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JP7284198B2 - 嗅覚検査キット - Google Patents

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JP7284198B2
JP7284198B2 JP2021016356A JP2021016356A JP7284198B2 JP 7284198 B2 JP7284198 B2 JP 7284198B2 JP 2021016356 A JP2021016356 A JP 2021016356A JP 2021016356 A JP2021016356 A JP 2021016356A JP 7284198 B2 JP7284198 B2 JP 7284198B2
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Description

本発明は、嗅覚検査キットに関する。
現在、嗅覚検査を行うためのキットとして様々な製品が販売されているが、代表的なものに「T&Tオルファクトメーター」(非特許文献1参照、以下、単に「T&T」という)と呼ばれるものと、「OSIT-J」(特許文献1、非特許文献2参照)と呼ばれるものがある。T&Tは、多種類の液体(濃度多段階×香料多種類)入りの瓶にニオイ紙を浸けて香料を染み込ませ、当該ニオイ紙を被験者に嗅がせることにより被験者の嗅覚機能を判定するためのキットである。一方、OSIT-Jは、多数本の香りスティックを薬包紙に擦り付け、当該薬包紙を被験者に嗅がせることにより被験者の嗅覚機能を判定するためのキットである。
実用新案登録第3098464号
"T&Tオルファクトメーター"、[online]、第一薬品産業株式会社、[平成29年2月6日検索]、インターネット〈URL:http://www.j-ichiyaku.com/kyukaku/t-t.html〉 "においスティック(OSIT-J)"、[online]、第一薬品産業株式会社、[平成29年2月6日検索]、インターネット〈URL:http://www.j-ichiyaku.com/kyukaku/stick.html〉
T&Tでは、ニオイ紙に染み込ませる香料の量を制御するために、ニオイ紙の下部から1cmのところにしるしが付いている。しかしながら、液体の粘性が高いため、しるしを基準にしてニオイ紙に安定的に一定量の液体を付与することは難しい。また、検査者は瓶の中で液面としるしとを位置合わせしなければならず、両者を観察し難いため、両者の位置がずれ、ニオイ紙に付与される香料の量にバラつきが生じてしまう。特に、T&Tの瓶は、液体の劣化を防ぐべく有色であり、また瓶の側面にラベルも付与されているため、液体の量が減ってくると特に位置合わせが困難になる。
また、OSIT-Jでは、薬包紙に香りスティックを擦り付けるに当たり、薬包紙を台紙に重ねる。台紙には、直径2cmの円の模様が付されている。そして、薬包紙は半透明であるため、検査者は薬包紙の上から透けて見える当該円を目安として、香りスティックを薬包紙に擦り付ける。しかしながら、スティックの径が太く、また比較的柔らかく脆いため、検査者によって薬包紙に付与される香料の量にバラつきが生じる。
以上のとおり、T&TでもOSIT-Jでも、嗅覚検査に使用される香料の量がバラついてしまう。その結果、時に正確な嗅覚機能の判定が困難となる。
本発明は、嗅覚検査に使用される香料の量のバラつきを抑え、より正確な嗅覚検査を実現することを目的とする。
本発明の第1観点に係る嗅覚検査キットは、被筆記面を有する被筆記具と、ペン型の香り塗布器とを備える。前記ペン型の香り塗布器は、香料を含有する液体が収容された筐体と、前記筐体から供給される前記液体を前記被筆記面に塗布するためのペン先とを有する。前記嗅覚検査キットは、前記ペン先から前記被筆記面に塗布された前記液体を被験者に嗅がせることにより、前記被験者の嗅覚機能を判定する嗅覚検査に用いられる。
