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JP7275805B2 - シーラント付き空気入りタイヤの製造方法及び製造装置 - Google Patents

シーラント付き空気入りタイヤの製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、タイヤ内周面に、パンク防止用のシーラントの層を高品質で形成しうるシーラント付き空気入りタイヤの製造方法及び製造装置に関する。
例えば下記の特許文献1には、図11(a)に示すように、タイヤ内周面aに、ノズルbから吐出される紐状シーラントcをらせん状に巻回しながら粘着させることでシーラントの層を形成ことが提案されてる。
特開2017-178310号公報
このような形成方法においては、タイヤ内周面aからノズルbの先端までの高さhが大きい場合、紐状シーラントcは、自重のみによってタイヤ内周面aに接触する。そのため、紐状シーラントcの接着が不充分となって位置ズレし、隣り合う紐状シーラントc、c間に隙間が生じたり、隣りの紐状シーラントcの上に乗り上げるなどの問題を招く。またシーラントの層の一部が剥がれることも生じうる。
そのため、実際には、図11(b)、(c)に示すように、ノズルbをタイヤ内周面aに近づけ、シーラントcの層の厚さtよりも小な高さhから紐状シーラントcを吐出している。これにより、吐出圧の作用により接着力を高めることができる。
しかしタイヤのトレッド厚さのバラツキ、及びタイヤの回転時の振動などにより、タイヤ内周面aが上下に変動する。そのため h<tの場合、シーラントの層の厚さtが不均一となったり、ノズルbがタイヤ内周面aに擦れて禿げた部分が生じる傾向を招く。
本発明は、タイヤ内周面からノズル先端までの高さが、シーラントの層の厚さよりも大な場合にも、紐状シーラントを高い接着力で貼り付けでき、厚さバラツキの少ない高品質のシーラントの層を形成しうるシーラント付き空気入りタイヤの製造方法及び製造装置を提供することを課題としている。
本発明は、タイヤ内周面に、パンク防止用のシーラントの層を有するシーラント付き空気入りタイヤの製造方法であって、
前記タイヤ内周面に、ノズルから吐出される紐状シーラントをらせん状に巻回しながら粘着させる粘着工程と、
粘着された紐状シーラントの隣に次の紐状シーラントが粘着されるまでの間に、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付ける押付け工程とを含む。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記押付け工程は、ローラにより、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付けるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記押付け工程は、前記ローラにより紐状シーラントを押し付ける位置と、前記ノズルから吐出される紐状シーラントが前記タイヤ内周面に接触を開始する位置との間の、前記タイヤ内周面に沿った周方向距離Lが100mm以下であるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記押付け工程は、風圧により前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付けるのも好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記風圧は、エアーノズルからの圧縮空気の噴出によるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記押付け工程は、前記風圧により紐状シーラントを押し付ける中心位置と、前記ノズルから吐出される紐状シーラントが前記タイヤ内周面に接触を開始する位置との間の、前記タイヤ内周面に沿った周方向距離Lが50mm以下であるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記押付け工程は、前記エアーノズルからの圧縮空気の風圧と、前記エアーノズルの巻回方向後方側に配される1つ以上の補助のエアーノズルからの圧縮空気の風圧とにより、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付けるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記エアーノズルの噴出口は、円形でありかつ内径は0.5~3.0mmであるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記エアーノズルの噴出口は、前記ノズルに対してタイヤ軸方向に移動可能であるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記エアーノズルは、タイヤ軸方向に並ぶ複数の噴出口を具え、複数の噴出口のうちの一つの噴出口から圧縮空気が切り替えられて噴出されるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記エアーノズルの噴出口から前記タイヤ内周面までのタイヤ半径方向高さは、調整可能であるのが好ましい。
