JP7369631B2 - 偏摩耗量推定システム、偏摩耗量推定方法、配置決定方法およびプログラム - Google Patents
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Description
図1は、本発明の実施形態に係る偏摩耗量推定システムの機能構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、偏摩耗量推定システム1は、加速度センサ100と、偏摩耗量推定装置200とを備える。偏摩耗量推定装置200は、通信部210と、表示部220と、操作入力部230と、記憶部280と、制御部290とを備える。制御部290は、偏摩耗成分抽出部291と、補正部292と、パワー和算出部293と、換算部294と、車輪到達検出部295とを備える。
偏摩耗量推定システム1が偏摩耗量を推定する対象の鉄道車両を、対象車両と称する。
偏摩耗量推定システム1が備える加速度センサ100の数は、3つまたはそれ以上であればよい。レール上に加速度センサ100を3つ以上配置することで、以下に説明するように、車輪の偏摩耗部分がレールに接する位置にかかわらず、おおよそ一定の大きさの振動を測定できる。
図2の例で、3つの加速度センサ100がレールの長さ方向に間隔を置いて設けられている。車輪のどの位置に偏摩耗が生じた場合でも、加速度センサ100が偏摩耗に起因する振動を拾えるように、車輪の周長からずれた間隔で加速度センサ100が配置されていることが好ましい。
表示部220は、液晶パネルまたはLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)パネル等の表示画面を有し、各種画像を表示する。例えば、表示部220は、偏摩耗量推定装置200が推定する偏摩耗量を表示する。
操作入力部230は、キーボード及びマウス等の入力デバイスを備え、ユーザ操作を受け付ける。
但し、記憶部280がパワー和と偏摩耗量との相関関係を記憶する方法は、式の形式で記憶する方法に限定されない。例えば、記憶部280が、パワー和を偏摩耗量に換算するための換算テーブル(表)を記憶するようにしてもよい。
偏摩耗成分抽出部291は、加速度センサ100それぞれのセンシングデータから、偏摩耗成分を抽出する。ここでいう偏摩耗成分は、加速度センサ100のセンシングデータに含まれる、車輪の偏摩耗を示す成分である。
あるいは、偏摩耗成分抽出部291が、加速度センサ100のセンシングデータにフィルタを適用して、対象車両の速度に応じた特定の周波数成分を抽出するようにしてもよい。
これに対し、補正部292は、偏摩耗成分の大きさに対する対象車両の速度の影響を低減させる補正を行う。具体的には、補正部292は、対象車両の速度が速いほど偏摩耗成分の値を小さくするように補正係数を乗算する。
補正部292が補正を行った偏摩耗成分を、補正後偏摩耗成分と称する。
換算部294は、パワー和算出部293が算出したパワー和を車輪の偏摩耗量に換算する。例えば、換算部294は、パワー和算出部293が算出するパワー和を記憶部280が記憶する換算式に入力して偏摩耗量を算出する。換算部294が取得する偏摩耗量は、偏摩耗量推定システム1による偏摩耗量の推定値として用いられる。
偏摩耗量推定システム1がリアルタイムで車輪の偏摩耗量を推定する場合、車輪到達検出部295は、車輪が基準位置に到達したことをリアルタイムで検出し、検出したことを示す信号をリアルタイムで出力する。
車輪到達検出部295は、車輪が基準位置に到達したタイミングを検出し、そのタイミングを示す信号を出力する。
偏摩耗量推定装置200がリアルタイムで車輪の偏摩耗量を推定する場合、車輪到達検出部295は、車輪が基準位置に到達したことをリアルタイムで検出し、検出したことを示す信号をリアルタイムで出力する。この信号は、偏摩耗量推定装置200が車輪の偏摩耗量を推定する処理(図3の例では、ステップS11~S15の処理)を開始するトリガとして用いられる。
一方、偏摩耗量推定装置200がバッチ処理で車輪の偏摩耗量を推定する場合、車輪到達検出部295は、例えば、車輪が基準位置に到達した時刻を出力する。この時刻は、偏摩耗量推定装置200が車輪の偏摩耗量の推定に用いるデータの開始位置を示す情報として用いられる。例えば、偏摩耗量推定装置200は、記憶部280が記憶している加速度センサ100の加速度測定値の履歴データのうち、車輪到達検出部295が出力する時刻から一定時間分のデータを、1つの車輪の偏摩耗量の推定用データとして用いる。
偏摩耗成分抽出部291は、加速度センサ100のセンシングデータ(時系列データ)を周波数変換する。偏摩耗成分抽出部291は、ステップS11の処理を加速度センサ100毎に行う。
