JP7275094B2 - 正極活物質調製用材料とその利用 - Google Patents
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Description
即ち、ここで開示される正極活物質調製用材料は、コア部と、該コア部の表面の少なくとも一部に存在する被覆部とを備える原料粒子を含み、該被覆部は、前記原料粒子のSEM像において、該原料粒子の粒子径の10分の1以下の平均粒子径を有する小粒子で構成されている。さらに、上記コア部および上記小粒子は、Ni、Mn、Coからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を備えた遷移金属水酸化物を含む。
かかる構成によれば、リチウムイオン二次電池に優れたサイクル特性を付与する正極活物質を製造するための正極活物質調製用材料が提供される。
かかる構成によれば、比表面積が増加し、優れた電気抵抗低減効果が発揮され得る。
かかる構成によれば、より優れたサイクル特性および電気抵抗低減効果が実現され得る。
かかる構成によれば、サイクル特性および電気抵抗低減効果をより高いレベルで実現し得る。
かかる構成によれば、さらに高いレベルでサイクル特性および電気抵抗低減効果を実現し得る。
かかる構成によれば、リチウムイオン二次電池に優れたサイクル特性を付与し得る正極活物質が提供される。
また、本明細書において数値範囲をA~B(ここでA,Bは任意の数値)と記載している場合は、一般的な解釈と同様であり、A以上B以下を意味するものである。
正極活物質層54は、正極活物質と必要に応じて用いられる材料(導電材、バインダ等)とを適当な溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン:NMP)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を正極集電体52の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
負極活物質層64は、負極活物質と必要に応じて用いられる材料(バインダ等)とを適当な溶媒(例えばイオン交換水)に分散させ、ペースト状(またはスラリー状)の組成物を調製し、該組成物の適当量を負極集電体62の表面に塗工し、乾燥することによって形成することができる。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒、支持塩以外の成分を含んでいてもよく、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
図4は、後述する実施例における例2の正極活物質調製用材料を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて5000倍の倍率で観察したSEM像であり、ここで開示される正極活物質調製用材料の代表的な一例を示す。図5は、例2の正極活物質調製用材料を15000倍の倍率で観察したSEM像であり、正極活物質調製用材料に含まれる原料粒子を拡大して示している。また、図6は、例2の正極活物質調製用材料を15000倍の倍率で観察した断面SEM像である。図4~6のSEM像からわかるように、原料粒子のコア部の表面に存在する被覆部は小粒子で構成されている。
なお、特に限定するものではないが、ここで開示される正極活物質調製用材料は、ここで開示される特徴を有する原料粒子を例えば30個数%以上、好ましくは50個数%以上、より好ましくは70個数%以上、さらに好ましくは80個数%以上、より一層好ましくは90個数%以上含むことが好ましい。かかる割合は、例えば図4のように、複数個の原料粒子が観察視野内にあるSEM像(例えば倍率5000倍以下)を無作為に複数(例えば10以上)取得し、かかる複数のSEM像それぞれにおいて、ここで開示される特徴を有する原料粒子の該SEM像全体の粒子に対しての存在割合(個数%)を算出し、かかる複数のSEM像での平均値を算出することで求めることができる。
なお、本明細書において、「原料粒子の平均粒子径」は、レーザー回折・光散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒子径の小さい側からの累積頻度50体積%に相当する粒子径D50(「メジアン径」ともいう。)のことをいう。
