以下、図面を参照しながら、本願に係るMRI装置、MRI方法及び画像処理装置の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
例えば、図1に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用RFコイル4、局所用RFコイル5、送信回路6、受信回路7、RF(Radio Frequency)シールド8、架台9、寝台10、インタフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、及び処理回路14~16を備える。
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、その内周側に位置する撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、略円筒状に形成された冷却容器と、当該冷却容器内に充填された冷却材(例えば、液体ヘリウム等)に浸漬された超伝導磁石等の磁石とを有する。なお、静磁場磁石1は、例えば、永久磁石を用いて静磁場を発生させるものであってもよい。
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれに対応するXコイル、Yコイル及びZコイルを有している。Xコイル、Yコイル及びZコイルは、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、各軸方向に沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。ここで、Z軸は、傾斜磁場コイル2の円筒の軸に一致し、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿って設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿って設定され、Y軸は、Z軸に直交する鉛直方向に沿って設定される。これにより、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、リードアウト方向、フェーズエンコード方向及びスライス方向それぞれに沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2のXコイル、Yコイル及びZコイルに個別に電流を供給することで、互いに直交するリードアウト方向、フェーズエンコード方向及びスライス方向それぞれに沿って線形に変化する傾斜磁場を発生させる。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、フェーズエンコード方向に沿った傾斜磁場をフェーズエンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
ここで、リードアウト傾斜磁場、フェーズエンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることで、被検体Sから発生するMR信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてMR信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、フェーズエンコード傾斜磁場は、フェーズエンコード方向に沿ってMR信号の位相を変化させることで、フェーズエンコード方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。また、スライス傾斜磁場は、スライス方向に沿った位置情報をMR信号に付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合には、スライス領域の方向、厚さ及び枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域である場合には、スライス方向の位置に応じてMR信号の位相を変化させるために用いられる。これにより、リードアウト方向に沿った軸、フェーズエンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
全身用RFコイル4は、傾斜磁場コイル2の内周側に配置されており、撮像空間に配置された被検体SにRF磁場を印加し、当該RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信する。具体的には、全身用RFコイル4は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路6から供給されるRFパルス信号に基づいて、その内周側に位置する撮像空間に配置された被検体SにRF磁場を印加する。また、全身用RFコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、全身用RFコイル4は、QD(quadrature)コイルである。
局所用RFコイル5は、被検体Sから発生したMR信号を受信する。具体的には、局所用RFコイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されており、被検体Sの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の近傍に配置される。そして、局所用RFコイル5は、全身用RFコイル4によって印加されたRF磁場の影響によって被検体Sから発生したMR信号を受信し、受信したMR信号を受信回路7へ出力する。なお、局所用RFコイル5は、被検体SにRF磁場を印加する機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用RFコイル5は、送信回路6に接続され、送信回路6から供給されるRFパルス信号に基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。例えば、局所用RFコイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルで構成されたアレイコイルである。
送信回路6は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有のラーモア周波数に対応するRFパルス信号を全身用RFコイル4に出力する。具体的には、送信回路6は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルス信号の波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルス信号を生成する。増幅器は、変調器によって生成されたRFパルス信号を増幅して全身用RFコイル4に出力する。
受信回路7は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5から出力されるMR信号に基づいてMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路15に出力する。例えば、受信回路7は、選択器、前段増幅器、位相検波器、及び、A/D(Analog/Digital)変換器を備える。選択器は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5から出力されるMR信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力されるMR信号を電力増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力されるMR信号の位相を検波する。A/D変換器は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することでMR信号データを生成し、生成したMR信号データを処理回路15に出力する。
RFシールド8は、傾斜磁場コイル2と全身用RFコイル4との間に配置されており、全身用RFコイル4によって発生するRF磁場から傾斜磁場コイル2を遮蔽する。具体的には、RFシールド8は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、全身用RFコイル4の外周面を覆うように配置されている。
架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、全身用RFコイル4、及びRFシールド8を収容している。具体的には、架台9は、ボア9aの外周側に全身用RFコイル4を配置し、全身用RFコイル4の外周側にRFシールド8を配置し、RFシールド8の外周側に傾斜磁場コイル2を配置し、傾斜磁場コイル2の外周側に静磁場磁石1を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、撮像時に被検体Sが配置される撮像空間となる。
寝台10は、被検体Sが載置される天板10aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板10aを撮像空間に移動する。例えば、寝台10は、天板10aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用RFコイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構成を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構成を有していてもよい。この場合には、一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルによって挟まれた空間が、トンネル型の構成におけるボアに相当する。
インタフェース11は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、インタフェース11は、処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路17に出力する。例えば、インタフェース11は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、インタフェース11は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路もインタフェース11の例に含まれる。
ディスプレイ12は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ12は、処理回路17に接続されており、処理回路17から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ12は、液晶モニタやCRTモニタ、タッチパネル等によって実現される。
記憶回路13は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路13は、MR信号データや画像データを記憶する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
処理回路14は、寝台制御機能14aを有する。寝台制御機能14aは、制御用の電気信号を寝台10へ出力することで、寝台10の動作を制御する。例えば、寝台制御機能14aは、インタフェース11を介して、天板10aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板10aを移動するように、寝台10が有する天板10aの移動機構を動作させる。
処理回路15は、シーケンス実行機能15aを有する。シーケンス実行機能15aは、処理回路17から出力されるシーケンス実行データに従って傾斜磁場電源3、送信回路6及び受信回路7を駆動することで、各種の撮像法のパルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路6が全身用RFコイル4にRFパルス信号を供給するタイミング及び供給するRFパルスの強さ、受信回路7がMR信号をサンプリングするタイミング等を規定した情報である。そして、シーケンス実行機能15aは、パルスシーケンスを実行した結果として受信回路7から出力されるMR信号データを受信し、記憶回路13に記憶させる。このとき、記憶回路13に記憶されるMR信号は、前述したリードアウト傾斜磁場、フェーズエンコード傾斜磁場、及びスライス傾斜磁場によってリードアウト方向、フェーズアウト方向及びスライス方向の各方向に沿った位置情報が付与されることで、2次元又は3次元に配列されたk空間データとして記憶される。
処理回路16は、画像生成機能16aを有する。画像生成機能16aは、記憶回路13に記憶されたMR信号データに基づいて画像を生成する。具体的には、画像生成機能16aは、シーケンス実行機能15aによって収集されたMR信号データを記憶回路13から読み出し、読み出したMR信号データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、2次元又は3次元の画像を生成する。また、画像生成機能16aは、生成した画像を記憶回路13に記憶させ、操作者からの要求に応じて、記憶回路13から画像データを読み出してディスプレイ12に出力する。
処理回路17は、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路17は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ12に表示し、インタフェース11を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路17は、操作者によって入力された撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データを処理回路15に出力することで、シーケンス実行機能15aに各種のパルスシーケンスを実行させる。また、処理回路17は、処理回路16の画像生成機能16aを制御して、パルスシーケンスを実行することによって収集されたMR信号データに基づいて画像を生成させることで、各種の画像を収集する。
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、複数種類の撮像パラメータの値を変えて収集された複数の画像から、PD、T1、T2等の定量パラメータマップを生成する機能を有している。さらに、本実施形態に係るMRI装置100は、生成した定量パラメータマップの信号値と任意の撮像パラメータの値とを用いて、各種のコントラスト強調画像に対応する合成コントラスト強調画像を計算によって生成する機能を有している。
例えば、このような合成コントラスト強調画像を計算によって生成する技術として、Synthetic MRI(SyMRI)と呼ばれる手法が知られている。このSyMRIには、MRI装置の機種や条件に依存しにくい定量パラメータマップが得られること、複数種類のコントラスト強調画像を実収集によって撮像する場合の撮像時間と比べて撮像及び処理を含めても全体の時間が短縮できること、任意の撮像パラメータにより任意の合成コントラスト強調画像を生成できるため最適なコントラスト強調画像を事後的に生成できること等の利点がある。なお、コントラスト強調画像の情報はT1、T2、PD等の定量パラメータマップが反映しているが、事後的にコントラスト強調画像が生成されるのは、医師が通常の診断で一般的に用いているコントラスト強調画像に慣れているためである。
また、近年では、SSFP(Steady State Free Precession)シーケンスのk空間スパイラルトラジェクトリー等による高速なインコヒーレント収集と辞書照合とを組み合わせて最小限のデータから高速に定量パラメータマップを生成するMR Finger Printing(MRF)と呼ばれる手法を用いてコントラスト強調画像を生成する手法も、広い意味でのSyMRIとして注目されてきている。
さらに、拡散強調画像(Diffusion Weighted Image:DWI)を撮像する拡散強調イメージングによって拡散による位相分散による信号減衰の強度を表すb値を変えて撮像した画像からADCの定量パラメータマップを生成し、当該定量パラメータマップと任意の撮像パラメータの値とを用いて計算拡散強調画像を生成する手法も知られている。DWIでは、水すなわちCSF(Cerebral Spinal Fluid)の抑制が、ADCやFA等のパラメータの定量化において、又は、神経線維を抽出するトラクトグラフィの高精度化において重要である。そのため、DWIを撮像する撮像法では、データ収集時にFLAIR(Fluid Attenuated Inversion Recovery)を用いる方法や、b値を2段階又は複数段階に設定し、複数方向のデータから解析的に水成分と組織成分とを分離する方法等が知られている。
