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JP7381315B2 - ダイシングテープ付き接着フィルム - Google Patents

ダイシングテープ付き接着フィルム Download PDF

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JP7381315B2 JP2019218844A JP2019218844A JP7381315B2 JP 7381315 B2 JP7381315 B2 JP 7381315B2 JP 2019218844 A JP2019218844 A JP 2019218844A JP 2019218844 A JP2019218844 A JP 2019218844A JP 7381315 B2 JP7381315 B2 JP 7381315B2
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Description

本発明は、ダイシングテープ付き接着フィルムに関する。より詳細には、本発明は、半導体装置の製造過程で使用することができるダイシングテープ付き接着フィルムに関する。
半導体装置の製造過程においては、チップ相当サイズの接着フィルムを有する半導体チップ、すなわち、接着フィルム付き半導体チップを得る過程で、ダイシングテープ付き接着フィルムが使用される場合がある。ダイシングテープ付き接着フィルムは、加工対象である半導体ウエハに対応するサイズを有し、例えば、基材および粘着剤層からなるダイシングテープと、その粘着剤層側に剥離可能に密着している接着フィルムとを有する。接着フィルムは、ワークである半導体ウエハを上回るサイズの円盤形状を有し、例えば、その接着フィルムを上回るサイズの円盤形状を有するダイシングテープに対してその粘着剤層側に同心円状に貼り合わされている。
ダイシングテープ付き接着フィルムを使用して接着フィルム付き半導体チップを得る手法の一つとして、ダイシングテープ付き接着フィルムにおけるダイシングテープをエキスパンドして接着フィルムを割断させるための工程を経る手法が知られている。この手法では、まず、ダイシングテープ付き接着フィルムの接着フィルム上に半導体ウエハを貼り合わせる。この半導体ウエハは、例えば、後に接着フィルムに共だって割断されて複数の半導体チップへと個片化可能なように加工されたものであり、貼り付けた後に所定のサイズに割断可能なように加工されてもよい。
次に、ダイシングテープ上の接着フィルムを割断させるために、エキスパンド装置を使用してダイシングテープ付き接着フィルムのダイシングテープを半導体ウエハの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばす。このエキスパンド工程では、接着フィルムにおける割断箇所に相当する箇所で接着フィルム上の半導体ウエハにおいても割断が生じ、接着フィルムまたはダイシングテープ上にて半導体ウエハが複数の半導体チップに個片化される。
次に、ダイシングテープ上の割断後の複数の接着フィルム付き半導体チップについて離間距離を広げるために、再度のエキスパンド工程を行う。次に、例えば洗浄工程を経た後、各半導体チップをそれに密着しているチップ相当サイズの接着フィルムと共に、ダイシングテープの下側からピックアップ機構のピン部材によって突き上げてダイシングテープ上からピックアップする。このようにして、接着フィルム付き半導体チップが得られる。この接着フィルムがダイボンディングフィルムである場合、その接着フィルムを介して、実装基板等の被着体にダイボンディングによって固着されることとなる。また、接着フィルムが背面密着フィルムである場合、実装基板等に背面密着フィルムとは反対側の電極側を実装されることになる
以上のように使用されるダイシングテープ付き接着フィルムに関する技術については、例えば下記の特許文献1~3に記載されている。
特開2007-2173号公報 特開2010-177401号公報 特開2016-115804号公報
近年、半導体ウエハにおける分割予定ラインにレーザー光を照射して改質領域を形成することにより、半導体ウエハを分割予定ラインにて容易に分割可能とした後、この半導体ウエハをダイシングテープ付き接着フィルムに貼り付け、あるいは、半導体ウエハをダイシングテープ付き接着フィルムに貼り付けた後に半導体ウエハに上記改質領域を形成し、その後、ダイシングテープを低温下(例えば、-25~0℃)にてエキスパンド(以下、「クールエキスパンド」と称する場合がある)することにより、半導体ウエハと接着フィルムを共に割断させて、個々の半導体チップ(接着フィルム付き半導体チップ)を得る方法が提案されている。これは、いわゆる、ステルスダイシング(登録商標)と呼ばれる方法である。
改質領域が形成された半導体ウエハの回路面を構成するメタル層やダイシングテープ付き接着フィルムにおける接着フィルムを、クールエキスパンドによって良好に割断するためには、低温且つ高速でエキスパンドを行う必要がある。特に、メタル層が厚い場合は低温条件においてエキスパンド速度をより高速とすることが求められる。しかしながら、従来のダイシングテープ付き接着フィルムを用いて、半導体ウエハを接着フィルムに貼り合わせた状態において、低温且つ高速でエキスパンドを行った際、特に半導体ウエハの縁または割断後の半導体チップの縁に相当する領域において、ダイシングテープ付き接着フィルムにおけるダイシングテープが裂けるという問題があった。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低温且つ高速でクールエキスパンドを行ってもダイシングテープに裂けが発生にくいダイシングテープ付き接着フィルムを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、上記ダイシングテープにおける上記粘着剤層に剥離可能に密着している接着フィルムとを備え、上記接着フィルムのシリコンに対する、温度25℃、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力が5N/10mm以上であり、特定の破断突き上げ試験により測定される破断突き上げ量が10mm以上であるダイシングテープ付き接着フィルムを用いると、低温且つ高速でクールエキスパンドを行ってもダイシングテープに裂けが発生にくいことを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
本発明の第一実施形態として、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、上記ダイシングテープにおける上記粘着剤層に剥離可能に密着している接着フィルムとを備え、
上記接着フィルムのシリコンに対する、温度25℃、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力が5N/10mm以上であり、
下記破断突き上げ試験により測定される破断突き上げ量が10mm以上である、ダイシングテープ付き接着フィルムを提供する。
破断突き上げ試験:厚さ500μmの円盤状シリコンを接着フィルム上に貼り合わせ、エキスパンド装置を用い、温度-15℃、速度400mm/sの条件で、中空円柱形状の突き上げ部材を、円盤状シリコンを備える領域よりも外側の領域において、ダイシングテープ付き接着フィルムのダイシングテープ側に当接させて上昇させ、ダイシングテープを径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドする。そして、ダイシングテープが破断する際の突き上げ部材の上昇量を破断突き上げ量として測定する。
上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、ダイシングテープおよび接着フィルムを備える。ダイシングテープは、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有する。接着フィルムは、ダイシングテープにおける粘着剤層に剥離可能に密着している。このような構成のダイシングテープ付き接着フィルムは、半導体装置の製造過程で接着フィルム付き半導体チップを得るために使用することができる。
そして、上述のように、上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、上記接着フィルムのシリコンに対する、温度25℃、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力が5N/10mm以上である。温度25℃における上記剥離力が5N/10mm以上であることにより、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際に半導体ウエハが接着フィルムから剥がれにくい。
また、上述のように、温度-15℃、速度400mm/sの条件における、破断突き上げ試験により測定される破断突き上げ量が10mm以上である。すなわち、温度-15℃、速度400mm/sの条件において、10mm突き上げた場合でもダイシングテープが破断しない。ダイシングテープ付き接着フィルムは、一般的に、半導体ウエハを貼り付けない状態においては伸びやすく破断強度が高い場合であっても、半導体ウエハを接着フィルム上に貼り合わせた状態では、ダイシングテープ付き接着フィルムの半導体ウエハが貼り付けられた領域は伸びにくく、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハの縁(半導体ウエハが貼り付けられた領域と当該領域の外側の領域との境目)や、割断により得られる半導体チップの縁に相当する領域においてダイシングテープが裂けやすい傾向がある。一方、上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、温度-15℃以下の条件において上記破断突き上げ量が10mm以上であることにより、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハが貼り付けられた領域においてダイシングテープ付き接着フィルムの伸びが制限された場合であっても、ダイシングテープに裂けが生じにくい。このため、上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハが接着フィルムから剥がれにくく、且つ、ダイシングテープに裂けが生じにくい。
上記基材はポリウレタン系基材を含むことが好ましい。このような構成を有するダイシングテープ付き接着フィルムは、柔軟性が高く、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハが貼り付けられた領域においてダイシングテープ付き接着フィルムの伸びが制限され、例えば半導体ウエハの縁や半導体チップの縁に相当する領域に局所的に応力が集中した場合であっても、ダイシングテープに裂けが生じにくい。
上記粘着剤層は、放射線硬化型のアクリル系粘着剤層であり、ガラス転移温度が-20℃以下であることが好ましい。このような構成を有するダイシングテープ付き接着フィルムは、低温環境下でも接着フィルムに対して良好な粘着性を有し、低温且つ高速でのクールエキスパンド時に接着フィルム付きチップの剥がれが起こりにくく、またエキスパンド後の水洗浄時においても半導体ウエハよりも外側に露出している接着フィルムが飛散することを防止できる。
上記基材と上記粘着剤層の総厚さが80μm以上であることが好ましい。このような構成を有するダイシングテープ付き接着フィルムは、ダイシングテープ厚さが充分に厚く、ダイシングテープの裂けをより抑制することができる。
上記基材はポリウレタン系基材を含む多層構成であることが好ましい。ポリウレタン系基材を用いることで上述の効果が得られるが、ダイシングテープ付き接着フィルムを積層したり、巻き付けて巻回体とした際にブロッキングが生じやすくなる。そこで、このような構成を有するダイシングテープ付き接着フィルムは、ポリウレタン系基材を含む多層構成とすることにより、ポリウレタン系基材を含むことによる効果を得つつ、ブロッキングを起こりにくくすることができる。
本発明におけるダイシングテープ付き接着フィルムは、低温且つ高速でクールエキスパンドを行ってもダイシングテープに裂けが発生にくい。このため、上記ダイシングテープ付き接着フィルムを用いることにより、改質領域が形成された半導体ウエハの回路面を構成するメタル層やダイシングテープ付き接着フィルムにおける接着フィルムを、クールエキスパンドによって良好に割断することができる。また、特にメタル層が厚い場合であっても、クールエキスパンドによって良好に割断することができる。
ダイシングテープ付き接着フィルムの一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 ダイシングテープ付き接着フィルムの他の実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 分割溝形成工程およびウエハ薄化工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 ワークをダイシングテープ付き接着フィルムに貼り合わせる工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 第1エキスパンド工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 第2エキスパンド工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 ピックアップ工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 仮固着工程、ワイヤーボンディング工程、および封止工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 ウエハ薄化工程の他の実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 第1エキスパンド工程の他の実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 改質領域を形成する工程およびウエハ薄化工程の一実施形態を示す概略図(正面断面図)である。 第1エキスパンド工程のさらに他の実施形態を示す概略図(正面断面図)である。
[ダイシングテープ付き接着フィルム]
本発明の一実施形態に係るダイシングテープ付き接着フィルムは、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、上記ダイシングテープにおける上記粘着剤層に剥離可能に密着している接着フィルムと、を備える。上記ダイシングテープ付き接着フィルムの一実施形態について、以下に説明する。
図1は、上記ダイシングテープ付き接着フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図1に示すように、ダイシングテープ付き接着フィルム1は、ダイシングテープ10と、ダイシングテープ10における粘着剤層12上に積層された接着フィルム20とを備え、半導体装置の製造において接着フィルム付き半導体チップを得る過程でのエキスパンド工程に使用することのできるものである。
