本発明に係るオープン巻線型モーター、圧縮機、および冷凍サイクル装置の実施形態について図1から図10を参照して説明する。なお、複数の図面中、同じまたは相当する構成には同一の符号が付されている。
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の概略的な図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、密閉型の圧縮機2と、放熱器3と、膨張装置5と、吸熱器6と、アキュームレーター7と、冷媒配管8と、を備えている。冷媒配管8は、圧縮機2と放熱器3と膨張装置5と吸熱器6とアキュームレーター7とを順次に接続して冷媒を流通させる。
圧縮機2は、冷媒配管8を通じて吸熱器6を通過した冷媒を吸い込み、圧縮し、冷媒配管8を通じて高温高圧の冷媒を放熱器3へ吐き出す。
圧縮機2は、縦置きされる円筒状の密閉容器11と、密閉容器11内の上半部に配置されるオープン巻線型モーター12(以下、単に「電動機12」と言う。)と、密閉容器11内の下半部に配置される圧縮機構部13と、電動機12の回転駆動力を圧縮機構部13へ伝達する回転軸15と、回転軸15を回転自在に支持する主軸受16と、主軸受16と協働して回転軸15を回転自在に支持する副軸受17と、を備えている。
密閉容器11は、上下方向に延びる円筒形状の胴部11aと、胴部の上端部を塞ぐ鏡板11bと、胴部の下端部を塞ぐ鏡板11cと、を備えている。
密閉容器11の上側の鏡板11bには、冷媒の吐出用の吐出管8aが接続されている。吐出管8aは冷媒配管8に繋がれている。また、密閉容器11の上側の鏡板11bには、電力供給用の密封端子部18が2個設けられている。
電動機12は、圧縮機構部13を回転させる駆動力を発生させる。電動機12は密閉容器11の内壁に固定される筒状の固定子21と、固定子21の内側に配置され、かつ回転軸15に固定される回転子22と、固定子21から引き出されて密封端子部18に接続される複数の口出線23と、を備えている。
回転子22は、磁石収容孔(図示省略)を有する回転子鉄心25と、磁石収容孔に収容される永久磁石と、を備えている。回転子22は、固定子21に対して回転可能であり、かつ回転軸15に固定されている。回転子22および回転軸15の回転中心線Cは、実質的に固定子21の中心線Pに一致している。
複数の口出線23は、密封端子部18を通じて固定子21に電力を供給する配線であり、いわゆるリード線である。口出線23は、電動機12の種類に応じて複数配線される。本実施形態では6本の口出線23が配線されている。
回転軸15は、電動機12と圧縮機構部13とを連結している。回転軸15は、電動機12が発生させる回転駆動力を圧縮機構部13に伝達する。
回転軸15の中間部分15aは、電動機12と圧縮機構部13とを繋ぎ、主軸受16によって回転可能に支持されている。回転軸15の下端部分15bは、副軸受17によって回転可能に支持されている。主軸受16および副軸受17は、圧縮機構部13の一部でもある。換言すると、回転軸15は、圧縮機構部13を貫通している。
また、回転軸15は、主軸受16に支持されている中間部分15aと副軸受17に支持されている下端部分15bとの間に、偏心部26を備えている。偏心部26は、回転軸15の回転中心線に不一致な中心を有する円盤、あるいは円柱である。
圧縮機構部13は、冷媒、つまり単一冷媒または混合冷媒を圧縮することができる。電動機12が回転軸15を回転駆動することによって、圧縮機構部13は、冷媒配管8からガス状の冷媒を吸込んで圧縮し、かつ密閉容器11内に吐出する。
圧縮機構部13は、円形のシリンダー室31を有するシリンダー32と、シリンダー室31内に配置される環状のローラー33と、ローラ33の外周面に接して往復動し、シリンダー室31内を吸込室と圧縮室とに仕切るブレード37と、を備えている。
シリンダー32は、密閉容器11に複数箇所で溶接、例えばスポット溶接によって固定されている。
シリンダー室31は、シリンダー32の内側の空間であって、主軸受16および副軸受17によって閉鎖されている。シリンダー室31は、回転軸15の偏心部26を収容している。
