本発明の第1および第2の実施の形態による電池制御装置について、図1~図13を用いて以下に説明する。いずれの電池制御装置においても、車両の走行駆動装置とその走行駆動装置へ電力を供給する電池との電気的なリレー接続状態が、環境条件に応じた所定タイミングで判定されることによって、そのリレー接続状態についての誤判定の可能性が低減される。その所定タイミングは、走行駆動装置と電池との間に介挿されるリレー素子をリレードライバ回路が駆動する際の電圧条件および/または温度条件に応じて延期される。
-第1の実施の形態-
図1は、本発明の第1の実施の形態による電池制御装置110を有する電源装置10と、車両制御装置20と、車両の走行駆動装置30と、補機用電源50とを含む車載システム1の一例を示す図である。電源装置10は、電池制御装置110に加え、走行駆動装置30へ電力を供給する電池120と、走行駆動装置30と電池120の正極との間に介挿されるリレー素子130と、リレー素子130の出力側電圧Vdを測定する電圧計160とを有する。リレー素子130は、スイッチ1310と、スイッチ1310を開閉させるためのコイル1320とを含む。補機用電源50は、例えば電圧値Vs=12[V]の電圧を出力し、車両制御装置20、電池制御装置110およびその他の各種部材へ電力を供給する。車両が長期間利用されなかったために補機用電源50に電圧の低下が生じている場合、補機用電源50の電圧値Vsは12[V]よりも小さい値Vssとなるので、以下の説明において12[V]をVssに読み替えることとしてもよい。
電池120は、複数のセルによって構成され、電圧値Voの電圧を出力する。開いたスイッチ1310が閉じることによって、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態が、OFFからONに切り替わると、リレー素子130の出力側電圧Vdの値は、0から、電池120の電圧値Voに変化する。このリレー素子130の出力側電圧Vdの大きさ|Vd|=Voが、電源装置10によって出力される電圧値となる。
電池制御装置110は、プロセッサ1110と、メモリ1120と、リレードライバ回路1130と、電源電圧センサ1140と、リレー駆動電源1150と、周期タイマTx1160と、判定待ちタイマTy1170と、判定猶予上限タイマ1180とを含む。電池制御装置110を構成するそれらの各部材は、不図示の電源ICを介して補機用電源50からの電力供給を受ける。例えば、リレー駆動電源1150は、補機用電源50から供給された電力に基づいて、リレードライバ回路1130へ電圧を印加する。プロセッサ1110とメモリ1120とがコンピュータとして機能し、プロセッサ1110は、メモリ1120に格納されたコンピュータプログラムを実行することによって、情報取得部1111と、測定値取得部1112と、信号出力部1113と、接続状態判定部1114とを、論理的に有する。
リレードライバ回路1130は、例えば集積回路(IC)で構成される。プロセッサ1110の信号出力部1113により出力される後述のリレー接続制御信号がリレードライバ回路1130に入力されると、リレードライバ回路1130は、リレー素子130を駆動し、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替える。リレードライバ回路1130は、リレー素子130を駆動する際、リレー駆動電源1150によってリレードライバ回路1130へ印加される印加電圧に応じて、リレー素子130のコイル1320に励磁電流を流す。コイル1320に流れる励磁電流によって発生する電磁力にしたがって、スイッチ1310が閉じる。リレードライバ回路1130が、コイル1320に励磁電流を流すのを停止すると、スイッチ1310が開く。
本実施の形態において、リレー駆動電源1150によりリレードライバ回路1130へ印加される印加電圧の電圧値Vaは、補機用電源50から電池制御装置110に対して出力される電圧値Vs=12[V]に等しい。電源電圧センサ1140が収集した補機用電源50の電圧値が、リレードライバ回路1130へ印加される印加電圧に相当する電圧値として、プロセッサ1110の測定値取得部1112によって取得されることとする。なお、リレードライバ回路1130に印加電圧センサを設けることによって、測定値取得部1112が、リレードライバ回路1130へ印加される印加電圧を、リレードライバ回路1130から直接的に取得することとしてもよい。
電池制御装置110のプロセッサ1110が有する情報取得部1111は、CAN(Controller Area Network)を介した通信により、車両制御装置20から、走行駆動装置30の駆動状態の変化に関する駆動状態情報を取得する。駆動状態情報は、例えば車載システム1が搭載される車両のイグニッションONを契機として、車両制御装置20が走行駆動装置30に対して起動信号を送出したことを示す状態情報を含む。
電池制御装置110のプロセッサ1110が有する測定値取得部1112は、電圧計160によって測定されたリレー素子130の出力側電圧Vdの測定値を、電圧計160から取得する。測定値取得部1112は、リレードライバ回路1130へ印加される印加電圧の電圧値Vaを、周期タイマTx1160を用いて周期的に、電源電圧センサ1140またはリレードライバ回路1130から取得する。後述する信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力されると、測定値取得部1112は周期タイマTx1160を起動させる。周期タイマTx1160は、計時期間が満了すると、判定待ちタイマTy1170が起動している間は繰り返し再起動する。
電池制御装置110のプロセッサ1110が有する信号出力部1113は、情報取得部1111により上述した駆動状態情報が取得されると、リレードライバ回路1130へ、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替えさせるためのリレー接続制御信号を出力する。出力されたリレー接続制御信号は、リレー素子130におけるリレー接続状態を、OFFの状態からONの状態へ切り替える旨のON信号である。
電池制御装置110のプロセッサ1110が有する接続状態判定部1114は、信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力されると、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を、所定タイミングTで判定する。電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態は、例えば測定値取得部1112によって取得されるリレー素子130の出力側電圧Vdの値に基づいて判定される。
測定値取得部1112によって取得されるリレー素子130の出力側電圧Vdの値が電池120の電圧値Voにほぼ等しいときは、スイッチ1310が閉じており、すなわちリレー接続状態がONの状態である。上述したように、出力されたリレー接続制御信号はON信号であるから、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定する。測定値取得部1112によって取得されるリレー素子130の出力側電圧Vdの値が電池120の電圧値Voよりも小さいときは、スイッチ1310が閉じていない、すなわちリレー接続状態がOFFの状態である。上述したように、出力されたリレー接続制御信号はON信号であるから、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を不良と判定する。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力されると、接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170を起動させる。判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了したタイミングが上述した所定タイミングTであり、判定待ちタイマTy1170は停止する。接続状態判定部1114は、リレードライバ回路1130がリレー素子130を駆動する際の環境条件に応じた所定タイミングTで、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を判定する。後述するように、
リレードライバ回路1130がリレー素子130を駆動する際の環境条件としては、例えば、リレー駆動電源1150によりリレードライバ回路1130へ印加される印加電圧の電圧値Vaが該当する。後述するように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが低下したときは、低下した印加電圧値Vaに応じて定められるウェイト時間が判定待ちタイマTy1170のウェイト時間として設定されることにより、所定タイミングTを延期することができる。
ただし、所定タイミングTを無制限に延期することができないようにするため、接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170の計時期間満了前であっても、判定猶予上限タイマ1180の計時期間が満了すると、上述した電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理を行うことが好ましい。信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力されると、接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170と同様に判定猶予上限タイマ1180を起動させる。判定猶予上限タイマ1180は、その計時期間満了前までに判定待ちタイマTy1170の計時期間が先に満了すると、計時を中止して停止する。判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了する前において、判定猶予上限タイマ1180が起動してから例えば5~10秒程度の計時期間が先に満了すると、判定猶予上限タイマ1180は停止し、上述した電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が行われる。
走行駆動装置30は、不図示のインバータと、モータジェネレータ(MG)とを含む。インバータは、電源装置10の電池120から供給された直流電力を交流電力に変換し、その交流電力を、モータジェネレータへ供給する。モータジェネレータは、こうして供給された電力により駆動され、車載システム1が搭載される車両が動く。
車両制御装置20は、不図示のプロセッサおよびメモリを有するコンピュータであって、メモリに格納されたコンピュータプログラムをプロセッサが実行することによって、各種処理を実行する。それら各種処理とは、例えば、車載システム1が搭載される車両の乗員によるペダル踏み込み量に応じて走行駆動装置30の出力値を設定または変更するための車両駆動制御信号を、CANを介した通信によりインバータへ指示する処理、および走行駆動装置30の起動といった駆動状態の変化に関する駆動状態情報を、CANを介した通信により電池制御装置110へ転送する処理である。
