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JP7378362B2 - ブレーキ装置 - Google Patents

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JP7378362B2 JP2020120784A JP2020120784A JP7378362B2 JP 7378362 B2 JP7378362 B2 JP 7378362B2 JP 2020120784 A JP2020120784 A JP 2020120784A JP 2020120784 A JP2020120784 A JP 2020120784A JP 7378362 B2 JP7378362 B2 JP 7378362B2
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Description

本開示は、ブレーキ装置に関する。
従来、鉄道車両において、列車の減速と停止の保持とに使用されるブレーキ装置には、空圧式のブレーキ装置が主に採用されてきた。空圧式のブレーキ装置は、ブレーキ動作に要求される比較的大きな荷重を発生させることが比較的容易である反面、動力源となる圧縮空気を生成して供給するためのコンプレッサ及びエアタンクといった付帯設備を必要とし、部品点数、車両重量及びメンテナンス性といった点で欠点を有する。
そのため、空圧式のブレーキ装置に代わるブレーキシステムが求められており、ブレーキシステムの一つとして、電動アクチュエータを動力源とする電気式機械ブレーキ装置が検討されている。空圧式のブレーキ装置は、比較的大きな推力を発生させることと比較的高速に動作することとを両立することが比較的簡単であり、比較的大きなブレーキ力を応答よく発生させることができる。
駆動力源に電動アクチュエータが用いられる場合、必要なブレーキ力を得るためには減速機を用いる必要があり、動力の増幅の代償として応答性を犠牲にせざるを得ず、高い応答性を実現するためには出力の大きい大型のアクチュエータが必要となる。そのため、従来の電気式機械ブレーキ装置は、重量及び寸法の制約を満足することが困難である。すなわち、電動アクチュエータを動力源とする電気式機械ブレーキ装置については、出力が比較的小さいアクチュエータを駆動力源とし、比較的大きな推力を発生させることと比較的高速に動作することとを両立する構造を実現することが課題である。
特許文献1は、ブレーキが作用する方向に予め付勢されたばねとアクチュエータとを用いてアクチュエータに要求される発生力を削減する技術を開示している。特許文献2は、ブレーキパッドと作用点で接続されている梃子に対し、弾性エネルギーが予め蓄勢された弾性体が接する力点の位置を可変とすることで、可変ブレーキ力を得る技術を開示している。
特開2010-25313号公報 特許第2675526号公報
特許文献1が開示している技術は、ブレーキ容量が比較的小さいLRV(Light Rail Vehicle)を対象にしており、当該技術を在来線車両に適用した場合、比較的大出力のアクチュエータが必要となり、重量及び寸法に関して不利になる。特許文献2が開示している技術では、梃子上を力点が移動するので、繰返しの移動により移動面が摩耗して変形するおそれがあり、耐久性に懸念が生じる。特許文献2が開示している技術には、車輪及びブレーキキャリパの摩耗によりブレーキ位置が変化するという課題と、ばね特性が経時変化するという課題もある。
