本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、弾性栓体と、当該弾性栓体を内部で保持する外枠体とを有する医療用キャップであって、弾性栓体と外枠体の位置ズレによる空隙の発生を防止し、針刺し時の液漏れがなく、また針抜けに対する保持力や復元力に優れる等、密閉性の確保に優れた医療用キャップ及びその製造方法を提供することにある。
本願発明者等は、前記従来の問題点を解決すべく、医療用キャップ及びその製造方法について検討した。その結果、下記構成を採用することにより、前記目的を達成できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係る医療用キャップは、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する上側枠部及び下面側から支持する下側枠部を少なくとも備えた外枠体とを有する医療用キャップであって、前記下側枠部は、前記弾性栓体を複数で取り囲んで収容する内部壁と、前記内部壁を取り囲む外部壁とを有し、前記上側枠部は、前記内部壁と外部壁の間隙に於いて当該内部壁及び弾性栓体を押圧する環状壁を有し、前記内部壁は前記環状壁との接触面で溶着し、かつ、前記弾性栓体とは溶着しておらず、前記環状壁は、複数の前記内部壁の間隙に於いて前記弾性栓体と溶着し、かつ、前記外部壁の接触面と溶着していることを特徴とする。
前記の構成によれば、弾性栓体は複数の内部壁の間隙に於いて、上側枠部の環状壁と溶着又は密着した構造となっている。また、弾性栓体は複数の内部壁と密着している。さらに、環状壁は、下側枠部の複数の内部壁、及び外部壁とも接触面で溶着した構造となっている。その為、前記の構成によれば、例えば弾性栓体に針刺しをする際に、弾性栓体と外枠体の位置ズレにより空隙が生じるのを防止することができる。さらに、液漏れの発生を防止し密閉性の確保が図れる。
また、上側枠部の環状壁は下側枠部に於ける内部壁と外部壁の間隙に位置しており、弾性栓体の側周面は内部壁及び環状壁から圧力が加えられている。そのため、針抜けに対する保持力及び復元力に極めて優れ、針抜き後の再シール性も良好である。
前記の構成に於いて、前記下側枠部に於ける前記弾性栓体を載置するための載置部には環状突条部が設けられており、前記環状突条部は、前記弾性栓体に於ける側周部の下面に埋入されていてもよい。弾性栓体の側周部の下面に環状突条部を埋入させることで、当該弾性栓体の位置ずれや脱落を一層防止することができる。
前記の構成に於いては、前記弾性栓体の上面、又は上面と下面の周縁部を除く部分が、凸状に変形した状態となっていてもよい。弾性栓体の上面のみを凸状に変形させ、又は弾性栓体の上面と下面の両方を凸状に変形させることにより、弾性栓体に対し圧縮応力(加締め力)が働いた状態で、当該弾性栓体を外枠体内部に保持させることが可能になる。その結果、針抜けに対する保持力及び復元力を増大させ、針抜き後の再シール性を向上させることができる。
また、前記の構成に於いて、前記弾性栓体は、その上面の周縁部に段差部を有しており、前記上側枠部は、前記段差部を押圧するための押圧部を有していることが好ましい。これにより、弾性栓体の段差部に対し圧縮応力(加締め力)が働いた状態で、弾性栓体を外枠体内部に保持させることが可能になる。その結果、針抜けに対する保持力及び復元力を増大させ、針抜き後の再シール性を向上させることができる。
前記の構成に於いて、前記外部壁の高さ位置は、前記弾性栓体の上面以上であることが好ましい。これにより、前記外部壁との接触面で押圧部と溶着し、かつ押圧部を保持することができ、弾性栓体の上面側の周縁部及び段差部に対し圧縮応力をより効率よく働かせることができる。