ここで、上述した各手法は、定量パラメータマップの生成が合成コントラスト強調画像の生成に先行する点で共通しており、いずれの手法でも、定量パラメータマップにパーシャルボリュームエフェクト(partial volume effect:PVE)が生じることによって、同一のボクセル内に異なる組織が混合するために本来の定量値からずれる結果、それらを用いて得られた合成コントラスト強調画像に本来の収集画像にはない高信号や低信号のアーチファクトが生じることがあり得る。
例えば、SyMRIによって生成された頭部のT2-FLAIR画像では、脳室や皮質の脳溝及び脳組織の近傍に生じる高信号が、実収集によって得られたT2-FLAIR画像には生じないアーチファクトとして診断の障害となるとの報告が多い。このような高信号のアーチファクトは、ボクセル内のCSFと組織との混合によって生じるPVEが原因と考えられている。
すなわち、実収集で得られるFLAIR画像では、IR(Inversion Recovery)パルスによって水(CSF)の縦磁化Mzをゼロにしてから横磁化Mxyとして信号を収集するため、水の縦磁化が完全にゼロであれば、水成分が含まれていたとしても、原理的には組織成分のみの信号となる。そのため、定量パラメータマップにPVEは生じない。これに対し、SyMRIでは、通常、水の縦磁化がゼロになっていない状態で収集された信号から定量パラメータマップが生成されるため、信号内の水成分と組織成分との混合によるPVEが生じる。その結果、定量パラメータをもとに生成されるSynthetic FLAIR画像では、水の縦磁化の影響が避けられず、特に水のT2は組織に比べて長いため、TEを長く設定することによって水が組織より強調されたSynthetic FLAIR画像ほど、PVEによる高信号のアーチファクトが顕著に表れることになる。
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、信号内の水成分と組織成分との混合によって定量パラメータマップに生じるPVEを抑制することができるように構成されている。
具体的には、本実施形態では、図1に示す処理回路17が、収集機能17aと、分離機能17bと、生成機能17cと、合成機能17dとを有する。ここで、収集機能17aは、収集部の一例である。また、分離機能17bは、分離部の一例である。また、生成機能17cは、生成部の一例である。また、合成機能17dは、合成部の一例である。
なお、上述した処理回路14~17は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶される。そして、各処理回路は、記憶回路13から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。なお、ここでは、単一のプロセッサによって各処理回路が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて各処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、図1に示す例では、単一の記憶回路13が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
例えば、図2に示すように、本実施形態では、収集機能17aが、複数種類の組織が混在する同一の被検体の画像を複数種類の撮像パラメータの値を変えて撮像することによって、組織のT2に近いTEで撮像した画像と、信号内で水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像とを含む複数の画像を収集する(ステップS01)。このとき、収集機能17aは、処理回路15のシーケンス実行機能15a及び処理回路16の画像生成機能16aを制御することで、当該複数の画像を収集する。このステップS01の処理は、例えば、処理回路17が、収集機能17aに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。
また、分離機能17bが、収集機能17aによって収集された複数の画像のうちのTEが異なる少なくとも3つの画像を解析することによって、水成分と組織成分とを分離した少なくとも2つの分離画像を生成する(ステップS02)。このとき、分離機能17bは、画像生成機能16aによって生成された複数の画像を記憶回路13から読み出して、解析を行う。このステップS02の処理は、例えば、処理回路17が、分離機能17bに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。
また、生成機能17cが、分離機能17bによって生成された少なくとも2つの分離画像を用いて、T1、T2、PD、及びADCのうちの少なくとも1種類の定量パラメータマップを生成する(ステップS03)。このステップS03の処理は、例えば、処理回路17が、生成機能17cに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。
また、合成機能17dが、生成機能17cによって生成された少なくとも1種類の定量パラメータマップを用いて、任意の撮像パラメータに対応する合成コントラスト強調画像を計算によって生成する(ステップS04)。このとき、合成機能17dは、生成した合成コントラスト強調画像をディスプレイ12に表示する。このステップS04の処理は、例えば、処理回路17が、合成機能17dに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。
このような構成によれば、信号内の水成分と組織成分とを分離した分離画像を用いて定量パラメータマップを生成することによって、信号内の水成分と組織成分との混合によって定量パラメータマップに生じるPVEを抑制することができる。さらに、PVEが抑制された定量パラメータマップを用いて合成コントラスト強調画像を生成することによって、PVEによって合成コントラスト強調画像に生じる高信号のアーチファクトを抑制することができる。
以下、上述した第1の実施形態に係る具体的な実施例について説明する。なお、以下の実施例では、T1、T2、PD及びADCそれぞれの定量マップを、T1マップ、T2マップ、PDマップ及びADCマップと呼ぶ。
まず、以下の実施例で用いられるMR信号モデルについて説明する。ここで、MR信号モデルは、信号の全体の信号強度と、当該信号内の水成分及び組織成分それぞれの信号強度との関係を定義したモデルである。
以下の実施例では、1つのMR信号に1つの単位ボクセルが対応することとし、単位ボクセル内の成分が単一である場合のMR信号モデルを1成分モデル(Single-compartmentモデル)と呼び、単位ボクセル内に水成分及び組織成分の2つの成分が含まれる場合のMR信号モデルを2成分モデル(2-comparmentモデル)と呼ぶ。また、ここでは、各モデルについて、スピンエコー(Spin Echo:SE)法のMR信号モデルと、反転回復(Inversion Recovery:IR)法で得られるMR信号のモデルとを定義する。
例えば、1成分モデルについて、SE法で得られるMR信号をSSE、IRで得られるMR信号をSIRとすると、SE法の1成分モデル及びIR法の1成分モデルは、それぞれ、以下の(式1)及び(式2)で表される。
SSE(TR,TE,b,PD,T1,T2,ADC)=PD*DecayT1SE(TR,T1)*DecayT2(TE,T2)*DecayADC(b,ADC) ・・・(式1)
SIR(TR,TI,TE,b,PD,T1,T2,ADC)=PD*DecayT1IR(TR,TI,T1)*DecayT2(TE,T2)*DecayADC(b,ADC) ・・・(式2)
ここで、TRは繰り返し時間、TEはエコー時間、TIは反転時間、bはb値である。また、TIは縦緩和時間、T2は横緩和時間、PDはプロトン密度、ADCは拡散係数である。
また、DecayT1SE(TR,T1)はSE法におけるT1減衰、DecayT1IR(TR,TI,T1)はIR法におけるT1減衰、DecayT2(TE,T2)はSE法及びIR法で共通のT2減衰、DecayADC(b,ADC)はSE法及びIR法で共通のADC減衰であり、それぞれ以下の(式3)~(式6)で表される。
DecayT1SE(TR,T1)=1-2*exp[-(TR-TE/2)/T1]-exp[-TR/T1] ・・・(式3)
DecayT1IR(TR,TI,T1)=1-2*exp(-TI/T1)+2*exp[-(TR-TE/2)/T1]-exp(-TR/T1) ・・・(式4)
DecayT2(TE,T2)=exp(-TE/T2) ・・・(式5)
DecayADC(b,ADC)=exp(-b*ADC) ・・・(式6)
また、例えば、2成分モデルについて、単位ボクセル内の水成分の体積をVw、組織成分の体積をVtとすると、単位ボクセルの体積Vは、以下の式(7)で表される。また、水成分のPDをPDw、組織成分のPDをPDtとすると、単位ボクセル内の平均プロトン密度PDは、以下の(式8)で表される。
V=Vw+Vt=1 ・・・(式7)
PD=Vw*PDw+Vt*PDt ・・・(式8)
そして、SE法で得られる水成分のMR信号をSSEw、SE法で得られる組織成分のMR信号をSSEt、IR法で得られる水成分のMR信号をSIRw、IR法で得られる組織成分のMR信号をSIRtとすると、SE法の2成分モデル及びIR法の2成分モデルは、それぞれ以下の(式9)及び(式10)で表される。
SSE(TR,TE,b,PD,T1,T2,ADC)=SSEw(TR,TE,b,PDw,T1w,T2w,ADCw)+SSEt(TR,TE,b,PDt,T1t,T2t,ADCt) ・・・(式9)
SIR(TR,TI,TE,b,PD,T1,T2,ADC)=SIRw(TR,TI,TE,b,PDw,T1w,T2w,ADCw)+SIRt(TR,TI,TE,b,PDt,T1t,T2t,ADCt) ・・・(式10)
ここで、T1wは水のTI、T2wは水のT2、ADCwは水のADCである。また、T1tは組織のT1、T2tは組織のT2、ADCtは組織のADCである。
このように、以下の実施例で用いられるMR信号モデルは、MR信号を、PDと3種類の信号減衰項(T1減衰、T2減衰、ADC減衰)との積として定義したものである。ここで、水成分及び組織成分のPD、T1、T2は、それぞれの成分に特有の値となる。
なお、上述した例では、SE法及びIR法それぞれのMR信号モデルを定義することとしたが、TI=TRとすることによって、SE法とIR法とでT1減衰(DecayT1)が同じになるため、それぞれを共通のモデルで統一することもできる。また、T1減衰(DecayT1)の計算では、TE=0と近似してもよい。
図3は、第1の実施形態に係る実施例で用いられる2成分モデルに基づいて、TE及びb値を変えて収集した画像を2次元データとして表した図である。
ここで、図3は、SE法によってTR及びTIを一定(すなわち、縦磁化Mzを一定)として撮像した場合の信号強度S(TE,b)を示している。また、図3では、一点鎖線で示す線が、水成分の信号強度Swを示し、二点鎖線で示す線が、組織成分の信号強度Stを示しており、破線で示す線が、水成分及び組織成分の総和である全体の信号強度Sを示している。
例えば、以下の実施例では、図3に示すSSE1(TE1,b0)、SSE2(TE2,b0)、SSE3(TE3,b0)、SDWI1(TE1,b1)、SDWI2(TE2,b1)、SDWI3(TE3,b1)及びSDWI4(TE2,b2)の7つの収集サンプル点に対応する7つの画像が用いられる。ここで、各収集サンプリング点におけるTE、b値、TIの条件は、それぞれ、0<TE1<TE2<TE3、0≒b0<b1<b2、0<TI1とする。
なお、図3では図示を省略しているが、以下の実施例では、定量パラメータとしてT1を算出するために、IR法でTIを変えて収集した画像も用いられる。例えば、以下の実施例では、SIR1(TI1,TE1,b0)及びSIR2(TI1,TE3,b0)の2つの収集サンプル点に対応する2つの画像が用いられる。
通常、MR信号は、ボクセル内の2つの成分の和(平均)として観測され、各成分の比率も不明であるため分離することはできないが、もしも片方の成分を抑制する収集手法を用いることができれば、2つの成分を分離することが可能である。例えば、ボクセル内の水成分のみを画像化することができれば、ボクセル内の水成分の比率が部分的であっても、水成分の信号のみを観測できるようになる。さらに、水成分の信号を水成分及び組織成分が混在した信号から差分すれば、組織成分の信号も得られることになる。すなわち、水成分及び組織成分が混在した信号を2つの成分に分離することができる。
以下で説明する実施例の基本的なアイデアは、PD強調画像、T1強調画像、T2強調画像、拡散強調画像等のコントラスト強調画像のうちの何種類かを元画像として、水成分が抑制された画像を分離画像として生成し、当該分離画像を用いて、水成分の抑制前及び抑制後のT1やT2、PD、ADC等の定量パラメータマップを生成し、さらに、それらの定量パラメータを組み合わせて用いることによって、SyMRI等で生成されるSE画像やFLAIR画像等の合成コントラスト強調画像における水成分の信号を抑制するというものである。
(実施例1)
まず、実施例1について説明する。本実施例は、水と組織との間のT2の差異を利用して、水成分と組織成分とを分離するものである。より具体的には、本実施例では、水のT2が組織のT2と比べて十分に長いことを利用して、水成分と組織成分とを分離する。
すなわち、本実施例では、収集機能17aが、同一の被検体の画像をTE及びTIを変えて撮像することによって、組織のT2に近いTEで撮像した画像と、信号内で水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像とを含む複数の画像を収集する。
例えば、収集機能17aは、SE法によってTEを変えて被検体の画像を撮像することで、図3に示したSSE1(TE1,b0)、SSE2(TE2,b0)及びSSE3(TE3,b0)の3つの収集サンプル点に対応する3つの画像を収集する。ここで用いられるSE法のパルスシーケンスとしては、例えば、SE型のEPI(Echo Planar imaging)シーケンスや、FSE(Fast Spin Echo)シーケンス、又はGE(Gradient echo)系のSSFPが用いられる。また、k空間データの充填法としては、通常のカーテシアンや高速なスパイラルやラジアルが用いられる。なお、以下ではSE系でのパラメータによるシーケンスでの説明となるが、MRFに多く用いられているSSFPではパラメータとしてさらにflip angle(FA)が加わり、TR及びTEを含めて適切に設定することにより水強調や組織強調とすることができるSE系と同様のことが行える。
さらに、収集機能17aは、IR法によってTE及びTIを変えて被検体の画像を撮像することで、前述したSIR1(TR1,TI1,TE1,b0)及びSIR2(TR1,TI1,TE3,b0)の2つの収集サンプル点に対応する2つの画像を収集する。
なお、本実施例では、SSE1(TE1,b0)、SSE2(TE2,b0)及びSSE3(TE3,b0)の各点に対応する画像を、それぞれSSE1(TR1,TE1,b0)、SSE2(TR1,TE2,b0)及びSSE3(TR1,TE3,b0)と表し、SIR1(TR1,TI1,TE1,b0)及びSIR2(TR1,TI1,TE3,b0)の各点に対応する画像を、それぞれSIR1(TR1,TI1,TE1,b0)及びSIR2(TR1,TI1,TE3,b0)と表す。
ここで、TE1には、MRI装置100で設定し得る最短の値が用いられる。これにより、SSE1(TR1,TE1,b0)は、PD強調画像となる。また、TE2には、TE1より長い、組織のT2に近い値が用いられる。これにより、SSE2(TR1,TE2,b0)は、T2強調画像となる。また、TE3には、TE1及びTE2より十分に長い値が用いられる。これにより、SSE3(TR1,TE3,b0)は、水成分が支配的な画像となる。また、TI1には、組織のT1に近い値が用いられる。なお、b0には、MRI装置100で設定し得る最小の値(例えば、b0<1[s/mm2])が用いられる。b0については、ある程度大きくすれば各画像における水成分の抑制効果が向上するものの、逆に信号強度のSNR(Signal-to-Noise Ratio)が低下するので、T2に基づいて水成分を抑制する本実施例では、最小の値とするのが望ましい。
