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JP7490485B2 - フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及び表示装置の製造方法 - Google Patents

フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及び表示装置の製造方法 Download PDF

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JP7490485B2 JP2020126401A JP2020126401A JP7490485B2 JP 7490485 B2 JP7490485 B2 JP 7490485B2 JP 2020126401 A JP2020126401 A JP 2020126401A JP 2020126401 A JP2020126401 A JP 2020126401A JP 7490485 B2 JP7490485 B2 JP 7490485B2
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Description

本発明は、フォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法及び表示装置の製造方法に関する。
近年、OLED(Organic Light Emitting Diode)を代表とするFPD(Flat Panel Display)等の表示装置では、大画面化、広視野角化とともに、高精細化、高速表示化が急速に進んでいる。この高精細化、高速表示化のために必要な要素の1つが、微細で寸法精度の高い素子や配線等の電子回路パターンの作製である。この表示装置用電子回路のパターニングにはフォトリソグラフィが用いられることが多い。このため、微細で高精度なパターンが形成された表示装置製造用の位相シフトマスクやバイナリマスクといったフォトマスクが必要になっている。
例えば、特許文献1には、透明基板上に位相反転膜が備えられた位相反転マスクブランクが開示されている。このマスクブランクにおいて、位相反転膜は、i線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を含む複合波長の露光光に対して35%以下の反射率及び1%~40%の透過率を有するようにするとともに、パターン形成時にパターン断面の傾斜が急激に形成されるように酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)の少なくとも1つの軽元素物質を含む金属シリサイド化合物からなる2層以上の多層膜で構成され、金属シリサイド化合物は、上記軽元素物質を含む反応性ガスと不活性ガスが0.5:9.5~4:6の比率で注入して形成されている。
前記金属シリサイド化合物としては、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、カドミウム(Cd)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)、セレン(Se)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、硫黄(S)、インジウム(In)、スズ(Sn)、ボロン(B)、ベリリウム(Be)、ナトリウム(Na)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)中いずれか一つ以上の金属物質にシリコン(Si)が含まれて成り立つか、前記金属シリサイドに窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)、ホウ素(B)、水素(H)中の一つ以上の軽元素物質をさらに含む化合物からなることを特徴とする材料が記載されている。
韓国登録特許第1801101号公報 特許第3988041号公報
近年の高精細(1000ppi以上)のパネル作製に使用される位相シフトマスクとしては、高解像のパターン転写を可能にするために、位相シフトマスクであって、かつホール径で、6μm以下、ライン幅で4μm以下の微細な位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクが要求されている。具体的には、ホール径で1.5μmの微細な位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクが要求されている。
また、より高解像のパターン転写を実現するため、露光光に対する透過率が15%以上の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクおよび、露光光に対する透過率が15%以上の位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクが要求されている。
露光光に対する透過率の要求を満たすため、位相シフト膜を構成する金属シリサイド化合物(金属シリサイド系材料)における金属とケイ素の原子比率におけるケイ素の比率を高くすることが効果的であるが、ウェットエッチング速度が大幅に遅く(ウェットエッチング時間が長く)なるとともに、ウェットエッチング液による透明基板(例えば、ガラス基板)へのダメージが発生し、透明基板の透過率が低下する等の問題があった。なお、透明基板は、本明細書においては、単に基板とも称すことがある。
また、特許文献2には、透明基板上に、第1の金属成分としてモリブデンと、第2の金属成分としてタンタル、ジルコニウム、クロム及びタングステンから選ばれる1種以上の金属と、更に酸素、窒素及び炭素から選ばれる1種以上の元素とを含有する金属シリサイド化合物からなる位相シフター膜を有するハーフトーン位相シフトマスクブランクが開示されている。そして、位相シフター膜の耐薬性やエッチング時の加工性の観点から、前記金属シリサイド化合物中の、第1の金属成分と第2の金属成分との比が、第1の金属成分:第2の金属成分=100:1~2:1(原子比)であることが好ましいことが開示されている。
この特許文献2に開示されている位相シフター膜は、位相シフトマスクを作製する際に、ドライエッチングにより位相シフター膜をパターニングすることを想定されたものであって、この位相シフター膜をウェットエッチングによりパターニングした場合、上述と同様に、位相シフター膜のウェットエッチング速度が遅く、ウェットエッチング液による透明基板へのダメージが発生し、透明基板の透過率が低下する等の問題があった。
そこで本発明は、上述の問題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、露光光の代表波長に対する透過率が高い(例えば、20%以上)場合であっても、位相シフト膜に転写パターンをウェットエッチングにより形成する際に、ウェットエッチング時間を短縮して透明基板のダメージを抑制でき、良好な断面形状を有し、耐薬性も良好な転写パターンが形成でき、裏面反射率を抑制して良好なパターン転写を行えるフォトマスクブランク、フォトマスクの製造方法および表示装置の製造方法を提供することである。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、以下の構成を有する。
(構成1)透明基板上に位相シフト膜を有するフォトマスクブランクであって、
前記フォトマスクブランクは、フォトマスクを形成するための原版であり、該フォトマスクは、前記位相シフト膜をウェットエッチングにより得られる位相シフト膜パターンを前記透明基板上に有するフォトマスクであって、
前記位相シフト膜は、上層と下層を含む積層膜であり、
前記下層は、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と、窒素を含む材料からなり、モリブデンとジルコニウムの比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:6であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が50~88原子%であり、
前記上層は、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)を含み、かつ、ジルコニウム(Zr)を含まない材料からなり、
前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも小さいことを特徴とするフォトマスクブランク。
