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JP7396540B2 - 軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法および製造装置 - Google Patents

軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法および製造装置 Download PDF

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JP7396540B2 JP2023534419A JP2023534419A JP7396540B2 JP 7396540 B2 JP7396540 B2 JP 7396540B2 JP 2023534419 A JP2023534419 A JP 2023534419A JP 2023534419 A JP2023534419 A JP 2023534419A JP 7396540 B2 JP7396540 B2 JP 7396540B2
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Description

本発明は、樹脂接着剤で接着積層された軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法および製造装置に関する。
軟磁性急冷合金薄帯(例えば、非晶質合金薄帯やナノ結晶合金薄帯)は、磁気異方性を持たず、磁区の境界の動きが滑らかなため、高磁束密度でありながら高透磁率で、低損失の優れた磁気特性を有する。非晶質合金薄帯等の軟磁性合金薄帯を用いた製品の製造においては、複数の非晶質合金薄帯を接着することで積層体とし、加工性やハンドリング性を高める技術の開発が進んでいる。
特許文献1には、FeまたはCoを主成分とする非晶質合金薄帯に耐熱性樹脂(好ましくは、所定の化学式で表される芳香族ポリイミド樹脂)を付与した磁性基材、および、前記磁性基材を圧力範囲0.01~500MPaで積層接着し、温度300~500℃、10分から5時間で熱処理をして、磁気特性を向上させた積層体が開示されている。非晶質合金薄帯の組成や耐熱性樹脂の種類を様々に検討し、積層体の比透磁率およびコア損失、引張強度が所望の値に達したと示されている。
特許文献2にも、非晶質合金薄帯を積層・加熱して積層体を作る方法が開示されている。具体的には、非晶質合金薄帯に、接着剤(ポリエステルイミド系樹脂やフェノキシ樹脂)を塗布して乾燥炉に1分間入れて溶剤を揮散させ、圧下ロールで圧着し、加熱温度300~500度で、1分間程度から100分間程度磁場中焼鈍すると、優れた磁気特性が得られると開示されている。
特許第4537712号公報 特開昭58-175654号公報
複数の軟磁性急冷合金薄帯を接着して積層体とする場合、高い占積率を得るためには、接着層の薄膜化および膜厚制御が必要になる。一方で、有機溶剤を用いた希釈(低粘度化、濡れ性向上)をせずに、高粘度のまま接着剤を薄く塗布するのは難しいという課題があった。
そこで、本発明は、高粘度の接着剤である樹脂を薄く均一に軟磁性急冷合金薄帯に塗布し、高い占積率を有する積層体を得る上で好適な軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、厚み10~50μm、幅10~250mmである複数の軟磁性急冷合金薄帯が貼り合わされた軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法であって、
少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に、エポキシ樹脂である樹脂接着剤を有機溶剤で希釈しないで塗布する樹脂塗布工程と、前記樹脂塗布工程で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層工程と、前記積層工程で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理工程と、を有し、前記樹脂接着剤は0.1Pa・s以上の粘度であり、前記樹脂接着剤を塗布する方法がフレキソ印刷方式であることを特徴とする軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法である。
また、本発明においては、前記樹脂塗布工程と、前記積層工程と、前記熱処理工程とは、それぞれ前記軟磁性急冷合金薄帯を連続搬送しながら行うことが好ましい。
また、本発明においては、前記軟磁性急冷合金薄帯の端部に前記樹脂接着剤を塗布しない領域を形成することが好ましい。
また、本発明においては、前記フレキソ印刷方式において、版胴に複数の凸部を有する弾性部材を用いて前記樹脂接着剤をドットパターンに塗布し、前記積層工程において塗布された樹脂接着剤を濡れ広がらせて該樹脂接着剤を一体化することが好ましい。
また、前記樹脂塗布工程の前に、前記軟磁性急冷合金薄帯をコイル状の巻き体から巻き出す巻出し工程と、前記積層工程の後に、前記積層体をコイル状に巻き取って積層体の巻き体とする巻取り工程を有することが好ましい。
前記熱処理工程後の積層体を巻き体とし、該巻き体を加熱する追加の熱処理を行う追加熱処理工程を有することができる。
