以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るウェーハの加工方法を用いて加工することが可能なウェーハの構成例について説明する。図1は、ウェーハ11を示す斜視図である。
ウェーハ11は、例えばシリコン等の材料によって円盤状に形成され、表面11a及び裏面11bを備える。ウェーハ11は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されており、この複数の領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等でなるデバイス15が形成されている。
なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えばウェーハ11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料によって形成されていてもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ含む複数のデバイスチップが得られる。なお、このデバイスチップの薄型化等を目的として、分割前のウェーハ11に対しては研削加工が施される。具体的には、ウェーハ11の裏面11b側が研削砥石で研削され、ウェーハ11が薄化される。
しかしながら、ウェーハ11の裏面11b側を研削砥石で研削すると、研削された領域には研削砥石の軌道に沿って凹凸(研削痕、ソーマーク)が形成される。この凹凸がウェーハ11に残存すると、ウェーハ11の分割によって製造されるデバイスチップの抗折強度が低下する。そこで、ウェーハ11の研削後には、凹凸が形成されたウェーハ11の裏面11b側を研磨することによって凹凸を除去する工程が実施される。
上記の研削加工及び研磨加工には、ウェーハ11の研削及び研磨が可能な加工装置が用いられる。図2は、加工装置2を示す斜視図である。なお、以下ではウェーハ11の研削と研磨の両方が加工装置2によって実施される例について説明するが、研削と研磨とはそれぞれ別の加工装置(研削装置及び研磨装置)によって実施されてもよい。
加工装置2は、加工装置2が備える各構成要素を支持する基台4を備える。基台4の上面前端側には開口4aが形成されており、この開口4a内には、ウェーハ11を搬送する第1の搬送ユニット6が設けられている。また、開口4aのさらに前方には、複数のウェーハ11を収容可能なカセット8a,8bが載置される載置台10a,10bが設けられている。
開口4aの斜め後方には、ウェーハ11の位置合わせを行うアライメント機構12が設けられている。アライメント機構12は、ウェーハ11が仮置きされる仮置きテーブル14を備える。例えばアライメント機構12は、第1の搬送ユニット6によってカセット8aから仮置きテーブル14に搬送されたウェーハ11の中心の位置を合わせる。
基台4の側面側には、アライメント機構12を跨ぐように配置された門型の支持構造16が設けられている。この支持構造16には、ウェーハ11を搬送する第2の搬送ユニット18が装着されている。第2の搬送ユニット18は、X軸方向(左右方向、第1水平方向)、Y軸方向(前後方向、第2水平方向)、及びZ軸方向(鉛直方向、上下方向)に移動可能に構成されており、例えば、アライメント機構12によって位置合わせがなされたウェーハ11を後方に搬送する。
基台4の上面側の、開口4a及びアライメント機構12の後方に位置する領域には、開口4bが形成されている。この開口4b内には、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りを回転する円盤状のターンテーブル20が配置されている。また、ターンテーブル20の上面には、ウェーハ11を保持する4個のチャックテーブル(保持テーブル)22が概ね等角度間隔に設置されている。
ターンテーブル20は、平面視で時計回り(図2の矢印Rで示す方向)に回転し、チャックテーブル22を搬送位置A、粗研削位置B、仕上げ研削位置C、研磨位置Dの順に位置付ける。アライメント機構12によって位置合わせが行われたウェーハ11は、第2の搬送ユニット18によって、搬送位置Aに位置付けられたチャックテーブル22に搬送される。