図2は、リレー駆動電源1150からリレードライバ回路1130への印加電圧と、リレー素子130における電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態が変化する時刻との関係を説明するための図である。リレー素子130における電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の変化とは、リレー素子130におけるリレー接続状態がOFFの状態からONの状態へ変化すること、すなわちスイッチ1310が開いた状態から閉じた状態に変化することをいう。図2(A)のグラフ61において、車載システム1が搭載される車両のイグニッションONを契機として、情報取得部1111により車両制御装置20から上述した駆動状態情報が取得されると、信号出力部1113から、リレードライバ回路1130へ、上述したリレー接続制御信号として、ON信号が出力される。ON信号は、リレー接続制御信号レベルが、LOWレベル(L)からHIGHレベル(H)へ切り替わることによって、出力される。リレー接続制御信号の信号レベルがLからHへ切り替わった時刻を時刻T0とする。
グラフ65に示されるように、時刻T0においてリレー素子130におけるリレー接続状態はOFFの状態であり、接続状態判定部1114が判定待ちタイマTy1170を起動させる。上述したように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaは、補機用電源50の電圧値Vs=12[V]に等しい。補機用電源50の電圧値Vsが変動しなければ、図2(A)のグラフ62に破線で示されるように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Va=12[V]がその後も維持される。リレー素子130におけるリレー接続状態は、リレー接続制御信号の信号レベルがLレベルからHレベルへ切り替わってから時間が経過して時刻Tqになると、図2(A)のグラフ64に破線で示されるように、OFFの状態からONの状態へ変化する。
リレー接続制御信号の信号レベルがLレベルからHレベルへ切り替わった際の時刻T0に起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間が時刻T1に満了すると、判定待ちタイマTy1170は停止する。接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理を、所定タイミングTで実行する。その所定タイミングTは、起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了する時刻T1である。ただし、時刻T1は、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tqよりも後の時刻であるものとする。その判定処理において、測定値取得部1112により取得されたリレー素子130の出力側電圧Vdの値は電池120の電圧値Voにほぼ等しいことが確認される。リレー素子130のスイッチ1310は閉じているといえるから、リレー素子130におけるリレー接続状態はOFFの状態からONの状態へ変化し終えており、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定する。
補機用電源50は、駐車期間中に、放電により電圧低下が生じ得る。車両のイグニッションONを契機として、補機用電源50から車両制御装置20、電池制御装置110およびその他の各種部材への電力供給が一斉に開始され、各種部材の起動処理に引き続いて診断処理が走行する場合もある。補機用電源50のさらなる一時的な電圧低下が生じる可能性があるため、それに伴って、実際のリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaもまた、図2(A)のグラフ63に示されるように、一時的に低下する。車両内の各種部材における診断処理が終了し、電力供給が安定に向かうと、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaは、図2(A)のグラフ63に示されるように、低下から上昇に転じ、やがて印加電圧値Va=12[V]の状態に復帰する。
リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが低下すると、その印加電圧値Vaに応じてコイル1320で発生する電磁力がその影響を受ける可能性がある。図2(A)のグラフ65に示される例では、リレー接続制御信号の信号レベルがLからHへ切り替わった後で実際にリレー接続状態が変化するのは、時刻Tqおよび時刻T1のいずれよりも後の時刻である時刻Tzになる。
こうしたリレー接続状態の変化タイミングの時刻Tqから時刻Tzへの遅延が考慮されないと、判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了する時刻T1である所定タイミングTで、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行されてしまう。リレー素子130のスイッチ1310は閉じる動作を完了していないことから、その判定処理において測定値取得部1112によって取得されたリレー素子130の出力側電圧Vdの値が電池120の電圧値Voよりも小さいことが確認される。リレー素子130におけるリレー接続状態はONの状態に至っておらず、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を誤って不良と判定することとなる。したがって、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTに、上述したリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの低下に伴うリレー接続状態の変化タイミングの遅延が考慮される必要がある。
図2(B)に、リレー駆動電源1150からリレードライバ回路1130への印加電圧Vaと、リレー素子130における電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態が変化する時刻Tz(Tq)との関係を表すグラフ650を示す。図2(B)には、リレードライバ回路1130への印加電圧Vaが低下すると、時刻T0に信号出力部1113によって出力されたリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tz(Tq)が遅延することが示されている。接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTが、リレー接続状態が変化する時刻Tz(Tq)よりも後の時刻となるように、所定タイミングTを延期することを、以下において検討する。
図3は、計時期間満了時にリレー素子130におけるリレー接続状態の判定が行われる判定待ちタイマTy1170の、起動/再起動処理およびウェイト時間Twaを説明するための図である。図3(A)のグラフ61において、車載システム1が搭載される車両のイグニッションONを契機として、上述したように、情報取得部1111による駆動状態情報の取得と、信号出力部1113によるリレードライバ回路1130への、ON信号であるリレー接続制御信号の出力とが行われる。リレー接続制御信号の信号レベルがLからHへ切り替わった時刻を時刻T0とする。
このとき、グラフ65に示されるように、時刻T0においてリレー素子130におけるリレー接続状態はOFFの状態であり、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を起動させる。上述したように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaは、補機用電源50の電圧値Vs=12[V]に等しい。さらに上述したように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaは、補機用電源50の一時的な電圧低下に呼応して、図3(A)のグラフ63に示されるように一時的に低下し、その後は低下から上昇に転じ、やがて印加電圧値Va=12[V]の状態に復帰する。このリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの電圧変化を監視するため、周期タイマTx1160が用いられる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力された時刻T0において、測定値取得部1112は、予め定められた短い周期Tcで動作する周期タイマTx1160を起動させる。周期タイマTx1160の周期Tcが満了すると、判定待ちタイマTy1170が起動している間は、周期タイマTx1160は周期Tc毎に繰り返し再起動する。周期タイマTx1160の周期Tcが満了するたびに、すなわち周期Tc経過毎に、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの測定処理C1,C2,C3,C4,・・・,Ckが、測定値取得部1112により実行される。
周期タイマTx1160と同様に時刻T0に初めて起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tmが時刻T1に満了すると、判定待ちタイマTy1170は停止することが予定される。判定待ちタイマTy1170の計時期間Tmは、時刻T0から時刻T1までの時間と等しく、かつ周期タイマTx1160の周期Tcよりも長いので、時刻T1は、周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了するタイミングよりも後の時刻である。周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+Tc)で、上述した測定処理C1が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0における12[V]よりも低い場合、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させる。その際、判定待ちタイマTy1170の新たな計時期間として、図3(B)に示されるウェイト時間(後述)が当初の計時期間Tmに加算されて得られる値が設定されることが好ましい。
周期タイマTx1160の2回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+2Tc)で、上述した測定処理C2が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+Tcに取得された値よりも低い場合、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させる。その際、判定待ちタイマTy1170の新たな計時期間として、新たなウェイト時間が当初の計時期間Tmに加算されて得られる値が設定されることが好ましい。