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、比較的小さな出力の動力源で必要なブレーキ力と応答性とを両立するブレーキ装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るブレーキ装置は、押付け力を回転体に与えてブレーキ力を発生させるブレーキパッドと、ブレーキパッドに力を伝達する力学系と、力学系に接続されていて予め蓄勢されている第1の弾性体と、第1の弾性体に回動可能に接続されている第1のリンクと、第1のリンクを回動させることによって第1の弾性体が生成する蓄勢力の向きを力学系に対して変化させる駆動部とを有する。第1のリンクの一方の端部は、第1のリンクが回動可能となる状態で第1の固定部に支持されている。第1の弾性体の一方の端部は、第1の弾性体が回動可能となる状態で第1のリンクの他方の端部に支持されている。第1の弾性体の他方の端部は、第1の弾性体が回動可能となる状態で力学系の第1の部位に支持されている。力学系は、回動可能となる状態で第2の固定部に支持されている第2のリンクを有する。力学系の第1の部位は、第2のリンクの一方の端部である。
本開示に係るブレーキ装置は、比較的小さな出力の動力源で必要なブレーキ力と応答性とを両立することができるという効果を奏する。
実施の形態1に係るブレーキ装置を模式的に示す図 実施の形態2に係るブレーキ装置を模式的に示す第1図 実施の形態2に係るブレーキ装置を模式的に示す第2図 実施の形態3に係るブレーキ装置を模式的に示す図 実施の形態4に係るブレーキ装置を模式的に示す図 実施の形態6に係るブレーキ装置を模式的に示す図 実施の形態1に係るブレーキ装置が有する駆動部の少なくとも一部がプロセッサによって実現される場合のプロセッサを示す図 実施の形態1に係るブレーキ装置が有する駆動部の少なくとも一部が処理回路によって実現される場合の処理回路を示す図
以下に、実施の形態に係るブレーキ装置を図面に基づいて詳細に説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るブレーキ装置1を模式的に示す図である。ブレーキ装置1は、押付け力を回転体21に与えてブレーキ力を発生させるブレーキパッド2を有する。ブレーキパッド2は、ブレーキ緩解時に回転体21から離れる。図1には、回転体21も示されている。例えば、回転体21は鉄道車両における車輪である。
ブレーキ装置1は、ブレーキパッド2に力を伝達する力学系3と、力学系3に接続されていて予め蓄勢されている第1の弾性体4とを更に有する。第1の弾性体4は、一方の端部4aと他方の端部4bとの間に引張力又は圧縮力という弾性力を生成する。弾性力は、蓄勢力である。ブレーキ装置1は、第1の弾性体4に回動可能に接続されている第1のリンク5と、第1のリンク5を回動させることによって第1の弾性体4が生成する蓄勢力の向きを力学系3に対して変化させる駆動部6とを更に有する。駆動部6は、第1の弾性体4の向きを変化させる機能を有する。例えば、駆動部6はモータを有する。
ブレーキ装置1は、第1のリンク5の一方の端部と第1の固定部22とを接続する第1の回動支持部7を更に有する。第1の回動支持部7は、第1の固定部22に取り付けられている。図1には、第1の固定部22も示されている。実施の形態1では、第1の固定部22の第1の回動支持部7が取り付けられている部位は平面である。例えば、第1の固定部22は鉄道車両における第1の固定部である。第1の回動支持部7は、第1のリンク5を回動可能とさせるための機能を有する。つまり、第1のリンク5の一方の端部は、第1のリンク5が回動可能となる状態で第1の回動支持部7を介して第1の固定部22に支持されている。第1のリンク5は、駆動部6によって駆動されて回動する。
第1の弾性体4の一方の端部4aは、第1の弾性体4が回動可能となる状態で第1のリンク5の他方の端部に支持されている。第1の弾性体4の他方の端部4bは、第1の弾性体4が回動可能となる状態で力学系3の第1の部位に支持されている。ブレーキ装置1は、第1の弾性体4の他方の端部4bと力学系3の第1の部位とを接続する第2の回動支持部8を更に有する。第2の回動支持部8は、第1の弾性体4を回動可能とさせるための機能を有する。つまり、第1の弾性体4の他方の端部4bは、第1の弾性体4が回動可能となる状態で第2の回動支持部8を介して力学系3の第1の部位に支持されている。
