力端子は、相識別回路50のアンド回路53の出力端子に接続され、アンド回路94,97の他方の入力端子は、相識別回路50のアンド回路55の出力端子に接続されている。オア回路98の一方の入力端子は、アンド回路94の出力端子に接続され、オア回路98の他方の入力端子は、アンド回路55の出力端子に接続されている。オア回路99の一方の入力端子は、アンド回路92の出力端子に接続され、オア回路99の他方の入力端子は、アンド回路97の出力端子に接続されている。オア回路99の出力端子は、選択信号SHを出力し、オア回路98の出力端子は、選択信号SLを出力する。
可変基準電圧回路60bは、抵抗R11,R12,R13,R14と、トランスミッションゲート61,62,63とを有している。抵抗R11の一方の端子は、Vdd電源のラインに接続され、抵抗R11の他方の端子は、抵抗R12の一方の端子とトランスミッションゲート63の入力端子とに接続されている。抵抗R12の他方の端子は、抵抗R13の一方の端子とトランスミッションゲート62の入力端子とに接続されている。抵抗R13の他方の端子は、抵抗R14の一方の端子とトランスミッションゲート61の入力端子とに接続され、抵抗R14の他方の端子は、グランドラインに接続されている。トランスミッションゲート61,62,63の出力端子は、比較器40の非反転入力端子に接続されている。トランスミッションゲート63の制御入力端子には、選択信号生成回路90が出力する選択信号SHが入力される。トランスミッションゲート62の制御入力端子には、相識別回路50が出力する識別信号Siyが入力される。トランスミッションゲート61の制御入力端子には、選択信号生成回路90が出力する選択信号SLが入力される。
ここで、半導体モジュール10aのP3端子に電源2の正極端子が接続されていて、電源接続端子電圧検出回路80には、電源2の電圧を分圧した所定の値の電圧Vp3が入力されるとする。この場合、電源接続端子電圧検出回路80は、Hレベルの信号を出力している。
ここで、相識別回路50がHレベルの識別信号Sixを出力すると、選択信号生成回路90aは、アンド回路94のみHレベルの信号を出力し、オア回路98がHレベルの選択信号SLを出力し、可変基準電圧回路60bのトランスミッションゲート61を導通制御する。このため、可変基準電圧回路60bは、電圧Vddを抵抗R11-R13と抵抗R13とで分圧した電圧Vref11が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に供給される。
なお、Y相の制御IC34では、相識別回路50が識別信号Siyを出力し、この識別信号Siyがトランスミッションゲート62を導通制御する。これにより、可変基準電圧回路60bは、電圧Vddを抵抗R11,R12と抵抗R13,R14とで分圧した電圧Vref12が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に供給される。Z相の制御IC35では、相識別回路50が識別信号Sizを出力するので、選択信号生成回路90aは、アンド回路92がHレベルの信号を出力し、オア回路99がHレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変基準電圧回路60bは、トランスミッションゲート63が導通制御され、電圧Vddを抵抗R11と抵抗R12-R13とで分圧した電圧Vref13が基準電圧として比較器40の非反転入力端子に供給される。
一方、半導体モジュール10aのP2端子およびN2端子に電源2を接続し、P3端子には何も接続していない場合、電源接続端子電圧検出回路80には、0Vの電圧Vp3が入力されるので、比較器81は、Lレベルの信号を出力する。このとき、選択信号生成回路90aでは、Lレベルの信号を受けてインバータ回路91がHレベルの信号を出力するので、一方の入力端子にHレベルの信号を入力するアンド回路95,97が有効になる。
したがって、相識別回路50からHレベルの識別信号Sixを受けると、アンド回路97がHレベルの信号を出力し、オア回路99がHレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変基準電圧回路60bでは、トランスミッションゲート63が導通制御されて、電圧Vref13が基準電圧として設定される。また、相識別回路50からHレベルの識別信号Sizを受けると、アンド回路95がHレベルの信号を出力し、オア回路98がHレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変基準電圧回路60bでは、トランスミッションゲート61が導通制御されて、電圧Vref11が基準電圧として設定される。なお、Y相の制御IC34の過電流検出回路では、可変基準電圧回路60bが基準電圧として出力する電圧に変化はなく、電圧Vref12のままである。