(構成2)前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対して透過率が20%以上80%以下であり、位相差が160°以上200°以下の光学特性を備えていることを特徴とする構成1記載のフォトマスクブランク。
(構成3)前記位相シフト膜は、前記上層および前記下層のみを含む積層膜であり、前記下層の厚さは、前記位相シフト膜の厚さに対して、50%未満であることを特徴とする構成1又は2記載のフォトマスクブランク。
(構成4)前記下層において、Moの含有量は、10原子量%以下であることを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
(構成5)前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対する裏面反射率が、10%以下となるように、前記上層と前記下層の屈折率、消衰係数、および膜厚が設定されていることを特徴とする構成1乃至4の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
(構成6)前記位相シフト膜上に、該位相シフト膜に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を備えていることを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
(構成7)構成1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記位相シフト膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
(構成8)構成6記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記エッチングマスク膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記エッチングマスク膜をウェットエッチングして、前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
(構成9)構成7又は8に記載のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された転写パターンを、表示装置基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
本発明に係るフォトマスクブランクによれば、露光光の代表波長に対する透過率が高い場合であっても、位相シフト膜に転写パターンをウェットエッチングにより形成する際に、エッチングタイムを短くして基板のダメージを抑制でき、良好な断面形状を有し、耐薬性も良好な転写パターンが形成でき、裏面反射率を抑制して良好なパターン転写を行え、紫外耐光性に優れたフォトマスクブランクを得ることができる。
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法によれば、上記のフォトマスクブランクを用いてフォトマスクを製造する。このため、露光光の代表波長に対する透過率が高い場合であっても、位相シフト膜に転写パターンをウェットエッチングにより形成する際に、エッチングタイムを短くして基板のダメージを抑制でき、良好な断面形状を有し、耐薬性も良好な転写パターンが形成でき、裏面反射率を抑制して良好なパターン転写を行え、紫外耐光性に優れたフォトマスクを製造することができる。このフォトマスクは、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
また、本発明に係る表示装置の製造方法によれば、上記のフォトマスクの製造方法によって得られたフォトマスクを用いて表示装置を製造する。このため、微細なラインアンドスペースパターンやコンタクトホールを有する表示装置を製造することができる。
実施の形態1にかかる位相シフトマスクブランクの膜構成(透明基板/位相シフト膜/エッチングマスク膜)を示す模式図である。 実施の形態2にかかる位相シフトマスクブランクの膜構成(透明基板/位相シフト膜)を示す模式図である。 実施の形態3にかかる位相シフトマスクの製造工程を示す模式図である。 実施の形態4にかかる位相シフトマスクの製造工程を示す模式図である。
まず、本発明に至った経緯について述べる。本発明者は上述した課題を解決するための方策を鋭意検討した。まず、露光光(例えば、313nm~436nm)の代表波長に対して高い透過率を有する位相シフト膜とするため、前記代表波長における消衰係数が、モリブデンよりも小さい特性を有するジルコニウムに着目した。酸素や窒素の軽元素成分を除く構成元素として、ジルコニウムとケイ素で位相シフト膜を構成すると、屈折率がモリブデンとケイ素で位相シフト膜を構成するよりも大きいため位相シフト機能を得るために必要な膜厚において薄膜化することができ、エッチングレートを高めることができる点で好ましい。しかしながら、ジルコニウムとケイ素を成膜するためのターゲットは現状においては特殊であり、不純物や微小欠陥を有していないものを入手することは容易ではなく、また、これらの材料で成膜された位相シフト膜は、屈折率が高いことから反射率が高くなることがあり、良好なパターン転写を行うには必ずしも十分ではなかった。一方、酸素や窒素の軽元素成分を除く構成元素として、モリブデンとケイ素で位相シフト膜を構成する場合には、モリブデンがジルコニウムよりも消衰係数が大きい特性を有することから、透過率を高く(例えば、20%以上)することは容易ではないが、ターゲットは一般的に使用され、品質も安定しており、不純物が少なく、また、これらの材料で成膜された位相シフト膜は、反射率も低いといった利点を有している。これらの点を考慮し、本発明者は、位相シフト膜を構成する材料として、モリブデンとジルコニウムとケイ素とを含むZrMoSi系材料を選択した。
ZrMoSi系材料を位相シフト膜として使用することは、半導体装置の製造などに使用されるLSI用のマスクブランクにおいては知られている。しかしながら、LSI用のマスクブランクに用いられるZrMoSi系材料を表示装置製造用の位相シフトマスクブランクにそのまま適用しようとすると、位相シフト膜をウェットエッチングする際に、位相シフト膜上に形成された他の光学膜(例えば、エッチングマスク膜や、光学濃度ODが2以上の遮光膜)との界面、あるいは位相シフト膜と透明基板との界面での浸み込みにより微細なパターンの形成が困難なことがわかった。このように、LSI用のマスクブランクに用いられるZrMoSi系材料を単に表示装置製造用の位相シフトマスクブランクに適用しようとしても、所望の表示装置製造用の位相シフトマスクブランクを得ることは困難であった。
また、ZrMoSi系材料の比率によっては、位相シフト膜の耐薬性が悪く所望の洗浄耐性が得られず、また、反射率が高すぎて転写特性が低下してしまうこともわかった。さらに、実際の露光転写を想定した紫外線に対する耐光性(以下、紫外耐光性と称す。)も不十分であることが判明した。
そして、位相シフト膜をZrMoSi系材料のみの単層膜で構成しようとすると、代表波長に対して高い透過率は得られるものの、裏面反射率も高くなってしまい、良好なパターン転写を行うには好ましくないこともわかった。
そこで、本発明者らはさらに鋭意検討を行い、耐薬性の改善、裏面反射率の抑制、紫外耐光性の改善をするためには、位相シフト膜を上層と下層を含む積層膜とし、上層はZrを含まないMoSi系材料で構成し、下層はZrMoSi系材料で構成することが有効であることを見出した。さらに、上層と下層との厚さの関係、下層を構成するZrMoSi系材料における、モリブデンとジルコニウムの比率と、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率とを指標として規定することが有効であることを見出した。そして、位相シフト膜を上層と下層を含む積層膜とし、上層はZrを含まないMoSi系材料で構成し、下層はZrMoSi系材料で構成し、下層の厚さは上層の厚さよりも小さくし、下層を構成するZrMoSi系材料における、モリブデンとジルコニウムの比率、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率を調整することが、上述した課題を解決するために有効であることを見出した。本発明は、以上のような鋭意検討の結果なされたものであり、以下の構成を要する。
実施の形態1.2.