力学系3は、回動可能となる状態で第2の固定部23に支持されている第2のリンク9を有する。力学系3の第1の部位は、第2のリンク9の一方の端部である。図1には、第2の固定部23も示されている。例えば、第2の固定部23は鉄道車両における第2の固定部である。力学系3は、第2のリンク9の他方の端部とブレーキパッド2とを接続する第3のリンク10を更に有する。ブレーキ装置1は、一方の端部が第2のリンク9の他方の端部に接続されていて他方の端部が第3の固定部24に接続されている第2の弾性体11を更に有する。図1には、第3の固定部24も示されている。例えば、第3の固定部24は鉄道車両における第3の固定部である。
第1の弾性体4の他方の端部4bがブレーキパッド2と力学的に接続されているため、ブレーキパッド2に変位が生じると第1の弾性体4の他方の端部4bにも変位が生じる。当該変位のベクトル方向が変位方向と定義されると共に、変位方向に直交する方向が法線方向と定義された場合、第1の弾性体4の一方の端部4aと他方の端部4bとを結ぶ直線の向きを変位方向と法線方向との間で変化させれば、弾性力の方向は、第1の弾性体4の他方の端部4bが動力をブレーキパッド2に伝達する方向である変位方向に対して変化する。そのため、当該直線の向きを変位方向と法線方向との間で連続的に変化させれば、第1の弾性体4の他方の端部4bと力学的に接続されているブレーキパッド2が生ずる押付け力が連続的に変化し、その結果、ブレーキ力を連続的に調節することが可能となる。
第1の固定部22の第1の回動支持部7が取り付けられている平面に対する第1のリンク5の角度が法線方向を超えるまで第1のリンク5を第2の固定部23の側に回動させた場合、ブレーキパッド2には回転体21を押付ける向きと逆向きの力が与えられる。そのため、上述の場合、ブレーキパッド2は回転体21から離れ、ブレーキパッド2と回転体21との間に隙間が生成される。隙間の大きさは、ブレーキ装置1が使用される状況によって異なり、ブレーキ装置1が鉄道車両用のブレーキ装置である場合、例えば10mmである。
駆動部6は、第1のリンク5を回動させる動力としてのみ用いられ、ブレーキパッド2を回転体21に押し付けるための押付け力を直接的に生み出さない。そのため、実施の形態1に係るブレーキ装置1は、アクチュエータを押付け力の動力として直接用いる特許文献1が開示している従来の技術に比べ、アクチュエータに対応する駆動部6の寸法を小さくすることができると共に、駆動部6の重量を低減することができる。特許文献1が開示している方法は、動力を直動運動に変換する手段を必要とするが、ブレーキ装置1は、例えばごみを噛むことで固渋の原因となる直動運動を排することができる。
特許文献2が開示している方法では、予め付勢された弾性体が梃子に接触しながら転動することで押付け力を変化させるため、梃子と転動体とのうちの一方又は双方が摩耗し、梃子と転動体とのうちの一方又は双方の特性が時間の経過と共に変化することが懸念される。それに対し、実施の形態1に係るブレーキ装置1の機構がリンク機構であるため、ブレーキ装置1の特性が時間の経過と共に変化することは抑制される。
上述のように、実施の形態1に係るブレーキ装置1では、押付け力を回転体21に与えてブレーキ力を発生させるブレーキパッド2に力を伝達する力学系3に予め蓄勢されている第1の弾性体4が接続されており、駆動部6が、第1のリンク5を回動させることによって第1の弾性体4が生成する蓄勢力の向きを力学系3に対して変化させる。これにより、ブレーキ装置1は、ブレーキパッド2が回転体21に与える押付け力を調整する。
駆動部6は、第1のリンク5を回動させる動力源として用いられ、ブレーキパッド2を回転体21に押し付けるための押付け力を直接的に生み出さない。駆動部6は、第1のリンク5を回動させることによって第1の弾性体4が生成する蓄勢力の向きを力学系3に対して変化させる。実施の形態1に係るブレーキ装置1の機構がリンク機構であるので、駆動部6の動作によって必要なブレーキ力と応答性とが得られる。したがって、ブレーキ装置1は、比較的小さな出力の動力源で必要なブレーキ力と応答性とを両立することができる。更に言うと、ブレーキ装置1は、鉄道用ブレーキにおいて必要とされるブレーキの機能を実現することができる。
実施の形態2.
