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JP7470288B2 - マイクロ流体デバイス - Google Patents

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JP7470288B2
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Description

この発明は、マイクロ流体デバイスに関する。
従来、細胞及び組織培養は、寒天又は培地とした培養ディッシュやプレートを使用して行われてきた。これら培養ディッシュやプレートを用いた細胞及び組織の培養は、2次元(平面)の環境で行われるものであるため、細胞外微小環境を再現することができない。そこで、近年、従来法では困難であった、3次元(立体)の細胞培養・実験環境を作製できるマイクロ流路を有する、マイクロ流体デバイス(「細胞培養チップ」、「バイオチップ」又は「マイクロチップ」とも称される)が提案されている。
例えば、特許文献1には、二つの基板を互いに接合して、少なくとも一方の基板に形成された流路形成用段差によって、接合した両基板の接合部に包囲された流路を形成したマイクロ流体デバイスが記載されている。
ところで、複数の分析プレートをホルダーに収容したアセンブリを分析装置に供することが知られている(特許文献2参照)。ホルダーは、分析プレートの側面に設けられた突起に対応する凹部を有し、突起と凹部を嵌め合わせることでホルダーに対して分析プレートを固定している。
特開2019-078707号公報 特開2019-105528号公報
複数の基板を接合して形成されたマイクロ流路を有するプレートを、保持体に収容したマイクロ流体デバイスが求められている。プレートを保持体に収容したマイクロ流体デバイスを分注装置のテーブルに載置できると、取扱う上での利便性が向上する。
しかしながら、斯かるマイクロ流体デバイスを分注装置のテーブルに配置し、分注装置のピペットチップからプレートに設けられた開口に流体を注入しようとしても、開口の位置に対してピペットチップの位置がずれることがあった。
ピペットチップの位置ずれについて説明する。通常、分注装置は自動化されている。分注装置は、指定の位置に載置されたマイクロ流体デバイスの開口位置を記憶しておき、ピペットチップを記憶した開口位置まで移動させて分注動作を行う。しかしながら、分注装置に対する開口の位置がずれていると、ピペットチップの移動先が開口位置からずれてしまう。そうすると、ピペットチップ内の流体をマイクロ流路に注入できない問題や、流体を注入するためにピペットチップの先端を開口内に挿入しようとして、ピペットチップをプレートの表面に衝突させて、ピペットチップやプレートを破損する問題が生じることもある。
本発明者らが、分注装置に対するプレートの開口の位置がずれる原因を分析したところ、マイクロ流体デバイス内において、プレートの側面を使用して保持体に対してプレートを位置決めしても、開口の位置が固定されないことに原因があった。この原因について、図24及び図25を参照しながら説明する。
図24は、あるマイクロ流体デバイスの断面図を示している。マイクロ流体デバイス500は、流体を注入する開口94が形成された第一基板92と第二基板93とが接合されたプレート91を、保持体95に収容されてなる。プレート91を保持体95の内部に収容しやすいように、保持体95の内寸法は、プレート91の寸法よりも少し大きな値に設計されている。
分注装置に対するプレート91の開口94の位置を固定するために、保持体95に対してプレート91を予め定めた位置に位置決めしなければならない。そこで、プレート91の外側面を保持体95の基準となる内壁面97に押しつけることで、プレート91を位置決めする。そうすると、マイクロ流体デバイス500の端から開口94の中心までの距離が、既定値M1となる。
しかしながら、プレートの中には、第一基板と第二基板とがずれて接合されたプレートが存在する。図25は、図24で示されたものとは異なるマイクロ流体デバイスの断面図を示している。図25に示されたマイクロ流体デバイス600に収容されたプレート99は、斯かるプレートの一例を示している。プレート99を保持体95に対して決められた位置に位置決めするために、プレート99の外側面を保持体95の基準となる内壁面97に押しつける。しかしながら、第二基板93の第二側面93cが内壁面97に接触するため、第一基板92の第一側面92cと内壁面97との間に隙間d1が発生してしまう。その結果、マイクロ流体デバイス600の端から開口94の中心までの距離が、M1+d1となり、隙間d1の分だけ既定値からずれてしまう。