本発明の第2観点に係る嗅覚検査キットは、第1観点に係る嗅覚検査キットであって、前記被筆記面には、前記香り塗布器により前記液体を塗布すべき塗布領域を指示するしるしが付されている。
本発明の第3観点に係る嗅覚検査キットは、第2観点に係る嗅覚検査キットであって、前記しるしは、面積の異なる複数の塗布領域を指示する。
本発明の第4観点に係る嗅覚検査キットは、第1観点から第3観点のいずれかに係る嗅覚検査キットであって、前記ペン先は、平面状の側面を有する。
本発明の第5観点に係る嗅覚検査キットは、第1観点から第4観点のいずれかに係る嗅覚検査キットであって、前記香り塗布器は、前記液体の前記被筆記面への塗布量が10μg/cm2よりも少なくなるように構成されている。
本発明の第6観点に係る嗅覚検査キットは、第1観点から第5観点のいずれかに係る嗅覚検査キットであって、前記液体は、色素を含有する。
本発明の第7観点に係る嗅覚検査キットは、第1観点から第6観点のいずれかに係る嗅覚検査キットであって、前記香料の種類は、りんご、コーヒー、石鹸、ひのき、足の臭い、カレー、土、木材、墨汁、みかん、歯磨き粉、排便臭、草及びバターの中から選択される。
本発明の第8観点に係る嗅覚検査キットは、第1観点から第7観点のいずれかに係る嗅覚検査キットであって、前記被筆記具は、前記被筆記面を有する紙を含む。
本発明の第9観点に係る香り塗布器は、ペン型であり、香料を含有する液体が収容された筐体と、前記筐体から供給される前記液体を塗布するためのペン先とを備える。前記香り塗布器は、前記ペン先から被筆記面に塗布された前記液体を被験者に嗅がせることにより、前記被験者の嗅覚機能を判定する嗅覚検査に用いられる。
本発明の第10観点に係る嗅覚検査方法は、第9観点に係る嗅覚検査方法であって、以下のステップ(1)~(6)を含む。
(1)香料を含有する液体が収容された筐体と、前記筐体から供給される前記液体を塗布するためのペン先とを有するペン型の香り塗布器を用意するステップ。
(2)被筆記面を有する被筆記具を用意するステップ。
(3)前記被筆記具に筆記するかの如く前記香り塗布器を操作して、前記ペン先から前記被筆記面に前記液体を塗布するステップ。
(4)前記被筆記面に塗布された前記液体を被験者に嗅がせるステップ。
(5)前記被験者から前記液体の香りに関する回答を得るステップ。
(6)前記回答に基づいて、前記被験者の嗅覚機能を判定するステップ。
本発明の第11観点に係る嗅覚検査方法は、第10観点に係る嗅覚検査方法である。前記(3)のステップは、前記被筆記面の面積の異なる塗布領域に前記液体を塗布するステップを含む。前記(4)のステップは、前記各塗布領域に塗布された前記液体を前記被験者に嗅がせるステップを含む。
本発明の第12観点に係る嗅覚検査方法は、第10観点又は第11観点に係る嗅覚検査方法である。前記被験者の嗅覚機能を判定するステップは、前記被験者の認知機能を判定するステップを含む。
本発明によれば、香料を含有する液体が収容されたペン型の香り塗布器が提供される。このペン型の香り塗布器は、被筆記面に筆記するかの如く用いられ、これにより、被筆記面に香料入りの液体が塗布される。以上により、被筆記面に塗布される液体の量が制御され、嗅覚検査に使用される香料の量のバラつきが抑えられる。その結果、より正確な嗅覚検査を実現することができる。
本発明の一実施形態に係る嗅覚検査キットを示す図。 本発明の一実施形態に係る被筆記具の斜視図。 本発明の一実施形態に係る被筆記面の平面図。 本発明の一実施形態に係る香り塗布器の側面図。 図4の香り塗布器のペン先の拡大図。 図5Aのペン先を筐体の中心軸周りに90°回転させた図。 変形例に係る被筆記面の平面図。 別の変形例に係る被筆記面の平面図。 さらに別の変形例に係る被筆記面の平面図。 さらに別の変形例に係る被筆記面の平面図。
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る嗅覚検査キット、香り塗布器及び嗅覚検査方法について説明する。
<1.嗅覚検査キットの全体構成>