実施の形態1、2では、位相シフトマスクブランクについて説明する。実施の形態1の位相シフトマスクブランクは、位相シフトマスクを形成するための原版であり、この位相シフトマスクは、エッチングマスク膜に所望のパターンが形成されたエッチングマスク膜パターンをマスクにして、位相シフト膜をウェットエッチングにより得られる位相シフト膜パターンを透明基板上に有する位相シフトマスクである。また、実施の形態2の位相シフトマスクブランクは、位相シフトマスクを形成するための原版であり、この位相シフトマスクは、レジスト膜に所望のパターンが形成されたレジスト膜パターンをマスクにして、位相シフト膜をウェットエッチングにより得られる位相シフト膜パターンを透明基板上に有する位相シフトマスクである。
図1は実施の形態1にかかる位相シフトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。
図1に示す位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成された位相シフト膜30と、位相シフト膜30上に形成されたエッチングマスク膜40とを備える。
図2は実施の形態2にかかる位相シフトマスクブランク10の膜構成を示す模式図である。
図2に示す位相シフトマスクブランク10は、透明基板20と、透明基板20上に形成された位相シフト膜30とを備える。
そして、図1、図2に示すように、位相シフト膜30は、上層31と、下層32とを含むものである。
以下、実施の形態1および実施の形態2の位相シフトマスクブランク10を構成する透明基板20、位相シフト膜30およびエッチングマスク膜40について説明する。
透明基板20は、露光光に対して透明である。透明基板20は、表面反射ロスが無いとしたときに、露光光に対して85%以上の透過率、好ましくは90%以上の透過率を有するものである。透明基板20は、ケイ素と酸素を含有する材料からなり、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのガラス材料で構成することができる。透明基板20が低熱膨張ガラスから構成される場合、透明基板20の熱変形に起因する位相シフト膜パターンの位置変化を抑制することができる。また、表示装置用途で使用される透明基板20は、一般に矩形状の基板であって、該透明基板の短辺の長さは300mm以上であるものが使用される。例えば、透明基板の主表面(位相シフト膜パターンが形成される面)の一辺の長さは、300~2000mmである。本発明は、透明基板の短辺の長さが300mm以上の大きなサイズであっても、透明基板上に形成される例えば2.0μm未満の微細な位相シフト膜パターンを安定して転写することができる位相シフトマスクを提供可能な位相シフトマスクブランクである。
位相シフト膜30は、上層31と下層32を含む積層膜で構成されている。
上層31は、遷移金属と、ケイ素とを含有する遷移金属シリサイド系材料(ただし、ジルコニウム(Zr)は含有しない。上層31を構成する材料において以下も同様。)で構成される。この遷移金属として、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)などが好適であり、特に、モリブデン(Mo)であるとさらに好ましい。上層31をモリブデンシリサイド系材料で構成する場合には、品質の良好なターゲットを用いて上層31を成膜することができ、欠陥品質を向上することができる。
また、上層31は、窒素または酸素の少なくとも一方を含有していることが好ましい。上記遷移金属シリサイド系材料において、軽元素成分である酸素は、同じく軽元素成分である窒素と比べて、屈折率及び消衰係数を下げる効果があるため、所望の透過率を得るための他の軽元素成分(窒素など)の含有率を少なくすることができるとともに、位相シフト膜30の表面および裏面の反射率も効果的に低減することができる。また、上記遷移金属シリサイド系材料において、軽元素成分である窒素は、同じく軽元素成分である酸素と比べて、屈折率を下げない効果があるため、所望の位相差を得るための膜厚を薄くできる。また、上層31に含まれる酸素と窒素を含む軽元素成分の合計含有率は、40原子%以上が好ましい。さらに好ましくは、40原子%以上70原子%以下、50原子%以上65原子%以下が望ましい。また、上層31に酸素が含まれる場合は、酸素の含有率は、0原子%超40原子%以下であることが、欠陥品質、耐薬性に於いて望ましい。
上層31に含まれる遷移金属シリサイド系材料としては、例えば、遷移金属シリサイドの窒化物、遷移金属シリサイドの酸化物、遷移金属シリサイドの酸化窒化物、遷移金属シリサイドの酸化窒化炭化物が挙げられる。また、この遷移金属シリサイド系材料は、モリブデンシリサイド系材料(MoSi系材料)、タンタルシリサイド系材料(TaSi系材料)、タングステンシリサイド系材料(WSi系材料)、チタンシリサイド系材料(TiSi系材料)が挙げられる。このうち、モリブデンシリサイド系材料(MoSi系材料)であると、ウェットエッチングによる優れたパターン断面形状が得られやすいという点で好ましい。
また、上層31には、上述した酸素、窒素の他に、膜応力の低減やウェットエッチングレートを制御する目的で、炭素やヘリウム等の他の軽元素成分を含有してもよい。
この上層31は柱状構造を有していてもよい。特に、モリブデンシリサイド系の材料で上層31を構成する場合には、エッチングレートが小さい傾向があるため、上層31が柱状構造を有することで、後述の下層32に合うように、上層31のエッチングレートを向上させることができて好ましい。この柱状構造は、上層31を断面SEM観察により確認することができる。すなわち、本発明における柱状構造は、上層31を構成する遷移金属とケイ素とを含有する遷移金属シリサイド化合物の粒子が、上層31の膜厚方向(上記粒子が堆積する方向)に向かって伸びる柱状の粒子構造を有する状態をいう。なお、本願においては、膜厚方向の長さがその垂直方向の長さよりも長いものを柱状の粒子としている。すなわち、上層31は、膜厚方向に向かって伸びる柱状の粒子が、透明基板20の面内に渡って形成されている。また、上層31は、成膜条件(スパッタリング圧力など)を調整することにより、柱状の粒子よりも相対的に密度の低い疎の部分(以下、単に「疎の部分」ということもある)も形成されている。なお、上層31は、ウェットエッチングの際のサイドエッチングを効果的に抑制し、パターン断面形状をさらに良化するために、上層31の柱状構造の好ましい形態としては、膜厚方向に伸びる柱状の粒子が、膜厚方向に不規則に形成されているのが好ましい。さらに好ましくは、上層31の柱状の粒子は、膜厚方向の長さが不揃いな状態であるのが好ましい。そして、位相シフト膜30の疎の部分は、膜厚方向において連続的に形成されていることが好ましい。また、上層31の疎の部分は、膜厚方向に垂直な方向おいて断続的に形成されていることが好ましい。
上層31に含まれる遷移金属とケイ素の原子比率は、遷移金属:ケイ素=1:3以上1:15以下であることが好ましい。この範囲であると、上層31のパターン形成時におけるウェットエッチングレート低下を、柱状構造により抑制する効果を大きくすることができる。また、上層31の洗浄耐性を高めることができ、透過率を高めることも容易となる。上層31の洗浄耐性を高める視点からは、上層31に含まれる遷移金属とケイ素の原子比率は、遷移金属:ケイ素=1:4以上1:15以下、さらに好ましくは、遷移金属:ケイ素=1:5以上1:15以下が望ましい。
下層32は、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と、窒素を含む材料からなるZrMoSi系材料で構成される。ZrMoSi系材料に、さらに、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)の遷移金属を含有しても構わない。
下層32におけるZrMoSi系材料層は、モリブデンとジルコニウムの比率が、Mo:Zr=1.5:1(すなわち、1:2/3(≒1:0.67))~1:6とすることができる。Zrの成分が、上記Mo:Zrの比率に対して小さい場合、ウェットエッチング液に対するウェットエッチング速度が遅くなるので、透明基板20に対してのダメージが発生しやすくなる可能性がある。また、露光光の代表波長に対する透過率について、高い透過率を有する下層32が得られにくくなることもある。したがって、MoとZrの比率は、上記範囲内とすることが好ましい。
また、下層32におけるZrMoSi系材料層は、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率(Si/[Mo+Zr+Si])が、Si/[Mo+Zr+Si]=50~88原子%とする。Si/[Mo+Zr+Si]が50原子%未満の場合、露光光の代表波長に対する透過率について、高い透過率(例えば、20%以上80%以下)および耐薬性を有する位相シフト膜30の下層32の実現が困難となる。また、Si/[Mo+Zr+Si]が88原子%超の場合、ウェットエッチング液に対するウェットエッチング速度が遅くなるので、透明基板20に対してのダメージが発生しやすくなり、透明基板20の荒れによる透過率の低下が生じやすくなる。これを考慮すると、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率は、より好ましくは、Si/[Mo+Zr+Si]=50~70原子%である。
