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JP7201183B2 - 抗菌シート及びマスク - Google Patents

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JP7201183B2
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Description

本発明は抗菌シート及びマスクに関する。
花粉や粉塵の気管への侵入を防ぐため、又は、咳やくしゃみ等により発生する飛沫の拡散を防ぐためにマスクが広く使用されている。なかでも、飛沫等の拡散を抑制する目的で使用するマスクには、高い抗菌性が望まれる。
このようなマスクには、不織布によって構成される使い捨てタイプと、ガーゼ等のシート材を積層して構成される繰り返し使用可能なタイプ等がある。いずれのタイプも指で触れたり、外気に影響されたりすることによって、マスク表面に雑菌が発生しやすくなる。雑菌が発生したマスクを使用し続ければ衛生面で問題が生じてしまう。
そこで、特許文献1には、マスク本体をベース部とインナー部で構成し、光触媒性酸化チタン粒子に金属銀微粒子を担持させた複合粒子を、インナー部に定着させた抗菌・殺菌力に優れたマスクが開示されている。
特開2005-73949号公報
しかし、特許文献1のマスクは光触媒技術を応用したものであるから、光が当たり難い箇所では抗菌効果が十分に発揮され難い。また、定着させた粒子が脱落するとこれをマスクの使用者が吸引してしまうおそれがある。当該粒子が人にとって刺激性のあるものであれば、これらのマスクに対する付着性を高くする必要があるが、このような点について特許文献1は何ら開示していない。
また、粉末が配合されることで通気性が低下しやすくなることが懸念されるがこの点についても有効な検討はされていない。
さらに、特許文献1のようにマスク自体に抗菌性を付与する場合、マスクの製造工程が通常よりも煩雑になりコストの上昇をもたらしてしまう。一方で、既存のマスクに抗菌性を付与できれば、マスク自体のコスト上昇を抑えることができる。そして、抗菌性を付与する手段が複数回可能であれば、使用者にとって経済的で非常に便利である。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、マスク等に貼付することが可能で、貼付時にはマスク等を衛生的な状態に保持でき、かつ、実用的な抗菌シートを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、所定のアルカリ性粉末により抗菌性を担保し、全体としての通気度を所定の範囲とし、かつ片面側に粘着性を付与することで、上記課題を解決できることを見出し本発明に想到した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1] 不織布シートと、該不織布シートの一方の面側に形成された抗菌領域と、該抗菌領域上に形成された粘着剤領域とを有し、前記抗菌領域が、水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末を含有する無機系粉末、及び、バインダー樹脂を含み、フラジール形法(JIS L 1096)に基づく通気度が、30~400cm/(cm・s)である抗菌シート。
[2] 前記不織布シートの目付X(g/m)に対する前記無機系粉末の担持量Y(g/m)の比(Y/X)が、0.2~0.7である[1]に記載の抗菌シート。
[3] 前記バインダー樹脂が、親水性樹脂である[1]又は[2]に記載の抗菌シート。
[4] 前記無機系粉末が、前記アルカリ性粉末とは別に、無機系脱臭粉末を含む[1]~[3]のいずれかに記載の抗菌シート。
[5] 前記無機系粉末の担持量Yが5~35g/mである[1]~[4]のいずれかに記載の抗菌シート。
[6] 着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えるマスクであって、[1]~[5]のいずれかに記載の抗菌シートの前記粘着剤領域が、前記マスク本体部の外側面及び内側面の少なくともいずれかと着脱自在に固定化されたマスク。
本発明によれば、マスク等に貼付することが可能で、貼付時にはマスク等を衛生的な状態に保持でき、かつ、実用的な抗菌シートを提供することができる。
本発明の抗菌シートの一態様を示す断面図である。 本発明の抗菌シートとマスクとの組み合わせを例示する斜視図である。 本発明の抗菌シートをマスクの外側面に貼付した状態を例示する斜視図である。 粘着剤領域を形成するための装置とプロセスを説明する説明図である。
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[抗菌シート]
図1に例示するように、本実施形態の抗菌シート10は、不織布シート12と、不織布シート12の一方の面側に形成された抗菌領域14と、抗菌領域上に形成された粘着剤領域16とを有する。
抗菌領域12は、水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末(以下、「アルカリ性粉末」ということがある)、及びバインダー樹脂を含む。
このような構成とすることで、上記アルカリ性粉末による抗菌作用を良好に発揮しながら、当該粉末が脱落しにくい(あるいは移動しにくい)抗菌シートとすることができる。
また、抗菌シート10は、フラジール形法(JIS L 1096)に基づく通気度が、30~400cm/(cm・s)となっている。当該通気度は不織布マスクやガーゼマスクの通気度と同程度となっている。そのため、抗菌シート10を上記マスクに貼り合わせても、貼り合わせ前とほとんど変わらない通気度となり、使用時に息苦しさを感じず快適性を維持できる。特に、通気度が30cm/(cm・s)未満では、マスクに貼り合わせた際の全体(マスク+抗菌シート)の通気度が低下してしまい使用時に息苦しさを感じさせてしまう。また、通気度が400cm/(cm・s)を超えると、抗菌シート10自体がスカスカな状態となり、アルカリ粉末による抗菌効果を十分に発揮させることが難しくなる。通気度は、50~300cm/(cm・s)であることが好ましく、55~200cm/(cm・s)であることがより好ましく、60~150cm/(cm・s)であることがさらに好ましい。