さらに、前記の構成に於いて、前記内部壁の高さ位置は、前記弾性栓体に於ける側周部の高さ位置以上、かつ、前記弾性栓体の上面以下であることが好ましい。内部壁の高さ位置を、弾性栓体の側周部の高さ位置以上にすることで、弾性栓体がゴム又は熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合には、その側周部が高さ方向に於いて、内部壁から略均一な押圧力が受けられなくなるのを防止することができる。さらに、弾性栓体が熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合には、上側枠部の成形の際に、弾性栓体の側周部の一部が溶融樹脂と接触して熱変形するのを防止することができる。これにより、溶融樹脂との接触による内部応力の低減ないしは内部応力が存在しなくなるのを抑制し、針抜けに対する保持力及び復元力の低下や、針抜き後の再シール性の低減を防止することができる。また、内部壁の高さ位置を、弾性栓体の上面以下にすることで、上側枠部の構成材料となる溶融樹脂の充填が妨げられるのを抑制し、内部壁の先端部分の弾性栓体側に於いてボイド(気泡)が発生するのを防止することができる。
また、前記の構成に於いては、前記内部壁の先端に於ける外側周縁部に、面取り部が設けられていることが好ましい。内部壁として、その先端の外側周縁部に面取り部を設けることにより、その後、上側枠部の成形の際、環状壁を成形するための溶融樹脂が、内部壁と外部壁の間にも抵抗なく容易に流れ込む様にすることができる。
さらに、前記の構成に於いて、前記下側枠部は環状枠部を備え、前記内部壁及び外部壁は当該環状枠部上に立設しており、前記内部壁の端面と、前記環状枠部に於ける内部壁が立設する立設面とが任意の角度を形成することが好ましい。これにより、例えば、内部壁の端面と環状枠部に於ける立設面との間にコーナーRが設けられる場合と比較して、環状壁から押圧されたときに、内部壁を弾性栓体側に傾倒し易くすることができる。その結果、押圧力を弾性栓体に対して効率的に伝達することが可能になり、針抜けに対する保持力や復元力、針抜き後の再シール性を一層向上させることができる。
本発明に係る医療用キャップの製造方法は、前記の課題を解決するために、弾性栓体と、前記弾性栓体の周縁部を上面側から支持する上側枠部及び下面側から支持する下側枠部を少なくとも備えた外枠体とを有する医療用キャップの製造方法であって、第1上金型と共通下金型を用いて、前記弾性栓体を複数で取り囲んで収容する内部壁と、当該内部壁を取り囲む外部壁とを備えた前記下側枠部を成形する工程と、前記下側枠部の内部壁の内側に、前記弾性栓体をその上面を上向きにして載置する工程と、前記共通下金型と組み合わせた際に前記上側枠部の成形用のキャビティを形成可能にする第2上金型を用いて、前記内部壁と外部壁の間隙に於いて当該内部壁及び弾性栓体を押圧する環状壁を備えた前記上側枠部を成形する工程とを有し、前記内部壁は前記環状壁との接触面で溶着し、かつ、前記弾性栓体とは溶着しておらず、前記環状壁は、複数の前記内部壁の間隙に於いて前記弾性栓体と溶着し、かつ、前記外部壁の接触面と溶着していることを特徴とする。
前記の方法に於いては、先ず、第1上金型と共通下金型を用いて下側枠部が成形される。この下側枠部の成形では、弾性栓体を取り囲んで収容する複数の内部壁と、内部壁を取り囲む外部壁とが同時に成形される。次に、下側枠部の載置部に弾性栓体をその上面が上向きとなる様に載置し、第2上金型と共通下金型を用いて上側枠部を成形する。このとき、上側枠部には、内部壁を取り囲む様に形成された環状壁も同時に成形される。これにより、上側枠部の環状壁と内部壁及び外部壁との接触面に於いては溶着した構造となる。また、環状壁は、内部壁と内部壁の間の間隙に於いても弾性栓体と接するので、当該接触面に於いて溶着又は密着した構造となる。但し、弾性栓体は内部壁とは溶着しない構造となっている。これにより、前記構成の製造方法に於いては、例えば弾性栓体に針刺しをする際に、弾性栓体と外枠体の位置ズレにより空隙が生じて液漏れが発生するのを防止し、密閉性に優れた医療用キャップを製造することができる。
