JP7311411B2 - インクジェットインク - Google Patents
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Description
しかし近時、溶剤として有機溶剤のみを用いるか、もしくは水を併用する場合でも水より有機溶剤を多くすることで速乾性を付与して、加熱乾燥工程を省略可能とした、HEATLESSINK(登録商標)等の溶剤系のインクジェットインクが実用化されつつある。
とくに文字などの定着が難しいとされるアルミニウム箔、コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の表面に、定着性に優れた文字などを印刷するためには、バインダ樹脂を配合するのが有効である。
とくに水を全く含まない溶剤系のインクジェットインクは、コゲーションを生じやすい傾向がある。
かかる構成では、上記ポリエーテル類をバインダとして用いることによって文字などの定着性を確保しながら、ポリエーテル類が通常のバインダ樹脂よりも低分子量であることから、溶剤系でもコゲーションの発生を抑制できることが期待される。
すなわち印刷した文字などを、たとえば、指先などで擦過した際に、当該文字などが摩擦熱や皮脂などによって軟化したり溶解したりして、掠れたり被印刷体の表面から取れたりしやすくなる場合がある。
本発明の目的は、水を含まない(除く)溶剤系であって、コゲーションを生じにくい上、間欠印刷性にも優れ、しかも非吸収性の被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた文字などを印刷できるインクジェットインクを提供することにある。
金属錯塩染料、
ポリオキシアルキレングリコールおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、数平均分子量Mnが200以上であるポリオキシエチレン系化合物、
テルペンフェノール樹脂およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が30mgKOH/g以上、70mgKOH/g以下である粘着付与剤、
ケトン、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、溶解度パラメータ(SP値)が11未満である第一溶剤、ならびに
炭素数1~3のアルコールを少なくとも含む、溶解度パラメータ(SP値)が11以上のアルコールである第二溶剤、
を含むインクジェットインクである。
金属錯塩染料、
ポリオキシアルキレングリコールおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、数平均分子量Mnが200以上であるポリオキシエチレン系化合物、
テルペンフェノール樹脂およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が30mgKOH/g以上、70mgKOH/g以下である粘着付与剤、
ケトン、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、溶解度パラメータ(SP値)が11未満である第一溶剤、ならびに
炭素数1~3のアルコールを少なくとも含む、溶解度パラメータ(SP値)が11以上のアルコールである第二溶剤、
を含むことを特徴とするものである。
またポリオキシエチレン系化合物は、通常のバインダ樹脂よりも分子量の小さいポリエーテル類であり、粘着付与剤も、通常のバインダ樹脂よりも分子量の小さいテルペンフェノール樹脂および/またはロジンエステルである。
したがって、たとえば、サーマル方式のインクジェットプリンタに用いてもコゲーションを生じにくくして、インクジェットインクを、当該インクジェットプリンタのノズルから、安定して吐出させることができる。
そして被印刷体の表面で、徐々に析出しつつあるこれらの成分がゆっくり凝集されて、当該表面に、金属錯塩染料が、ポリオキシエチレン系化合物をバインダとして結着され、なおかつ粘着付与剤の粘着性によって強固に定着された文字などが形成される。
そのため、とくに前述したコロナ処理OPPなどの表面に、現状よりも定着性、耐擦過性に優れた文字などを印刷することもできる。
すなわち、印刷のデキャップタイムにインクジェットプリンタのノズルで目詰まりして、印刷再開時の文字などに掠れ等が生じるのを抑制することができる。
デキャップタイムとは、インクジェットプリンタに複数設けられたノズルのうち、間欠印刷時に、印刷パターンに応じてインク滴が吐出されない待機状態とされたノズル内のインクジェットインクが、外気にさらされている時間を指す。
しかし印刷時には、キャップは解除されている。
そのため、とくに間欠印刷時に待機状態となるノズルは、次にインク滴が吐出されるまでの間、ノズルが閉じられていない状態(デキャップの状態)が続き、その間、ノズル内のインクジェットインクは外気にさらされ続けることになる。
デキャップタイムにノズルの目詰まりを生じにくい特性が、「間欠印刷性」の良否として評価される。目詰まりを生じないデキャップタイムが長ければ長いほど、インクジェットインクは、間欠印刷性が良好であると評価できる。
ところがデキャップタイムに、インクジェットインクがノズル内で外気にさらされると、当該外気との界面、つまりノズル内のインクジェットインクの液面(メニスカス)で、粘着付与剤が、外気中の水分の作用によって析出して、当該液面にごく薄い膜を形成する。
しかも粘着付与剤は、ほとんど造膜性のない硬脆い成分であり、当該粘着付与剤からなる膜は、次の吐出時にノズルに加わる吐出圧力によって簡単に破られ、破られた膜は、インクジェットインク中に速やかに溶解する。
ちなみに溶剤として、SP値が11以上のアルコールである第二溶剤のみを用いても、粘着付与剤の量を多くすれば、上述したメカニズムによって、間欠印刷性を向上できる場合はある。
かかる水酸基価の高い粘着付与剤は水に対する溶解性が高いため、上記のように量を多くしなければ、液面に膜を形成して間欠印刷性を向上する効果が得られない。