抗菌シートはさらに粘着剤領域が設けられており、これによりマスク等へ貼付が可能となる。粘着剤領域が設けられた側の面の対180°ガラス粘着力(20℃、60%RH)は1~5N/25mmとなっていることが好ましい。この粘着力は、マスクに装着した際には剥がれにくいが指を使うことで外すことができる着脱容易な粘着力となっている。そのため、繰り返し使用することができ、実用的かつ経済的といえる。粘着力は1.5~4.5N/25mmであることがより好ましく、2~4N/25mmであることがさらに好ましい。
このように、本実施形態に係る抗菌シート10は、粘着剤領域の粘着力を調整することでマスク等に容易に着脱自在に貼付することが可能で、貼付時にはマスク等を衛生的な状態を保持できる。さらに、上記抗菌領域14のアルカリ性粉末は不織布シート12の一方の面側、すなわち、粘着剤領域16側に存在するため、抗菌シート10の貼付時には抗菌領域14は外表面に露出することがない。そのため、貼付時の抗菌シート10の外表面を指で触れてもアルカリによる影響を低減することができる。
以下、本実施形態の抗菌シートについてより詳細に説明する。
(不織布シート)
本実施形態に係る不織布シートを構成する繊維としては、熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。熱可塑性樹脂繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、アクリル等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、及び、これらを主体とした共重合体等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンタレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレタレート(PBT)、及び、これらを主体とした共重合体等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6等が挙げられる。アクリルとしては、ポリアクリルニトリル(PAN)等が挙げられる。
不織布シートを構成する繊維としては、熱可塑性樹脂繊維に加えて、又は、その代わりに他の繊維を用いることができる。他の繊維としては、例えば、天然繊維(例えば、パルプ、羊毛、コットン等)、再生繊維(例えば、レーヨン、アセテート等)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維等)等が挙げられる。
本実施形態に係る不織布シートの目付は、取扱い性や柔軟性等の観点から、10~150g/mであることが好ましく、30~100g/mであることがより好ましく、40~60g/mであることがさらに好ましい。
不織布シートの目付X(g/m)に対する後述の無機系粉末の担持量Y(g/m)の比(Y/X)は、0.2~0.7であることが好ましく、0.3~0.5であることがより好ましい。比(Y/X)が、0.2~0.7であることで、使用時における無機系粉末の耐粉落ち性が良好となり、貼付時のアルカリによる影響を低減できる。
不織布シートの製造には、通常の不織布製造技術を採用することができる。
具体的には、スパンレース法、スパンボンド法、湿式法、エアーレイド法、ケミカルボンド法、メルトブロー法等が挙げられる。これらの製造法を組み合わせて製造することもできる。これらの中では、スパンレース法、スパンボンド法が好ましい。
(抗菌領域)
既述のように、本実施形態に係る不織布シートは、不織布シートの少なくとも一方の面側に、抗菌剤としてのアルカリ性粉末とバインダー樹脂とを含む抗菌領域を有する。抗菌領域は、例えば、不織布シートの一方の面側の表面全体に、又は表面に散在的に形成されている。アルカリ性粉末により、抗菌作用が発揮されるが、当該作用と同時に酸性の臭気に対して吸着作用を発揮することができる。
抗菌領域は、不織布シートの一方の面側に層(「抗菌剤含有樹脂層」ということがある)を形成している場合を含む。すなわち、抗菌領域により抗菌シート表面の少なくとも一部が凸凹していてもよい。
本実施形態においては、バインダー樹脂によりアルカリ性粉末が、不織布シートの抗菌領域中や抗菌剤含有樹脂層中に固定化されている。バインダー樹脂を用いることで、例えば、アルカリ性粉末を含む無機系粉末を強く固定化できる。これにより、抗菌シートの使用時にアルカリ性粉末の移動が抑制されるため、このアルカリによる影響を抑えることができる。
バインダー樹脂としては、両親媒性樹脂、親水性樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。ここで、「酢酸ビニル系樹脂」とは、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル及びこの酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体を共重合してなる共重合体(例えば、酢酸ビニル-アクリル共重合体樹脂)をいう。バインダー樹脂としては、両親媒性樹脂、親水性樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましく、両親媒性樹脂、親水性樹脂がより好ましい。
両親媒性樹脂は、溶媒として低級アルコールを使用することが可能で、これにより塗工性に優れ、抗菌領域における無機系粉末の分散性を良好にできる。両親媒性樹脂としては、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、ポリビニルピロリドンが好ましい。親水性樹脂の重量平均分子量は、無機系粉末の粉落ちを抑制し良好な接着力を維持する観点から、100万以上であることが好ましく、110万~650万であることがより好ましく、110万~250万であることがさらに好ましい。。