図1に、本実施形態に係る嗅覚検査キット1を示す。嗅覚検査キット1は、文字通り、嗅覚検査を行うための道具一式であり、被験者に香料を嗅がせることにより被験者の嗅覚機能を判定するのに用いられる。図1に示すとおり、嗅覚検査キット1には、香料を含有する液体Lが収容された複数本の香り塗布器10,10,・・・と、被筆記具50と、取扱説明書6とが含まれ、さらにこれらの道具10,10,・・・,50,6を収容するためのケース8も含まれる。香り塗布器10は、ペン型であり、被筆記具50に対し筆記するかの如く用いられ、これにより、被筆記具50に香料入りの液体Lが塗布される。被験者は、被筆記具50に塗布された香料を嗅ぎ、香りがするか否か、さらに香りがする場合には何の香りかであるかを回答する。検査者は、被験者のこれらの回答に基づいて、被験者の嗅覚機能を判定する。取扱説明書6は、嗅覚検査を実施するためのマニュアル(指示書)であり、香り塗布器10,10,・・・及び被筆記具50の使用方法を含め、嗅覚検査の手順等が詳細に記載されている。
<2.各道具の詳細>
<2-1.被筆記具>
図2に、本実施形態に係る被筆記具50の斜視図を示す。同図に示すように、本実施形態に係る被筆記具50は、メモブロックの形態であり、上下方向に積み重ねられた多数の紙シート51,51,・・・と、これらの紙シート51,51,・・・を下方から支持する台紙55とからなる。なお、ここでいう上下方向は、図2に示す状態を基準に定義される。紙シート51,51,・・・は、互いに同一形状(本実施形態では、矩形状)であり、台紙55とともに上下方向に整列されている。紙シート51,51,・・・と台紙55とは、メモブロックの一側面50aにおいて糊付けされており、不使用時にバラバラにならないように側面50aにおいて互いに連結されている。一方、使用時には、最上段の紙シート51をメモブロックから糊面50aに沿って1枚ずつ剥してゆく。台紙55は省略することもできる。
紙シート51の上面は、被筆記面52を構成している。図3は、被筆記面52の平面図である。同図に示すように、被筆記面52には、香り塗布器10により液体Lを塗布すべき塗布領域を指示するしるし53が付されている。すなわち、検査者は、このしるし53を参考にすることにより、液体Lを塗布すべき塗布領域を理解し、その結果、規定量の液体L、ひいてはこれに含有される規定量の香料を紙シート51に塗布することができる。しるし53は、全ての紙シート51の上面に付されている。
本実施形態では、紙シート51は方眼紙であり、被筆記面52上にしるし53となる升目の印刷がされている。検査者は、第1の規定量の液体Lを塗布しようとする場合には、升目を参考にしながら、第1の規定量に対応する面積(図3の例では、升目の四角の8つ分)の領域A1内を埋めるように、液体Lを塗布する。一方、第2の規定量の液体Lを塗布しようとする場合には、第2の規定量に対応する面積(図3の例では、升目の四角の16個分)の領域A2を埋めるように、液体Lを塗布する。同様に、第3、第4、・・・の規定量の液体を塗布する場合にも、升目の四角の数を数えながら、塗布領域を決定する。これにより、塗布領域の面積、ひいては香料の塗布量を制御することができる。以上とおり、升目のしるし53は、面積の異なる複数の塗布領域A1,A2,・・・を指示することができる。
紙シート51の大きさは特に限定されないが、平面視において2cm×4cm~5cm×10cmのサイズであることが好ましい。紙シート51が小さすぎると、鼻や手に液体Lが触れてしまう虞があり、嗅覚検査の精度に影響を与え得るからである。一方、紙シート51が大きすぎると、操作性が低下し得、また、被筆記具50の量産時にコスト高となり得るからである。紙シート51の材質も特に限定されないが、塗布された液体Lの液垂れを防止する観点からは、適度な吸液性を有するものであることが好ましい。
<2-2.香り塗布器>
次に、香り塗布器10の構成について詳細に説明する。嗅覚検査キット1には、複数本の香り塗布器10,10,・・・が含まれるが、各々同じ構造を有している。ただし、これらの香り塗布器10,10,・・・には、それぞれ異なる香料を含有する液体Lが収容されている。