つまり、分注装置に対するプレートの開口の位置ずれは、プレートを構成する基板どうしの位置ずれに原因があることが判明した。この原因分析の結果を踏まえて、本発明は、ピペットチップを高精度に位置決めできるマイクロ流体デバイスを提供することを目的とする。
本発明のマイクロ流体デバイスは、流体を注入する開口が形成された第一主面、前記第一主面の反対側の第二主面、及び前記第一主面と前記第二主面とを連絡する第一側面を有する第一基板と、前記第二主面に接合されてなる第二基板とを有するプレートと、
前記プレートの外側面と離間した状態で前記プレートの前記外側面を取り囲む内壁面と、前記プレートの前記第二基板が載置された下面とを有する保持体と、
前記第一基板及び前記保持体の少なくとも一方の表面の一部領域に形成され、前記表面から前記第一基板と前記保持体とが対向する方向に向かって突出して前記第一基板と前記保持体とを接触させる突出部と、を含む。
詳細は後述するが、第一基板及び第二基板から構成されるプレート全体と保持体とを接触させるのではなく、突出部を使用することで、第一基板と保持体とを接触させる。これにより、第一基板を保持体に対し高精度に位置決めできる。そして、開口は第一基板に設けられているので、第一基板を保持体に対して高精度に位置決めすると、開口の位置が規定の位置からずれることを抑えられる。
前記突出部の嵌め込まれる凹部が、前記第一基板及び前記保持体の少なくとも一方の表面の一部領域に形成されていても構わない。
前記突出部は、第一方向に延びる前記内壁面又は前記第一側面から、前記第一方向に直交する第二方向に突出する少なくとも二つの突出部と、前記第二方向に延びる前記内壁面又は前記第一側面から、前記第一方向に突出する少なくとも一つの突出部と、を含んでも構わない。
前記保持体は、前記第一側面の一部領域に接触する弾性体を備え、
前記弾性体の接触する前記第一側面は、前記第二基板を挟んで前記突出部に対向する位置にあっても構わない。
前記マイクロ流体デバイスは、前記保持体の内側に嵌め込まれ、前記第一基板の前記第一主面に形成された前記開口を露出させるとともに、前記第一主面の前記開口の形成された領域の外側を覆う上枠を備え、
前記上枠の枠底の一部分に、前記枠底から突出して、前記第一基板の前記第一側面に接触する第二突出部を有しても構わない。
前記上枠は貯液槽を有しても構わない。
前記マイクロ流体デバイスを、細胞又は組織の培養に使用しても構わない。
これにより、ピペットチップを高精度に位置決めできるマイクロ流体デバイスを提供できる。
マイクロ流体デバイスの第一実施形態の斜視図である。 プレートの上面図である。 プレートの側面図である。 図2のA1-A1線における断面図である。 保持体の上面図である。 図5のB1-B1線における断面図である。 図1のA2領域を拡大した上面図である。 図7のC1-C1線における断面図である。 図7のC2-C2線における断面図である。 プレートの変形例を示している。 位置決め要素の第一変形例を示す。 位置決め要素の第二変形例を示す。 位置決め要素の第三変形例を示す。 位置決め要素の第四変形例を示す。 図13のC3-C3線における断面図である。 位置決め要素の第五変形例の上面図である。 図15のC4-C4線における断面図である。 位置決め要素の第六変形例を示す。 マイクロ流体デバイスの第二実施形態の上面図である。 図18のB2-B2線における断面図である。 マイクロ流体デバイスの第三実施形態の斜視図である。 上枠の斜視図である。 図20のB3-B3線における断面図である。 図22Aの断面図で示されたマイクロ流体デバイスを組み立てる様子を模式的に示す図である。 図20のB4-B4線における断面図である。 図23Aの断面図で示されたマイクロ流体デバイスを組み立てる様子を模式的に示す図である。 従来発生していた開口の位置ずれの原因を説明するための図である。 従来発生していた開口の位置ずれの原因を説明するための図である。
マイクロ流体デバイスの実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書に開示された各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
以下において、XYZ座標系を適宜参照して説明される。また、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。本実施形態において、水平面は、XY平面に平行であり、鉛直方向は、-Z方向である。後述するプレート及びプレートを構成する基板の主面は、XY平面に平行となるように示されている。