ここで、「重量平均分子量」は、GPC(標準ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量を意味する。
アルカリ性粉末100質量部に対するバインダー樹脂の配合割合は、25~600質量部であることが好ましく、30~600質量部であることがより好ましく、30~550質量部であることがさらに好ましい。配合割合が25~600質量部であることで、アルカリ性粉末を良好に固定化しその脱落を防ぐことができる。
なお、アルカリ性粉末とともに後述の脱臭剤としての無機系脱臭粉末を使用する場合はこれらの合計が上記範囲とすることが好ましい。
抗菌領域に含有し得る粉体(無機系粉末)としては、アルカリ性粉末を用いるが、アルカリ性粉末とともに、pHが7以下の弱アルカリ粉末及び/又は無機系脱臭粉末を含んでもよい。
例えば、生ものが腐敗した際には、アンモニアガス及び硫化水素ガスといった臭気ガスが発生する。それぞれを吸着により別々に除去する手段はあるが、これらはそれぞれアルカリ性及び酸性であるため、同時に除去することは難しい。また、腐敗により菌が繁殖するため、これも同時に抗菌できれば衛生管理や快適性の観点から非常に有意である。
本発明者らは、アルカリ性粉末により硫化水素ガスのような酸性の臭気を補足し、脱臭剤としての無機系粉末(例えば無機シリカ系粉末)によりアンモニアガスのようなアルカリ性の臭気を補足し、かつ、これらにより抗菌をも実現できることを見出している。これらの粉末により抗菌作用をも発揮できるメカニズムについては、不明な点が多いが、おそらく、無機シリカ系粉末に付着若しくは吸着した水分がアルカリ性粉末表面に接触することで、アルカリ性粉末の強アルカリ性が発現しやすくなり、優れた抗菌効果とともに臭気除去の効果が得られると推測される。
当該アルカリ性粉末及び脱臭剤としての無機系粉末(無機系脱臭粉末)について、以下、詳細に説明する。なお、「無機系粉末」とはアルカリ性粉末単独、あるいは、アルカリ性粉末及び無機系脱臭粉末の組み合わせであることが好ましい。
(アルカリ性粉末)
アルカリ性粉末は、これを100mlの純水に10g添加し、3分程度撹拌して溶解もしくは分散した際のpHが12以上となる粉末で、例えば、消石灰、生石灰、ドロマイト系化合物等が挙げられる。
上記のなかでも、消石灰粉末及び/又はドロマイト系化合物(特に、水酸化ドロマイト)が、コスト及び取り扱い性の観点から好ましい。またこれらであれば、抗菌性とともに抗ウイルス性を付与することができる。すなわち、抗ウイルス抗菌シートとすることができる。
ここで、ドロマイト系化合物(「ドロマイト系粉末」ともいう)としては、ドロマイトから誘導される化合物で、例えば、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイト等が挙げられる
ドロマイト(Dolomite)は、カルサイト(Calcite)と呼ばれる炭酸カルシウム(CaCO)と、マグネサイト(Magnesite)と呼ばれる炭酸マグネシウム(MgCO)との、理想的には1:1の複塩である。成分的にみれば、これはカルサイトとマグネサイトとの中間に位置する物質である。ドロマイトを比較的温和な条件で加熱すれば、脱炭酸反応が起こって、「軽焼ドロマイト」と呼ばれる酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)との酸化物の複塩が得られる。軽焼ドロマイトに水を加えて消化すれば、水酸化カルシウム(Ca(OH))と水酸化マグネシウム(Mg(OH))との水酸化物の複塩である、水酸化ドロマイトが得られる。水酸化ドロマイトには、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化第二鉄等の他の成分を本発明の効果を妨げない範囲で含有していてもよい。
水酸化ドロマイトに含まれる水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムとの質量比〔Ca(OH)/Mg(OH)質量比〕は、10/90~90/10が好ましく、20/80~85/15がより好ましく、40/60~80/20がさらに好ましい。この質量比が上記の範囲であれば、カルシウム成分、マグネシウム成分両者の特性を十分に生かせることになる。
上記水酸化ドロマイトとしては、JIS R9001に規定する特号及び1号の水酸化ドロマイトが好適である。
また、水酸化ドロマイトの原料として、軽焼ドロマイトを用いることができる。この軽焼ドロマイトとしては、JIS R9001に規定する特号及び1号の軽焼ドロマイトが好適である。軽焼ドロマイトは、処理対象物や原料中に含まれる水と反応して消化により水和され、水酸化ドロマイトに変化する。そのため、水酸化ドロマイトを調製する工程を省略して軽焼ドロマイトをそのまま用いても水酸化ドロマイトによる効果が発揮される。
アルカリ性粉末のBET比表面積は、0.5~60m/gであることが好ましく、10~60m/gであることがより好ましい。0.5~60m/gであることで、臭気ガスとの接触(吸着)面積を維持することができる。本明細書におけるBET比表面積は、窒素吸着によるBET法により、窒素の吸着量から1点法により算出される比表面積を意味する。
アルカリ性粉末の平均粒子径(メジアン径(d50))は、2~40μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましい。2~40μmであることで、臭気ガスとの接触(吸着)面積を維持することができる。本明細書におけるメジアン径(d50)は、レーザ回折散乱法によって求めた粒度分布における粒子個数の積算値が50%となる粒子径(d50)を意味する。
また、塗工性や脱落防止性を考慮すると、篩い分けによるアルカリ性粉末の最大粒径は150μm以下であることが好ましい。