香り塗布器10,10,・・・に収容される香料の種類は特に限定されないが、好ましい例としては、りんご、コーヒー、石鹸、ひのき、足の臭い(イソ吉草酸)、カレー、土、木材、墨汁、みかん、歯磨き粉、排便臭、草及びバター等が挙げられる。これらの香りは、一般的に多くの人が嗅いだことのある香りであり、何の香りであるかを認識し易いため、嗅覚検査に適していると言える。すなわち、たとえ被験者が香りを知覚できていたとしても、何の香りかを上手く言い表せないような香りは、嗅覚機能とは別の要因により正解/不正解が分かれてしまうため、嗅覚検査に必ずしも適さない。このような観点からすると、上記14種類の例のうち、特にりんご、コーヒー、石鹸、ひのき及び足の臭いが嗅覚検査に適している。従って、これらの5種類の香料のうちの1つ又は2つ以上の香料をそれぞれ収容した1本又は2本以上の香り塗布器10を、嗅覚検査キット1に含ませることが好ましい。本実施形態では、これら5種類の香料が香り塗布器10,10,・・・にそれぞれ収容されており、これらの5種類の香りを用いて嗅覚検査を行うことで、嗅覚機能を簡易かつ正確に診断することができる。
図4に、香り塗布器10の側面図を示す。香り塗布器10は、上記のとおりペン型であり、細長い筒状(典型的には、概ね円筒状)の筐体11と、筐体11の先端側に配置されるペン先12とを有する。筐体11内には、香料を含有する液体Lが収容されており、ペン先12は、吸液性を有する材料から構成されている。本実施形態では、ペン先12は、繊維からなる芯材である。また、ペン先12の後端は、筐体11内において液体Lを収容している空間(以下、液体空間という)に連結又は挿入されている。従って、ペン先12は、浸透圧により液体空間内から液体Lの供給を受け、常時液体Lが含浸している。その結果、筆記するかの如くペン型の香り塗布器10を操作し、ペン先12を被筆記面52上で動かすと、液体空間内から供給される液体Lがペン先12から被筆記面52に塗布される。
以上のとおり、香り塗布器10はペン型に構成されており、ペンにより筆記するような操作で液体Lが被筆記面52に塗布される。そのため、被筆記面52に塗布される検査毎の液体Lの量にバラつきが生じにくくなる。よって、被筆記面52に塗布される液体Lの量、ひいては液体Lに含有される香料の量が検査毎に概ね等しくなるように制御され、検査に使用される香料の量のバラつきが抑えられる。その結果、より正確な嗅覚検査を実現することができる。特に、従来の嗅覚検査キットでは、検査者が異なると検査に使用される香料の量にバラつきが生じ易いが、香り塗布器10によれば、このような事態を防止することができる。
本実施形態に係る香り塗布器10は、キャップレスタイプであり、所謂「ノック式」である。従って、香り塗布器10は、筐体11におけるペン先12と反対側の端部(後端)に配置されるノック部材13をさらに有する。図4は、図1の状態からノック部材13が筐体11内により入り込むように押され、ペン先12が筐体11の先端から突出した状態(使用状態)を示している。使用状態においてペン先12の位置は、筐体11に対して固定される。従って、ペン先12を被筆記面52に対して押し付けながら筆記したとしても、ペン先12の筐体11に対する位置は維持され、一定の筆圧で安定して筆記することが可能である。
一方、図4の使用状態から、ノック部材13が再度押されるか、或いは筐体11の側面に設けられているリリースボタンが押される等すると、図1に示す状態、すなわち、ペン先12が筐体11内に収容された状態(不使用状態)に復帰する。不使用状態において筐体11の内部に後退したペン先12は、図示されない密閉機構により、筐体11内に形成される閉鎖空間内に収容される。この閉鎖空間は、上述の液体空間に連通している。そのため、液体Lが揮発性であっても、不使用時にペン先12から液体Lが揮発して、液体Lに含有される香料の香りが周囲空間に広がることもなく、液体Lが浪費されることもない。なお、キャップレスタイプでありながら、インク(液体)が乾くことのない非乾燥式のペンの構造としては、様々なものが公知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
