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JP7318284B2 - コンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金およびコンプレッサー摺動部品鍛造品 - Google Patents

コンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金およびコンプレッサー摺動部品鍛造品 Download PDF

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Description

本発明は、自動車エアコン用コンプレッサー(圧縮機)に代表される摺動部品、とりわけスクロールおよび電動スクロールに好適に使用できるアルミニウム合金に関する。
近年の自動車業界における燃費向上の要求から、自動車に使用される各種部材、例えばカーエアコン用のコンプレッサーには軽量化、高機能化の要求が高まってきている。カーエアコン用コンプレッサーには種々の形式が存在するが、上述の背景に伴い小型コンプレッサーとしてスクロール型が普及している。このような部材については、鉄鋼材料や鋳鉄材料に代えて、重量に対する強度の比である比強度の大きいアルミニウム合金が使用されてきている。特に上記カーエアコン用コンプレッサーに代表されるような、高温雰囲気下の過酷な環境でも使用し得る高温下高強度を有し、且つ摺動時の耐摩耗性に優れたAl-Si系合金等のアルミニウム合金からなる鍛造材が注目されている。
この種のアルミニウム合金鍛造材を製造するに際しては、例えば特許文献1に記載されているように、所定の金属組成のアルミニウム合金を金型鋳造にて成形し、所定の熱処理を施すことによってカーエアコン用スクロールを製造することが行われている。
特開平10-121215号公報
ところで、上記のようなアルミニウム合金を用いてスクロールを製造した場合、機械的特性が不足していることによってスクロールが破壊される恐れがある。即ち、実稼働時に150℃の高温環境下に晒されることにより材料が軟化して強度不足となってスクロールが破壊されることがある。このような課題は、SiやCuを多量に添加することで解決し得るが、しかしながら、SiやCuを多量に添加した場合、初晶Siの生成、粗大な金属間化合物の生成により、靱性が低下したり、生産性が低下するという問題があった。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、引張強さ及び破断伸びが十分に得られるコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金およびコンプレッサー摺動部品鍛造品を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、アルミニウム合金においてSi、Cu、Mg等の特定の金属の含有率をそれぞれ特定範囲に制御することにより、アルミニウム合金材料の引張強さ及び破断伸びを十分に確保できることを見出すに至り、本発明を完成したものである。即ち、本発明は以下の手段を提供する。
[1]Si:3.0質量%~9.0質量%、Cu:1.5質量%~3.5質量%、Mg:0.1質量%~0.8質量%を含有し、
Mn:0.1質量%~0.9質量%、およびCr:0.05質量%~0.5質量%、からなる群より選ばれるいずれか1種の遷移金属を前記含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金であって、
前記アルミニウム合金材料の引張強さが390MPa~450MPaであり、前記アルミニウム合金材料の破断伸びが10.0%以上であることを特徴とするコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金。
[2]Si:3.0質量%~9.0質量%、Cu:1.5質量%~3.5質量%、Mg:0.1質量%~0.8質量%を含有し、
Mn:0.1質量%~0.9質量%、およびCr:0.05質量%~0.5質量%、からなる群より選ばれる2種の遷移金属をそれぞれ前記含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金であって、
前記2種の遷移金属の合計含有率が0.1質量%~1.0質量%であり、
前記アルミニウム合金材料の引張強さが390MPa~450MPaであり、前記アルミニウム合金材料の破断伸びが10.0%以上であることを特徴とするコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金。
