JP7235604B2 - 便通改善剤の製造方法および便秘改善剤 - Google Patents
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Description
便秘の解消法としては、適度な運動や繊維質の積極的な摂取などのような生活習慣の改善による方法の他に、便秘解消を目的とした食品及び医薬品を摂取する方法がある。
例えば、特開2005-328776号公報(特許文献2)には、高アミロース米の血糖上昇抑制作用について記載されている。
前記<5>~<8>のいずれかの方法により得られる加工米若しくはその粉砕物
を用いて得られる、加工品。
<12> 澱粉中のアミロース含量が20重量%以上の米穀粒を、湿熱処理に付すことを特徴とする、米穀粒の酸敗を抑制する方法。
[2] 便通改善剤が、便秘改善剤である、前記[1]の製造方法。
[3] 湿熱処理が、0.05~0.5MPaの圧力条件下にて、1~60分間、水蒸気による処理に付すものである、前記[1]または[2]方法。
[4] 米穀粒が、うるち玄米である、前記[1]~[3]のいずれかの方法。
[5] 澱粉中のアミロース含量が20重量%以上である米穀粒を湿熱処理した加工米、またはその粉砕物を含む、便秘改善剤。
本発明による便通改善剤は、前記したように、澱粉中のアミロース含量が20重量%以上である米穀粒を湿熱処理した加工米、またはその粉砕物を含むものである。
使用する米穀における澱粉中のアミロース含量は20重量%以上、好ましくは25重量%以上、である。本発明においては、このようなアミロース含量を有する米穀を高アミロース米という。アミロース含量の上限は、特に制限はされないが、一般に40重量%程度である。アミロース含量は20重量%以上であると、わずかな湿熱処理によっても糊化度や粘度が急激に上昇してしまうことが起こりに難くなり、制御の観点からは有利であり、また、便通改善効果の観点からも好ましい。
なおここで、澱粉中のアミロース含量は、例えばアミロース/アミロペクチン測定キット(メガザイム社製)によって求めることができる。
本発明において、湿熱処理は、米穀中の澱粉の糊化には不十分な低水分条件下での水蒸気加熱処理のことをいい、より具体的には、0.05~0.5MPaの圧力条件下、1~60分間、水蒸気によって行うことをいう。
またこの加工米は、加熱処理されていることから、日持ち向上効果もあり、さらに、炊飯適性も向上されたものである。
本発明によれば、前記したように、澱粉中のアミロース含量が20重量%以上の米穀粒を、湿熱処理に付し、必要により粉砕処理を行うことを特徴とする、便通改善作用を有する加工米またはその粉砕物の製造方法も提供される。ここで、粉砕処理工程は任意工程であり、通常、加工米の製造を希望する場合は不要である一方、加工米の粉砕物の製造を希望する場合には該工程が必要とされる。
本発明によれば、前記したように、澱粉中のアミロース含量が20重量%以上の米穀粒を、湿熱処理に付すことを特徴とする、米穀粒の炊飯適性を向上する方法も提供される。ここで炊飯適性とは、米穀粒の吸水性のことをいい、炊飯適性が向上するとは、米穀粒の吸水性が増すこと意味する。米穀粒の吸水性が増すことで、玄米であっても炊飯が容易になる。具体的には、通常、玄米を炊飯する際に必要な吸水性を高めるための濯ぎ作業や、長時間の浸水等を必要とせずに、かつ使用する炊飯器を選ぶことなく食味良好な玄米ご飯を提供できる。なお、特定の湿熱条件により、米穀粒の吸水性が向上することは、後述する実施例の試験Dで示されたとおりである。
本発明によれば、前記したように、澱粉中のアミロース含量が20重量%以上の米穀粒を、湿熱処理に付すことを特徴とする、米穀粒の酸敗を抑制する方法も提供される。ここで、「酸敗」とは、油脂が酸化・加水分解などの反応によって変質し、色、味、臭気などの変化をきたす現象をいい、「酸敗の抑制」とは、油脂の変質を抑えることをいう。前記したように、米穀粒の酸敗が抑制されることで、古米臭のような風味の劣化を抑制することができ、風味の良好なより高品質の加工米を提供することができる。