(脱臭剤としての無機系粉末)
脱臭剤としての無機系粉末(無機系脱臭粉末)としては、例えば無機シリカ系粉末を用いることが好ましい。無機シリカ系粉末とは、化学成分としてシリカを含有する無機粉末である。
無機シリカ系粉末としては、活性白土、セピオライト、酸性白土、珪藻土、シリカゲル、頁岩(特に、膨張性頁岩を焼成したもの)、パーライト、アロフェン、ゼオライト等といった、化学成分としてシリカを含む粉末が挙げられる。なかでも、用途によっては、無機シリカ系粉末が、水溶液若しくは分散液のpHが6以下となる無機シリカ系酸性粉末であることが好ましい。無機シリカ系酸性粉末とは、これを100mlの純水に10g添加し、3分程度撹拌して溶解もしくは分散した際のpHが6以下(好ましくは4以下、より好ましくは3以下)となる粉末をいう。無機シリカ系酸性粉末とすることでアルカリ性粉末との相乗効果が得られやすい。具体的な無機シリカ系酸性粉末としては、好ましくは、活性白土、セピオライト、ゼオライト、珪藻土等が挙げられる。
無機シリカ系粉末のBET比表面積は、70~200m/gであることが好ましく、90~190m/gであることがより好ましい。70~200m/gであることで、臭気ガスとの接触(吸着)面積を維持することができる。
無機シリカ系粉末の平均粒子径(メジアン径(d50))は、10~200μmであることが好ましく、20~190μmであることがより好ましい。10~200μmであることで、臭気ガスとの接触(吸着)面積を維持することができる。
また、塗工性や脱落防止性を考慮すると、篩い分けによる無機シリカ系粉末の最大粒径は150μm以下であることが好ましい。
無機シリカ系粉末の細孔容積は、0.1~0.5cm/gであることが好ましく、0.2~0.4cm/gであることがより好ましい。0.1~0.5cm/gであることで、臭気ガスとの接触(吸着)面積を維持することができる。細孔容積は、ガス吸着式細孔分布測定器「NOVA-4200」(株式会社セイシン企業製)により測定することができる。
無機シリカ系粉末の陽イオン交換容量(C.E.C)は、10~200meq/100gであることが好ましく、10~100meq/100gであることがより好ましく、10~50meq/100gであることがさらに好ましい。陽イオン交換容量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
ここで、活性白土は、モンモリロン石を主体とするいわゆるベントナイトや酸性白土等を硫酸等で酸処理を施して活性を高めた粘土鉱物誘導体である。例えば、上記ベントナイトや酸性白土を常温で乾かし粉末とし、これを常圧又は加圧のもとで90℃以上の温度で硫酸等の酸の適当量で加熱する。その後、濾別・洗浄し、120~200℃で乾燥させたものが用いられる。活性白土は、表面活性を高めるために硫酸等の酸処理が行われていることから、またその表面の分子の配向状態から強い酸性が示される。
活性白土の市販品としては、例えば、活性白土SA35、SA1、T、R-15、E、ニッカナイトG-36、G-153、G-168(いずれも日本活性白土(株)製);ガレオンアース(NVZ、NF2、NFX、V2)、ミズカエース(いずれも水澤化学工業(株)製);等が挙げられる。
また、珪藻土はケイ藻が堆積したシリカを主成分とする天然物質であり、良好な細孔容積の点から北海道稚内地方で産出する稚内珪藻土が好ましいが、もちろん稚内地方以外において産出したものも使用できる。
アルカリ性粉末と無機シリカ系粉末との合計に対する、アルカリ性粉末の含有量は、10質量%以上であることが好ましく、10~90質量%であることがより好ましく、25~75質量%であることがさらに好ましく、なかでも25~65質量%であることが好ましい。特に10~90質量%であることで、臭気の除去及び抗菌作用を良好に発揮できる。
抗菌領域に含まれる粉体のうち、アルカリ性粉末と無機シリカ系粉末との合計量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%であることがより好ましい。90質量%であることで、臭気の除去及び抗菌作用を良好に発揮できる。
無機系粉末の担持量は、耐粉落ち性を維持しながら、無機系粉末の機能を良好に発現させる観点から、5~35g/mであることが好ましく、7~30g/mであることがより好ましく、10~25g/mであることがさらに好ましい。
また、無機系粉末としては、アルカリ性粉末単独、あるいは、アルカリ性粉末と活性白土及び/又はゼオライトとの組み合わせを含むものが抗菌、脱臭の観点から好ましい。
アルカリ性粉末及び無機シリカ系粉末以外に、活性炭といった粉末を含有してもよい。
かかる粉末の平均粒子径(メジアン径(d50))は、10~200μmであることが好ましく、20~190μmであることがより好ましい。
(粘着剤領域)
粘着剤領域は抗菌領域上に形成され、マスク等と貼り合わされる。粘着剤領域を構成する粘着層は、抗菌領域上に粘着層を形成した際に、抗菌シートが30~400cm/(cm・s)の通気度を有するように形成されることが好ましい。また、粘着剤領域を構成する粘着層は、着脱容易性を考慮すると、粘着剤領域が設けられた側の面の対180°ガラス粘着力が既述のとおり、1~5N/25mmとなるように形成されることが好ましい。
粘着層の通気度は、形成繊維の平均繊維径や密度、粘着層の厚さや形成する領域等により調整することができる。粘着層の粘着力は上記以外に、粘着剤の種類によっても調整することができる。
なお、通気度や粘着力は実施例に記載の方法で測定することができる。
本実施形態に係る粘着層の形成には後述するメルトブローで行うことが好ましいため、当該粘着剤は、例えばホットメルト型粘着剤のように、常温で粘着性を示して加熱溶融できるものが好ましい。