しかも粘着付与剤の量を多くすれば、コゲーションを生じやすくなる場合もある。
また、粘着付与剤の量を少なくできるため、コゲーションの発生を抑制することもできる。
〈金属錯塩染料〉
金属錯塩染料としては、第一溶剤、および第二溶剤のどちらにも溶解する種々の金属錯塩染料を用いることができる。
(イエロー)
C.I.ソルベントイエロー19、21、25、32、41、61、62、65、79、81、82、83、83:1、88、89、90、151;オリエント化学工業(株)のVALIFAST(登録商標)YELLOW 3108、3120、3150、3170、3180、4120、4121;中央合成化学(株)製のNeo SuperColor Yellow C-131;田岡化学(株)製のOleosol(登録商標)Fast Yellow 2G、GCN;BASFジャパン(株)製のOrasol(登録商標)Yellow 141、152、157、190;Sensient社製のIntraplast Yellow 2GLN、3R;CLARIANT(株)製のSavinyl Yellow 2GLS01、RLS、RLSN、2RLS。
C.I.ソルベントオレンジ5、6、11、20、41、54、56、58、59、62、99;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST ORANGE 2210、3208、3209、3210;中央合成化学(株)製のNeo Super Color Orange C-232;BASFジャパン(株)製のOrasol Orange 245、247、251、272;Sensient社製のIntraplast Orange G、RLN;CLARIANT(株)製のSavinyl Orange RLS、RLSE。
C.I.ソルベントレッド8、91、99、100、102、109、118、119、122、124、125、127、130、132、142、160、218、233;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST Red 2303、2320、3304、3306、3311、3312、3320、PINK 2310N;中央合成化学(株)製のNeo Super Color RED C-431、PINK C-331;田岡化学(株)製のOleosol Fast RED BL、PINK FB;BASFジャパン(株)製のOrasol Red 330、335、355、363、365、385、395、471、Pink 478;Sensient社製のIntraplast Red GC、Scarlet 3GL;CLARIANT(株)製のSavinyl Red 3BLS、3GLS、Pink 6BLS。
C.I.ソルベントブラウン37、42、43、44;BASFジャパン(株)製のOrasol Brown 324、326;Sensient社製のIntraplast Brown GC。
(ブルー)
C.I.ソルベントブルー24、25、38、44、45、55、64、67、70;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST Blue 2606、2620、2670;中央合成化学(株)のNeo Super Color Blue C-555;BASFジャパン(株)製のOrasol Blue 825、855;Sensient社製のIntraplast Blue GN;CLARIANT(株)製のSavinyl Blue RS、GLS。
C.I.ソルベントブラック22、27、28、29、34、35、43;オリエント化学工業(株)製のVALIFAST BLACK 3804、3807、3808、3810、3820、3830、3840、3866、3870、3877、3878;中央合成化学(株)のNeo Super Color Black C-832;BASFジャパン(株)製のOrasol Black X45、X51、X55;Sensient社製のIntraplast Black CN、RLS;CLARIANT(株)製のSavinyl Black RLSN01。
ただし金属錯塩染料の量は、インクジェットインクの総量中の5質量%以上、とくに7質量%以上であるのが好ましく、15質量%以下、とくに12質量%以下であるのが好ましい。
前述した本発明の効果は、発明者の検討によると、溶剤可溶の油溶性染料の中でも、金属錯塩染料においてのみ、特異的に発現される。
すなわち、金属錯塩染料以外の他の油溶性染料は、前述したようにポリオキシエチレン系化合物が配位した構造を形成しえないため、当該ポリオキシエチレン系化合物、および粘着付与剤とともに析出したり凝集したりすることはなく、被印刷体の表面にしっかり定着されることはない。
〈ポリオキシエチレン系化合物〉
ポリオキシエチレン系化合物としては、ポリオキシアルキレングリコールおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種である、数平均分子量Mnが200以上の、バインダとして用いることができる種々の化合物が挙げられる。
・ ポリエチレングリコール、
・ ポリオキシエチレン鎖とアルキル基とをエーテル結合した構造を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル〔以下、別名である「アルコールエトキシレート」と記載する場合がある。〕、および
・ エチレンオキサイド(EO)とプロピレンオキサイド(PO)のブロックまたはランダム共重合体であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール〔以下、代表的なブロック共重合体の別名である「ポロキサマー」と略記する場合がある。〕
等の1種または2種以上が挙げられる。
(ポリエチレングリコール)