本発明は、タイヤ内周面に、パンク防止用のシーラントの層を有するシーラント付き空気入りタイヤを製造する装置であって、
タイヤを直立状態にて回転可能に支持するタイヤ支持具と、
回転可能に支持された前記タイヤのタイヤ内周面に、紐状シーラントをらせん状に巻回しながら粘着させる粘着手段と、
粘着された紐状シーラントの隣に次の紐状シーラントが粘着されるまでの間に、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付ける押付け手段とを含む。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造装置では、前記粘着手段は、前記タイヤ内周面に向かって前記紐状シーラントを吐出するノズルを含むのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造装置では、前記押付け手段は、前記紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付けるローラを含むのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造装置では、前記押付け手段は、圧縮空気の噴出により前記紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付けるエアーノズルを含むのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造方法では、前記押付け手段は、前記エアーノズルと、前記エアーノズルの巻回方向後方側に配される1つ以上の補助のエアーノズルとを含むのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造装置では、前記押付け手段は、前記エアーノズルの噴出口を、前記ノズルに対してタイヤ軸方向に移動可能としたのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造装置では、前記エアーノズルは、タイヤ軸方向に並ぶ複数の噴出口を具え、前記押付け手段は、複数の噴出口のうちの一つの噴出口から圧縮空気を切り替えて噴出させるのが好ましい。
本発明に係るシーラント付き空気入りタイヤの製造装置では、前記押付け手段は、前記エアーノズルの噴出口から前記タイヤ内周面までのタイヤ半径方向高さを調整可能であるのが好ましい。
本発明の製造方法では、叙上の如く、粘着された紐状シーラントの隣に次の紐状シーラントが粘着されるまでの間に、粘着された紐状シーラントをタイヤ内周面に押し付ける押付け工程を含む。
そのため、タイヤ内周面からノズル先端までの高さが、シーラントの層の厚さよりも大な場合にも、紐状シーラントを高い接着力でタイヤ内周面に貼り付けできる。そのため、接着力不足に起因して、シーラントの層の一部が剥がれたり、隣り合う紐状シーラント間に隙間が生じたり、隣りの紐状シーラントの上に乗り上げるのを防止しうる。またトレッド厚さのバラツキ、及びタイヤの回転時の振動などの影響を受け難いため、シーラントの層の厚さバラツキを抑制しうる。そのため、高品質のシーラントの層を効率よく形成することができる。
本発明の製造装置においても、叙上の如く、タイヤ支持具と粘着手段と押付け手段とを含むため、製造方法と同様の効果を奏しうる。
本発明のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法における粘着工程を示す子午断面図である。 ローラを用いた押付け工程を示す周方向の断面図である。 粘着工程及び押付け工程をタイヤ半径方向内側から見た概念図である。 ローラの断面図である。 風圧を用いた押付け工程を示す周方向の断面図である。 (a)~(d)は、エアーノズルの噴出口の開口形状を示す概念図である。 (a)~(d)は、実施例におけるエアーノズル及び補助のエアーノズルの配置を示す概念図である。 本発明のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法によって形成されたタイヤの子午断面図である。 (a)、(b)は、ノズルの中心線と、タイヤ内周面に粘着される紐状シーラントの部分との位置ズレを説明する断面図である。 (a)~(c)は、エアーノズルを用いた押付け手段の他の例を示す断面図である。 (a)~(c)は、従来のシーラントの層の形成方法を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図8は、本発明の製造方法によって形成されたシーラント付き空気入りタイヤ1の子午断面図である。本実施形態のシーラント付き空気入りタイヤ1は、タイヤ1Aと、タイヤ1Aのタイヤ内周面Sに配されるパンク防止用のシーラントの層10とを含む。