上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、半導体装置の製造過程における加工対象の半導体ウエハに対応するサイズの円盤形状を有する。上記ダイシングテープ付き接着フィルムにおける接着フィルムの直径は、例えば、305~335mmの範囲内(12インチウエハ対応型)である。
上記接着フィルムのシリコンに対する、温度25℃、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力が5N/10mm以上である。温度25℃における上記剥離力が5N/10mm以上であることにより、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際に半導体ウエハが接着フィルムから剥がれにくい。上記剥離力は、好ましくは8N/mm以上である。上記剥離力は、例えば50N/mm以下、20N/mm以下であってもよい。
上記剥離力は、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して測定することができる。その測定に供される試験片の作製手法および測定手法は、具体的には次のとおりである。
6インチのシリコンウエハを、鏡面側が上となるように、70℃に加熱されたホットプレート上に載置し、ダイシングテープ付き接着フィルムの接着フィルム面を上記シリコンウエハの鏡面側に貼り合わせて試験片を得る。この貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行う。そして、2分間の放置後、ホットプレートから試験片を取り外し、常温に戻るまで放置し、その後、引張試験機を使用して、25℃、剥離角度180°、および引張速度300mm/分の条件で当該試験片について、接着フィルムとシリコンウエハの界面における剥離試験を行い、測定開始から10mmを始点、100mmを終点とする範囲の値の平均値を、接着フィルムのシリコンに対する剥離力として得る。
上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、下記破断突き上げ試験により測定される破断突き上げ量が10mm以上であり、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上である。
破断突き上げ試験:厚さ500μmの円盤状シリコンを接着フィルム上に貼り合わせ、エキスパンド装置を用い、温度-15℃、速度400mm/sの条件で、中空円柱形状の突き上げ部材を、円盤状シリコンを備える領域よりも外側の領域において、ダイシングテープ付き接着フィルムのダイシングテープ側に当接させて上昇させ、ダイシングテープを径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドする。そして、ダイシングテープが破断する際の突き上げ部材の上昇量を破断突き上げ量として測定する。
上記破断突き上げ量は、温度-15℃、速度400mm/sの条件における、破断突き上げ試験により測定される破断突き上げ量であり、10mm以上である。すなわち、温度-15℃、速度400mm/sの条件において、10mm突き上げた場合でもダイシングテープが破断しない。ダイシングテープ付き接着フィルムは、一般的に、半導体ウエハを貼り付けない状態においては伸びやすく破断強度が高い場合であっても、半導体ウエハを接着フィルム上に貼り合わせた状態では、ダイシングテープ付き接着フィルムの半導体ウエハが貼り付けられた領域は伸びにくく、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハの縁(半導体ウエハが貼り付けられた領域と当該領域の外側の領域との境目)や、割断により得られる半導体チップの縁に相当する領域においてダイシングテープが裂けやすい傾向がある。一方、本発明の一実施形態に係るダイシングテープ付き接着フィルムは、温度-15℃以下の条件において上記破断突き上げ量が10mm以上であることにより、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハが貼り付けられた領域においてダイシングテープ付き接着フィルムの伸びが制限された場合であっても、ダイシングテープに裂けが生じにくい。このため、上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハが接着フィルムから剥がれにくく、且つ、ダイシングテープに裂けが生じにくい。
ダイシングテープ付き接着フィルム1におけるダイシングテープ10は、基材11と粘着剤層12とを含む積層構造を有する。
(基材)
ダイシングテープにおける基材は、ダイシングテープやダイシングテープ付き接着フィルムにおいて支持体として機能する要素である。基材としては、例えば、プラスチック基材(特にプラスチックフィルム)が挙げられる。上記基材は、単層であってもよいし、同種または異種の基材の積層体であってもよい。
上記プラスチック基材を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルイミド;アラミド、全芳香族ポリアミド等のポリアミド;ポリフェニルスルフィド;フッ素樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;セルロース樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。
上記基材は、中でも、ポリウレタンを主成分として含むことが好ましい。すなわち、上記基材はポリウレタン系基材を含むことが好ましい。このような構成を有するダイシングテープ付き接着フィルムは、柔軟性が高く、低温且つ高速でクールエキスパンドを行った際、半導体ウエハが貼り付けられた領域においてダイシングテープ付き接着フィルムの伸びが制限され、例えば半導体ウエハの縁や半導体チップの縁に相当する領域に局所的に応力が集中した場合であっても、ダイシングテープに裂けが生じにくい。
なお、基材の主成分とは、構成成分中で最も大きな質量割合を占める成分とする。上記樹脂は、一種のみを使用されていてもよいし、二種以上を使用されていてもよい。粘着剤層が後述のように放射線硬化型粘着剤層である場合、基材は放射線透過性を有することが好ましい。
上記ポリウレタンとしては、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる樹脂(すなわち、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の共重合体)が挙げられる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族および脂環族の公知のジイソシアネート類の一種または二種以上の混合物が挙げられる。上記ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。また、必要に応じて3官能以上のポリイソシアネート類やポリイソシアネートアダクト体を上記ジイソシアネート類と混合して用いることもできる。
上記ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ブタンジオール(1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等)、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の低分子量グリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリカプロラクトン共重合体等のポリエーテルジオール;プロピレングリコール、
ブタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール類とアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸等の2塩基酸類とから得られるポリエステルジオール;ポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール、ラクトンブロック共重合ジオール等のラクトンジオール等の公知のジオール類を使用できる。また、必要に応じて上記のジオール類と、3官能以上のポリオール化合物(ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等)とを混合して用いることもできる。
上記基材はポリウレタン系基材を含む多層構成であることが好ましい。ポリウレタン系基材を用いることで上述の効果が得られるが、ダイシングテープ付き接着フィルムを積層したり、巻き付けて巻回体とした際にブロッキングが生じやすくなる。そこで、ポリウレタン系基材を含む多層構成とすることにより、ポリウレタン系基材を含むことによる効果を得つつ、ブロッキングを起こりにくくすることができる。
上記多層構成の基材において、ポリウレタン系基材以外の基材としては、上述のプラスチック基材として例示および説明されたものが挙げられる。上記ポリウレタン系基材以外の基材を構成する樹脂としては、中でも、クールエキスパンドに適する性能を有し、且つブロッキング抑止性がより優れる観点から、ポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン等のポリプロピレン;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマーがより好ましい。
上記基材がポリウレタン系基材を含む多層構成である場合、上記基材の総厚さに対するポリウレタン系基材の厚さの割合は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。上記割合が50%以上であると、ポリウレタン系基材の伸縮性能を充分に発揮することができる。上記割合は、例えば95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。
上記基材がポリウレタン系基材を含む多層構成である場合、上記多層構成は、二層構成であっても三層構成であってもよい。上記多層構成は、ブロッキングをより抑制する観点から、粘着剤層から最も遠い基材中の層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分として含む層(基材)であることが好ましい。
基材がプラスチックフィルムである場合、上記プラスチックフィルムは、無配向であってもよく、少なくとも一方向(一軸方向、二軸方向等)に配向していてもよい。少なくとも一方向に配向している場合、プラスチックフィルムは当該少なくとも一方向に熱収縮可能となる。熱収縮性を有していると、ダイシングテープの、半導体ウエハの外周部分をヒートシュリンクさせることが可能となり、これにより個片化された接着フィルム付きの半導体チップ同士の間隔を広げた状態で固定できるため、半導体チップのピックアップを容易に行うことができる。基材およびダイシングテープが等方的な熱収縮性を有するためには、基材は二軸配向フィルムであることが好ましい。なお、上記少なくとも一方向に配向したプラスチックフィルムは、無延伸のプラスチックフィルムを当該少なくとも一方向に延伸(一軸延伸、二軸延伸等)することにより得ることができる。
基材およびダイシングテープは、加熱温度100℃および加熱時間処理60秒の条件で行われる加熱処理試験における熱収縮率が、1~30%であることが好ましく、より好ましくは2~25%、さらに好ましくは3~20%、特に好ましくは5~20%である。上記熱収縮率は、MD方向およびTD方向の少なくとも一方向の熱収縮率であることが好ましい。
基材の粘着剤層側表面は、粘着剤層との密着性、保持性等を高める目的で、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、イオン化放射線処理等の物理的処理;クロム酸処理等の化学的処理;コーティング剤(下塗り剤)による易接着処理等の表面処理が施されていてもよい。また、帯電防止能を付与するため、金属、合金、これらの酸化物等を含む導電性の蒸着層を基材表面に設けてもよい。密着性を高めるための表面処理は、基材における粘着剤層側の表面全体に施されていることが好ましい。
上記接着フィルムが後述の背面密着フィルムである場合、基材の算術平均表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましい。上記Raが100nm以下であると光散乱を抑制し、レーザーマーキングのためのレーザーの透過性がより向上する。特に、粘着剤層が設けられていない側の算術平均表面粗さRaが100nm以下であることが好ましい。一般的に、ブロッキング防止のため、片面の算術平均表面粗さRaが100nm以上である基材が使用されることがあるが、このような基材を用いる場合、算術平均表面粗さRaが100nm以上である面を粘着剤層側の面とし、粗面の凹部を粘着剤層で埋めることにより、光散乱を抑制し、レーザーマーキングのためのレーザーの透過性を向上させることができる。
基材の厚さは、ダイシングテープおよびダイシングテープ付き接着フィルムにおける支持体として基材が機能するための強度を確保するという観点からは、40μm以上が好ましく、より好ましくは50μm以上、さらに好ましくは55μm以上、特に好ましくは60μm以上である。また、ダイシングテープおよびダイシングテープ付き接着フィルムにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材の厚さは、200μm以下が好ましく、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
(粘着剤層)
上記ダイシングテープ付き接着フィルムにおける粘着剤層は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有する粘着剤層(アクリル系粘着剤層)であることが好ましい。上記アクリル系ポリマーは、ポリマーの構成単位として、アクリル系モノマー(分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー成分)に由来する構成単位を含むポリマーである。
上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多く含むポリマーであることが好ましい。なお、アクリル系ポリマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」(「アクリル」および「メタクリル」のうち、いずれか一方または両方)を表し、他も同様である。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル(ラウリルエステル)、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどが挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のフェニルエステル、ベンジルエステルが挙げられる。
アルコキシ基を有する炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルにおける炭化水素基中の1以上の水素原子をアルコキシ基に置換したものが挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸の2-メトキシメチルエステル、2-メトキシエチルエステル、2-メトキシブチルエステルなどが挙げられる。