主軸受16は、ボルトなどの締結部材34によってシリンダー32に固定されている。主軸受16には、シリンダー室31内で圧縮された冷媒を吐出する吐出弁機構(図示省略)と、吐出弁機構に覆い被さる吐出マフラー35と、が設けられている。吐出弁機構は、圧縮機構部13の圧縮作用にともないシリンダー室31内の圧力と吐出マフラー35内の圧力との圧力差が所定値に達したときに吐出ポートを開放して、圧縮された冷媒を吐出マフラー35内に吐出する。吐出マフラー35は、吐出マフラー35の内外を繋ぐ吐出孔(図示省略)を有している。吐出マフラー35内に吐出された圧縮冷媒は、吐出孔を通じて密閉容器11内へ吐出される。
副軸受17は、ボルトなどの締結部材36によってシリンダー32に固定されている。
ローラー33は、偏心部26の周面に嵌合されている。ローラー33の外周面は、シリンダー室31の内周面に線接触している。ローラー33は、回転軸15の回転にともなって、その外周面をシリンダー室31の内周面に線接触させながら偏心運動する。
なお、ローラー33とシリンダー32との接触は直接的な接触ではなく、潤滑油39の油膜(図示省略)を介在させた間接的なものであるが、説明の便宜のために、これら油膜を介した接触を単に「接触」と表現する。ローラー33と偏心部26との間、ローラー33と主軸受16との間、およびローラー33と副軸受17との間も同じである。
吸込管7aは、密閉容器11を貫いて、シリンダー32のシリンダー室31に接続されている。シリンダー32には、吸込管7aに繋がってシリンダー室31に到達する吸込孔(図示省略)が設けられている。
密閉容器11の下部は潤滑油39で満たされている。そして、圧縮機構部13の大部分は、密閉容器11内の潤滑油39中に浸されている。
次いで、電動機12の固定子21について詳しく説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を回転軸の中心線方向から示す図である。
図1に加えて図2に示すように、本実施形態に係る電動機12は、三相9スロットタイプである。
固定子21は、集中巻固定子である。固定子21は、筒状のヨーク41(いわゆる継鉄)と、ヨーク41の内側へ突出し、かつ間隔を隔てて周方向へ並ぶ9つのティース42と、を有する固定子鉄心43を備えている。また、固定子21は、固定子鉄心43のそれぞれの端面に設けられる2つの絶縁端板45と、複数の絶縁薄板(図示省略)と、ティース42と2つの絶縁端板45との間に巻き付けられる巻線48と、備えている。
固定子21の中心線Pの方向を「軸方向」と呼ぶ。固定子21の中心線Pは、実質的に回転子22の回転中心線Cに一致している。また、固定子21の中心線Pに直行する平面において、固定子21の中心線Pを通る方向を「径方向」と呼び、固定子21の中心線Pを中心とする円周方向を「周方向」と呼ぶ。
固定子鉄心43は、軸方向に積層され、かつ一体化された複数の薄板(図示省略)を有している。薄板は、プレス等で打ち抜かれた電磁鋼板である。固定子鉄心43は、平行な一対の端面43a、43bを有している。一対の端面43a、43bの法線は、軸方向に向けられている。固定子鉄心43の一方の端面43aは、固定子21の上方側の面、つまり、密閉容器11の上側の鏡板11bに近い。固定子鉄心43の他方の端面43bは、固定子21の下方側の面、つまり、密閉容器11の下方側の鏡板11cに近く、かつ一方の端面43aよりも圧縮機構部13に近い。一方の端面43aには、第一絶縁端板45Aが設けられ、他方の端面43bには、第二絶縁端板45Bが設けられている。
筒状のヨーク41の中心線は、固定子21の中心線Pに一致している。
9つのティース42は、周方向へ実質的に等間隔、かつ放射状に並んでいる。それぞれのティース42は、ヨーク41から径方向内側に延びている。それぞれのティース42は、ヨーク41から径方向内側へ向かって延びるティース基部42aと、ティース基部42aの先端側に設けられて周方向へ延びるティース先端部42bと、を有している。ティース先端部42bは、ヨーク41の内側を臨む、換言すると固定子21を臨むティース先端面42cを有している。