ステップS11の後、処理がステップS12へ進む。
偏摩耗成分抽出部291は、ステップS11で得られたデータ(周波数変換後のセンシングデータ)から偏摩耗成分を抽出する。偏摩耗成分抽出部291は、ステップS12の処理を加速度センサ100毎に行う。
ここで、対象車両の速度が速いほど、車輪の回転数が速くなる。車輪に偏摩耗がある場合、対象車両の速度が速いほど、偏摩耗している部分がレールにあたる時間間隔が短くなり、偏摩耗成分の周波数が高くなる。そこで、偏摩耗成分抽出部291は、対象車両の速度情報を取得し、偏摩耗を示す周波数として対象車両の速度に応じて予め定められている周波数成分を抽出する。
対象車両の速度と、偏摩耗成分抽出部291が抽出する周波数との関係については、例えば人が予め計算しておく。車輪が100ミリメートル(mm)~1000ミリメートル程度進むのに要する時間の逆数をとることで、この周波数が求まる。
ステップS12の後、処理がステップS13へ進む。
補正部292は、偏摩耗成分抽出部291が抽出した偏摩耗成分に対して、対象車両の速度に応じた補正を行う。補正部292は、ステップS13の処理を加速度センサ100毎に行う。
上述したように、補正部292は、対象車両の速度が速いほど偏摩耗成分の値を小さくするように補正係数を乗算する。これにより、補正部292は、偏摩耗成分の大きさに対する対象車両の速度の影響を低減させる。
ステップS13の後、処理がステップS14へ進む。
パワー和算出部293は、加速度センサ100毎の補正後偏摩耗成分を全ての加速度センサ100について合計してパワー和を算出する。
なお、加速度センサ100が左右のレールそれぞれに設けられている場合、パワー和算出部293は、レール毎に全ての加速度センサ100の補正後偏摩耗成分を合計してレール毎のパワー和を算出する。
ステップS14の後、処理がステップS15へ進む。
換算部294は、パワー和算出部293が算出したパワー和と換算式に入力して、偏摩耗量の推定値を算出する。
なお、加速度センサ100が左右のレールそれぞれに設けられている場合、換算部294は、パワー和算出部293がレール毎に算出したパワー和を用いて、レール毎に偏摩耗量の推定値を算出する。これにより、加速度センサ100は、対象車両の左右それぞれの車輪について、偏摩耗量を推定する。
ステップS15の後、偏摩耗量推定装置200は、図3の処理を終了する。
図4は、センサの位置と車輪の偏摩耗に起因する振動との関係の例を示す図である。
図4では、レール910の上部と、対象車両の車輪920とが示されている。図4では、同じ車輪920が2周分回転して、偏摩耗部分(偏摩耗している部分)がレール910に3回接する様子が示されている。矢印B11およびB12は、車輪920の進行方向(従って、対象車両の進行方向)を示している。
車輪920の摩耗部分がレール910に接する位置を偏摩耗部分接触位置と称する。
図4の縦軸は加速度を示すが、線L11、L12およびL13を区別できるよう、振動の中心(加速度0の位置)をずらして、線L11、L12およびL13を示している。
但し、偏摩耗量推定システム1が対象とするレールの距離減衰率および車輪の周長は、特定のものに限定されない。
このように、レール910に加速度センサ100を1つ設置したのでは、加速度センサ100の位置と、偏摩耗部分接触位置との関係によっては、偏摩耗量の推定精度が低下する。そこで、レール910に加速度センサ100を複数設置して偏摩耗量の推定精度を高める。
以下では、符号100a、100bを用いて2つの加速度センサ100を区別する。さらに3つの加速度センサ100を区別する場合は、符号100a、100b、100cを用いる。
図7の例では、位置X13の加速度センサ100を加速度センサ100aと称し、位置X15の加速度センサ100を加速度センサ100bと称する。
図3を参照して説明した処理のように、時系列のセンシングデータを周波数変換する場合、加速度センサ100aのセンシングデータ、加速度センサ100bのセンシングデータ共に、比較的大きい偏摩耗成分が抽出される。これらの補正後偏摩耗成分を合計すると、パワー和が実際値よりも大きくなり、偏摩耗量の推定値が実際の偏摩耗量よりも大きくなる。
図8の例では、加速度センサ100a、100b共に、車輪920の偏摩耗部分が位置X11、X13、X15の何れでレール910に接したときも、図6の場合と同様、振動が減衰して十分大きな加速度を測定できない。これら2つの加速度センサ100の補正後偏摩耗成分を合計しても、パワー和が実際値よりも小さくなり、偏摩耗量の推定値が実際の偏摩耗量よりも小さくなる。
