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JP7381854B2 - 乗物用シート - Google Patents

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Description

本発明は、乗物用シートに係り、特に、スライドレールによりシートをスライドさせることが可能な乗物用シートに関する。
車両には、車室の後部に荷室エリアを有する車種、例えばワンボックスカー等がある。このような車両では、荷室エリアの直前の車体フロアにおいて、荷室を広げるためにリアシートがスライドレールを介して前進又は後進自在にスライド可能に取り付けられている。
スライドレールは、車体フロアに固定したロアレールに、リアシートを固定したアッパーレールをスライド移動可能に組み合わせたものであり、リアシートの前進及び後進できる距離はロアレールの長さにより決定されている。
また、このようなリアシートは、アッパーレールに設けられたシートクッションと、シートクッションに対して起立姿勢と前傾姿勢とに変位可能なシートバックとからなる。
シートバックを起立姿勢にすることにより着座可能なシート(以下、シート本体と呼ぶ場合がある)が、前後方向にスライド可能な範囲のことを、着座エリアと呼ぶ。着座エリアは荷室エリアの直前に位置しており、荷室エリアに積載する荷物が大きい場合は、荷室エリアを広げて使用するよう構成されている。具体的には、荷室エリアを広げるようにスライドレールのロアレールを通常の着座エリアよりも前方に延長した状態で設け、ロアレールに沿ってリアシートを前方の拡大エリアまで移動可能にする。
ロアレールを延長した場合、シートバックを起立させたままでシートを着座エリアから拡大エリアへ移動させても、乗員はシートに着座することが可能である。しかしながら、車両にはシートに着座している乗員を拘束するためにシートベルト装置が設けられていて、通常、シートベルト装置は着座エリアに位置しているシートに対して、乗員を効果的に拘束する。シートベルトの安全性を確保するために、着座した状態で固定できる領域が法規によって制限される場合があり、そのため、従来は着座エリアのみシートをロック機構により位置規制可能にしている。
特許文献1には、シートを着座エリアから拡大エリアへ移動させることができ、シートバックを前倒させた場合には、シートクッションを通常の着座エリアよりも前方の拡大エリアにスライドさせることが可能な車両用シート装置が開示されている。特許文献1の車両用シートでは、シートクッションが拡大エリアに位置している場合に、シートバックを前傾姿勢(格納状態)に保持するためのバック姿勢保持装置を備える。
特開2016-78676号公報
特許文献1に記載の車両用シートでは、シートクッションが拡大エリアに位置する場合シートバックが前傾姿勢に保持されている。しかしながら、拡大エリアに位置するシートクッションが移動可能であるため、シートクッションが移動してシートクッションとその前方にあるフロントシートとの間に隙間ができ、荷室にある荷物がその隙間に落下する場合があった。例えば自転車等を載せた場合、シート間の隙間に自転車の前輪が落ち、自転車の取り出しに手間取る場合があった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シート本体を位置規制する所定の範囲外においても、シートバックを前倒させた格納状態のシート本体を所定の位置で位置規制可能な乗物用シートを提供することにある。
前記課題は、乗物用シートであって、シートバックとシートクッションとを有し、前記シートバックを起立させた起立状態と前記シートバックを前倒させ荷台として使用可能になる格納状態とを切り替え可能なシート本体と、ロアレールと、該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパーレールとを有し、前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、前記アッパーレールを所定の範囲内で位置規制するロック機構と、格納状態の前記シート本体が前記所定の範囲を超えて前後方向に移動し所定の位置に到達したときに前記アッパーレールを位置規制する補助ロック機構と、を備え、前記補助ロック機構は、前記ロアレールに設けられた凸状部と、前記アッパーレールに回動可能に設けられた引掛部とを備え、前記凸状部は、後側から前側に行くに従って上方に向けて傾斜する傾斜面を有し、前記アッパーレールが前方に移動して前記引掛部が前記凸状部を乗り越え、前記引掛部が前記凸状部に係合することで、前記アッパーレールが位置規制されることにより解決される。