例えば、静磁場の強度が3Tである場合に、各撮像パラメータの値には、以下の値が用いられる。
TR1=4000~8000[ms]、TE1=25[ms]、TE2=100[ms]、TE3=300~500[ms]、TI1=1000[ms]、b0=0[s/mm2]、b1=500[s/mm2]、b2=1000[s/mm2]
そして、本実施例では、分離機能17bが、収集機能17aによって収集された複数の画像のうちのTEが異なる少なくとも3つの画像のうちの短いTEの画像から水成分が支配的となるような長いTEの画像を重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像を分離画像として生成する。
例えば、分離機能17bは、以下の(式11)により、SSE1(TR1,TE1,b0)からSSE3(TR1,TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE1,b0)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式12)により、SSE2(TR1,TE2,b0)からSSE3(TR1,TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,b0)を生成する。なお、Stは、水成分が抑制されたことによって組織成分の画像となっていることを意味している。
St(TR1,TE1,b0)=SSE1(TR1,TE1,b0)-α*SSE3(TR1,TE3,b0) ・・・(式11)
St(TR1,TE2,b0)=SSE1(TR1,TE2,b0)-α*SSE3(TR1,TE3,b0) ・・・(式12)
ここで、SSE3が水成分のみでかつ重み付け係数αの設定が適切であれば、PD強調画像であるSSE1(TR1,TE1,b0)及びT2強調画像であるSSE2(TR1,TE2,b0)において、PVEが生じているボクセル内の水成分と組織成分との比率が不明であっても、差分により、ボクセル内に含まれる組織成分のみが残ることになる。
なお、水成分と組織成分とをより正確に分離することが求められる場合には、分離機能17bは、仮定又は測定された水のT2を用いて、水成分が支配的となるような長いTEの画像から短いTEに対応する水成分の画像を生成し、当該画像を短いTEの画像から差分することによって、水成分が抑制された画像を分離画像として生成するようにしてもよい。
例えば、分離機能17bは、以下の(式13)により、SSE3(TR1,TE3,b0)から水成分の画像Sw(TR1,TE1,b0)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式14)により、Sw(TR1,TE1,b0)をSSE1(TR1,TE1,b0)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE1,b0)を生成する。
Sw(TR1,TE1,b0)=SSE3(TR1,TE3,b0)*exp[(TE3-TE1)/T2w] ・・・(式13)
St(TR1,TE1,b0)=SSE1(TR1,TE1,b0)-Sw(TR1,TE1,b0) ・・・(式14)
さらに、分離機能17bは、以下の(式15)により、SSE3(TR1,TE3,b0)から水成分の画像Sw(TR1,TE2,b0)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式16)により、Sw(TR1,TE2,b0)をSSE2(TR1,TE2,b0)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,b0)を生成する。
Sw(TR1,TE2,b0)=SSE3(TR1,TE3,b0)*exp[(TE3-TE2)/T2w] ・・・(式15)
St(TR1,TE2,b0)=SSE2(TR1,TE2,b0)-Sw(TR1,TE2,b0) ・・・(式16)
ここで、(式13)及び(式15)に含まれるT2Wには、仮定又は測定された水のT2が設定される。例えば、T2Wには、理論値を用いて仮定された水のT2の値が設定される(例えば、T2w=4000[ms])。または、T2Wには、以下の(式17)により、SSE1(TR1,TE1,b0)及びSSE2(TR1,TE2,b0)それぞれにおける水成分が100%に近いボクセル(例えば、脳室等のボクセル)の信号強度から算出されたT2の値が設定される。
T2w=(TE2-TE1)/ln[Sw(TR1,TE1,b0)/Sw(TR1,TE2,b0)] ・・・(式17)
そして、本実施例では、生成機能17cが、収集機能17aによって収集された複数の画像を用いて、水成分及び組織成分を含む全体のT2マップ、T1マップ、及びPDマップを生成する。また、生成機能17cは、分離機能17bによって生成された分離画像を用いて、水成分が抑制されたT2マップ、T1マップ、及びPDマップを生成する。
例えば、生成機能17cは、以下の(式18)により、SSE1(TR1,TE1,b0)及びSSE2(TR1,TE2,b0)を用いて、全体のT2マップT2origを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式19)により、St(TR1,TE1,b0)及びSt(TR1,TE2,b0)を用いて、水成分が抑制されたT2マップT2tを生成する。なお、T2tは、水成分が抑制されたことによって組織成分のT2マップとなっていることを意味している。
T2orig=(TE2-TE1)/ln[SSE1(TR1,TE1,b0)/SSE2(TR1,TE2,b0)] ・・・(式18)
T2t=(TE2-TE1)/ln[St(TR1,TE1,b0)/St(TR1,TE2,b0)] ・・・(式19)
また、生成機能17cは、以下の(式20)により、SSE1(TR1,TE1,b0)及びSIR1(TR1,TI1,TE1,b0)を用いて、全体のT1マップT1origを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式21)により、St(TR1,TE1,b0)及びSt(TR1,TI1,TE1,b0)を用いて、水成分が抑制されたT1マップT1tを生成する。なお、T1tは、水成分が抑制されたことによって組織成分のT1マップとなっていることを意味している。
T1orig=TI1/ln[{1-SSE1(TR1,TE1,b0)/SIR1(TR1,TI1,TE1,b0)}/2] ・・・(式20)
T1t=TI1/ln[{1-St(TR1,TE1,b0)/St(TR1,TI1,TE1,b0)}/2] ・・・(式21)
ここで、St(TR1,TI1,TE1,b0)は、以下の(式22)により、SIR1(TR1,TI1,TE1,b0)からSIR2(TR1,TI1,TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって求められる。
St(TR1,TI1,TE1,b0)=SIR1(TR1,TI1,TE1,b0)-α*SIR2(TR1,TI1,TE3,b0) ・・・(式22)
また、生成機能17cは、以下の(式23)により、SSE1(TR1,TE1,b0)、T2orig、T1orig及びADCorigを用いて、全体のPDマップPDorigを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式24)により、St(TR1,TE1,b0)、T2t、T1t及びADCtを用いて、水成分が抑制されたPDマップPDtを生成する。なお、PDtは、水成分が抑制されたことによって組織成分のPDマップとなっていることを意味している。
PDorig=SSE1(TR1,TE1,b0)/DecayT2(TE1,T2orig)/DecayT1(TR1,T1orig)/DecayADC(b0,ADCorig) ・・・(式23)
PDt=St(TR1,TE1,b0)/DecayT2(TE1,T2t)/DecayT1(TR1,T1t)/DecayADC(b0,ADCt) ・・・(式24)
ここで、DecayT2(TE1,T2orig)及びDecayT2(TE,T2t)は、それぞれ前述した(式5)により求められる。また、DecayT1(TE1,T1orig)及びDecayT1(TE,T1t)は、それぞれ前述した(式3)により求められる。なお、DecayADC(b0,ADCorig)及びDecayADC(b0,ADCt)は、それぞれ前述した(式6)により、全体のADCマップADCorig、及び、水成分が抑制されたADCマップADCtから求められるが、本実施例ではADCorig及びADCtを算出していないため、それぞれ1とする。
図4は、実施例1に係る生成機能17cによって生成された画像及び定量パラメータマップにおける水成分の抑制の一例を示す図である。
ここで、図4の(a)のグラフは、SE法によってTE=25[ms]として撮像された画像Sorig及び生成機能17cによって水成分が抑制された画像StにおけるVwに対する信号強度の変化を示している。また、図4の(b)のグラフは、SE法によってTE=100[ms]として撮像された画像Sorig及び生成機能17cによって水成分が抑制された画像StにおけるVwに対する信号強度の変化を示している。
また、図4の(c)のグラフは、生成機能17cによって生成された全体のPDマップPDorig及び水成分が抑制されたPDマップPDtにおけるVwに対する信号強度の変化を示している。また、図4の(d)のグラフは、生成機能17cによって生成された全体のT1マップT1orig及び水成分が抑制されたT1マップT1tにおけるVwに対する信号強度の変化を示している。また、図4の(e)のグラフは、生成機能17cによって生成された全体のT2マップT2orig及び水成分が抑制されたT2マップT2tにおけるVwに対する信号強度の変化を示している。
なお、図4の(a)~(e)では、重み付け係数αをα=0.8とした場合、α=1とした場合、及び、α=1.1とした場合それぞれについて、各画像及び各マップにおける信号強度の変化を示している。
例えば、図4(a)~(e)に示すように、水成分が抑制されていない画像及びマップに対して、水成分が抑制された画像及びマップでは、いずれの例でも、重み付け係数αが大きいほど、信号は水成分が抑制されて組織成分のみの状態に近付いている。
そして、本実施例では、合成機能17dが、生成機能17cによって生成された全体のT1マップT1orig、T2マップT2orig、及びPDマップPDorigと、水成分が抑制されたT1マップT1t、T2マップT2t、及びPDマップPDtとを組み合わせて用いて、任意の撮像パラメータに対応するSE法の合成コントラスト強調画像と、FLAIR法の合成コントラスト強調画像とを生成する。
具体的には、合成機能17dは、SE法の1成分モデルを表す(式1)のTR及びTEに、それぞれ操作者によって入力されたTR及びTEを代入し、さらに、(式1)のT1、T2及びPDに、それぞれ、T1orig及びT1tのいずれか一方、T2orig及びT2tのいずれか一方、PDorig及びPDtのいずれか一方を代入することで、水成分が抑制されたSE法の合成コントラスト強調画像を生成する。なお、本実施例ではADCorig及びADCtを算出していないため、(式1)のDecayADC(b,ADC)は1とする。
また、合成機能17dは、IR法の1成分モデルを表す(式2)のTR、TE及びTIに、それぞれ操作者によって入力されたTR、TE及びTIを代入し、さらに、(式2)のT1、T2及びPDに、それぞれ、T1orig及びT1tのいずれか一方、T2orig及びT2tのいずれか一方、PDorig及びPDtのいずれか一方を代入することで、水成分が抑制されたFLAIR法の合成コントラスト強調画像を生成する。なお、本実施例ではADCorig及びADCtを算出していないため、(式2)のDecayADC(b,ADC)には1を代入する。
例えば、合成機能17dは、全体のT1マップT1origと、水成分が抑制されたT2マップT2tと、水成分が抑制されたPDマップPDtとを用いて、水成分が抑制されたSE法の合成コントラスト強調画像を生成する。
また、例えば、合成機能17dは、全体のT1マップT1origと、全体のPDマップPDorigと、水成分が抑制されたT2マップT2tとを用いて、水成分が抑制されたFLAIR法の合成コントラスト強調画像を生成する。
図5は、実施例1に係る合成機能17dによって生成された合成コントラスト強調画像における水成分の抑制の一例を示す図である。
ここで、図5の(a)及び(e)のグラフは、それぞれ、理想的な実収集によって収集されたSE法及びIR(FLAIR)法のコントラスト強調画像におけるTEに対する信号強度の変化を示している。また、図5の(b)及び(f)は、それぞれ、全体のPDマップPDorig、全体のT1マップT1orig、及び、全体のT2マップT2origを用いて生成された水成分が抑制されていない従来のSE法及びIR(FLAIR)法の合成コントラスト強調画像おけるTEに対する信号強度の変化を示している。
また、図5の(c)及び(g)は、それぞれ、全体のPDマップPDorig、全体のT1マップT1orig、及び、水成分が抑制されたT2マップT2tを用いて生成されたSE法及びIR(FLAIR)法の合成コントラスト強調画像おけるTEに対する信号強度の変化を示している。また、図5の(d)及び(h)は、それぞれ、水成分が抑制されたPDマップPDt、全体のT1マップT1orig、及び、水成分が抑制されたT2マップT2tを用いて生成されたSE法及びIR(FLAIR)法の合成コントラスト強調画像おけるTEに対する信号強度の変化を示している。
なお、図5の(a)~(h)では、VwをVw=0[%]、Vw=25[%]、Vw=50[%]、Vw=75[%]、及び、Vw=100[%]とした場合それぞれについて、各画像における信号強度の変化を示している。
例えば、図5の(e)に示すように、実収集によって収集されたIR(FLAIR)法のコントラスト強調画像では、信号強度がVt=1-Vwに比例する。また、図5の(f)に示すように、従来のIR(FLAIR)法の合成コントラスト強調画像では、TEが長くなるにつれて、各Vwの信号強度が逆転する減少が生じる。これに対し、図5の(g)及び(h)に示すように、本実施例に係る合成機能17dによって水成分が抑制されたIR(FLAIR)法の合成コントラスト強調画像では、従来のような信号強度の逆転現象は生じず、実収集によって収集されたIR(FLAIR)法のコントラスト強調画像と信号強度が略同等となる。
さらに、例えば、図5の(c)及び(d)に示すように、本実施例に係る合成機能17dによって水成分が抑制されたSE法の合成コントラスト強調画像では、図5の(h)に示す水成分が抑制されたIR(FLAIR)法の合成コントラスト強調画像と比べて、Vwに対する信号強度の大きさの順が、実収集によって収集されたIR(FLAIR)法のコントラスト強調画像と同等であり、さらにSNRが向上している。ここで、実収集以外の合成コントラスト強調画像では定量パラメータマップからのノイズの伝搬はあるが、計算によって得られた画像どうしでは背景ノイズが一定なので、信号強度が相対的なSNRとみなせる。
なお、ここでは、SIR2(TR1,TI1,TE3,b0)を収集する場合の例を説明したが、SIR2(TR1,TI1,TE3,b0)は、水成分が抑制されたT1tマップを生成する際に用いるだけなので、本実施例のようにコントラスト強調画像がFLAIRやSEである場合のようにT1tマップが不要な場合は、収集しなくてもよい。
上述した実施例1は、T2の差異のみを利用して水成分と組織成分とを分離するものであるため、Fast SE法等の従来の手法に容易に適用することができる。
また、上述した実施例1では、収集機能17aが、マルチエコー法によって、被検体の画像を収集してもよい。IR(FLAIR)法による実収集では、TIによって組織が十分に飽和しないことから、組織の縦磁化をSE法と同一にできないため、差分によって水成分と組織成分とを分離できないのに加え、IRパルスの有無による別々の収集が必要になるため時間を要する。これに対し、SE法による実収集は、同一の励起によるマルチエコー法を用いれば、撮像時間の延長や体動によるミスレジストレーションはほとんど生じない。
また、上述した実施例1では、収集機能17aが、Gradient Moment Nulling(GMN)用の傾斜磁場(フローリフェーズ用の傾斜磁場)を印加して、被検体の画像を撮像してもよい。これにより、CSFや血流の動きによるアーチファクトや信号低下を抑制することができる。