このように、本発明に従う特定の湿熱処理を米穀粒に施すことで、便通改善作用の付与・強化と同様に、米穀粒に対して優れた効果(酸敗抑制、炊飯適性向上)が発揮される。
本発明による便通改善剤、または、本発明による製造方法により得られる加工米若しくはその粉砕物を用いて、加工品を得ることができる。すなわち、本発明における湿熱処理された米穀粒(すなわち、加工米)の用途である。加工品は、好ましくは加工食品である。
・米試料
米試料として、
・通常米である「コシヒカリ」の精白米と、
・高アミロース米である「越のかおり」の玄米と、
・「越のかおり」玄米に加水せずに水蒸気を用いて0.1MPa、10分間加熱、速やかに減圧し湿熱処理した、湿熱処理「越のかおり」玄米(本発明)と
を用意した。
ここで、「越のかおり」は、澱粉中のアミロース含量が33.1重量%である高アミロース米である。
なお湿熱処理により、玄米の水分は、湿熱処理前:16.3%から処理後:19.9%に増加した。
また、湿熱処理条件を、「0.1MPa、10分間加熱」の代わりに「0.25MPa、10分間加熱」としたものも用意した。
動物実験でのラット飼育用の配合飼料として、コーンスターチ配合飼料(「対照」群)と、米配合飼料とを用意した。
前記で得られた各米粉末を、対照であるコーンスターチ配合飼料におけるコーンスターチ分とそれぞれ全置換して、各配合飼料を調製した。
(A) 試験A(米試料の総食物繊維、難消化性デンプン、およびデンプン消化速度)
前記で調製された米試料についてそれぞれ、Prosky法(YL.PROSKYら、J. ASSOC. OFF. ANAL. CHEM, 67、1044-1051、1984年)で総食物繊維、レジスタントスターチ測定キット(メガザイム社製)で難消化性デンプン、ペプシン・パンクレアチン人工消化試験法(佐藤達也ら、第62回日本栄養食糧学会大会講演要旨集、pp. 248、2008)でデンプン消化速度を測定した。
結果は下記の通りであった。
各米試料の「生菌数」について、「一般生菌数」は標準寒天培地を用いた平板培養法、「大腸菌」は発色酵素基質培地を用いた平板培養法によって求めた(これら測定は、厚生省生活衛生局監修「食品衛生検査指針 微生物編」に準拠した)。
結果は下記の通りであった。
結果から、湿熱処理によって、米試料中の生菌数が低下したことが確認された。
製粉後7ヵ月経過した越のかおり玄米試料と、湿熱処理に付してから製粉し7ヵ月経過した越のかおり玄米試料の「酸価」を、基準油脂分析試験法によって測定した。
結果は下記の通りであった。
なお、酸価は、生成した遊離脂肪酸の量を反映するので、結果から、湿熱処理によって米の酸敗が抑制されたか否かを判断することができる。
各米試料の「吸水性」を、長沼の方法(秋田大学教育文化学部研究紀要. 自然科学 58, 29-35, 2003-03-31)によって測定した。具体的には、米粉約500mgを遠沈管に精秤し、20℃の精製水を8ml加え、20℃の恒温室で24時間放置し吸水させた。遠心分離(5,000rpm、40分間)後、上清を除去して精秤し、無水物米粉100gあたりの吸水率(%)を求めた。
結果から、湿熱処理によって、玄米の吸水性が増し、その炊飯適性が向上することが確認された。
4週齢で導入したWistar系雄ラット24匹を用いて、昼夜逆転環境下で6日間予備飼育した。
次いで、前記(1)にて用意した各配合飼料を、給餌するラット群として、
配合飼料「ヒカリ」を給餌する、ヒカリ群6匹と、
配合飼料「未かおり」を給餌する、未かおり群6匹と、
配合飼料「湿かおり」を給餌する、湿かおり群6匹と、
対照配合飼料を給餌する、対照群6匹と