チャックテーブル22はそれぞれ、モータ等の回転駆動源(不図示)と連結されており、Z軸方向に概ね平行な回転軸の周りを回転する。また、チャックテーブル22の上面は、ウェーハ11を保持する保持面22a(図5参照)を構成する。保持面22aは、チャックテーブル22の内部に形成された流路(不図示)を介して吸引源(不図示)と接続されている。
ターンテーブル20の後方には、直方体状の支持構造24がZ軸方向に沿って配置されている。支持構造24の前面には、2組の移動ユニット(移動機構)26が設けられている。移動ユニット26はそれぞれ、Z軸方向に沿って配置された一対のガイドレール28を備えており、この一対のガイドレール28には移動テーブル30がスライド可能に装着されている。
移動テーブル30の後面側(裏面側)にはナット部(不図示)が固定されており、このナット部には、ガイドレール28と概ね平行に配置されたボールネジ32が螺合されている。また、ボールネジ32の一端部にはパルスモータ34が連結されている。パルスモータ34でボールネジ32を回転させると、移動テーブル30がガイドレール28に沿ってZ軸方向に移動する。
移動テーブル30の前面(表面)には、固定具36が設けられている。粗研削位置Bの上方に位置付けられた固定具36には、ウェーハ11の粗研削を行う粗研削用の研削ユニット38aが固定されている。一方、仕上げ研削位置Cの上方に位置付けられた固定具36には、ウェーハ11の仕上げ研削を行う仕上げ研削用の研削ユニット38bが固定されている。
研削ユニット38a,38bはそれぞれ、円筒状のハウジング40を備える。このハウジング40には、回転軸を構成する円柱状のスピンドル42が収容されている。スピンドル42の下端部(先端部)はハウジング40から露出しており、この下端部には円盤状のホイールマウント44が固定されている。
研削ユニット38aのホイールマウント44の下面には、粗研削用の研削砥石を備えた研削ホイール46aが装着されており、研削ユニット38bのホイールマウント44の下面には、仕上げ研削用の研削砥石を備えた研削ホイール46bが装着されている。また、スピンドル42の上端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。研削ホイール46a,46bはそれぞれ、回転駆動源からスピンドル42を介して伝達される動力(回転力)によって、Z軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
ウェーハ11を保持したチャックテーブル22を粗研削位置Bに配置し、研削ホイール46aが備える研削砥石を回転させながらウェーハ11に接触させることにより、ウェーハ11の粗研削が行われる。また、ウェーハ11を保持したチャックテーブル22を仕上げ研削位置Cに配置し、研削ホイール46bが備える研削砥石を回転させながらウェーハ11に接触させることにより、ウェーハ11の仕上げ研削が行われる。
研磨位置Dの近傍には、ウェーハ11の研磨を行う研磨ユニット52が設けられている。研削ユニット38a,38bによって研削されたウェーハ11は、研磨位置Dに位置付けられ、研磨ユニット52によって研磨される。なお、研磨ユニット52の構造及び機能の詳細については後述する。
アライメント機構12の前方には、ウェーハ11を洗浄する洗浄ユニット54が設けられている。研削ユニット38a,38bによる研削、及び研磨ユニット52による研磨が施されたウェーハ11は、第2の搬送ユニット18によって、搬送位置Aに位置付けられたチャックテーブル22から洗浄ユニット54に搬送される。そして、ウェーハ11は洗浄ユニット54によって洗浄された後、例えば第1の搬送ユニット6によってカセット8bに収容される。
図3は、研磨ユニット52を示す斜視図である。基台4(図2参照)の上面には、直方体状の支持構造60がZ軸方向に沿って配置されている。支持構造60の後面には、研磨ユニット52を水平方向(図3ではX軸方向)に移動させる水平移動ユニット(水平移動機構)62が設けられている。
水平移動ユニット62は、支持構造60の後面に固定されX軸方向に沿って配置された一対の水平ガイドレール64を備える。一対の水平ガイドレール64には、水平移動テーブル66がスライド可能に装着されている。水平移動テーブル66の前面側にはナット部(不図示)が固定されており、このナット部には、水平ガイドレール64と概ね平行に配置された水平ボールネジ(不図示)が螺合されている。