周期タイマTx1160の3回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+3Tc)で、上述した測定処理C3が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+2Tcに取得された値よりも低い場合、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させる。その際、判定待ちタイマTy1170の新たな計時期間として、新たなウェイト時間Twaが当初の計時期間Tmに加算されて得られる値Tm+Twaが設定されることが好ましい。
周期タイマTx1160の4回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+4Tc)で、上述した測定処理C4が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。図3(A)のグラフ63に示す例において、取得された印加電圧値Vaは、時刻T0+3Tcに取得された値よりも高い。判定待ちタイマTy1170は再起動せず、計時を続ける。以後、これが繰り返されると、時刻T0+3Tcに再起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tm+Twaは時刻T2に満了し、時刻T2に判定待ちタイマTy1170は停止する。
この判定待ちタイマTy1170が停止した時刻T2が、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tzよりも後の時刻となるように、ウェイト時間Twaは実験等により予め定められることが好ましい。なお、接続状態判定部1114が判定待ちタイマTy1170を起動後に再起動させた結果、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTは、接続状態判定部1114により、当初予定されていた時刻T1から時刻T2に延期されたことになる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力された時刻T0に起動した判定待ちタイマTy1170が時刻T2に停止すると、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される。所定タイミングTである時刻T2は、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tzよりも後の時刻である。図3(A)のグラフ65に示すように、リレー素子130におけるリレー接続状態はOFFの状態からONの状態へ変化し終えている。その判定処理において測定値取得部1112によって取得されたリレー素子130の出力側電圧Vdの値が電池120の電圧値Voにほぼ等しいことが確認される。接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定し、誤って不良と判定することを抑制できる。
周期タイマTx1160の周期Tc経過毎にリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが取得された結果として、判定待ちタイマTy1170が再起動する際に、判定待ちタイマTy1170の計時期間にウェイト時間が含まれるように設定されることが好ましいことを上述した。図3(B)は、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaに応じてウェイト時間Twaが予め定められたテーブル1121を例示している。テーブル1121は、例えば電池制御装置110内のメモリ1120に保存される。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170を再起動させるたびに、テーブル1121を参照してウェイト時間Twaを設定し、判定待ちタイマTy1170の計時期間に、その設定されたウェイト時間Twaを含める。
図4は、リレー素子130におけるリレー接続状態の判定およびその前までの処理において、電池制御装置110にて行われるプログラム処理手順を例示するフローチャートである。上述したように、電池制御装置110のプロセッサ1110とメモリ1120とがコンピュータとして機能する。メモリ1120に格納されたコンピュータプログラムをプロセッサ1110が実行することによって、図4に示すプログラム処理手順が実行される。なお、上述した判定猶予上限タイマ1180を用いた処理については、図4において省略されている。
本処理手順が開始されると、ステップS410において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する情報取得部1111は、車両制御装置20から、走行駆動装置30の駆動状態の変化に関する駆動状態情報を取得する。ステップS415において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する信号出力部1113は、リレードライバ回路1130へ、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替えさせるためのリレー接続制御信号を出力する。
ステップS420において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170を起動または再起動させる。ステップS425において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する測定値取得部1112は、周期タイマTx1160を起動または再起動させる。
ステップS430において、測定値取得部1112は、周期タイマTx1160の周期が満了したか否かを判定する。否定判定の場合は、この判定処理が繰り返し実行される。肯定判定の場合、ステップS435において、測定値取得部1112は、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaを取得する。
ステップS440において、接続状態判定部1114は、測定値取得部1112によって取得されたリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが、前回の測定値または前回の測定値が存在しないときは初期値12[V]よりも低下しているか否かを判定する。肯定判定の場合の処理はステップS445へ進み、否定判定の場合の処理はステップS455へ進む。
ステップS445において、接続状態判定部1114は、図3(B)に示すテーブル1121を参照し、判定待ちタイマTy1170のウェイト時間Twaを設定する。ステップS445が終了すると、ステップS420へ戻る。
ステップS455において、接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了したか否かを判定する。否定判定の場合、ステップS425へ戻る。肯定判定の場合、ステップS460において、測定値取得部1112は、リレー素子130の出力側電圧Vdの値を取得する。
ステップS465において、接続状態判定部1114は、リレー素子130の出力側電圧Vdの値|Vd|と、予め定められた電池120の電圧値Voとを比較し、その比較結果に基づいて、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を判定する。ステップS465の処理が完了すると、本処理手順は終了する。
時刻T0にリレー接続制御信号が出力され、そのリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tzよりも後にリレー接続状態の判定処理が行われるようにするため、所定タイミングTを延期する処理として、図3および図4を用いて説明した処理が行われることとした。しかし、図3および図4を用いて説明した処理に代えて、以下の図5および図6を用いて説明する処理が行われることとしてもよい。
図5は、計時期間満了時にリレー素子130におけるリレー接続状態の判定が行われる判定待ちタイマTy1170の、起動処理およびウェイト時間Twbを説明するための図である。図5(A)のグラフ61において、車載システム1が搭載される車両のイグニッションONを契機として、上述したように、情報取得部1111による駆動状態情報の取得と、信号出力部1113によるリレードライバ回路1130への、ON信号であるリレー接続制御信号の出力とが行われる。リレー接続制御信号の信号レベルがLからHへ切り替わった時刻を時刻T0とする。
グラフ65に示されるように、時刻T0においてリレー素子130におけるリレー接続状態はOFFの状態であり、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を起動させる。上述したように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaは、補機用電源50の電圧値Vs=12[V]に等しい。さらに上述したように、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaは、補機用電源50の一時的な電圧低下に呼応して、図5(A)のグラフ63に示されるように一時的に低下し、その後は低下から上昇に転じ、やがて印加電圧値Va=12[V]の状態に復帰する。このリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの電圧変化を監視するため、周期タイマTx1160が用いられる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力された時刻T0において、測定値取得部1112は、予め定められた短い周期Tcで動作する周期タイマTx1160を起動させる。周期タイマTx1160の周期Tcが満了すると、判定待ちタイマTy1170が起動している間は、周期タイマTx1160は周期Tc毎に繰り返し再起動する。周期タイマTx1160の周期Tcが満了するたびに、すなわち周期Tc経過毎に、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの測定処理C1,C2,C3,C4,・・・,Ckが、測定値取得部1112により実行される。