以下では、まず、レール910に加速度センサ100を2つ設置する場合について、2つの加速度センサ100の距離(間隔)、および、加速度センサ100の位置と偏摩耗部分接触位置との距離と、偏摩耗量の推定精度との関係について説明する。次に、レール910に加速度センサ100を3つ設置する場合について、2つの加速度センサ100の距離、および、加速度センサ100の位置と偏摩耗部分接触位置との距離と、偏摩耗量の推定精度との関係について説明する。
この、偏摩耗部分接触位置を基準とした、加速度センサ100aの位置との差である符号付きの距離を、偏摩耗部分接触位置から加速度センサ100aまでの距離とも称する。
図10では、車輪920の偏摩耗量を一定とし、いろいろな距離xaおよび距離dについて、2つの加速度センサ100のセンシングデータから算出されるパワー和の、基準値からのレベル差をデシベル表示の等高線で示している。図10の例では、図3を参照して説明した方法で、2つの加速度センサ100のセンシングデータからパワー和を算出している。また、偏摩耗部分接触位置から加速度センサ100aまでの距離xaが0の場合(すなわち、偏摩耗部分接触位置が加速度センサ100aの直上である場合)に、図3を参照して説明した方法で、加速度センサ100aのセンシングデータから算出される補正後偏摩耗成分を基準値とし、この基準値を0デシベル(dB)としている。
図10では、線L22に例示されるような、横軸に平行な線をどの位置にとっても、この線全体を目標の範囲内に含めることは出来ない。従って、2つの加速度センサ100の距離dをどのようにしても、偏摩耗部分接触位置から加速度センサ100aまでの距離xaによっては、パワー和と基準値との差が目標の±2デシベルの範囲内に収まらない。
また、3つ目の加速度センサ100を加速度センサ100cと表記する。加速度センサ100aの位置を基準として、加速度センサ100cの位置との差をd3と表記する。
この、加速度センサ100aの位置を基準とした、加速度センサ100cの位置との差である符号付きの距離を、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離とも称する。
線L31は、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3が1メートルである場合の例を示す。線L32は、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3が0である場合の例を示す。線L33は、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3が-1メートルである場合の例を示す。
(1) 領域A11から、加速度センサ100aと100bとの距離dは、0.25~2.4メートルの範囲にする。
(2) 領域A11で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が大きくなりすぎないように、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3を設定する。具体的には、加速度センサ100cが-8デシベル以下になるようにする。図12より、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3を0.8メートル以上、または、-0.8メートル以下にする。
・領域A15で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が大きくなりすぎること、
・領域A13の左上端で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が小さくなりすぎること、
・領域A14で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が-2デシベル以上であること、
の3つを考慮して、加速度センサ100aと100bとの距離dを1.7~1.8メートルにする。なお、図13でd=1.7メートルとなる箇所を線で示している。
・領域A16で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が大きくなりすぎること、
・領域A14の右下端で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が小さくなること、
・領域A13で、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が-2デシベル以上であること、
の3つを考慮して、加速度センサ100aと100bとの距離dを1メートル程度にする。なお、図13でd=1メートルとなる箇所を線で示している。