図8は第6の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御ICの過電流検出回路の一例を示す回路図である。第6の実施の形態の過電流検出回路は、電源2がP1端子に接続した場合とP2端子に接続した場合とに応じて比較器40に印加する電流検出信号Vsenseを変えている。なお、この図8において、図6および図7に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。この図8では、第6の実施の形態のX相の制御IC33cを示し、Y相およびZ相の制御ICについては、このX相の制御IC33cを参照して説明する。
第6の実施の形態に係る半導体モジュールが有する制御IC33cでは、第4の実施の形態に係る半導体モジュールの選択信号生成回路90および可変抵抗回路70aを簡略化した選択信号生成回路90aおよび可変抵抗回路70bを備えている。
可変抵抗回路70bは、電流センス抵抗Rs1,Rs2,Rs3と、トランスミッションゲート71,72,73とを有している。電流センス抵抗Rs1の一方の端子は、OC端子とトランスミッションゲート71の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs1の他方の端子は、電流センス抵抗Rs2の一方の端子とトランスミッションゲート72の入力端子とに接続されている。電流センス抵抗Rs2の他方の端子は、電流センス抵抗Rs3の一方の端子とトランスミッションゲート73の入力端子とに接続され、電流センス抵抗Rs3の他方の端子は、グランドラインに接続されている。トランスミッションゲート71,72,73の出力端子は、比較器40の反転入力端子に接続されている。
ここで、半導体モジュール10aのP3端子に電源2の正極端子が接続されている場合について説明する。このとき、電源接続端子電圧検出回路80は、Hレベルの信号を出力している。
X相の制御IC33cの相識別回路50は、Hレベルの識別信号Sixと、Lレベルの識別信号Siy,Sizとを出力している。選択信号生成回路90aは、Hレベルの選択信号SLとLレベルの選択信号SLとを出力する。したがって、可変抵抗回路70bは、トランスミッションゲート71のみ導通制御されるので、電流センス抵抗Rs1,Rs2,Rs3により電圧に変換された電流検出信号Vsenseが減衰されることなく比較器40の反転入力端子に供給される。
Y相の制御IC34の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Siyを出力しているので、可変抵抗回路70bでは、トランスミッションゲート72が導通制御される。これにより、可変抵抗回路70bでは、電流センス抵抗Rs1-Rs3により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1と電流センス抵抗Rs2,Rs3との分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
Z相の制御IC35の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Sizを出力しているので、選択信号生成回路90aは、Hレベルの選択信号SHを出力する。これにより、可変抵抗回路70bでは、トランスミッションゲート73が導通制御されるので、電流センス抵抗Rs1-Rs3により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1,Rs2と電流センス抵抗Rs3とによる分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
次に、半導体モジュール10aのP2端子およびN2端子に電源2が接続されている場合について説明する。このとき、P3端子に電源2が接続されていないので、電源接続端子電圧検出回路80は、Lレベルの信号を出力して、選択信号生成回路90aのアンド回路92,94を無効にし、アンド回路95,97を有効にする。
このため、選択信号生成回路90aは、相識別回路50からの識別信号Sixを受けてHレベルの選択信号SHを出力し、可変抵抗回路70bのトランスミッションゲート73を導通制御する。これにより、可変抵抗回路70bでは、電流センス抵抗Rs1-Rs3により変換された電圧を電流センス抵抗Rs1,Rs2と電流センス抵抗Rs3との分圧比で分圧した電圧が電流検出信号Vsenseとして出力され、比較器40の反転入力端子に供給される。
このとき、Y相の制御IC34の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Siyを出力しているので、可変抵抗回路70bでは、トランスミッションゲート72の導通制御が維持されている。
Z相の制御IC35の過電流検出回路では、相識別回路50が識別信号Sizを出力しているので、選択信号生成回路90aは、Hレベルの選択信号SLを出力し、可変抵抗回路70bでは、トランスミッションゲート71が導通制御される。これにより、電流センス抵抗Rs1-Rs3により電圧に変換された電流検出信号Vsenseは、減衰されることなく比較器40の反転入力端子に供給されることになる。
以上の実施の形態では、半導体モジュール10,10aのパワー半導体素子にIGBTを採用した場合を例に説明した。しかし、パワー半導体素子としては、パワートランジスタまたはパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)でもよい。