上記アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルは、エステル部における炭素数の総数(アルコキシ基を有する場合はアルコキシ基における炭素数を含む総数)が6~10であることが好ましい。特に、炭化水素基の炭素数の総数が6~10である炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。これらの場合、エキスパンド工程及びその後における粘着剤層と接着フィルムとの間の浮きの抑制性と、ピックアップ工程における良好なピックアップ性とをより容易に両立させることができる。
アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分におけるアルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上である。
なお、本明細書において、上記モノマー成分には、粘着剤層への放射線照射前の、ポリマーに取り込まれた段階において放射線重合性基を有する化合物(例えば、後述の第2の官能基および放射線重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物)は含まれないものとする。
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、上記アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、窒素原子含有モノマー等の極性基含有モノマーなどが挙げられる。
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。
上記酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。上記ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどが挙げられる。
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
上記リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどが挙げられる。
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン等のモルホリノ基含有モノマー、(メタ)アクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーなどが挙げられる。
上記他のモノマー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における、上記極性基含有モノマーの合計割合は、60モル%以下が好ましく、より好ましくは50モル%以下である。また、上記極性基含有モノマーの合計割合は、10モル%以上が好ましく、より好ましくは15モル%以上である。
アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分におけるヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位の割合は、5モル%以上が好ましく、より好ましくは10モル%以上である。また、上記割合は、例えば80モル%以下であり、70モル%以下、60モル%以下であってもよい。
上記アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分と共重合可能な多官能性モノマーに由来する構成単位を含んでいてもよい。上記多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(例えば、ポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の分子内に(メタ)アクリロイル基と他の反応性官能基を有する単量体などが挙げられる。
上記多官能性モノマーは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。アルコキシ基を有していてもよい炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルによる粘着性等の基本特性を粘着剤層において適切に発現させるためには、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における上記多官能性モノマーの割合は、40モル%以下が好ましく、より好ましくは30モル%以下である。
上記アクリル系ポリマーは、第1の官能基を有するモノマー(例えば、上記極性基含有モノマー)由来の構成単位と共に、上記第1の官能基と反応し得る第2の官能基および放射線重合性官能基を有する化合物由来の構造部を有することが好ましい。アクリル系ポリマーがこのような構成を有する場合、後述の放射線硬化性粘着剤の設計が容易となる。
上記第1の官能基と上記第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基などが挙げられる。これらの中でも、反応追跡の容易さの観点から、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせ、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが好ましい。中でも、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製することは技術的難易度が高く、一方でヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーの作製および入手の容易性の観点から、上記第1の官能基がヒドロキシ基であり、上記第2の官能基がイソシアネート基である組み合わせが好ましい。
上記アクリル系ポリマーは、特に、ヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位と共に、放射線重合性の炭素-炭素二重結合(特に、(メタ)アクリロイル基)およびイソシアネート基を有する化合物由来の構造部を有することが好ましい。
放射性重合性の炭素-炭素二重結合およびイソシアネート基を有する化合物としては、メタクリロイルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられる。中でも、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが好ましい。また、ヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーとしては、上述のヒドロキシ基含有モノマーや、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物に由来する構成単位を含むものが挙げられる。
上記第1の官能基を有するモノマー由来の構成単位と上記第2の官能基および放射線重合性官能基を有する化合物のモル比[前者/後者]は、0.95以上が好ましく、より好ましくは1.00以上、さらに好ましくは1.05以上、特に好ましくは1.10以上である。上記モル比が0.95以上であると、第1の官能基(例えばヒドロキシ基)と第2の官能基(例えばイソシアネート基)の結合が充分に促進され、それでいて粘着剤層中のアクリル系ポリマーにおける未反応の第1の官能基がある程度残存していると推測され、粘着剤層と基材の間の剥離力がより向上し、エキスパンド時の粘着剤層の割れがより起こりにくい。上記モル比は、例えば10.00以下、5.00以下、3.00以下、2.00以下、1.50以下、1.30以下であってもよい。
特に、ヒドロキシ基含有モノマーと2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートのモル比[ヒドロキシ基含有モノマー/2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート]が上記範囲内であることが好ましい。
アクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを含む一種以上のモノマー成分を重合に付すことにより得られる。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などが挙げられる。
粘着剤層あるいは粘着剤層を形成する粘着剤は、架橋剤を含有していてもよい。例えば、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを用いる場合、アクリル系ポリマーを架橋させ、粘着剤層中の低分子量物質をより低減させることができる。また、アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めることができる。
上記架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物等)、アジリジン化合物、メラミン化合物などが挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。架橋剤を使用する場合、その使用量は、ベースポリマー100質量部に対して、5質量部程度以下が好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。
アクリル系ポリマー(架橋剤を用いる場合は架橋後)の質量平均分子量は、30万以上(例えば、30万~140万)が好ましく、より好ましくは35万以上である。質量平均分子量が30万以上であると、粘着剤層中の低分子量物質が少ない傾向にあり、接着フィルムや半導体ウエハなどへの汚染をより抑制することができる。
粘着剤層は、ダイシングテープ付き接着フィルムの使用過程において外部からの作用によって意図的に粘着力を低減させることが可能な粘着剤層(粘着力低減可能型粘着剤層)であってもよいしダイシングテープ付き接着フィルムの使用過程において外部からの作用によっては粘着力がほとんどまたは全く低減しない粘着剤層(粘着力非低減型粘着剤層)であってもよく、ダイシングテープ付き接着フィルムを使用して個片化される半導体ウエハの個片化の手法や条件等に応じて適宜に選択することができる。
粘着剤層が粘着力低減可能型粘着剤層である場合、ダイシングテープ付き接着フィルムの製造過程や使用過程において、粘着剤層が相対的に高い粘着力を示す状態と相対的に低い粘着力を示す状態とを使い分けることが可能となる。例えば、ダイシングテープ付き接着フィルムの製造過程でダイシングテープの粘着剤層に接着フィルムを貼り合わせる時や、ダイシングテープ付き接着フィルムがダイシング工程に使用される時には、粘着剤層が相対的に高い粘着力を示す状態を利用して粘着剤層から接着フィルム等の被着体の浮きを抑制・防止することが可能となる一方で、その後、ダイシングテープ付き接着フィルムのダイシングテープから接着フィルム付き半導体チップをピックアップするためのピックアップ工程では、粘着剤層の粘着力を低減させることで、ピックアップを容易に行うことができる。
このような粘着力低減可能型粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、放射線硬化性粘着剤、加熱発泡型粘着剤等が挙げられる。粘着力低減可能型粘着剤層を形成する粘着剤としては、一種の粘着剤を用いてもよいし、二種以上の粘着剤を用いてもよい。
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好ましく用いることができる。
上記放射線硬化性粘着剤としては、例えば、上記アクリル系ポリマー等のベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
上記放射線重合性のモノマー成分としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記放射線重合性のオリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等の種々のオリゴマーが挙げられ、分子量が100~30000程度のものが好ましい。
粘着剤層を形成する放射線硬化性粘着剤中の上記放射線硬化性のモノマー成分およびオリゴマー成分の含有量は、上記ベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部、好ましくは40~150質量部程度である。
また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものを用いてもよい。
上記放射線硬化性粘着剤としては、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤を用いると、形成された粘着剤層内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制することができる傾向がある。
上記内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーが好ましい。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入方法としては、例えば、上記第1の官能基を有するモノマー成分を含む原料モノマーを重合(共重合)させてアクリル系ポリマーを得た後、上記第2の官能基および放射線重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が挙げられる。
上記放射線硬化性粘着剤は、光重合開始剤を含有することが好ましい。上記光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。
上記α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
上記アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1などが挙げられる。
上記ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどが挙げられる。上記ケタール系化合物としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
上記芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロリドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムなどが挙げられる。
上記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対して、例えば0.05~20質量部である。
上記加熱発泡型粘着剤は、加熱によって発泡や膨張をする成分(発泡剤、熱膨張性微小球等)を含有する粘着剤である。