図5Aは、ペン先12の拡大図であり、図5Bは、図5Aのペン先12を筐体11の中心軸周りに90°回転させた図である。同図から分かるように、ペン先12は、蛍光マーカーペンのペン先ように、平面状の側面12a,12bを有する。これらの側面12a,12bは対を為し、筐体11の中心軸周りに概ね180°離れた位置に存在する。側面12a,12bは、筐体11の中心軸方向に沿ってペン先12の先端12cに達している。また、図5Aに示すとおり、ペン先12の先端12cは、筐体11の中心軸に直交する面に対し傾斜している。この傾斜角は、筆記するべく筐体11を握ってペン先12を被筆記面52に接触させようとしたときに、自然と筐体11が傾斜する傾きに対応するように設定されている。そのため、検査者が香り塗布器10で筆記しようとしたときに、先端12cが自然に被筆記面52に面で接触する。
ペン先12の先端12cの幅(筆記する方向に直交する方向の幅)Wは、W≧2mmであることが好ましく、W≧3mmであることがより好ましく、W≧4mmであることがより好ましい。これにより、一筆による液体Lの塗布量を確保することができ、何度も線を引く手間が省かれる。また、香り塗布器10のペンとしての筆記性を高め、筆跡のかすれ等による塗布量のバラつきを抑制する観点からは、W<25mmであることが好ましく、W<15mmであることがより好ましく、W<10mmであることがより好ましい。
香り塗布器10から被筆記面52への一筆による液体Lの塗布量をPとする。このとき、被筆記面52上で液垂れが起こらないようにする観点からは、香り塗布器10は、P<10μg/cm2となるように構成されることが好ましい。同様の観点から、P≦9μg/cm2であることがより好ましく、P≦8μg/cm2であることがより好ましく、P≦7μg/cm2であることがより好ましく、P≦6μg/cm2であることがより好ましい。一方、一筆による液体Lの塗布量を確保する観点からは、香り塗布器10は、P≧2μg/cm2となるように構成されることが好ましい。
本実施形態では、液体Lには香料だけでなく、色素も含有されている。これにより、液体Lを塗布領域に正しく塗布できているかを容易に確認することができる。また、液体Lの残量が少なくなる等して、筆跡がかすれてしまったとしても、被験者はそれに容易に気が付くことができるため、再度新たな紙シート51に筆記し直すことができる。以上により、嗅覚検査に使用される香料の量のバラつきを抑え、嗅覚検査を正確に行うことができる。
<3.嗅覚検査方法>
次に、嗅覚検査キット1を用いた嗅覚検査方法について説明する。まず、検査者は、嗅覚検査キット1を用意する。続いて、ケース8から取扱説明書6を取り出し、これに従って、嗅覚検査を実施する。
検査者は、取扱説明書6を読み、嗅覚検査の流れを理解した後、複数本の香り塗布器10の中から1本の香り塗布器10を選択し、ケース8から取り出す。取り出す順番はランダムであってもよいし、予め決められていてもよい。また、ケース8から被筆記具50を取り出し、最上部から紙シート51を1枚剥ぎ取る。そして、被筆記面52が上を向くような状態で、この紙シート51を机上等の安定した面上に配置する。その上で、取り出した香り塗布器10を操作して、被筆記面52に筆記するかの如くペン先12から被筆記面52に香料入りの液体Lを塗布する。
本実施形態では、1本の香り塗布器10を用いて、液体Lの塗布量を変化させつつ、多段階の官能検査が行われる。このときの液体Lの塗布量は、被筆記面52上の異なる面積の塗布領域に液体Lを塗布することにより調整される。本実施形態では、徐々に塗布量を増やしつつ検査が進行する。
具体的には、まず、升目のしるし53を参考にしながら、被筆記面52上に第1の長さの線を直線状に引き、第1の面積を有する第1の塗布領域を液体Lで塗り潰すことで、被筆記面52に第1の規定量の液体Lを塗布する。これにより、液体Lに含有されている香料が紙シート51に付着する。なお、升目の間隔は、ペン先12の先端12cの幅Wとほぼ一致するように設定されていることが好ましい。この場合、直線状に線を引く際により蛇行し難くなり、液体Lの量をより正確に制御することができる。