本発明の製造装置は、厚み10~50μm、幅10~250mmである複数の軟磁性急冷合金薄帯が貼り合わされた軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造装置であって、
少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に、エポキシ樹脂である樹脂接着剤を有機溶剤で希釈しないで塗布する樹脂塗布部と、
前記樹脂塗布部で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層部と、
前記積層部で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理部と、を有し、
前記樹脂接着剤は0.1Pa・s以上の粘度であり、
前記樹脂接着剤を塗布する装置がフレキソ印刷方式であることを特徴とする軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造装置である。
本発明によれば、高粘度の接着剤である樹脂を軟磁性急冷合金薄帯に塗布し、高い占積率を有する上で好適な軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法を提供できる。
フレキソ印刷装置の形態の一例である。 フレキソ印刷装置の形態の一例である。 フレキソ印刷装置の形態の一例である。 アニロックスロールのセル形状が八角形の場合の一例である。 樹脂接着剤を塗布した軟磁性急冷合金薄帯の断面模式図の例である。 樹脂接着剤を塗布した軟磁性急冷合金薄帯の断面模式図の例である。 ドットパターン形状の凸部を有する版胴の例である。 ストライプパターン形状の凸部を有する版胴の例である。 積層体の試験片を作製する場合の工程例である。 連続生産方式による積層体の製造工程の一例である。 軟磁性急冷合金薄帯が3枚のときの樹脂塗布工程の形態の一例である。 軟磁性急冷合金薄帯が3枚のときの樹脂塗布工程の形態の一例である。 軟磁性急冷合金薄帯が3枚のときの樹脂塗布工程の形態の一例である。 軟磁性急冷合金薄帯が3枚のときの樹脂塗布工程の形態の一例である。 180度剥離試験機の外観図の一例である。 薄帯および積層体の膜厚の測定個所を示す図の一例である。
以下、本発明に係る積層体の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。
[軟磁性急冷合金薄帯]
軟磁性急冷合金薄帯は、溶融合金をロールで急冷し、薄帯化されて製造される。一般的に、製造された後は所定の寸法幅にカットされてコイルに巻かれる。カット後の幅は、例えば10mm程度から1m程度である。
本発明に係る軟磁性急冷合金薄帯の材質は特に問わないが、例えば、日立金属製またはMetglas社製2605HB1M材などのFe系非晶質合金薄帯を用いることができる。「2605HB1M」は、日立金属株式会社の登録商標である。もしくは、軟磁性急冷合金薄帯に熱処理を加えるなどして、ナノ結晶が晶出したFe系ナノ結晶合金薄帯を用いることもできる。
以降、軟磁性急冷合金薄帯やナノ結晶合金薄帯を総じて、「薄帯」と称する。これらの薄帯の厚みは、特に制限されないが、例えば、10~50μm、好ましくは10~30μmである。
[樹脂接着剤]
加熱して薄帯同士を接着するために用いる樹脂の種類としては、例えば、ポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、ケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ニトリル系樹脂、チオエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アリレート系樹脂、サルホン系樹脂、イミド系樹脂、アミドイミド系樹脂などがある。
このうち、例えばポリイミド樹脂やポリイミドアミド樹脂は、有機溶剤で希釈して用いるのが一般的であるが、有機溶剤はその多くが人体や環境に有害で、引火性や可燃性があるものもある。取り扱いには、様々な対策が必要になるため、設備の大型化や管理の煩雑さ、高コスト化に繋がる。一方エポキシ樹脂は、非常に安価で入手しやすく、有機溶剤と混ぜることが必須ではないため、安全で量産使用に向いている。そのため、本発明においてはエポキシ樹脂が好ましい。

一般的に、エポキシ樹脂の特性は、熱重量分析(TG:Thermo Gravimetry)、示差熱分析(DTA:(Differential Thermal Analysis)、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)、熱機械的分析装置(TMA:Thermo-Mechanical Analysis)等で評価される。エポキシ樹脂は耐熱温度が高いほど粘度が高くなる傾向がある。本実施形態における高粘度とは、具体的には、0.1Pa・s以上を意味する。
エポキシ樹脂は、あらかじめ硬化剤を含んでいて加熱によって硬化する1液タイプと、使用時に硬化剤を調合して常温で硬化する2液タイプがある。特に限定しないが、段取りの手間が少ない観点から、1液タイプを使用する方が望ましい。1液タイプのエポキシ樹脂は、例えば、ソマール製のE-530が使用できる。この樹脂の粘度は2Pa・s(25℃)、ガラス転移点TgはTMAで179度(カタログ値)である。以下に述べるガラス転移点Tgは、熱機械的分析装置TMAで測定した場合のTgの意味である。