上記の乗物用シートによれば、所定の範囲内でアッパーレールを位置規制するロック機構とは別に、格納状態のシート本体が所定の範囲を超えて前後方向に移動し所定の位置に到達したときにアッパーレールを位置規制する補助ロック機構を備える。そのため、シート本体を位置規制する所定の範囲外においても、シートバックを前倒させた格納状態のシート本体を所定の位置で位置規制することができる。
荷室が拡大されたときに、荷台として使用可能な格納状態のシート本体を、所定の箇所例えばシート本体の先端が前方にあるシートに近接する位置で位置規制することにより、荷物が落下する可能性があるシート間の隙間の発生が抑制される。所定の範囲を超えた所定の位置で位置規制されたシート本体は、シートバックが前倒され荷台として使用可能な格納状態であることから、乗物用シートがある空間は、荷室として使用可能な状態が維持されるようになる。
また、上記の構成により、簡素な構造で確実にアッパーレールの位置規制をすることができる。
また、上記構成により、補助ロック機構による位置規制の前後動作で、補助ロック機構の軌道が滑らかになり、シート本体のスライド動作を滑らかにすることができる。
上記の乗物用シートにおいて、前記補助ロック機構は、前記ロック機構の解除動作と連動して前記アッパーレールの位置規制を解除するよう構成されているとよい。
上記の構成により、所定の範囲外にある場合でも補助ロック機構の位置規制をロック機構と同じ解除動作によって解除することにより、乗員は容易に補助ロック機構の位置規制を解除することができる。
上記の乗物用シートにおいて、前記シート本体が起立状態であるとき、前記アッパーレールは前記補助ロック機構により位置規制されないとよい。
上記の構成により、起立状態のシート本体が所定の範囲外にある場合、前後にスムーズに移動させることができる。
上記の乗物用シートにおいて、前記補助ロック機構により位置規制されている格納状態の前記シート本体を、起立状態にすることにより、前記補助ロック機構の位置規制が解除されるとよい。
上記の構成により、容易な操作により補助ロック機構の位置規制を解除することができる。
上記の乗物用シートにおいて、格納状態の前記シート本体が前記補助ロック機構により位置規制された状態から、前記補助ロック機構の位置規制を解除するロック解除手段を複数備えるとよい。
上記の構成により、乗員は、状況に応じて複数のロック解除手段から選択して使用し補助ロック機構の位置規制を解除することができる。
上記の乗物用シートにおいて、前記補助ロックの位置規制は、前記シートクッションの後部に取り付けられたストラップ又は前記シートバックに設けられた操作ノブに連結したワイヤを牽引することで実施されるとよい。
上記の構成により、簡易な構成で確実に補助ロック機構の位置規制を解除することが可能となる。
上記の乗物用シートにおいて、前記ロック解除手段に用いられる前記ワイヤは複数あるとよい。
上記の構成により、複数の操作を別個に作動させることができる。
上記の乗物用シートにおいて、前記ロック機構と前記補助ロック機構とは、同時に前記アッパーレールを位置規制しないよう構成されているとよい。
上記構成により、前後のスライド動作においてシート本体をスムーズに移動させることができ、効率的に位置規制をすることができる。
上記の乗物用シートによれば、所定の範囲内でアッパーレールを位置規制するロック機構とは別に、格納状態のシート本体が所定の範囲を超えて前後方向に移動し所定の位置に到達したときにアッパーレールを位置規制する補助ロック機構を備える。そのため、シート本体を位置規制する所定の範囲外においても、シートバックを前倒させた格納状態のシート本体を所定の位置で位置規制することができる。
荷室が拡大されたときに、荷台として使用可能な格納状態のシート本体を、所定の箇所例えばシート本体の先端が前方にあるシートに近接する位置で位置規制することにより、荷物が落下する可能性があるシート間の隙間の発生が抑制される。所定の範囲を超えた所定の位置で位置規制されたシート本体は、シートバックが前倒され荷台として使用可能な格納状態であることから、乗物用シートがある空間は荷室として使用可能な状態が維持されるようになる。
また、上記の構成により、所定の範囲外にある場合でも補助ロックの位置規制をロック機構の解除動作をすることにより、解除することができる。