続いて、液体Lの塗布された被筆記面52が内側にくるように、紙シート51を半分に折る。なお、紙シート51の折り目の位置が検査者に分かり易いように、被筆記面52に折り目の線が印刷されていてもよい。また、折り目の線に沿って細いスリットが断続的又は連続的に走っている等、折り目の線は印刷ではなく、構造的に施されている線であってもよい。また、このスリットは、紙面を貫通しない程度に浅く形成されていることが好ましい。
そして、検査者は、被験者に半分に折った紙シート51を手渡し、これを嗅がせ、被験者から液体Lの香りに関する回答を得る。このとき、官能評価をより正しく行うべく、被験者には、半分に折られた紙シート51の左右の端を手に持ち、香料が付着している部分を鼻腔付近に配置した状態で香りを嗅ぐように指示することが好ましい。本実施形態では、香りがするか否か、さらに香りがする場合には何の香りであるかを被験者に回答させる。回答は自由形式であってもよいし、回答の選択肢を提示し、そこから選択させる選択形式であってもよい。選択形式の1つの好ましい例としては、回答の選択肢として、正解と、正確とは異なる1又は複数の(例えば、3つの)ダミー回答と、「この中にない」と、「分からない(ニオイがしない)」とを用意することができる。リンゴの香りのダミー回答としては、土、ひのき、にんにく等を設定することができる。このように、ダミー回答以外にも、「この中にない」及び「分からない(ニオイがしない)」といった選択肢を与えることにより、被験者が適当に回答する可能性をできる限り排除することができる。
第1の規定量の液体Lで検査をした後、正解の回答が得られなかった場合には、香りの種類を変えずに、第1の規定量よりも多い第2の規定量の液体Lを使用して再度同様の検査を行う。すなわち、検査者は、被筆記具50の最上部から紙シート51をさらに1枚剥ぎ取り、これを安定した面上に配置した後、同じ香り塗布器10を同様に操作して、被筆記面52に第2の規定量の液体Lを塗布する。このとき、升目のしるし53を参考にしながら、被筆記面52上に第1の長さよりも長い第2の長さの線を直線状に引き、第2の面積を有する第2の塗布領域を液体Lで塗り潰すことにより、被筆記面52に第2の規定量の液体Lを塗布する。その後も同様に、半分に折った紙シート51を被験者に嗅がせ、同様の選択肢を与えて、回答を得る。
以上の検査を、同じ香りに対して正解の回答が得られるまで、或いは最終段階の検査(あらかじめ定められている最大量の液体Lでの検査)が終わるまで、液体Lの塗布量を増やしながら繰り返す。1つの香りに対する検査が終わると、次の香りに対する検査を行う。すなわち、検査者は、検査が終了していない香り塗布器10の中から1本の香り塗布器10を新たに選択し、当該香り塗布器10を用いて同様の検査を行う。
複数の香り塗布器10に対する検査の終了後、検査者は、得られた回答に基づいて被験者の嗅覚機能を判定する。本実施形態では、各香り塗布器10の香りに対する検知閾値(香りがすることが分かるようになった段階)と、認知閾値(何の香りが正しく分かるようになった段階)とを判定し、これらから嗅覚機能を診断する。具体的には、例えば、各香りに対し、検知閾値及び認知閾値毎に各段階のスコアが設定されており、被験者の全ての香りに関する検知閾値及び認知閾値に対応するスコアの合計値に応じて、嗅覚機能のレベルを判定する。
ところで、認知症の初期症状には、嗅覚の衰えがある。従って、以上の嗅覚検査は、これに限定されないが、認知機能を判定する認知症の診断に用いることができる。
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
<4-1>
香り塗布器10は、キャップレスタイプである必要はなく、筐体に対して着脱自在なキャップを有する構成としてもよい。ただし、このキャップは、不使用時にペン先を密閉することができるように構成されていることが好ましい。
<4-2>