ここで占積率について説明する。占積率とは、積層体の見かけ寸法に対して、母材がどの程度占めているかを示す割合であり、薄帯を用いた積層体の場合は
占積率(%)=((薄帯の厚さ×積層枚数)/積層後の積層厚さ)×100%
で表される。
例えば、厚さ25μmの薄帯を樹脂接着剤を介して2枚貼り合わせた後の厚さが52μmのとき、占積率は25×2/52=96.2%となる。実際の薄帯は厚みにばらつきがあるため、複数個所を測定し、その平均値を厚み平均として計算に用いると良い。
積層体の優れた磁気特性を実現するには、塗布する樹脂接着剤の量を極限まで減らし、高い占積率にすることが好ましい。高い占積率とは、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。一方で、樹脂接着剤の厚さが薄すぎると接着力が不足する懸念があるため、占積率は98%以下が好ましい。
樹脂接着剤を塗布して薄帯を貼り合わせて熱処理したときの樹脂の厚さは、占積率90%以上を得るために、5.5μm以下が好ましく、占積率95~98%を得るために、1.0~2.5μmがより好ましい。仮に、樹脂接着剤を塗布して薄帯を貼り合わせずに熱処理をした場合、樹脂の膜厚は、貼り合わせ時の押し付け圧力がかからない分、厚くなる傾向にある。このときの膜厚は、例えば、2~7μm程度が好ましく、さらに占積率を高めるためには2~4μmが好ましい。これらの膜厚を得るために、樹脂接着剤の塗布時の粘度は30Pa・s以下であることが好ましく、さらには8Pa・s以下であることが好ましい。
樹脂接着剤の粘度が上記の上限値を超えると、膜厚が安定しない場合がある。これは、後述するフレキソ印刷方式において、アニロックスロールのセルの端部まで、樹脂接着剤が入りにくかったり、ドクターブレードに触れた樹脂接着剤がブレードから離れ難かったりするためと推測される。このような場合は、樹脂接着剤をあらかじめ温めておく(例えば40℃にする)と、流動性が高まるため好ましい。
本発明の積層体の製造方法の実施形態について、工程順に説明する。
<樹脂塗布工程>
まず、少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の、少なくとも一方の面に樹脂接着剤を塗布する。エポキシ樹脂のような高粘度な樹脂接着剤を、平坦ではない薄帯に薄く均一に塗布し、高い占積率の積層体を得るために、本発明ではフレキソ印刷方式を用いる。
フレキソ印刷とは、アニロックスロールのセルに一定量の樹脂接着剤を充填させた後、前記充填された樹脂接着剤を版胴または版に転写し、前記版胴または版に転写された前記樹脂接着剤を軟磁性急冷合金薄帯へ転写する印刷方法である。
[フレキソ印刷方式]
図1a~図1cは、フレキソ印刷装置の形態の例である。図1aと図1bを用いて、フレキソ印刷方式の基本的な塗布方法について述べる。
フレキソ印刷方式は、主に、外周面に微細な無数の凹部(下記、セル)が施されているアニロックスロール13と、ドクターブレード(薄い刃)14と、版胴15から構成されている。すなわち、薄帯11が紙面左から右へ(矢印12の方向へ)進行すると同時に、アニロックスロール13と版胴15が自転する。この間、アニロックスロール13の表面に付着した樹脂接着剤16のうち、セルに入りきらなかった余分な液剤が、ドクターブレード14によって掻き取られ、その後、セルに残った樹脂接着剤16が版胴15の外周面に転写され、それを薄帯11に転移させて印刷する。この方法により、幅方向にも進行方向にも均一な塗膜厚さの印刷が可能となる。
フレキソ印刷装置は、例えば図1aに示すように、ドクターブレード14とアニロックスロール13で形成される空間に樹脂接着剤16を溜めておき(液溜め)、この液溜めから下方(ドクターブレード14の先端)に向かって、アニロックスロール13が回転することで、下にある版胴15に樹脂接着剤を移す形態でも良いし、図1bに示すように、下にある容器中の樹脂接着剤16の液面に接するように、アニロックスロール13を配置し、アニロックスロール13の自転と共に、付着した樹脂接着剤16が持ち上げられ、版胴15に移す形態でも良い。このとき、例えば、樹脂接着剤16を入れた容器の底面にヒーター18を配置することで、樹脂接着剤16を加温しても良い。
図1aと図1bに示す形態は、フレキソ印刷装置の位置を固定して、被刷体である薄帯11を搬送させて塗布することができる。この場合、薄帯11が版胴15と接していない側に支持ローラ17を備え、支持ローラ17と版胴15で薄帯11を押し合うように挟み込むことで、安定した搬送がしやすくなる。この形態は、薄帯をロールtoロールで連続搬送する際に有効である。
一方で、土台の上に置かれた薄帯11にフレキソ印刷装置を移動させて塗布することも可能である。この形態は、所定の長さに切断された薄帯に印刷する場合に有効である。
すなわち、図1aと図1bに示すフレキソ印刷の形態においては、薄帯は長さ方向にエンドレスでも良いし、所定の長さに切断されたものを用いても良い。
図1cに示す形態は、所定の長さに切断された薄帯にフレキソ印刷をする場合に有効である。図1cは3つの工程からなる。すなわち、アニロックスロール13からダミーシート19へ塗布して、樹脂接着剤の塗膜20を得る工程と、樹脂接着剤の塗膜20に版板21を押し当てて、樹脂接着剤を版板21に移す工程と、版板21の液剤が付いた面を薄帯11に押し当てて、印刷する工程である。この形態の場合は、ダミーシート19を介する点や、版板20がロール形状ではないことが、図1a、図1bと異なるが、塗布原理は同じであるため、これもフレキソ印刷方式の一形態である。