タイヤ1Aは、チューブレスタイヤであって、本例では、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、カーカス6の半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7と、カーカス6の半径方向内側に配されるインナーライナー層9とをさらに具える。
カーカス6は、タイヤ周方向に対して例えば75~90°の角度で配列するカーカスコードを有する1枚以上(本例では1枚)のカーカスプライ6Aから形成される。カーカスプライ6Aは、ビードコア5、5間を跨るプライ本体部6aの両端に、ビードコア5をタイヤ軸方向内側から外側に折り返されたプライ折返し部6bを具える。
ベルト層7は、タイヤ周方向に対して例えば10~40°の角度で配列するベルトコードを有する複数枚(例えば2枚)のベルトプライ7A、7Bから形成される。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがプライ間で交差するように、傾斜の向きを違えて積層される。なおタイヤの高速耐久性を高める目的で、ベルト層7の半径方向外側に、螺旋状に巻回するバンドコードを有するバンド層(図示省略)を設けても良い。
インナーライナー層9は、ブチルゴム等の耐空気不透過性のゴムからなり、タイヤ内圧を気密に保持する。このインナーライナー層9の内周面は、前記タイヤ内周面Sを構成する。
そしてタイヤ内周面S、特にはトレッド部2の内周面2Sに、シーラントの層10が配される。このシーラントの層10の幅Wは、パンク防止性能がより好適に得られるという理由から、ベルト層の最大幅WBの85~115%であることが好ましい。シーラントの層10の厚さtは、1~10mmが好ましく、1mm未満の場合、パンク穴を確実に塞ぐことが難しくなる。逆に10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果は飽和し、むしろタイヤの重量増加という不利を招く。
シーラントの層10を形成するためのシーラントとして特に規制されないが、特許文献1に記載されたものが好適に採用される。具体的には、本例のシーラントは、ゴム成分と、液状ポリマーと、架橋剤とを含有する。
ゴム成分として、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴム等のブチル系ゴムが採用される。ゴム成分として、前記ブチル系ゴムと、ジエン系ゴムとを混用しうるが、流動性等の観点から、ゴム成分100質量部中のブチル系ゴムの含有量は、90質量部以上とするのが好ましい。
液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα-オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα-オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、数平均分子量が1000~4000の液状ポリブテンが好ましい。
液状ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上、さらには100質量部以上が好ましい。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。該含有量の上限は、400質量部以下、さらには300質量部以下が好ましい。400質量部を超えると、走行時、シーラント材が流動する恐れを招く。
架橋剤として、周知の化合物を使用できるが、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
有機過酸化物(架橋剤)としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p-クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ-t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,3-ビス(1-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上、さらには1.0質量部以上が好ましい。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量の上限は、40質量部以下、さらには20質量部以下が好ましい。40質量部を超えると、架橋密度が高くなり、シール性が低下するおそれがある。
シーラント材には、架橋助剤(加硫促進剤)、無機充填剤、可塑剤等を適宜添加することができる。
架橋助剤(加硫促進剤)としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びキノンジオキシム化合物(キノイド化合物)等からなる群より選択できる。架橋助剤(加硫促進剤)の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1~15質量部が好ましい。
無機充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、及びマイカ等からなる群より選択できる。無機充填剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1~30質量部が好ましい。