ティース先端面42cは、固定子21の中心線Pを中心とする円弧形状に形成されている。回転子22は、複数のティース先端面42cによって画定される回転子収容空間43c内に配置されている。回転子22の外周面とティース先端面42cとの間には、空隙が隔てられている。
ヨーク41、および周方向に隣接する2つのティース42は、スロット49を画定している。スロット49は、ティース42と同数、つまり9つある。スロット49は、隣接する2つのティース42のティース先端部42bの間にスロット開口部を有している。
さらに、固定子鉄心43は、固定子鉄心43の一方の端面43aから他方の端面43bへ達する第一孔(図示省略)を有している。第一孔は、固定子鉄心43の外周縁部、かつティース42の根元部分に配置されている。第一孔は、固定子21の中心線Pに実質的に平行に延びている。
絶縁端板45は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、Liquid Crystal Plastic、LCP、半・全芳香族ポリエステル)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、またはポリアミド(PA)の一体成型品である。先ず、2つの絶縁端板45で共通する構成を説明する。そこで、以下の説明では第二絶縁端板45Bの説明は省略し、第一絶縁端板45Aについて説明する。
第一絶縁端板45Aは、環状の外壁部材51と、外壁部材51の内側に配置され、かつ間隔を空けて周方向へ並ぶ複数の内壁部材52と、外壁部材51とそれぞれの内壁部材52を連結する複数の連結部材53と、を備えている。
外壁部材51は、径方向に薄く、軸方向に延び、かつ周方向にひと続きのリングである。なお、周方向に不連続な略リング状であっても良い。
それぞれの内壁部材52は、径方向に薄く、軸方向および周方向へ延びる円弧状の板体である。複数の内壁部材52は、環状に並んでいる。
連結部材53は、外壁部材51の内周面と内壁部材52の径方向外側の面との間に架け渡されている。
外壁部材51、内壁部材52、および連結部材53は、巻線48を収容する空間を区画している。
また、第一絶縁端板45Aは、固定子鉄心43の端面43aに接する端面(図示省略)を有している。第一絶縁端板45Aの端面は、外壁部材51、内壁部材52、および連結部材53に跨がっている。
外壁部材51、隣接する2つの内壁部材52および連結部材53によって画定される空間は、固定子鉄心43のスロット49に繋がっている。
第一絶縁端板45Aの外壁部材51、内壁部材52、および連結部材53は、それぞれ固定子鉄心43のヨーク41、ティース42のティース先端部42b、およびティース基部42aに隣合わさるように配置される。
なお、内壁部材52の内周面52aは、ティース42のティース先端面42cより回転子22側、つまり径方向内側に突出しない。また、外壁部材51の径方向外側の面51a(外周面51a)は、ヨーク41の外周面41aより外側、つまり径方向外側に突出しない。
ティース先端面42cは、固定子鉄心43の内周面であり、ヨーク41の外周面41aは、固定子鉄心43の外周面である。内壁部材52の内周面52aは、第一絶縁端板45Aの内周面であり、外周面51aは、第一絶縁端板45Aの外周面である。
絶縁薄板は、スロット49に挿入されている。絶縁薄板は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)をシート状に形成したものである。絶縁薄板は、固定子鉄心43の端面43a、43bから軸方向に突出している。そのため、絶縁薄板は、固定子鉄心43の端面43aと第一絶縁端板45Aとの境界部分、および固定子鉄心43の端面43bと第二絶縁端板45Bとの境界部分における絶縁不良を防止することができる。
巻線48は、集中巻き方式により、固定子鉄心43のティース42のティース基部42aと第一絶縁端板45Aの連結部材53、第二絶縁端板45Bの連結部材53に巻き付けられている。