また、上述した実施例1では、重み付け係数αを用いた重み付け差分による簡便な分離法と、仮定又は測定された水のT2を用いて、組織成分が略ゼロになるTEから各TEでの水成分を推定して差分する高精度な分離法とを適宜に選択して用いることができる。
また、上述した実施例1では、水成分を完全にゼロにすることが求められる場合には、水組織の画像上で閾値を設けることで、水成分が100%のボクセルとそれ以外の組織部分のボクセルとを分離し、それぞれから別々に定量パラメータマップを生成してもよい。その場合、2つの成分が混在するボクセルは重複することになるが、そのようなボクセルは色分けして重ねて表示するようにしてもよい。その場合は、混合したボクセルは混合比に応じた色で表示される。例えば、PDの場合、組織成分を赤色、水成分を水色とすれば、Vw=50%であれば紫色になる。または、ボクセルが重複しないように、水成分の信号の閾値を50%として、多い方の成分の定量パラメータマップを求めて合成してもよい。
また、上述した実施例1では、水成分が支配的となるような長いTEの画像を差分することによって水成分を抑制する方法を説明したが、もしも水成分を含む定量パラメータマップや合成コントラスト強調画像が不要であれば、初めからIR(FLAIR)法によって、すなわち水の縦磁化がゼロになるようなTR及びTIの組み合わせで、TEを2つ以上変えた画像を収集し、それらの画像を用いてT2マップを生成し、合成コントラスト強調画像を生成するようにしてもよい。この場合は、TRを十分に長くしてTE=0の画像を生成すれば、水成分が抑制されたPDマップも得られ、計算によるFLAIR画像に加えて、水成分が抑制された、計算によるSE画像も得られる。
(実施例2)
次に、実施例2について説明する。本実施例は、水と組織との間のADCの差異を利用して、MR信号に含まれる水成分と組織成分とを分離するものである。より具体的には、本実施例は、水のADCが組織のADCと比べて大きいことを利用して、MR信号に含まれる水成分と組織成分とを分離する。
すなわち、本実施例では、収集機能17aが、DWIを撮像する拡散強調イメージングによって0でないb値を用いて被検体の画像を撮像することで、水成分が抑制された画像を収集する。
拡散強調イメージングでは、データ収集時にMPG(Motion Probing gradient)と呼ばれるフォローエンコード傾斜磁場が印加され、このMPGによって、生体内の各組織におけるADCの違いに応じてMR信号の強度のコントラストが生じることで、ADCの違いが強調されたDWIが撮像される。ここで、水のADCは、組織のADCと比べて約3倍大きいことが知られている。具体的には、水はADC=3*10-3[mm2/s]であり、組織は、正常なものでADC=1*10-3[mm2/s]であり、腫瘍等ではさらに小さくなる。そして、拡散強調イメージングでは、拡散による位相分散を表すb値が大きいほど、水成分が抑制されて組織成分が支配的な画像が得られる。
図6は、実施例2に係る拡散強調イメージングによって撮像された画像におけるb値による水成分の抑制の一例を示す図である。
ここで、図6の(a)のグラフは、TR=4000[ms]、TE=35[ms]として撮像されたPD強調画像におけるb値に対する信号強度の変化を示している。また、図6の(b)のグラフは、TR=4000[ms]、TE=100[ms]として撮像されたPD強調画像におけるb値に対する信号強度の変化を示している。
例えば、図6の(a)及び(b)に示すように、b値が大きくなるにつれて、水成分が抑制され、組織成分の全体に対する比St/Sorigが大きくなる。例えば、b=300[s/mm2]程度に設定すれば、水成分をかなり抑制することができる。
例えば、図6の(a)に示すように、TE=35[ms]の画像では、水成分の信号強度Swは、b=250[s/mm2]で約55%、b=500[s/mm2]で約25%まで低減する。また、例えば、図6の(b)に示すように、TE=100[ms]の画像では、水成分の信号強度Swは、b=250[s/mm2]で約55%、b=500[s/mm2]で約40%まで低減する。すなわち、TEを短縮すれば、b=0での水成分の相対的な割合が小さくなるため、水成分の抑制効果が高くなる。
例えば、収集機能17aは、SE法の拡散強調イメージングによってTEを変えながら0でないb値を用いて被検体の画像を撮像することで、図3に示したSDWI1(TE1,b1)及びSDWI2(TE2,b1)の2つの収集サンプル点に対応する2つの画像を収集する。
なお、本実施例では、SDWI1(TE1,b1)及びSDWI2(TE2,b1)の各点に対応する画像を、それぞれSDWI1(TR1,TE1,b1)及びSDWI2(TR1,TE2,b1)と表す。
ここで、TE1には、MRI装置100で設定し得る最短の値が用いられる。また、TE2には、TE1より長い値が用いられる。そして、b1には、0より大きい値が用いられる。これにより、SDWI1(TR1,TE1,b1)及びSDWI2(TR1,TE2,b1)は、それぞれ、b値を0として撮像した場合と比べて水成分が抑制された画像となる。
そして、本実施例では、生成機能17cが、以下の(式25)により、SDWI1(TR1,TE1,b1)及びSDWI2(TR1,TE2,b1)を用いて、水成分が抑制されたT2マップT2tを生成する。
T2t=(TE2-TE1)/ln[SDWI1(TR1,TE1,b1)/SDWI2(TR1,TE2,b1)] ・・・(式25)
上述した実施例2では、差分も併用するため、拡散強調イメージングによって撮像される画像は、拡散の方向性の影響をなくしたisotropic DWIであってもよい。
また、上述した実施例2では、収集時に拡散強調イメージングをb=100~200程度として併用した場合、実施例1(b=0)と比べて、短いTEでも同等の水成分の抑制効果が得られる。
また、上述した実施例2のように拡散強調イメージングのb値を用いた方法では、TEまでの間に動きを強調するためのMPG用の傾斜磁場が印加されるため、b値が大きいほど、最小のTEが長くなって定量パラメータマップのSNRが低下するが、TEが多少でも離れていれば、T2マップを求めることは可能である。
また、上述した実施例2のように拡散強調イメージングのb値を用いた方法の利点として、水成分の画像ではなく、組織成分が支配的な画像が直接得られるため、実施例1のようにTEの差のみを用いる場合と比べて、差分によるSNRの劣化が少ない。
また、実施例1の方法のみではCSFの動きによるモーションアーチファクトが実質部へ入り込み、以降の定量パラメータマップ等で誤差が生じることがあり得るが、実施例2のように拡散強調イメージングを用いる場合は元画像上でCSFの信号が抑制されるため、モーションアーチファクトを抑制することが可能である。
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。本実施例は、実施例1と同様に水と組織との間のT2の差異を利用しつつ、実施例2と同様に水と組織との間のADCの差異を利用して、MR信号に含まれる水成分と組織成分とを分離するものである。
すなわち、本実施例では、収集機能17aが、同一の被検体の画像を、TE及びTIを変えながら、0でないb値を用いて撮像することによって、組織のT2に近いTEで、水成分が抑制されるようなb値を用いて撮像した画像と、水成分が支配的となるような長いTEで、水成分が抑制されるようなb値を用いて撮像した画像とを含む複数の画像を収集する。
例えば、収集機能17aは、SE法の拡散強調イメージングによってTEを変えながら0でないb値を用いて被検体の画像を撮像することで、図3に示したSDWI1(TE1,b1)、SDWI2(TE2,b1)及びSDWI3(TE3,b1)の3つの収集サンプル点に対応する3つの画像を収集する。
なお、本実施例では、SDWI1(TE1,b1)、SDWI2(TE2,b1)及びSDWI3(TE3,b1)の各点に対応する画像を、それぞれSDWI1(TR1,TE1,b1)、SDWI2(TR1,TE2,b1)及びSDWI3(TR1,TE3,b1)と表す。
ここで、TE1には、MRI装置100で設定し得る最短の値が用いられ、TE2には、TE1より長い、組織のT2に近い値が用いられ、TE3には、TE1及びTE2より十分に長い値が用いられる。これにより、SDWI3(TR1,TE3,b1)は、水成分が支配的な画像となる。そして、b1には、0より大きい値が用いられる。これにより、SDWI1(TR1,TE1,b1)及びSDWI2(TR1,TE2,b1)は、それぞれ、b値を0として撮像した場合と比べて水成分が抑制された画像となる。
そして、本実施例では、分離機能17bが、以下の(式26)により、SDWI1(TR1,TE1,b1)及びSDWI3(TR1,TE3,b1)を用いて、水成分が抑制された画像St(TR1,TE1,b1)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式27)により、SDWI2(TR1,TE2,b1)及びSDWI3(TR1,TE3,b1)を用いて、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,b1)を生成する。
St(TR1,TE1,b1)=SDWI1(TR1,TE1,b1)-α*SDWI3(TR1,TE3,b1) ・・・(式26)
St(TR1,TE2,b1)=SDWI1(TR1,TE2,b1)-α*SDWI3(TR1,TE3,b1) ・・・(式27)
なお、水成分と組織成分とをより正確に分離することが求められる場合には、分離機能17bは、以下の(式28)により、SDWI3(TR1,TE3,b1)から水成分の画像Sw(TR1,TE1,b1)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式29)により、Sw(TR1,TE1,b1)をSDWI1(TR1,TE1,b1)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE1,b1)を生成する。
Sw(TR1,TE1,b1)=SDWI3(TR1,TE3,b1)*exp[(TE3-TE1)/T2w] ・・・(式28)
St(TR1,TE1,b1)=SDWI1(TR1,TE1,b1)-Sw(TR1,TE1,b1) ・・・(式29)
さらに、分離機能17bは、以下の(式30)により、SDWI3(TR1,TE3,b1)から水成分の画像Sw(TR1,TE2,b1)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式31)により、Sw(TR1,TE2,b1)をSDWI2(TR1,TE2,b1)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,b1)を生成する。
Sw(TR1,TE2,b1)=SDWI3(TR1,TE3,b1)*exp[(TE3-TE2)/T2w] ・・・(式30)
St(TR1,TE2,b1)=SDWI2(TR1,TE2,b1)-Sw(TR1,TE2,b1) ・・・(式31)
ここで、(式28)及び(式30)に含まれるT2Wには、実施例1と同様に、仮定又は測定された水のT2が設定される。
そして、本実施例では、生成機能17cが、以下の(式32)により、St(TR1,TE1,b1)及びSt(TR1,TE2,b1)を用いて、水成分が抑制されたT2マップT2tを生成する。
T2t=(TE2-TE1)/ln[St(TR1,TE1,b1)/St(TR1,TE2,b1)] ・・・(式32)
上述した実施例3のように拡散強調イメージングを用いて水成分を抑制する方法は、実施例1のようにT2の差異を利用して水成分を抑制する方法と組み合わせることも可能である。すなわち、拡散強調イメージングを用いた方法では、b値とTEの両方を用いて収集したデータを用いることも可能であり、b値又はTEを単独で用いる場合と比べて、それぞれが小さな値であっても水成分の抑制効果を向上することができる。例えば、ある程度の大きさのb1(b1~200[s/mm2]を用いながら3段階のTEで元画像を収集して、TEの長い画像をTEの短い画像から差分すれば、実施例1のようにb0≒0を用いる場合と比べてCSFの信号自体を抑制することができるので、CSFの抑制効果が大きくなり、モーションアーチファクトも低減する。または、同じ抑制効果でよければ、水成分が支配的となるような画像のTE(TE3)を短くできるという効果も得られる。
(実施例4)
次に、実施例4について説明する。本実施例は、同一の被検体の画像をTE及びb値を変えて撮像することによって、水成分が抑制されたADCマップを生成するものである。
すなわち、本実施例では、収集機能17aが、DWIを撮像する拡散強調イメージングによって、組織のT2に近い第1のTEと、水成分が支配的となるような長い第2のTEと、第1のb値と、第1のb値と比べて水成分が抑制されるような第1のb値より大きい第2のb値とを用いて被検体の画像を撮像することによって、第1のTE及び第1のb値で撮像した第1の画像と、第2のTE及び第1のb値で撮像した第2の画像と、第1のTE及び第2のb値で撮像した第3の画像とを収集する。
例えば、収集機能17aは、SE法の拡散強調イメージングによってTE及びb値を変えて被検体の画像を撮像することで、図3に示したSSE2(TE2,b0)、SSE3(TE3,b0)及びSDWI4(TE2,b2)の3つの収集サンプル点に対応する3つの画像を収集する。
なお、本実施例では、SSE2(TE2,b0)、SSE3(TE3,b0)及びSDWI4(TE2,b2)の各点に対応する画像を、それぞれSSE2(TR1,TE2,b0)、SSE3(TR1,TE3,b0)及びSDWI4(TR1,TE2,b2)と表す。
ここで、TE2には、組織のT2に近い値が用いられ、TE3には、TE2より十分に長い値が用いられる。これにより、SSE3(TR1,TE3,b0)は、水成分が支配的な画像となる。そして、b2には、b0より大きい値が用いられる。これにより、SDWI4(TR1,TE2,b2)は、SSE3(TR1,TE3,b0)及びSSE2(TR1,TE2,b0)と比べて水成分が抑制された画像となる。なお、b0には、MRI装置100で設定し得る最小の値(例えば、b0<1[s/mm2])が用いられる。b0については、ある程度大きくすれば各画像における水成分の抑制効果が向上するものの、逆に信号強度及びADCのSNRが低下するので、T2に基づいて水成分を抑制する本実施例では、最小の値とするのが望ましい。
例えば、TE3を300[ms]程度とすることで、SSE3(TR1,TE3,b0)において水成分が支配的となる。また、b2>1000[s/mm2]とすることで、SDWI4(TR1,TE2,b2)における水成分を略ゼロにすることができる。
そして、本実施例では、分離機能17bが、収集機能17aによって収集された第1の画像から第2の画像を重み付けして差分することによって、第1のb値に対応する水成分が抑制された画像を分離画像として生成する。
すなわち、本実施例では、SDWI4(TR1,TE2,b2)では水成分が略ゼロになっているため、SSE2(TR1,TE2,b0)のみ、水成分を抑制する。
例えば、分離機能17bは、以下の(式33)により、SSE2(TR1,TE2,b0)からSSE3(TR1,TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,b0)を生成する。
St(TR1,TE2,b0)=SSE2(TR1,TE2,b0)-α*SSE3(TR1,TE3,b0) ・・・(式33)
そして、本実施例では、生成機能17cが、収集機能17aによって収集された複数の画像を用いて、水成分及び組織成分を含む全体のADCマップを生成する。また、生成機能17cは、収集機能17aによって収集された第3の画像と、分離機能17bによって生成された分離画像とを用いて、水成分が抑制されたADCマップを生成する。
例えば、生成機能17cは、以下の(式34)により、SSE2(TR1,TE2,b2)及びSDWI4(TR1,TE2,b2)を用いて、全体のADCマップADCorigを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式35)により、SDWI4(TR1,TE2,b2)と、分離機能17bによって生成されたSt(TR1,TE1,b0)とを用いて、水成分が抑制されたADCマップADCtを生成する。なお、ADCtは、水成分が抑制されたことによって組織成分のADCマップとなっていることを意味している。