周期タイマTx1160と同様に時刻T0に初めて起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tmが時刻T1に満了すると、判定待ちタイマTy1170は停止することが予定される。判定待ちタイマTy1170の計時期間Tmは、時刻T0から時刻T1までの時間と等しく、かつ周期タイマTx1160の周期Tcよりも長いので、時刻T1は、周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了するタイミングよりも後の時刻である。周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+Tc)で、上述した測定処理C1が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0における12[V]よりも低い場合、接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTを延期する。所定タイミングTの延期は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が、当初の計時期間Tmから、図5(B)に示されるウェイト時間(後述)が当初の計時期間Tmに加算されて得られる新たな計時期間に変更されることによって、実現される。
周期タイマTx1160の2回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+2Tc)で、上述した測定処理C2が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+Tcに取得された値よりも低い場合、接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTをさらに延期する。所定タイミングTの延期は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が、前回変更された計時期間から、新たなウェイト時間が当初の計時期間Tmに加算されて得られる新たな計時期間に変更されることによって、実現される。
周期タイマTx1160の3回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+3Tc)で、上述した測定処理C3が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+2Tcに取得された値よりも低い場合、接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTをさらに延期する。所定タイミングTの延期は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が、前回変更された計時期間から、新たなウェイト時間Twbが当初の計時期間Tmに加算されて得られる新たな計時期間に変更されることによって、実現される。
周期タイマTx1160の4回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+4Tc)で、上述した測定処理C4が実行され、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。図5(A)のグラフ63に示す例において、取得された印加電圧値Vaは、時刻T0+3Tcに取得された値よりも高い。電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTは変更されず、判定待ちタイマTy1170は計時を続ける。以後、これが繰り返されると、時刻T0に起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tm+Twbは時刻T2に満了し、時刻T2に判定待ちタイマTy1170は停止する。
この判定待ちタイマTy1170が停止した時刻T2が、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tzよりも後の時刻となるように、ウェイト時間Twbは実験等により予め定められることが好ましい。なお、接続状態判定部1114が判定待ちタイマTy1170の計時期間を変更した結果、所定タイミングTは、接続状態判定部1114により、当初予定されていた時刻T1から時刻T2に延期されたことになる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力された時刻T0に起動した判定待ちタイマTy1170が時刻T2に停止すると、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される。所定タイミングTである時刻T2は、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tzよりも後の時刻である。図5(A)のグラフ65に示すように、リレー素子130におけるリレー接続状態はOFFの状態からONの状態へ変化し終えている。その判定処理において測定値取得部1112によって取得されたリレー素子130の出力側電圧Vdの値が電池120の電圧値Voにほぼ等しいことが確認される。接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定し、誤って不良と判定することを抑制できる。
図5(B)は、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaに応じてウェイト時間Twbが予め定められたテーブル1122を例示している。テーブル1122は、例えば電池制御装置110内のメモリ1120に保存される。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170の計時期間を変更する際、テーブル1122を参照してウェイト時間Twbを設定し、これを当初の計時期間Tmに加算して得られる値を、新たな計時期間とする。
図6は、リレー素子130におけるリレー接続状態の判定およびその前までの処理において、電池制御装置110にて行われるプログラム処理手順を例示するフローチャートである。上述したように、電池制御装置110のプロセッサ1110とメモリ1120とがコンピュータとして機能する。メモリ1120に格納されたコンピュータプログラムをプロセッサ1110が実行することによって、図6に示すプログラム処理手順が実行される。なお、上述した判定猶予上限タイマ1180を用いた処理については、図6において省略されている。図6において、図4に示す処理と同一のステップに対しては同じ符号が付されており、それらの処理についての説明は省略する。
ステップS415が処理された後、ステップS620において、接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170を起動させ、処理はステップS425へ進む。
ステップS440において肯定判定がなされると、ステップS645において、接続状態判定部1114は、図5(B)に示すテーブル1122を参照し、判定待ちタイマTy1170のウェイト時間Twbを設定または変更する。ステップS645が終了すると、ステップS425へ戻る。
上述した第1の実施の形態における電池制御装置110によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130と、接続状態判定部1114とを含む。リレードライバ回路1130は、リレー接続制御信号に応じて、車両の走行駆動装置30と走行駆動装置30へ電力を供給する電池120との間に介挿されるリレー素子130を駆動し、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替える。接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を、リレードライバ回路1130がリレー素子130を駆動する際の環境条件に応じた所定タイミングTで判定する。このように構成される電池制御装置110においては、リレー素子130におけるリレー接続状態の判定処理の前にスイッチ1310が閉じて、そのリレー接続状態はOFFの状態からONの状態へ変化し終えていると考えられる。したがって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態を誤判定する可能性を低減することができる、という効果が得られる。
(2)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaを取得する測定値取得部1112をさらに含む。上述した環境条件は、測定値取得部1112によって取得される印加電圧値Vaを含む。このように構成される電池制御装置110においては、リレー駆動電源1150からリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの電圧変化が発生した場合に、その変化した印加電圧値Vaに応じた所定タイミングTでリレー素子130におけるリレー接続状態の判定処理が行われる。したがって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態を誤判定する可能性を低減することができる、という効果が得られる。
(3)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130へリレー接続制御信号を出力する信号出力部1113と、信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力されると起動し、起動後の所定タイミングTで停止する判定待ちタイマTy1170とをさらに含む。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170が起動した後、リレードライバ回路1130の環境条件に応じて判定待ちタイマTy1170を再起動させることにより、所定タイミングTを延期する。このように構成される電池制御装置110によって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態の判定処理を遅らせることを簡便に実現できる、という効果が得られる。
(4)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130へリレー接続制御信号を出力する信号出力部1113と、信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力されると起動し、起動後の所定タイミングTで停止する判定待ちタイマTy1170とをさらに含む。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170が起動した後、リレードライバ回路1130の環境条件に応じて、所定タイミングTを、時刻T1から時刻T1よりも後の時刻T2に変更することにより、所定タイミングTを延期する。このように構成される電池制御装置110によって、タイマ起動に必要なリソースを抑えることができる、という効果が得られる。
-第2の実施の形態-