また、上記の構成により、起立状態のシート本体が所定の範囲外にある場合、前後にスムーズに移動させることができる。
また、上記の構成により、容易な操作により補助ロック機構の規制を解除することができる。
また、上記の構成により、乗員は、状況に応じて複数のロック解除手段から選択して使用し補助ロック機構の位置規制を解除することができる。
また、上記の構成により、簡易な構成で確実に補助ロック機構の位置規制を解除することが可能となる。
また、ロック解除手段に用いられるワイヤが複数あることにより、複数の操作を別個に作動させることができる。
また、上記の構成により、簡素な構造で確実に位置規制をすることができる。
上記構成により、補助ロック機構による位置規制の前後動作で、補助ロック機構の軌道を滑らかにし、シートのスライド動作を滑らかにすることができる。
上記構成により、前後のスライド動作においてシート本体をスムーズに移動させることができ、効率的に位置規制をすることができる。
本発明の一実施形態に係る車両用シートの側面図である。 図1の部分Aを示す拡大図である。 スライドレールの平面図で図2の矢視Yから見た図である。 車両用シートのバックシートを前倒させ格納状態とし、荷室エリアを形成した状態を示す側面図である。 シートクッションの後方部分を示す平面図で、図4の矢視Xから見た図であり、リンク機構を示す図である。 起立状態のシート本体がスライドレールの最後位置にあるときの、補助ロック機構の状態を示す模式図である。 シート本体が最後位置にあるとき、シートバックを前倒させ格納状態にした場合の補助ロック機構の状態を示す模式図である。 格納状態のシート本体をスライドレールの前方に移動させ、補助ロック機構の引掛部が凸状部に当接した状態を示す模式図である。 格納状態のシート本体が所定の位置にまで移動し、補助ロック機構の引掛部が凸状部の前端に係合した状態を示す模式図である。 起立状態のシート本体がスライドレールの所定の位置にあるときの、補助ロック機構の状態を示す模式図である。 格納状態のシート本体からシートバックを起立させることにより、補助ロック機構の位置規制を解除することを示す模式図である。 ストラップを牽引又は操作ノブを操作することにより、補助ロック機構の位置規制を解除することを示す模式図である。 凸状部の変形例を示す図である。 凸状部の変形例を示す図である。 フラップのない車両用シートが拡大エリアで位置規制された状態を示す図である。
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向(換言すると、シート本体の前後方向)であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向(換言すると、シート本体の幅方向)であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、シート幅方向の「車外側」とは、車体の外側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアに近い側)を意味し、「車内側」とは、車体の内側により近い方(分かり易くは、最寄りのドアから離れている側)を意味している。
また、以下の説明中、「回動」は、特に断る場合を除き、シート幅方向に沿う軸を中心とした回動動作を意味する。
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、車両用シートSの側面図である。図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、トリムカバーTを外した構成にて図示している。
車両用シートSは、車体フロアFLの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の後部座席に相当するリアシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
車両用シートSは、図1に示すように、その本体部分をなすシート本体Shを有する。シート本体Shは、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とは後述するリクライニング機構19を挟んで連結されている。また、シートバック1は、後述のリアブラケット7を介して、車体フロアFLに対して回動可能な状態で取り付けられている。シート本体Shの下部にはスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、シート本体Shは、車両用シートSの前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアFLに取り付けられている。