(株)ADEKA製のアデカ(登録商標)PEGシリーズのうちPEG-200〔数平均分子量Mn:200〕、PEG-300〔数平均分子量Mn:300〕、PEG-400〔数平均分子量Mn:400〕、PEG-600〔数平均分子量Mn:600〕、PEG-1000〔数平均分子量Mn:1000〕、PEG-1500〔数平均分子量Mn:570〕、PEG-1540〔数平均分子量Mn:1500〕、PEG-4000〔数平均分子量Mn:3000〕、PEG-6000〔数平均分子量Mn:8300〕、PEG-20000〔数平均分子量Mn:20000〕。
純正化学(株)製のポリオキシエチレンラウリルエーテルブリッジ35〔数平均分子量Mn:1200〕。
第一工業製薬(株)製のDKS-NL15〔数平均分子量Mn:2900〕。
(ポロキサマー)
三洋化成工業(株)製のニューポール(登録商標)PEシリーズのうちPE-61〔POE(5)POP(30)〕、PE-62〔POE(10)POP(30)〕、PE-71〔POE(5)POP(35)〕、PE-74〔POE(30)POP(35)〕、PE-75〔POE(48)POP(35)〕。
これらのポリオキシエチレン系化合物は、通常は非イオン系界面活性剤やその原料等として用いられる化合物であり、なおかつコゲーションを生じやすい通常のバインダ樹脂よりも低分子量の化合物でもある。
しかしこれら他の化合物は、ポリオキシエチレン系化合物に比べて造膜性が低いため、被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性に優れた文字などを印刷できない上、べたつきを生じて印刷後の速乾性が低下する場合もある。
そのため、ポリオキシエチレン系化合物を第一および第二の両溶剤と組み合わせることにより、前述したメカニズムによって、コゲーションを生じることなしに、被印刷体の表面に、定着性、耐擦過性、および速乾性に優れた文字などを印刷することができる。
数平均分子量Mnがこの範囲未満であるポリオキシエチレン系化合物は、依然として造膜性が十分でなく、被印刷体の表面に定着性、耐擦過性に優れた文字などを印刷できなかったり、べたつきを生じて印刷後の速乾性が低下したりする場合がある。
ただし、ポリオキシエチレン系化合物の数平均分子量Mnは、上記の範囲でも5000以下、とくに4000以下であるのが好ましい。
これに対し、数平均分子量Mnが上記の範囲以下であるポリオキシエチレン系化合物は、インクジェットインク中での溶解性に優れるため、析出したり、コゲーションを生じたりするのをさらに有効に抑制することができる。
アデカPEGシリーズのうちPEG-1000〔数平均分子量Mn:1000〕、PEG-1540〔数平均分子量Mn:1500〕、PEG-4000〔数平均分子量Mn:3000〕
トーホーポリエチレングリコールシリーズのうち1000〔数平均分子量Mn:1000〕、1540〔数平均分子量Mn:1500〕、2000〔数平均分子量Mn:2000〕、4000〔数平均分子量Mn:3000〕。
第一工業製薬(株)製のDKS-NL15〔数平均分子量Mn:2900〕。
アデカプルロニックLシリーズのうちL-31〔数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕、L-61〔数平均分子量Mn:2000、POE含量:10%〕、L-62〔数平均分子量Mn:2500、POE含量:20%〕、L-101〔数平均分子量Mn:3800、POE含量:10%〕
これらのポリオキシエチレン系化合物の、1種または2種以上を用いることができる。
ポリオキシエチレン系化合物の量がこの範囲未満、あるいは範囲を超える場合には、このいずれにおいても、文字などの耐擦過性が低下する場合がある。
粘着付与剤としては、テルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が30mgKOH/g以上、70mgKOH/g以下である化合物を用いる。
粘着付与剤としてのテルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルの水酸基価が、いずれも上記の範囲に限定されるのは、下記の理由による。
そのため、吐出が不安定になって連続印刷性が低下したり、間欠印刷性が不十分でデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じたりしやすくなる場合がある。
すなわち、水酸基価が70mgKOH/gを超える粘着付与剤は極性が高いため、上記混合溶剤に良好に溶解させることができ、連続印刷性は向上する。
そのため、デキャップタイムにインクジェットインクの粘度が上昇して、ノズルの目詰まりを生じやすくなり、間欠印刷性が低下する場合がある。
しかも、上記のように水酸基価の高い粘着付与剤は特殊で、種類が少なく特性の選択肢が限られるという課題もある。
これに対し、水酸基価が上記の範囲にある粘着付与剤は、種類が多く特性の選択肢が豊富である上、SP値の異なる第一および第二の二種の溶剤に対して低すぎずかつ高すぎない適度の溶解性を有し、インクジェットインク中に良好に溶解させることができる。
さらに、極性の低いプラスチック等からなる被印刷体の表面であっても、文字などの密着性を十分に確保することもできる。
テルペンフェノール樹脂としては、イソプレンが頭尾で順次結合した基本骨格(C5H8)p(ただしpは整数。)を有するテルペンとフェノール類との共重合体であって、水酸基価が上記の範囲にある種々のテルペンフェノール樹脂が使用可能である。
ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターシリーズのうちU115〔水酸基価:30mgKOH/g〕、T80〔水酸基価:60mgKOH/g〕、T100〔水酸基価:60mgKOH/g〕、T115〔水酸基価:60mgKOH/g〕、T130〔水酸基価:60mgKOH/g〕、T145〔水酸基価:60mgKOH/g〕。
またロジンエステルとしては、一塩基性カルボン酸でアルキル化ヒドロフェナントレン核を有するアビエチン型またはピマリン型の樹脂酸を主体とするロジンとアルコール類とのエステルであって、水酸基価が上記の範囲にある種々のロジンエステルが使用可能である。