可塑剤としては、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等からなる群より選択できる。可塑剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して1~40質量部が好ましい。
特に、シーラントでは、ゴム成分としてブチル系ゴム、液状ポリマーとして液状ポリブテンと液状ポリイソブテンとを混用したものを使用することで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善されるため好ましい。このとき、ブチル系ゴム100質量部に対して、液状ポリマーの含有量は、100~400質量部の範囲が好ましく、有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、1~15質量部の範囲が好ましい。架橋助剤(加硫促進剤)は、ブチル系ゴム100質量部に対して、1~15質量部含有するのが好ましく、無機充填剤は、ブチル系ゴム100質量部に対して、1~30質量部含有するのが好ましい。
なおシーラントの層10の内周面に、タイヤ周方向にのびるスポンジ材からなる制音体(図示省略)を形成しても良い。この制音体の幅は、シーラントの層10の幅Wの50~95%であることが好ましい。
次に、シーラント付き空気入りタイヤ1の製造方法は、予め加硫成形されたタイヤ1Aのタイヤ内周面Sに、シーラントの層10を形成する層形成段階を含む。層形成段階は、粘着工程K1(図1に示す)と、押付け工程K2(図2に示す)とを含む。
図1、2に示すように、粘着工程K1では、タイヤ内周面Sに、ノズル15から吐出される紐状シーラント16をらせん状に巻回しながら粘着させる。
具体的には、一定速度で回転しながらタイヤ軸方向一方側に一定速度で横移動する直立状態のタイヤ1Aのタイヤ内周面Sに向かって、紐状シーラント16をノズル15の先端から下向きに吐出する。これにより、紐状シーラント16をタイヤ内周面Sにせん状に粘着することができる。
図中の符号30は、回転駆動可能な一対かつ水平なタイヤ保持ローラである。このタイヤ保持ローラ30、30間にタイヤ1Aを跨らせて保持させることで、タイヤ1Aをタイヤ軸心j1周りで一定速度で回転させうる。また符号31は、タイヤ保持ローラ30の支持台であり、タイヤ保持ローラ30とともにタイヤ1Aをタイヤ軸方向に一定速度で横移動しうる。
ノズル15には、二軸混練押出機などの連続混練機(図示省略)が接続され、ゴム成分、液状ポリマー、架橋剤を含む材料が混練されたシーラントが、連続混練機からノズル15に一定速度で供給される。
粘着工程K1では、タイヤ内周面Sからノズル15の先端までの半径方向高さhは、シーラントの層10の厚さtよりも大である。そのため、トレッド厚さTのバラツキ、及びタイヤの回転時の振動などの影響を受けることなく、紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに粘着させることができる。
押付け工程K2では、粘着された紐状シーラント16の隣に次の紐状シーラントが粘着されるまでの間に、前記粘着された紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付ける。これにより、紐状シーラント16のタイヤ内周面Sへの接着を助け、接着不良による紐状シーラント16の位置ずれを防止する。
本例では、ローラ17により、紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付ける第1実施形態の場合が示される。
ローラ17は、例えば、シリンダ18のロッド端にローラホルダを介してタイヤ周方向に回転可能に支持される。シリンダ18は、例えばノズル15を支持する支持部19に取り付く。本例では、シリンダ18は、タイヤ軸心j1からのびる半径方向線25に沿って伸縮し、かつ伸張により、ローラ17が紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付ける。
押付け工程K2では、ローラ17により紐状シーラント16を押し付ける位置Paと、ノズル15から吐出される紐状シーラント16がタイヤ内周面Sに接触を開始する位置Pbとの間の、タイヤ内周面Sに沿った周方向距離Lは100mm以下が好ましい。前記「位置Pa」とは、厳密には、タイヤ軸心j1とローラ17の中心j2とを通る半径方向線X1がタイヤ内周面Sと交わる位置を意味する。
位置Pbから位置Paまでの間は、紐状シーラント16の接着が弱い。そのため、周方向距離Lが100mmを越えると、位置Paまでの間で紐状シーラント16が位置ズレを起こす危険性が高くなる。従って、周方向距離Lの上限は、50mm以下がさらに好ましい。なお後述する表1の実施例ではノズル15の中心線Pcがタイヤ内周面Sと交わる位置と前記位置Pbとは、ほぼ等しい。