上記発泡剤としては、種々の無機系発泡剤や有機系発泡剤が挙げられる。上記無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、アジド類などが挙げられる。上記有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロモノフルオロメタン等の塩フッ化アルカン;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ系化合物;パラトルエンスルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)等のヒドラジン系化合物;p-トルイレンスルホニルセミカルバジド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等のセミカルバジド系化合物;5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾール等のトリアゾール系化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジニトロソテレフタルアミド等のN-ニトロソ系化合物などが挙げられる。
上記熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。上記加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルべーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。上記殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン・アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。
上記粘着力非低減型粘着剤層としては、例えば、感圧型粘着剤層が挙げられる。なお、感圧型粘着剤層には、粘着力低減可能型粘着剤層に関して上述した放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層を予め放射線照射によって硬化させつつも一定の粘着力を有する形態の粘着剤層が含まれる。粘着力非低減型粘着剤層を形成する粘着剤としては、一種の粘着剤を用いてもよいし、二種以上の粘着剤を用いてもよい。
また、粘着剤層の全体が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、一部が粘着力非低減型粘着剤層であってもよい。例えば、粘着剤層が単層構造を有する場合、粘着剤層の全体が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、粘着剤層における任意の部位(例えば、リングフレームの貼着対象領域であって、中央領域の外側にある領域)が粘着力非低減型粘着剤層であり、他の部位(例えば、半導体ウエハの貼着対象領域である中央領域)が粘着力低減可能型粘着剤層であってもよい。
粘着剤層が積層構造を有する場合、積層構造における全ての粘着剤層が粘着力非低減型粘着剤層であってもよいし、積層構造中の一部の粘着剤層が粘着力非低減型粘着剤層であってもよい。
放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層(放射線未照射放射線硬化型粘着剤層)を予め放射線照射によって硬化させた形態の粘着剤層(放射線照射済放射線硬化型粘着剤層)は、放射線照射によって粘着力が低減されているとしても、含有するポリマー成分に起因する粘着性を示し、ダイシング工程等においてダイシングテープの粘着剤層に最低限必要な粘着力を発揮することが可能である。
放射線照射済放射線硬化型粘着剤層を用いる場合、粘着剤層の面広がり方向において、粘着剤層の全体が放射線照射済放射線硬化型粘着剤層であってもよく、粘着剤層の一部が放射線照射済放射線硬化型粘着剤層であり且つ他の部分が放射線未照射の放射線硬化型粘着剤層であってもよい。
なお、本明細書において、「放射線硬化型粘着剤層」とは、放射線硬化性粘着剤から形成された粘着剤層をいい、放射線硬化性を有する放射線未照射放射線硬化型粘着剤層および当該粘着剤層が放射線照射により硬化した後の放射線硬化済放射線硬化型粘着剤層の両方を含む。
上記感圧型粘着剤層を形成する粘着剤としては、公知乃至慣用の感圧型の粘着剤を用いることができ、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤を好ましく用いることができる。粘着剤層が感圧型の粘着剤としてアクリル系ポリマーを含有する場合、当該アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含むポリマーであることが好ましい。上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、上述の粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーとして説明されたアクリル系ポリマーを採用することができる。
上記粘着剤層は、放射線硬化型のアクリル系粘着剤層であり、ガラス転移温度が-20℃以下(好ましくは-25℃以下)であることが好ましい。上記粘着剤層を有するダイシングテープ付き接着フィルムは、低温環境下でも接着フィルムに対して良好な粘着性を有し、低温且つ高速でのクールエキスパンド時に接着フィルム付きチップの剥がれが起こりにくく、またエキスパンド後の水洗浄時においても半導体ウエハよりも外側に露出している接着フィルムが飛散することを防止できる。なお、上記ガラス転移温度は、例えば-40℃以上である。上記ガラス転移温度は、公知乃至慣用の示差走査熱量計を用いて測定することができる。
粘着剤層または粘着剤層を形成する粘着剤は、上述の各成分以外に、架橋促進剤、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料等)等の公知乃至慣用の粘着剤層に用いられる添加剤が配合されていてもよい。
上記着色剤としては、例えば、放射線照射により着色する化合物が挙げられる。放射線照射により着色する化合物を含有する場合、放射線照射された部分のみを着色することができる。上記放射線照射により着色する化合物は、放射線照射前には無色または淡色であるが、放射線照射により有色となる化合物であり、例えば、ロイコ染料などが挙げられる。上記放射線照射により着色する化合物の使用量は特に限定されず適宜選択することができる。
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、2~10μmが好ましく、より好ましくは3~8μmである。上記厚さが2μm以上であると、接着フィルムとの粘着力を充分に確保でき、低温且つ高速でのクールエキスパンド時に接着フィルムが粘着剤層からより剥がれにくい。上記厚さが10μm以下であると、低温且つ高速でのクールエキスパンド時における接着フィルムの割断性がより良好となる。
上記基材と上記粘着剤層の総厚さは、80μm以上であることが好ましい。上記総厚さが80μm以上であると、ダイシングテープ厚さが充分に厚く、ダイシングテープの裂けをより抑制することができる。上記総厚さは、割断性能をより充分に発揮させるため、210μm以下が好ましく、より好ましくは190μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。
上記接着フィルムが後述の背面密着フィルムである場合、上記ダイシングテープのヘイズは、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下である。上記ヘイズが10%以下であると、ダイシングテープ側から背面密着フィルムにレーザーマーキングを施す際、レーザーを透過させやすく、背面密着フィルムにより効率的にレーザーマーキングを施すことができ、また、レーザーマーキングによる印字をダイシングテープを介して容易に確認することができる。
上記ダイシングテープは、波長532nmにおける直線透過率が、70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上である。上記直線透過率が70%以上であると、ダイシングテープ側から背面密着フィルムにレーザーマーキングを施す際、レーザーを透過させやすく、背面密着フィルムにより効率的にレーザーマーキングを施すことができ、また、レーザーマーキングによる印字をダイシングテープを介して容易に確認することができる。
(接着フィルム)
接着フィルムは、熱硬化性を示す接着剤が使用されていてもよく、熱硬化性を示さない接着剤が使用されていてもよい。接着フィルムは、さらに必要に応じて半導体ウエハ等のワークとリングフレーム等のフレーム部材とを保持するための粘着機能を併有する。接着フィルムは、引張応力を加えることによる割断が可能であり、引張応力を加えることにより割断させて使用される。
接着フィルムが熱硬化性を有する場合、接着フィルムおよび接着フィルムを構成する接着剤は、熱硬化性樹脂と例えばバインダー成分としての熱可塑性樹脂とを含んでいてもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。接着フィルムを構成する接着剤が、熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、当該接着剤は熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含む必要はない。また、接着フィルムが熱硬化性を有しない場合、接着フィルムおよび接着フィルムを構成する接着剤は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。接着フィルムは、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、PETやPBT等の飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。上記熱可塑性樹脂としては、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いために接着フィルムによる接合信頼性を確保しやすいという理由から、アクリル樹脂が好ましい。
上記アクリル系樹脂は、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含むことが好ましい。当該炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、上述の粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを形成する炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとして例示された炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
上記アクリル樹脂は、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他のモノマー成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。上記他のモノマー成分としては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、アクリロニトリル等の官能基含有モノマーや、各種の多官能性モノマーなどが挙げられ、具体的には、上述の粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを構成する他のモノマー成分として例示されたものを使用することができる。
接着フィルムが、熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂とともに含む場合、当該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。ダイボンディング対象の半導体チップの腐食原因となり得るイオン性不純物等の含有量の少ない傾向にあるという理由から、上記熱硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂が好ましい。また、エポキシ樹脂の硬化剤としてはフェノール樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、グリシジルアミン型のエポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用し得るフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンなどが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂などが挙げられる。上記フェノール樹脂は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。中でも、ダイボンディング用接着剤としてのエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる場合に当該接着剤の接続信頼性を向上させる傾向にある観点から、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂が好ましい。
接着フィルムにおいて、エポキシ樹脂とフェノール樹脂との硬化反応を充分に進行させるという観点からは、フェノール樹脂は、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基1当量当たり、当該フェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.7~1.5当量となる量で含まれる。
接着フィルムが熱硬化性樹脂を含む場合、上記熱硬化性樹脂の含有割合は、接着フィルムにおいて熱硬化型接着剤としての機能を適切に発現させるという観点から、接着フィルムの総質量に対して、5~60質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%である。
接着フィルムが熱硬化性官能基を有する熱可塑性樹脂を含む場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂におけるアクリル樹脂は、好ましくは、炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を質量割合で最も多い構成単位として含む。当該炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、上述の粘着剤層に含まれ得るアクリル系ポリマーを形成する炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルとして例示されたものが挙げられる。
一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基などが挙げられる。中でも、グリシジル基、カルボキシ基が好ましい。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル樹脂、カルボキシ基含有アクリル樹脂が特に好ましい。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂とともに硬化剤を含むことが好ましく、当該硬化剤としては、例えば、上述の粘着剤層形成用の放射線硬化性粘着剤に含まれ得る架橋剤として例示されたものが挙げられる。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基がグリシジル基である場合には、硬化剤としてポリフェノール系化合物を用いることが好ましく、例えば上述の各種フェノール樹脂を用いることができる。