図7は、本発明の第2の実施の形態による電池制御装置110を有する電源装置10と、走行駆動装置30と、車両制御装置20とを含む車載システム1の一例を示す図である。図7において、図1と共通する符号が付された各部材の説明を省略する。図7に示すように、電池120の正極側に、図1に示すリレー素子130に対応する正極側リレー素子130Pが配置される。この正極側リレー素子130Pは、スイッチ1310Pと、スイッチ1310Pを開閉させるためのコイル1320Pとを含み、電池制御装置110内のリレードライバ回路1130Pによって駆動される。リレードライバ回路1130Pは、例えば集積回路(IC)で構成される。
リレー駆動電源1150によって、電圧値Vaの印加電圧が、リレードライバ回路1130Pへ印加される。リレードライバ回路1130Pは、この印加電圧に応じて、正極側リレー素子130Pのコイル1320Pに励磁電流を流す。コイル1320Pに流れる励磁電流によって発生する電磁力にしたがって、スイッチ1310Pが閉じる。リレードライバ回路1130Pが、コイル1320Pに励磁電流を流すのを停止すると、スイッチ1310Pが開く。
図7に示すように、平滑用コンデンサ40が、走行駆動装置30とは電気的に並列に配置されている。電源装置10から走行駆動装置30への突入電流を防止するため、走行駆動装置30と電池120の正極との間であって、正極側リレー素子130Pと電気的に並列な位置に、プリチャージ用リレー素子130Rが介挿される。抵抗140が、プリチャージ用リレー素子130Rに対して電気的に直列に配置されている。プリチャージ用リレー素子130Rは、スイッチ1310Rと、スイッチ1310Rを開閉させるためのコイル1320Rとを含み、電池制御装置110内のリレードライバ回路1130Rによって駆動される。
リレー駆動電源1150によって、電圧値Vaの印加電圧が、リレードライバ回路1130Rへ印加される。リレードライバ回路1130Rは、この印加電圧に応じて、プリチャージ用リレー素子130Rのコイル1320Rに励磁電流を流す。コイル1320Rに流れる励磁電流によって発生する電磁力にしたがって、スイッチ1310Rが閉じる。リレードライバ回路1130Rが、コイル1320Rに励磁電流を流すのを停止すると、スイッチ1310Rが開く。
図7に示すように、走行駆動装置30と電池120の負極との間に、負極側リレー素子130Nが介挿される。負極側リレー素子130Nは、スイッチ1310Nと、スイッチ1310Nを開閉させるためのコイル1320Nとを含み、電池制御装置110内のリレードライバ回路1130Nによって駆動される。
リレー駆動電源1150によって、電圧値Vaの印加電圧が、リレードライバ回路1130Nへ印加される。リレードライバ回路1130Nは、この印加電圧に応じて、負極側リレー素子130Nのコイル1320Nに励磁電流を流す。コイル1320Nに流れる励磁電流によって発生する電磁力にしたがって、スイッチ1310Nが閉じる。リレードライバ回路1130Nが、コイル1320Nに励磁電流を流すのを停止すると、スイッチ1310Nが開く。
正極側リレー素子130Pの出力側と、電池120の負極側とが、高抵抗体171および172とを介して電気的に接続される。2つの高抵抗体171および172の間にプロセッサ1110が電気的に接続される。電源装置10が有する電圧計160は、2つの高抵抗体171および172の各々に接続されるプロセッサ1110の電圧Veを測定する。電源装置10の内部の少なくとも一箇所に温度センサ150が設けられ、電源装置10内の温度値が測定される。電源装置10の内部の少なくとも一箇所として、例えば正極側リレー素子130Pの近傍の位置が含まれる。電池制御装置110のプロセッサ1110が有する測定値取得部1112は、温度センサ150によって測定される電源装置10内の温度値を取得する。
電池制御装置110のプロセッサ1110が有する信号出力部1113は、正極側リレー素子130Pが閉じる際に行われるリレー接続状態の正常性判定処理が終了すると、リレードライバ回路1130Pへ、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替えさせるためのリレー接続制御信号を出力する。出力されたリレー接続制御信号は、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態を、ONの状態からOFFの状態へ切り替える旨のOFF信号である。
図8は、プリチャージ用リレー素子130R、正極側リレー素子130Pおよび負極側リレー素子130Nのそれぞれの開閉シーケンスと、走行駆動装置30に印加される電源装置10の出力電圧Voutの時間的変化との関係を例示する図である。車載システム1が搭載される車両のイグニッションONを契機として、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する情報取得部1111により車両制御装置20から駆動状態情報が取得されたのが時刻0であるものとする。図8のグラフ81、グラフ82、グラフ83およびグラフ84に示すように、時刻0において、プリチャージ用リレー素子130R、正極側リレー素子130Pおよび負極側リレー素子130Nはいずれも開いており、電源装置10の出力電圧Vout=0である。
図8の内容について、時系列に沿って説明する。情報取得部1111により車両制御装置20から上述した駆動状態情報が取得されてから時間が経過して時刻Tp_onになると、図8のグラフ82に示すように、正極側リレー素子130Pが閉じる。すなわち、時刻Tp_onは、第1の実施の形態におけるリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tzに相当する。したがって、本実施の形態においても、正極側リレー素子130Pに関し、第1の実施の形態におけるリレー素子130と同様に、リレードライバ回路1130Pへ印加される印加電圧Vaが低下した場合には、リレー接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTを延期するのが好ましい。図8のグラフ84に示すように、この時点において、電源装置10の出力電圧Vout=0のままである。
時刻Tp_onが経過後、時刻Tp_offになると、図8のグラフ82に示すように、正極側リレー素子130Pが開く。ここまでの正極側リレー素子130Pの開閉により、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の正常性について判定される。図8のグラフ84に示すように、この時点において、電源装置10の出力電圧Vout=0のままである。
時刻Tp_offが経過後、時刻Tn_onになると、図8のグラフ83に示すように、負極側リレー素子130Nが閉じる。その際にも、負極側リレー素子130Nに関し、第1の実施の形態におけるリレー素子130と同様に、リレードライバ回路1130Nへ印加される印加電圧Vaが低下した場合には、リレー接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTを延期するのが好ましい。図8のグラフ84に示すように、この時点において、電源装置10の出力電圧Vout=0のままである。
時刻Tn_onが経過後、時刻Tr_onになると、図8のグラフ81に示すように、プリチャージ用リレー素子130Rが閉じる。図8のグラフ84に示すように、この時点において、電池120から走行駆動装置30への電力供給が開始されるため、電源装置10の出力電圧Voutは増加し始める。
時刻Tr_onが経過後、時刻Tp_on2になると、図8のグラフ82に示すように、正極側リレー素子130Pが閉じる。図8のグラフ84に示すように、この時点において、電源装置10の出力電圧Voutは電池120の電圧値Voに等しい。
時刻Tp_on2が経過後、時刻Tr_offになると、図8のグラフ81に示すように、プリチャージ用リレー素子130Rが開く。図8のグラフ84に示すように、この時点において、電源装置10の出力電圧Vout=Voのままである。
上述した正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の正常性判定のうち、正極側リレー素子130Pが開く際に行われるリレー接続状態判定について、以下に述べる。正極側リレー素子130Pが開く前の閉じる際に行われるリレー接続状態の正常性判定処理が終了すると、信号出力部1113によりリレードライバ回路1130へリレー接続制御信号が出力される。そのリレー接続制御信号が入力されたリレードライバ回路1130Pが正極側リレー素子130Pを駆動することによって、時刻Tp_offに正極側リレー素子130Pが開く。リレー接続制御信号の信号レベルがHからLへ切り替わってから実際にリレー接続状態が変化するまで、時間を要する場合があり、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を誤って不良と判定する可能性がある。後述するように、本実施の形態においては、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態を、ONの状態からOFFの状態へ切り替える際、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTを延期することを検討する。
図9は、計時期間満了時に正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定が行われる判定待ちタイマTy1170の、起動/再起動処理およびウェイト時間Twdを説明するための図である。上述した正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の正常性判定のうち、正極側リレー素子130Pが閉じる際に行われるリレー接続状態判定は、第1の実施の形態におけるリレー素子130のリレー接続状態判定と同様にして行われる。接続状態判定部1114により、正極側リレー素子130Pが閉じる際に行われるリレー接続状態ON時の正常性判定処理が終了すると、正極側リレー素子130Pが再び開く際に行われるリレー接続状態OFF時の正常性判定処理が行われる。
図9のグラフ71において、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態ON時の正常性判定処理が終了すると、信号出力部1113からリレードライバ回路1130Pへ、リレー接続制御信号としてOFF信号が出力される。OFF信号は、リレー接続制御信号レベルが、HIGHレベル(H)からLOWレベル(L)へ切り替わることによって、出力される。リレー接続制御信号の信号レベルがHからLへ切り替わった時刻を時刻T0とする。
グラフ75に示されるように、時刻T0において正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態はONの状態であり、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を起動させる。リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaは、補機用電源50の電圧値Vs=12[V]に等しい。補機用電源50の電圧値Vsが変動しなければ、図9(A)のグラフ72に破線で示されるように、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Va=12[V]がその後も維持される。正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態は、リレー接続制御信号の信号レベルがHレベルからLレベルへ切り替わってから時間が経過して時刻Tiになると、図9のグラフ74に破線で示されるように、ONの状態からOFFの状態へ変化する。