<第一実施形態>
マイクロ流体デバイスの第一実施形態について説明する。図1は、マイクロ流体デバイス100の斜視図である。マイクロ流体デバイス100は、細胞又は組織を培養し、培養した物を分析するためのプレート1と、プレート1を下方から支持する保持体5と、を有する。保持体5は、XY平面上においてプレート1の側面を取り囲む形状を有している。プレート1は、保持体5の上側(+Z側)から保持体5の内側に嵌め込むことができる。
[プレート]
プレート1について説明する。図2は、プレート1の上面図である。プレート1は、細胞や組織を含む流体を注入する開口21と、細胞や組織を培養し、分析するための溝24を有する。図3は、プレート1の側面図であり、プレート1が第一基板2と第二基板3とが接合されてなることを模式的に示している。
図3に示されるように、第一基板2は、第一主面2aと、第一主面2aの反対側の面である第二主面2bと、第一主面2aと第二主面2bとを連絡する第一側面2cと、を有する。第二基板3は、二つの主面と、当該二つの主面を連絡する第二側面3cとを有する。第一基板2は、第二主面2bが第二基板3の一方の主面に接するように接合される。接合は、例えば、第一基板2及び第二基板3の接合面に172nmの紫外光を照射することにより、接合面を活性化させて貼り合わせることにより行われる。なお、本実施形態において、第二基板3の厚み(Z方向における寸法)は、第一基板2の厚み(Z方向における寸法)より薄い。
図2に示されるように、本実施形態において、第二基板3はZ方向に見たときに第一基板2よりも小さい。これにより、第二基板3を第一基板2に接合する際、両基板を本来の位置から多少ずれて接合したとしても、第二基板3が第一基板2の第一側面2cから外側に突出しにくくなる。第一基板2及び第二基板3は、全体として略矩形板状である。第一基板2を第一主面2a側から見たときに見える角部(28,29)のうち、-X方向に位置する二つの角部28は面取り形状を有し、+X方向に位置する二つの角部29は面取り形状を有していない。-X方向に位置する角部28にのみ面取り形状を設けることにより、保持体5に対するプレート1の向きを間違えることなく、プレート1を嵌め込むことができる。
図4は、図2のA1-A1線における断面図である。第一基板2には、第二主面2b上には溝24が形成され、第一主面2aには開口21が形成されている。開口21の第一基板2の入口付近には、流体を注入する際、流体が漏れないように面取り形状22が設けられている。開口21は溝24に接続されている。
第二基板3は、二つの開口21に接続された溝24を覆うように、第一基板2の第二主面2bに接合されている。溝24は、第一基板2と第二基板3の主面どうしが接合されることにより、両基板(2,3)に挟まれた中空状の流路として機能する。この中空状の流路は、マイクロメートルからミリメートルのオーダーの幅及び深さを有するマイクロ流路(微小流路)である。接続された二つの開口21からマイクロ流路に微小体積の流体を注入したり、マイクロ流路から開口21を介して流体を排出したりすることができる。マイクロ流路は、流路内に流体があるときに、当該流体が流れを形成する状態にあるとはかぎらない。例えば、細胞や組織を培養するために、細胞を含む流体を貯溜する状態など、流体の流れの無い状態にあることを含む。
第一基板2又は第二基板3を構成する材料として、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン(PS)、シリコーン等の樹脂材料が挙げられる。本実施形態では、第一基板2及び第二基板3に、耐熱性・透明性が高く、蛍光検出の際の自家蛍光が少ない、COPを使用している。なお、第一基板2及び第二基板3に、上述した樹脂材料が2種以上組み合わせられた材料を使用しても構わない。また、第一基板2と第二基板3とで使用する材料を異ならせても構わない。
図2を参照して、第一基板2の第一側面2cには凹部(25,27)が設けられる。詳細は後述するが、凹部(25,27)に保持体5の突出部が嵌め込まれ、突出部の先端は凹部(25,27)内に接触する。
[保持体]
本実施形態における保持体について説明する。図5は、保持体5の上面図である。図5に示されるように、保持体5は、中央領域4が貫通した枠形状を呈している。保持体5の中央領域4が貫通しているため、マイクロ流体デバイス100の上側(+Z側)から光を照射し、マイクロ流体デバイス100の下側(-Z側)においてプレート1の溝24を透過した光を分析できる。マイクロ流体デバイス100の下側から光を照射し、マイクロ流体デバイス100の下側においてプレート1の溝24の内部で反射又は散乱した光を分析しても構わない。