また、下層32において、Moの含有量は、10原子量%以下であることが好ましい。Moの含有量を10原子量%以下とすることで、下層32の透過率の高めることができるため、好ましい。
また、下層32においても、上述した窒素に加えて、上層31と同様に、酸素等の軽元素成分を含有してもよい。また、下層32も、柱状構造を有していてもよい。
下層32の厚さは、上層31の厚さよりも小さいことが好ましい。すなわち、下層32の厚さは、位相シフト膜30の厚さに対して、50%未満であることが好ましく、30%以下であるとより好ましく、20%以下であるとさらに好ましい。そのうえで、下層32の厚さは、その機能を奏するために、位相シフト膜30の厚さに対して、3%以上であることが好ましい。
この、上層31および下層32を含む位相シフト膜30は、スパッタリング法により形成することができる。
このように、本実施形態における位相シフト膜30は、上層31と下層32を含む積層膜であり、下層32は、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と、窒素を含む材料からなり、モリブデンとジルコニウムの比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:6であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が50~88原子%であり、上層31は、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)を含み、かつ、ジルコニウム(Zr)を含まない材料からなり、下層32の厚さは、上層31の厚さよりも小さい。これにより、エッチングタイムを短くして基板のダメージを抑制でき、良好な断面形状を有し、耐薬性も良好な位相シフト膜パターンが形成でき、裏面反射率を抑制して良好なパターン転写を行うことが可能となる。また、上記のような上層31は、耐薬性および紫外耐光性に優れているため、本実施形態にかかる位相シフト膜30は、下層32のみの場合に比べて、耐薬性および紫外耐光性を向上することができる。すなわち、位相シフト膜30では、繰り返し洗浄等による膜厚の減少を低減できるため、表面の反射率の変化を抑制できるとともに、優れた紫外耐光性により、繰り返し露光光を照射されても、透過率の上昇を抑制することができる。また、本実施形態の位相シフト膜30は、上層31と下層32のみを含む積層膜であるが、この構成のみに限定されるものではなく、例えば、上層31と下層32との間に混合領域が形成されるような構成も許容される。
露光光に対する位相シフト膜30の透過率は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の透過率は、露光光に含まれる所定の波長の光(代表波長)に対して、好ましくは、20%以上80%以下であり、より好ましくは、25%以上75%以下であり、さらに好ましくは30%以上70%以下である。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した透過率を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した透過率を有する。
透過率は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
露光光に対する位相シフト膜30の位相差は、位相シフト膜30として必要な値を満たす。位相シフト膜30の位相差は、露光光に含まれる代表波長の光に対して、好ましくは、160°以上200°以下であり、より好ましくは、170°以上190°以下である。この性質により、露光光に含まれる代表波長の光の位相を160°以上200°以下に変えることができる。このため、位相シフト膜30を透過した代表波長の光と透明基板20のみを透過した代表波長の光との間に160°以上200°以下の位相差が生じる。すなわち、露光光が313nm以上436nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、その波長範囲に含まれる代表波長の光に対して、上述した位相差を有する。例えば、露光光がi線、h線およびg線を含む複合光である場合、位相シフト膜30は、i線、h線およびg線のいずれかに対して、上述した位相差を有する。
位相差は、位相シフト量測定装置などを用いて測定することができる。
位相シフト膜30の裏面反射率は、例えば、露光光にg線、h線、i線や、j線(313nm)が含まれる場合、313nm~436nmの波長域における代表波長において10%以下であると好ましく、8%以下であるとより好ましく、5%以下であるとさらに好ましい。位相シフト膜30の裏面反射率は、365nm~436nmの波長域の全域において10%以下であると好ましく、8%以下であるとより好ましく、5%以下であるとさらに好ましい。また、位相シフト膜30の裏面反射率は、313nm~436nmの波長域における代表波長において0.2%以上であると好ましい。位相シフト膜30の裏面反射率は、313nm~436nmの波長域の全域において0.2%以上が好ましい。
裏面反射率は、分光光度計などを用いて測定することができる。
また、位相シフト膜30において、上層31は、下層32における露光光の代表波長(例えば、313nm~436nm)における屈折率nよりも小さい材料を選定することにより、露光光が入射する側の位相シフト膜30の裏面反射率を低減することができる。
具体的には、露光光の代表波長に対する裏面反射率が、15%以下となるように、上層31と下層32の屈折率、消衰係数、および膜厚を設定するとよい。好ましくは、位相シフト膜30における、露光光の代表波長に対する裏面反射率が10%以下となるように、上層31と下層32の屈折率、消衰係数、および膜厚が設定されていることが望ましい。
エッチングマスク膜40は、位相シフト膜30の上側に配置され、位相シフト膜30をエッチングするエッチング液に対してエッチング耐性を有する(位相シフト膜30とエッチング選択性が異なる)材料からなる。また、エッチングマスク膜40は、露光光の透過を遮る機能を有してもよいし、さらに、位相シフト膜30側より入射される光に対する位相シフト膜30の膜面反射率が313nm~436nmの波長域において15%以下となるように膜面反射率を低減する機能を有してもよい。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含有するクロム系材料から構成される。クロム系材料として、より具体的には、クロム(Cr)、又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つを含有する材料が挙げられる。又は、クロム(Cr)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のうちの少なくともいずれか1つとを含み、さらに、フッ素(F)を含む材料が挙げられる。例えば、エッチングマスク膜40を構成する材料として、Cr、CrO、CrN、CrF、CrCO、CrCN、CrON、CrCON、CrCONFが挙げられる。
エッチングマスク膜40は、スパッタリング法により形成することができる。
エッチングマスク膜40が露光光の透過を遮る機能を有する場合、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが積層する部分において、露光光に対する光学濃度は、好ましくは3以上であり、より好ましくは、3.5以上、さらに好ましくは4以上である。
光学濃度は、分光光度計またはODメーターなどを用いて測定することができる。
エッチングマスク膜40は、機能に応じて組成が均一な単一の膜からなる場合であってもよいし、組成が異なる複数の膜からなる場合であってもよいし、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合であってもよい。
なお、図1に示す位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備えているが、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備える位相シフトマスクブランクについても、本発明を適用することができる。
次に、この実施の形態1および2の位相シフトマスクブランク10の製造方法について説明する。図1に示す位相シフトマスクブランク10は、以下の位相シフト膜形成工程とエッチングマスク膜形成工程とを行うことによって製造される。図2に示す位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜形成工程によって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
1.位相シフト膜形成工程