粘着剤としては、SIS、SBS、SEBS、SIPS等のスチレン系エラストマー;アクリル酸若しはメタクリル酸等のアルキルエステルを成分とするアクリル系エラストマー;ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系エラストマー;ウレタン系エラストマー;等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上をブレンドして用いることができる。
特に、スチレン系エラストマーにオレフィン系エラストマーを加えることで、タックや強度を調節することができる。
粘着剤の調製に際しては、必要に応じタッキファイヤー、軟化剤、老化防止剤等の添加剤を配合することができる。
後述するメルトブローによれば、粘着剤を繊維状にして粘着剤層を形成することができる。この粘着剤の平均繊維径は50~300μmであることが好ましく、60~250μmであることがさらに好ましい。
粘着剤層の粘着剤の繊維径は、スプレー塗布を行う条件、例えば、ホットメルト粘着剤をスプレー塗布する金型(ダイ)の吐出孔の孔径やスプレー塗布する際に用いられる高速ホットエアの流速・流量などを調節して制御することができる。これらの条件を変化させることによって、粘着剤層の繊維の径を調節することができる。
粘着剤の繊維径が50μm以上であると、不織布層の繊維間に多くの量の粘着剤の繊維が潜り込んでしまうのを防ぎ、不織布シートの良好な通気性を維持することができる。粘着剤の繊維径が300μm以下であると、不織布シートの表面を粘着剤層の繊維が覆いすぎるのを防ぎ、不織布シートの良好な通気性を維持することができる。
粘着剤領域における粘着剤の塗布量は5~30g/mであることが好ましく、10~20g/mであることがより好ましい。粘着剤の塗布量が5g/m以上であると着脱自在となる良好な粘着性が得られやすくなる。粘着剤の塗布量が30g/m以下であるとコスト増となることを防ぐことができる。
ここで、メルトブローン法とは、溶融した熱可塑性プラスチック樹脂を押出機の後に設置したダイから、ネットコンベアーまたは捕集スクリーン上に高速高温の気流で吹き出すことによって、自己粘着性ウェブを作り出す方法である。
スプレー方法にはメルトブローン法やスパイラル法等があるが、メルトブローン法が好ましい。メルトブローン法では、他のスプレー方法に比べてノズルの口径やホットエアの温度とホットメルトの吹き出し「溶融温度」の組合せによって自在に繊維径を選定することができる。この理由で、メルトブローン法で粘着剤繊維層を形成すると、繊維径を小さくすることができて塗布面も均一となる。
[抗菌シートの製造方法]
本実施形態の抗菌シートは、例えば、不織布シートに既述のアルカリ性粉末とバインダー樹脂を含む塗工液を塗布し乾燥する工程(塗布乾燥工程)、乾燥後の不織布シートの抗菌領域上に粘着剤領域を形成する工程(粘着剤領域形成工程)を順次経て製造することができる。
(塗布乾燥工程)
塗布乾燥工程では、まず、アルカリ性粉末とバインダー樹脂を含む塗工液を作製する。このとき、用途に応じて、脱臭剤としての無機系粉末を混合してもよい。アルカリ性粉末と無機系粉末の混合比や、これらとバインダー樹脂との割合等は既述のとおりである。
次に、塗工液を不織布に塗布し乾燥させる。
不織布シートに塗工液を塗布する方法としては、特に限定されないが、ディッピング、コンマコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等のコーティング法や、フレキソ印刷等を用いた方法が好ましい。この他、(フラット)スクリーンプリント、ロータリー(スクリーン)プリント、インクジェット、スプレー、Tダイ等を用いた方法も挙げられる。なかでも、グラビアコーティング法を用いることが好ましい。グラビアコーティング法であれば、他の塗布方法、特にナイフ法、ロール法と比較して、抗菌シートが良好な柔軟性を有するようになる。
グラビアコーティング法の場合、そのグラビア深度(版深度)は50~210μmであることが好ましく、具体的には、グラビア深度が60μm、90μm、150μm、200μmのグラビアロールが好ましい。
また、塗工液の塗布量としては、10~100g/mであることが好ましく、10~80g/mであることがより好ましい。このとき、塗工液中の抗菌剤(アルカリ性粉末、又は、アルカリ性粉末と無機系脱臭粉末の合計)の塗布量としては、3~90g/mであることが好ましく、5~70g/mであることがより好ましい。
上記いずれかの方法で不織布に塗工液を塗布した後は、公知の乾燥を行う。
当該方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよく、気温や湿度によっては自然乾燥でもよい。ただし、自然乾燥だとアルカリ性粉末が空気中の水分や二酸化炭素を吸収し、その効果を低減させてしまう場合がある。したがって、80~150℃程度で乾燥することが好ましい。
(粘着剤領域形成工程)
粘着剤領域形成工程では、抗菌領域上に粘着剤を塗布して粘着剤領域を形成する。なお、粘着剤は抗菌領域でない箇所に塗布されていてもよい。
粘着剤の塗布は、例えば下記のようにして行うことができる。まず、図4に示すように、供給ロール45に抗菌シート31を、別の供給ロール47に離型フィルム33を、それぞれセットする。例えばホットメルト粘着剤ペレット41をアプリケータ42に投入して高温で溶融する。コンベア46を動作させて供給ロール45から不織布シート31を繰り出す。次いで、溶融したホットメルト粘着剤をダイ43に送る。ホットメルト粘着剤を、コンベア46上の不織布ベースシート31上に、高速のホットエア44とともに吹き付けて抗菌領域上に粘着剤領域を形成する。
以上のような工程と、適宜公知の工程を経て本実施形態に係る抗菌シートが作製される。
例えば粘着剤領域形成工程後に、図4で示すように、供給ロール47から繰り出した離型フィルム33を貼り合わせロール48を用いて押圧して貼り合わせてもよい。そして最終的に巻き取りロール49を用いて巻き取ってもよい。
[マスク]
本実施形態のマスクは、着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えるマスクであって、抗菌シートの粘着剤領域が、マスク本体部の外側面及び内側面の少なくともいずれかと着脱自在に固定化されている。