ADCorig=ln[SSE2(TR1,TE2,b0)/SDWI4(TR1,TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式34)
ADCt=/ln[St(TR1,TE2,b0)/S DWI4(TR1,TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式35)
上述した実施例4では、b2の画像で水成分の画像との差分を行わないため、SNRの低下がない。また、b0の画像は水成分の画像との差分があるためSNRが低下するが、b0の画像のみ加算平均を多くしておけばSNRの低下を最小限にできる。また、b値を複数段階取得する場合でも、b2を水信号が略ゼロとなる値(b2>1000[s/mm2])にしておけば、差分は不要である。
(実施例5)
次に、実施例5について説明する。本実施例は、実施例4と同様に、同一の被検体の画像をTE及びb値を変えて撮像することによって水成分が抑制されたADCマップを生成するものであるが、b値ごとに水成分の画像を生成して差分することで、水成分の抑制の精度をより向上させるものである。
すなわち、本実施例では、収集機能17aが、実施例4と同様に、DWIを撮像する拡散強調イメージングによって、組織のT2に近い第1のTEと、水成分が支配的となるような長い第2のTEと、第1のb値と、第1のb値と比べて水成分が抑制されるような第1のb値より大きい第2のb値とを用いて被検体の画像を撮像することによって、第1のTE及び第1のb値で撮像した第1の画像と、第2のTE及び第1のb値で撮像した第2の画像と、第1のTE及び第2のb値で撮像した第3の画像とを収集する。
また、分離機能17bが、実施例4と同様に、収集機能17aによって収集された第1の画像から第2の画像を重み付けして差分することによって、第1のb値に対応する水成分が抑制された画像を分離画像として生成する。
そして、本実施例では、生成機能17cが、仮定又は測定された水の拡散係数を用いて、収集機能17aによって収集された第2の画像から第2のb値に対応する水成分の画像を生成し、当該画像を第3の画像から差分することによって、第2のb値に対応する水成分が抑制された画像を生成し、当該画像と、分離機能17bによって生成された分離画像とを用いて、水成分が抑制されたADCマップを生成する、
例えば、生成機能17cは、以下の(式36)により、SSE3(TR1,TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けすることによって水成分の画像Sw(TR1,TE2,b0)を生成した後に、以下の(式37)により、Sw(TR1,TE2,b0)から水成分の画像Sw(TR1,TE2,b2)を生成する。
Sw(TR1,TE2,b0)=α*SSE3(TR1,TE3,b0) ・・・(式36)
Sw(TR1,TE2,b2)=Sw(TR1,TE2,b0)*exp[-(b2-b0)*ADCw] ・・・(式37)
ここで、(式36)に含まれるADCWは、仮定又は測定された水のADCが設定される。例えば、ADCWには、理論値を用いて仮定された水のADCの値が設定される(例えば、ADCw=3.0*10-3[mm2/s])。または、ADCWには、以下の(式38)により、Sw(TR1,TE1,b0)及びSw(TR1,TE2,b2)それぞれにおける水成分が100%に近いボクセル(例えば、脳室等のボクセル)の信号強度Sから算出されたADCの値が設定される。
ADCw=ln[Sw(TR1,TE1,b0)/Sw(TR1,TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式38)
その後、生成機能17cは、以下の(式39)により、Sw(TR1,TE2,b2)をSDWI4(TR1,TE2,b2)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,b2)を生成する。
St(TR1,TE2,b2)=SDWI4(TR1,TE2,b2)-Sw(TR1,TE2,b2) ・・・(式39)
そして、生成機能17cは、以下の(式40)により、SSE2(TR1,TE2,b2)及びSDWI4(TR1,TE2,b2)を用いて、全体のADCマップADCorigを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式41)により、St(TR1,TE2,b2)と、分離機能17bによって生成されたSt(TR1,TE2,b0)とを用いて、水成分が抑制されたADCマップADCtを生成する。
ADCorig=ln[SSE2(TR1,TE2,b0)/SDWI4(TR1,TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式40)
ADCt=ln[St(TR1,TE2,b0)/St(TR1,TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式41)
なお、ここでは、b0とb2とを用いた2点法によってADCtを求めることとしたが、本実施例はこれに限られず、例えば、n=0,1,2,・・・Nとした複数のbnを用いたN点法の最小二乗近似によりADCtを求めるようにしてもよい。
その場合には、収集機能17aは、b値をn=0,1,2,・・・Nと変えることで、SSE2(TR1,TE2,b0)と、SSE3(TR1,TE3,b0)と、複数のSDWI(TR1,TE2,bn)を収集する。
また、生成機能17cが、以下の(式42)により、SSE3(TR1,TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けすることによって水成分の画像Sw(TR1,TE2,b0)を生成した後に、以下の(式43)により、bnごとに、Sw(TR1,TE2,b0)から水成分の画像Sw(TR1,TE2,bn)を生成する。
Sw(TR1,TE2,b0)=α*SSE3(TR1,TE3,b0) ・・・(式42)
Sw(TR1,TE2,bn)=Sw(TR1,TE2,b0)*exp[-(bn-b0)*ADCw] ・・・(式43)
ここで、(式41)に含まれるADCWは、上述した例と同様に、仮定又は測定された水のADCが設定される。
その後、生成機能17cは、以下の(式44)により、bnごとに、Sw(TR1,TE2,bn)をSDWI(TR1,TE2,bn)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TR1,TE2,bn)を生成する。
St(TR1,TE2,bn)=SDWI(TR1,TE2,bn)-Sw(TR1,TE2,bn) ・・・(式44)
そして、生成機能17cは、以下の(式45)により、SSE2(TR1,TE2,b2)及びbnごとに収集されたSDWI(TR1,TE2,bn)を用いて最小二乗法による近似を行うことで、全体のADCマップADCorigを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式46)により、bnごとに生成されたSt(TR1,TE2,bn)と、分離機能17bによって生成されたSt(TR1,TE2,b0)とを用いて最小二乗法による近似を行うことで、水成分が抑制されたADCマップADCtを生成する。
ADCorig=ln[SSE2(TR1,TE2,b0)/SDWI4(TR1,TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式45)
ADCt=ln[St(TR1,TE2,b0)/St(TR1,TE2,bn)]/(bn-b0) ・・・(式46)
上述した実施例5では、実施例4とは異なり、b値の大きさに関わらず、水成分を抑制することが可能である。
また、b値がある程度小さいうちは実施例5の方法で水成分の抑制を行い、b値がある程度大きくなった場合は、水成分が無視できるようになるため、実施例4の方法と同様に、差分はせずに元の信号強度とする組み合わせも可能である。その場合、例えば、b=1000[s/mm2]を方法の切り替えの境界とする。
また、通常、脳のDWIは、CSF等の定量性が障害になることも多いが、もしもCSFの部分を含めて画像全体で正確性を期す場合には、100%が水成分であるボクセルを予め除外しておき、別途、水成分の抑制は行わずに生成した水成分の定量パラメータと合成するようにしてもよい。また、拡散強調イメージングのパラメータはADCに限らず、MPGの方向を複数に変えて収集したDTI(Diffusion Weighted Image)であるFA()Fractional Anisotropy)マップや、color encoded DTI map(拡散方向別RGBカラー表示DTIマップ)、tractographyに水成分が抑制されたDWI信号を適用すれば、皮質等のようにCSFによるPVEが大きい部分での精度向上が期待できる。
また、従来のcomputed DWI(cDWI)では、あくまで、拡散強調イメージングによって小さいb値から大きいb値の画像を生成することによって腹部などでの腫瘍と正常組織とのCNR(Contrast-to-Noise Ratio)を向上させるものであったが、上述した方法によれば、ADCやFAまでの定量パラメータの改善が可能になる。
以上、実施例1~5について説明したが、各実施例は適宜に組み合わせて実施することも可能である。
例えば、上述した実施例2及び3では、水成分が抑制されたT2マップT2tを生成する場合の例を説明し、実施例4及び5では、全体のADCマップ、及び、水成分が抑制されたADCマップを生成する場合の例を説明したが、いずれの実施例でも、収集機能17aが必要な画像を追加で収集することによって、生成機能17cは、実施例1と同様の方法で、全体の及び水成分が抑制されたT1マップ、T2マップ及びPDマップを生成することが可能である。また、実施例1でも、収集機能17aが必要な画像を追加で収集することによって、生成機能17cは、実施例4及び5と同様の方法で、全体の及び水成分が抑制されたADCマップを生成することが可能である。
そして、いずれの実施例でも、生成機能17cが必要な定量パラメータマップを生成することによって、合成機能17dは、実施例1と同様に、各種の合成コントラスト強調マップを作成することが可能である。
(実施例6)
次に、実施例6について説明する。本実施例は、拡散強調イメージングによって撮像した画像を用いて、静止している水成分及び組織成分に加えて、動いている血流成分をさらに分解するものである。
例えば、長いTEで撮像した画像では、水成分は、動いているものも静止しているものも区別できないため両方含まれるが、血流成分は、水成分とT2が異なる(血流成分の方が水成分よりT2が短い)ため含まれない。したがって、長いTEで撮像した画像を短いTEで撮像した画像から差分すれば、血流成分と組織成分とが残ることになる。また、血流成分は、動きによって、静止している水成分と比べてADCが大きくなるため、拡散強調イメージングにおけるb値の違いによって、水成分と血流成分とを分離することができる。これらのことから、単位ボクセル内に水成分、血流成分及び組織成分の3つの成分が含まれると考え、それぞれの間のT2及びADCの差異を利用すれば、各成分を分離することが可能である。
ここで、本実施例では、単位ボクセル内に水成分、血流成分及び組織成分の3つの成分が含まれる場合のMR信号モデルを3成分モデル(3-comparmentモデル)と呼ぶ。
例えば、3成分モデルについて、単位ボクセル内の水成分の体積をVw、血流成分の体積をVb、組織成分の体積をVtとすると、単位ボクセルの体積Vは、以下の式(47)で表される。また、水成分のPDをPDw、血流成分のPDをPDb、組織成分のPDをPDtとすると、単位ボクセル内の平均プロトン密度PDは、以下の(式48)で表される。
V=Vw+Vb+Vt=1 ・・・(式47)
PD=Vw*PDw+Vb*PDb+Vt*PDt ・・・(式48)
そして、水成分のMR信号をSw、血流成分のMR信号をSb、組織成分のMR信号をSt
とすると、各成分のMR信号は、それぞれ以下の(式49)、(式50)及び(式51)で表される。
Sw=Vw*PDw*exp(-b*ADCw) ・・・(式49)
Sb=Vb*PDb*exp(-b*ADCb) ・・・(式50)
St=Vt*PDt*exp(-b*ADCt) ・・・(式51)
ここで、ADCwは水のADC、ADCbは血流のADC、ADCtは組織のADCであり、それぞれの大小関係は、ADCb>ADCw>ADCtである。
例えば、実施例1のようにT2の差異を利用して分離できるのは、St+Sbと、Swである。また、GMNを適用して画像を収集したとすると、CSFの動きによる成分はSwに含まれると考えられるため、Sbは、T1、T2が水成分と組織成分の略中間である血流成分とみなせる。したがって、水成分が抑制された後の画像は、S-Sw=St+Sbとなるので、StとSbの2成分を分離する問題として考えることができる。
この一方で、例えば、実施例2のようなADCの差異を利用した2成分の分離を3成分に拡大することで、同様に3成分を分離することもできる。しかしながら、ADCの差異のみで3成分を分離する場合には、少なくとも4段階のb値(b0、b1、b2、b3)を用いることになり、大きなb値が必要になるため、TEも延長してSNRが低下するのに加え、解析的にも精度が不十分になると考えられる。
図7は、実施例6に係る拡散強調イメージングによって収集されたDWIにおける信号強度とb値との関係を示す図である。
ここで、図7の(a)のグラフは、水成分の信号Sw、血流成分の信号Sb及び組織成分の信号Stそれぞれについて、3成分モデルに基づくDWIの信号強度とb値との関係を示している。また、図7の(b)のグラフは、水成分の信号Sw、血流成分の信号Sb及び組織成分の信号Stそれぞれについて、b=0及びTE=300[ms]とした長いTEで撮像された画像を差分した後のDWIの信号強度とb値との関係を示している。
なお、図7の(a)及び(b)のグラフは、以下のように各パラメータを設定した場合のDWIの信号強度とb値との関係を示している。
PDw=1、PDb=1、PDt=1、Vw=0.2、Vb=0.2、Vt=0.6、T1w=4000[ms]、T1b=1600[ms]、T1t=1000[ms]、T2w=1910[ms]、T2b=200[ms]、T2t=100[ms]、ADCw=3.0*10-3[mm2/s]、ADCb=1.0*10-2[mm2/s]、ADCt=8.0*10-4[mm2/s]、TR=10000[ms]、TE=80[ms]
例えば、図6の(a)に示すように、b値をb0=0[s/mm2]、b1=300[s/mm2]、b2=1000[s/mm2]、b3=2000[s/mm2]程度の4段階に設定することによって、b>1000[s/mm2]でSw≒0となるため、長いTEで撮像された画像を差分しなくても、3成分を分離することは可能である。しかしながら、この場合には、4段階のb値を用いるために大きなb値が必要になり、それに伴って最短のTEが長くなるため、TEの延長によってSNRが低下するのに加え、解析的にも精度が不十分になると考えられる。
これに対し、例えば、図6の(b)に示すように、長いTEで撮像された画像を差分した場合には、b>300[s/mm2]でSw≒0となるため、b0=0[s/mm2]、b1=300[s/mm2]、b2=1000[s/mm2]程度の3段階のb値でも、3成分を分離することが可能である。すなわち、図6の(a)に示す4段階のb値のうちの最も大きいb3を省いて、3成分を分離することができる。したがって、この場合には、必要となる最大のb値を小さくすることができ、その結果、TEを短縮することができ、SNRが向上する。
このようなことから、本実施例では、T2の差異を利用して水成分を分離した後に、ADCの差異を利用して血流成分と組織成分とを分離することで、水成分、血流成分及び組織成分の3成分を分離する。
すなわち、本実施例では、収集機能17aが、DWIを撮像する拡散強調イメージングによって、3つの異なるb値を用いて被検体の画像を撮像する。
具体的には、収集機能17aは、組織のT2に近い第1のTEと、水成分が支配的となるような第1のエコー時間より長い第2のTEと、信号内で水成分、組織成分及び血流成分の全てが混在するような第1のb値と、第1のb値と比べて信号内で組織成分及び水成分が支配的となるような第1のb値より大きい第2のb値と、第2のb値と比べて信号内で組織成分が支配的となるような第2のb値より大きい第3のb値とを用いて被検体の画像を撮像することによって、第1のTE及び第1のb値で撮像した第1の画像と、第2のTE及び第1のb値で撮像した第2の画像と、第1のTE及び第2のb値で撮像した第3の画像と、第2のTE及び第2のb値で撮像した第4の画像と、第2のTE及び第3のb値で撮像した第5の画像とを収集する。