図2は、実施の形態2に係るブレーキ装置1Aを模式的に示す第1図である。図3は、実施の形態2に係るブレーキ装置1Aを模式的に示す第2図である。ブレーキ装置1Aの構成は、実施の形態1に係るブレーキ装置1の構成と同じである。すなわち、ブレーキ装置1Aは、ブレーキパッド2、力学系3、第1の弾性体4、第1のリンク5、駆動部6、第1の回動支持部7、第2の回動支持部8、第2のリンク9、第3のリンク10及び第2の弾性体11を有する。図2及び図3には、説明の便宜上、駆動部6、第2のリンク9、第3のリンク10及び第2の弾性体11は、示されていない。図2及び図3には、回転体21及び第1の固定部22も示されている。
図2は、ブレーキパッド2と回転体21との間に隙間が生成されていない状態であるブレーキ作動状態を示している。図3は、ブレーキパッド2と回転体21との間に隙間が生成されている状態である緩解を示している。第1の回動支持部7の軸中心と第1の弾性体4の他方の端部4bの軸中心とが可動方向に異なっている場合、第1のリンク5にはトルクが生じるため、駆動部6には当該トルクに拮抗するだけのトルクを生成することが求められる。第1のリンク5に生じるトルクを活用すれば、ブレーキ装置1Aは、例えば停電により動力を喪失した場合、自発的に第1のリンク5を回動させることができる。
第1の回動支持部7の軸中心と第2の回動支持部8の軸中心との位置の関係が、押付け力を増加させる向きに第1のリンク5に対してトルクが生じるように常に保たれていれば、具体的には第2の回動支持部8の回転中心が第1の回動支持部7の回転中心に対して常に一方向に偏心していれば、ブレーキ装置1Aが動力を喪失した場合、第1のリンク5は、最大押付け力が生じる角度まで自動的に回動することとなり、例えば鉄道用ブレーキに求められるフェールセーフ性に合致した機能が得られる。
緩解を含むブレーキ状態を保持するためには、駆動部6は、第1のリンク5に影響を与えるトルクに拮抗するだけのトルクを生成し続ける必要があり、その際の電力消費が問題となる。電力消費の観点からは、第1の回動支持部7の軸中心と第2の回動支持部8の軸中心とが常に近接していることが望ましいが、緩解時とブレーキ時とではブレーキパッド2の位置が異なり、第2の回動支持部8の位置も異なるため、すべての状態で第1の回動支持部7の軸中心と第2の回動支持部8の軸中心とが近接することを維持することは不可能である。
鉄道用ブレーキの使われ方に着目すると、鉄道車両が減速を目的に機械ブレーキを作動させる時間は緩解及び停車状態の時間に比べて十分短いと考えられるため、緩解時及び停車時に消費電力が小さくなるような構成が合理的であると考えられる。上述のように、フェールセーフ性が生ずるように第1の回動支持部7の軸中心と第2の回動支持部8の軸中心との位置の関係が保たれるとすると、停車時には最大押付け力が生ずる位置に第1のリンク5を移動させれば、状態が自動的に保持されるため、電力消費は発生しない。
他方、緩解時には、駆動部6が第1のリンク5の角度を保持する必要があるため、消費電力を低減させることが重要となる。緩解時には実施の形態1において定義された法線方向を超えて第1のリンク5を回動させることにより、ブレーキパッド2を回転体21である車輪から離すことが可能となる。実施の形態2に係るブレーキ装置1Aは、ブレーキ緩解時にブレーキパッド2が回転体21から離れた場合、第1の回動支持部7を第2の回動支持部8に近づける。そのため、ブレーキ装置1Aは、第1のリンク5が回動する力を小さくすることができ、ひいては当該力をフェールセーフ性を維持するための必要最小限にすることができ、緩解保持のための消費電力を低減することができる。
実施の形態3.