先ず、透明基板20を準備する。透明基板20は、露光光に対して透明であれば、合成石英ガラス、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO-TiOガラス等)などのいずれのガラス材料で構成されるものであってもよい。
次に、透明基板20上に、スパッタリング法により、位相シフト膜30の上層31及び下層32を形成する。
位相シフト膜30の下層32の成膜は、下層32を構成する材料の主成分となるモリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)を含むZrMoSi系ターゲット、又はモリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と酸素(O)及び/又は窒素(N)を含むZrMoSiO系ターゲット、ZrMoSiN系ターゲット、ZrMoSiON系ターゲットをスパッタターゲットに使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、上記不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスからなる群より選ばれて窒素を少なくとも含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。前記ZrMoSi系ターゲット、ZrMoSiO系ターゲット、ZrMoSiN系ターゲット、ZrMoSiON系ターゲットにおけるMo、Zr、Siの比率は、スパッタリングにより成膜されるZrMoSi系材料層におけるモリブデンとジルコニウムの比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:6であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が50~88原子%となるように調整される。また、下層32は、上述したMo、Zr、Siの比率を満たすように、Moターゲット、Zrターゲット、Siターゲットを用いて成膜するようにしてもよいし、MoSiターゲットとZrSiターゲットを用いて成膜するようにしてもよい。
上層31の成膜は、上層31を構成する材料の主成分となる遷移金属とケイ素を含む遷移金属シリサイドターゲット(Zrを除く。上層31で使用するターゲットにおいて以下も同様。)、又は遷移金属とケイ素と酸素及び/又は窒素を含む遷移金属シリサイドターゲットをスパッタターゲットに使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、上記不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガスからなる群より選ばれて酸素及び窒素を少なくとも含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。上層31は、スパッタリングを行う際における成膜室内のガス圧力が0.8Pa以上3.0Pa以下で形成するようにしてもよい。ガス圧力の範囲をこのように設定することで、上層31に柱状構造を形成することができる。この柱状構造により、後述するパターン形成時におけるサイドエッチングを抑制できるとともに、高エッチングレートを達成することができる。ここで、遷移金属シリサイドターゲットの遷移金属とケイ素の原子比率は、遷移金属:ケイ素=1:3以上1:15以下であることが、ウェットエッチング速度の低下を柱状構造によって抑制する効果が大きく、位相シフト膜30の洗浄耐性を高める等の点で、好ましい。
位相シフト膜30における上層31及び下層32の組成及び厚さは、位相シフト膜30が上記の位相差及び透過率となるように調整される。上層31及び下層32の組成は、スパッタターゲットを構成する元素の含有比率(例えば、Mo、Zr、Siの含有率)、スパッタガスの組成及び流量などにより制御することができる。上層31及び下層32の厚さは、スパッタパワー、スパッタリング時間などにより制御することができる。また、位相シフト膜30は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、基板の搬送速度によっても、上層31及び下層32の厚さを制御することができる。
そして、位相シフト膜30の下層32の厚さは、上層31の厚さよりも小さいことが好ましい。上層31は、位相シフト膜30の洗浄耐性の向上や裏面反射率の低減及び紫外耐光性を向上させる機能を主として有しており、下層32は、ウェットエッチング時間の短縮や断面形状を良好にする機能を主として有しているためである。より具体的には、位相シフト膜30全体の厚さは、160nm~170nmであることが好ましく、その上で、上層31の厚さは、90nm~160nmであることが好ましく、下層32の厚さは、5nm~70nmであることが好ましい。
位相シフト膜30の上層31及び下層32のそれぞれについて、成膜プロセスを複数回行う場合、スパッタターゲットに印加するスパッタパワーを小さくすることができる。
このようにして、実施の形態2の位相シフトマスクブランク10が得られる。実施の形態1の位相シフトマスクブランク10の製造には、以下のエッチングマスク膜形成工程をさらに行う。
3.エッチングマスク膜形成工程
位相シフト膜30の表面の表面酸化の状態を調整する表面処理を必要に応じて行った後、スパッタリング法により、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を形成する。エッチングマスク膜40は、インライン型スパッタリング装置を使用して形成することが好ましい。スパッタリング装置がインライン型スパッタリング装置の場合、透明基板20の搬送速度によっても、エッチングマスク膜40の厚さを制御することができる。
エッチングマスク膜40の成膜は、クロム又はクロム化合物(酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化窒化炭化クロム等)を含むスパッタターゲットを使用して、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスからなるスパッタガス雰囲気、又は、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス及びキセノンガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスと、酸素ガス、窒素ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、炭化水素系ガス、フッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスとの混合ガスからなるスパッタガス雰囲気で行われる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガス等が挙げられる。
エッチングマスク膜40が、組成の均一な単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成及び流量を変えずに1回だけ行う。エッチングマスク膜40が、組成の異なる複数の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、成膜プロセス毎にスパッタガスの組成及び流量を変えて複数回行う。エッチングマスク膜40が、厚さ方向に組成が連続的に変化する単一の膜からなる場合、上述した成膜プロセスを、スパッタガスの組成及び流量を成膜プロセスの経過時間と共に変化させながら1回だけ行う。
このようにして、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10が得られる。
なお、図1に示す位相シフトマスクブランク10は、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備えているため、位相シフトマスクブランク10を製造する際に、エッチングマスク膜形成工程を行う。また、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜40を備え、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を備える位相シフトマスクブランクを製造する際は、エッチングマスク膜形成工程後に、エッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する。また、図2に示す位相シフトマスクブランク10において、位相シフト膜30上にレジスト膜を備える位相シフトマスクブランクを製造する際は、位相シフト膜形成工程後に、レジスト膜を形成する。
この実施の形態1および2の位相シフトマスクブランク10は、ウェットエッチングによる断面形状が良好であり、透過率の高い裏面反射率の抑制された位相シフト膜パターンを、短いエッチング時間で形成することができる。従って、ウェットエッチング液による基板へのダメージを起因とした透明基板の透過率の低下がなく、裏面反射率を抑制して高精細な位相シフト膜パターンを精度よく転写することができる位相シフトマスクを製造することができる位相シフトマスクブランクが得られる。
実施の形態3.4.