アニロックスロールのセルの形状は、一般的に、四角錐型(別名ピラミッド型。表面は正方形で、深さ方向はV字型)、格子型(表面は正方形で、深さ方向はピラミッドの頂点をカットした台形)、亀甲型(表面はハニカム型で、深さ方向は台形型)、円形(深さ方向は半球型)などがある。これらの各セルは隔壁によって仕切られており、樹脂接着剤を少量ずつ格納することができる。セルの形状は、他にも、斜線型(深さ方向はV字溝)のように、各セルが仕切られていないものもある。本実施形態において、いずれのセル形状も使用できる。
さらにセルは、隔壁によって部分的に仕切られた形状でも良い。図2に、アニロックスロールのセル形状が八角形の場合の一例を示す。この図では、セルを形成する隔壁26(図中、白色)が八角形の外形の一部を形成し、隣接する隔壁と繋がって、全体として一方向(図中、上下方向)に波形を形成している。そして、八角形の溝27(図中、黒色)は奥行き方向に凹んでおり、八角形の連結部分28(図中、網掛け)は浅い溝になっている。つまり、隣接する八角形のセルは、完全に仕切られていない。このような形状のセルを使用しても良い。
あくまでも一例ではあるが、図2の形状のセルの場合、溝の深さは5μm~300μm、セルを形成するワイヤの本数は10~500Line/cm、容積は1~100cm/mから選定できる。参考までに、図2にワイヤの本数が10Line/cmのときの基準長さ(1cm)を併記する。アニロックスロールの材質は、特に限定しないが、長期劣化を防ぐため、金属製やセラミックス製が好ましい。
版胴の材質は、例えばゴムなどの弾性部材を使用すると、薄帯の表面が平坦でない場合も倣うことができるため好ましい。ゴムの種類は、例えば、耐水性や耐摩耗性が高いエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が好ましい。
実際の薄帯は平坦ではなく、目視で確認できない程の小さい凹凸(うねり)があったり、薄帯の幅方向の両側が波打っていたりする。そのため、樹脂接着剤を塗布する際は、薄帯の幅方向の端から端まで等しく荷重がかかるように、版胴を押し当てて塗布し、薄帯の中央と両端で塗布量にばらつきが生じないようにすることが好ましい。
<積層工程>
樹脂塗布工程で樹脂接着剤が塗布された軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる。
薄帯同士を貼り合わせる際に、加圧装置を用いても良い。加圧装置とは、例えば、1対のローラを備えたものである。薄帯をそのローラ間に通すと、薄帯の主面に垂直な方向(貼り合わせ方向)から押し当て荷重がかかり、薄帯同士の貼り合わせを強固にできる。
ローラの押し当て力は、薄帯の幅方向に一様にし、接着強度に面内分布ができないようにすることが好ましい。そのため1対のローラの軸は、精密に平行に固定し、ローラの長手方向の直径が一様であることが望ましい。押し当て力は、例えば、エアーシリンダーや油圧シリンダー、ばね等で与えることができる。押し当て力の大きさは、特に限定しないが、例えば、幅60mmや70mmの薄帯を2枚積層する場合に10kgf以上50kgf以下が好ましい。
少なくとも2枚以上の薄帯が重ね合わされてローラ間に侵入するとき、薄帯が幅方向に横ずれすることがある。これを防ぐため、ローラの搬送方向手前に薄帯端部を整列させるためのガイドとなる治具や、薄帯の端部の位置をセンシングして、端部の位置が一定になるように位置補正する機構を備えても良い。
ここで、樹脂塗布工程で塗布された樹脂接着剤の積層工程後の膜厚について、図3a、図3bを用いて説明する。図3a、図3bは、樹脂接着剤を塗布した軟磁性急冷合金薄帯の断面模式図の例である。
樹脂接着剤の塗布形態は、薄帯に対して隙間なく全面一様に塗布しても良いし、パターンで塗布しても良い。ただし、図3aの拡大図に示すように、薄帯31aの表面は平坦ではなく凹凸(うねり)がある。樹脂塗布工程にて、薄帯31aの表面全体に樹脂接着剤32を塗布したあと、積層工程にて、別の薄帯31bを重ねると、樹脂接着剤32の厚みは厚く、ばらつきやすい。また、薄帯同士が近接している領域(例えば領域33)では、多過ぎる樹脂接着剤が薄帯の外周に向かって押し出され、薄帯の端部34からはみ出しやすい。
はみ出た樹脂接着剤は、加圧装置の表面や薄帯の裏側に付着し、ローラの表面を凸凹にしたり、後続する薄帯に余分な樹脂接着剤を付けたりする原因になるため、はみ出さないようにした方が良い。そのためには、薄帯の端部ギリギリまで塗布するのではなく、少し内側まで塗布するという方法が考えられるが、別の薄帯を貼り合わせた時に、端部まで濡れ広がる領域と濡れ広がらない領域のムラができやすく、調整が難しい。
一方、図3bに示すように、樹脂塗布工程にて、薄帯31aの表面の一部に樹脂接着剤32を塗布した場合、積層工程にて重ねた別の薄帯31bとの間に形成される隙間35に樹脂接着剤32が塗れ広がるため、薄く均一化しやすい。さらに、薄帯の端部34を任意幅の塗布しない領域にすると、薄帯の内側から押し出された樹脂接着剤が塗れ広がるだけに留まり、薄帯の端部34からのはみ出しが抑えられる。
すなわち、版胴の外周面は任意のパターン形状の凸部を有していることが好ましい。これにより、アニロックスロールから版胴の凸部に転移した樹脂接着剤のみが薄帯に移り、薄い接着層を得ることができる。