リレー接続制御信号の信号レベルがHレベルからLレベルへ切り替わった際の時刻T0に起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間が時刻T3に満了すると、判定待ちタイマTy1170は停止する。接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理を、所定タイミングTで実行する。その所定タイミングTは、起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了する時刻T3である。ただし、時刻T3は、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tiよりも後の時刻であるものとする。その判定処理において、測定値取得部1112により取得されたプロセッサ1110の電圧Veの値は0であることが確認される。正極側リレー素子130Pのスイッチ1310は開いているといえるから、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態はONの状態からOFFの状態へ変化し終えており、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定する。
補機用電源50は、駐車前にユーザがエアコンを切ったり、車両のコンプレッサーが停止したりすることによって、車両のイグニッションOFFの前から一時的な電圧上昇が生じ、車両のイグニッションOFFの後もその一時的な電圧上昇が生じる場合がある。補機用電源50の一時的な電圧上昇が生じた場合、それに伴って、実際のリレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaもまた、図9のグラフ73に示されるように、一時的に上昇する。電力供給が安定に向かうと、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaは、図9のグラフ73に示されるように、上昇から低下に転じ、やがて印加電圧値Va=12[V]の状態に復帰する。
リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが上昇すると、その印加電圧値Vaに応じてコイル1320で発生する電磁力がその影響を受ける可能性がある。図9のグラフ75に示される例では、リレー接続制御信号の信号レベルがHからLへ切り替わった後で実際にリレー接続状態が変化するのは、時刻Tiおよび時刻T3のいずれよりも後の時刻である時刻Tjになる。
こうしたリレー接続状態の変化タイミングの時刻Tiから時刻Tjへの遅延が考慮されないと、判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了する時刻T3である所定タイミングTで、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行されてしまう。正極側リレー素子130Pのスイッチ1310は開く動作を完了していないことから、その判定処理において測定値取得部1112によって取得されたプロセッサ1110の電圧Veの値が0よりも大きいことが確認される。正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態はOFFの状態に至っておらず、接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を誤って不良と判定することとなる。したがって、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTに、上述したリレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaの上昇に伴うリレー接続状態の変化タイミングの遅延が考慮される必要がある。
接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTが、リレー接続状態が変化する時刻Tj(Ti)よりも後の時刻となるように、所定タイミングTを延期することを、以下において検討する。上述したように、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaは、補機用電源50の一時的な電圧上昇に呼応して、図9のグラフ73に示されるように一時的に上昇し、その後は上昇から低下に転じ、やがて印加電圧値Va=12[V]の状態に復帰する。このリレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaの電圧変化を監視するため、周期タイマTx1160が用いられる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130Pへリレー接続制御信号が出力された時刻T0において、測定値取得部1112は、予め定められた短い周期Tcで動作する周期タイマTx1160を起動させる。周期タイマTx1160の周期Tcが満了すると、判定待ちタイマTy1170が起動している間は、周期タイマTx1160は周期Tc毎に繰り返し再起動する。周期タイマTx1160の周期Tcが満了するたびに、すなわち周期Tc経過毎に、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaの測定処理C1,C2,C3,C4,・・・,Ckが、測定値取得部1112により実行される。
周期タイマTx1160と同様に時刻T0に初めて起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tnが時刻T3に満了すると、判定待ちタイマTy1170は停止することが予定される。判定待ちタイマTy1170の計時期間Tnは、時刻T0から時刻T3までの時間と等しく、かつ周期タイマTx1160の周期Tcよりも長いので、時刻T3は、周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了するタイミングよりも後の時刻である。周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+Tc)で、上述した測定処理C1が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0における12[V]よりも高い場合、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させる。その際、判定待ちタイマTy1170の新たな計時期間として、図10(B)に示されるウェイト時間(後述)が当初の計時期間Tnに加算されて得られる値が設定されることが好ましい。
周期タイマTx1160の2回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+2Tc)で、上述した測定処理C2が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+Tcに取得された値よりも高い場合、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させる。その際、判定待ちタイマTy1170の新たな計時期間として、新たなウェイト時間が当初の計時期間Tnに加算されて得られる値が再設定されることが好ましい。
周期タイマTx1160の3回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+3Tc)で、上述した測定処理C3が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+2Tcに取得された値よりも高い場合、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させる。その際、判定待ちタイマTy1170の新たな計時期間として、新たなウェイト時間Twdが当初の計時期間Tnに加算されて得られる値Tn+Twdが設定されることが好ましい。
周期タイマTx1160の4回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+4Tc)で、上述した測定処理C4が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。図9のグラフ73に示す例において、取得された印加電圧値Vaは、時刻T0+3Tcに取得された値よりも低い。判定待ちタイマTy1170は再起動せず、計時を続ける。以後、これが繰り返されると、時刻T0+3Tcに再起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tn+Twdは時刻T4に満了し、時刻T4に判定待ちタイマTy1170は停止する。
この判定待ちタイマTy1170が停止した時刻T4が、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tjよりも後の時刻となるように、ウェイト時間Twdは実験等により予め定められることが好ましい。なお、接続状態判定部1114が判定待ちタイマTy1170を起動後に再起動させた結果、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTは、接続状態判定部1114により、当初予定されていた時刻T3から時刻T4に延期されたことになる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130Pへリレー接続制御信号が出力された時刻T0において起動した判定待ちタイマTy1170が時刻T4に停止すると、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される。所定タイミングTである時刻T4は、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tjよりも後の時刻である。図9のグラフ75に示すように、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態はOFFの状態からONの状態へ変化し終えている。その判定処理において測定値取得部1112によって取得された正極側リレー素子130Pの出力側電圧Vdの値が0であることが確認される。接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定し、誤って不良と判定することを抑制できる。