図4は、実施の形態3に係るブレーキ装置1Bを模式的に示す図である。ブレーキ装置1Bの構成は、実施の形態1に係るブレーキ装置1の構成と同じである。すなわち、ブレーキ装置1Bは、ブレーキパッド2、力学系3、第1の弾性体4、第1のリンク5、駆動部6、第1の回動支持部7、第2の回動支持部8、第2のリンク9、第3のリンク10及び第2の弾性体11を有する。図4には、説明の便宜上、第3のリンク10及び第2の弾性体11は、示されていない。図4には、回転体21、第1の固定部22及び第2の固定部23も示されている。
第1の弾性体4の他方の端部4bは、第1の弾性体4が回動することができる状態で、第2の固定部23により回動可能に支持されている第2のリンク9の一方の端部に接続されている。第1の弾性体4と第2のリンク9との組み合わせにより、第1のリンク5の任意の角度において、第2のリンク9の回動運動を助長する方向にトルクが生成される。すなわち、いわゆる負ばね効果が生じる。図4の矢印は、負ばね効果を示している。ただし、負ばね効果には向きはない。なお、第1のリンク5の角度は第1の固定部22の第1の回動支持部7が取り付けられている平面に対する第1のリンク5の角度であって、第1のリンク5の任意の角度は駆動部6によって固定されている角度である。
第2のリンク9がブレーキパッド2と力学的に接続されているため、ブレーキパッド2の位置が変化すると、押付け力も変化する。ブレーキパッド2の位置が変化すると押付け力が変化する特性は、力の位置依存性と呼ばれる。緩解からブレーキ状態に移行する場合とブレーキ状態から緩解に移行する場合とにおいて、第1のリンク5の角度が異なる現象が生じる。当該現象は、ヒステリシスと呼ばれる。移行時のブレーキパッド2の運動は不安定であり、特に状態が緩解からブレーキ状態に移行する場合、ブレーキパッド2は回転体21に衝撃的に接触する。負ばね効果に起因する上述の現象は、追加の機構又は安定化制御則により解決することが可能であると考えられる。安定化制御則の一例として、第2のリンク9の角度を何らかの手段で検出し、当該角度が安定するように第1のリンク5の角度を制御する、倒立振子のような制御則が挙げられる。
実施の形態4.
図5は、実施の形態4に係るブレーキ装置1Cを模式的に示す図である。ブレーキ装置1Cの構成は、実施の形態1に係るブレーキ装置1の構成と同じである。すなわち、ブレーキ装置1Cは、ブレーキパッド2、力学系3、第1の弾性体4、第1のリンク5、駆動部6、第1の回動支持部7、第2の回動支持部8、第2のリンク9、第3のリンク10及び第2の弾性体11を有する。図5には、説明の便宜上、第3のリンク10は示されていない。図5には、回転体21、第1の固定部22、第2の固定部23及び第3の固定部24も示されている。図5の矢印は、負ばね効果を示している。
ブレーキ装置1Cは、一方の端部が第2のリンク9に接続されていて他方の端部が第3の固定部24に接続されている第2の弾性体11を有する。第2の弾性体11は、負ばね効果を打ち消す又は低減する機能を有しており、力の位置依存性と、ヒステリシスと、ブレーキパッド2の衝撃的接触の緩和との一部又は全部に寄与する。つまり、第2の弾性体11は、負ばね効果を相殺する機能を有する。負ばね効果と第2の弾性体が設けられ、これらを相殺することで力が位置によらずに安定する特性は、車輪位置の移動に対するロバスト性が求められる踏面ブレーキにおいて、特に重要な性質である。なお、負ばね効果は、ブレーキパッド2の変位を助長する方向に力を生成する効果である。
負ばね効果は第1のリンク5の角度にも依存するため、第2の弾性体11は、第1のリンク5のすべての角度に対して負ばね効果を相殺することは不可能である。図5では、第1のリンク5の角度はθで示されている。第1のリンク5のばね定数の決定法の一例として、最弱ブレーキ状態で負ばね効果を相殺するように設計する方法が挙げられる。最弱ブレーキ状態は、緩解への移行直前の状態である。
力の位置依存性はブレーキパッド2の位置が変化した際の押付け力に生じる誤差であるととらえることができるため、押付け力の精度の観点からは、最弱ブレーキ状態での誤差を最も小さくすべきと考えるのが自然であり、この場合、ブレーキ力の増加に伴って位置依存性に起因する誤差も増加する。第2の弾性体11のばね定数を、当該誤差を考慮した値に設定すれば、緩解とブレーキ状態とを行き来する際のヒステリシスは完全に消失し、移行時のブレーキパッド2の運動は安定で準静的な運動となる。その結果、ブレーキパッド2と回転体21とが衝撃的に接触することを回避することができる。なお、第2の弾性体11は、力学系3における可動部であれば、第2のリンク9以外の可動部に接続されていてもよい。
実施の形態5.