図4a、図4bに、所定のパターン形状の凸部を有する版胴の例を示す。パターンは、版胴15の円筒面全周に形成されているが、その一部を拡大して示している。所定のパターン形状とは、例えば、図4aに示すようなドット型や、図4bに示すようなストライプ型等である。
ドット型は、直径φの円形が、ピッチpの間隔で、所定の方向と、前記所定の方向から角度θだけ向きを変えた方向に配列されている。このときの各ドットは、厚さtだけ凸になっている。変形例としては、例えば、この図でドットの配列の角度θが60°に見えるところを、別の角度にしても良いし、ピッチp(例えば、版胴の長手方向のピッチpや、版胴の長手方向から角度θだけ向きを変えた方向のピッチp等)を異なる距離にしても良いし、直径φやピッチp、角度θを一定にしなくても良い。
ストライプ型は、版胴の幅方向に幅wで厚さtの凸形状が、ピッチpの間隔で配列されている。変形例として、ストライプは版胴の回転方向に形成されていても良く、斜めに形成されても良い。また、幅方向と回転方向を組み合わせた格子状に形成されても良い。
版胴は、所定のパターン形状がローラ表面に施されていても良いし、所定のパターン形状を施したスリーブをローラの母材に装着しても良いし、所定のパターン形状を施したゴム板をローラの母材に巻き付けても良い。
<熱処理工程>
積層工程で重ねた軟磁性急冷合金薄帯に熱処理を加えて積層体を得る。
樹脂接着剤は、低分子の化合物に硬化剤を加えて加熱することで、硬化反応が起きて、不溶・不融性の高分子の化合物となり、隣接する薄帯同士を強固に接合する。
[加熱方法]
薄帯を効率良く昇温させる方法は、例えば、加熱した金属部材やホットプレート等に薄帯を直接、接触させる方法が考えられる。しかし薄帯が連続搬送されているときは、薄帯の表面を何かしらの物体が擦っていると、薄帯が破断してしまう可能性があるため、ローラに挟んで搬送することが好ましい。ローラ搬送の場合は薄帯と線接触となり、ある時間範囲を持って温めることが困難である。そのため、例えばハロゲンヒーターや石英ガラス管ヒーター等を使い、薄帯周辺の雰囲気を昇温させ、その熱により積層体を加熱する方法でも良い。加熱温度と時間樹脂接着剤の種類等に応じて設定することができる。
具体的な加熱温度と保持時間としては、(a)ガラス転移点をTgとしたとき、Tg-10(℃)以上、Tg+5(℃)以下の温度範囲では、60秒以上、180秒以下とでき、(b)ガラス転移点をTgとしたとき、Tg+5(℃)以上、Tg+20(℃)以下の温度範囲では、40秒以上180秒以下とでき、(c)ガラス転移点をTgとしたとき、Tg+20(℃)以上、Tg+40(℃)以下の温度範囲では、25秒以上180秒以下とでき、(d)ガラス転移点をTgとしたとき、Tg-50(℃)以上、Tg+20(℃)以下の温度範囲では、25秒以上180秒以下とでき、(e)ガラス転移点(Tg)よりも40℃(Tg+40℃)以上高いときにはガラス転移点をTgとしたとき、Tg+40(℃)以上では、15秒以上180秒以下とできる。加熱温度が高くなると、極めて短時間の制御が必要になり、時間制御が煩雑になるため、ガラス転移点(Tg)が60℃(Tg+60℃)を超えないことが好ましく、50℃(Tg+50℃)以下がより好ましい。
なお、ここでいう保持には、一定の加熱温度を維持する場合だけでなく、対象とする温度領域において、連続的または段階的に温度が変化する場合も含む。
このような加熱・保持条件にて、軟磁性急冷合金薄帯の積層体を加熱・保持することで、接着面に生じやすい気泡痕を低減した積層体を製造することができる。これは、樹脂接着剤を加熱する際に発生する余分なガスが予め揮発するためである。
以上、樹脂塗布工程、積層工程、熱処理工程について述べてきたが、これらの工程は例えば試験片を作るために、薄帯を任意の長さに切り出し、小量、行う事も可能であるし、連続生産方式にて大量に処理することもできる。
試験片を作る場合は、例えば、図5に示すように、樹脂塗布工程42、積層工程43、熱処理工程44の順に行う。すなわち、上述したフレキソ印刷装置の図1cの形態によって薄帯11に樹脂接着剤16を塗布し、得られた薄帯(樹脂接着剤が塗布された薄帯22)に、樹脂接着剤が塗布されていない薄帯23(以下、単に薄帯22、23と呼ぶ)を重ねて、その後、薄帯22、23の主面に垂直な方向(貼り合わせ方向)から押圧ローラ24にて荷重をかけて貼り合わせ、貼り合わされた薄帯22、23を加熱した金属部材25の上に置いて熱処理することで、積層体を得ることができる。薄帯の枚数は何枚でも良く、2枚以上の場合は一連の工程を繰り返せば良い。
一方、図6は、連続生産方式による積層体の製造工程の一例を示す。薄帯50は紙面左から右へ、巻出し工程41、樹脂塗布工程42、積層工程43、熱処理工程44、巻取り工程45の順に進んでいく。巻取り工程45の後は、追加熱処理工程46を追加しても良い。
すなわち、図6に示す製造方法は、軟磁性急冷合金薄帯をコイル状の巻き体から巻き出す巻出し工程と、前記巻出し工程から巻き出された少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に樹脂接着剤を塗布する樹脂塗布工程と、前記樹脂塗布工程で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層工程と、前記積層工程で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理工程と、前記積層体をコイル状に巻き取って積層体の巻き体とする巻取り工程とを有している軟磁性合金薄帯の積層体の製造方法である。