保持体5は、保持体5の中央領域4が貫通していない形状、すなわち、有底形状でも構わない。保持体5が有底形状であり、光を透過しにくい場合には、マイクロ流体デバイス100の上側から光を照射し、プレート1の溝24の内部で反射又は散乱した光を保持体5の上側で受光して、分析を行うとよい。
図5において、保持体5のY方向に延びる外壁面18の延長線と、X方向に延びる外壁面19の延長線との交点R1は、保持体5を分注装置に載置する際の位置決め基準である。プレート1を嵌め込んだ保持体5(すなわち、マイクロ流体デバイス100)は、分注装置のテーブル(不図示)の上に、位置決めされた状態で載置される。保持体5の分注装置のテーブルに対する位置決めは、例えば、交点R1の位置及び外側面(18,19)の延びる方向に基づいて行われるとよい。
図6は、図5のB1-B1線における断面図である。図5及び図6を参照して、保持体5は、プレート1の側面に対向する内壁面12と、プレート1を支持する支持面13とを有する。支持面13はプレート1を構成する第二基板の主面に接触する。
保持体5の材質は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン(PS)、シリコーン等の樹脂材料、又は金属材料が挙げられる。本実施形態では、保持体5にPSを使用している。
[位置決め要素]
プレート1を保持体5に対して位置決めするために、マイクロ流体デバイス100は位置決め要素を有する。本実施形態では、位置決め要素として、内壁面12の一部領域に、中央領域4に向けて突出する突出部(15,17)を有する(図1、図5参照)。突出部15は、保持体5のY方向に延びる内壁面12の一部領域から、+X方向に突出する。突出部17は、保持体5のX方向に延びる内壁面12の一部領域から、-Y方向に突出する。なお、本明細書において、突出部(15,17)は内壁面12の一部ではなく、内壁面12とは別体のものとして扱われる。後述する変形例において、突出部が第一基板2の第一側面2cから突出する場合も、同様である。
突出部15の位置決め機能について説明する。図7は図1のA2領域(突出部15の周辺領域)を拡大した上面図である。図8Aは図7のC1-C1線における断面図であり、突出部15が形成された領域に対応する。図7を参照して、突出部15は、第一基板2の第一側面2cに形成された凹部25に挿入される。挿入された突出部15は、凹部25内の側面25aに接触する。図8Aに示されるように、挿入された突出部15は、第二基板3の第二側面3cに接触しない。保持体5にプレート1を嵌め込む際、第一基板2の側面25aが突出部15に接触するように、プレート1を保持体5に-X方向に押しつけることで、保持体5の突出部15は、X方向について第一基板2を高精度に位置決めするための位置決め要素として機能する。また、突出部15は、図7に示されるように、凹部25にY方向の遊びを有した状態で挿入されることから、第一基板2を保持体5に対して、Y方向に粗く位置決めできるという効果も有する。なお、図8Aに示されるように、本実施形態の突出部15は支持面13と接しているが、突出部は支持面13に接していなくても(支持面13から浮いていても)構わない。
図8Bは図7のC2-C2線における断面図であり、突出部15が形成されていない領域に対応する。図8Bに見られるように、突出部15のない部分では、内壁面12が第二基板3の第二側面3cと第一基板の第一側面2cの両方に接触しない。まず、第二基板3の第二側面3cに接触しないので、第二基板3の第二側面3cがプレート1の位置決めに使用されることがない。また、第一基板2と保持体5とが接触する箇所が、第一基板2の第一側面2cの全域ではなく、突出部15にある領域に限定されるため、第一基板2の突出部15を除く第一側面2cに、局所的な撓みや異常な凹凸を有する場合でも、第一基板2を含むプレート1の保持体5に対する位置決めに影響を与えにくい。
突出部15と同様に、突出部17も、Y方向について第一基板2を高精度に位置決めするための位置決め要素として機能する。よって、突出部15,17を第一基板2の第一側面2cに押しつけることで、X方向及びY方向について、第一基板2を保持体5に対し高精度に位置決めできる。そして、上述したように、保持体5は分注装置のテーブルに対して高精度に位置決めできるから、位置決め要素を使用することで、第一基板2を、分注装置のテーブルに対して高精度に位置決めできる。