液体Lが塗布される被筆記面は、紙製のシートの一面である必要はなく、例えば、布製のシートの一面であってもよいし、ガラス板の一面であってもよい。これに代えて又は加えて、被筆記面はシート状の部材の一面である必要もない。
<4-3>
液体Lを塗布すべき塗布領域を指示するためのしるしの態様は、上述したものに限られない。例えば、図6Aに示すように、被筆記面52上にしるしとして、香り塗布器10で引くべき線の始点及び終点をそれぞれ指示する2本の平行な線l1,l2を付してもよい。この場合、被験者に、これらの線l1,l2に直交するような直線を、線l1と線l2との間に書かせることにより、液体Lの塗布量を制御することができる。また、この場合、液体Lの塗布量は、直線の本数により調整することもできる。例えば、同じ香りに対する1段階目の検査では1本の線を引き、2段階目の検査では2本の線を引けばよい。複数本の線を引く場合には、これらの線が互いに重ならないようにすることが好ましい。
また、図6Bに示すように、被筆記面52上にしるしとして、複数本の線l3,l3,・・・を付し、検査者に、これらの線l3,l3,・・・に沿って香り塗布器10で線を引かせるようにしてもよい。この場合も、液体Lの塗布量は、直線の本数により調整することができる。
また、図6Cに示すように、被筆記面52上にしるしとして、香り塗布器10で引くべき線の始点及び終点を示す点p1,p2の対を多数付してもよい。この場合、検査者に、これらの点p1,p2間を結ぶ直線を書かせることにより、液体Lの塗布量を制御することができる。また、この場合も、液体Lの塗布量は、直線の本数により調整することができる。
また、被筆記面52上に香り塗布器10で引くべき線は、直線状である必要はなく、曲線であってもよい。例えば、図6Dに示すように、被筆記面52上のしるしとして、渦巻き線l4を付すことができる。この場合、渦巻き線l4をなぞるように検査者に線を書かせることにより、液体Lの塗布量を制御することができる。また、渦巻き線l4上に所定の間隔で目印となる多数の点p3,p3,・・・を付してもよい。この場合、例えば、中心を始点としてどの点p3を終点とするかを選択することにより、引かれる直線の長さを変化させ、これにより、液体Lの塗布量を調整することもできる。
以上の変形例は例示に過ぎないが、図6A~図6Dの態様によっても、被筆記面52上に付されたしるしにより、面積の異なる複数の塗布領域を示すことができる。
また、しるしは、印刷されている必要はなく、エンボス加工により付されてもよいし、パンチング等の孔により付されてもよい。また、しるしは、被筆記面52に直接付されている必要はなく、被筆記面52を含む透明又は半透明のシート等の下に敷かれる台紙に付されていてもよい。
<4-4>
ペンは、ペン先が平面状の蛍光マーカーペンのような形態でなくてもよく、ペン先が丸味を帯びているマジックマーカーペンのような形態であってもよいし、ボールペンのような形態であってもよい。ボールペンのような形態の場合、ペンにより描かれる線の幅Wは、数ミリ程度、場合によっては1mm以下であってもよい。
1 嗅覚検査キット
10 香り塗布器
11 筐体
12 ペン先
50 被筆記具
51 紙シート
52 被筆記面
53 しるし

Claims (1)

  1. 嗅覚検査キットであって、
    被筆記面を有する被筆記具と、
    香料を含有する液体が収容された筐体と、前記筐体から供給される前記液体を前記被筆記面に塗布するためのペン先とを有するペン型の香り塗布器と、
    を備え、
    前記被筆記面には、前記香り塗布器で引くべき線の始点及び終点をそれぞれ指示するしるしが付されており、
    前記始点と前記終点とは、線によって繋がっていない、又は、1本の線のみで繋がっており、
    前記ペン先から前記被筆記面に塗布された前記液体を被験者に嗅がせることにより、前記被験者の嗅覚機能を判定する嗅覚検査に用いられる、
    嗅覚検査キット。
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