なお、上記占有率は、SEM像に基づいて測定することができる。SEMを用いて原料粒子のSEM像を取得し、例えば、オープンソースであり、パブリックドメインの画像処理ソフトウェアとして著名な画像解析ソフト「ImageJ」を用いて、被覆部(小粒子)を白色、被覆部が存在しないコア部の表面(原料粒子中の小粒子が存在しない部分)を黒色とする二値化処理を行う。そして、原料粒子における被覆部が存在する部分(白色部分)の面積をNW、被覆部が存在せず表面が露出したコア部(黒色部分)の面積をNBとして、「NW/(NW+NB)×100」を算出することで被覆部の占有率(被覆率)を求めることができる。
なお、原料粒子および小粒子の粒子径は、以下のようにして測定することができる。まず、SEM像において、各粒子の最大径を決定し、これを長径と規定する。次に、該長径に直交する径の中で最長となるものを決定し、これを短径と規定する。そして、かかる長径と短径とからなる楕円を仮定して、該楕円の面積から円相当径に換算することで、各粒子の粒子径とすることができる。小粒子については、原料粒子一粒に対し、複数個備えられ得るため、SEM像で目視できる複数の小粒子それぞれの粒子径を算出し、平均値を求める。
なお、断面SEM像は公知方法に従い取得することができる。コア部と小粒子の緻密性は、断面SEM像を測定することができ、目視あるいは断面SEM像における濃淡の差を画像解析ソフト(例、ImageJ)で解析することによって、コア部と小粒子の緻密性を比較することができる。
NixCoyMnzM(1-x-y-z)(OH)2 (I)
(式(I)中、x、y、zは、0.1<x<0.9、0.1<y<0.4、0.1<z<0.9、1≧x+y+zを具備しており、MはMg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、ZnおよびSnからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素である。製造される正極活物質のエネルギー密度および熱安定性の観点から、x、yおよびzはそれぞれ、0.3≦x≦0.5、0.2≦y<0.4、0.2≦z<0.4を具備することが好ましい。)
そして、かかるpHの範囲としたまま、例えば1時間以下(典型的には10分以下)の間撹拌を維持する。かかる時間処理することにより、上記遷移金属水酸化物粒子の表面に新たに粒子の核が生成される。
なお、正極活物質調製用材料とリチウム化合物との混合量については、所望する正極活物質に含まれるリチウムと遷移金属との元素比に従えばよい。
(例1~4)
硫酸ニッケル(NiSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸マンガン(MnSO4)とが1:1:1のモル比となるようにイオン交換水に溶解し、原料溶液を調製した。また、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液を準備した。
反応容器内にイオン交換水を加え、撹拌しながら反応容器内の雰囲気を不活性ガスで置換し、不活性雰囲気にした。次に、かかる反応容器内にNaOH水溶液を加え、pHを11~13の範囲となるように調整した。そして、かかる反応容器に上記原料溶液とアンモニア水を一定量ずつ滴下した。このとき、pHを上記範囲内に保持するため、NaOH水溶液を適宜加えた。上記原料溶液とアンモニア水の滴下しながら、0.5時間~1.5時間撹拌した。かかる撹拌後、NaOH水溶液の供給を停止することでpHを9~11の範囲となるように調整し、0.1分~10分の間撹拌を維持した。その後、NaOH水溶液の供給を再開し、再度pHを11~13の範囲となるように調整し、0.5時間~1.5時間撹拌を維持し、沈殿物を得た。かかる沈殿物を吸引濾過により回収し、イオン交換水で洗浄した後、40℃~80℃で6時間~8時間減圧乾燥して、正極活物質調製用材料として水酸化物粒子の粉末を得た。
なお、例1~4は、上記反応容器中をpH11~13の範囲でそれぞれ異なる値のpHで保持した。
上記例1の水酸化物粒子の粉末を得る工程において、pHを9~11の範囲となるように調整する工程を実施しなかったこと以外は、同様の工程を行い、例5の正極活物質を得た。
評価用リチウムイオン二次電池として、上記作製した正極活物質(NCM)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、NCM:AB:PVDF=87:10:3の質量比となるようにN-メチル-2-ピロリドン中で混合し、正極活物質層形成用ペーストを調製した。このペーストをオールグッド社製のフィルムアプリケーターを用いてアルミニウム箔集電体の両面に塗布し、80℃で5分間乾燥させることにより正極シートを作製した。
上記作製した各例の正極活物質調製用材料それぞれに対してレーザー回折式粒度分布測定装置を用いてメジアン径(D50)を測定した。その結果を「原料粒子平均粒子径(μm)」として表1に示す。また、各例の正極活物質それぞれに対しても同様にメジアン径(D50)を測定した。その結果を「正極活物質平均粒子径(μm)」として表1に示す。