また、上側枠部の成形にあたっては、内部壁を中心方向に押圧しながら行うため、弾性栓体は環状壁から直接、及び内部壁を介して間接に圧力が加えられた状態となっている。その結果、前記の方法であると、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、さらに針抜き後の再シール性を向上させた医療用キャップを製造することができる。
また、前記上側枠部の成形工程に於いては、前記第2上金型として、前記弾性栓体の上面の直径よりも小さい直径を有する突起部を有するものを用い、前記共通下金型と前記第2上金型を型閉じする際に、前記突起部が、前記弾性栓体に於ける上面の少なくとも周縁部を押圧することにより、当該上面の中央部を凸状に変形させた状態で、前記キャビティ内に溶融樹脂を射出して前記上側枠部を成形することが好ましい。この構成によれば、第2上金型の突起部が弾性栓体の上面の少なくとも周縁部を押圧することで、上面の中央部を凸状に変形させた状態で、上側枠部の成形が行われる。これにより、弾性栓体は、圧縮応力(加締め力)が加えられた状態で外枠体の内部に保持されるので、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜き後の再シール性を向上させた医療用キャップを製造することが可能になる。
前記の構成に於いて、前記下側枠部の成形工程は、前記弾性栓体を載置するための載置部に、当該弾性栓体を押圧するための環状突条部が設けられた下側枠部を成形する工程であり、前記上側枠部の成形工程は、前記突起部が前記弾性栓体の上面の少なくとも周縁部を押圧することにより、前記環状突条部が弾性栓体の側周部の下面に埋入した状態で行うことができる。これにより、弾性栓体の側周部の下面に環状突条部が埋入した状態で、外枠体内部に弾性栓体が保持させることができる。その結果、弾性栓体の位置ずれや脱落を一層防止した医療用キャップを製造することができる。
前記の構成に於いては、前記共通下金型として、前記弾性栓体の下面の直径よりも小さい直径を有する凹陥部を有するものを用いる。これにより、前記共通下金型と前記第2上金型を型閉じする際、弾性栓体の下面が共通下金型に当接することがないので、弾性栓体の上面だけでなく下面についても凸状に変形させた状態で上側枠部の成形が行われる。その結果、圧縮応力(加締め力)が加えられた状態で外枠体の内部に弾性栓体を保持させることができ、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、針抜き後の再シール性を向上させた医療用キャップを製造することが可能になる。
前記の構成に於いては、前記弾性栓体として、その上面の周縁部に段差部が設けられているものを用い、前記上側枠部の成形工程は、前記弾性栓体の上面の前記段差部を除く周縁部を、前記突起部で押圧することにより、当該段差部を押圧する押圧部を備えた上側枠部を成形する工程であることが好ましい。前記の構成によれば、上面の周縁部に段差部を備えた弾性栓体を用いた場合には、上側枠部の成形の際に、当該段差部を除く周縁部を突起部で押圧した状態で行うことで、段差部に圧縮応力(加締め力)を加えることが可能な押圧部を形成することができる。これにより、針抜けに対する保持力及び復元力をさらに増大させ、針抜き後の再シール性を一層向上させた医療用キャップを製造することができる。
前記の構成に於いて、前記下側枠部の成形工程は、前記外部壁の高さ位置が、前記弾性栓体の上面以上となる前記下側枠部を成形する工程であることが好ましい。これにより、前記外部壁との接触面で押圧部と溶着し、かつ押圧部を保持することができ、弾性栓体の上面側の周縁部及び段差部に対し圧縮応力をより効率よく働かせることができる。