ロジンエステルの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
これら粘着付与剤の1種または2種以上を用いることができる。
粘着付与剤の量は、インクジェットインクの総量中の0.5質量%以上、とくに1質量%以上であるのが好ましく、5質量%以下、とくに4質量%以下であるのが好ましい。
一方、粘着付与剤の量が上記の範囲を超える場合には、当該粘着付与剤が、前述したように殆ど造膜性を有しないことから、文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
これに対し、粘着付与剤の量を上記の範囲とすることにより、耐擦過性や耐アルコール性、連続印刷性の低下やコゲーションの発生を抑制しながら、インクジェットインクの間欠印刷性をさらに向上することができる。
〈第一溶剤〉
第一溶剤としては、前述したように、ケトン、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、SP値が11未満である各種の溶剤が用いられる。
このうちケトンの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種ケトン等の1種または2種以上が挙げられる。
1,4-ジオキサン〔ジオキサン、SP値:10〕、1,1-ジメチルジエチルエーテル〔ジイソプロピルエーテル、SP値:6.9〕、2-エトキシエタノール〔エチルセロソルブ(EGMEE)、SP値:10.5〕、2-ブトキシエタノール〔ブチルセロソルブ(EGMBE)、SP値:9.5〕、tert-ブチルメチルエーテル〔MTBE〕。
グリコールエーテルの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種グリコールエーテル等の1種または2種以上が挙げられる。
1-メトキシ-2-プロパノール〔プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、SP値:10.2〕、2-(2-メトキシエトキシ)エタノール〔メチルカルビトール〕、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール〔エチルカルビトール、SP値:10.2〕、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール〔ブチルカルビトール、SP値:10.2〕、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール〔メチルトリグリコール〕、1-ブトキシ-2-プロパノール〔プロピレングリコール-1-モノブチルエーテル(PNB)〕、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール〔メチルメトキシブタノール(MMB)〕、2-[2-(ヘキシルオキシ)エトキシ]エタノール〔ヘキシルジグリコール〕、1-(メトキシメチル)エチル=プロピオナート〔メトテート〕、1または2-(メトキシメチルエトキシ)プロパノール〔ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、異性体混合物〕。
酢酸エチル〔エチルアセテート、SP値:9.1〕、酢酸メチル〔メチルアセテート、SP値:9.6〕、酢酸n-ブチル〔n-ブチルアセテート、SP値:8.5〕、酢酸sec-ブチル〔sec-ブチルアセテート、SP値:8.3〕、3-メトキシブチルアセテート〔酢酸3-メトキシブチル〕、エタン酸ペンチル〔酢酸アミル、SP値:8.5〕、酢酸プロピル〔酢酸n-プロピル、SP値:8.8〕、エタン酸イソプロピル〔酢酸イソプロピル、SP値:8.4〕、エチル(R)-2-ヒドロキシプロパノエート〔乳酸エチル〕、メチル-2-ヒドロキシプロパノエート〔乳酸メチル〕、ブチル-2-ヒドロキシプロパノエート〔乳酸ブチル〕。
グリコールエステルの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種グリコールエステル等の1種または2種以上が挙げられる。
1-アセトキシ-2-エトキシエタン〔エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート〕、1-メトキシ-2-プロパニルアセテート〔プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)〕、2-(2-ブトキシエトキシ)エチルアセテート〔ブチルカルビトールアセテート、SP値:8.5〕、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセテート〔エチルカルビトールアセテート〕。
そして、溶解した金属錯塩染料等が、インクジェットインクの貯蔵中に析出したり、コゲーションを生じたりするのを有効に抑制できる。
上記のうちケトンとしては、炭素数が3~5で、かつSP値が9以下であるケトンが好適に用いられる。
これらの条件を満足するケトンとしては、先に例示した各種ケトンのうち、たとえば、2-ペンタノン〔MPK、炭素数:5、SP値:8.7〕、3-ペンタノン〔DEK、炭素数:5、SP値:8.8〕、3-メチル-2-ブタノン〔MIPK、炭素数:5、SP値:8.5〕等が挙げられる。
さらにエステルとしては、先に例示した各種エステルのうち、たとえば、酢酸エチル〔エチルアセテート、SP値:9.1〕等が挙げられる。
〈第二溶剤〉
上記第一溶剤と併用する第二溶剤としては、炭素数1~3のアルコールを少なくとも含む、溶解度パラメータ(SP値)が11以上のアルコールを用いる。
かかるアルコールの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種アルコール等の1種または2種以上が挙げられる。
また、これらのアルコールを第二溶剤として併用することにより、インクジェットインクの、インクジェットプリンタのヘッドなどを形成する部材等との材料適合性、すなわちマテリアルコンパチビリティを改善することができる。