巻線48は、U相の巻線48U、V相の巻線48V、およびW相の巻線48Wを含んでいる。巻線48は、相毎に独立して3つのティース42に連続して巻かれ、かつ個別に電圧が印加される独立巻線である。それぞれの相において、巻線48の巻き方向は、ティース42毎に交互に変わる。
ここで、説明の便宜のため、回転子22の回転方向Rに見て、各相の巻線48に昇順の番号を付与する。つまり、U相の巻線48Uは、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、およびU相第三巻線48U3、を有している。V相の巻線48Vは、V相第一巻線48V1、V相第二巻線48V2、およびV相第三巻線48V3、を有している。W相の巻線48Wは、W相第一巻線48W1、W相第二巻線48W2、およびW相第三巻線48W3、を有している。
そして、U相第一巻線48U1、U相第二巻線48U2、およびU相第三巻線48U3は、連続して3つのティース42に巻き付けられている。U相第二巻線48U2の巻き方向は、U相第一巻線48U1の巻き方向の逆方向であり、U相第三巻線48U3の巻き方向は、U相第二巻線48U2の巻き方向の逆方向である。巻線48を固定子21の外周側から見たとき、例えば、U相第一巻線48U1は右巻き(時計方向)に巻かれ、U相第二巻線48U2は左巻き(反時計方向)に巻かれ、U相第三巻線48U3は右巻き(時計方向)に巻かれている。V相の巻線48V、およびW相の巻線48Wも同様であって、説明を省略する。
巻線48は、相毎に周方向へ等間隔に並んでいる。換言すると、3つのU相の巻線48U1、48U2、48U3は、周方向へ120度毎に並んでいる。V相、W相も同じである。つまり、隣り合う三相の巻線48が同じ順序で並ぶ区分(領域)が、3区分(3領域)存在している。本実施形態では、固定子21は、回転子22の回転方向Rへ向かって、U相第一巻線48U1、V相第一巻線48V1、W相第一巻線48W1がこの順序で並ぶ第一区分55Aと、U相第二巻線48U2、V相第二巻線48V2、W相第二巻線48W2がこの順序で並ぶ第二区分55Bと、U相第三巻線48U3、V相第二巻線48V2、W相第三巻線48W3がこの順序で並ぶ第三区分55Cと、を有している。9つのティース42についても、隣り合う三相の巻線48が同じ順序で並ぶ3つの区分に分けられる。
本実施形態に係る巻線48は、回転子22の回転方向Rに見て、U相第一巻線48U1、V相第一巻線48V1、W相第一巻線48W1、U相第二巻線48U2、V相第二巻線48V2、W相第二巻線48W2、U相第三巻線48U3、V相第三巻線48V3、W相第三巻線48W3の順に並んでいる。
なお、U相、V相、W相の並び順は、異なっていても良い。
図3は、本発明の実施形態に係る電動機の三相の巻線の結線図である。
図3に示すように、本実施形態に係る電動機12の固定子21は、相毎に2つ設けられ、各々、巻線48の2箇所を導通可能に接続して3つのスロット49の巻線48(例えばU相の3つの巻線48U1、48U2、48U3)を並列に接続する複数の圧接端子57を備えている。
つまり、U相の圧接端子57Uは、U相の巻線48Uの2箇所を導通可能に接続して3つの巻線48U1、48U2、48U3を並列に接続する2つの圧接端子57U1、57U2を含んでいる。V相の圧接端子57Vは、V相の巻線48Vの2箇所を導通可能に接続して3つの巻線48V1、48V2、48V3を並列に接続する2つの圧接端子57V1、57V2を含んでいる。W相の圧接端子57Wは、W相の巻線48Wの2箇所を導通可能に接続して3つの巻線48W1、48W2、48W3を並列に接続する2つの圧接端子57W1、57W2を含んでいる。
U相第一圧接端子57U1は、U相第一巻線48U1の端末線58U1とU相の2つの巻線48U2、48U3の間の第一渡り線59U1とを接続している。U相第一圧接端子57U1は、U相第一口出線23U1に接続されている。
U相第二圧接端子57U2は、U相第三巻線48U3の端末線58U2とU相の2つの巻線48U1、48U2の間の第二渡り線59U2とを接続している。U相第二圧接端子57U2は、U相第二口出線23U2に接続されている。