上記作製した各例の正極活物質調製材料(水酸化物粒子の粉末)それぞれのSEM像(倍率5000倍、15000倍)を取得した。かかるSEM像に基づき、原料粒子の粒子径に対する、該原料粒子の被覆部を構成する小粒子の平均粒子径の比を測定した。その結果を「原料粒子径に対する小粒子径の比」として表1に示す。
また、かかるSEM像に基づいて小粒子の平均アスペクト比を測定した。結果を「小粒子アスペクト比」として表1に示す。
また、従来技術の代表例として、図7に例5の正極活物質調製用材料の15000倍の倍率で観察したSEM像を示す。
定電流―定電圧方式とし、上記作製した各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で4.1Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用リチウムイオン二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。このときの放電容量を初期放電容量とした。なお、かかる充放電の操作は25℃で行った。また、ここで「1C」とは、1時間でSOC(state of charge)を0%から100%まで充電できる電流の大きさのことをいう。
上記活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を、3.70Vの開放電圧に調整した。これを、25℃の温度環境下に置いた。1Cの電流値で10秒間放電し、電圧変化量ΔVを求めた。電流値とΔVを用いて電池抵抗を算出した。例5の評価用リチウムイオン二次電池の初期抵抗を1.00とした場合の、各実施例の評価用リチウムイオン二次電池の初期抵抗の比を求めた。結果を「初期抵抗」として表1に示す。
上記活性化した各評価用リチウムイオン二次電池を60℃の環境下に置いた。各評価用リチウムイオン二次電池を2Cで4.2Vまで定電流充電を行った後、2Cで3.0Vまで定電流放電を行うことを1サイクルとして、200サイクル繰り返した。その後、200サイクル後の放電容量を上述した初期放電容量と同様の方法で測定した。そして、サイクル容量維持率(%)を以下の式1:
(200サイクル後の放電容量)/(初期放電容量)×100・・・式1
により算出した。結果を「サイクル容量維持率(%)」として表1に示す。
さらに、原料粒子の平均粒子径が4μm以上6μm以下である例1および2においては、特に優れたサイクル特性および初期抵抗低減効果を実現できることがわかる。
したがって、ここで開示される正極活物質調製用材料によれば、リチウムイオン二次電池の初期抵抗を低減させ、優れたサイクル特性を付与する正極活物質を製造することができることがわかる。
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極
52 正極集電体
52a 正極集電体露出部
54 正極活物質層
60 負極
62 負極集電体
62a 負極集電体露出部
64 負極活物質層
70 セパレータ
100 リチウムイオン二次電池
Claims (5)
- リチウムイオン二次電池用の正極活物質調製用材料であって、
コア部と、該コア部の表面の少なくとも一部に存在する被覆部とを備える原料粒子を含み、
前記被覆部は、前記原料粒子のSEM像において、該原料粒子の粒子径の10分の1以下の平均粒子径を有する小粒子で構成されており、
ここで、前記コア部および前記小粒子は、Ni、Mn、Coからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を備えた遷移金属水酸化物を含み、
前記原料粒子の断面SEM像において、前記コア部よりも前記小粒子の緻密性が高い、
正極活物質調製用材料。 - 前記小粒子のSEM像に基づく平均アスペクト比は1.7以下である、請求項1に記載の正極活物質調製用材料。
- 前記原料粒子のSEM像において、前記被覆部が前記コア部の表面を10%以上占有した前記原料粒子を含む、請求項1または2に記載の正極活物質調製用材料。
- 前記原料粒子のレーザー回折・光散乱法に基づく平均粒子径は4μm以上6μm以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の正極活物質調製用材料。
- 請求項1~4の何れか一項に記載の正極活物質調製用材料と、リチウム化合物とを混合すること、および、
前記混合した混合物を焼成すること、
を包含する、正極活物質製造方法。
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