車両用シートSの中には、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1のフレームであるシートバックフレーム10と、シートクッション2のフレームであるシートクッションフレーム20とから構成されている。
シートバックフレーム10は、主に、方形枠状に加工されたパイプからなるパイプフレーム(図示せず)、バックパネル(図示せず)、及びバックサイドフレーム11を備える。
シートバックフレーム10及びシートクッションフレーム20の外側には、パッド部材P及びトリムカバーTが設けられることで、シートバック1及びシートクッション2が構成されている。パッド部材Pは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、トリムカバーTは、例えばクロスや革等の素材からなる。
また、シートクッション2は、その後端部がシートバック1の側部に連結されている。なお、シートクッション2の後端部とシートバック1の下端部との間には、図1に示すようにクッションサイドフレーム21が介在している。このクッションサイドフレーム21は、シートバック1に対して回動可能な状態で取り付けられている。これにより、シートクッション2はシートバック1と共に回動することが可能である。
シート本体Shは図4に示すように、シートバックを前倒して、その前方に形成された収納フロアSfに折り畳んだ状態(格納状態)で収納することが可能である。シート本体Shが格納状態であるとき、シートバック1の背面側が上方を向き、図4に示すように荷台として使用することが可能となる。車両用シートSが格納状態であることにより、フロントシートFSの後方の空間に荷室エリアChが形成される。収納フロアSfは、車体フロアFLの一部(具体的には、車体フロア中、シート本体Shが着座状態にあるときにシート本体Shの前方に位置する部分)を下方に窪ませることで形成された凹型スペースである。
バックサイドフレーム11は、パイプフレームの左右の側部にそれぞれ取り付けられた、上下方向に延出するフレームである。換言すれば、バックサイドフレーム11は、パイプフレームのシート外側に配置され、パイプフレームの側部と共にシートバックフレーム10の左右端部を構成するフレームである。バックサイドフレーム11は、断面がシート内側に向けて開口したUの字状の板状フレームである。バックサイドフレーム11は、上部がパイプフレームの側部の中央部に溶接されており、後述するリアブラケット7に対してリクライニング機構19を介して回動可能に取り付けられている。
リアブラケット7は、その上部においてバックサイドフレーム11に、リクライニング機構19を介して接続されている。また、リアブラケット7は、その下部においてスライドレール4のアッパーレール6とボルト締結されている。
スライドレール4は、前後方向に沿ってシート本体Shをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。一対のスライドレール4がシート本体の下に設けられていて、スライドレール4のそれぞれは、車体フロアFL上に固定されるロアレール5、及びロアレール5に対してスライド移動可能なアッパーレール6を備える。車体フロアFLに固定されたロアレール5に対してアッパーレール6がスライド可能となっている。そして、シートバックフレーム10が、リアブラケット7を介してアッパーレール6に取り付けられ、シートバックフレーム10はアッパーレール6と一体にロアレール5に対して前後することが可能となっている。したがって、アッパーレール6に取付けられたシート本体Shが、アッパーレール6のスライド移動に伴って前後移動する。
スライドレール4は、アッパーレール6のスライド移動をロックするロック機構30と、ロック機構30のロックを解除するロック機構用ワイヤ51(図5参照)とが設けられている。