そのため第二溶剤としては、炭素数1~3のアルコールを単独(2種以上の、炭素数1~3のアルコールを併用する場合を含む。以下同様。)で用いるのが好ましいが、当該炭素数1~3のアルコールと、それ以外の他のアルコールとを併用してもよい。
なお炭素数1~3のアルコールの量の上限は、速乾性の観点からすると、第二溶剤の総量中の100質量%である。
すなわち上述したように、第二溶剤の全量が、炭素数1~3のアルコールであるのが好ましい。
第一溶剤の量は、当該第一溶剤と、第二溶剤としてのアルコールとの総量中の4質量%以上、とくに5質量%以上であるのが好ましく、42質量%以下、とくに40質量%以下であるのが好ましい。
この範囲より第一溶剤の量が少ない場合には、金属錯塩染料等の良好な溶解性を維持することができず、インクジェットインクを貯蔵中に析出が生じたり、印刷時にコゲーションが生じたりしやすくなる場合がある。
すなわち、ヘッドを構成する部材などが侵食されたり溶解したりしてインクジェットインク中に混入して、たとえば、ノズル内で不溶解分として析出するとインクジェットインクの吐出が不安定化し、ノズル詰まりの原因となって、連続印刷性が低下する場合がある。
さらに、析出した不溶解分は、デキャップタイムにノズル内の液面に粘着付与剤の膜が形成されるのを阻害して、間欠印刷性を低下させる原因となる場合もある。
また、サーマル方式のインクジェットプリンタに使用して加熱した際に気泡の生成成分として機能する、第二溶剤としてのアルコールの量が不足して、インクジェットインクを加熱しても気泡を良好に発生できず、適正なインク滴を吐出できない場合もある。
また、インクジェットインクのマテリアルコンパチビリティを改善して、ヘッドを構成する部材等の侵食や溶解による上述した各種の不良が生じるのを良好に抑制することもできる。
〈その他の成分〉
インクジェットインクには、上記各成分に加えて、さらに、バインダ樹脂を配合してもよい。
ただしバインダ樹脂は、前述したようにコゲーションの原因となるため、配合する場合でも少量に限定するのが好ましい。
具体的には、バインダ樹脂の量は、インクジェットインクの総量中の5質量%以下、中でも2質量%以下であるのが好ましい。
とくにコゲーションの発生等を抑制することを考慮すると、バインダ樹脂の量は、上記の範囲でも0質量%、すなわちバインダ樹脂は、やはり配合しない(除く)ことが好ましい。
〈実施例1〉
下記の各成分を配合したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過して、インクジェットインクを調製した。
着色剤:金属錯塩染料〔オリエント化学工業(株)製のVALIFAST BLACK 3810〕
ポリオキシエチレン系化合物:(株)ADEKA製のアデカPEG-1000〔ポリエチレングリコール、数平均分子量Mn:1000〕
粘着付与剤:テルペンフェノール樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT80、水酸基価:60mgKOH/g〕
第一溶剤(ケトン):3-メチル-2-ブタノン〔メチルイソプロピルケトン(MIPK)、炭素数:5、SP値:8.5〕
第二溶剤:エタノール〔エチルアルコール、炭素数:2、SP値:12.7〕
ポリオキシエチレン系化合物の量は、金属錯塩染料の量に対して22.2質量%、第一溶剤の量は、第一溶剤と第二溶剤の総量中の23.0質量%であった。
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、純正化学(株)製のポリオキシエチレンラウリルエーテルブリッジ35〔アルコールエトキシレート、数平均分子量Mn:1200〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例3〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、(株)ADEKA製のアデカプルロニックL-31〔ポロキサマー、POE(3)POP(17)、数平均分子量Mn:1100、POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例4〉
第二溶剤として、エタノール60質量%と、2-プロパノール〔イソプロピルアルコール(IPA)、炭素数:3、SP値:11.5〕7質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例5〉
第二溶剤として、エタノール60質量%と、1-ブタノール〔ブチルアルコール、炭素数:4、SP値:11.4〕7質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例6〉
第一溶剤として、MIPK2質量%と、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール〔エチルカルビトール、SP値:10.2〕18質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例7〉
第一溶剤として、MIPK2質量%と、1-メトキシ-2-プロパノール〔プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、SP値:10.2〕18質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例8〉
第一溶剤として、MIPK2質量%と、酢酸エチル〔エチルアセテート、SP値:9.1〕18質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例9〉
第一溶剤として、MIPKに代えて、2-ブタノン〔メチルエチルケトン(MEK)、炭素数:4、SP値:9.3〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例10〉
第一溶剤として、MIPKに代えて、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール〔エチルカルビトール、SP値:10.2〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例11〉