さらに言えば、図6に示す製造方法は、軟磁性急冷合金薄帯をコイル状の巻き体から巻き出す巻出し工程と、前記巻出し工程から巻き出された少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に連続搬送しながら樹脂接着剤を塗布する樹脂塗布工程と、前記樹脂塗布工程で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に連続搬送しながら他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層工程と、前記積層工程で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を連続搬送しながら加熱して接着させて積層体を得る熱処理工程と、前記積層体に切断や打ち抜き等の機械加工を加えることなくコイル状に巻き取って積層体の巻き体とする巻取り工程とを有している軟磁性合金薄帯の積層体の製造方法である。
図6は、連続生産方式による積層体の製造装置の一例でもある。図を製造装置として見る場合、巻出し工程は巻出し部、樹脂塗布工程は樹脂塗布部、積層工程は積層部、熱処理工程は熱処理部、追加熱処理工程は追加熱処理部、巻取り工程は巻取り部、と言い換えることができる。
すなわち、図6に示す製造装置は、少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に樹脂接着剤を塗布する樹脂塗布部と、前記樹脂塗布部で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層部と、前記積層部で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理部とを備えている。
さらに、樹脂塗布部の前に巻出し部を備え、熱処理部の後に巻取り部を備え、ロールtoロールによる連続搬送を可能としている。
すなわち、図6に示す製造装置は、軟磁性急冷合金薄帯をコイル状の巻き体から巻き出す巻出し部と、少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に樹脂接着剤を塗布する樹脂塗布部と、前記樹脂塗布部で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層部と、前記積層部で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理部と、前記積層体をコイル状に巻き取って積層体の巻き体とする巻取り部とを備えている軟磁性合金薄帯の積層体の製造装置である。
薄帯50のサイズは特に限定しないが、厚み10~50μm程度、幅10~250mm程度を想定している。薄帯50の枚数は2枚でも3枚でもよく、それ以上でも良い。装置構成は、薄帯50の枚数が増えるときは、巻出しリール51と印刷装置52を追加すれば良い。ただし、積層体55の厚みが増すと適切に曲げることが難しくなり、巻取りリール56で巻き取れなくなる恐れがあるため、積層体55の厚みは、例えば600μm以下が望ましい。
薄帯が3枚のときを例に、さらに詳細に説明する。まず巻出し工程41にて、巻出しリール51(51a、51b、51c)から薄帯50(50a、50b、50c)をそれぞれ巻き出す。次に樹脂塗布工程42で、フレキソ印刷装置52にて薄帯に接着剤である樹脂を塗布する。その後、積層工程43にて、薄帯50aと50bと50cとを重ねて、薄帯主面に垂直な方向(貼り合わせ方向、搬送方向に対して垂直な上下方向)から、加圧装置53を押し当てることで貼り合わせる。さらに、その貼り合わせた薄帯を、熱処理工程44にて、直接的または間接的に(例えばヒーター54を用いて)所定の温度に昇温させ、その温度をキープし、積層体55を得る。最後に巻取り工程45において、積層体55をコイル状に巻き取る。
薄帯が3枚の場合、塗布する面の組み合わせは図7a~図7dに示すように4通り考えられる。すなわち図7aのように、薄帯50a、50bの下面に塗布するか、図7bのように薄帯50b、50cの上面に塗布するか、図7cのように薄帯50aの下面と薄帯50cの上面に塗布するか、図7dのように薄帯50bの両面に塗布するかである。図7a~図7d中の矢印は、樹脂接着剤が塗布される面を示す。
樹脂塗布工程の印刷装置は、上述のように薄帯の下面を塗布する場合と、上面を塗布する場合と、両面を塗布する場合があるから、必要性を考慮して、下面塗布用の印刷装置521、上面塗布用の印刷装置522、両面塗布用の印刷装置523を設計すると良い。
<追加熱処理工程>
上述の熱処理工程後に得られる軟磁性合金薄帯の積層体は、一定の剥離強度(接着面に対して90度または180度で引き剥がす力に対向する強度)とせん断力(接着面に対して平行な力に対する強度)を備えるが、更に、別の加熱炉で追加熱処理を行うことにより、接着剤の硬化進行が促進され、加熱不足の補助効果や接着強度の増強が期待できる。また、ロールtoロールの加熱工程を短縮して、巻取後の追加加熱で時間をかけて完全硬化させることにより、加熱設備の簡易化、低コスト化、プロセスの高速化が期待できる。加熱条件は40℃~240℃で1時間以上が好ましい。
<評価方法>
(剥離強度測定方法)