アッパーレール6は、乗員が着座している状態(着座状態、起立状態)で、ロック機構30によってスライド移動不能な状態でロックされており、乗員が所定の操作を行うと、ロック解除されてスライド移動可能な状態となる。具体的に説明すると、ロック解除機構として、シートクッション2の後部にストラップ31が設けれ、シートバック1の肩部に操作ノブ32が設けられている。ストラップ31と操作ノブ32は、ロック機構用ワイヤ51を介してロック機構30と接続されていて、乗員は、ストラップ31を引張するか、操作ノブ32を操作することで、ロック機構30のロック、すなわち位置規制を解除することができる。
ロック機構30については、アッパーレール6を位置規制するための一般的な機器が利用可能であるため、詳細な説明を省略することとする。また、ロック機構30によって、アッパーレールを位置規制することが可能な範囲が、着座エリアW1として定まっている(図1のシート本体Sh(1)からSh(2)に移動する範囲)。着座エリアW1内では、シート本体Shが起立状態である場合であっても位置規制することが可能である。
一方、シート本体Shは、着座エリアW1より前方の範囲(拡大エリアW2、図1でシート本体Sh(1)からSh(3)の状態に移動する範囲)においても前後方向にスライド移動することが可能となっている。しかしながら、シート本体Shが拡大エリアW2にある場合(シート本体Sh(3)の状態)、ロック機構30によって着座可能な状態で位置規制されないよう構成されている。
本実施形態の車両用シートSには、格納状態のシート本体Shを拡大エリアW2の所定の位置でアッパーレール6を位置規制する補助ロック機構40が設けられている。補助ロック機構40の詳細については後述する。
シート本体Shの後方には、フラップ8が設けられている。フラップ8は、車両の荷室の一部を形成するものである。フラップ8は、車体に固定され荷室の一部を構成する固定板8aと、固定板8aの前端部にあり回動中心である折れ起点8cによって回動可能に取り付けられた回動板8bとから構成されている。固定板8aは、荷室の下面の一部を形成するフロアボードである。回動板8bは、薄肉ヒンジから成る折れ起点8cによって、立設位置と倒伏位置とに折り曲げられるようにして回動可能に固定板8aの前端部に接続されている。
また、折れ起点8cには、コイルスプリング等の図示せぬ付勢部材が取り付けられており、当該付勢部材によって、回動板8bは、シートバック1側に付勢されている。この付勢部材の付勢力によって、乗員がシートバック1を前倒させると、シートバック1が前倒するのに伴って、回動板8bも前倒して倒伏状態となる。そして、回動板8bは、倒伏状態となったときにフロアボードとして機能することとなる。また、この時、シート本体Shは荷台として使用可能な状態が維持される。
折れ起点8cの付近から荷室側にストラップ31が突出しており、乗員がストラップ31を引くことにより、ロック機構30の位置規制が解除され、シート本体Shが前後方向にスライド可能となる。なお、ストラップ31を引くことで、ロック機構30の位置規制だけでなく、後述する補助ロック機構40による位置規制も解除することが可能である。
図5はシートクッション2の後部を示す図であり、図4の矢視Xから見た図で、フラップ8を省略した図である。シートクッション2の後部には、図5に示すように、ロック解除手段として、ストラップ31と、ロック機構用ワイヤ51とを連結するリンク機構48が設けられている。リンク機構48は、支持プレート50と、支持プレート50上に回転するよう設けられたレバー49とを有する。レバー49の一端にはストラップ31が、他端にはロック機構用ワイヤ51が連結されていて、ストラップ31を引張ることにより、ロック機構用ワイヤ51がレバー49を介して引っ張られ、それによりロック機構30の位置規制が解除される。
なお、レバー49には、操作ノブ32と連結する操作ノブ用ワイヤ52と、後述する補助ロック機構40の第二ワイヤ45が連結されている。そのため、ストラップ31を引張ることで、ロック機構30だけでなく、補助ロック機構40の位置規制を解除することができる。また、操作ノブ32を引張ることで、ロック機構30のロック機構用ワイヤ51と補助ロック機構40の第二ワイヤ45とが引っ張られるため、ロック機構30と補助ロック機構40による位置規制も解除されるようなっている。また、レバー49と支持プレート50に設けられたバネ53により、ストラップ31により引っ張られたレバー49は元の位置に戻るよう構成されている。
補助ロック機構40の構成及びその動作について詳細に説明する。補助ロック機構40は、格納状態のシート本体Shが、ロック機構30の位置規制範囲(着座エリアW1)を超えて、前方に移動してスライドレール4の所定の位置に到達したとき(図1のシート本体Sh(3)の状態)に、アッパーレール6を位置規制する装置である。