V相第一圧接端子57V1は、V相第一巻線48V1の端末線58V1とV相の2つの巻線48V2、48V3の間の第一渡り線59V1とを接続している。V相第一圧接端子57V1は、V相第一口出線23V1に接続されている。
V相第二圧接端子57V2は、V相第三巻線48V3の端末線58V2とV相の2つの巻線48V1、48V2の間の第二渡り線59V2とを接続している。V相第二圧接端子57V2は、V相第二口出線23V2に接続されている。
W相第一圧接端子57W1は、W相第一巻線48W1の端末線58W1とW相の2つの巻線48W2、48W3の間の第一渡り線59W1とを接続している。W相第一圧接端子57W1は、W相第一口出線23W1に接続されている。
W相第二圧接端子57W2は、W相第三巻線48W3の端末線58W2とW相の2つの巻線48W1、48W2の間の第二渡り線59W2とを接続している。W相第二圧接端子57W2は、W相第二口出線23W2に接続されている。
U相第一口出線23U1は、2つの密封端子部18の一方を介して、電動機12の駆動回路(図示省略)の第一インバーター回路61のU相に接続されている。V相第一口出線23V1は、2つの密封端子部18の一方を介して、電動機12の駆動回路の第一インバーター回路61のV相に接続されている。W相第一口出線23W1は、2つの密封端子部18の一方を介して、電動機12の駆動回路の第一インバーター回路61のW相に接続されている。U相第二口出線23U2、V相第二口出線23V2、およびW相第二口出線23W2は、2つの密封端子部18の他方を介して、電動機12の駆動回路の第二インバーター回路62のU相、V相、およびW相にそれぞれ接続されている。
以下、U相、V相、およびW相のそれぞれの相における巻線48、渡り線59、端末線58、口出線23、ティース42、およびスロット49の関係を説明する場合には、各相を識別するためのU、V、Wの符号を付して説明し、U相、V相、およびW相に共通する巻線48、渡り線59、端末線58、口出線23、ティース42、およびスロット49の関係を説明する場合には、各相を識別するためのU、V、Wの符号の記載を省略する。
図4は、本発明の実施形態に係る電動機の圧接端子の一例の図である。
図4に示すように、本実施形態に係る電動機12の圧接端子57は、渡り線59と端末線58とを接続する。圧接端子57は、3個の圧接用突部65と、隣り合う圧接用突部65の間に位置してU字状に切り込まれた2個の圧接スロット66と、口出線23を接続するためのタブ67と、を備えている。圧接スロット66の周縁には、刃部が形成されている。
図5は、本発明の実施形態に係る電動機の渡り線と端末線との配線状態を示す平面図である。
図6は、本発明の実施形態に係る電動機の渡り線と端末線との配線状態を示す側面図である。
図2に加えて、図5および図6に示すように、本実施形態に係る電動機12の上方側の第一絶縁端板45Aは、巻線48の2箇所および圧接端子57を一括で保持する端子受け部68を備えている。
また、端子受け部68は、第一インバーター回路61に接続される圧接端子57を保持する第一端子受け部69と、第二インバーター回路62に接続される圧接端子57を保持する第二端子受け部70を、を含んでいる。
また、端子受け部68は、巻線48を巻き始めるティース42の外周部、および巻線48を巻き終えるティース42の外周部に設けられている。端子受け部68は、ティース42を周方向へ二分する中心線上に配置されている。端子受け部68は、渡り線59と端末線58とを保持する保持部71と、圧接端子57の圧接用突部65が挿入される挿入部72と、を備えている。
保持部71に保持された渡り線59と端末線58とは、圧接端子57の圧接スロット66に圧入されている。渡り線59と端末線58との被膜(図示省略)は、渡り線59と端末線58とが圧入される圧接スロット66の刃部に破られる。そして、渡り線59と端末線58とは、圧接端子57を介して電気的に接続される。