図10は、リレー駆動電源1150からリレードライバ回路1130Pへの印加電圧Vaと、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態が変化する時刻Tj(Ti)との関係が、温度に依存して変化する様子を、模式的に説明するための図である。図10(A)には、リレー駆動電源1150からリレードライバ回路1130Pへの印加電圧Vaと、正極側リレー素子130Pにおける電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態が変化する時刻Tj(Ti)との、温度値別の関係を表すグラフ751,752,753,754および755を示す。グラフ751,752,753,754および755は、それぞれ温度値-10℃,10℃,20℃,45℃および60℃に対応する。これらの温度値は、電源装置10内の正極側リレー素子130Pの近傍の位置に設けられた温度センサ150によって測定され、かつ測定値取得部1112によって取得される、電源装置10内の温度値である。
図10(A)に示すグラフ751,752,753,754および755によると、リレードライバ回路1130への印加電圧Vaが上昇すると、時刻T0に信号出力部1113によって出力されたリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tj(Ti)が遅延することが示されている。さらに、グラフ751,752,753,754および755に示されるように、温度値60℃から-10℃へ温度低下が進むにつれて、時刻T0に信号出力部1113によって出力されたリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tj(Ti)が遅延する。
電源装置10は外気に晒される位置に車載される場合もあるため、測定値取得部1112によって取得される温度値は、外気温に応じて変動する可能性がある。したがって、その温度値が低下すると、時刻T0に出力されたリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tj(Ti)が遅延する可能性がある。接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTが、リレー接続状態が変化する時刻Tj(Ti)よりも後の時刻となるように、所定タイミングTを延期する際に用いられる上述したウェイト時間Twdが、温度値に応じて予め定められるのが好ましい。
図10(B)は、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaおよび電源装置10内の温度値に応じてウェイト時間Twdが予め定められたテーブル1126を例示している。テーブル1126は、例えば電池制御装置110内のメモリ1120に保存される。接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を再起動させるたびに、テーブル1126を参照してウェイト時間Twdを設定し、判定待ちタイマTy1170の計時期間に、その設定されたウェイト時間Twdを含める。
図11は、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定およびその前までの処理において、電池制御装置110にて行われるプログラム処理手順を例示するフローチャートである。上述したように、電池制御装置110のプロセッサ1110とメモリ1120とがコンピュータとして機能する。メモリ1120に格納されたコンピュータプログラムをプロセッサ1110が実行することによって、図11に示すプログラム処理手順が実行される。図11において、第1の実施の形態における図4に示す処理と同一のステップに対しては同じ符号が付されており、それらの処理についての説明は省略する。
本処理手順が開始されると、ステップS1110において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する接続状態判定部1114は、正極側リレー素子130Pが閉じる際に行われるリレー接続状態ON時の正常性判定処理を終了する。ステップS1115において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する信号出力部1113は、リレードライバ回路1130Pへ、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替えさせるためのリレー接続制御信号を出力する。
ステップS1120において、電池制御装置110のプロセッサ1110が有する測定値取得部1112は、電源装置10内の温度値を温度センサ150から取得し、処理はステップS420へ進む。
ステップS440において肯定判定がなされると、ステップS1145において、接続状態判定部1114は、図10(B)に示すテーブル1126を参照し、判定待ちタイマTy1170のウェイト時間Twdを設定する。ステップS1145が終了すると、ステップS420へ戻る。
ステップS455において、接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が満了したか否かを判定する。否定判定の場合、ステップS425へ戻る。肯定判定の場合、ステップS1160において、測定値取得部1112は、プロセッサ1110の電圧Veの値を取得する。ステップS1160が終了すると、ステップS465へ進む。
時刻T0にリレー接続制御信号が出力され、そのリレー接続制御信号に応じて実際にリレー接続状態が変化する時刻Tjよりも後にリレー接続状態の判定処理が行われるようにするため、所定タイミングTを延期する処理として、図9および図11を用いて説明した処理が行われることとした。しかし、図9および図11を用いて説明した処理に代えて、以下の図12および図13を用いて説明する処理が行われることとしてもよい。
図12は、計時期間満了時に正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定が行われる判定待ちタイマTy1170の、起動処理およびウェイト時間Tweを説明するための図である。図12のグラフ71において、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態ON時の正常性判定処理が終了すると、信号出力部1113からリレードライバ回路1130Pへ、リレー接続制御信号としてOFF信号が出力される。OFF信号は、リレー接続制御信号は、その信号レベルが、HIGHレベル(H)からLOWレベル(L)へ切り替わることによって、出力される。リレー接続制御信号の信号レベルがHからLへ切り替わった時刻を時刻T0とする。
グラフ75に示されるように、時刻T0において正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態はONの状態であり、接続状態判定部1114は判定待ちタイマTy1170を起動させる。上述したように、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaは、補機用電源50の一時的な電圧上昇に呼応して、図12のグラフ73に示されるように一時的に上昇し、その後は上昇から低下に転じ、やがて印加電圧値Va=12[V]の状態に復帰する。このリレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaの電圧変化を監視するため、周期タイマTx1160が用いられる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130Pへリレー接続制御信号が出力された時刻T0において、測定値取得部1112は、予め定められた短い周期Tcで動作する周期タイマTx1160を起動させる。周期タイマTx1160の周期Tcが満了すると、判定待ちタイマTy1170が起動している間は、周期タイマTx1160は周期Tc毎に繰り返し再起動する。周期タイマTx1160の周期Tcが満了するたびに、すなわち周期Tc経過毎に、リレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの測定処理C1,C2,C3,C4,・・・,Ckが、測定値取得部1112により実行される。
周期タイマTx1160と同様に時刻T0に初めて起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tnが時刻T3に満了すると、判定待ちタイマTy1170は停止することが予定される。判定待ちタイマTy1170の計時期間Tnは、時刻T0から時刻T3までの時間と等しく、かつ周期タイマTx1160の周期Tcよりも長いので、時刻T3は、周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了するタイミングよりも後の時刻である。周期タイマTx1160の1回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+Tc)で、上述した測定処理C1が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0における12[V]よりも高い場合、接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTを延期する。所定タイミングTの延期は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が、当初の計時期間Tnから、予め定められるウェイト時間が当初の計時期間Tnに加算されて得られる新たな計時期間に変更されることによって、実現される。
周期タイマTx1160の2回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+2Tc)で、上述した測定処理C2が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+Tcに取得された値よりも高い場合、接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTをさらに延期する。所定タイミングTの延期は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が、前回変更された計時期間から、新たなウェイト時刻が当初の計時期間Tnに加算されて得られる新たな計時期間に変更されることによって、実現される。
周期タイマTx1160の3回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+3Tc)で、上述した測定処理C3が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。取得された印加電圧値Vaが、時刻T0+2Tcに取得された値よりも高い場合、接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTをさらに延期する。所定タイミングTの延期は、判定待ちタイマTy1170の計時期間が、前回変更された計時期間から、新たなウェイト時間Tweが当初の計時期間Tnに加算されて得られる新たな計時期間に変更されることによって、実現される。