シーラントは粘着力が高いため、通常の金属ローラ、ゴムローラ等ではシーラントがローラ17にくっつき、シーラントの層10の形成を阻害する。そのため、図4に示すように、ローラ17の表面に、例えばシリコン系樹脂、フッ素系樹脂、シロキサン系樹脂などの非粘着性樹脂からなる表面層17Aを形成するのが好ましい。
図5に、風圧により紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付ける押付け工程の第2実施形態が示される。風圧は、エアーノズル20からの圧縮空気21の噴出によって生じうる。
第2実施形態では、風圧により紐状シーラント16を押し付ける中心位置Qaと、ノズル15から吐出される紐状シーラント16がタイヤ内周面Sに接触を開始する位置Qbとの間の、タイヤ内周面Sに沿った周方向距離Lが50mm以下であるのが好ましい。「中心位置Qa」とは、厳密には、エアーノズル20からの圧縮空気21の噴出方向の中心線X2がタイヤ内周面Sと交わる位置を意味する。
第2実施形態では、エアーノズル20をノズル15に近づけることは容易である。そのため、前記周方向距離Lは、紐状シーラント16の位置ズレを起こす危険性を減じる観点から、50mm以下とするのが好ましい。
なおエアーノズル20の噴出口20Hは、図6(b)に示すように、円形であるのが好ましく、また噴出口20Hの内径Dは、0.5~3.0mmの範囲が好ましい。内径Dが0.5mmを下回ると、風圧が局部的に作用するため、紐状シーラント16が裂かれてしまい、紐状シーラント16を押え付ける力が弱くなる。逆に内径Dが3.0mmを越えると、紐状シーラント16とタイヤ内周面Sとの間に風が入り込み、付着した紐状シーラント16を浮き上がらせてしまう傾向を招く。
図6(a)、(c)に示すように、噴出口20Hとしては、円形以外にも、矩形状(正方形を含む)、楕円形(長円形を含む)を採用することができる。図6(d)に示すように、噴出口20Hとして、複数の小孔22によって形成されても良い。この場合、複数の小孔22は、タイヤ周方向に配列するのが好ましい。
図7(b)~(d)に示すように、押付け工程K2では、エアーノズル20からの圧縮空気の風圧と、このエアーノズル20の巻回方向後方側に配される1つ以上の補助のエアーノズル23からの圧縮空気の風圧とにより、紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付けることも好ましい。これにより、紐状シーラント16をより確実に接着することができる。なお補助のエアーノズル23が2つ以上の場合、紐状シーラント16の接着効果が飽和する。そのため補助のエアーノズル23は1つが好ましい。
ここで、図9(a)、(b)に示すように、シーラントの層10の形成に際しては、ノズル15のノズル中心15j(吐出方向に相当する。)と、紐状シーラント16がタイヤ内周面Sに粘着された部分16Aの中心16jとが、タイヤ軸方向に位置ズレδを起こす傾向がある。
図9(a)は、シーラントの層10の形成初期の場合を示す。紐状シーラント16は、通常、トレッド端近傍から粘着が開始されるが、このトレッド端近傍では、タイヤ内周面Sのタイヤ軸方向に対する傾斜が大きく、この傾斜に起因して位置ズレδが発生する。
図9(b)は、シーラントの層10の形成中期の場合を示す。形成中期では、タイヤ内周面Sの傾斜の影響は少ない。しかし、粘着される部分16Aが、先に粘着された紐状シーラント16の粘着部分16Bに押され、位置ズレδが発生する。
従って、特にエアーノズル20を用いて粘着される部分16Aをタイヤ内周面Sにの押し付ける場合、前記位置ズレδに起因してシーラントの層10を乱す恐れがある。
そのために図10(a)、(b)に誇張して示すように、エアーノズル20の噴出口20Hを、ノズル15に対してタイヤ軸方向に移動可能とし、エアーノズル20からの圧縮空気が、粘着される部分16Aの中心16jに向かって吐出するように調整するのが好ましい。
図10(a)では、エアーノズル20を、支点Jの回りで傾動可能に支持している。そして傾動角度を調整することにより、圧縮空気を粘着される部分16Aの中心16jに向かって吐出しうる。図10(b)では、エアーノズル20自体をタイヤ軸心方向に平行移動可能に支持している、そして移動距離を調整することにより、圧縮空気を粘着される部分16Aの中心16jに向かって吐出しうる。
又図10(c)に誇張して示すように、タイヤ軸方向に並ぶ複数の噴出口20Hを設け、複数の噴出口20Hのうちの一つの噴出口20Hから圧縮空気を切り替えて噴出させることも好ましい。本例では、複数のエアーノズル20をタイヤ軸方向に並列させた場合が示されるが、一つのエアーノズル20に、切り替え可能な複数の噴出口20Hを設けることもできる。
エアーノズル20の噴出口20Hからタイヤ内周面Sまでのタイヤ半径方向高さを調整可能とするのも、シーラントの層10の乱れを抑える上で好ましい。
次に、前記空気入りタイヤの製造方法に採用される装置は、図1に示すように、タイヤ1Aを直立状態にて回転可能に支持するタイヤ支持具40と、回転可能に支持されたタイヤ1Aのタイヤ内周面Sに、紐状シーラント16をらせん状に巻回しながら粘着させる粘着手段41と、粘着された紐状シーラント16の隣に次の紐状シーラント16が粘着されるまでの間に、粘着された紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付ける押付け手段42(図2、5に示す)とを含む。