保持部71は、ティース42の中心線に平行な2つの溝73r、73lを有している。2つの溝73r、73lには、圧接スロット66に圧入される渡り線59または端末線58が配置される。2つの溝73r、73lは、圧接端子57の圧接用突部65を下方に配置し、タブ67を上方に配置して固定子21の外周側から見たとき、端子受け部68の右側を溝73rとし、左側を溝73lとする。
圧接端子57のタブ67には、口出線23が接続される。
本実施形態に係る電動機12は、各相について、2つの巻線48の間の渡り線59と1つの巻線48の端末線58とを口出線23に接続している。そのため、電動機12は、3つの巻線それぞれの端末線、つまり都合3つの端末線を1つの口出線に接続する場合に比べて、配線の本数を削減できて、かつ接続作業に掛かる手間を軽減できる。しかも、電動機12は、渡り線59と端末線58とを、2つの圧接スロット66を有する圧接端子57で接続する。そのため、渡り線59と端末線58とを接続するに際して、渡り線59および端末線58の皮膜を剥離する必要がなく、接続作業に掛かる手間をさらに軽減できる。しかも、被膜を剥離することによる被膜片の発生がない。そのため、電動機12は、被膜片が電動機12の回転部の隙間に入り込むことはなく、電動機12の性能が損なわれることはない。
次いで、巻線48の配線経路について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る電動機の固定子を外周側から見た展開図である。
図8は、図2において、V相とW相との図示を省略し、U相の巻線の配線経路を示す図である。
なお、図7は、巻線48の概略的な配線経路を示している。
図7および図8に示すように、本実施形態に係る電動機12のU相の巻線48Uは、U相第三巻線48U3が巻き付けられるティース42U3の外周部に配置されるU相第一端子受け部69Uに、U相巻線48Uの始端が保持されて巻き始められる。また、U相の巻線48Uは、U相第一巻線48U1が巻き付けられるティース42U1の外周部に配置されるU相第二端子受け部70Uに終端が保持されて巻き終えられる。U相の巻線48Uは、U相第一端子受け部69Uから出発し、U相第二巻線48U2が巻き付けられるティース42U2の外周部を経て、ティース42U1にU相第一巻線48U1が巻き付けられる。その後、U相の巻線48Uは、U相第二端子受け部70Uで折り返して、ティース42U2にU相第二巻線48U2が巻き付けられる。さらに、U相の巻線48Uは、U相第一端子受け部69Uを経てティース42U3にU相第三巻線48U3が巻き付けられ、その後、U相の巻線48Uの終端がU相第二端子受け部70Uに保持される。
U相の巻線48Uの始端、つまり、U相第一巻線48U1の端末線58U1は、U相第一端子受け部69Uの保持部71の右の溝73rに保持されて巻き始められる。U相第一巻線48U1の端末線58U1は、U相第一端子受け部69UからU相第二巻線48U2が巻かれるティース42U2の外周側、W相第二端子受け部70W2の下方、およびV相第二端子受け部70V2の下方を経て、ティース42U1の外周部に達する。そして、端末線58U1は、ティース42U1に併設される、第一絶縁端板45AのU相第一巻線用第一溝75U1からスロット49に入り込んでティース42U1の根元に達する。ここでティース42U1にU相第一巻線48U1が巻き付けられる。U相第一巻線48U1の巻き終わりは、第二渡り線59U2に続いている。
第二渡り線59U2は、U相第二端子受け部70Uの保持部71の右の溝73rを固定子21の内周側から外周側へ通って折り返し、スロット49を軸方向へ通過して第二絶縁端板45Bに達する。第二渡り線59U2は、ティース42U1に併設される、第二絶縁端板45BのU相第一巻線用第二溝75U2を通じてスロット49から脱し、V相第一巻線48V1が巻かれるティース42V1の外周側、W相第一巻線48W1が巻かれるティース42W1の外周側を経て、ティース42U2の外周部に達する。そして、第二渡り線59U2は、ティース42U2に併設される、第二絶縁端板45BのU相第二巻線用第一溝76U1からスロット49に入り込んでティース42U2の根元に達する。ここでティース42U2にU相第二巻線48U2が巻き付けられる。U相第二巻線48U2の巻き終わりは、第一渡り線59U1に続いている。