水平ボールネジの一端部には、パルスモータ68が連結されている。パルスモータ68で水平ボールネジを回転させると、水平移動テーブル66が水平ガイドレール64に沿ってX軸方向に移動する。
水平移動テーブル66の後面側には、研磨ユニット52を鉛直方向(Z軸方向)に移動させる鉛直移動ユニット(鉛直移動機構)70が設けられている。鉛直移動ユニット70は、水平移動テーブル66の後面に固定され鉛直方向(Z軸方向)に沿って配置された一対の鉛直ガイドレール72を備える。一対の鉛直ガイドレール72には、鉛直移動テーブル74がスライド可能に装着されている。
鉛直移動テーブル74の前面側(裏面側)には、ナット部(不図示)が固定されており、このナット部には、鉛直ガイドレール72と概ね平行に配置された鉛直ボールネジ(不図示)が螺合されている。また、鉛直ボールネジの一端部には、パルスモータ76が連結されている。パルスモータ76で鉛直ボールネジを回転させると、鉛直移動テーブル74が鉛直ガイドレール72に沿って鉛直方向(Z軸方向)に移動する。
鉛直移動テーブル74の後面(表面)側には、ウェーハ11を研磨する研磨ユニット52が固定されている。研磨ユニット52は円筒状のハウジング78を備え、ハウジング78には回転軸を構成する円柱状のスピンドル80が収容されている。スピンドル80の下端部(先端部)はハウジング78から露出しており、この下端部には円盤状のホイールマウント82が固定されている。
ホイールマウント82の下面には、ホイールマウント82と略同径の研磨ホイール84が装着される。研磨ホイール84は、ステンレス等の金属材料で形成された円盤状のホイール基台86を備えている。また、ホイール基台86の下面側には、円盤状の研磨パッド88が固定されている。ウェーハ11を保持したチャックテーブル22(図2参照)を研磨位置Dに配置し、研磨パッド88を回転させながらウェーハ11に接触させることにより、ウェーハ11の研磨が行われる。
次に、上記の加工装置2を用いたウェーハ11の加工方法の具体例を説明する。本実施形態では、まず、ウェーハ11の裏面11b側を研削ユニット38a,38bによって研削してウェーハ11を薄化する。その後、ウェーハ11の裏面11b側を研磨ユニット52によって研磨することにより、ウェーハ11の裏面11bに形成された研削痕を除去する。
加工装置2でウェーハ11を加工する際は、まず、ウェーハ11に保護部材17を貼付する。図4は、ウェーハ11に保護部材17が貼付される様子を示す斜視図である。保護部材17は、ウェーハ11と概ね同径の円形に形成されており、ウェーハ11の表面11a側に貼付される。保護部材17によってウェーハ11の表面11a側に形成された複数のデバイス15が覆われる。これにより、複数のデバイス15が保護される。
保護部材17としては、例えば樹脂等でなるフィルム状のテープが用いられる。なお、ウェーハ11の表面11a側を保護する必要がない場合(ウェーハ11の表面11a側にデバイス15が形成されていない場合など)には、保護部材17の貼付を省略することもできる。
その後、保護部材17が貼付されたウェーハ11をカセット8a(図2参照)に収容し、カセット8aを載置台10aに配置する。そして、第1の搬送ユニット6によってウェーハ11をカセット8aからアライメント機構12に搬送し、ウェーハ11の位置合わせを行う。
次に、ウェーハ11をチャックテーブル22で保持する(保持工程)。図5は、チャックテーブル22によって保持されたウェーハ11を示す一部断面正面図である。保持工程では、アライメント機構12(図2参照)から搬送位置Aに配置されたチャックテーブル22にウェーハ11が搬送される。
ウェーハ11は、表面11a側(第1面側)、すなわち保護部材17側がチャックテーブル22の保持面22aに対向し、裏面11b側(第2面側)が上方に露出するように、チャックテーブル22上に配置される。この状態で保持面22aに吸引源の負圧を作用させると、ウェーハ11が保護部材17を介してチャックテーブル22によって吸引保持される。そして、ウェーハ11を保持したチャックテーブル22は、粗研削位置B(図2参照)に移動する。
次に、ウェーハ11が所定の厚さとなるまでウェーハ11の裏面11b側を研削する。ウェーハ11の研削は、研削ユニット38a,38bによって行われる。図6は、研削ユニット38aによって研削されるウェーハ11を示す斜視図である。