従来、シート本体Shが着座エリアW1より外の範囲(拡大エリアW2)にあると位置規制されていなかった。そのため、車両が移動すると、シート本体Shが後方に移動しフロントシートFSとの間の隙間が大きくなり、例えば自転車の前輪がその隙間に落輪し、取り出しに手間取る場合があった。
図4に示すように、荷台として使用されている格納状態のシート本体Shの先端を、フロントシートFSの後部に近接させ隙間を小さくした状態で位置規制することで、隙間から荷物(例えば自転車の前輪)が落下することを抑制する。
本実施形態の車両用シートSに設けられる、補助ロック機構40の具体的な構成について説明する。
補助ロック機構40は、図2及び図3に示すようにリアブラケット7に回動可能に取り付けられた引掛部41と、引掛部41と連結する第一ワイヤ44及び第二ワイヤ45と、第一ワイヤ44及び第二ワイヤ45を保持するワイヤ保持部42と、凸状部43と、引掛部41を前傾するよう付勢する付勢部46とから構成される。
引掛部41は、N字状又はZ字状に形成された平板状の部材であり、車両用シートSの前方に向けて延び、端部が鍵状に形成された鍵状部41aと、上方に向けて延び、端部において第一ワイヤ44及び第二ワイヤ45と連結する連結部41bとを有する。鍵状部41aと連結部41bとの間に回動動作の中心となる軸部41cが設けられている。鍵状部41aは付勢部46により前側に倒れる方向(図2の矢印B方向)に付勢されている。付勢部46は例えばコイルバネから構成される。
凸状部43は、図1及び図2に示すように、ロアレール5の前方の所定位置に設けられていて、後側から前側に行くに従って上方に向けて傾斜する傾斜面43aを有する。また、図3に示すように凸状部43はロアレール5から幅方向外側に突出して設けられている。アッパーレール6が前進することで、引掛部41の鍵状部41aが傾斜面43aを超えて凸状部43の前方端部に係合する。引掛部41は、付勢部46により前傾するよう付勢されているため、係合した状態が維持されアッパーレール6が位置規制される。それにより、シート本体Shの位置が規制されるようになる。
第一ワイヤ44は、図6Aに示すように、その一端がシートバックフレーム10(バックサイドフレーム11)の下端と接続していて、他端が引掛部41の連結部41bに接続している。第二ワイヤ45は、図5に示すリンク機構48を介して、一端がストラップ31及び操作ノブ32に接続し、他端が引掛部41の連結部41bに接続している。第一ワイヤ44及び第二ワイヤ45は、連結部41bと接続する直前においてワイヤ保持部42により略平行になるよう保持されていている。第一ワイヤ44の先端は、連結部41bに形成された第一スリット41dに摺動可能に取り付けられている。第二ワイヤ45の先端は、連結部41bに形成された第二スリット41eに摺動可能に取り付けられている。
図6A~6Dを用いて、補助ロック機構40により格納状態のシート本体Shを所定の箇所で位置規制する機構について説明する。
図6Aは、シートバック1を起立させた状態で、シート本体Shが着座エリアW1の最後端に位置する場合(図1のシート本体Sh(2)の状態)の補助ロック機構40の状態を示している。この状態では、シートバックフレーム10により、その下端部と接続する第一ワイヤ44の端部が前方に引張られている。それにより、第一ワイヤ44の他端が後方に移動し補助ロック機構40の引掛部41が後倒し、鍵状部41aが上方に浮いた状態(アッパーレール6の上面より上にある状態)となる。
図6Bに示すように、シートバック1を前倒すると、シートバックフレーム10の下端部により引張られていた第一ワイヤ44の端部が後方に移動し、それにより、補助ロック機構40と接続する第一ワイヤ44の端部が前方に押し出されるようになる。引掛部41は、付勢部46により連結部41bが前倒するよう付勢されているため、鍵状部41aの先端が下がった状態になる。
シートバック1を前倒してシート本体Shを格納状態にしたまま、前方にスライド移動させると、図6Cに示すように、引掛部41の鍵状部41aがロアレール5に設けられた凸状部43に当接する。そのまま、さらにシート本体Shをスライドさせると、鍵状部41aが凸状部43の傾斜面43aにより持ち上げられ(矢印C方向)、引掛部41の連結部41bは一旦後方に回動する。