したがって、本実施形態のマイクロ流体デバイス100を分注装置のテーブルに載置したとき、第一基板2に設けられた開口21に対し、分注装置のピペットチップを高精度に位置決めできる。また、マイクロ流体デバイス100を分析に使用するときは、分析箇所である溝24(マイクロ流路)の、分析装置に対する位置を、高精度に位置決めできる。
本実施形態では、保持体5は、Y方向に延びる内壁面12から+X方向に突出する突出部15と、X方向に延びる内壁面12から-Y方向に突出する突出部17とを、それぞれ二つずつ、計四つ有している(図5参照)。しかしながら、第一基板2のX方向及びY方向の精確な位置決めには、突出部(15,17)が少なくとも三つ以上あるとよい。少なくとも三つの突出部(15,17)は、第一方向(例えば、X方向)に延びる保持体5の内壁面12又は第一基板2の第一側面2cから、第一方向に直交する第二方向(例えば、Y方向)に突出する少なくとも二つの突出部と、第二方向に延びる保持体5の内壁面12又は第一基板2の第一側面2cから、第一方向に突出する少なくとも一つの突出部と、を含んでいるとよい。
突出部(15,17)は、基準R1から離れた位置に形成されるほど、第一基板2を高精度に位置決めできる。最も基準R1に近い突出部17と基準R1との間隔は、プレート1のX方向における長さの1/3以上であるとよい。同様に、最も基準R1に近い突出部15と基準R1との間隔は、プレート1のY方向における長さの1/3以上であるとよい。突出部15が一つだけのときは、突出部15と基準R1との間隔は、プレート1のY方向における長さの1/2以上あるとよい。
一方向に延びる一つの内壁面12に複数の突出部(15,17)を設ける場合には、突出部(15,17)どうしの間隔が大きいほど、高精度かつ安定的に位置決めできる。例えば、X方向に延びる一つの内壁面12に、-Y方向に突出する突出部17が二つあるとき、この二つの突出部17の間隔が、プレート1のX方向における長さの1/2以上あるとよい。同様に、Y方向に延びる一つの内壁面12に+X方向に突出する突出部15が二つあるとき、この二つの突出部15の間隔が、プレート1のY方向における長さの1/2以上あるとよい。
突出部(15,17)は、当該突出部の基部を構成する材料と同じ材料から構成されても構わない。つまり、保持体から突出する場合には保持体と同じ材料から構成され、第一基板から突出する場合には第一基板と同じ材料から構成されても構わない。同じ材料から構成することで一体成型できるなどの利点が得られる。当該突出部の基部を構成する材料と異なる材料から突出部が構成されても構わない。突出部(15,17)を、保持体5又は第一基板2よりも高剛性となるように、材料、形状又は寸法等を選択しても構わない。
[プレートの変形例]
図9には、プレートの変形例を示している。本変形例のプレート30では、第二基板31が第一基板2よりも大きい。この変形例において、第二基板31が大きくなっても、第二基板31が保持体5の突出部(15,17)に接触しないようにすることを要する。そこで、保持体5の突出部(15,17)が接触するプレート1の凹部(25,27)付近では、第一基板2が第二基板31よりも外側に位置するように、両基板の形状を設計しておく。具体的には、第二基板31の凹部(25,27)を第一基板の凹部(25,27)よりも大きく形成する。これにより、保持体5の突出部(15,17)を、第二基板31に接触させることなく第一基板2に接触させる。
[位置決め要素の第一変形例]
図10を参照しながら、位置決め要素の第一変形例を示す。図10は、X方向の位置決め要素の周辺領域の上面図である。第一変形例では、第一基板2は、第一基板2の第一側面2cに、位置決め要素としての突出部61を有する。そして、突出部61が保持体5の凹部51内の内壁面51aに接触する。これにより、第一基板2の保持体5に対するX方向の位置決めができる。
[位置決め要素の第二変形例]
図11を参照しながら、位置決め要素の第二変形例を示す。図11は、X方向の位置決め要素周辺の上面図である。第二変形例では、位置決め要素である保持体5の突出部15が、第一基板2の凹部に挿入されることなく、第一基板2の平坦な第一側面2cに接触している。突出部15が第一基板2の凹部に挿入されなくても、第一基板2の保持体5に対するX方向の位置決めができる。
[位置決め要素の第三変形例]
図12を参照しながら、位置決め要素の第三変形例を示す。図12は、X方向の位置決め要素周辺の上面図である。第三変形例では、第一基板2が、第一側面2cに、位置決め要素としての突出部61を有している。そして、突出部61が保持体5の平坦な内壁面12に接触する。これにより、第一基板2の保持体5に対するX方向の位置決めができる。
[位置決め要素の第四変形例]