研削ユニット38aに装着される研削ホイール46aは、ステンレス等の金属材料で形成された環状のホイール基台48を備えている。ホイール基台48の下面側には、直方体状に形成された複数の研削砥石50がホイール基台48の外周に沿って固定されている。
例えば研削砥石50は、ダイヤモンド、CBN(Cubic Boron Nitride)等でなる砥粒を、メタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンド等の結合材で固定することにより形成される。ただし、研削砥石50の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。また、ホイール基台48には任意の数の研削砥石50を固定できる。
ウェーハ11を研削する際は、チャックテーブル22と研削ホイール46aとをそれぞれ回転させ、研削液(純水等)をウェーハ11の裏面11b側に向かって供給しながら研削ホイール46aを下降させ、複数の研削砥石50をウェーハ11の裏面11b側に接触させる。例えば、チャックテーブル22は矢印aで示す方向に所定の回転数(例えば300rpm)で回転させ、研削ホイール46aは矢印bで示す方向に所定の回転数(例えば6000rpm)で回転させる。また、研削ホイール46aの下降速度は、研削砥石50が適切な力でウェーハ11の裏面11b側に押し当てられるように調整される。
複数の研削砥石50がウェーハ11に接触すると、ウェーハ11の裏面11b側が研削される。この研削は、ウェーハ11が所望の厚さとなるまで継続される。ウェーハ11が所望の厚さまで薄化されると、ウェーハ11の粗研削が完了する。
粗研削が完了すると、チャックテーブル22は仕上げ研削位置C(図2参照)に移動する。そして、同様の手順で研削ユニット38bによってウェーハ11の裏面11b側を研削する。これにより、ウェーハ11の仕上げ研削が行われる。なお、研削ユニット38bが備える研削ホイール46bの構造及び機能は、図6に示す研削ホイール46aと同様である。ただし、研削ホイール46bが備える研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、研削ホイール46aが備える研削砥石50の平均粒径よりも小さい。
なお、上記ではウェーハ11が2組の研削ユニット38a,38bによって研削される例について説明したが、ウェーハ11の加工条件等によっては、ウェーハ11の研削が1組の研削ユニットによって実施されてもよい。この場合、加工装置2は1組の研削ユニットを備えていればよい。そして、ウェーハ11の研削が完了すると、チャックテーブル22は研磨位置D(図2参照)に移動する。
図7は、研削加工後のウェーハ11を示す斜視図である。ウェーハ11の裏面11b側を研削すると、ウェーハ11の裏面11bには研削砥石の軌道に沿って凹凸19が放射状に形成される。この凹凸19は、研削加工によって形成された研削痕(ソーマーク)である。
次に、ウェーハ11の裏面11b側を研磨して凹凸19を除去する(研磨工程)。図8は、研磨ユニット52によって研磨されるウェーハ11を示す一部断面正面図である。研磨工程では、研磨ユニット52に装着された研磨ホイール84の研磨パッド88を回転させながらウェーハ11の裏面11b側に押し当てることにより、ウェーハ11の裏面11b側を研磨する。なお、研磨パッド88の下面は、ウェーハ11を研磨する研磨面88aを構成する。
研磨パッド88は、例えばポリウレタン等を用いて形成され、砥粒(固定砥粒)を含有している。砥粒としては、例えば粒径が0.5μm以上10μm以下のシリカを用いることができる。ただし、砥粒の粒径や材質等はウェーハ11の材質等に応じて適宜変更できる。
また、研磨ユニット52の内部には、研磨ユニット52をZ軸方向に沿って貫く研磨液供給路90が形成されている。研磨液供給路90の一端側(上端側)は研磨液供給源(不図示)に接続され、研磨液供給路90の他端側(下端側)は研磨パッド88の研磨面88aの中心部で下方に向かって開口している。
チャックテーブル22によって吸引保持されたウェーハ11を研磨パッド88によって研磨する際には、研磨液供給路90を介してウェーハ11及び研磨パッド88に研磨液が供給される。研磨パッド88に砥粒が含有されている場合には、砥粒を含まない研磨液が用いられる。研磨液としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が溶解したアルカリ溶液や、過マンガン酸塩等の酸性液を用いることができる。また、研磨液として純水を用いることもできる。