さらに、シート本体Shをスライドさせると、引掛部41が前方に移動し、傾斜面43aにより鍵状部41aが支持されなくなり、引掛部41が付勢部46により付勢されることで鍵状部41aが凸状部43の前端に係合する。それにより、アッパーレール6の移動が規制され、格納状態のシート本体Shが位置規制される。
なお、図6Aに示すように、シートバック1が起立した状態では、引掛部41が第一ワイヤ44により後傾したままの状態が維持される。それにより、起立状態で前方にシート本体Shを移動させても、図7に示すように、鍵状部41aが凸状部43の傾斜面43aよりも上側に位置するようになる。そのため、シートバック1が起立した状態では補助ロック機構40により位置が規制されることがない。
次に、補助ロック機構40により位置規制された状態から、規制を解除する機構について説明する。
図8Aは、補助ロック機構40により位置規制された状態を示す図である。このとき、シートバック1を起立させると、シートバックフレーム10と連結する第一ワイヤ44の端部が前方に引張られる。それにより、補助ロック機構40と連結する第一ワイヤ44の端部が後方に移動し、引掛部41の連結部41bが後傾する。引掛部41の鍵状部41aと凸状部43との係合が解除され、アッパーレール6は後方に向けて移動可能になる。このように、乗員はシートバック1を起立させるだけで、補助ロック機構40の位置規制を解除することができる。
また、補助ロック機構40は、シートバック1の起立により解除するだけではなく、シートバック1が格納状態である場合でも解除することができる。
図8Bに示すように、引掛部41は第二ワイヤ45とも接続している。第二ワイヤ45は、上述したように図5に示すようリンク機構48を介してストラップ31及び操作ノブと32も連結していて、ストラップ31を牽引するか、操作ノブ32を操作することにより、第二ワイヤ45が引張られる。それにより、図8Bに示すよう、引掛部41の連結部41bが後方に傾倒する(矢印C方向)。シート本体Shは格納状態であるが、引掛部41の鍵状部41aと凸状部43との係合が解除される。このように、乗員は、ロック機構30の規制を解除する同様の解除動作で、補助ロック機構40の位置規制を解除することができる。
このように、本実施形態の車両用シートSは、複数のロック解除手段を有し、状況に応じて乗員はロック解除手段を選択して使用することで、補助ロック機構40の位置規制を解除することができる。
本実施形態の補助ロック機構40において、凸状部43の傾斜面43aは直線状に形成されているが、これは一例であり、別の形状であってもよい。引掛部41と当接する部分は、図9Aに示す凸状部143の傾斜面143aのように上方に膨出した円弧状に形成されても良い。
また、図9Bに示す凸状部243の傾斜面243aのように階段状に形成されてもよい。すなわち、傾斜面243aを階段状とすることにより、引掛部41の鍵状部41aが係止する箇所が複数形成されることとなり、補助ロック機構40によりアッパーレール6が位置規制される箇所を複数とすることができる。
また、本実施形態の凸状部43はスライドレールの前方に設けられているが、凸状部43をスライドレール4の後方に設け、着座エリアW1より後ろ側にある拡大エリアW3(図1参照)に移動した場合にアッパーレール6を位置規制するようにしてもよい。
その場合、凸状部43は、前側から後側に行くに従って上方に向けて傾斜する傾斜面を有する。
図10に示すフラップ8がない車両用シートS2の場合、シートバック1の背面にニードルパンチ等の柔軟な素材(表皮材54)が配置されるが、このような車両用シートS2であっても、シート本体Shを補助ロック機構40により拡大エリアW3で位置規制することで、荷台の受け面が人や荷台等の重みで落ち込むことを抑制できる。
S、S2 車両用シート(乗物用シート)
Sh シート本体
T トリムカバー
P パッド部材
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
5 ロアレール
6 アッパーレール
7 リアブラケット
8 フラップ
8a 固定板
8b 回動板
8c 折れ起点
F シートフレーム
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
19 リクライニング機構
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
30 ロック機構
31 ストラップ
32 操作ノブ
40 補助ロック機構
41 引掛部
41a 鍵状部