[3]前記アルミニウム合金は、さらにTi:0.001質量%~0.1質量%を含有する前項1または2に記載のコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金。
[4]前項1~3のいずれか1項に記載のコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金で構成されたコンプレッサー摺動部品鍛造品。
[5]前項1~3のいずれか1項に記載のコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金で構成された電動コンプレッサー摺動部品鍛造品。
[1]及び[2]の発明では、引張強さ及び破断伸びが十分に得られるコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金を提供できる。
[3]の発明では、Tiを特定含有率で含有するので、鋳造品の結晶粒微細化に寄与できる。
[4]の発明では、十分な引張強さ及び十分な破断伸びを備えたコンプレッサー摺動部品を提供できる。
[5]の発明では、十分な引張強さ及び十分な破断伸びを備えた電動コンプレッサー摺動部品を提供できる。
鍛造前の鋳造材を示す斜視図である。 鍛造材の一例を示す斜視図である。 本発明に係るコンプレッサー摺動部品鍛造品の一例を示す斜視図である。
本発明に係るコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金は、Si:3.0質量%~9.0質量%、Cu:1.5質量%~3.5質量%、Mg:0.1質量%~0.8質量%を含有し、Mn:0.1質量%~0.9質量%、およびCr:0.05質量%~0.5質量%、からなる群より選ばれるいずれか1種の遷移金属を前記含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金であって、前記アルミニウム合金材料の引張強さが390MPa~450MPaであり、前記アルミニウム合金材料の破断伸びが10.0%以上であることを特徴とする。このような構成とすることで、十分な引張強さ及び十分な破断伸びを有したコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金を提供できる。
また、本発明に係るコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金は、Si:3.0質量%~9.0質量%、Cu:1.5質量%~3.5質量%、Mg:0.1質量%~0.8質量%を含有し、Mn:0.1質量%~0.9質量%、およびCr:0.05質量%~0.5質量%、からなる群より選ばれる2種の遷移金属をそれぞれ前記含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金であって、前記2種の遷移金属の合計含有率が0.1質量%~1.0質量%であり、前記アルミニウム合金材料の引張強さが390MPa~450MPaであり、前記アルミニウム合金材料の破断伸びが10.0%以上であることを特徴とする。このような構成とすることで、十分な引張強さ及び十分な破断伸びを有したコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金を提供できる。
次に、上述した本発明に係るコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金における「アルミニウム合金」の組成について以下詳述する。
前記Si(成分)は、強度を向上させる作用を有する。Siが9.0質量%を超えると、粗大なSi粒子の存在により、靱性が低下し、十分な破断伸びが得られない。一方、Siが3.0質量%未満では、十分な引張強さが得られない。従って、Si含有率は、3.0質量%~9.0質量%に設定する。中でも、Si含有率は、4.5質量%~7.0質量%に設定するのが好ましい。
前記Cu(成分)は、引張強さを向上させる作用を有する。引張強さを向上させる作用はCuの析出によるものであり、人工時効処理を施すことによって上記効果が得られる。Cuが1.5質量%未満では、十分な析出強化が得られず、強度を向上できない。一方、Cuが3.5質量%を超えると、十分な強度が得られない。従って、Cu含有率は、1.5質量%~3.5質量%に設定する。中でも、Cu含有率は、2.1質量%~2.9質量%に設定するのが好ましい。