第一渡り線59U1は、ティース42U2に併設される、第一絶縁端板45AのU相第二巻線用第二溝76U2を通じてスロット49から脱し、V相第二巻線48V2が巻かれるティース42V2の外周側、W相第二巻線48W2が巻かれるティース42W2の外周側を経て、ティース42U3の外周部に達する。そして、第一渡り線59U1は、U相第一端子受け部69Uの保持部71の左の溝73lを、固定子21の外周側から内周側へ通り、スロット49に入り込んでティース42U3の根元に達する。ここでティース42U3にU相第三巻線48U3が巻き付けられる。U相第三巻線48U3の巻き終わりは、U相の巻線48Uの終端、つまり、U相第三巻線48U3の端末線58U2に続いている。
端末線58U2は、ティース42U3に併設される、第一絶縁端板45AのU相第三巻線用溝77Uを通じてスロット49から脱し、V相第三巻線48V3が巻かれるティース42V2の外周側、W相第三巻線48W3が巻かれるティース42W2の外周側を経て、ティース42U1の外周部に達する。そして、端末線58U2は、固定子21の外周側から内周側へU相第二端子受け部70Uの左側の溝73lを通り保持される。ここでU相の巻線48Uが巻き終わる。
図9は、図2において、U相とW相との図示を省略し、V相の巻線の配線経路を示す図である。
図10は、図2において、U相とV相との図示を省略し、W相の巻線の配線経路を示す図である。
図7に加えて図9および図10に示すように、V相の巻線48V、およびW相の巻線48WもU相の巻線48Uと実質的に同様な配線経路を有するので、説明を省略する。
そして、図2に示すように、巻線48を巻き始めるティース42が含まれる区分55、つまり第一区分55Aと、巻線48を巻き終えるティース42が含まれる区分55、つまり第三区分55Cとは、固定子21の周方向において隣り合っている。なお、第一区分55Aには、U相第一巻線48U1、V相第一巻線48V1、およびW相第一巻線48W1が含まれている。第三区分55Cには、U相第三巻線48U3、V相第三巻線48V3、およびW相第三巻線48W3が含まれている。したがって、U相の巻線48Uを巻き始めるティース42U1が含まれる第一区分55Aと、U相の巻線48Uを巻き終えるティース42U3が含まれる第三区分55Cとは、固定子21の周方向において隣り合っている。V相の巻線48Vを巻き始めるティース42V1が含まれる第一区分55Aと、V相の巻線48Vを巻き終えるティース42V3が含まれる第三区分55Cとは、固定子21の周方向において隣り合っている。W相の巻線48Wを巻き始めるティース42W1が含まれる第一区分55Aと、W相の巻線48Wを巻き終えるティース42W3が含まれる第三区分55Cとは、固定子21の周方向において隣り合っている。
したがって、巻線48は、第三区分55Cに配置される第一端子受け部69から出発し、第二区分55Bのティース42の外周部を経て第一区分55Aのティース42に巻き付けられる。次いで、巻線48は、第一区分55Aに配置される第二端子受け部70を経て第二区分55Bのティース42に巻き付けられる。次いで、巻線48は、第三区分55Cに配置される第一端子受け部69を経て第三区分55Cのティース42に巻き付けられ、第一区分55Aに配置される第二端子受け部70に到着する。
つまり、巻線48の始端、つまり第一区分55Aの巻線48の端末線58と、第二区分55Bの巻線48と第三区分55Cの巻線48との間の渡り線59とが、第三区分55Cに配置される第一端子受け部69において、圧接端子57を介して口出線23(第一口出線)に接続される。また、第一区分55Aの巻線48と第二区分55Bの巻線48との間の渡り線59と、巻線48の終端、つまり第三区分55Cの巻線48の端末線58とが、第一区分55Aに配置される第二端子受け部70において、圧接端子57を介して口出線23(第二口出線)に接続される。このような配線によって、ある相の3つのスロット49の巻線48が、並列に接続される。