41b 連結部
41c 軸部
41d 第一スリット
41e 第二スリット
42 ワイヤ保持部
43、143、243 凸状部
43a、143a、243a 傾斜面
44 第一ワイヤ
45 第二ワイヤ
46 付勢部
48 リンク機構
49 レバー
50 支持プレート
51 ロック機構用ワイヤ
52 操作ノブ用ワイヤ
53 バネ
54 表皮材
W1 着座エリア
W2、W3 拡大エリア
Ch 荷室エリア
FL 車体フロア
FS フロントシート
Sf 収納フロア

Claims (10)

  1. 乗物用シートであって、
    シートバックとシートクッションとを有し、前記シートバックを起立させた起立状態と前記シートバックを前倒させ荷台として使用可能になる格納状態とを切り替え可能なシート本体と、
    ロアレールと、該ロアレールに対して相対移動可能に支持されるアッパーレールとを有し、前記シート本体を前記乗物用シートの前後方向に沿ってスライド移動させるスライドレールと、
    前記アッパーレールを所定の範囲内で位置規制するロック機構と、
    格納状態の前記シート本体が前記所定の範囲を超えて前後方向に移動し所定の位置に到達したときに前記アッパーレールを位置規制する補助ロック機構と、を備え
    前記補助ロック機構は、前記ロアレールに設けられた凸状部と、前記アッパーレールに回動可能に設けられた引掛部とを備え、
    前記凸状部は、後側から前側に行くに従って上方に向けて傾斜する傾斜面を有し、前記アッパーレールが前方に移動して前記引掛部が前記凸状部を乗り越え、前記引掛部が前記凸状部に係合することで、前記アッパーレールが位置規制されることを特徴とする乗物用シート。
  2. 前記補助ロック機構は、前記ロック機構の解除動作と連動して前記アッパーレールの位置規制を解除するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
  3. 前記シート本体が起立状態であるとき、前記アッパーレールは前記補助ロック機構により位置規制されないことを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
  4. 前記補助ロック機構により位置規制されている格納状態の前記シート本体を、起立状態にすることにより、前記補助ロック機構の位置規制が解除されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
  5. 格納状態の前記シート本体が前記補助ロック機構により位置規制された状態から、前記補助ロック機構の位置規制を解除するロック解除手段を複数備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
  6. 前記補助ロック機構による位置規制は、前記シートクッションの後部に設けられたストラップ又は前記シートバックに設けられた操作ノブに連結したワイヤを牽引することで実施されることを特徴とする請求項5に記載の乗物用シート。
  7. 前記ロック解除手段に用いられる前記ワイヤは複数あることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
  8. 前記ロック機構と前記補助ロック機構とは、同時に前記アッパーレールを位置規制しないよう構成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
  9. 格納状態の前記シート本体が前記補助ロック機構により位置規制された状態から、前記補助ロック機構の位置規制を解除するロック解除手段と、
    前記シート本体の後方に配置されるフラップと、を備え、
    前記ロック解除手段は、前記補助ロック機構と連結するワイヤと、該ワイヤと連結して前記フラップから出るストラップとから構成され、
    前記ストラップが牽引されることにより、前記補助ロック機構による位置規制が解除されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
  10. 前記フラップは、車体に固定される固定板と、該固定板の前端部にあり回動中心である折れ起点によって回動可能に取り付けられる回動板と、から構成され、前記回動板は付勢部材により前記シートバック側に付勢されていることを特徴とする請求項9に記載の乗物用シート。
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