硬化される前の接着フィルムについて、ある程度の架橋度を実現するためには、例えば、接着フィルムに含まれ得る上述の樹脂の分子鎖末端の官能基等と反応して結合し得る多官能性化合物を架橋成分として接着フィルム形成用樹脂組成物に配合しておくのが好ましい。このような構成は、接着フィルムについて、高温下での接着特性を向上させる観点で、また、耐熱性の改善を図る観点で好ましい。
上記架橋成分としては、例えばポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートの付加物などが挙げられる。また、上記架橋成分としては、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物をポリイソシアネート化合物と併用してもよい。
接着フィルム形成用樹脂組成物における架橋成分の含有量は、当該架橋成分と反応して結合し得る上記官能基を有する樹脂100質量部に対し、形成される接着フィルムの凝集力向上の観点からは0.05質量部以上が好ましく、形成される接着フィルムの接着力向上の観点からは7質量部以下が好ましい。
接着フィルムは、フィラーを含有することが好ましい。接着フィルムへのフィラーの配合により、接着フィルムの導電性や、熱伝導性、弾性率等の物性を調整することができる。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられ、特に無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカの他、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の金属単体や、合金、アモルファスカーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。フィラーは、球状、針状、フレーク状などの各種形状を有していてもよい。上記フィラーとしては、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
上記フィラーの平均粒径は、0.005~10μmが好ましく、より好ましくは0.005~1μmである。上記平均粒径が0.005μm以上であると、半導体ウエハ等の被着体への濡れ性、接着性がより向上する。上記平均粒径が10μm以下であると、上記各特性の付与のために加えたフィラーの効果を充分なものとすることができると共に、耐熱性を確保することができる。なお、フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(例えば、商品名「LA-910」、株式会社堀場製作所製)を用いて求めることができる。
接着フィルムは、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、例えば、硬化触媒、難燃剤、シランカップリング剤、イオントラップ剤、染料などが挙げられる。上記他の添加剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、臭素化エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
上記イオントラップ剤としては、例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-300」)、特定構造のリン酸ジルコニウム(例えば東亜合成株式会社製の「IXE-100」)、ケイ酸マグネシウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード600」)、ケイ酸アルミニウム(例えば協和化学工業株式会社製の「キョーワード700」)などが挙げられる。
金属イオンとの間で錯体を形成し得る化合物もイオントラップ剤として使用することができる。そのような化合物としては、例えば、トリアゾール系化合物、テトラゾール系化合物、ビピリジル系化合物が挙げられる。これらのうち、金属イオンとの間で形成される錯体の安定性の観点からはトリアゾール系化合物が好ましい。
上記トリアゾール系化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-{N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル}ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-t-オクチル-6’-t-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1-(2’,3’-ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシジエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2-エチルヘキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、2,4-ジ-t-ペンチル-6-{(H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル}フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-ブチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロ-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートなどが挙げられる。
また、キノール化合物や、ヒドロキシアントラキノン化合物、ポリフェノール化合物等の特定の水酸基含有化合物も、イオントラップ剤として使用することができる。そのような水酸基含有化合物としては、具体的には、1,2-ベンゼンジオール、アリザリン、アントラルフィン、タンニン、没食子酸、没食子酸メチル、ピロガロールなどが挙げられる。
接着フィルムの厚さ(積層体の場合は、総厚さ)は、特に限定されないが、例えば1~200μmである。上限は、100μmが好ましく、より好ましくは80μmである。下限は、3μmが好ましく、より好ましくは5μmである。
上記接着フィルムは、ワークを配線基板や他のワーク上にダイボンドするためのフィルム(ダイボンドフィルム)や、半導体の背面に密着して用いるフィルム(半導体背面密着フィルム)であってもよい。半導体背面密着フィルムは、裏面保護フィルムなど、通常、レーザーマーキングにより刻印情報を付与することが可能なように着色剤が配合されており、またこれにより遮光性を有する。本明細書では、上記半導体背面密着フィルムを単に「背面密着フィルム」と称する場合がある。
なお、本明細書において、半導体(ワーク)の「表面」とはワークのフリップチップ実装するためのバンプが形成されている面をいい、「背面」とは表面の反対側、すなわちバンプが形成されていない面をいうものとする。そして、「背面密着フィルム」は半導体の背面に密着して用いるフィルムをいい、半導体チップの背面(いわゆる裏面)に保護膜を形成するためのフィルム(半導体裏面保護フィルム)を含む。また、本明細書において、「背面密着フィルム」とは、半導体装置に実装された後もワークの背面に密着しているフィルムであり、ダイシングテープやセパレータなどの半導体装置の製造過程で剥離される層は含まれない。上記背面密着フィルムは、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
上記接着フィルムが背面密着フィルムである場合、上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、ダイシングテープ一体型半導体背面密着フィルム(ダイシングテープ一体型背面密着フィルム)として用いられる。すなわち、上記ダイシングテープ一体型背面密着フィルムは、基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、上記ダイシングテープにおける上記粘着剤層に剥離可能に密着している背面密着フィルムとを備えた形態である。また、上記接着フィルムがダイボンドフィルムである場合、上記ダイシングテープ付き接着フィルムは、ダイシングダイボンドフィルムとして用いられる。
上記背面密着フィルムは、多層構造である場合、ワーク背面への貼着面を有する背面密着層と、レーザーマーキングにより刻印情報を付与することが可能なレーザーマーク層とを含む積層構造を有していてもよい。背面密着層は、ワーク背面に貼着された後、熱硬化によりワーク背面に接着して保護することが可能となるように、熱硬化性を有していてもよい。なお、背面密着層が熱硬化性を有しない非熱硬化性である場合、背面密着層は、感圧などによる界面での密着性(濡れ性)や化学結合によりワーク背面に接着して保護することが可能である。レーザーマーク層は、その表面に、半導体装置の製造過程においてレーザーマーキングが施されることとなる。そして、このような積層構造を有する背面密着フィルムは、120℃で2時間の加熱処理によって、上記背面密着層は熱硬化する一方で、上記レーザーマーク層は実質的には熱硬化しないという積層構造をとることができる。なお、上記背面密着フィルムにおいて120℃で2時間の加熱処理によって実質的には熱硬化しない層には、既に硬化した熱硬化型層が含まれる。上記背面密着層および上記レーザーマーク層は、それぞれ、単層構造を有していてもよいし、多層構造を有していてもよい。
上記レーザーマーク層は、レーザーマーキングを施す時点において、熱硬化性成分が熱硬化された熱硬化型層(熱硬化済み層)であることが好ましい。熱硬化済みのレーザーマーク層は、レーザーマーク層を形成する樹脂組成物から形成された熱硬化性の樹脂組成物層を硬化させることにより形成される。
上記背面密着フィルムが背面密着層とレーザーマーキング層とを有する多層構造である場合、背面密着層の厚さに対するレーザーマーク層の厚さの比は、1以上が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上である。上記比は、例えば10以下である。
上記背面密着フィルムが多層構造である場合のダイシングテープ付き接着フィルムの一実施形態を図2に示す。図2に示すように、ダイシングテープ付き接着フィルム1は、ダイシングテープ10と、ダイシングテープ10における粘着剤層12上に積層された背面密着フィルム20aとを備える。背面密着フィルム20aは、背面密着層21aとレーザーマーク層22aを含む多層構造を有し、レーザーマーク層22aがダイシングテープ10の粘着剤層12に剥離可能に密着している。背面密着フィルム20aをワーク背面に貼着し熱硬化させて使用することができる。
ダイシングテープ付き接着フィルムは、セパレータを有していてもよい。具体的には、ダイシングテープ付き接着フィルムごとに、セパレータを有するシート状の形態であってもよいし、セパレータが長尺状であってその上に複数のダイシングテープ付き接着フィルムが配され且つ当該セパレータが巻き回されてロールの形態とされていてもよい。
セパレータは、ダイシングテープ付き接着フィルムの接着フィルム表面を被覆して保護するための要素であり、ダイシングテープ付き接着フィルムを使用する際には当該フィルムから剥がされる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが挙げられる。セパレータの厚さは、例えば5~200μmである。
上記ダイシングテープ付き接着フィルムの一実施形態であるダイシングテープ付き接着フィルム1は、例えば、次の通りにして製造される。
まず基材11は、公知乃至慣用の製膜方法により製膜して得ることができる。上記製膜方法としては、例えば、カレンダー製膜法、有機溶媒中でのキャスティング法、密閉系でのインフレーション押出法、Tダイ押出法、共押出し法、ドライラミネートなどが挙げられる。
次に、基材11上に、粘着剤層12を形成する粘着剤および溶媒等を含む、粘着剤層12を形成する組成物(粘着剤組成物)を塗布して塗布膜を形成した後、必要に応じて脱溶媒や硬化等により該塗布膜を固化させ、粘着剤層12を形成することができる。上記塗布の方法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等の公知乃至慣用の塗布方法が挙げられる。また、脱溶媒条件としては、例えば、温度80~150℃、時間0.5~5分間の範囲内で行われる。
また、セパレータ上に粘着剤組成物を塗布して塗布膜を形成した後、上記の脱溶媒条件で塗布膜を固化させて粘着剤層12を形成してもよい。その後、基材11上に粘着剤層12をセパレータと共に貼り合わせる。以上のようにして、ダイシングテープ10を作製することができる。
図1に示すダイシングテープ付き接着フィルム1の場合、接着フィルム20について、まず、樹脂、フィラー、硬化触媒、溶媒などを含む、接着フィルム20を形成する組成物(接着剤組成物)を作製する。次に、接着剤組成物をセパレータ上に塗布して塗布膜を形成した後、必要に応じて脱溶媒や硬化等により該塗布膜を固化させ、接着フィルム20を形成する。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工等の公知乃至慣用の塗布方法が挙げられる。また、脱溶媒条件としては、例えば、温度70~160℃、時間1~5分間の範囲内で行われる。
図2に示すダイシングテープ付き接着フィルム1の場合、接着フィルムである背面密着フィルム20aは、まず、背面密着層21aとレーザーマーク層22aとを個別に作製する。背面密着層21aは、背面密着層21a形成用の樹脂組成物(接着剤組成物)をセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、加熱により脱溶媒や硬化を行い、該樹脂組成物層を固化させることによって作製することができる。背面密着層21aの作製において、加熱温度は例えば90~150℃であり、加熱時間は例えば1~2分間である。樹脂組成物の塗布手法としては、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工などが挙げられる。一方、レーザーマーク層22aは、レーザーマーク層22a形成用の樹脂組成物をセパレータ上に塗布して樹脂組成物層を形成した後、加熱により脱溶媒や硬化を行い、該樹脂組成物層を固化させることによって作製することができる。レーザーマーク層22aの作製において、加熱温度は例えば90~160℃であり、加熱時間は例えば2~4分間である。それぞれがセパレータを伴う形態で背面密着層21aおよびレーザーマーク層22aを作製することができる。そして、これら背面密着層21aおよびレーザーマーク層22aの露出面同士を貼り合わせ、次いで目的とする平面投影形状および平面投影面積となるように打ち抜き加工を行い、背面密着層21aとレーザーマーク層22aとの積層構造を有する背面密着フィルム20aが作製される。