前記Mg(成分)は、引張強さを向上させる作用を有する。Mgは鋳造時に固溶し、人工時効処理時にSiやCuと化合物を形成して析出することで、引張強さ向上に寄与する。このような効果は、Mg含有率が0.1質量%以上で顕著に表れ、Mg含有率が0.8質量%を超えると上記効果が顕著に表れなくなる。従って、Mg含有率は、0.1質量%~0.8質量%に設定する。中でも、Mg含有率は、0.4質量%~0.7質量%に設定するのが好ましい。
前記アルミニウム合金は、MnおよびCrからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する。
前記Mn(成分)は、微量添加することにより、再結晶粗大化を抑制し、微細再結晶が得られる。鋳造時に固溶したMnは、均質化熱処理や熱間塑性加工時に微細析出し、固溶限度を超えて添加された場合は、鋳造時にSi粒子と化合物を形成し、Al-Mn-Si系化合物として粒状に晶出する。これらの析出物や晶出物が再結晶温度の上昇や、転移運動に対するピンニング効果を発揮し、再結晶粗大化を抑制できる。このような再結晶粗大化抑制効果は、Mn含有率が0.1質量%未満では得られ難い。一方、Mn含有率が0.9質量%を超えると、粗大晶出物を形成して引張強さ等の特性が低下する。従って、Mn含有率は、0.1質量%~0.9質量%に設定する。中でも、Mn含有率は、0.3質量%~0.5質量%に設定するのが好ましい。
前記Cr(成分)は、Mnと同様に、微量添加により、析出物と晶出物の形成で再結晶粗大化を抑制する効果が得られる。このような効果は、Cr含有率が0.05質量%未満では、十分に得られない。一方、Cr含有率が0.5質量%を超えると、粗大晶出物を形成して引張強さ等の特性が低下する。従って、Cr含有率は、0.05質量%~0.5質量%に設定する。中でも、Cr含有率は、0.1質量%~0.3質量%に設定するのが好ましい。
なお、前記アルミニウム合金が、Mn及びCrからなる群より選ばれる2種の遷移金属の両方を含有する組成である場合には、前記2種の遷移金属の合計含有率が0.1質量%~1.0質量%の範囲である構成とする。前記2種の遷移金属の合計含有率が1.0質量%を超えると、粗大晶出物を形成して引張強さ等の特性が低下する。中でも、前記2種の遷移金属の合計含有率は、0.3質量%~0.8質量%の範囲であるのが好ましい。
前記アルミニウム合金は、さらにTi:0.001質量%~0.1質量%を含有するのが好ましい。Tiは、微細添加することで鋳造品の結晶粒微細化に寄与する。この効果は、Ti含有率が0.001質量%以上になると顕著に表れるが、0.1質量%を超えると、Tiを含む化合物が粗大に晶出して、延性低下をもたらす。従って、Tiは、0.001質量%~0.1質量%含有せしめるのが好ましい。中でも、Tiは、0.01質量%~0.08質量%含有せしめるのがより好ましい。また、Tiを含有させる場合は、Al-Ti母合金やTiB2の添加剤の形態で添加してもよい。
その他の金属元素として、Zn、Fe、Ni、Co、V、Mo、Zr、Sc、Hf、Ce、Nb、Er、Ybは、不可避不純物として、これらの合計量で最大0.5質量%まで許容できる。0.5質量%を超えると、Al母相より先に晶出されて粗大晶出物となり、延性低下をもたらす。
上述した組成のアルミニウム合金を例えば周知の方法で溶製することによって上記合金組成の連続鋳造材(ビレット)を製作し、その連続鋳造材に熱処理を行い、さらに鍛造加工等の塑性加工を行った後、切削加工等を行うことによって、コンプレッサー摺動部品を得ることができる(図3参照)。なお、図3に示すものは、カーエアコン用スクロールであり、52は底板、51は、渦巻き状の羽根部である。
次に、本発明の一態様であるカーエアコン用摺動部品の製造方法の一例について説明する。
まず上述したように成分調整されたアルミニウム合金溶湯を連続鋳造する。電動スクロールの製造を想定した場合、例えば直径60mm~80mm程度の寸法で鋳造する。押出を用いて上記直径の鍛造用ビレットを得ることもできるが、製造コストが高価になるので、鋳造加工により鍛造用ビレットを得るのが好ましい。
得られた鋳造材は、鋳造時に晶出物の偏析等が起きているため、均質化熱処理を施すが、この均質化熱処理では加熱温度を460℃~510℃に設定し、処理時間を0.5時間~6時間に設定するのが好ましい。
次に、鋳造材を所定の長さに切断し、鍛造用ビレットを得る。鍛造工程では、金型温度を100℃~300℃とし、素材温度を370℃~510℃に設定するのが好ましい。
次いで、前記鍛造用ビレットに溶体化処理を行う。この溶体化処理では、加熱の温度を450℃~510℃に設定し、処理時間を0.5時間~8.0時間に設定するのが好ましい。
