JP7219032B2 - 分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法、多孔性中空糸膜、およびろ過方法 - Google Patents
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Description
(a)室温で溶解できる適当な溶剤のないポリエチレン等のポリマーでも製膜が可能になる。
(b)高温で溶解したのち冷却固化させて製膜するので、特に熱可塑性樹脂が結晶性樹脂である場合、製膜時に結晶化が促進され高強度膜が得られやすい。
(1)
分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と、有機液体と、無機微粉とを混合して溶融混練して混練物を作製する工程と、
前記混練物を吐出する工程と、
吐出した前記混練物から前記有機液体及び前記無機微粉を抽出する工程とを有し、
前記有機液体は、該有機液体の沸点において該有機液体の1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を均一に溶解しない非溶剤であり、
前記無機微粉はシリカである
ことを特徴とする分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
(2)
前記非溶剤は、セバシン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種である(1)に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
(3)
前記非溶剤は、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、および脂肪酸から選ばれる可塑剤である(1)または(2)に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
(4)
前記熱可塑性樹脂は、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体である(3)に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
(5)
前記多孔性中空糸膜は、前記分離層を含む、少なくとも2層からなる中空糸膜である(1)から(4)のいずれか1つに記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
(6)
前記多孔性中空糸膜における、前記分離層以外の少なくとも一層はフッ素樹脂からなる多孔性中空糸膜層である、(5)に記載の分離層を含む多孔性多層中空糸膜の製造方法。
(7)
前記フッ素樹脂は、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、およびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくともひとつである(6)に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
以下、本発明の多孔性中空糸膜について説明する。図1は、本発明に係る多孔性中空糸膜の外観図である。多孔性中空糸膜10は、少なくとも分離層11を含んでいる。多孔性中空糸膜10は、分離層11のみによって形成されてもよく、さらに、多孔性中空糸膜10は、支持層12を含んでよい。本実施形態においては、多孔性中空糸膜10は、分離層11および支持層12を有している。本実施形態において、支持層12は、多孔性中空糸膜10の内表面側に形成されている。本実施形態において、分離層11は、支持層12の径方向外側に形成されている。
次に、本実施形態に係る多孔性中空糸膜10が有する物性について説明する。
多孔性中空糸膜10の引張破断伸度の初期値は60%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上、特に好ましくは120%以上である。引張破断伸度は、後述の実施例における測定方法により測定することができる。
空孔率[%]=100×{(湿潤膜重量[g])-(乾燥膜重量[g])}/(膜体積[cm3])
多孔性中空糸膜10による処理対象液は、例えば、懸濁水および工程プロセス液である。多孔性中空糸膜10は、懸濁水をろ過する工程を備える浄水方法に好適に使用される。
次に、分離層11を含む多孔性中空糸膜10の製造方法について説明する。分離層11を含む多孔性中空糸膜10の製造方法は、(a)溶融混練物を準備する工程と、(b)溶融混練物を多重構造の紡糸ノズルに供給し、紡糸ノズルから溶融混練物を押し出すことによって中空糸膜を得る工程と、(c)非溶剤を中空糸膜から抽出する工程と、(d)無機微粉を中空糸膜から抽出する工程とを備える。支持層12をさらに含む多孔性中空糸膜を製造する場合には、分離層11および支持層12でそれぞれ工程(a)、工程(b)を備え、3重管の紡糸ノズルを用い、3重管の最外管および中央管に分離層11、支持層12となる溶融混練物を押し出し、内管に中空部形成剤を流すことによって中空状に成型する。
上記工程(a)は、無機微粉に非溶剤を吸収させ、粉末化する工程と、当該粉末と熱可塑性樹脂とを溶融混練する工程と、を含む。したがって、溶融混練物は、熱可塑性樹脂、非溶剤、および無機微粉の三成分を含むものである。
溶融混練物を2重管構造の紡糸ノズルを用いて押し出し、実施例1の多孔性中空糸膜を得た。熱可塑性樹脂としてエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Halar901)40質量%、無機微粉として微粉シリカ(日本アエロジル社製 R972)23質量%、および非溶剤としてトリフェニル亜リン酸(東京化成工業社製 TPP,沸点360℃)37質量%を用いて溶融混練物を240℃で調製し、多孔性中空糸膜を作製した。
非溶剤としてTPP37質量%の代わりにステアリン酸エチルヘキシル(東京化成工業社製 沸点340℃)37質量%を用いて溶融混練物を調製した以外は、実施例1と同様に多孔性中空糸膜を作製した。
非溶剤としてトリフェニル亜リン酸(TPP,沸点360℃)37質量%の代わりにオレイン酸(東京化成工業社製 沸点285℃)37質量%を用いて溶融混練物を調製した以外は、実施例1と同様に多孔性中空糸膜を作製した。
溶融混練物を3重管構造の紡糸ノズルを用いて押し出し、実施例4の多層多孔性中空糸膜を得た。外層に熱可塑性樹脂としてエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Halar901)34質量%、微粉シリカ(日本アエロジル社製 R972)25.4質量%、非溶剤としてトリフェニル亜リン酸(東京化成工業社製 TPP,沸点360℃)40.6質量%を用い、内層には熱可塑性樹脂としてポリフッ化ビニリデン(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Solef6010)40質量%、微粉シリカ(日本アエロジル社製 R972)23質量%、非溶剤としてアジピン酸ビス-2-エチルヘキシル(東京化成工業社製 DOA,沸点335℃)31.3質量%、貧溶剤としてアセチルクエン酸トリエチル(東京化成工業社製 ATBC、沸点343℃)5.7質量%の混合物を用いて240℃で溶融混練物を調製、3重管の最外部に外層混練物、中間部に内層混練物、最内部に空気を流し、多層多孔性中空糸膜を作製した。