続いて、ダイシングテープ10および接着フィルム20からそれぞれセパレータを剥離し、接着フィルム20と粘着剤層12とが貼り合わせ面となるようにして両者を貼り合わせる。接着フィルム20が背面密着フィルム20aである場合、ダイシングテープ10の粘着剤層12側に、背面密着フィルム20aのレーザーマーク層22a側を貼り合わせる。貼り合わせは、例えば圧着により行うことができる。このとき、ラミネート温度は特に限定されず、例えば、30~50℃が好ましく、より好ましくは35~45℃である。また、線圧は特に限定されず、例えば、0.1~20kgf/cmが好ましく、より好ましくは1~10kgf/cmである。
上述のように、粘着剤層12が放射線硬化型粘着剤層である場合に接着フィルム20の貼り合わせより後に粘着剤層12に紫外線等の放射線を照射する時には、例えば基材11の側から粘着剤層12に放射線照射を行い、その照射量は、例えば50~500mJであり、好ましくは100~300mJである。
ダイシングテープ付き接着フィルム1において粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(照射領域R)は、通常、粘着剤層12における接着フィルム20貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。部分的に照射領域Rを設ける場合、照射領域Rを除く領域に対応するパターンを形成したフォトマスクを介して行うことができる。また、スポット的に放射線を照射して照射領域Rを形成する方法も挙げられる。
以上のようにして、例えば図1および図2に示すダイシングテープ付き接着フィルム1を作製することができる。
上記ダイシングテープ付き接着フィルムの一実施形態であるダイシングテープ付き接着フィルム1は、例えば、次の通りにして製造される。
[半導体装置の製造方法]
上記ダイシングテープ付き接着フィルムを用いて、半導体装置を製造することができる。具体的には、上記ダイシングテープ付き接着フィルムにおける上記接着フィルム側に、複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体、または複数の半導体チップに個片化可能な半導体ウエハを貼り付ける工程(「工程A」と称する場合がある)と、相対的に低温の条件下で、上記ダイシングテープ付き接着フィルムにおけるダイシングテープをエキスパンドして、少なくとも上記接着フィルムを割断して接着フィルム付き半導体チップを得る工程(「工程B」と称する場合がある)と、相対的に高温の条件下で、上記ダイシングテープをエキスパンドして、上記接着フィルム付き半導体チップ同士の間隔を広げる工程(「工程C」と称する場合がある)と、上記接着フィルム付き半導体チップをピックアップする工程(「工程D」と称する場合がある)とを含む製造方法により、半導体装置を製造することができる。
工程Aで用いる上記複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体、または複数の半導体チップに個片化可能な半導体ウエハは、以下のようにして得ることができる。まず、図3(a)および図3(b)に示すように、半導体ウエハWに分割溝30aを形成する(分割溝形成工程)。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。
そして、粘着面T1aを有するウエハ加工用テープT1を半導体ウエハWの第2面Wb側に貼り合わせた後、ウエハ加工用テープT1に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWの第1面Wa側に所望の深さの分割溝30aをダイシング装置等の回転ブレードを使用して形成する。分割溝30aは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための空隙である(図3~5では分割溝30aを模式的に太線で表す)。
次に、図3(c)に示すように、粘着面T2aを有するウエハ加工用テープT2の、半導体ウエハWの第1面Wa側への貼り合わせと、半導体ウエハWからのウエハ加工用テープT1の剥離とを行う。
次に、図3(d)に示すように、ウエハ加工用テープT2に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所望の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化する(ウエハ薄化工程)。研削加工は、研削砥石を備える研削加工装置を使用して行うことができる。このウエハ薄化工程によって、本実施形態では、複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Aが形成される。
半導体ウエハ30Aは、具体的には、当該ウエハにおいて複数の半導体チップ31へと個片化されることとなる部位を第2面Wb側で連結する部位(連結部)を有する。半導体ウエハ30Aにおける連結部の厚さ、すなわち、半導体ウエハ30Aの第2面Wbと分割溝30aの第2面Wb側先端との間の距離は、例えば1~30μmであり、好ましくは3~20μmである。
(工程A)
工程Aでは、ダイシングテープ付き接着フィルム1における接着フィルム20側に、複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体、または複数の半導体チップに個片化可能な半導体ウエハを貼り付ける。
工程Aにおける一実施形態では、図4(a)に示すように、ウエハ加工用テープT2に保持された半導体ウエハ30Aをダイシングテープ付き接着フィルム1の接着フィルム20に対して貼り合わせる。この後、図4(b)に示すように、半導体ウエハ30Aからウエハ加工用テープT2を剥がす。
なお、半導体ウエハ30Aの接着フィルム20への貼り合わせの後に、基材11の側から粘着剤層12に対して紫外線等の放射線を照射してもよい。照射量は、例えば50~500mJ/cm2であり、好ましくは100~300mJ/cm2である。ダイシングテープ付き接着フィルム1において粘着剤層12の粘着力低減措置としての照射が行われる領域(図1に示す照射領域R)は、例えば、粘着剤層12における接着フィルム20貼り合わせ領域内のその周縁部を除く領域である。
(工程B)
工程Bでは、相対的に低温の条件下で、ダイシングテープ付き接着フィルム1におけるダイシングテープ10をエキスパンドして、少なくとも接着フィルム20を割断して接着フィルム付き半導体チップを得る。
工程Bにおける一実施形態では、まず、ダイシングテープ付き接着フィルム1におけるダイシングテープ10の粘着剤層12上にリングフレーム41を貼り付けた後、図5(a)に示すように、半導体ウエハ30Aを伴う当該ダイシングテープ付き接着フィルム1をエキスパンド装置の保持具42に固定する。
次に、相対的に低温の条件下での第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を、図5(b)に示すように行い、半導体ウエハ30Aを複数の半導体チップ31へと個片化するとともに、ダイシングテープ付き接着フィルム1の接着フィルム20を小片の接着フィルム21に割断して、接着フィルム付き半導体チップ31を得る。
クールエキスパンド工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43を、ダイシングテープ付き接着フィルム1の図中下側においてダイシングテープ10に当接させて上昇させ、半導体ウエハ30Aの貼り合わせられたダイシングテープ付き接着フィルム1のダイシングテープ10を、半導体ウエハ30Aの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドする。
このエキスパンドは、ダイシングテープ10において15~32MPa、好ましくは20~32MPaの範囲内の引張応力が生じる条件で行う。クールエキスパンド工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。クールエキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43を上昇させる速度)は、好ましくは50~400mm/秒であり、高速で行う場合は好ましくは100~400mm/秒である。また、クールエキスパンド工程におけるエキスパンド量は、好ましくは3~20mmである。
工程Bでは、複数の半導体チップに個片化可能な半導体ウエハ30Aを用いた場合、半導体ウエハ30Aにおいて薄肉で割れやすい部位に割断が生じて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、工程Bでは、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着している接着フィルム20において各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝の図中垂直方向に位置する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生じる引張応力が作用する。その結果、接着フィルム20において半導体チップ31間の分割溝の垂直方向に位置する箇所が割断されることとなる。エキスパンドによる割断の後、図5(c)に示すように、突き上げ部材43を下降させて、ダイシングテープ10におけるエキスパンド状態を解除する。
(工程C)
工程Cでは、相対的に高温の条件下で、上記ダイシングテープ10をエキスパンドして、上記接着フィルム付き半導体チップ同士の間隔を広げる。
工程Cにおける一実施形態では、まず、相対的に高温の条件下での第2エキスパンド工程(常温エキスパンド工程)を、図6(a)に示すように行い、接着フィルム付き半導体チップ31間の距離(離間距離)を広げる。
工程Cでは、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43を再び上昇させ、ダイシングテープ付き接着フィルム1のダイシングテープ10をエキスパンドする。第2エキスパンド工程における温度条件は、例えば10℃以上であり、好ましくは15~30℃である。第2エキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43を上昇させる速度)は、例えば0.1~10mm/秒であり、好ましくは0.3~1mm/秒である。後述のピックアップ工程にてダイシングテープ10から接着フィルム付き半導体チップ31を適切にピックアップ可能な程度に、工程Cでは接着フィルム付き半導体チップ31の離間距離を広げる。エキスパンドにより離間距離を広げた後、図6(b)に示すように、突き上げ部材43を下降させて、ダイシングテープ10におけるエキスパンド状態を解除する。
エキスパンド状態解除後にダイシングテープ10上の接着フィルム付き半導体チップ31の離間距離が狭まることを抑制する観点では、エキスパンド状態を解除するより前に、ダイシングテープ10における半導体チップ31保持領域より外側の部分を加熱して収縮させることが好ましい。
工程Cの後、接着フィルム付き半導体チップ31を伴うダイシングテープ10における半導体チップ31側を水等の洗浄液を使用して洗浄するクリーニング工程を必要に応じて有していてもよい。
(工程D)
工程D(ピックアップ工程)では、個片化された接着フィルム付き半導体チップをピックアップする。工程Dにおける一実施形態では、必要に応じて上記クリーニング工程を経た後、図7に示すように、接着フィルム付き半導体チップ31をダイシングテープ10からピックアップする。例えば、ピックアップ対象の接着フィルム付き半導体チップ31について、ダイシングテープ10の図中下側においてピックアップ機構のピン部材44を上昇させてダイシングテープ10を介して突き上げた後、吸着治具45によって吸着保持する。ピックアップ工程において、ピン部材44の突き上げ速度は例えば1~100mm/秒であり、ピン部材44の突き上げ量は例えば50~3000μmである。
上記半導体装置の製造方法は、工程A~D以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、一実施形態においては、図8(a)に示すように、ピックアップした接着フィルム付き半導体チップ31を、被着体51に対して接着フィルム21を介して仮固着する(仮固着工程)。
被着体51としては、例えば、リードフレーム、TAB(Tape Automated Bonding)フィルム、配線基板、別途作製した半導体チップ等が挙げられる。接着フィルム21の仮固着時における25℃での剪断接着力は、被着体51に対して0.2MPa以上が好ましく、より好ましくは0.2~10MPaである。接着フィルム21の上記剪断接着力が0.2MPa以上であるという構成は、後述のワイヤーボンディング工程において、超音波振動や加熱によって接着フィルム21と半導体チップ31または被着体51との接着面でずり変形が生じるのを抑制して適切にワイヤーボンディングを行うことができる。また、接着フィルム21の仮固着時における175℃での剪断接着力は、被着体51に対して0.01MPa以上が好ましく、より好ましくは0.01~5MPaである。
次に、図8(b)に示すように、半導体チップ31の電極パッド(図示略)と被着体51の有する端子部(図示略)とをボンディングワイヤー52を介して電気的に接続する(ワイヤーボンディング工程)。
半導体チップ31の電極パッドや被着体51の端子部とボンディングワイヤー52との結線は、加熱を伴う超音波溶接によって実現でき、接着フィルム21を熱硬化させないように行われる。ボンディングワイヤー52としては、例えば金線、アルミニウム線、銅線等を用いることができる。ワイヤーボンディングにおけるワイヤー加熱温度は、例えば80~250℃であり、好ましくは80~220℃である。また、その加熱時間は数秒~数分間である。
次に、図8(c)に示すように、被着体51上の半導体チップ31やボンディングワイヤー52を保護するための封止樹脂53によって半導体チップ31を封止する(封止工程)。
封止工程では、接着フィルム21の熱硬化が進行する。封止工程では、例えば、金型を使用して行うトランスファーモールド技術によって封止樹脂53を形成する。封止樹脂53の構成材料としては、例えばエポキシ系樹脂を用いることができる。封止工程において、封止樹脂53を形成するための加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば60秒~数分間である。
封止工程で封止樹脂53の硬化が充分に進行しない場合には、封止工程の後に封止樹脂53を完全に硬化させるための後硬化工程を行う。封止工程において接着フィルム21が完全に熱硬化しない場合であっても、後硬化工程において封止樹脂53と共に接着フィルム21の完全な熱硬化が可能となる。後硬化工程において、加熱温度は例えば165~185℃であり、加熱時間は例えば0.5~8時間である。
上記の実施形態では、上述のように、接着フィルム付き半導体チップ31を被着体51に仮固着させた後、接着フィルム21を完全に熱硬化させることなくワイヤーボンディング工程が行われる。このような構成に代えて、上記半導体装置の製造方法では、接着フィルム付き半導体チップ31を被着体51に仮固着させた後、接着フィルム21を熱硬化させてからワイヤーボンディング工程を行ってもよい。
上記半導体装置の製造方法においては、他の実施形態として、図3(d)を参照して上述したウエハ薄化工程に代えて、図9に示すウエハ薄化工程を行ってもよい。図3(c)を参照して上述した過程を経た後、図9に示すウエハ薄化工程では、ウエハ加工用テープT2に半導体ウエハWが保持された状態で、当該ウエハが所望の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化させて、複数の半導体チップ31を含んでウエハ加工用テープT2に保持された半導体ウエハ分割体30Bを形成する。