ただし、研磨パッド88には砥粒が含有されていなくてもよい。この場合、研磨液供給路90から供給される研磨液として、砥粒(遊離砥粒)が分散された薬液(スラリー)が用いられる。薬液の材料、砥粒の材質、砥粒の粒径等は、ウェーハ11の材質等に応じて適宜選択される。
研磨工程では、チャックテーブル22と研磨ホイール84とをそれぞれ回転させ、研磨液を研磨液供給路90に供給しながら研磨ホイール84を下降させ、研磨パッド88をウェーハ11の裏面11b側に接触させる。例えば、チャックテーブル22は矢印cで示す方向に所定の回転数(例えば95rpm)で回転させ、研磨ホイール84は矢印dで示す方向に所定の回転数(例えば90rpm)で回転させる。また、研磨ホイール84の下降速度は、研磨パッド88が適切な力でウェーハ11の裏面11b側に押し当てられるように調整される。
研磨パッド88の研磨面88aがウェーハ11に接触すると、ウェーハ11の裏面11b側が研磨される。この研磨により、ウェーハ11の裏面11b側に形成された凹凸19(図7参照)が除去される。なお、ウェーハ11の研磨量(研磨前後のウェーハ11の厚さの差に相当)は、凹凸19が適切に除去されるように設定される。
上記のように研磨加工によって凹凸19を除去する場合、研磨パッド88でウェーハ11の裏面11b側を相当量除去する必要がある。その結果、研磨加工に長時間が費やされ、ウェーハ11の生産性が低下する恐れがある。
ここで、研磨加工による凹凸19の除去について本発明者が鋭意研究に努めた結果、研磨パッド88の硬度が高くなると、凹凸19の除去に必要なウェーハ11の研磨量が小さくなることが確認された。この現象は、研磨パッド88の凹凸19内部への入り込みやすさが、研磨パッド88の硬度に依存していることに起因すると推察される。
具体的には、研磨パッド88の硬度が低い場合、研磨パッド88がウェーハ11の裏面11b側の形状に沿って変形しやすい。そのため、研磨パッド88をウェーハ11の裏面11b側に押し当てた際、研磨パッド88が凹凸19の凹部の内部に入り込み、ウェーハ11の裏面11bとともに凹部の内部も研磨される現象が生じやすい。その結果、凹凸19の凸部と凹部の高低差がなくなりにくくなり、凹凸19の除去に必要なウェーハ11の研磨量が増加すると考えられる。
一方、研磨パッド88の硬度が高い場合、研磨パッド88をウェーハ11の裏面11b側に押し当てても研磨パッド88が変形しにくく、研磨パッド88が凹凸19の凹部の内部に入り込みにくい。そのため、凹部の内部が研磨される現象が生じにくく、凹凸19の除去に必要なウェーハ11の研磨量が増加しにくいと考えられる。
そこで、本実施形態では、従来よりも硬度の高い研磨パッド88を用いてウェーハ11を研磨することにより、凹凸19を除去する。具体的には、デュロメータ タイプDによって測定された硬度が30以上、好ましくは44以上である研磨パッド88を用いて、ウェーハ11の裏面11b側を研磨する。これにより、凹凸19の除去に必要なウェーハ11の研磨量が低減され、加工時間が短縮される。その結果、ウェーハ11の生産効率が向上する。
ただし、研磨パッド88の硬度が高すぎると、研磨加工によってウェーハ11の裏面11b側にスクラッチが形成されやすくなる。これは、研磨パッド88の硬度が大きくなると、研磨加工時に研磨パッド88とウェーハ11との間に存在する砥粒(固定砥粒又は遊離砥粒)がウェーハ11に押し付けられやすくなるためと推察される。
そのため、凹凸19の除去には、デュロメータ タイプDによって測定された硬度が65未満である研磨パッド88を用いることが好ましく、該硬度が50以下である研磨パッド88を用いることがより好ましい。これにより、研磨加工によるスクラッチの形成を抑制できる。
次に、研磨パッド88の硬度とウェーハ11の研磨量との関係を評価した結果について説明する。評価には、硬度が異なる4種類の研磨パット(研磨パッドA,B,C,D)を用いた。研磨パッドA,B,C,Dはそれぞれ、ポリウレタンを用いて形成した。
研磨パッドA,B,C,Dの硬度をデュロメータ タイプDによって測定したところ、硬度はそれぞれ23、30、44、50であった。なお、研磨パッドA(硬度23)は、研削痕の除去に従来使用されていた研磨パッド(従来品)に相当する。これらの研磨パッドA,B,C,Dをそれぞれ用いてウェーハを研磨した。