図13を参照しながら、位置決め要素の第四変形例を示す。図13は、X方向の位置決め要素周辺の上面図である。図14は、図13のC3-C3線における断面図である。図13に示されるように、第四変形例では、保持体5はY方向に延びる内壁面12から+X方向に突出する突出部16を有する。図14に示されるように、突出部16は、下側(-Z側)に、第一基板2と接触する接触面16aを有する。接触面16aは、第一基板2の第一主面2aの外周縁(開口の形成された領域の外側領域)に接触し、第一主面2aを-Z方向に押す。接触面16aと第一主面2aの外周縁との間に摩擦が生じ、第一基板2のXY方向への移動が制限される。つまり、第一基板2は、上方において接する突出部16により、XY方向に位置決めされる。
[位置決め要素の第五変形例]
図15を参照しながら、位置決め要素の第五変形例を示す。図15は、X方向の位置決め要素周辺の上面図である。図16は、図15のC4-C4線における断面図である。第五変形例では、保持体5の突出部16の下側の接触面16aが、第一基板2の第一主面2aの外周縁において、第一主面2aよりも低くなった(-Z方向に位置する)凹部の底面2eを-Z方向に押す。接触面16aと底面2eとの間に生じた摩擦により、第一基板2はX方向及びY方向への移動が制限される。さらに、突出部16が第一主面2aと凹部との間に形成される壁2fに接触することで、第一基板2は、壁2fとの接触によりX方向に位置決めされる。よって、第一基板2は、底面2eとの接触による摩擦及び壁2fとの接触により位置決めされる。
[位置決め要素の第六変形例]
図17を参照しながら、位置決め要素の第六変形例を示す。本変形例では、保持体5の支持面13から柱状の突出部14が上向き(+Z方向)に突出している。第一基板2の第二主面2bには凹部26が設けられている。本変形例では、保持体5にプレート1を嵌め込む際、第一基板2の凹部26に突出部14が嵌め込まれるようにプレート1を配置する。突出部14が凹部26に挿入されると、第一基板2はXY方向に位置決めされる。なお、第一基板2の第二主面2bに下向き(-Z方向)に突出する突出部が設けられ、保持体5の支持面13に前記突出部が挿入される凹部が設けられても構わない。
以上で、第一~第六変形例を説明した。全ての位置決め要素に上記変形例を適用しても構わないし、一部の位置決め要素に上記変形例を適用しても構わない。また、位置決め要素ごとに異なる変形例を適用しても構わない。例えば、X方向に並んで設けられる突出部のうち、一部の突出部は第一基板2の表面から保持体5の表面に向かって突出する突出部を適用し、残りの突出部は保持体5の表面から第一基板2の表面に向かって突出する突出部を適用しても構わない。
<第二実施形態>
図18及び図19を参照しながら、マイクロ流体デバイスの第二実施形態について説明する。以下に説明する以外の事項は、第一実施形態と同様に実施できる。第一実施形態で示した種々の変形例は、特に言及されないかぎり第二実施形態にも適用できる。第三実施形態も同様である。
図18は、マイクロ流体デバイス200の上面図である。マイクロ流体デバイス200は、プレート1を挟んで突出部(15,17)に対向する位置に、弾性体(45,47)を有する。
図19は、図18のB2-B2線における断面図である。図19を参照しながら、弾性体45の作用について説明する。本実施形態において、弾性体45は、保持体5の内壁面12に接して固定されている。弾性体45は、突出部15よりも撓みやすく設計されており、プレート1を保持体5に嵌め込んでいないときの、弾性体45と弾性体45に対向する突出部15とのX方向における間隔は、第一基板2のX方向の寸法よりも若干小さく設計されている。これにより、第一基板2を含むプレート1を保持体5に嵌め込んだとき、弾性体45が撓み、弾性体45が第一基板2に反力としての押しつけ力を与える。そして、反力を受けた第一基板2(又は第一基板2の突出部)は、保持体5(又は保持体5の突出部)と、より密着しようとするため、第一基板2(プレート1)の保持体5に対する位置決め精度が向上する。
弾性体45には、位置決め要素である突出部15よりも剛性の小さい材料を使用する。典型的には、弾性体45は、突出部15よりも撓みやすい樹脂を使用する。弾性体45は、樹脂の他に、板ばね等の弾性体で構成されても構わない。
しかしながら、弾性体45は、突出部15の材料と同じ材料から構成されても構わない。突出部15の材料と同じ材料から構成される場合には、突出部15及び保持体5と一体成型できるなどの利点が得られる。弾性体45に突出部15と同じ材料を使用する場合には、突出部15よりも弾性体45を薄く設計するなど、弾性体45の寸法や形状を突出部15の寸法や形状と異ならせることで、弾性体45の剛性を突出部15よりも剛性を小さくするとよい。