本例のタイヤ支持具40は、前述した如く、回転駆動可能かつ水平な一対のタイヤ保持ローラ30を含み、このタイヤ保持ローラ30、30間にタイヤ1Aを跨らせて保持させる。これによりタイヤ1Aを、直立状態にてタイヤ軸心j1周りで一定速度で回転させうる。又タイヤ支持具40は、保持ローラ30をタイヤ軸方向に一定速度で横移動可能に支持する支持台31を含む。
粘着手段41は、前述した如く、タイヤ内周面Sに向かって紐状シーラント16を吐出するノズル15を含む。
押付け手段42は、前述した如く、紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付けるローラ17、或いは圧縮空気の噴出により紐状シーラント16をタイヤ内周面Sに押し付けるエアーノズル20を含む。
なお制音体を形成する場合、シーラントの層10の内周面に、予め帯状に形成した制音体を、直接に粘着させることで、接着剤を用いることなく取り付けしうる。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
(1)
本発明の効果を確認するため、表1の仕様に基づきシーラント付き空気入りタイヤ(215/55R17)を形成した。形成されたシーラントの層10を目視確認し、タイヤ1本当たり、シーラントの層10が薄くなった箇所の数、及びシーラントがタイヤに接着しなかった箇所の数を比較した。数値が低いほど品質に優れている。
粘着工程K1では、表2の配合の各成分を二軸混練押出機に投入し、バレル温度100℃、200rpmの条件下で混練加工し、シーラントを調製した。表2に記載された各成分の詳細は、以下の通りである。
ブチルゴム:ブチル268(エクソンモービル社製、ムーニー粘度(ML1+8(125℃))=32)
液状ポリブテン:日石ポリブテンHV300(JX日興日石エネルギー社製、40℃における動粘度26000mm2/s、100℃における動粘度590mm2/s、数平均分子量1400)
カーボンブラック:N330(キャボットジャパン社製、HAFグレード、DBP吸油量102ml/100g)
架橋剤:BPO(日油社製のジベンゾイルパーオキサイド)
架橋助剤:バルノックGM(大内新興化学社製のp-ベンゾキノンジオキシム)
実施例6~22において、エアーノズル20の噴出口20Hはシーラントのノズル15に対して移動せず、エアーノズル20は、そのノズル中心がノズル15のノズル中心からタイヤ軸方向にズレない(オフセット0mm)ように取り付いている。
Figure 0007275805000001
Figure 0007275805000002
表1に示すように、実施例では、シーラントの層が薄くなった箇所、及びシーラントが接着しなかった箇所が減じられ、高品質のシーラントの層が形成されるのが確認できる。なお実施例18では、エアーノズルの噴出口の内径が小さすぎて紐状シーラントに裂け目が部分的に発生している。
Figure 0007275805000003
(2)
エアーノズル20を用いた押付け工程K2において、圧縮空気の噴出位置をタイヤ軸方向に調整し、位置ズレδ(図9(a)、(b)に示す)に起因するシーラントの層10の形成不良の低減効果をテストした。実施例31では、1本のエアーノズル20の噴出口20Hを、シーラントのノズル15に対してタイヤ軸方向に移動可能に構成し、位置ズレδに応じて圧縮空気の噴出位置をプログラム制御によって連続的に調整している。実施例31では、ノズル15のノズル中心15jに対し、タイヤ軸方向に±2.0mm(ノズル15の進行方向を+としている。)の範囲で調整している。
実施例32~34では、複数本のエアーノズル20をタイヤ軸方向に配し、かつ複数のエアーノズル20のうちの一つのエアーノズル20から圧縮空気を切り替えて噴出可能に構成し、位置ズレδに応じて圧縮空気の噴出位置を、切り替えによって調整している。なお実施例32では、2本のエアーノズル20を、ノズル15のノズル中心15jに対して
-0.5mm、+1.5mmの位置に配している。実施例33では、3本のエアーノズル20を、ノズル15のノズル中心15jに対して-1.0mm、+0.5mm、+2.0mmの位置に配している。実施例34では、4本のエアーノズル20を、ノズル15のノズル中心15jに対して-1.0mm、0mm、+1.0mm、+2.0mmの位置に配している。
<シーラントの層の形成不良>
シーラント付き空気入りタイヤを20本作成し、形成されたシーラントの層10を目視確認し、接着不良が発生したタイヤの本数を比較した。数値が低いほど品質に優れている。
Figure 0007275805000004
圧縮空気の噴出位置をタイヤ軸方向に調整することにより、シーラントの層の形成不良を低減しうるのが確認できる。
1 シーラント付き空気入りタイヤ
10 シーラントの層
15 ノズル
16 紐状シーラント
17 ローラ
20 エアーノズル
20H 噴出口
21 圧縮空気
23 補助のエアーノズル
40 タイヤ支持具
41 粘着手段
42 押付け手段
K1 粘着工程