実施の形態3、4では、位相シフトマスクの製造方法について説明する。
図3は実施の形態3にかかる位相シフトマスクの製造方法を示す模式図である。図4は実施の形態4にかかる位相シフトマスクの製造方法を示す模式図である。
図3に示す位相シフトマスクの製造方法は、図1に示す位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスクを製造する方法であり、以下の位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をウェットエッチングして、位相シフト膜30上にエッチングマスク膜パターン40aを形成する工程(第1のエッチングマスク膜パターン形成工程)と、エッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、位相シフト膜30をウェットエッチングして透明基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。そして、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程とをさらに含む。
図4に示す位相シフトマスクの製造方法は、図2に示す位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスクを製造する方法であり、以下の位相シフトマスクブランク10の上にレジスト膜を形成する工程と、レジスト膜に所望のパターンを描画・現像を行うことにより、レジスト膜パターン50を形成し(第1のレジスト膜パターン形成工程)、該レジスト膜パターン50をマスクにして位相シフト膜30をウェットエッチングして、透明基板20上に位相シフト膜パターン30aを形成する工程(位相シフト膜パターン形成工程)と、を含む。
以下、実施の形態3および4にかかる位相シフトマスクの製造工程の各工程を詳細に説明する。
実施の形態3にかかる位相シフトマスクの製造工程
1.第1のレジスト膜パターン形成工程
第1のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態1の位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30に形成するパターンである。レジスト膜に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図3(a)に示されるように、エッチングマスク膜40上に第1のレジスト膜パターン50を形成する。
2.第1のエッチングマスク膜パターン形成工程
第1のエッチングマスク膜パターン形成工程では、先ず、第1のレジスト膜パターン50をマスクにしてエッチングマスク膜40をエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成する。エッチングマスク膜40は、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。エッチングマスク膜40をエッチングするエッチング液は、エッチングマスク膜40を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、図3(b)に示されるように、第1のレジスト膜パターン50を剥離する。場合によっては、第1のレジスト膜パターン50を剥離せずに、次の位相シフト膜パターン形成工程を行ってもよい。
3.位相シフト膜パターン形成工程
第1の位相シフト膜パターン形成工程では、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして位相シフト膜30をウェットエッチングして、図3(c)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。図3(c)に示されるように、位相シフト膜パターン30aは、上層パターン31a及び下層パターン32aで構成される。上層31および下層32は上述の材料で構成されているので、同一のエッチング液によりエッチングすることができる。位相シフト膜パターン30aとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。位相シフト膜30をエッチングするエッチング液は、位相シフト膜30を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、フッ化アンモニウムとリン酸と過酸化水素とを含むエッチング液、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素とを含むエッチング液が挙げられる。
ウェットエッチングは、位相シフト膜パターン30aの断面形状を良好にするために、位相シフト膜パターン30aにおいて透明基板20が露出するまでの時間(ジャストエッチング時間)よりも長い時間(オーバーエッチング時間)で行うことが好ましい。オーバーエッチング時間としては、透明基板20への影響等を考慮すると、ジャストエッチング時間に、そのジャストエッチング時間の20%の時間を加えた時間内とすることが好ましい。
4.第2のレジスト膜パターン形成工程
第2のレジスト膜パターン形成工程では、先ず、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うレジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、特に制限されない。例えば、後述する350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光に対して感光するものであればよい。また、レジスト膜は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても構わない。
その後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。レジスト膜に描画するパターンは、位相シフト膜30にパターンが形成されている領域の外周領域を遮光する遮光帯パターンや、位相シフト膜パターンの中央部を遮光する遮光帯パターンなどである。なお、レジスト膜に描画するパターンは、露光光に対する位相シフト膜30の透過率によっては、位相シフト膜パターン30aの中央部を遮光する遮光帯パターンがないパターンの場合もある。
その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図3(d)に示されるように、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に第2のレジスト膜パターン60を形成する。
5.第2のエッチングマスク膜パターン形成工程
第2のエッチングマスク膜パターン形成工程では、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングして、図3(e)に示されるように、第2のエッチングマスク膜パターン40bを形成する。第1のエッチングマスク膜パターン40aは、クロム(Cr)を含むクロム系材料から形成される。第1のエッチングマスク膜パターン40aをエッチングするエッチング液は、第1のエッチングマスク膜パターン40aを選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、第2のレジスト膜パターン60を剥離する。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。
なお、上記説明ではエッチングマスク膜40が、露光光の透過を遮る機能を有する場合について説明したが、エッチングマスク膜40が単に、位相シフト膜30をエッチングする際のハードマスクの機能のみを有する場合においては、上記説明において、第2のレジスト膜パターン形成工程と、第2のエッチングマスク膜パターン形成工程は行われず、位相シフト膜パターン形成工程の後、第1のエッチングマスク膜パターンを剥離して、位相シフトマスク100を作製する。
この実施の形態3の位相シフトマスクの製造方法によれば、実施の形態1の位相シフトマスクブランクを用いるため、エッチング時間を短縮でき、断面形状、耐薬性が良好な位相シフト膜パターンを形成することができる。従って、高精細な位相シフト膜パターンを精度よく転写することができる位相シフトマスクを製造することができる。このように製造された位相シフトマスクは、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
実施の形態4にかかる位相シフトマスクの製造工程
1.レジスト膜パターン形成工程
レジスト膜パターン形成工程では、先ず、実施の形態2の位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30上に、レジスト膜を形成する。使用するレジスト膜材料は、実施の形態3で説明したのと同様である。なお、必要に応じてレジスト膜を形成する前に、位相シフト膜30と密着性を良好にするため、位相シフト膜30に表面改質処理を行なうようにしても構わない。上述と同様に、レジスト膜を形成した後、350nm~436nmの波長域から選択されるいずれかの波長を有するレーザー光を用いて、レジスト膜に所望のパターンを描画する。その後、レジスト膜を所定の現像液で現像して、図4(a)に示されるように、位相シフト膜30上にレジスト膜パターン50を形成する。
2.位相シフト膜パターン形成工程
位相シフト膜パターン形成工程では、レジスト膜パターンをマスクにして位相シフト膜30をエッチングして、図4(b)に示されるように、位相シフト膜パターン30aを形成する。図4(b)に示されるように、位相シフト膜パターン30aは、上層パターン31a及び下層パターン32aで構成される。位相シフト膜パターン30aや位相シフト膜30をエッチングするエッチング液やオーバーエッチング時間は、実施の形態3で説明したのと同様である。
その後、レジスト剥離液を用いて、又は、アッシングによって、レジスト膜パターン50を剥離する(図4(c))。
このようにして、位相シフトマスク100が得られる。
この実施の形態4の位相シフトマスクの製造方法によれば、実施の形態2の位相シフトマスクブランクを用いるため、ウェットエッチング液による基板へのダメージを起因とした透明基板の透過率の低下がなく、エッチング時間を短くでき、断面形状、耐薬性が良好で裏面反射率の抑制された位相シフト膜パターンを形成することができる。従って、高精細な位相シフト膜パターンを精度よく転写することができる位相シフトマスクを製造することができる。このように製造された位相シフトマスクは、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
実施の形態5.