本実施形態の弾性体45は、+Z方向に進むにつれてY方向の長さが短くなる傾斜面45aを有している。これにより、保持体5に対し、プレート1を+Z方向から-Z方向に嵌め込みやすくできる。また、本実施形態では、弾性体45が突出部15と同じ数であり、かつ、Y方向に同じ位置に配置されているが、弾性体45は、突出部15と異なる数でも構わないし、Y方向に異なる位置に配置されても構わない。
上記では、-X方向に押しつけ力を与える弾性体45について説明したが、上記の内容は、弾性体47についても同様である。
<第三実施形態>
図20~図23Bを参照しながら、マイクロ流体デバイスの第三実施形態について説明する。図20は、マイクロ流体デバイス300の斜視図である。図21は、後述する上枠の斜視図である。図22Aは、図20のB3-B3線における断面図である。図22Bは、図22Aの断面図で示されたマイクロ流体デバイスを組み立てる様子を模式的に示す図である。図23Aは、図20のB4-B4線における断面図である。図23Bは、図23Aの断面図で示されたマイクロ流体デバイスを組み立てる様子を模式的に示す図である。
マイクロ流体デバイス300は、上枠50を有する。上枠50は、中央領域4が貫通した枠形状を呈している(図21参照)。上枠50は、プレート1を保持体5に嵌め込んだ後に、上枠50が保持体5の内側に嵌め込まれる(図22B、図23B参照)。嵌め込まれた上枠50の枠底55は、第一基板2の第一主面2aの外周縁(開口21の形成された領域の外側領域)を覆う(図22A,図23A参照)。上枠50は、開口21の形成された領域を覆わない大きさ及び形状に設計されている。これにより、上枠50を保持体5に嵌め込んだ状態で開口21に流体を注入できる。
図22Bに示されるように、図20のB3-B3線の周辺では、保持体5が突出部15を有している。第一基板2の第一側面2cは、突出部15に接触して、第一基板2がX方向に位置決めされる。B3-B3線の周辺において、上枠50は第一主面2aの外周縁と突出部15に積層されるのみで、X方向の位置決め要素として機能していない。
図23Bに示されるように、図20のB4-B4線の周辺では、保持体5が突出部15を有していない。一方で、上枠50が、枠底55の一部分が突出した第二突出部53を有する。上枠50が嵌め込まれると、第二突出部53は、第一基板2の第一側面2cに接触し、第一基板2がX方向に位置決めされる。つまり、B4-B4線の周辺において、上枠50は、X方向の位置決め要素として機能する。
上述したように、本実施形態の位置決め要素は、保持体5と上枠50の両方に設けられる。これにより、第一基板2が保持体5に対して高精度に位置決めされる。上枠50が嵌め込まれる前の段階では、第一基板2と保持体5との間に遊びを残す、緩い位置決めで構わないため、プレート1の保持体5内へ嵌め込みを容易にできる。そして、上枠50を保持体5に嵌め込むことで、位置決め要素の数が増えて、第一基板2が保持体5に対して高精度に位置決めされるようになる。よって、嵌め込み作業の容易性と第一基板2の高精度の位置決めとを両立できる。
上枠50は、枠底55、内枠57、外枠58及び区画板59に囲まれた貯液槽56を複数有している(図21、図22A、図23A参照)。貯液槽56とは、液体を貯溜可能に構成された容器である。複数の貯液槽56が、プレート1の中央領域4を囲むように配置されている。貯液槽56の目的は、プレート1内に注入される液の濃度変化を抑制することである。プレート1内に注入される液は微量であるため、時間の経過とともに注入した液の成分が蒸発することがある。液の成分の一部が蒸発すると溝24に残存する液の濃度が変化するため、細胞の培養や分析に好ましくない。そこで、貯液槽56に、プレート1の雰囲気の湿度を制御するための液体(例えば、水)を注入し、当該液体を貯溜する。これにより、プレート1の雰囲気の湿度の低下を防ぎ、プレート1に注入された液の蒸発を防ぐ。
以上で第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態を説明した。しかしながら、本発明は、上述した各実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、上述の各実施形態を組み合わせたり、各実施形態に種々の変更又は改良を加えたりできる。
上記では、X方向及びY方向の両方向についてプレート1を位置決めすることを念頭に説明したが、X方向又はY方向の一方向について保持体5に対し位置決めする場合にも、当該一方向のみではあるが高精度の位置決め効果が得られる。一方向への位置決めのための位置決め要素は、一つ以上あればよい。