実施の形態1から4に係るブレーキ装置1,1A,1B,1Cでは、第1のリンク5の角度の変化に伴い、ブレーキパッド2が生成する押付け力は変化する。したがって、ブレーキ力と第1のリンク5の角度との対応関係を実験的に予め調べて関数化しておけば、必要なブレーキ力に対して逆関数を求めることで第1のリンク5の設定すべき角度を算出することができる。
駆動部6は、第1のリンク5の角度の制御のみを行えばよく、例えば力制御といった機構ダイナミクスの計算を行う必要はない。その結果、ブレーキ装置1,1A,1B,1Cにおいて、例えば振動外乱といった影響を受けにくくロバストな制御系の構築が可能となる。また、押付け力を直接的に測定するために力センサを力伝達経路中に配置する必要がないため、ブレーキ装置1,1A,1B,1Cの構造的な信頼性を低下させる心配はない。
実施の形態6.
図6は、実施の形態6に係るブレーキ装置1Dを模式的に示す図である。ブレーキ装置1Dは、実施の形態1に係るブレーキ装置1が有するすべての構成要素のうちの第3のリンク10以外の構成要素を有する。ブレーキ装置1Dは、第2のリンク9の他方の端部とブレーキパッド2とを接続する隙間調節機構12を更に有する。ブレーキ装置1Dは、第2のリンク9及び隙間調節機構12を有する力学系3Dを有する。図6の矢印は、負ばね効果を示している。実施の形態6では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
ブレーキパッド2が回転体21を押し当てる位置は、ブレーキパッド2及び回転体21の摩耗に伴って変化する。隙間調節機構12は、摩耗によって生じるブレーキパッド2の変位を補償する。隙間調節機構12は、ラチェット歯車により隙間を調節する自動隙間調整器であってもよい。ブレーキ装置1Dは、隙間調節機構12によって、摩耗量によらず、緩解時にブレーキパッド2と回転体21との間に生成される隙間を常に一定に保つことができると共に、ブレーキ時の押付け力を一定に保つことができる。
実施の形態4で述べたように第2の弾性体11によって負ばね効果を相殺することで力の位置依存性を除去することが可能となるが、負ばね効果の非線形性及び負ばね効果の第1のリンク5の角度への依存性により、負ばね効果を完全に相殺することは不可能である。特にブレーキパッド2が比較的大きく変位した場合、ブレーキ力の誤差が顕著になる。隙間調節機構12は、ブレーキパッド2の変位量によらずにブレーキ力を補償することができる。
一般に、隙間調節機構は、緩解時に隙間調節動作を行うため、ブレーキパッド2の位置の動的変化に対応することはできない。隙間調節機構12は、摩耗によるブレーキパッド2の位置の静的変化に対する補償のみに使用される。回転体21を支持する装置の弾性に起因するブレーキパッド2の位置の動的変化と隙間調節機構12の誤差とは、第2の弾性体11による負ばね効果の相殺により補償される。隙間調節機構12の誤差は、ラチェットが用いられた場合、分解能に起因する。
図7は、実施の形態1に係るブレーキ装置1が有する駆動部6の少なくとも一部がプロセッサ71によって実現される場合のプロセッサ71を示す図である。つまり、駆動部6の少なくともの一部の機能は、メモリ72に格納されるプログラムを実行するプロセッサ71によって実現されてもよい。プロセッサ71は、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、又はDSP(Digital Signal Processor)である。図7には、メモリ72も示されている。
駆動部6の少なくとも一部の機能がプロセッサ71によって実現される場合、当該少なくとも一部の機能は、プロセッサ71と、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェア及びファームウェアとの組み合わせとにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ72に格納される。プロセッサ71は、メモリ72に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、駆動部6の少なくとも一部の機能を実現する。
駆動部6の少なくとも一部の機能がプロセッサ71によって実現される場合、ブレーキ装置1は、駆動部6によって実行されるステップの少なくとも一部が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ72を有する。メモリ72に格納されるプログラムは、駆動部6の少なくとも一部をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