当該マスクとしては、種々の形状、素材のものが使用可能であり、その通気度は30~400cm/(cm・s)であることが好ましく、60~200cm/(cm・s)であることがより好ましい。
例えば図2に示すように、耳掛け部24を有するマスク20のマスク本体部22における、着用者の口及び鼻を覆う側(内側面22B)とは反対側(外側面22A)に抗菌シート10の粘着剤領域が貼り合わせられ、図3に示すような抗菌シート付マスクが得られる。
本実施形態のマスク(抗菌シート付マスク)は、抗菌シートが粘着部/粉末部(抗菌部)/不織布の構成で、そのうちの粘着部がマスクの外側又は内側と着脱自在に装着される。その結果、不織布シートが外側に来るためアルカリが直接手に触れない。すなわち、アルカリの影響を少なくすることができる。
ここで、抗菌シートの厚みは、マスクに対する着脱性を考慮して、0.1~0.7mmであることが好ましく、0.2~0.6mmであることがより好ましい。
本実施形態のマスクは通常のマスク用途以外にも、例えば、アルカリ性粉末とともに脱臭剤としての無機系粉末を使用することで、アンモニアガス及び硫化水素ガスを含む臭気(場合によっては酢酸ガスが含まれることもある)が発生し、腐敗に伴う菌の増殖が懸念される場所に対しても好適に使用することできる。
なお、臭気としては、アンモニアガス、硫化水素ガス、及び酢酸ガスの他に、メチルメルカプタン、トリメチルアミン、スカトール等が挙げられる。また、細菌としては大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、サルモネラ菌等、場合によっては、感染菌が挙げられる。
次に、実験例及び実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[脱臭抗菌剤についての参考実験例]
(無機シリカ系粉末によるアンモニアガス吸着試験)
無機シリカ系粉末として、活性白土粉末(日本活性白土(株)社製SA-1)、ゼオライト粉末(ジークライト(株)社製ジークライトSGW)、珪藻土粉末(有限会社 稚内グリーンファクトリー社製 珪藻土-0.7mm)のそれぞれ1gを秤量し、アンモニアガス吸着試験を行った。下記表1-1及び表1-2に上記無機シリカ系粉末の性状・物性、化学成分を示す。
Figure 0007201183000001
Figure 0007201183000002
本実施例におけるd50(粒度分布における粒子個数の積算値が50%となる粒子径)及びd90(粒度分布における粒子個数の積算値が90%となる粒子径)は、レーザ回折式粒度分布測定装置「SALD-2300」(株式会社島津製作所製)により測定した。
比表面積は、ガス吸着式細孔分布測定器「NOVA-4200」(株式会社セイシン企業製)を用いて、BET法により、窒素の吸着量から1点法により算出した。
細孔容積も、ガス吸着式細孔分布測定器「NOVA-4200」(株式会社セイシン企業製)を用いて、算出した。
pHは、それぞれの試料を10g採取し、これを100mlの純水中に添加してガラス棒を使って3分間よく撹拌した後、pHメータにて測定した。
また、化学成分は、JIS R9011の「石灰の分析方法」に規定された方法により測定した。
また、以下に陽イオン交換容量の測定方法を説明する。なお、下記説明において、「M」は「モル/リットル」、「L」は「リットル」、「mL」は「ミリリットル」を表す。
(1)試薬の調製
i)1M酢酸アンモニウム液
酢酸アンモニウム77.08gを1Lの純水に溶解し、その後、2Mのアンモニア水溶液と2Mの酢酸とで、pHを7に調整して、1M酢酸アンモニウム液を調製した。
ii)エタノール(0.8m/m
エタノール800mLに純水100mLを加えて、BTB試験紙によりアンモニア水でpHを7に調整した。
iii)塩化ナトリウム溶液(10質量%)
塩化ナトリウム100gに純水を加えて1Lとした。
(2)操作-交換-
試料0.1gを遠心管に分取した。そこへ1M酢酸アンモニウム液を40mL添加した。25℃の恒温槽中で適宜振り混ぜながら放置した。その後、5000rpmで遠心分離し上澄み液を捨てた。
(3)操作-洗浄-
次に、エタノール40mLを加えて振り混ぜ、5000rpmで遠心分離し上澄みを捨てた。この洗浄操作を4回繰り返した後、室温で乾燥させた。
(4)操作-浸出-
乾燥後、塩化ナトリウム溶液40mLを加え、25℃の恒温槽中で適宜振り混ぜながら24時間放置した。その後、5000rpmで遠心分離し上澄み液を採取し、純水にて50mLにメスアップした。
(5)測定
50mLに定容とした、浸透塩化ナトリウム溶液から正確に一定量(20ml)はかり、ブレムナー蒸留装置により、NH を定量して陽イオン交換容量を求めた。
また、当該吸着試験は、無機シリカ系粉末を充填したテドラーバッグ(5リットル)内にアンモニアガスが50ppmとなるように充填して5分後、10分後、30分後、60分後のそれぞれでガス検知管((株)ガステック製)を用いて、アンモニアガスの濃度を測定した。下記表2にはアンモニアガス吸着試験の結果を示す。なお、酸性粉末を使用しない場合(ブランク)の結果も併せて示す。
Figure 0007201183000003
表2より、いずれの無機シリカ系粉末も良好なアンモニアガス吸着特性を有していた。
(実験例1~3)
・実験例1
アルカリ性粉末として下記表3に示す性状・物性の消石灰(吉澤石灰工業(株)製工業用特号消石灰)1gを用い、無機シリカ系粉末として、上記“無機シリカ系粉末によるアンモニアガス吸着試験”で使用した活性白土粉末1gを用い、これらを混合して脱臭剤入り抗菌剤(脱臭抗菌剤)を作製した。
Figure 0007201183000004
・実験例2
アルカリ性粉末として実施例1で使用した消石灰1gを用い、無機シリカ系粉末として、上記“無機シリカ系粉末によるアンモニアガス吸着試験”で使用したゼオライト粉末1gを用い、これらを混合して脱臭抗菌剤を作製した。