第一溶剤として、MIPKに代えて、1-メトキシ-2-プロパノール〔プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、SP値:10.2〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例12〉
第一溶剤として、MIPKに代えて、酢酸エチル〔エチルアセテート、SP値:9.1〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
溶剤の量は、第一溶剤と第二溶剤の総量中の23.0質量%であった。
〈実施例13〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、東邦化学工業(株)製のトーホーポリエチレングリコール2000〔ポリエチレングリコール、数平均分子量Mn:2000〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例14〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、第一工業製薬(株)製のDKS-NL15〔アルコールエトキシレート、数平均分子量Mn:2900〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例15〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、(株)ADEKA製のアデカプルロニックL-61〔ポロキサマー、POE(5)POP(30)、数平均分子量Mn:2000、POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例16〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、(株)ADEKA製のアデカPEG-600〔ポリエチレングリコール、数平均分子量Mn:600〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例17〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、(株)ADEKA製のアデカPEG-400〔ポリエチレングリコール、数平均分子量Mn:400〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例18〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、(株)ADEKA製のアデカプルロニックL-101〔ポロキサマー、POE(8)POP(55)、数平均分子量Mn:3800、POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例19〉
ポリオキシエチレン系化合物として、アデカPEG-1000に代えて、(株)ADEKA製のアデカプルロニックL-121〔ポロキサマー、POE(10)POP(65)、数平均分子量Mn:4500:POE含量:10%〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例20〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000の量を0.2質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を68.8質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例21〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000の量を0.3質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を68.7質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例22〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000の量を4.5質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を64.5質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例23〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000の量を5質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を64質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例1〉
粘着付与剤として、YSポリスターT80に代えて、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターU130〔テルペンフェノール樹脂、水酸基価:25mgKOH/g〕を実施例1と同量配合したが、全量を溶かすことはできなかった。
ポリオキシエチレン系化合物の量は、金属錯塩染料の量に対して22.2質量%、第一溶剤の量は、第一溶剤と第二溶剤の総量中の23.0質量%であった。
〈実施例24〉
粘着付与剤として、YSポリスターT80に代えて、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターU115〔テルペンフェノール樹脂、水酸基価:30mgKOH/g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例25〉