メモリ72は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性若しくは揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク又はDVD(Digital Versatile Disk)等である。
図8は、実施の形態1に係るブレーキ装置1が有する駆動部6の少なくとも一部が処理回路81によって実現される場合の処理回路81を示す図である。つまり、駆動部6の少なくとも一部は、処理回路81によって実現されてもよい。処理回路81は、専用のハードウェアである。処理回路81は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。駆動部6の一部は、残部とは別個の専用のハードウェアであってもよい。
駆動部6の複数の機能について、当該複数の機能の一部がソフトウェア又はファームウェアで実現され、当該複数の機能の残部が専用のハードウェアで実現されてもよい。このように、駆動部6の複数の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって実現することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略又は変更することも可能である。
1,1A,1B,1C,1D ブレーキ装置、2 ブレーキパッド、3,3D 力学系、4 第1の弾性体、4a 第1の弾性体の一方の端部、4b 第1の弾性体の他方の端部、5 第1のリンク、6 駆動部、7 第1の回動支持部、8 第2の回動支持部、9 第2のリンク、10 第3のリンク、11 第2の弾性体、12 隙間調節機構、21 回転体、22 第1の固定部、23 第2の固定部、24 第3の固定部、71 プロセッサ、72 メモリ、81 処理回路。

Claims (4)

  1. 押付け力を回転体に与えてブレーキ力を発生させるブレーキパッドと、
    前記ブレーキパッドに力を伝達する力学系と、
    前記力学系に接続されていて予め蓄勢されている第1の弾性体と、
    前記第1の弾性体に回動可能に接続されている第1のリンクと、
    前記第1のリンクを回動させることによって前記第1の弾性体が生成する蓄勢力の向きを前記力学系に対して変化させる駆動部と、を備え、
    前記第1のリンクの一方の端部は、前記第1のリンクが回動可能となる状態で第1の固定部に支持されており、
    前記第1の弾性体の一方の端部は、前記第1の弾性体が回動可能となる状態で前記第1のリンクの他方の端部に支持されており、
    前記第1の弾性体の他方の端部は、前記第1の弾性体が回動可能となる状態で前記力学系の第1の部位に支持されており、
    前記力学系は、回動可能となる状態で第2の固定部に支持されている第2のリンクを有し、
    前記力学系の前記第1の部位は、前記第2のリンクの一方の端部である
    ことを特徴とするブレーキ装置。
  2. 前記第1のリンクの前記一方の端部と前記第1の固定部とを接続すると共に前記第1のリンクを回動可能とさせるための第1の回動支持部と、
    前記第1の弾性体の前記他方の端部と前記力学系の前記第1の部位とを接続すると共に前記第1の弾性体を回動可能とさせるための第2の回動支持部とを更に備え、
    前記第2の回動支持部の回転中心は、前記第1の回動支持部の回転中心に対して常に一方向に偏心している
    ことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
  3. 一方の端部が前記第2のリンクに接続されていて他方の端部が第3の固定部に接続されている第2の弾性体
    を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ装置。
  4. 前記第2の弾性体は、前記ブレーキパッドの変位を助長する方向に力を生成する効果を相殺する機能を有する
    ことを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
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