次に、焼入れ処理を行う。この焼入れ処理は、10℃~80℃の水で急冷するのが好ましい。
次いで、人工時効処理を行う。この人工時効処理は、加熱処理温度を160℃~220℃とし、加熱処理時間を1時間~18時間に設定するのが好ましい。
次に、人工時効処理を施した鍛造品を機械加工にて切削した後、ピーニングし表面近傍に塑性加工を加えて疲労強度を向上させる。このショットピーニング工程では、砥粒サイズは1mm以下とし、砥粒種はSUS304、アルミナ等を用い、ピーニング圧力は1MPa以下とするのが好ましい。
以上のようにして製造された本発明に係るコンプレッサー摺動部品鍛造品は、優れた引張強さおよび十分な破断伸びを備えており、カーエアコン用として好適である。
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1~4、比較例1~12>
表1に示す合金組成(不可避不純物を含む)に調製したアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造にて鋳造して直径82mmの鋳造材10を得た(図1参照)。鋳造時の冷却速度は15℃/秒とした。得られた鋳造材に対し470℃で7時間の均質化熱処理を行った後、空冷した。前記鋳造材を長さ30mmに切断した後、素材温度420℃、金型温度180℃で鍛造した。鍛造においては、スクロール鍛造品の底板52を想定し鋳造材の軸方向と平行な方向に80%の据え込みを行って鍛造材20を得た(図2参照)。次に、前記鍛造材に495℃で3時間加熱して溶体化処理を行った後、25℃の水にて水焼入れ処理を行った。次いで、加熱処理温度180℃で8時間加熱する人工時効処理を行って、T6鍛造品を得た。
Figure 0007318284000001
上記のようにして得られたT6鍛造品について下記評価法に基づいて評価した。これらの評価結果を表1に示す。
<引張強さ及び破断伸びの測定法>
得られた鍛造品から切り出し加工を行って、JIS Z2201-2011年に規定のJIS4号引張試験片を得た。この引張試験片に対してJIS Z2241-2011年の規定に準拠して引張試験を行うことによって引張強さ及び破断伸びを測定した。
表から明らかなように、本発明に係る実施例1~4のアルミニウム合金を用いた鍛造品は、大きい引張強さが得られると共に、十分な破断伸びが得られた。
これに対し、本発明の規定範囲を逸脱する比較例1、3~12では、引張強さが不十分であり、比較例2、4、6、7、9、11、12では、破断伸びが不十分であった。
本発明に係るコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金で構成されたコンプレッサー摺動部品は、自動車エアコン用コンプレッサー(圧縮機)に代表される摺動部品、とりわけスクロール、電動スクロールとして好適に使用できる。
10…鋳造材
20…鍛造材
50…コンプレッサー摺動部品鍛造品

Claims (4)

  1. Si:3.0質量%~9.0質量%、Cu:1.5質量%~3.5質量%、Mg:0.4質量%~0.7質量%を含有し、
    Mn:0.3質量%~0.5質量%、およびCr:0.1質量%~0.3質量%、からなる群より選ばれる2種の遷移金属をそれぞれ前記含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金であって、
    前記2種の遷移金属の合計含有率が0.3質量%~0.8質量%であり、
    前記アルミニウム合金材料の引張強さが390MPa~450MPaであり、前記アルミニウム合金材料の破断伸びが10.0%以上であることを特徴とするコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金。
  2. 前記アルミニウム合金は、さらにTi:0.001質量%~0.1質量%を含有する請求項に記載のコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金。
  3. 請求項1または2に記載のコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金で構成されたコンプレッサー摺動部品鍛造品。
  4. 請求項1または2に記載のコンプレッサー摺動部品用アルミニウム合金で構成された電動コンプレッサー摺動部品鍛造品。
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