実施の形態5では、表示装置の製造方法について説明する。表示装置は、上述した位相シフトマスクブランク10を用いて製造された位相シフトマスク100を用い、または上述した位相シフトマスク100の製造方法によって製造された位相シフトマスク100を用いる工程(マスク載置工程)と、表示装置上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程(露光工程)とを行うことによって製造される。
以下、各工程を詳細に説明する。
1.載置工程
載置工程では、実施の形態3で製造された位相シフトマスクを露光装置のマスクステージに載置する。ここで、位相シフトマスクは、露光装置の投影光学系を介して表示装置基板上に形成されたレジスト膜に対向するように配置される。
2.パターン転写工程
パターン転写工程では、位相シフトマスク100に露光光を照射して、表示装置基板上に形成されたレジスト膜に位相シフト膜パターンを転写する。露光光は、365nm~436nmの波長域から選択される複数の波長の光を含む複合光や、365nm~436nmの波長域からある波長域をフィルターなどでカットし選択された単色光である。例えば、露光光は、i線、h線およびg線を含む複合光や、i線の単色光である。露光光として複合光を用いると、露光光強度を高くしてスループットを上げることができるため、表示装置の製造コストを下げることができる。
この実施の形態3の表示装置の製造方法によれば、高解像度、微細なラインアンドスペースパターンやコンタクトホールを有する、高精細の表示装置を製造することができる。
[実施例及び比較例]
実施例1~10、比較例
A.位相シフトマスクブランク
実施例1~10、比較例の位相シフトマスクブランクを製造するため、先ず、透明基板20として、1214サイズ(1220mm×1400mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
その後、実施例1~10については、合成石英ガラス基板を、主表面を下側に向けてトレイ(図示せず)に搭載し、インライン型スパッタリング装置の第1チャンバー内に搬入した。
実施例1~10については、透明基板20の主表面上に位相シフト膜30の下層32を形成するため、まず、第1チャンバー内のスパッタリングガス圧力を0.3Paにした状態で、アルゴン(Ar)ガスと、窒素(N)ガスで構成される混合ガスを導入した。そして、MoとZrとSiの比率が、Mo:Zr:Si=4:16:80からなるZrMoSiターゲットを使用して、反応性スパッタリングにより、透明基板20の主表面上にモリブデンとジルコニウムとケイ素と窒素を含有するZrMoSiNの位相シフト膜30の下層32を成膜した。各実施例1~10における下層32の膜厚は、後述する表1に示す通りである。
そして、下層32付きの透明基板20を第2チャンバー内に搬入し、第2チャンバー内のスパッタリングガス圧力を1.6Paにした状態で、アルゴン(Ar)ガスとヘリウム(He)ガスと窒素(N)ガスで構成される不活性ガスと、反応性ガスである一酸化窒素ガス(NO)と、の混合ガス(Ar:18sccm、N:13sccm、He:50sccm、NO:4sccm)を導入した。そして、モリブデンとケイ素を含む第2スパッタターゲット(モリブデン:ケイ素=8:92)に8.2kWのスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングにより、透明基板20の主表面上にモリブデンとケイ素と酸素と窒素を含有するモリブデンシリサイドの酸化窒化物を堆積させ、上層31を成膜した。各実施例1~10における上層31の膜厚は、後述する表1に示す通りである。各実施例1~10における、下層32と上層31とを積層してなる位相シフト膜30の全体膜厚も、同様に表1に示す。
また、比較例については、透明基板20の主表面上に単層の位相シフト膜30を形成するため、合成石英ガラス基板を、第1チャンバーを介さずに第2チャンバーに搬入した。そして、第2チャンバー内のスパッタリングガス圧力を0.3Paにした状態で、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスで構成される不活性ガスと、の混合ガス(Ar:18sccm、N:15sccm)を導入した。そして、ジルコニウムとケイ素を含む第2スパッタターゲット(ジルコニウム:ケイ素=33:67)に2.3kWのスパッタパワーを印加して、反応性スパッタリングにより、透明基板20の主表面上にジルコニウムとケイ素と窒素を含有するジルコニウムシリサイドの窒化物を堆積させた。比較例における位相シフト膜30の膜厚は、後述する表1に示す通りである。
そして、実施例1~10、比較例のそれぞれについて、透明基板20に位相シフト膜30を形成した後、チャンバーから取り出して、位相シフト膜30の表面を、純水で洗浄を行った。純水洗浄条件は、温度30度、洗浄時間60秒とした。以降の処理は、実施例1~10、比較例のいずれにおいても共通であるので、実施例、比較例の表記を省略する。
次に、位相シフト膜30付きの透明基板20を第3チャンバー内に搬入し、第3チャンバー内にアルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとの混合ガスを導入し、反応性スパッタリングにより、位相シフト膜30上にクロムと窒素を含有するクロム窒化物(CrN)を形成した(膜厚15nm)。
次に、第4チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタンガスの混合ガスを導入し、反応性スパッタリングによりCrN上にクロムと炭素を含有するクロム炭化物(CrC)を形成した(膜厚60nm)。
最後に、第5チャンバー内を所定の真空度にした状態で、アルゴン(Ar)ガスとメタンガスの混合ガスと窒素(N)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスを導入し、反応性スパッタリングによりCrC上にクロムと炭素と酸素と窒素を含有するクロム炭化酸化窒化物(CrCON)を形成した(膜厚30nm)。
以上のように、位相シフト膜30上に、CrN層とCrC層とCrCON層の積層構造のエッチングマスク膜40を形成した。
このようにして、透明基板20上に、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40とが形成された位相シフトマスクブランク10を得た。
このようにして得られた実施例1~10、比較例1の位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30の透過率、裏面反射率、位相シフト量について、位相シフト量測定装置や分光光度計を用いて測定した。これらの結果を図1に示す。
Figure 0007490485000001
また、実施例1~10における位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜30について、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。
位相シフトマスクブランク10に対するXPSによる深さ方向の組成分析結果において、位相シフト膜30は、透明基板20と位相シフト膜30との界面の組成傾斜領域、および、位相シフト膜30とエッチングマスク膜40との界面の組成傾斜領域を除いて、深さ方向に向かって、各構成元素の含有率はほぼ一定であり、Moが2原子%、Zrが10原子%、Siが29原子%、Nが56原子%、Oが3原子%であった。また、モリブデンとジルコニウムの比率は、1:5であり、Mo:Zr=1.5:1~1:6の範囲内であった。また、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が、70原子%であり、〔Si/(Mo+Zr+Si)〕=50~88原子%の範囲内であった。なお、位相シフト膜30に酸素が含有されているのは、成膜時のチャンバー内に微量の酸素が存在していたものと考えられる。
B.位相シフトマスクおよびその製造方法
上述のようにして製造された実施例1~10、比較例における位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク100を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク10のエッチングマスク膜40上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚520nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、エッチングマスク膜上に、ホール径が1.5μmのホールパターンのレジスト膜パターンを形成した。