なお、各相の巻き始めの巻線48と巻き終わりの巻線48とは、同じ区分に属していなくても良い。例えば、U相第一巻線48U1、V相第一巻線48V1、およびW相第一巻線48W1は、異なる区分に属していても良い。U相第三巻線48U3、V相第三巻線48V3、およびW相第三巻線48W3も、異なる区分に属していても良い。この場合には、各相の第一端子受け部69も、同じ区分に属していなくても良いし、各相の第二端子受け部70も、同じ区分に属していなくても良い。
このように本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、隣り合う三相の巻線48が同じ順序で並ぶ3つの区分55を有する9つのティース42と、相毎に独立して3つのティース42に連続して巻かれ、かつ個別に電圧が印加される巻線48と、固定子21は、相毎に2つ設けられ、各々、巻線48の2箇所を導通可能に接続して3つのスロット49の巻線48(例えばU相の3つの巻線48U1、48U2、48U3)を並列に接続する2つの圧接端子57と、を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、簡単な構造で巻線48を巻くことが可能であって、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぐことが可能であって、製造性が高い。
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、巻線48の2箇所および圧接端子57を一括で保持する端子受け部68を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、簡単な構造でスロット49毎に独立する巻線48を容易に並列に接続することができる。スロット49毎に独立する巻線48を容易に並列に接続できることは、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぐことが可能であって、製造性が高い。
さらに、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、固定子鉄心43の一方の端面側の第一絶縁端板45Aに設けられる端子受け部68を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、圧縮機2の密閉容器11の上側の鏡板11bに設けられる密封端子部18に口出線23を接続する場合のように、電動機12の片側の端面に口出線23を容易に集中、集約して配線(口出線23)の経路を容易に設定し得る。
なお、端子受け部68は、固定子鉄心43の両方の端面に分散して設けられていても良い。例えば、第一インバーター回路61に接続される圧接端子57を保持する第一端子受け部69が固定子鉄心43の一方の端面側の第一絶縁端板45Aに設けられ、第二インバーター回路62に接続される圧接端子57を保持する第二端子受け部70が固定子鉄心43の他方の端面側の第二絶縁端板45Bに設けられていても良い。つまり、端子受け部68は、電動機12の用途に応じて軸方向における口出線23の引き出し方向を好適に設定できる。
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、巻線48を巻き始めるティース42が含まれる第一区分55Aと、巻線48を巻き終えるティース42が含まれる第三区分55Cと、を隣り合わせに配置している。そのため、冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12は、図7から図10のように、巻線48を交差させずに配線することができる。
したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1、圧縮機2、および電動機12によれば、9スロット49の集中巻の固定子21を有し、かつ簡単な構造で巻線48を巻くことが可能であって、作業ミスや作業のバラツキによる品質低下を防ぎ、製造性を高めることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。