粘着付与剤として、YSポリスターT80に代えて、アリゾナケミカル社製のSylVares TP115〔テルペンフェノール樹脂、水酸基価:50mgKOH/g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例2〉
粘着付与剤として、YSポリスターT80に代えて、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターS145〔テルペンフェノール樹脂、水酸基価:100mgKOH/g〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例26〉
第一溶剤としてのMIPKの量を4質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を83質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例27〉
第一溶剤としてのMIPKの量を5質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を82質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例28〉
第一溶剤としてのMIPKの量を32質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を55質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例29〉
第一溶剤としてのMIPKの量を36質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を51質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例30〉
粘着付与剤としてのYSポリスターT80の量を0.5質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を68.5質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例31〉
粘着付与剤としてのYSポリスターT80の量を1質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を68質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例32〉
粘着付与剤としてのYSポリスターT80の量を4質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を65質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈実施例33〉
粘着付与剤としてのYSポリスターT80の量を5質量%、第二溶剤としてのエタノールの量を64質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例3〉
着色剤として、金属錯塩染料でない油溶性染料〔オリエント化学工業(株)製のOIL BLACK860〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例4〉
第一溶剤としてのMIPKの量を87質量%として、第二溶剤としてのエタノールを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例5〉
第二溶剤としてのエタノールの量を87質量%として、第一溶剤としてのMIPKを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例6〉
粘着付与剤として、YSポリスターT80に代えて、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターS145〔テルペンフェノール樹脂、水酸基価:100mgKOH/g〕10質量%を配合するとともに、第二溶剤としてのエタノールの量を79質量%として、第一溶剤としてのMIPKを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例7〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000に代えて、ソルビタンラウリルエステル〔(株)ADEKA製のアデカエストールS-20〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例8〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000に代えて、アセチレングリコール〔日信化学工業(株)製のオルフィン(登録商標)E1020〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例9〉
ポリオキシエチレン系化合物としてのアデカPEG-1000に代えて、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂〔BASFジャパン(株)製のJONCRYL682〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
〈比較例10〉
粘着付与剤としてのYSポリスターT80を配合せず、第一溶剤としてのMIPKの量を18質量%とし、かつ第二溶剤として、エタノール69質量%と、1-ブタノール2質量%とを併用したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
ポリオキシエチレン系化合物の量は、金属錯塩染料の量に対して22.2質量%、第一溶剤の量は、第一溶剤と第二溶剤の総量中の20.2質量%であった。
オンデマンド型のサーマル方式のインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、コロナ処理OPPの表面に、300×300dpiの解像度で0.5インチ×0.5インチのベタ画像を連続印刷した。