上記ウエハ薄化工程では、分割溝30aが第2面Wb側に露出するまでウエハを研削する手法(第1の手法)を採用してもよいし、第2面Wb側から分割溝30aに至るより前までウエハを研削し、その後、回転砥石からウエハへの押圧力の作用により分割溝30aと第2面Wbとの間にクラックを生じさせて半導体ウエハ分割体30Bを形成する手法(第2の手法)を採用してもよい。採用される手法に応じて、図3(a)および図3(b)を参照して上述したように形成する分割溝30aの、第1面Waからの深さは、適宜に決定される。
図9では、第1の手法を経た分割溝30a、または、第2の手法を経た分割溝30aおよびこれに連なるクラックについて、模式的に太線で表す。上記半導体装置の製造方法では、工程Aにおいて、半導体ウエハ分割体としてこのようにして作製される半導体ウエハ分割体30Bを半導体ウエハ30Aの代わりに用い、図4から図8を参照して上述した各工程を行ってもよい。
図10(a)および図10(b)は、当該実施形態における工程B、すなわち半導体ウエハ分割体30Bをダイシングテープ付き接着フィルム1に貼り合わせた後に行う第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を表す。
当該実施形態における工程Bでは、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43を、ダイシングテープ付き接着フィルム1の図中下側においてダイシングテープ10に当接させて上昇させ、半導体ウエハ分割体30Bの貼り合わせられたダイシングテープ付き接着フィルム1のダイシングテープ10を、半導体ウエハ分割体30Bの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドする。
このエキスパンドは、ダイシングテープ10において、例えば5~28MPa、好ましくは8~25MPaの範囲内の引張応力が生じる条件で行う。クールエキスパンド工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。クールエキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43を上昇させる速度)は、好ましくは50~400mm/秒であり、高速で行う場合は好ましくは100~400mm/秒である。また、クールエキスパンド工程におけるエキスパンド量は、好ましくは3~20mmである。
このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングテープ付き接着フィルム1の接着フィルム20を小片の接着フィルム21に割断して接着フィルム付き半導体チップ31が得られる。具体的に、クールエキスパンド工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着している接着フィルム20において、半導体ウエハ分割体30Bの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、半導体チップ31間の分割溝30aの図中垂直方向に位置する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生じる引張応力が作用する。その結果、接着フィルム20において半導体チップ31間の分割溝30aの図中垂直方向に位置する箇所が割断されることとなる。
上記半導体装置の製造方法においては、さらなる他の実施形態として、工程Aにおいて用いる半導体ウエハ30Aまたは半導体ウエハ分割体30Bに代えて、以下のようにして作製される半導体ウエハ30Cを用いてもよい。
当該実施形態では、図11(a)および図11(b)に示すように、まず、半導体ウエハWに改質領域30bを形成する。半導体ウエハWは、第1面Waおよび第2面Wbを有する。半導体ウエハWにおける第1面Waの側には各種の半導体素子(図示略)が既に作り込まれ、且つ、当該半導体素子に必要な配線構造等(図示略)が第1面Wa上に既に形成されている。
そして、粘着面T3aを有するウエハ加工用テープT3を半導体ウエハWの第1面Wa側に貼り合わせた後、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、ウエハ内部に集光点の合わせられたレーザー光をウエハ加工用テープT3とは反対の側から半導体ウエハWに対して分割予定ラインに沿って照射して、多光子吸収によるアブレーションに因って半導体ウエハW内に改質領域30bを形成する。改質領域30bは、半導体ウエハWを半導体チップ単位に分離させるための脆弱化領域である。
半導体ウエハにおいてレーザー光照射によって分割予定ライン上に改質領域30bを形成する方法については、例えば特開2002-192370号公報に詳述されているが、当該実施形態におけるレーザー光照射条件は、例えば以下の条件の範囲内で適宜に調整される。
<レーザー光照射条件>
(A)レーザー光
レーザー光源 半導体レーザー励起Nd:YAGレーザー
波長 1064nm
レーザー光スポット断面積 3.14×10-8cm2
発振形態 Qスイッチパルス
繰り返し周波数 100kHz以下
パルス幅 1μs以下
出力 1mJ以下
レーザー光品質 TEM00
偏光特性 直線偏光
(B)集光用レンズ
倍率 100倍以下
NA 0.55
レーザー光波長に対する透過率 100%以下
(C)半導体基板が載置される裁置台の移動速度 280mm/秒以下
次に、図11(c)に示すように、ウエハ加工用テープT3に半導体ウエハWが保持された状態で、半導体ウエハWが所望の厚さに至るまで第2面Wbからの研削加工によって薄化させ、これによって複数の半導体チップ31に個片化可能な半導体ウエハ30Cを形成する(ウエハ薄化工程)。
上記半導体装置の製造方法では、工程Aにおいて、個片化可能は半導体ウエハとしてこのようにして作製される半導体ウエハ30Cを半導体ウエハ30Aの代わりに用い、図4から図8を参照して上述した各工程を行ってもよい。
図12(a)および図12(b)は、当該実施形態における工程B、すなわち半導体ウエハ30Cをダイシングテープ付き接着フィルム1に貼り合わせた後に行う第1エキスパンド工程(クールエキスパンド工程)を表す。
クールエキスパンド工程では、エキスパンド装置の備える中空円柱形状の突き上げ部材43を、ダイシングテープ付き接着フィルム1の図中下側においてダイシングテープ10に当接させて上昇させ、半導体ウエハ30Cの貼り合わせられたダイシングテープ付き接着フィルム1のダイシングテープ10を、半導体ウエハ30Cの径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドする。
このエキスパンドは、ダイシングテープ10において、例えば5~28MPa、好ましくは8~25MPaの範囲内の引張応力が生じる条件で行う。クールエキスパンド工程における温度条件は、例えば0℃以下であり、好ましくは-20~-5℃、より好ましくは-15~-5℃、より好ましくは-15℃である。クールエキスパンド工程におけるエキスパンド速度(突き上げ部材43を上昇させる速度)は、好ましくは50~400mm/秒であり、高速で行う場合は好ましくは100~400mm/秒である。また、クールエキスパンド工程におけるエキスパンド量は、好ましくは3~20mmである。
このようなクールエキスパンド工程により、ダイシングテープ付き接着フィルム1の接着フィルム20を小片の接着フィルム21に割断して接着フィルム付き半導体チップ31が得られる。具体的に、クールエキスパンド工程では、半導体ウエハ30Cにおいて脆弱な改質領域30bにクラックを形成されて半導体チップ31への個片化が生じる。これとともに、クールエキスパンド工程では、エキスパンドされるダイシングテープ10の粘着剤層12に密着している接着フィルム20において、半導体ウエハ30Cの各半導体チップ31が密着している各領域では変形が抑制される一方で、ウエハのクラック形成箇所の図中垂直方向に位置する箇所には、そのような変形抑制作用の生じない状態で、ダイシングテープ10に生じる引張応力が作用する。その結果、接着フィルム20において半導体チップ31間のクラック形成箇所の図中垂直方向に位置する箇所が割断されることとなる。
また、上記半導体装置の製造方法において、ダイシングテープ付き接着フィルム1は、上述のように接着フィルム付き半導体チップを得る用途に使用することができるが、複数の半導体チップを積層して3次元実装をする場合における接着フィルム付き半導体チップを得るための用途にも使用することができる。そのような3次元実装における半導体チップ31間には、接着フィルム21と共にスペーサが介在していてもよいし、スペーサが介在していなくてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における接着フィルムを構成する各成分の組成を表に示す。表において、組成を表す各数値は当該組成物内での相対的な“質量部”である。
実施例1
(ダイシングテープ)
冷却管と、窒素導入管と、温度計と、撹拌装置とを備える反応容器内で、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)100モルと、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)30モルと、アクリロイルモルホリン(AM)30モルと、これらモノマー成分100質量部に対して0.2質量部の重合開始剤としての過酸化ベンゾイルと、重合溶媒としてのトルエンとを含む混合物を、61℃で6時間、窒素雰囲気下で撹拌した(重合反応)。これにより、アクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液を得た。
次に、このアクリル系ポリマーP1を含有するポリマー溶液と、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)と、付加反応触媒としてのジブチル錫ジラウリレートとを含む混合物を、50℃で48時間、空気雰囲気下で撹拌した(付加反応)。当該反応溶液において、MOIの配合量は25モルである。また、当該反応溶液において、ジブチル錫ジラウリレートの配合量は、アクリル系ポリマーP1100質量部に対して0.01質量部である。この付加反応により、側鎖にメタクリレート基を有するアクリル系ポリマーP2(不飽和官能基含有イソシアネート化合物由来の構成単位を含むアクリル系ポリマー)を含有するポリマー溶液を得た。
次に、当該ポリマー溶液に、アクリル系ポリマーP2100質量部に対して1質量部のポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、東ソー株式会社製)と、2質量部の光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」、BASF社製)とを加えて混合し、さらにトルエンを加えて希釈し、粘着剤組成物を得た。
次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して粘着剤組成物を塗布して粘着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について120℃で2分間の加熱による脱溶媒を行い、PETセパレータ上に厚さ5μmの粘着剤層を形成した。
次に、ラミネーターを使用して、この粘着剤層の露出面に基材としてのプラスチックフィルムA(アイオノマー基材(12.5μm)/ポリウレタン基材(75μm)/アイオノマー基材(12.5μm)の三層構成、基材厚さ:100μm)を室温で貼り合わせた。この貼り合わせ体について、その後に50℃で24時間の保存を行った。以上のようにして実施例1のダイシングテープ(厚さ105μm)を作製した。
(背面密着フィルムの作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「JER YL980」、三菱ケミカル株式会社製)29質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「KI-3000-4」、日鉄ケミカル株式会社製)44質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)77質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)206質量部と、熱硬化触媒C(商品名「キュアゾール 2PHZ」、四国化成工業株式会社製)1質量部と、可視光吸収紺系染料(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製)13質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、そして、直径315mmの円盤状に打ち抜きを行った。以上のようにして、PETセパレータ上に厚さ15μmの実施例1の半導体背面密着フィルム(熱硬化性の半導体背面密着フィルム)を作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
実施例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に実施例1の半導体背面密着フィルムをラミネータを用いて貼り合わせ、実施例1のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
実施例2
(背面密着フィルムの作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「JER YL980」、三菱ケミカル株式会社製)5質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「KI-3000-4」、日鉄ケミカル株式会社製)7質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)13質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)103質量部と、熱硬化触媒C(商品名「キュアゾール 2PHZ」、四国化成工業株式会社製)0.5質量部と、可視光吸収紺系染料(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製)6質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、そして、直径315mmの円盤状に打ち抜きを行った。以上のようにして、PETセパレータ上に厚さ15μmの実施例2の半導体背面密着フィルム(熱硬化性の半導体背面密着フィルム)を作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
実施例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に実施例2の半導体背面密着フィルムをラミネータを用いて貼り合わせ、実施例2のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
実施例3