例えば、収集機能17aは、SE法の拡散強調イメージングによってTE及びb値を変えて被検体の画像を撮像することで、図3に示したSSE1(TE1,b0)、SSE2(TE2,b0)、SSE3(TE3,b0)、SDWI1(TE1,b1)、SDWI2(TE2,b1)、SDWI3(TE3,b1)及びSDWI4(TE2,b2)の7つの収集サンプル点に対応する7つの画像を収集する。
ここで、TE1には、MRI装置100で設定し得る最短の値が用いられる。これにより、SSE1(TE1,b0)は、PD強調画像となる。また、TE2には、TE1より長い、組織のT2に近い値が用いられる。これにより、SSE2(TE2,b0)は、T2強調画像となる。また、TE3には、TE1及びTE2より十分に長い値が用いられる。これにより、SSE3(TE3,b0)は、水成分が支配的な画像となる。また、b0には、信号内に水成分、組織成分及び血流成分の全てが混在するような値が用いられる。また、b1には、b0と比べて信号内で組織成分及び水成分が支配的となるような、b0より大きい値が用いられる。また、b2には、b1と比べて信号内で組織成分が支配的となるような、b1より大きい値が用いられる。なお、各画像を収集する際のTRは一定とし、特に水成分のT1を正確に求めたい場合は十分に大きくする(例えば、TR>5*T1w)。
これにより、水成分は、b=b0及びb=b1の画像のみに存在することになり、b=b2の画像では無視することができる。また、血流成分は、b=b0の画像のみに存在することになり、b=b1及びb=b2の画像では無視することができる。また、組織成分は、b=b0、b=b1及びb=b2の全ての画像に存在することになる。
例えば、各撮像パラメータの値には、以下の値が用いられる。
TE1=最短値、TE2=80[ms]、TE3=300[ms]、b0=0[s/mm2]、b1=300[s/mm2]、b2=1000[s/mm2]
そして、本実施例では、分離機能17bが、収集機能17aによって収集された3つの異なるb値それぞれで撮像した画像を解析することによって、静止している水成分及び組織成分に加えて、動いている血流成分をさらに含めた3つの成分を分離した分離画像を生成する。
具体的には、分離機能17bは、収集機能17aによって収集された第1の画像から第2の画像を重み付けして差分することによって、水成分が抑制されて組織成分及び血流成分のみが残った画像を第1の分離画像として生成し、第3の画像から第4の画像を重み付けして差分することによって、水成分が抑制されて組織成分のみが残った画像を第2の分離画像として生成し、第1の分離画像及び第2の分離画像を用いて、水成分及び組織成分が抑制されて血流成分のみが残った第3の分離画像を生成する。
例えば、分離機能17bは、以下の(式52)により、SSE1(TE1,b0)からSSE3(TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像Swsup1(TE1,b0)を生成する。すなわち、組織成分及び血流成分のみが残った画像St(TE1,b0)+Sb(TE1,b0)が得られる。
Swsup1(TE1,b0)=SSE1(TE1,b0)-α*SSE3(TE3,b0) ・・・(式52)
また、分離機能17bは、以下の(式53)により、SSE2(TE2,b0)からSSE3(TE3,b0)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像Swsup2(TE2,b0)を生成する。すなわち、組織成分及び血流成分のみが残った画像St(TE2,b0)+Sb(TE2,b0)が得られる。
Swsup2(TE2,b0)=SSE2(TE2,b0)-α*SSE3(TE3,b0) ・・・(式53)
また、分離機能17bは、以下の(式54)により、SDWI1(TE1,b1)からSDWI3(TE3,b1)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像Swsup1(TE2,b1)を生成する。すなわち、Sb(TE1,b1)≒0であるため、組織成分のみが残った画像St(TE1,b1)が得られる。
Swsup1(TE1,b1)=SDWI1(TE1,b1)-α*SDWI3(TE3,b1) ・・・(式54)
また、分離機能17bは、以下の(式55)により、SDWI2(TE2,b1)からSDWI3(TE3,b1)を重み付け係数αで重み付けして差分することによって、水成分が抑制された画像Swsup2(TE2,b1)を生成する。すなわち、Sb(TE2,b1)≒0であるため、組織成分のみが残った画像St(TE2,b1)が得られる。
Swsup2(TE2,b1)=SDWI2(TE2,b1)-α*SDWI3(TE3,b1) ・・・(式55)
そして、本実施例では、生成機能17cが、収集機能17aによって収集された複数の画像を用いて、水成分及び組織成分を含む全体のADCマップを生成する。また、生成機能17cは、分離機能17bによって生成された第1の分離画像、第2の分離画像及び第3の分離画像を用いて、水成分、血流成分及び組織成分の3つの成分を分離したADCマップを生成する。
例えば、生成機能17cは、実施例4及び5と同様に、以下の(式56)により、SSE2(TE2,b2)及びSDWI4(TE2,b2)を用いて、全体のADCマップADCorigを生成する。
ADCorig=ln[SSE1(TE2,b0)/SDWI4(TE2,b2)]/(b2-b0) ・・・(式56)
また、生成機能17cは、b=b2の画像では水成分及び血流成分を無視することができることから、以下の(式57)により、SDWI4(TE2,b2)と、分離機能17bによって生成されたSwsup1(TE2,b1)とを用いて、組織成分のADCマップADCtを生成する。
ADCt=ln[Swsup1(TE2,b1)/SDWI4(TE2,b2)]/(b2-b1) ・・・(式57)
また、生成機能17cは、SSE2(TE2,b0)、SDWI2(TE2,b1)及びSDWI4(TE2,b2)を用いて、bi-exponentialのモデルに基づく非線形最小二乗法による近似を行うことで、血流成分のADCマップADCbを生成する。
また、生成機能17cは、TE=TE3の画像では水成分が支配的となっていることから、以下の(式58)により、SSE3(TE3,b0)SDWI3(TE3,b1)を用いて、水成分のADCマップADCtを生成する。
ADCw=ln[SSE3(TE3,b0)/SDWI3(TE3,b1)]/(b1-b0) ・・・(式58)
さらに、生成機能17cは、以下の(式59)により、Swsup1(TE1,b1)と、生成機能17cによって生成されたADCtとを用いて、組織成分の画像St(TE1,b0)を生成する。また、生成機能17cは、以下の(式60)により、Swsup2(TE1,b1)と、生成機能17cによって生成されたADCtとを用いて、組織成分の画像St(TE2,b0)を生成する。
St(TE1,b0)=Swsup1(TE1,b1)/exp[-(b1-b0)*ADCt] ・・・(式59)
St(TE2,b0)=Swsup2(TE2,b1)/exp[-(b1-b0)*ADCt] ・・・(式60)
また、生成機能17cは、以下の(式61)により、Swsup1(TE1,b0)からSt(TE1,b0)を差分することで、血流成分の画像Sb(TE1,b0)を生成する。また、生成機能17cは、以下の(式62)により、Swsup2(TE2,b0)からSt(TE2,b0)を差分することで、血流成分の画像Sb(TE2,b0)を生成する。
Sb(TE1,b0)=Swsup1(TE1,b0)-St(TE1,b0) ・・・(式61)
Sb(TE2,b0)=Swsup2(TE2,b0)-St(TE2,b0) ・・・(式62)
また、生成機能17cは、以下の(式63)により、SSE1(TE1,b0)からSb(TE1,b0)及びSt(TE1,b0)を差分することで、水成分の画像Sw(TE1,b0)を生成する。また、生成機能17cは、以下の(式64)により、SSE1(TE2,b0)からSb(TE2,b0)及びSt(TE2,b0)を差分することで、水成分の画像Sw(TE2,b0)を生成する。
Sw(TE1,b0)=SSE1(TE1,b0)-Sb(TE1,b0)-St(TE1,b0) ・・・(式63)
Sw(TE2,b0)=SSE2(TE2,b0)-Sb(TE2,b0)-St(TE2,b0) ・・・(式64)
さらに、生成機能17cは、実施例1と同様に、以下の(式65)により、SSE1(TE1,b0)及びSSE2(TE2,b0)を用いて、全体のT2マップT2origを生成する。
T2orig=(TE2-TE1)/ln[SSE1(TE1,b0)/SSE2(TE2,b0)] ・・・(式65)
また、生成機能17cは、以下の(式66)により、Sw(TE1,b0)及びSw(TE2,b0)を用いて、水成分のT2マップT2wを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式67)により、Sb(TE1,b0)及びSb(TE2,b0)を用いて、血流成分のT2マップT2wを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式68)により、St(TE1,b0)及びSt(TE2,b0)を用いて、組織成分のT2マップT2wを生成する。
T2w=(TE2-TE1)/ln[Sw(TE1,b0)/Sw(TE2,b0)] ・・・(式66)
T2b=(TE2-TE1)/ln[Sb(TE1,b0)/Sb(TE2,b0)] ・・・(式67)
T2t=(TE2-TE1)/ln[St(TE1,b0)/St(TE2,b0)] ・・・(式68)
さらに、生成機能17cは、実施例1と同様に、以下の(式65)により、SSE1(TE1,b0)、T2orig及びADCorigを用いて、全体のT2マップT2origを生成する。
PDorig=SSE(TE1,b0)/DecayT2(TE1,T2orig)/DecayADC(b0,ADCorig) ・・・(式69)
また、生成機能17cは、以下の(式70)により、Sw(TE1,b0)、T2w及びADCwを用いて、水成分のPDマップPDwを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式71)により、Sb(TE1,b0)、T2b及びADCbを用いて、血流成分のPDマップPDbを生成する。また、生成機能17cは、以下の(式72)により、St(TE1,b0)、T2t及びADCtを用いて、組織成分のPDマップPDtを生成する。
PDw=Sw(TE1,b0)/DecayT2(TE1,T2w)/DecayADC(b0,ADCw) ・・・(式70)
PDb=Sb(TE1,b0)/DecayT2(TE1,T2b)/DecayADC(b0,ADCb) ・・・(式71)
PDt=St(TE1,b0)/DecayT2(TE1,T2t)/DecayADC(b0,ADCt) ・・・(式72)
ここで、DecayT2(TE1,T2orig)、DecayT2(TE,T2w)、DecayT2(TE,T2b)及びDecayT2(TE,T2t)は、それぞれ前述した(式5)により求められる。また、DecayADC(b0,ADCorig)、DecayADC(b0,ADCw)、DecayADC(b0,ADCb)及びDecayADC(b0,ADCt)は、それぞれ前述した(式6)により求められる。
なお、TE1<20[ms]である場合は、DecayT2≒1となるので、T2減衰の補正は不要である。また、b0≒0である場合は、DecayADC≒1となるので、ADC減衰の補正は不要である。
また、ここでは、ADCマップ、T2マップ及びPDマップの生成について説明したが、実施例1と同様にSIR1(TR1,TI1,TE1,b0)を用いることで、全体のT1マップT1orig、水成分のT1マップT1orig、血流成分のT1マップT1b及び組織成分のT1マップT1tを生成することも可能である。
そして、本実施例では、合成機能17dが、実施例1と同様に、生成機能17cによって生成された全体のT1マップT1orig、T2マップT2orig、及びPDマップPDorigと、水成分が抑制されたT1マップT1t、T2マップT2t、及びPDマップPDtとを組み合わせて用いて、任意の撮像パラメータに対応するSE法の合成コントラスト強調画像と、FLAIR法の合成コントラスト強調画像とを生成する。
なお、ここでは、SDWI3(TE3,b1)を収集する場合の例を説明したが、例えば、実施例1及び3のように仮定又は測定されたADCWを用いることで、以下の(式73)により、SSE3(TE3,b0)からSDWI3(TE3,b1)を生成してもよい。その場合には、SDWI3(TE3,b1)の収集は不要である。
SDWI3(TE3,b1)=SSE3(TE3,b0)*exp[-(b1-b0)*ADCW] ・・・(式73)
上述した実施例6では、組織成分と血流成分とはADCの差異が大きいため、ADCの差異が小さい水と組織とを分離する場合と比べて、ノイズによる解析上のエラーが小さくなる。また簡単のためTR>5*T1wとすれば、T1緩和は無視することができる。
以上、定量パラメータマップを生成する方法、又は、それらをもとに合成コントラスト強調画像を生成する広義のSynthetic MRIにおいて異なる組織が混在したボクセルにおけるPVEの影響を抑制する手法として、いくつかの実施例を説明したが、分離する組織の種類、定量パラメータマップの生成法(元画像の収集シーケンス種や算出アルゴリズム)や種類や、合成コントラスト強調画像の種類は上述したものに限定されず、拡張して用いることができる。本実施例では、元データ収集は一般的なSE系のシーケンスにて説明したが、近年、前述のMRFに代表されるように元画像収集や定量パラメータマップ生成の高速化(少ないデータからいかに高分解能かつ高精度のマップを生成するか)が進んできており、例えば収集部としてSSFP系シーケンス、スパイラルインコヒーレント収集などを用いて、データ解析により分離画像を生成する分離部としては、収集シーケンスに対応した信号モデルに基づいた辞書マッチングやコンボルーショナルニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)などの機械学習技術を用いて、分離して得られた水・組織成分の定量パラメータマップへの適用も可能である。
(実施例7)
次に、実施例7について説明する。本実施例は、上述した画像の差分において、差分によるSNRの低下や分離精度の低下を抑制するものである。
例えば、T2の差異を利用した差分では、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像において、そのTEが十分に長くない場合に、病変である浮腫等の組織に含まれるT2が長い部分が水成分として含まれてしまうことも考えられる。その場合には、単純な重み付き差分や水のT2から求めた信号強度の差分ではなく、差分する水成分が支配的な画像の信号強度やT2に対する閾値を設けて水成分と組織成分とを分離する方法もとり得る。同様に、ADCの差異を利用した分離では、ADCに対する閾値を設けて水成分と組織成分とを分離する方法もとり得る。
これについて、水成分と組織成分との混在によってPVEが生じている場合、T2やADCは水の値と組織の値との間で体積比に応じて連続的に変化するため、T2やADCに対する閾値によって水成分と組織成分とを完全に分離することは難しいが、T2やADCに対する閾値をマージンを設けて水の値と組織の値との中間に設定すれば、T2が比較的長い、又は、ADCが比較的大きい組織が差分によって消えるリスクは低減する。さらに、T2に対する閾値とADCに対する閾値とを組み合わせて分離することも可能である。
また、同一のSNRを有する画像間の1:1の差分では、noise SDが√2倍となるためSNRが1/√2に低下するが、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像では、ほぼ、水成分によるPVEがない組織成分のnoiseのみとなっており、組織成分の部分では差分によってSNRを劣化させるだけである。そのため、組織成分の部分は差分しないようにするのが望ましい。
このようなことから、本実施例では、分離機能17bが、信号強度が高い領域は差分され、かつ、信号強度が低い領域は差分されないように第1の画像から第2の画像を差分することによって、水成分が抑制された画像を分離画像として生成する。