なお、ウェーハとしては、裏面側に凹凸(研削痕)が形成されたシリコンウェーハを用いた。この凹凸は、ダイヤモンドでなる砥粒(粒度♯2000)を含む研削砥石を用いてウェーハの裏面側に仕上げ研削を施すことによって形成されたものである。この凹凸が除去されるまでウェーハの裏面側を研磨パッドで研磨した後、ウェーハの研磨量(研磨前後のウェーハの厚さの差)を測定する作業を、研磨パッドA,B,C,Dそれぞれについて行った。
なお、ウェーハを研磨する際、チャックテーブルの回転数(ウェーハの回転数)は95rpm、研磨パッドの回転数は90rpmに設定した。また、研磨パッドの下降速度は、研磨パッドによってウェーハの裏面側に付与される圧力が250g/cm3以上300g/cm3以下となるように調整した。また、砥粒にはシリカを用いた。
図9は、研磨パッドの硬度とウェーハの研磨量との関係を示すグラフである。図9に示すように、研磨パッドB(硬度30)、研磨パッドC(硬度44)、又は研磨パッドD(硬度50)を用いると、研磨パッドA(従来品、硬度23)を用いた場合と比較して、凹凸の除去に必要なウェーハの研磨量が2/3以下に低減されることが確認された。そのため、凹凸の除去には、デュロメータ タイプDによって測定された硬度が30以上である研磨パッドを用いることが好ましい。
また、特に研磨パッドC(硬度44)又は研磨パッドD(硬度50)を用いると、研磨パッドA(従来品、硬度23)を用いた場合と比較して、凹凸の除去に必要なウェーハの研磨量が1/3以下にまで低減された。そのため、凹凸の除去には、デュロメータ タイプDによって測定された硬度が44以上である研磨パッドを用いることがより好ましい。
また、研磨パッドB,C,Dによって研磨されたウェーハの裏面側を観察したところ、凹凸が除去され、ウェーハの裏面が平坦化されていることが確認された。一方、デュロメータ タイプDで測定された硬度が65である研磨パッドを別途準備し、この研磨パッドを用いてウェーハの裏面側を研磨したところ、凹凸は除去されたものの、ウェーハの裏面側にスクラッチが形成されていることが確認された。そのため、凹凸の除去には、デュロメータ タイプDによって測定された硬度が65未満である研磨パッドを用いることが好ましく、該硬度が50以下である研磨パッドを用いることがより好ましい。
上記のように、研磨パッドの硬度を適切に選択することにより、ウェーハの裏面側に形成された凹凸の除去に必要な研磨量を低減することができる。これにより、凹凸を除去する工程に要する時間を削減でき、ウェーハ11の生産性の低下が抑制される。
なお、上記実施の形態では、研削加工によってウェーハ11に形成された凹凸(研削痕)を研磨加工によって除去する場合について説明した。ただし、本実施形態に係る研磨加工によって除去される凹凸の態様に制限はない。
例えば、図1に示すようにウェーハ11にデバイス15を形成する際には、まず、テスト用のウェーハ(テストウェーハ)の表面側に電極や配線等のを試験的に形成し、デバイス15を形成するためのプロセスの条件の選定を行うことがある。この場合、テストウェーハの表面側には、電極や配線等に起因する凹凸が形成される。
テストが完了した後、テストウェーハに形成されたパターンを除去することにより、テストウェーハを再生して再度テストに用いることが可能となる。そして、このテストウェーハの再生には、本実施形態に係る研磨加工を用いることができる。
具体的には、裏面側(第1面側)がチャックテーブル22(図8参照)の保持面22aに対向し、凹凸が形成された表面側(第2面側)が上方に露出するように、テストウェーハがチャックテーブル22によって保持される。そして、テストウェーハの表面側を研磨パッド88で研磨することにより、テストウェーハの表面側に形成された凹凸(電極や配線等)を除去することができる。
このように、テストウェーハの再生処理にも、本実施形態に係る研磨工程を用いることができる。この場合、デュロメータ タイプDによって測定された硬度が30以上65未満である研磨パッドでテストウェーハを研磨することにより、凹凸の除去に必要な研磨量が低減され、テストウェーハの再生処理に要する時間が削減される。
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。