の4試験群に群分けした。
飼育17~20日目にラット毎に採糞を行い、糞便の個数と重量を測定した。
また、飼育20日目の8:00に0.5%カルミンで着色した飼料5gを投与、全着色試料量摂取後に無着色飼料を投与して、着色飼料投与から経時的に採糞を行い、カルミンによる着色糞が出始めた時間をGTTとした。
各測定項目は、測定値を平均値±標準誤差で示し、一元配置分散分析後、Tukey HSD法による危険率5%の有意差を検定した。
消化管通過時間への影響についての結果は、図1~図3に示される通りであった。
また、通常ラット対照群と便秘誘導ラット各群とを比較したところ、通常ラット対照群を正常なGTTとしたとき、便秘誘導後の各群の中で湿かおり群に顕著にGTT短縮の様子がみられた。
これらから、湿熱処理高アミロース玄米の摂取によって、便通が改善されたと考えられた。
湿糞重量への影響についての結果は、図4および図5に示される通りであった。
また、糞便個数への影響についての結果は、図6および図7に示される通りであった。
糞中水分量への影響についての結果は、図8および図9に示される通りであった。
大腸への影響についての結果は、図10に示される通りであった。
・製造例1: パン
下記の各原料を下記割量で配合し、常法に従ってパンを製造した。
なお、下記の湿熱処理玄米粉とは、高アミロースうるち玄米を、圧力0.1MPa、時間10分の湿熱処理に付して得られたものである。
グルテン 60g
砂糖 18g
食塩 6g
脱脂粉乳 9g
ドライイースト 7g
ショートニング 18g
水 240g
合計 598g
下記の各原料を下記割量で配合し、常法に従ってビスケットを製造した。
なお、下記の湿熱処理米粉とは、高アミロースうるち精米を、圧力0.1MPa、時間10分の湿熱処理に付して得られたものである。
バター 120g
砂糖 120g
全卵 36g
牛乳 24g
合計 600g
下記の各原料を下記割量で配合し、常法に従ってチョコレートムースを製造した。
なお、下記の湿熱処理玄米粉とは、高アミロースうるち玄米を、圧力0.1MPa、時間10分の湿熱処理に付して得られたものである。
ココア 大さじ2
豆乳 400ml
植物油 小さじ2
メープルシロップ 80ml
食塩 少々
下記の各原料を下記割量で配合し、常法に従って焼きチョコレートを製造した。
なお、下記の湿熱処理米粉とは、高アミロースうるち精米を、圧力0.1MPa、時間10分の湿熱処理に付して得られたものである。
砂糖 20g
植物油脂 80g
チョコレート 320g
合計 600g
Claims (3)
- 澱粉中のアミロース含量が20重量%以上の米穀粒を、湿熱処理に付し、必要により粉砕処理を行うことによって得られる加工米またはその粉砕物を含む、摂取した食物の消化管内通過時間を短縮させる便秘改善剤の製造方法であって、
前記便秘改善剤が便秘改善を望む需要者用であり、
前記米穀粒が、うるち玄米である、前記製造方法。 - 澱粉中のアミロース含量が20重量%以上の米穀粒を、湿熱処理に付し、必要により粉砕処理を行うことによって得られる加工米またはその粉砕物を含む、摂取した食物の消化管内通過時間を短縮させる便秘改善剤の製造方法であって、
前記湿熱処理が、0.05~0.5MPaの圧力条件下にて、1~60分間、水蒸気による処理に付すものであり、
前記便秘改善剤が便秘改善を望む需要者用であり、
前記米穀粒が、うるち玄米である、前記製造方法。 - 澱粉中のアミロース含量が20重量%以上である米穀粒を湿熱処理した加工米、またはその粉砕物を含む、摂取した食物の消化管内通過時間を短縮させる便秘改善剤であって、
前記便秘改善剤が便秘改善を望む需要者用であり、
前記米穀粒が、うるち玄米である、便秘改善剤。
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