その後、レジスト膜パターンをマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液によりエッチングマスク膜をウェットエッチングして、第1のエッチングマスク膜パターン40aを形成した。
その後、第1のエッチングマスク膜パターン40aをマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜30をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン30aを形成した。このウェットエッチングは、断面形状を垂直化するためかつ要求される微細なパターンを形成するために、10%のオーバーエッチング時間で行った。
その後、レジスト膜パターンを剥離した。
その後、レジスト塗布装置を用いて、第1のエッチングマスク膜パターン40aを覆うように、フォトレジスト膜を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚520nmのフォトレジスト膜を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜を描画し、現像・リンス工程を経て、第1のエッチングマスク膜パターン40a上に、遮光帯を形成するための第2のレジスト膜パターン60を形成した。
その後、第2のレジスト膜パターン60をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により、転写パターン形成領域に形成された第1のエッチングマスク膜パターン40aをウェットエッチングした。
その後、第2のレジスト膜パターン60を剥離した。
このようにして、透明基板20上に、転写パターン形成領域にホール径が1.5μmの位相シフト膜パターン30aと、位相シフト膜パターン30aとエッチングマスク膜パターン40bの積層構造からなる遮光帯が形成された位相シフトマスク100を得た。
得られた位相シフトマスクの断面を走査型電子顕微鏡により観察した。実施例1~10における位相シフトマスクの断面においては、位相シフト膜パターン30aのエッジと透明基板20の主表面がなす角度は、いずれも75°以上であり、垂直に近い断面形状を有していた。実施例1~10における位相シフトマスクに形成された位相シフト膜パターン30aは、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状を有していた。また、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面はスムースで、透明基板20の表面荒れによる透過率低下は確認できなかった。また、得られた位相シフトマスクを電子線回折で観察したところ、アモルファス構造であることを確認した。また、位相シフト膜パターンには、エッチングマスク膜パターンとの界面と、基板との界面とのいずれにも浸み込みは見られず、耐薬性も良好であった。そのため、313nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む露光光、より具体的には、i線、h線およびg線を含む複合光の露光光において、優れた位相シフト効果を有する位相シフトマスクが得られた。
また、実施例1~10における位相シフトマスク100の裏面反射率は、表1に示されるように、いずれも10%未満であった。
このため、実施例1~10における位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを高精度に転写することができるといえる。
一方、比較例においても、位相シフト膜パターンの断面形状と、位相シフト膜30を除去した後の露出した透明基板20の表面状態を確認した。
その結果、比較例においては、位相シフト膜パターンに不純物や微小欠陥が含まれており、パターン形状は良好なものではなかった。また、裏面反射率も26%と高く、十分な転写精度が得られないものであった。また、比較例の位相シフトマスクの断面においては、位相シフト膜パターンのエッジと透明基板の主表面がなす角度は、55°であり、実施例に比較して、断面形状が悪化していた。
このため、比較例の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、表示装置上のレジスト膜に露光転写した場合、2.0μm未満の微細パターンを転写することは容易ではないことが予想される。
10…位相シフトマスクブランク(フォトマスクブランク)、20…透明基板、30…位相シフト膜、30a…位相シフト膜パターン、31…上層、32…下層、31a…上層パターン、32a…下層パターン、40…エッチングマスク膜、40a…第1のエッチングマスク膜パターン、40b…第2のエッチングマスク膜パターン、50…第1のレジスト膜パターン、60…第2のレジスト膜パターン、100…位相シフトマスク

Claims (9)

  1. 透明基板上に位相シフト膜を有するフォトマスクブランクであって、
    前記フォトマスクブランクは、フォトマスクを形成するための原版であり、該フォトマスクは、前記位相シフト膜をウェットエッチングにより得られる位相シフト膜パターンを前記透明基板上に有するフォトマスクであって、
    前記位相シフト膜は、上層と下層を含む積層膜であり、
    前記下層は、モリブデン(Mo)とジルコニウム(Zr)とケイ素(Si)と、窒素を含む材料からなり、モリブデンとジルコニウムの比率が、Mo:Zr=1.5:1~1:6であって、かつ、モリブデンとジルコニウムとケイ素の合計に対するケイ素の含有比率が50~70原子%であり、
    前記上層は、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)を含み、かつ、ジルコニウム(Zr)を含まない材料からなり、
    前記下層の厚さは、前記上層の厚さよりも小さいことを特徴とするフォトマスクブランク。
  2. 前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対して透過率が20%以上80%以下であり、位相差が160°以上200°以下の光学特性を備えていることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
  3. 前記位相シフト膜は、前記上層および前記下層のみを含む積層膜であり、
    前記下層の厚さは、前記位相シフト膜の厚さに対して、50%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
  4. 前記下層において、Moの含有量は、10原子量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
  5. 前記位相シフト膜は、露光光の代表波長に対する裏面反射率が、10%以下となるように、前記上層と前記下層の屈折率、消衰係数、および膜厚が設定されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
  6. 前記位相シフト膜上に、該位相シフト膜に対してエッチング選択性が異なるエッチングマスク膜を備えていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランク。
  7. 請求項1乃至5の何れか一に記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
    前記位相シフト膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
  8. 請求項6記載のフォトマスクブランクを準備する工程と、
    前記エッチングマスク膜上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜から形成したレジスト膜パターンをマスクにして前記エッチングマスク膜をウェットエッチングして、前記位相シフト膜上にエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、
    前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして、前記位相シフト膜をウェットエッチングして、前記透明基板上に位相シフト膜パターンを形成する工程と、を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
  9. 請求項7又は8に記載のフォトマスクの製造方法により得られたフォトマスクを露光装置のマスクステージに載置し、前記フォトマスク上に形成された転写パターンを、表示装置基板上に形成されたレジストに露光転写する露光工程を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
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