すなわち、本実施例では、分離機能17bは、信号強度が所定の閾値より大きい信号は重み付けを1に設定し、信号強度が当該閾値以下の信号は重み付けを0に設定し、さらに、信号強度が当該閾値付近となる信号については0~1の間で滑らかに変化するように重み付けを設定するマスク関数を用いて第2の画像を重み付けした後に、当該第2の画像を第1の画像から差分することによって、分離画像を生成する。
図8は、実施例7に係る分離機能17bによって行われる分離画像の生成の一例を示す図である。
例えば、図8の(a)の上段に示すように、分離機能17bは、水成分が抑制されたT2マップの信号強度T2(x)に対して閾値T2thを設定する。例えば、T2thには、水成分が抑制されていない標準的なT2マップにおける組織のT2が用いられる。例えば、撮像対象が脳である場合は、100[msec]程度の値が設定される。
そして、図8の(a)の中段に示すように、分離機能17bは、T2(x)がT2thより大きい信号は重み付けを1に設定し、T2(x)がT2th以下の信号は重み付けを0に設定するマスク関数Mask(x)を生成する。
その後、図8の(a)の下段に示すように、分離機能17bは、Mask(x)にローパスフィルターによるスムージング処理を施すことで、T2(x)がT2th付近となる信号については0~1の間で滑らかに変化するように重み付けを設定するマスク関数Maskfil(x)を生成する。
また、別の方法として、例えば、図8の(b)の上段に示すように、分離機能17bは、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像S(x)に対して閾値Sthを設定する。ここで、Sthは、S(x)のnoiseの量に基づいて決められる。例えば、Sthには、S(x)のnoiseSDの3~4倍の値が設定される。
そして、図8の(b)の中段に示すように、分離機能17bは、S(x)がSthより大きい信号は重み付けを1に設定し、S(x)がSth以下の信号は重み付けを0に設定するマスク関数Mask(x)を生成する。
その後、図8の(b)の下段に示すように、分離機能17bは、Mask(x)にローパスフィルターによるスムージング処理を施すことで、T2(x)がT2th付近となる信号については0~1の間で滑らかに変化するように重み付けを設定するマスク関数Maskfil(x)を生成する。
こうしてMaskfil(x)を生成した後に、分離機能17bは、図8の(c)に示すように、Maskfil(x)と、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像S(x)との積を求めることで、信号値がゼロ又は小さい部分のnoiseが低減された画像Scor(x)を生成する。
そして、分離機能17bは、生成したScor(x)を水成分が抑制される前のPD強調画像やT2強調画像から差分することで、水成分が抑制された画像を生成する。これにより、水成分のみが抑制され、かつ組織成分のSNRが維持された分離画像が得られる。
なお、ここでは、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像をS(x)と表して説明したが、当該画像が2次元の画像S(x、y)である場合は、マスク関数及び変換後の画像もそれぞれMask(x,y)、Maskfil(x,y)及びScor(x,y)となり、3次元の画像S(x,y,z)である場合は、マスク関数及び変換後の画像もそれぞれMask(x,y,z)、Maskfil(x,y,z)及びScor(x,y,z)となる。
(実施例8)
次に、実施例8について説明する。本実施例は、実施例7と同様に、差分によるSNRの低下や分離制度の低下を抑制するものであるが、マスク関数の代わりに非線形関数を用いるものである。
すなわち、本実施例では、分離機能17bが、信号強度が所定の閾値以下の信号について信号強度を0~1倍の範囲で非線形に変換する非線形関数を用いて第2の画像を変換した後に、当該第2の画像を第1の画像から差分することによって、分離画像を生成する。
図9は、実施例8に係る分離機能17bによって行われる分離画像の生成の一例を示す図である。
例えば、図9の右下に示すように、分離機能17bは、分離機能17bは、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像S(x)に対して閾値Sthを設定する。ここで、Sthは、S(x)のnoiseの量に基づいて決められる。例えば、Sthには、S(x)のnoiseの3~4倍の値が設定される。
そして、図9の右上に示すように、分離機能17bは、S(x)がSth以下の信号について信号強度を0~1倍の範囲で非線形に変換する非線形関数F(S)を生成する。ここで、F(S)は、Sthを境に、S(x)<Sthの範囲では変換後の信号強度が0まで滑らかに低下するようにS(x)を変換する関数である。
その後、分離機能17bは、図9の左上に示すように、F(S)を用いてS(x)を変換することで、実施例7と同様に、信号値がゼロ又は小さい部分のnoiseが低減された画像Scor(x)を生成する。
そして、分離機能17bは、生成したScor(x)を水成分が抑制される前のPD強調画像やT2強調画像から差分することで、水成分が抑制された画像を生成する。これにより、水成分のみが抑制され、かつ組織成分のSNRが維持された分離画像が得られる。
図10は、実施例8に係る分離機能17bによって用いられる非線形関数の一例を示す図である。
例えば、図10に示すように、F(x)は、xに対する閾値を1としたものであり、x<1の範囲で、xを0.5倍の値から0倍の値まで滑らかに低下するように変換する関数である。例えば、F(x)は、sigmoid関数を変形したものであり、以下の(式74)で表される。
F(x)=x/{1+exp[-a*(|x|-1)]} ・・・(式74)
ここで、閾値付近における変換後の信号強度の変化の滑らかさは、パラメータaによって制御することができる。具体的には、aを小さくするほど、閾値付近で、変換後の信号強度であるF(x)がより滑らかに変化するようになる。
例えば、分離機能17bは、x=S/SthとしてF(x)を求め、Scor=Sth*F(x)により、変換後の画像Scorを生成する。これにより、noiseが低減され、かつ、水成分と組織成分との境界も滑らかに接続された画像が得られる。
なお、ここでは、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像をS(x)と表して説明したが、当該画像が2次元の画像S(x、y)である場合は、変換用の非線形関数及び変換後の画像もそれぞれF(x,y)及びScor(x,y)となり、3次元の画像S(x,y,z)である場合は、変換用の非線形関数及び変換後の画像もそれぞれF(x,y,z)及びScor(x,y,z)となる。
上述した実施例8は、汎用的な画像処理方法として、画像上でSNRが低い部分を改善するための方法として用いることも可能である。
以上、水成分が支配的となるような長いTEを差分することによって水成分を抑制する場合にSNRが低い部分の劣化を抑制するための方法として、いくつかの実施例を説明したが、実施例7で説明したT2マップに基づく方法では、T2マップが必要になるものの、閾値にT2という絶対値を用いることができるのが最大の利点である。また、実施例7で説明した長いTEの画像の信号強度に基づく方法では、閾値を決めるためにノイズの測定が必要になるが、いったん撮像条件が決まれば毎回測定しなくても経験値を使用できると考えられる。
なお、ここでは、ADCについては説明していないが、T2と同様に、水のADCと組織のADCとの中間の値であるADC=2*10-3[mm2/s]等を閾値として用いることで、実施例7で説明したT2マップに基づく方法を同様に適用することが可能である。
(実施例9)
次に、実施例9について説明する。本実施例は、実施例7や実施例8と同様に、差分によるSNRの低下や分離制度の低下を抑制するものであるが、簡便な指標値を用いた重み付け差分を用いるものである。
例えば、T2の差異を利用した差分では、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像において、そのTEが組織のT2に比べて十分に長くない場合や、そのTEに比べて組織のT2自体が長い場合に、組織成分の信号強度が水成分の信号強度と比べて無視できない値となり、上述した実施例7や実施例8の方法でも、水成分と組織成分との区別が難しくなることもあり得る。
これに対し、水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像において組織成分が無視できない値となるような場合でもより正確に水成分と組織成分とを分離する方法として、例えば、4点以上の収集サンプル点で収集した、特に長いTEで撮像したものを多く含む画像があれば、最小二乗法を用いて分離を行う方法も考えられる。しかしながら、そのような方法では、画像の収集サンプル点が少ない場合にエラーが大きくなる。
このようなことから、本実施例では、簡便な指標を用いて、水成分と組織成分とをより精度よく分離できるようにしている。
すなわち、本実施例では、分離機能17bが、収集機能17aによって収集された複数の画像のうちのTEが異なる少なくとも3つの画像に基づいて、水成分と組織成分との比率を反映した指標値を算出し、第2の画像を指標値に応じて重み付けした後に第1の画像から差分することによって、分離画像を生成する。
具体的には、分離機能17bは、TEが異なる3つの画像を用いて、TEが短い画像と中間の画像から得られるT2をT2fastとして算出し、TEが長い画像と中間の画像とから得られるT2をT2slowとして算出する。
例えば、S(TE1)、S(TE2)、S(TE3)とし、TE3が水成分が支配的となるような長いTEであるとした場合に、分離機能17bは、以下の(式75)及び(式76)により、T2fast及びT2slowをそれぞれ算出する。
T2fast=(TE2-TE1)/ln(S1/S2) ・・・(式75)
T2slow=(TE3-TE2)/ln(S2/S3) ・・・(式76)
さらに、分離機能17bは、以下の(式77)により、T2fastとT2slowとの比率T2ratioを算出する。
T2ratio=T2fast/T2slow ・・・(式77)
ここで、ボクセル内の成分が単一である場合、すなわちボクセル内で水成分及び組織成分のいずれか一方が支配的である場合は、T2ratioは1に近付くことになる。逆に、ボクセル内で水成分及び組織成分が半々程度ある場合には、T2ratioは0に近付くことになる。
そし、分離機能17bは、以下の(式77)により、S(TE3)をT2ratioに応じて決められた重み付け係数αcorで重み付けしてS(TE1)から差分することによって、水成分が抑制された画像S(TE1)を生成する。また、分離機能17bは、以下の(式78)により、S(TE3)をT2ratioに応じて決められた重み付け係数αcorで重み付けしてS(TE2)から差分することによって、水成分が抑制された画像St(TE2)を生成する。
St(TE1)=S(TE1)-αcor*S(TE3) ・・・(式77)
St(TE2)=S(TE2)-αcor*S(TE3) ・・・(式78)
このとき、分離機能17bは、組織成分が支配的であるか、水成分と組織成分とが混在しているか、水成分が支配的であるかに応じて、αcorを決定する。
例えば、分離機能17bは、T2に対する2つの閾値T2Th1及びT2Th2(T2Th1<T2Th2)と、T2ratioに対する閾値T2ratioTh(0<T2ratioTh<1)とを用いて、αcorを決定する。例えば、撮像対象が脳である場合は、T2Th1=200[ms]、T2Th2=500[ms]、T2ratioTh=0.7とする。
具体的には、分離機能17bは、T2<T2Th1、かつ、T2ratio>T2ratioThである場合に、組織が支配的であると判定し、αcor=0と決定する。また、分離機能17bは、0<T2ratio≦T2ratioThである場合に、水成分と組織成分とが混在していると判定し、αcor=T2ratioβと決定する。また、分離機能17bは、T2≧T2Th2、かつ、T2ratio>T2ratioThである場合に、水が支配的であると判定し、αcor=1と決定する。ここで、βは、T2ratioの重みを制御するための0以上の係数である。
なお、本実施例を実施例7と組み合わせる場合には、Maskfilにおいて、水成分に対する重み付けが1、組織成分に対する重み付けが0、水成分と組織成分との境界部分に対する重み付けが0~1に設定されているので、αcorをαcor=Maskfil*T2ratioβのように決めてもよい。
また、本実施例を実施例8と組み合わせる場合には、TE=TE3とした場合の信号強度となるので、αcorをαcor=F(S(TE3))*T2ratioβのように決めてもよい。
これにより、例えば、T2又は信号強度が同じであっても、ボクセル内に組織成分が多く含まれていれば、T2ratioが小さくなり、それにより、組織成分に対する重み付けも小さくなり、その結果、差分後も組織成分が残り易くなる。
なお、より簡便にするためには、T2まで算出せずに、T2との相関を示す単純な信号強度の差や傾きの比等を用いてもよい。
(実施例10)
次に、実施例10について説明する。本実施例は、画像を差分することによって水成分と組織成分とを分離するのではなく、MR信号モデルを用いた近似によって、水成分と組織成分とを分離するものである。
すなわち、本実施例では、分離機能17bが、信号の全体の信号強度と当該信号内の水成分及び組織成分それぞれの信号強度との関係を定義したモデルにより、TEが異なる少なくとも3つの画像を用いて最小二乗法による近似を行うことによって、分離画像を生成する。
具体的には、分離機能17bは、前述した2成分モデルにより、TEが異なる3つの画像と、理論値を用いて仮定又は画像から測定された水のT2wとを用いて、最小二乗法による近似を行うことで、2成分モデルのモデルパラメータであるPDt*Vt、T2t、PDw*Vw及びT2wの4つのパラメータを求める。
ここで、理論的には、TEが異なる4つの画像を用いることによって4つのパラメータを求めることも可能であるが、仮定又は測定された水のT2wとを用いることによって必要な画像の数を3つとすることで、近似計算を安定させることができる。
なお、一般的に、最小二乗法による近似のアルゴリズムは非線形な手法であり、データのSNRが低い場合やデータの数が少ない場合は解が不安定となることが知られている。そのため、本実施例では、水成分と組織成分とを高精度に分離できるように、組織成分が略ゼロとなるような十分に長いTEで収集した画像を用いるのが望ましいが、差分する長いTEの画像に実質成分が多少含まれていたとしても、3点以上のデータ全体を用いて2-compartmentモデル式で近似するため、重み付き差分してからsingle-compartmentモデルで近似する場合に比べて、実質成分の差分を回避できる可能性がある。
また、2成分以上の指数関数の和で表される関数のパラメータを求める非線形最小二乗法による近似のアルゴリズムには、内部的に時間的な範囲でデータを分割し、時間の長いデータから時定数(T2)が大きい成分を求め、データを順次差分しながら短い成分を求めていく方法もある。本実施例では、そのような手法を用いることで、同時に全データを用いて全パラメータを近似する場合と比べて、ノイズをロバストにすることもできる。
また、ここでは、TEが異なる画像を用いた水成分と組織成分との分離について説明したが、T2を1/ADCとみなすことで、b値が異なる画像を用いた水成分と組織成分との分離についても同様に行うことが可能である。
また、ここでは、TEが異なる画像、又は、b値が異なる画像というように、各画像を1次元データとして扱って近似を行う場合の例を説明したが、例えば、初めから、図3に示したように各画像を2次元データとして扱うことで、非線形最小二乗法による近似を行うことも可能である。なお、理論的には、求める未知のパラメータの数と同じ数の収集サンプル点に対応する画像があれば、各点の(TE,b)の組み合わせはランダムに異なっていてもよいが、水成分と組織成分とを高精度に分離するためには、水成分が支配的となるような十分に長いTEで撮像された画像や、水成分が無視できるような十分に大きいb値で撮像された画像を、解析に用いる画像に含めるのが望ましい。このように各画像を2次元データとして扱う場合も、上述した1次元データの場合の例と同様に、仮定又は測定された水のT2wやADCを用いることによって必要な画像の数を減らすことで、少ない画像でも近似の精度を向上させることが可能である。