積層体の剥離強度は、180度剥離強度試験法(JISZ0237:2009)の原理を参照して作製した剥離強度試験機により測定する。図8に、180度剥離試験機の外観図の一例を示す。この図において、積層体60は、薄帯61aと薄帯61bからなる。
測定方法は、薄帯61aの樹脂接着剤が塗布されていない面を、金属ベース62に両面テープ63で固定し、積層体61bの一端をめくってクリップ64で掴む。そのクリップ64を、リニアガイド65の上に固定されたフォースゲージ66の先端フックに引っ掛ける。そして、フォースゲージ66をスライドさせる際の荷重を測定し、これを積層体61の剥離強度とする。
(実施例1)
以下に、本発明の実施例について述べる。実施例1の実験方法は、フレキソ印刷方式の印刷装置(RK Print Coat Instruments Ltd.製、フレキソプルーフ100)を使用して、軟磁性急冷合金薄帯に接着剤となる樹脂を常温で塗布した。
薄帯は、厚さ25μm、幅60mm、長さ200mmのFe系非晶質合金薄帯2605HB1M材を使用した。樹脂接着剤は、粘度が160、2,000、21,000mPa・sの3種類のエポキシ樹脂を常温で使用した。
アニロックスロールのセルは、図2で示した八角形型で、55 線/cm(セル容積18cm/m)と、200 線/cm(セル容積5cm/m)とした。版胴の外周面は、凸部が1つも無いもの(隙間なく全面一様に塗布されるもの)を用いた。印刷装置の塗布速度は20、40、60m/minとした。薄帯に樹脂接着剤を塗布した後は、薄帯を重ねずに加熱して、樹脂を硬化させて、膜厚を測定した。表1に各樹脂のメーカと型式、加熱条件を示す。
Figure 0007396540000001
(実験結果)
測定した膜厚を表2に示す。粘度160、2,000mPa・sにおいて、樹脂接着剤の粘度や搬送速度が変わっても膜厚に差は見られなかった。アニロックスロールのセル容積が小さくなると、膜厚も小さくなることが分かった。いずれの条件においても、膜厚4μm以下を得ることができた。粘度21,000mPa・sのときは、他の粘度に比べて膜厚が厚くなった。樹脂の粘度が高い影響か、加熱時間が短い影響かは、追加調査が必要であるが、いずれの条件においても、膜厚7μm以下を得ることができた。

以上
(実施例2)
実験装置は、発明者が自作した連続積層装置を使用した。具体的には、図6に示すような、巻出し工程、樹脂塗布工程、積層工程、熱処理工程、巻取り工程を連続で行える装置を製造し、巻出しリールに2つの薄帯コイルをセットし、1つの薄帯の片面にフレキソ印刷にて樹脂接着剤を塗布して、加圧装置で貼り合わせて熱処理し、積層体を巻取りリールで巻き取った。
薄帯は、厚さ約25μmで、幅60mmと70mm、日立金属製のFe系非晶質合金薄帯2605HB1M材を使用した。樹脂接着剤は、常温のエポキシ樹脂(ソマール製、E-530)を使用した。
アニロックスロールのセルは、図2で示した八角形型で、140線/cm(セル容積20.2cm/m)とした。版胴は、外周面に凸部が一つも無く全面塗布できるもの(材質、ウレタン)と、ドットパターン(材質、EPDM)の2種類を使用した。ドットパターンは、φ0.5mm、厚さt=0.5mm、ピッチp=1.0mm、パターンの配列の角度θ=60°とした。ここから算出される版胴が薄帯に接触する面積(以下、塗布面積)は、薄帯全体の約22%である。
薄帯を貼り合わせるときは、2つのローラで挟んでバネの力で加圧した。薄帯の搬送速度は、3m/minにした。
熱処理は温度200℃で、昇温時間も含む加熱時間は100秒とした。膜厚と占積率、剥離強度は、巻取後の積層体から測定サンプルを切り出して測定した。
また、積層体から一部切り出し、ホットプレートに載せて、180℃で24時間、追加熱処理を行い、再度剥離強度を測定した。
(実験結果)
積層体は長さ150mmに切断して、デジタル測長機(ニコン製、MH-15M)で厚さを測定した。図9に薄帯の幅60mmのときの測定個所を示す。測定個所70は、幅方向の端から5mmの位置から、幅方向に10mmピッチ(合計6点)と、長手方向の端部から20mmの位置から、55mmピッチ(合計3点)で、幅方向6点×長手方向3点=18点とした。幅70mmのときは、同様のピッチで、幅方向7点×長手方向3点=21点とした。
手順としては、積層前の薄帯1枚について上記の測定個所で厚さを測定し、平均値t1を求め、その値を2倍して、積層後の厚みの平均値t2との差を取ることにより、樹脂接着剤wの厚みの平均値を求めた(w=t2-t1×2)。
この厚さの平均値を上述した占積率の計算式に代入し、占積率を求めた。
剥離強度は、180度剥離試験機を自作して、図8に示すようにセットして測定し、荷重が最大となるところを剥離強度の代表値とした。
測定結果を表3に示す。樹脂接着剤の膜厚は薄く、いずれも占積率は95%以上と高い値になった。膜厚平均値は、全面塗布の場合1.35μm、ドットパターンの場合0.32μmで、その比率は23.7%(=0.32/1.35)だった。膜厚は、おおよそ塗布面積に比例している。ドットパターンにすることで、平均膜厚が想定以上に薄くなったが、ドットパターンの仕様を変更(ドットを大きくしたり、ピッチを狭くしたり)することで、所望の膜厚に調整可能と考える。
巻取後の剥離強度は、全面塗布の場合7.21gf/mmと高い値を示した。ドットパターンの場合は剥離強度が低下し1.07gf/mmとなったものの、実用上問題ない水準である1.0gf/mm以上が得られた。なお、ドットパターンの仕様を変更することで、剥離強度はさらに調整可能と考えられる。