K2 押付け工程
S タイヤ内周面

Claims (13)

  1. タイヤ内周面に、パンク防止用のシーラントの層を有するシーラント付き空気入りタイヤの製造方法であって、
    前記タイヤ内周面に、ノズルから吐出される紐状シーラントをらせん状に巻回しながら粘着させる粘着工程と、
    粘着された紐状シーラントの隣に次の紐状シーラントが粘着されるまでの間に、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付ける押付け工程とを含み、
    前記押付け工程は、風圧により前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付ける、シーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  2. 前記風圧は、エアーノズルからの圧縮空気の噴出による、請求項1記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  3. 前記押付け工程は、前記風圧により紐状シーラントを押し付ける中心位置と、前記ノズルから吐出される紐状シーラントが前記タイヤ内周面に接触を開始する位置との間の、前記タイヤ内周面に沿った周方向距離Lが50mm以下である、請求項1又は2記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  4. 前記押付け工程は、前記エアーノズルからの圧縮空気の風圧と、前記エアーノズルの巻回方向後方側に配される1つ以上の補助のエアーノズルからの圧縮空気の風圧とにより、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付ける、請求項2記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  5. 前記エアーノズルの噴出口は、円形でありかつ内径は0.5~3.0mmである、請求項2又は4記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  6. 前記エアーノズルの噴出口は、前記ノズルに対してタイヤ軸方向に移動可能である、請求項2、4又は5の何れかに記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  7. 前記エアーノズルは、タイヤ軸方向に並ぶ複数の噴出口を具え、複数の噴出口のうちの一つの噴出口から圧縮空気が切り替えられて噴出される、請求項2、4、5又は6の何れかに記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  8. 前記エアーノズルの噴出口から前記タイヤ内周面までのタイヤ半径方向高さは、調整可能である、請求項2、4、5、6又は7の何れかに記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造方法。
  9. タイヤ内周面に、パンク防止用のシーラントの層を有するシーラント付き空気入りタイヤを製造する装置であって、
    タイヤを直立状態にて回転可能に支持するタイヤ支持具と、
    回転可能に支持された前記タイヤの前記タイヤ内周面に、紐状シーラントをらせん状に巻回しながら粘着させる粘着手段と、
    粘着された紐状シーラントの隣に次の紐状シーラントが粘着されるまでの間に、前記粘着された紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付ける押付け手段とを含み、
    前記押付け手段は、圧縮空気の噴出により前記紐状シーラントを前記タイヤ内周面に押し付けるエアーノズルを含む、シーラント付き空気入りタイヤの製造装置。
  10. 前記押付け手段は、前記エアーノズルと、前記エアーノズルの巻回方向後方側に配される1つ以上の補助のエアーノズルとを含む、請求項9記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造装置。
  11. 前記粘着手段は、前記タイヤ内周面に向かって前記紐状シーラントを吐出するノズルを含み、
    前記押付け手段は、前記エアーノズルの噴出口を、前記ノズルに対してタイヤ軸方向に移動可能とした、請求項9又は10記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造装置。
  12. 前記エアーノズルは、タイヤ軸方向に並ぶ複数の噴出口を具え、前記押付け手段は、複数の噴出口のうちの一つの噴出口から圧縮空気を切り替えて噴出させる、請求項9~11の何れかに記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造装置。
  13. 前記押付け手段は、前記エアーノズルの噴出口から前記タイヤ内周面までのタイヤ半径方向高さを調整可能である、請求項9~11の何れかに記載のシーラント付き空気入りタイヤの製造装置。
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