(レーザーマーク層の作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「JER YL980」、三菱ケミカル株式会社製)29質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「KI-3000-4」、日鉄ケミカル株式会社製)44質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)77質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)206質量部と、熱硬化触媒E(商品名「TPP」、北興化学株式会社製)10質量部と、可視光吸収紺系染料(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製)13質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、PETセパレータ上に厚さ7μmの実施例3のレーザーマーク層(熱硬化済み層)を作製した。
(背面密着層の作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)213質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)254質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、PETセパレータ上に厚さ8μmの実施例3の背面密着層を作製した。
上記のようにして作製したPETセパレータ上のレーザーマーク層とPETセパレータ上の背面密着層とをラミネーターを使用して貼り合わせた。具体的には、温度100℃および圧力0.6MPaの条件で、レーザーマーク層および背面密着層の露出面同士を貼り合わせ、そして、直径315mmの円盤状に打ち抜きを行った。以上のようにして実施例3の背面密着フィルムを作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
実施例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、実施例3の半導体背面密着フィルムのレーザーマーク層面をラミネータを用いて貼り合わせ、実施例3のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
実施例4
(背面密着層の作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)25質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)106質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、PETセパレータ上に厚さ8μmの実施例4の背面密着層を作製した。
実施例3のレーザーマーク層と上記のようにして作製したPETセパレータ上の実施例4の背面密着層とをラミネーターを使用して貼り合わせた。具体的には、温度100℃および圧力0.6MPaの条件で、レーザーマーク層および背面密着層の露出面同士を貼り合わせ、そして、直径315mmの円盤状に打ち抜きを行った。以上のようにして実施例4の背面密着フィルムを作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
実施例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、実施例4の半導体背面密着フィルムのレーザーマーク層面をラミネータを用いて貼り合わせ、実施例4のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
実施例5
(ダイシングテープ)
基材としてプラスチックフィルムB(アイオノマー基材(20μm)/ポリウレタン基材(60μm)の二層構成、基材厚さ:80μm)を用い、粘着剤層の露出面に上記プラスチックフィルムBのポリウレタン基材面を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして実施例5のダイシングテープ(厚さ85μm)を作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
実施例5のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、実施例1の半導体背面密着フィルムをラミネータを用いて貼り合わせ、実施例5のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
実施例6
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
実施例5のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、実施例4の半導体背面密着フィルムのレーザーマーク層面をラミネータを用いて貼り合わせ、実施例6のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
比較例1
(ダイシングテープ)
基材としてプラスチックフィルムC(EVA基材、基材厚さ:125μm)を用い、粘着剤層の露出面に上記プラスチックフィルムCを貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして比較例1のダイシングテープ(厚さ130μm)を作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
比較例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、実施例1の半導体背面密着フィルムをラミネータを用いて貼り合わせ、比較例1のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
比較例2
(背面密着フィルムの作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、エポキシ樹脂E1(商品名「JER YL980」、三菱ケミカル株式会社製)2質量部と、エポキシ樹脂E2(商品名「KI-3000-4」、日鉄ケミカル株式会社製)3質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)6質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)92質量部と、熱硬化触媒C(商品名「キュアゾール 2PHZ」、四国化成工業株式会社製)0.4質量部と、可視光吸収紺系染料(商品名「OIL BLACK BS」、オリエント化学工業株式会社製)6質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、そして、直径315mmの円盤状に打ち抜きを行った。以上のようにして、PETセパレータ上に厚さ15μmの比較例2の半導体背面密着フィルム(熱硬化性の半導体背面密着フィルム)を作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
比較例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、比較例2の半導体背面密着フィルムをラミネータを用いて貼り合わせ、比較例2のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
比較例3
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
比較例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、実施例3の半導体背面密着フィルムのレーザーマーク層面をラミネータを用いて貼り合わせ、比較例3のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
比較例4
(背面密着層の作製)
アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」、ガラス転移温度:4℃、ナガセケムテックス株式会社製)100質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH7851-SS」、明和化成株式会社製)11質量部と、シリカフィラー(商品名「SO-25R」、平均粒径:0.5μm、株式会社アドマテックス製)95質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、固形分濃度36質量%の樹脂組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して当該樹脂組成物を塗布して樹脂組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱を行って脱溶媒させ、PETセパレータ上に厚さ8μmの比較例4の背面密着層を作製した。
実施例3のレーザーマーク層と上記のようにして作製したPETセパレータ上の比較例4の背面密着層とをラミネーターを使用して貼り合わせた。具体的には、温度100℃および圧力0.6MPaの条件で、レーザーマーク層および背面密着層の露出面同士を貼り合わせ、そして、直径315mmの円盤状に打ち抜きを行った。以上のようにして比較例4の背面密着フィルムを作製した。
(ダイシングテープ付き接着フィルムの作製)
比較例1のダイシングテープからPETセパレータを剥離し、露出した粘着剤層に、比較例4の半導体背面密着フィルムのレーザーマーク層面をラミネータを用いて貼り合わせ、比較例4のダイシングテープ付き接着フィルムを作製した。
<評価>
実施例および比較例で得られたダイシングテープ、半導体背面密着フィルム、およびダイシングテープ付き接着フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表に示す。
(1)粘着剤層のガラス転移温度
実施例および比較例で作製したダイシングテープから粘着剤層を約2mg削ぎ落として測定サンプルを得、当該測定サンプルについて、示差走査熱量計「DSCQ2000」(TA Instruments社製)を用いて、-50℃から50℃までの温度範囲において昇温速度2℃/minで昇温させてDSC測定を行って熱量曲線を作成し、得られた熱量曲線における変曲点をガラス転移温度(Tg)として得た。
(2)接着フィルムのシリコンに対する剥離力(対シリコン剥離力)
実施例および比較例で得られた接着フィルム(半導体背面密着フィルム)の一方の面(二層構成の場合はレーザーマーク層側の面)のセパレータを剥がし、粘着テープ(商品名「BT-315」、日東電工株式会社製)の粘着面を貼り合わせ、幅10mm、長さ150mmに切り取って試験片を得た。一方、6インチのシリコンウエハの鏡面側をトルエンおよびエタノールで拭き、その後70℃のホットプレート上に、鏡面側が上となるように載置した。そして、上記試験片の接着フィルム面(二層構成の場合は背面密着層側の面)を上記シリコンウエハの鏡面側に貼り合わせ、2分間放置した。貼り合わせは、2kgのハンドローラーを1往復させる圧着作業によって行った。その後、ホットプレートからシリコンウエハおよび試験片の積層体を取り外し、常温に戻るまで30分間空冷した。その後、引張試験機(商品名「オートグラフAG-X」、株式会社島津製作所製)を使用して、25℃、剥離角度180°、および引張速度300mm/分の条件で当該試験片について剥離試験を行い、測定開始から10mmを始点、100mmを終点とする範囲の値の平均値を、接着フィルムのシリコンに対する剥離力として得た。
(3)破断突き上げ量
ウエハマウンター「MA3000III」(日東精機株式会社製)を用いて、2000番仕上げで研削された、厚さ500μmおよび直径300mmの円盤状シリコンに、実施例および比較例で得られたダイシングテープ付き接着フィルムの接着フィルム面を貼り合わせた。貼り合わせは、テーブル温度70℃、貼り付け圧力0.15MPaの条件下で行った。その後、ダイセパレーター(商品名「DDS2300」、株式会社ディスコ製)を用いて、-15℃の温度条件下で2分間放置した後、エキスパンド速度400mm/sの条件で、ダイセパレーターの備える中空円柱形状の突き上げ部材を、円盤状シリコンを備える領域よりも外側の領域において、ダイシングテープ付き接着フィルムのダイシングテープ側に当接させて上昇させ、ダイシングテープを径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドした。そして、ダイシングテープが破断する際の突き上げ部材の上昇量を破断突き上げ量として測定した。
(4)接着フィルム剥がれ
上記破断突き上げ量の評価において、エキスパンドを行った際に接着フィルムが剥がれなかった場合を○、剥がれが生じた場合を×として評価した。
Figure 0007381315000001
Figure 0007381315000002
1 ダイシングテープ付き接着フィルム
10 ダイシングテープ
11 基材
12 粘着剤層
20,21 接着フィルム
20a 接着フィルム(半導体背面密着フィルム)
21a 背面密着層
22a レーザーマーク層
W,30A,30C 半導体ウエハ
30B 半導体ウエハ分割体
30a 分割溝
30b 改質領域
31 半導体チップ

Claims (5)

  1. 基材と粘着剤層とを含む積層構造を有するダイシングテープと、
    前記ダイシングテープにおける前記粘着剤層に剥離可能に密着している接着フィルムとを備え、
    前記接着フィルムのシリコンに対する、温度25℃、剥離角度180°の条件での剥離試験における剥離力が5N/10mm以上であり、
    下記破断突き上げ試験により測定される破断突き上げ量が10mm以上である、ダイシングテープ付き接着フィルム。
    破断突き上げ試験:厚さ500μmの円盤状シリコンを接着フィルム上に貼り合わせ、エキスパンド装置を用い、温度-15℃、速度400mm/sの条件で、中空円柱形状の突き上げ部材を、円盤状シリコンを備える領域よりも外側の領域において、ダイシングテープ付き接着フィルムのダイシングテープ側に当接させて上昇させ、ダイシングテープを径方向および周方向を含む二次元方向に引き伸ばすようにエキスパンドする。そして、ダイシングテープが破断する際の突き上げ部材の上昇量を破断突き上げ量として測定する。
  2. 前記基材がポリウレタン系基材を含む、請求項1に記載のダイシングテープ付き接着フィルム。
  3. 前記粘着剤層は、放射線硬化型のアクリル系粘着剤層であり、ガラス転移温度が-20℃以下である、請求項1または2に記載のダイシングテープ付き接着フィルム。
  4. 前記基材と前記粘着剤層の総厚さが80μm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のダイシングテープ付き接着フィルム。
  5. 前記基材はポリウレタン系基材を含む多層構成である、請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングテープ付き接着フィルム。
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