・実験例3
アルカリ性粉末として実施例1で使用した消石灰1gを用い、無機シリカ系粉末として、上記“無機シリカ系粉末によるアンモニアガス吸着試験”で使用した珪藻土1gを用い、これらを混合して脱臭抗菌剤を作製した。
・アンモニアガス吸着試験:
実験例1~3で作製した脱臭抗菌剤をそれぞれ1g用いて、“無機シリカ系粉末によるアンモニアガス吸着試験”と同様にして、アンモニアガス吸着試験を行った。結果を下記表4に示す。
Figure 0007201183000005
表4より、いずれの脱臭抗菌剤も良好なアンモニアガス吸着特性を有しており、実験例1,3の脱臭抗菌剤は特に優れていた。
・硫化水素ガス吸着試験:
アンモニアガスを硫化水素ガスとし、硫化水素ガス濃度を20ppmとした以外は、上記“・アンモニアガス吸着試験”と同様にして、実施例1~3で作製した脱臭抗菌剤をそれぞれ1g用いて、硫化水素ガス吸着試験を行った。結果を下記表5に示す。
Figure 0007201183000006
表5より、いずれの脱臭抗菌剤も良好な硫化水素ガス吸着特性を有していた。
(実験例4~7及び比較実験例1,2)
消石灰と活性白土との割合を下記表6のとおりにした以外は実験例1と同様にして脱臭抗菌剤を作製した。作製した各脱臭抗菌剤を1g用いて、実験例1と同様にアンモニアガス吸着試験及び硫化水素ガス吸着試験を行った。結果を下記表6及び表7示す。
Figure 0007201183000007
Figure 0007201183000008
・抗菌試験:
「JIS Z 2801:2012 抗菌加工製品・抗菌性試験方法・抗菌効果」を参考にした試験方法によって、実験例1、実験例4~6、比較実験例1、2の脱臭抗菌剤(20g)を収納したパック(試験品)の各種細菌に対する常温下(25℃)での抗菌効果を調べた。具体的には下記のようにして試験を行った。
(1)試験品の清浄化
試験品の両面にパルスドキセノンランプ(コメット,BHX-200)をそれぞれ20秒間照射して清浄化した。
(2)試験条件
i)作用温湿度:25±1℃、90%RH以上
ii)作用時間:直後(無加工試験品のみ)、24時間
(3)試験菌及び試験菌液の調製
i)試験菌
a)Escherichia coli NBRC3972(大腸菌)
b)Staphylococcus aureus NBRC12732(黄色ぶどう球菌)
ii)試験菌液の調製
凍結保存された菌株を普通寒天培地(日水製薬)で35±1℃、24時間培養した。この培養菌を新たな普通寒天培地に移植して、35±1℃で19時間培養した。発育した集落をかき取り、1/500濃度の普通ブイヨン培地(栄研化学)で約10個/mLに調製し、これを試験菌液とした。
(4)試験方法
試験方法は「JIS Z 2801:2012 抗菌加工製品・抗菌性試験方法・抗菌効果」を参考にした。詳細を以下に示す。
i)試験菌液の接種と培養
試験品をシャーレに入れ、試験品表面全体に試験菌液0.4mLを9箇所滴下した。滴下した試験菌液が浸み込んだ後、パック内の内容物と菌液の接触効率を高めるために、菌液接種面を裏返して、作用温湿度条件(25℃±1℃、90%RH)下で所定時間作用させた。
ii)菌数測定
所定時間作用後に予めSCDLPブイヨン培地(栄研化学)100mLを入れたストマッカー用減菌袋に試験品を回収し、試験品から試験菌を洗い出した。洗い出した液を菌数測定用試料液とした。試料液はリン酸緩衝生理食塩液を用いて希釈列を作製し、試料液原液及び希釈液の各1mLをシャーレに移し、標準寒天培地(日水製薬)約20mLと混合後、固化させて35±1℃で48時間培養した。培養後の発育集落を数えて、試験品あたりの試験菌数(定量下限値:100個/試験品)を求めた。また、得られた試験菌数から、無加工試験品を対照として、各抗菌加工品の抗菌活性値を求めた。
黄色ブドウ球菌対する試験結果を下記表8、表9に示し、大腸菌に対する試験結果を下記表10、表11に示す。
なお、抗菌活性値(R)は下記式から求めた。
式:R=(U-U)-(A-U)=U-A
R:抗菌活性値(数値は小数点以下2桁目を切り捨て、小数点1桁で表示)
:無加工試験品の接種直後の生菌数の対数値
:無加工試験品の各作用時間後の生菌数の対数値
:抗菌加工品の各作用時間後の生菌数の対数値
Figure 0007201183000009
Figure 0007201183000010
Figure 0007201183000011
Figure 0007201183000012
両試験菌共に、各実験例においては24時間作用後に定量下限値未満となった。大腸菌の抗菌活性値は全実施例で4.4、黄色ブドウ球菌は3.5であった。
参考とした試験規格「JIS Z 2801」における「抗菌効果」は、試験菌である大腸菌や黄色ブドウ球菌に対する24時間作用における抗菌活性値が2.0以上とされており、これを鑑みれば、実験例に係る脱臭抗菌剤は優れた抗菌効果を発揮したことがわかる。
[抗菌シート(粘着剤領域未形成)についての実験例]
(実験例8)
無機系粉末9質量部、メタノール87質量部、バインダー樹脂としてのポリビニルピロリドン(クリージャスK-90、第一工業製薬(株)製、重量平均分子量120万)3質量部、及び、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、日本曹達(株)製)1質量部を混合して脱臭抗菌剤含有樹脂組成物(塗工液)を作製した。
これを表12に示す目付の不織布シートの一方の面に、無機系粉末が表12に示す担持量となるように上記塗工液をグラビアコーティングで塗布し、100~105℃で、90~100秒間乾燥し、抗菌領域を有する抗菌シートを作製した。
なお、無機系粉末の組成、不織布シートの詳細は下記のとおりである。
・無機系粉末:実験例1と同一の配合組成(消石灰:活性白土=50:50(質量比))
・不織布シート:スパンボンド不織布(商品名:シンワ6650-1A、シンワ(株)社製、目付30g/m、40g/m、50g/m
・不織布シート:スパンレース不織布(商品名:エスコット、ユニチカ(株)社製、目付30g/m、55g/m