そして印刷したベタ画像を観察して、主にコゲーションなどが原因である、インクジェットインクの吐出不良による欠けや抜けを生じなかった印刷回数を記録し、下記の基準で連続印刷性を評価した。
△:1万回以上、3万回未満。
×:1万回未満。
〈耐擦過性試験〉
連続印刷性試験で使用したのと同じインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、コロナ処理OPPの表面に、0.2pt(線幅0.07mm)のバーコードを印刷した。
○:こすっても、バーコードに変化は見られなかった。
△:こすると、バーコードの一部に伸びが見られたが、欠けは見られなかった。
×:こすると、バーコードの少なくとも一部に伸び、欠けが見られた。
連続印刷性試験で使用したのと同じインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、コロナ処理OPPの表面に、300×300dpiの解像度で約8.5ptの文字を印刷した。
次いで、印刷した文字を一定時間、乾燥させてから綿棒でこすっても文字が取れなくなるのに要した上記乾燥時間を記録して、下記の基準で速乾性を評価した。
△:10秒以上、15秒未満。
×:15秒以上。
〈間欠印刷性試験〉
連続印刷性試験で使用したのと同じインクジェットプリンタを使用して、実施例、比較例で調製したインクジェットインクにより、コロナ処理OPPの表面に、300×300dpiの解像度で約8.5ptの文字を印刷した。
○:10分間以上
△:5分間以上、10分間未満
×:5分間未満
〈貯蔵安定性試験〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをスクリュー管瓶に入れ、密閉して冷凍庫中に収容して-20℃で保管した際の、1日後および2日後の状態の変化を観察した。そして下記の基準で貯蔵安定性を評価した。
△:1日後には変化は見られなかったが、2日後には析出が見られた。
×:1日後に析出が見られた。
〈マテリアルコンパチビリティ試験〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをインクカートリッジに充填して45℃で保管し、1週間おきに、保管したインクカートリッジをインクジェットプリンタに装填して文字などを印刷した。そして、マテリアルコンパチビリティが悪いことが原因で生じる文字などの欠けや掠れの有無を観察して、下記の基準でマテリアルコンパチビリティを評価した。
△:5週間目の観察では欠けや掠れが見られたが、4週間目までは欠けや掠れは見られなかった。
×:4週間目までの間に欠けや掠れが見られた。
以上の結果を表2~表10に示す。なお各表中、ポリオキシエチレン系化合物の種類の欄の符号は、それぞれ下記のとおりである。
AE:アルコールエトキシレート
PLX:ポロキサマー
・ 着色剤は、金属錯塩染料である必要があること、
・ バインダとしては、ポリオキシエチレン系化合物を用いる必要があること、
・ さらに粘着付与剤を含んでいる必要があること、
・ 粘着付与剤としては、水酸基価が30~70mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂および/またはロジンエステルを用いる必要があること、
が判った。
・ 溶剤としては、ケトン、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、SP値が11未満である第一溶剤と、炭素数1~3のアルコールを少なくとも含む、SP値が11以上のアルコールである第二溶剤とを併用する必要があること、
が判った。
・ ポリオキシエチレン系化合物としては、ポリエチレングリコール、アルコールエトキシレート、およびポロキサマーが使用可能であること、
・ ポリオキシエチレン系化合物の数平均分子量Mnは200以上である必要があり、中でも400以上、中でも600以上、とくに800以上であるのが好ましいこと、
・ ただし数平均分子量Mnは、上記の範囲でも5000以下、とくに4000以下であるのが好ましいこと、
が判った。
実施例1、26~29の結果より、第一溶剤の量は、当該第一溶剤と第二溶剤の総量中の4質量%以上、とくに5質量%以上であるのが好ましく、42質量%以下、とくに40質量%以下であるのが好ましいことが判った。
Claims (5)
- 金属錯塩染料、
ポリオキシアルキレングリコールおよびポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、数平均分子量Mnが200以上であるポリオキシエチレン系化合物、
テルペンフェノール樹脂およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が30mgKOH/g以上、70mgKOH/g以下である粘着付与剤、
ケトン、エーテル、およびエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、溶解度パラメータ(SP値)が11未満である第一溶剤、ならびに
炭素数1~3のアルコールを少なくとも含む、溶解度パラメータ(SP値)が11以上のアルコールである第二溶剤、
を含むインクジェットインク。 - 前記ポリオキシエチレン系化合物は、数平均分子量Mnが800以上、4000以下である請求項1に記載のインクジェットインク。
- 前記ポリオキシエチレン系化合物の量は、前記金属錯塩染料の量に対して3質量%以上、55質量%以下である請求項1または2に記載のインクジェットインク。
- 前記粘着付与剤の量は、前記インクジェットインクの総量中の1質量%以上、4質量%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
- 前記第一溶剤の量は、前記第一溶剤と前記第二溶剤の総量中の5質量%以上、40質量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
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