周期タイマTx1160の4回目の周期Tcが終了したタイミング(時刻T0+4Tc)で、上述した測定処理C4が実行され、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaが測定値取得部1112により取得される。図12のグラフ73に示す例において、取得された印加電圧値Vaは、時刻T0+3Tcに取得された値よりも低い。電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTは変更されず、判定待ちタイマTy1170は計時を続ける。以後、これが繰り返されると、時刻T0に起動した判定待ちタイマTy1170の計時期間Tn+Tweは時刻T4に満了し、時刻T4に判定待ちタイマTy1170は停止する。
この判定待ちタイマTy1170が停止した時刻T4が、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tjよりも後の時刻となるように、ウェイト時間Tweは実験等により予め定められることが好ましい。なお、接続状態判定部1114が判定待ちタイマTy1170の計時期間を変更した結果、所定タイミングTは、接続状態判定部1114により、当初の予定されていた時刻T3から時刻T4に延期されたことになる。
信号出力部1113によりリレードライバ回路1130Pへリレー接続制御信号が出力された時刻T0において起動した判定待ちタイマTy1170が時刻T4に停止すると、接続状態判定部1114により電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される。所定タイミングTである時刻T4は、上述したリレー接続状態が変化する時刻Tjよりも後の時刻である。図12のグラフ75に示すように、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態はOFFの状態からONの状態へ変化し終えている。その判定処理において測定値取得部1112によって取得されたプロセッサ1110の電圧Veの値が0であることが確認される。接続状態判定部1114は電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を良好と判定し、誤って不良と判定することを抑制できる。
上述したウェイト時間Tweは、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaおよび電源装置10内の温度値に応じて予め定められた不図示のテーブルに記録される。このテーブルは、例えば電池制御装置110内のメモリ1120に保存される。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170の計時期間を変更する際、メモリ1120に保存されたこのテーブルを参照してウェイト時間Tweを設定し、これを当初の計時期間Tnに加算して得られる再設定値を、新たな計時期間とする。
図13は、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定およびその前までの処理において、電池制御装置110にて行われるプログラム処理手順を例示するフローチャートである。上述したように、電池制御装置110のプロセッサ1110とメモリ1120とがコンピュータとして機能する。メモリ1120に格納されたコンピュータプログラムをプロセッサ1110が実行することによって、図13に示すプログラム処理手順が実行される。図13において、第1の実施の形態における図6に示す処理および本実施の形態における図11に示す処理と同一のステップに対しては同じ符号が付されており、それらの処理についての説明は省略する。
ステップS440において肯定判定がなされると、ステップS1245において、接続状態判定部1114は、メモリ1120に保存されたテーブルを参照し、判定待ちタイマTy1170のウェイト時間Tweを設定または変更する。ステップS1245が終了すると、ステップS425へ戻る。
上述した第2の実施の形態における電池制御装置110によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130と、接続状態判定部1114とを含む。リレードライバ回路1130は、リレー接続制御信号に応じて、車両の走行駆動装置30と走行駆動装置30へ電力を供給する電池120との間に介挿される正極側リレー素子130Pを駆動し、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を切り替える。接続状態判定部1114は、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態を、リレードライバ回路1130Pが正極側リレー素子130Pを駆動する際の環境条件に応じた所定タイミングTで判定する。このように構成される電池制御装置110においては、正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定処理の前にスイッチ1310Pが開いて、そのリレー接続状態はONの状態からOFFの状態へ変化し終えていると考えられる。したがって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態を誤判定する可能性を低減することができる、という効果が得られる。
(2)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130Pへの印加電圧値Vaを取得する測定値取得部1112をさらに含む。上述した環境条件は、測定値取得部1112によって取得される印加電圧値Vaを含む。このように構成される電池制御装置110においては、リレー駆動電源1150からリレードライバ回路1130への印加電圧値Vaの電圧変化が発生した場合に、その変化した印加電圧値Vaに応じた所定タイミングTで正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定処理が行われる。したがって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態を誤判定する可能性を低減することができる、という効果が得られる。
(3)電池制御装置110は、電池120および正極側リレー素子130Pが配置される電源装置10内の温度値を取得する測定値取得部1112をさらに含む。上述した環境条件は、測定値取得部1112によって取得される温度値をさらに含む。このように構成される電池制御装置110においては、電源装置10内の温度変化が発生した場合に、その変化した温度値に応じた所定タイミングTで正極側リレー素子130Pにおけるリレー接続状態の判定処理が行われる。したがって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態を誤判定する可能性を低減することができる、という効果が得られる。
(4)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130へリレー接続制御信号を出力する信号出力部1113と、信号出力部1113によりリレードライバ回路1130Pへリレー接続制御信号が出力されると起動し、起動後の所定タイミングTで停止する判定待ちタイマTy1170とをさらに含む。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170が起動した後、リレードライバ回路1130Pの環境条件に応じて判定待ちタイマTy1170を再起動させることにより、所定タイミングTを延期する。このように構成される電池制御装置110によって、車両の走行駆動装置30と電池120とのリレー接続状態の判定処理を遅らせることを簡便に実現できる、という効果が得られる。
(5)電池制御装置110は、リレードライバ回路1130へリレー接続制御信号を出力する信号出力部1113と、信号出力部1113によりリレードライバ回路1130Pへリレー接続制御信号が出力されると起動し、起動後の所定タイミングTで停止する判定待ちタイマTy1170とをさらに含む。接続状態判定部1114は、判定待ちタイマTy1170が起動した後、リレードライバ回路1130Pの環境条件に応じて、所定タイミングTを、時刻T3から時刻T3よりも後の時刻T4に変更することにより、所定タイミングTを延期する。このように構成される電池制御装置110によって、タイマ起動に必要なリソースを抑えることができる、という効果が得られる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)上述した第1の実施の形態による電池制御装置110のリレー素子130においてリレー接続状態がOFFからONに変化する際、第2の実施の形態による電池制御装置110の正極側リレー素子130Pにおいてリレー接続状態がONからOFFに変化する際と同様に、電源装置10内の温度値が考慮されることとしてもよい。すなわち、第1の実施の形態による電池制御装置110のリレー素子130においてリレー接続状態がOFFからONに変化する際、電源装置10内の温度値に応じて、電池120と走行駆動装置30との電気的な接続状態の判定処理が実行される所定タイミングTを延期することとしてもよい。
(変形例2)上述した第2の実施の形態による電池制御装置110および変形例1においてリレー接続状態が変化する際、環境条件として電圧条件および温度条件が考慮されることとしたが、環境条件として温度条件のみが考慮されることとしてもよい。
(変形例3)上述した第2の実施の形態による電池制御装置110において、図8のグラフ82およびグラフ83を用いて説明したように、負極側リレー素子130Nが閉じる前に、正極側リレー素子130Pが閉じて再び開く。リレードライバ回路1130Pが正極側リレー素子130Pを駆動する際の電圧条件および/または温度条件に応じて、正極側リレー素子130Pが開いてリレー接続状態がONからOFFに変化するタイミングが遅延すると、負極側リレー素子130Nが閉じてリレー接続状態がONに変化して、走行駆動装置30に突入電流が流れるおそれがある。
そこで、負極側リレー素子130Nを駆動するリレードライバ回路1130Nへのリレー接続制御信号が出力されるタイミングに、正極側リレー素子130Pが開いてリレー接続状態がONからOFFに変化するタイミングの遅延時間が考慮されることとしてもよい。その後の、プリチャージ用リレー素子130Rの開閉によりリレー接続状態が変化するタイミング、ならびに正極側リレー素子130Pが再び閉じることによりリレー接続状態が変化するタイミングについても、同様にしてそうした遅延時間が考慮されることとしてよい。
本発明は、上述した実施の形態および変形例の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。