各例の抗菌シートについて、その作製後に、抗菌領域を指で擦り、粉落ちするかどうかを調べた。結果を下記表12に示す。なお、耐粉落ち性の評価基準は下記のとおりとした。
<耐粉落ち性の評価基準>
A:抗菌シートの同じ個所を折りたたんだのち、もとに戻す操作を10回繰り返しても粉落ち及び粉抜けがない。またその後に折り畳み部を指で強くこすっても粉落ち及び粉抜けがない。
B:抗菌シートの同じ個所を折りたたんだのち、もとに戻す操作を10回繰り返しても粉落ち及び粉抜けがない。またその後に折り畳み部を強く指でこすると若干粉落ちがあったが実用上問題はない。
C:抗菌シートの同じ個所を折りたたんだのち、もとに戻す操作を10回繰り返すと、粉落ちが若干あり、また粉抜けも生じていて実用上はあまり好ましくはない。
A及びB評価が合格であり、A評価であればより好ましい。
Figure 0007201183000013
[抗菌シートとしての実施例]
(実験例9)
実験例8のスパンボンド不織布(商品名:シンワ6650-1A、シンワ(株)社製、目付50g/m)を用いた抗菌シートの抗菌領域が形成された面に、メルトブローン法にてホットメルト粘着剤を塗布して粘着剤領域を形成し、通気度が100ml/(cm・s)で対180°ガラス粘着力(20℃、60%RH)が3.5N/25mmの抗菌シートXを作製した。
なお、対180°ガラス粘着力は、20℃、60%RHの条件で、アルカリガラス板と粘着剤領域を貼り合せてから1日経過した後、JIS Z0237に基づき規定された180°引きはがし法によって、引張速度300mm/分で引きはがした際の粘着力(N/25mm)のことをいう。
使用したホットメルト粘着剤は(株)モレスコ製のTN-286Z(軟化点:97℃、160℃粘度:4900mPa・s)を用い、粘着剤層の目付は20g/mとした。離型フィルムは厚み12μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いた。
粘着剤の塗布は、まずホットメルト粘着剤の溶融を180℃で行って、ノズル径0.3mmのダイから210℃のホットエアとともに、抗菌領域が形成された面の全面に吹き付けて粘着剤層を形成した。その粘着剤繊維の繊維径は80~150μmであった。また、粘着剤の塗布量は20g/mであり、抗菌シートXの厚みは0.38mmであった。
抗菌シートXをマスクA(東和化成(株)社製の商品名:プリーツマスクPM-106、通気度173cm/(cm・s))及びマスクB(アズフィット(株)社製の商品名:日本品質息ラクラク不織布マスク、通気度72cm/(cm・s))のそれぞれに貼り合わせ通気度測定と引き剥がし試験を行った。結果を下記表13に示す。
[通気度]
JIS L1096A法による試験方法に従って、抗菌シートXをマスクA及びBのそれぞれの外側面に貼り合わせて通気度を測定した。
[粘着力]
不織布マスクのマスク本体部の外側面に抗菌シートの粘着剤領域を貼り付けた後、指で抗菌シートを剥がす着脱操作を繰り返して粘着力の評価を行った。2回以下の着脱操作で粘着力がなくなってしまったものをWとし、3回以上着脱操作が可能で剥がす際にスムーズに剥がせたものをGとし、3回以上着脱操作が可能であるが剥がす際に強い力が必要で剥がした後のマスクに毛羽立ちが生じてしまったものをSとした。W、G、SのうちGが合格品である。
Figure 0007201183000014
(実験例10)
[抗ウイルス効果評価試験]
実施例9の抗菌シートXを用いて抗ウイルス効果評価試験を下記のようにして行った。
試験ウイルスとして、ネコ腸コロナウイルス(Feline enteric coronavirus, WSU 89-1683)を用い、抗菌シートXと未加工品(抗菌シートXに用いたスパンボンド不織布(商品名:シンワ6650-1A、シンワ(株)社製、目付50g/m))のそれぞれ(試験品)について、ISO 21702 に準じた方法で抗ウイルス効果を調べた。
具体的には、まず、試験サンプル(試験品のサイズ:40×40mm)をシャーレに入れ、試験品に、ウイルス液を0.4mL滴下した。40×40mmのフィルム(PP製)を乗せ、試験品とウイルスを作用させた。所定時間作用後、試験品からウイルスを回収し感染価を測定した。結果を下記表14に示す。
Figure 0007201183000015
上記表より、本発明の抗菌シートは抗ウイルス性をも発揮し得ることがわかる。
10 抗菌シート
12 不織布シート
14 抗菌領域
16 粘着剤領域


Claims (6)

  1. 不織布シートと、該不織布シートの一方の面側に形成された抗菌領域と、該抗菌領域上に形成された粘着剤領域とを有し、
    前記抗菌領域が、水溶液若しくは分散液のpHが12以上となるアルカリ性粉末を含有する無機系粉末、及び、バインダー樹脂を含み、
    フラジール形法(JIS L 1096)に基づく通気度が、30~400cm/(cm・s)である抗菌シート。
  2. 前記不織布シートの目付X(g/m)に対する前記無機系粉末の担持量Y(g/m)の比(Y/X)が、0.2~0.7である請求項1に記載の抗菌シート。
  3. 前記バインダー樹脂が、親水性樹脂である請求項1又は2に記載の抗菌シート。
  4. 前記無機系粉末が、前記アルカリ性粉末とは別に、無機系脱臭粉末を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の抗菌シート。
  5. 前記無機系粉末の担持量Yが5~35g/mである請求項1~4のいずれか1項に記載の抗菌シート。
  6. 着用者の口及び鼻を覆うマスク本体部を備えるマスクであって、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の抗菌シートの前記粘着剤領域が、前記マスク本体部の外側面及び内側面の少なくともいずれかと着脱自在に固定化されたマスク。




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