なお、本実施例と実施例7又は8とを組み合わせる場合には、短いTEの画像に加え、マスク関数による重み付けや非線形関数による変換が行われた後の長いTEの画像を用いて解析することになる。
以上、実施例7~10について説明したが、これらの実施例は、実施例10、実施例9、実施例7、実施例8の順で計算コストが低くなる。これらの実施例の方法は、元画像のSNRや、TE又はb値の収集サンプリング点の数、要求精度等の条件に応じて適宜選択することが可能である。また、差分に伴うSNRの劣化や分離精度の低減を抑制する方法として、他の実施例でも共通に適用することが可能である。
上述したように、第1の実施形態及び各実施例によれば、信号内の水成分と組織成分とを分離した分離画像を用いて定量パラメータマップを生成することによって、信号内の水成分と組織成分との混合によって定量パラメータマップに生じるPVEを抑制することができる。また、PVEが抑制された定量パラメータマップを用いて合成コントラスト強調画像を生成することによって、PVEによって合成コントラスト強調画像に生じる高信号のアーチファクトを抑制することができる。
例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、水成分が支配的となる画像の収集を追加するだけで、簡単な処理によって、水成分によるPVEが抑制されたPD、T1T2、ADC等の定量パラメータマップを簡便に生成することができる。また、FAST SE法等の従来の手法に容易に適用することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、実収集では取得することが不可能な、水成分によるPVEが抑制されたSynthetic FLAIR画像を生成することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、実収集では取得することが不可能な、水成分そのもの及び水成分によるPVEが抑制され、かつFLAIR画像よりもSNRや異なる組織間CNRが高い、Synthetic SE画像を生成することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、実収集時に水成分と組織成分のT2差とADC差とを組み合わせることによって、従来法と比べて短いデータ収集時間で、水成分の抑制効果、又は、水成分と組織成分との分離効果を向上させることができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、T2ベースの水成分抑制とDWIベースの水成分抑制とを組み合わせることによって、それぞれを単独で行う場合よりも、水成分の抑制効果を向上させることができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、拡散強調イメージング(b値を変えた4点以上の画像が必要)のみでは困難な水、血液、組織の3成分の分離を、T2ベースの水成分抑制を組み合わせることによって、比較的小さなb値(b≦1000[s/mm2])で、少ない数の画像(最低3点)で行うことができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、拡散強調イメージングによって従来法と比べて簡便かつ高精度な水成分抑制を行うことによってADC、FA等の定量パラメータマップの精度を向上させることができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、水成分が抑制された合成コントラスト強調画像や定量パラメータマップに加え、必要であれば、従来の水成分が抑制されていない同種の画像を得ることもできる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、非線形の差分処理を加えることによって、実質部のSNRの低下がなく、不要なPVEをもたらすCSF信号のみを低減することが可能となる。
例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、Computed DWIをADCやFA等の定量パラメータマップの改善まで拡張することができる。
以上のことから、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、Synthetic MRIにおいて、水成分(CSF)及び組織成分のボクセルごとの混合比が異なっている場合でも、特にT2-FLAIR画像を生成する際のPVEによると推定される高信号アーチファクトを簡便に抑制する方法を提供することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、定量パラメータの計算に用いる元画像自体の水成分の信号をボクセル内の水の容積に応じて抑制することによって、定量パラメータマップ、およびSynthetic MRI画像の水信号自体を水の容積に応じて抑制することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、水成分の抑制された定量パラメータマップ(PD,T1,T2,ADC,FA等)、又は、それらの各々の水成分と組織成分が分離した定量パラメータマップを生成することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、実収集によるFLAIR画像と同等の定量パラメータマップを用いた計算によるコントラスト強調画像である水抑制された合成画像であるSynthetic FLAIR画像、及び、水抑制された組織コントラスト分解能にすぐれたSynthetic SE画像を提供することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、拡散強調イメージングによって、FLAIRを用いずにSEベースでの簡便かつ高精度な水抑制を行い、組織部分のADC、FA等の定量パラメータマップの精度を向上させることができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、拡散強調イメージングを水成分抑制の手法と組み合わせることによって、水成分、血流成分及び組織成分をより簡便に高精度に分離する方法を提供することができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、一般的な複数種類の組織からある組織を分離することによって、複数種類の組織が混在したボクセルから除外された成分によるPVEの抑制された定量パラメータマップ及び合成コントラスト強調画像を得ることができる。
また、例えば、上述した第1の実施形態及び実施例によれば、差分の重みが一定の単純差分に対して、差分の重みを最適にコントロールすることによって、通常の組織及びT2がCSFより短いが通常の組織よりは比較的長い組織又は病変のSNRを向上させることができる。
(第2の実施形態)
以上、第1の実施形態では、本願が開示する技術をMRI装置に適用した場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本願が開示する技術は、ネットワークを介してMRI装置100と接続された画像処理装置に適用することも可能である。そこで、以下では、第2の実施形態として、画像処理装置の実施形態を説明する。
図11は、第2の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
例えば、図11に示すように、本実施形態では、MRI装置100と、画像処理装置200とが、ネットワーク300を介して通信可能に接続されている。
MRI装置100は、磁気共鳴現象を利用して被検体の画像データを収集する。具体的には、MRI装置100は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて各種撮像シーケンスを実行することで、被検体から磁気共鳴データを収集する。そして、MRI装置100は、収集した磁気共鳴データに対してフーリエ変換処理等の画像処理を施すことで、二次元又は三次元の画像データ(MR画像)を生成する。
画像処理装置200は、MRI装置100によって収集された画像データを処理する。具体的には、画像処理装置200は、ネットワーク300を介して、MRI装置100から画像データを取得し、装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。また、画像処理装置200は、取得した画像データに対して各種画像処理を行い、画像処理を行う前又は画像処理を行った後の画像データをディスプレイ等に表示する。例えば、画像処理装置200は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
具体的には、画像処理装置200は、ネットワーク(Network:NW)インタフェース210と、記憶回路220と、入力インタフェース230と、ディスプレイ240と、処理回路250とを備える。
NWインタフェース210は、ネットワーク300を介して接続された他の装置と画像処理装置200との間で送受信される各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、NWインタフェース210は、処理回路250に接続され、処理回路250から出力される画像データを所定の通信プロトコルに準拠した形式に変換し、MRI装置100に送信する。また、NWインタフェース210は、MRI装置100から受信した画像データを処理回路250に出力する。例えば、NWインタフェース210は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
記憶回路220は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路220は、処理回路250に接続され、処理回路250から送られる命令に応じて、入力された画像データを記憶し、又は、記憶している画像データを処理回路250に出力する。例えば、記憶回路220は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
入力インタフェース230は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース230は、処理回路250に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換し制御回路へと出力する。例えば、入力インタフェース230は、関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力インタフェース、及び音声入力インタフェース等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース230は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース230の例に含まれる。
ディスプレイ240は、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ240は、処理回路250に接続され、処理回路250から出力される画像データに基づいて、各種の形式で画像を表示する。例えば、ディスプレイ240は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。
処理回路250は、入力インタフェース230を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、画像処理装置200が備える各構成要素を制御する。具体的には、処理回路250は、NWインタフェース210から出力される画像データを記憶回路220に記憶させる。また、処理回路250は、記憶回路220から読み出した画像データをディスプレイ240に表示する。例えば、処理回路250は、プロセッサによって実現される。
このような構成のもと、本実施形態に係る画像処理装置200は、MRI装置100によって複数種類の撮像パラメータの値を変えて収集された複数の画像から、PD、T1、T2等の定量パラメータマップを生成する機能を有している。さらに、本実施形態に係る画像処理装置200は、生成した定量パラメータマップの信号値と任意の撮像パラメータの値とを用いて、各種のコントラスト強調画像に対応する合成コントラスト強調画像を計算によって生成する機能を有している。
そして、本実施形態に係る画像処理装置200は、信号内の水成分と組織成分との混合によって定量パラメータマップに生じるPVEを抑制することができるように構成されている。
具体的には、本実施形態では、図11に示す処理回路250が、取得機能251と、分離機能252と、生成機能253と、合成機能254とを有する。
取得機能251は、複数種類の組織が混在する同一の被検体の画像を複数種類の撮像パラメータの値を変えて撮像することによって収集された、組織のT2に近いTEで撮像した画像と、信号内で水成分が支配的となるような長いTEで撮像した画像とを含む複数の画像をMRI装置100から取得する。なお、取得機能251は、取得部の一例である。
分離機能252は、第1の実施形態で説明した分離機能17bと同様に、収集機能17aによって収集された複数の画像のうちのTEが異なる少なくとも3つの画像を解析することによって、水成分と組織成分とを分離した分離画像を生成する。なお、分離機能252は、分離部の一例である。
生成機能253は、第1の実施形態で説明した生成機能17cと同様に、分離機能17bによって生成された分離画像を用いて、T1、T2、PD、及びADCのうちの少なくとも1種類の定量パラメータマップを生成する。なお、生成機能253は、生成部の一例である。
合成機能254は、第1の実施形態で説明した合成機能17dと同様に、生成機能17cによって生成された少なくとも1種類の定量パラメータマップを用いて、任意の撮像パラメータに対応する合成コントラスト強調画像を計算によって生成する。なお、合成機能254は、合成部の一例である。
なお、上述した処理回路250は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、処理回路250が有する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路220に記憶される。そして、処理回路250は、記憶回路220から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路250は、図14の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。なお、ここでは、単一のプロセッサによって処理回路250が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路250を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路250が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、図14に示す例では、単一の記憶回路220が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
上述した構成によれば、第2の実施形態でも、前述した第1の実施形態及び実施例と同様に、信号内の水成分と組織成分との混合によって定量パラメータマップに生じるPVEを抑制することができる。
なお、上述した実施形態では、本明細書における収集部、分離部、生成部、合成部及び取得部を、それぞれ、処理回路の収集機能、分離機能、生成機能、合成機能及び取得機能によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における収集部、分離部、生成部、合成部及び取得部は、実施形態で述べた収集機能、分離機能、生成機能、合成機能及び取得部によって実現する他にも、ハードウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
また、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態のプロセッサは、単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、信号内の水成分と組織成分との混合によって定量パラメータマップに生じるPVEを抑制することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。