全面塗布において、巻取後の剥離強度より、追加加熱後の剥離強度が低下した。これは、樹脂接着剤の硬化が進んだためと考えられる。このような硬化した状態においても、1.0gf/mm以上が得られることを確認した。
Figure 0007396540000002
以上より、本発明によれば、軟磁性急冷合金薄帯にフレキソ印刷にて樹脂接着剤を塗布し、貼り合わせて熱処理することで、高い占積率を有する積層体を生産する方法を提供することができる。
11:薄帯
12:進行方向
13:アニロックスロール
14:ドクターブレード
15:版胴
16:樹脂接着剤
17:支持ローラ
18:ヒーター
19:ダミーシート
20:樹脂接着剤の塗膜
21:版板
22:樹脂接着剤が塗布された薄帯
23:樹脂接着剤が塗布されていない薄帯
24:押圧ローラ
25:加熱した金属部材
26:セルの隔壁
27:セルの溝
28:セルの溝の連結部分
31:薄帯
32:樹脂接着剤(接着層)
33:薄帯同士が近接している領域
34:薄帯の端部
35:2枚の薄帯間に形成される隙間
36:ゴムシート
37:金属ローラ
41:巻出し工程
42:樹脂塗布工程
43:積層工程
44:熱処理工程
45:巻取り工程
46:追加熱処理工程
50:軟磁性急冷合金薄帯
51:巻出しリール
52:印刷装置
521:下面塗布用の印刷装置
522:上面塗布用の印刷装置
523:両面塗布用の印刷装置
53:加圧装置
54:ヒーター
55:積層体
56:巻取りリール
60:積層体
61:薄帯
62:金属ベース
63:両面テープ
64:クリップ
65:リニアガイド
66:フォースゲージ
70:厚さの測定個所
p:パターンのピッチ
t:パターンの厚さ
w:ストライプパターンの幅
φ:ドットパターンの直径
θ:ドットパターンの配列の角度

Claims (7)

  1. 厚み10~50μm、幅10~250mmである複数の軟磁性急冷合金薄帯が貼り合わされた軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法であって、
    少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に、エポキシ樹脂である樹脂接着剤を有機溶剤で希釈しないで塗布する樹脂塗布工程と、
    前記樹脂塗布工程で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層工程と、
    前記積層工程で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理工程と、を有し、
    前記樹脂接着剤は0.1Pa・s以上の粘度であり、
    前記樹脂接着剤を塗布する方法がフレキソ印刷方式であることを特徴とする軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法。
  2. 前記樹脂塗布工程と、前記積層工程と、前記熱処理工程とは、それぞれ前記軟磁性急冷合金薄帯を連続搬送しながら行うことを特徴とする請求項1に記載の軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法。
  3. 前記軟磁性急冷合金薄帯の端部に前記樹脂接着剤を塗布しない領域を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法。
  4. 前記フレキソ印刷方式において、版胴に複数の凸部を有する弾性部材を用いて前記樹脂接着剤をドットパターンに塗布し、前記積層工程において塗布された樹脂接着剤を濡れ広がらせて該樹脂接着剤を一体化することを特徴とする請求項3に記載の軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法。
  5. 前記樹脂塗布工程の前に、前記軟磁性急冷合金薄帯をコイル状の巻き体から巻き出す巻出し工程と、前記熱処理工程の後に、前記積層体をコイル状に巻き取って積層体の巻き体とする巻取り工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法。
  6. 前記熱処理工程後の積層体を巻き体とし、該巻き体を加熱する追加の熱処理を行う追加熱処理工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造方法。
  7. 厚み10~50μm、幅10~250mmである複数の軟磁性急冷合金薄帯が貼り合わされた軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造装置であって、
    少なくとも1つの軟磁性急冷合金薄帯の少なくとも一方の面に、エポキシ樹脂である樹脂接着剤を有機溶剤で希釈しないで塗布する樹脂塗布部と、
    前記樹脂塗布部で前記樹脂接着剤が塗布された前記軟磁性急冷合金薄帯の面に他の軟磁性急冷合金薄帯を重ねる積層部と、
    前記積層部で重ねた前記軟磁性急冷合金薄帯を加熱して接着させて積層体を得る熱処理部と、を有し、
    前記樹脂接着剤は0.1Pa・s以上の粘度であり、
    前記樹脂接着剤を塗布する装置がフレキソ印刷方式であることを特徴とする軟磁性急冷合金薄帯の積層体の製造装置。
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