溶融混練物を3重管構造の紡糸ノズルを用いて押し出し、実施例5の多層多孔性中空糸膜を得た。外層に熱可塑性樹脂としてエチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)樹脂(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製、Halar901)34質量%、微粉シリカ(日本アエロジル社製 R972)25.4質量%、非溶剤としてステアリン酸エチルヘキシル(東京化成工業社製 沸点340℃)40.6質量%を用い、内層には熱可塑性樹脂としてエチレン-テトラフルオロエチレン共重合物(旭硝子社製、TL-081)40質量%、微粉シリカ(日本アエロジル社製 R972)23質量%、非溶剤としてアジピン酸ビス-2-エチルヘキシル(東京化成工業社製 DOA,沸点335℃)32.9質量%、貧溶剤としてアジピン酸ジイソブチル(東京化成工業社製 DIBA、沸点293℃)4.1質量%の混合物を用いて溶融混練物を240℃で調製、3重管の最外部に外層混練物、中間部に内層混練物、最内部に空気を流し、多層多孔性中空糸膜を作製した。
非溶剤のTPPの代わりに、ECTFE樹脂に対する貧溶剤としてDOAのみを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1の中空糸膜を得た。比較例1の多孔性中空糸膜における膜構造は、図3に示すような球晶構造を示した。
中空糸膜をカミソリで薄くスライスし、100倍拡大鏡にて、外径と内径を測定した。一つのサンプルについて、30mm間隔で60箇所の測定を行った。
HITACHI製電子顕微鏡SU8000シリーズを使用し、加速電圧3kVで膜の表面及び断面の電子顕微鏡(SEM)画像を5000倍で撮影した。断面の電子顕微鏡サンプルは、エタノール中で凍結した膜サンプルを輪切りに割断して得た。次に画像解析ソフトWinroof6.1.3を使って、SEM画像の「ノイズ除去」を数値「6」によって行い、更に単一しきい値による二値化により、「しきい値:105」によって二値化を行った。こうして得た二値化画像における孔の占有面積を求めることにより、膜表面の開口率を求めた。
エタノール浸漬した後、数回純水浸漬を繰り返した約10cm長の湿潤中空糸膜の一端を封止し、他端の中空部内に注射針を挿入し、25℃の環境下にて注射針から0.1MPaの圧力で25℃の純水を中空部内に注入し、外表面から透過してくる純水量を測定し、下記式により純水フラックスを決定し、透水性を評価した。
純水フラックス[L/(m2×h)]=60×(透過水量[L])/{π×(膜外径[m])×(膜有効長[m])×(測定時間[min])}
引張り破断時の荷重と変位を以下の条件で測定した。
JIS K7161の方法に従い、サンプルには中空糸膜をそのまま用いた。
測定機器:インストロン型引張試験機(島津製作所製AGS-5D)
チャック間距離:5cm
引張り速度:20センチ/分
得られた結果から引張破断伸度は、JIS K7161に従って算出した。
懸濁水ろ過時の透水性能保持率は、目詰まり(ファウリング)による透水性能劣化の程度を判断するための1指標である。測定のために、エタノール浸漬した後、数回純水浸漬を繰り返した湿潤中空糸膜を、膜有効長11cmにて外圧方式によりろ過を行った。まず初めに純水を、膜外表面積1m2当たり1日当たり10m3透過するろ過圧力にてろ過を行って透過水を2分間採取し、初期純水透水量とした。次いで、天然の懸濁水である河川表流水(富士川表流水:濁度2.2、TOC濃度0.8ppm)を、初期純水透水量を測定したときと同じろ過圧力にて10分間ろ過を行い、ろ過8分目から10分目までの2分間透過水を採取し、懸濁水ろ過時透水量とした。懸濁水ろ過時の透水性能保持率を、下記式で定義した。操作は全て25℃、膜面線速0.5m/秒で行った。
懸濁水ろ過時の透水性能保持率[%]=100×(懸濁水ろ過時透水量[g])/(初期純水透水量[g])
なお、式中の各パラメーターは下記式で算出される。
ろ過圧力={(入圧)+(出圧)}/2
膜外表面積[m2]=π×(糸外径[m])×(膜有効長[m])
膜面線速[m/s]=4×(循環水量[m3/s])/{π×(チューブ径[m])2-π×(膜外径[m])2}
一方、非溶剤を含まない比較例1は、細孔構造が球晶構造であり、開孔性、耐薬品性、および機械的強度に劣ることがわかる。
11 分離層
12 支持層
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂と、有機液体と、無機微粉とを混合して溶融混練して混練物を作製する工程と、
前記混練物を吐出する工程と、
吐出した前記混練物から前記有機液体及び前記無機微粉を抽出する工程とを有し、
前記有機液体は、該有機液体の沸点において該有機液体の1/4の質量の前記熱可塑性樹脂を均一に溶解しない非溶剤であり、
前記無機微粉はシリカである
ことを特徴とする分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記非溶剤は、セバシン酸エステル、アセチルクエン酸エステル、クエン酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、亜リン酸エステル、炭素数6以上30以下の脂肪酸、およびエポキシ化植物油から選ばれる少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項1に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂は、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記非溶剤は、ステアリン酸エステル、リン酸エステル、および炭素数6以上30以下の脂肪酸から選ばれる可塑剤である
ことを特徴とする請求項3に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記多孔性中空糸膜は、前記分離層を含む、少なくとも2層からなる中空糸膜である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記多孔性中空糸膜における、前記分離層以外の少なくとも一層はフッ素樹脂からなる多孔性中空糸膜層である
ことを特徴とする請求項5に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。 - 前記フッ素樹脂は、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、およびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくともひとつである
ことを特徴とする請求項6に記載の分離層を含む多孔性中空糸膜の製造方法。
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