Bの場合、厳密には、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が±2デシベル以内との条件をわずかに満足しない部分が生じるが、ほぼ満足する。
図14に示す配置で、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3を、0.8~1.15メートルの範囲内にする。
加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3が1.07メートル以下の場合、加速度センサ100aと100bとの距離dを、1.7~1.8メートルの範囲内にする。
加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3が1.07メートルより大きい場合、加速度センサ100aと100bとの距離dを、2~2.4メートルの範囲内にする。なお、この場合、加速度センサ100aと100bとの距離dの下限値は、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3に応じて変化する。
図15に示す配置で、加速度センサ100aから加速度センサ100cまでの距離d3を、-1.07~-0.8メートルの範囲内にする。また、加速度センサ100aと100bとの距離dを、1メートルにする。
上記のように、図15の配置では、厳密には、3つの加速度センサ100のセンシングデータによるパワー和が±2デシベル以内との条件をわずかに満足しない。この点からすると、図14の配置の方が好ましい。
図16では、車輪920の偏摩耗量を一定とし、いろいろな距離xaおよび距離dについて、2つの加速度センサ100のセンシングデータから算出されるパワー和の、基準値からのレベル差をデシベル表示の等高線で示している。また、センサ100aからセンサ100cまでの距離は1.09メートルで一定としている。
図16の例で、d=1.875メートルの場合に、わずかに±2デシベルを超えている部分があるが、おおよそ±2デシベルの範囲に収まっている。センサ100の間隔をさらに調整すると±2デシベルの範囲内に収めることができる。
なお、図16でd=1.875メートルとなる箇所を線で示している。
偏摩耗量推定システム1によれば、少なくとも3つの加速度センサ100がレール910の長さ方向に間隔をおいて設けられることで、車輪920の偏摩耗部分がレール910に接する位置にかかわらず、おおよそ一定の大きさの振動を測定できる。これにより、偏摩耗量推定システム1では、レール910での振動の減衰の偏摩耗量推定への影響を低減させることができ、この点で偏摩耗量を高精度に推定できる。
この配置決定方法によれば、車輪920の偏摩耗部分がレール910に接する位置にかかわらず、おおよそ一定の大きさのパワー和を得られる。この配置決定方法を用いれば、レールでの振動の減衰の偏摩耗量推定への影響を低減させることができ、この点で偏摩耗量を高精度に推定できる。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
100 加速度センサ
200 偏摩耗量推定装置
210 通信部
220 表示部
230 操作入力部
280 記憶部
290 制御部
291 偏摩耗成分抽出部
292 補正部
293 パワー和算出部
294 換算部
295 車輪到達検出部
Claims (4)
- レールの長さ方向に間隔をおいて設けられ、前記レール上を通過する車輪により生じる振動をそれぞれ検出する少なくとも3つの振動センサと、
前記振動センサが検出する振動のパワー和を算出するパワー和算出部と、
前記パワー和を車輪の偏摩耗量に換算する換算部と、
を備える偏摩耗量推定システム。 - 前記振動センサは、前記車輪の偏摩耗部分が前記レールに接する位置による前記パワー和の相違が、所定の相違以内になるように配置される、請求項1に記載の偏摩耗量推定システム。
- レールの長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも3つの振動センサが、前記レール上を通過する車輪により生じる振動をそれぞれ検出する工程と、
前記振動センサが検出する振動のパワー和を算出する工程と、
前記パワー和を車輪の偏摩耗量に換算する工程と、
を含む偏摩耗量推定方法。 - コンピュータに、
レールの長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも3つの振動センサが、前記レール上を通過する車輪により生じる振動をそれぞれ検出する振動のパワー和を算出する工程と、
前記パワー和を車輪の偏摩耗量に換算する工程と、
を実行させるためのプログラム。
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