上記では、プレート1は、第一基板2と第二基板3の二枚の基板から構成されたが、プレート1を三枚以上の基板で構成してもよい。三枚以上の基板で構成される場合には、開口の有する第一基板2及び保持体5の少なくとも一方の一部領域に、第一基板と保持体とを接触させる突出部を設ける。そして、第一基板と保持体とを接触させるこの突出部は、開口を有する第一基板を除く基板に接触させない、又は、開口を有する第一基板を除く基板に設けない。
マイクロ流体デバイスの用途として、細胞や組織の培養及び分析を上述した。しかしながら、本発明に係るマイクロ流体デバイスは、細胞や組織の培養と分析の用途以外にも適用できる。例えば、本発明に係るマイクロ流体デバイスは、化学薬品の混合、分離、反応、合成、抽出又は分析等にも使用できる。
1,30 :プレート
2,42 :第一基板
2a :(第一基板の)第一主面
2b :(第一基板の)第二主面
2c :(第一基板の)第一側面
2e :(第一基板の)凹部
2f :(第一基板の)壁
3,31 :第二基板
3c :(第二基板の)側面
4 :中央領域
5 :保持体
12 :(保持体の)内壁面
13 :(保持体の)支持面
14,15,16,17,61:突出部
16a :(突出部の)接触面
18,19:(保持体の)外壁面
21 :(第一基板の)開口
22 :(開口の)面取り形状
24 :溝
25,26 :凹部
25a :(凹部内の)側面
28,29 :角部
45,47 :弾性体
50 :上枠
51 :(保持体の)凹部
52 :(上枠の)外周面
53 :第二突出部
55 :枠底
56 :貯液槽
57 :内枠
58 :外枠
59 :区画板
100,200,300 :マイクロ流体デバイス

Claims (8)

  1. 流体を注入する開口が形成された第一主面、前記第一主面の反対側の第二主面、及び前記第一主面と前記第二主面とを連絡する第一側面を有する第一基板と、前記第二主面に接合されてなる第二基板とを有するプレートと、
    前記プレートの外側面と離間した状態で前記プレートの前記外側面を取り囲む内壁面と、前記プレートの前記第二基板が載置された下面とを有する保持体と、
    前記第一基板及び前記保持体の少なくとも一方の表面の一部領域に形成され、前記表面から前記第一基板と前記保持体とが対向する方向に向かって突出して前記第一基板と前記保持体とを接触させる突出部と、を備えることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
  2. 前記突出部の嵌め込まれる凹部が、前記第一基板及び前記保持体の少なくとも一方の表面の一部領域に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
  3. 前記突出部は、前記第一側面及び前記内壁面の少なくとも一方から突出してなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のマイクロ流体デバイス。
  4. 前記突出部は、第一方向に延びる前記内壁面又は前記第一側面から、前記第一方向に直交する第二方向に突出する少なくとも二つの突出部と、前記第二方向に延びる前記内壁面又は前記第一側面から、前記第一方向に突出する少なくとも一つの突出部と、を含むことを特徴とする、請求項3に記載のマイクロ流体デバイス。
  5. 前記保持体は、前記第一側面の一部領域に接触する弾性体を備え、
    前記弾性体の接触する前記第一側面は、前記第二基板を挟んで前記突出部に対向する位置にあることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
  6. 前記保持体の内側に嵌め込まれ、前記第一基板の前記第一主面に形成された前記開口を露出させるとともに、前記第一主面の前記開口の形成された領域の外側を覆う上枠を備え、
    前記上枠の枠底の一部分に、前記枠底から突出して、前記第一基板の前記第一側面に接触する第二突出部を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
  7. 前記上枠は貯液槽を備えることを特徴とする、請求項6に記載のマイクロ流体デバイス。
  8. 細胞又は組織の培養に使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
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