前記の構成に於いて、前記下側枠部の成形工程は、前記内部壁の高さ位置が、前記弾性栓体に於ける側周部の高さ位置以上、かつ、前記弾性栓体の上面以下となる前記下側枠部を成形する工程であることが好ましい。内部壁の高さ位置が、弾性栓体の側周部の高さ位置以上となる様に下側枠部を成形することで、弾性栓体がゴム又は熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合には、その側周部が高さ方向に於いて、内部壁から略均一な押圧力が受けられなくなるのを防止することができる。さらに、弾性栓体が熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合には、上側枠部の成形の際に、弾性栓体の側周部の一部が溶融樹脂と接触して熱変形するのを防止することができる。これにより、溶融樹脂との接触による内部応力の低減ないしは内部応力が存在しなくなるのを抑制し、針抜けに対する保持力及び復元力の低下や、針抜き後の再シール性の低減を防止した医療用キャップを製造することができる。また、内部壁の高さ位置を、弾性栓体の上面以下にすることで、上側枠部の構成材料となる溶融樹脂の充填が妨げられるのを抑制し、内部壁の先端部分の弾性栓体側に於いてボイド(気泡)の発生を防止した医療用キャップを得ることができる。
前記の構成に於いて、前記下側枠部を成形する工程は、前記内部壁として、当該内部壁の先端に於ける外側周縁部に面取り部を有するものを成形する工程であることが好ましい。内部壁として、その先端の外側周縁部に面取り部を成形することにより、その後、上側枠部の成形の際、環状壁を成形するための溶融樹脂が、内部壁と外部壁の間にも抵抗なく容易に流れ込む様にすることができる。
さらに、前記の構成に於いて、前記下側枠部を成形する工程は、前記内部壁及び外部壁を立設させる環状枠部を備えた下側枠部を成形する工程であり、前記内部壁と環状枠部は、前記内部壁の端面と、前記環状枠部に於ける内部壁が立設する立設面とが任意の角度を形成する様に成形されることが好ましい。これにより、例えば、内部壁の端面と環状枠部に於ける立設面との間にコーナーRが設けられる場合と比較して、環状壁から押圧されたときに、弾性栓体側に傾倒し易い内部壁を形成することができる。その結果、押圧力を弾性栓体に対して効率的に伝達することが可能になり、針抜けに対する保持力や復元力、針抜き後の再シール性に一層優れた医療用キャップを製造することができる。
本発明の医療用キャップは、弾性栓体と、これを内部で保持する外枠体とを有するものであり、外枠体の下側枠部は、前記弾性栓体を複数で取り囲んで収容する内部壁と、前記内部壁を取り囲む外部壁とを備えている。また、外枠体の上側枠部は、内部壁と外部壁の間隙で、内部壁及び弾性栓体を押圧するための環状壁を備えている。この環状壁は内部壁及び外部壁の接触面と溶着している。さらに、弾性栓体は、複数の内部壁の間隙に於いて環状壁と接触して溶着又は密着している。また、弾性栓体の上面側に於ける周縁部には段差部が設けられており、段差部は上側枠部の押圧部により押圧されている。この為、例えば弾性栓体に針刺しをする際に、弾性栓体と支持体の位置ズレにより空隙が生じるのを防止することができる。さらに、液漏れの発生を防止し密閉性の確保が図れる。また、弾性栓体は環状壁から直接、及び内部壁を介して間接に押圧力が加えられ、上側枠部の押圧部からも押圧力が加えられている。そのため、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、さらに針抜き後の再シール性も良好な医療用キャップを提供することができる。
また、本発明の医療用キャップの製造方法は、予め成形した下側枠部の内部に弾性栓体を収容し、その後上側枠部を成形するものである。そして、上側枠部の成形にあたっては、第1上金型が備えるリング状突起部により、弾性栓体の上面に於ける周縁部を押圧しながら行う。また、内部壁と外部壁の間隙に環状壁を成形することにより、内部壁を中心方向に押圧しながら行う。そのため、弾性栓体の段差部には上側枠部の押圧部から押圧力が加えられ、弾性栓体の側周面には環状壁から直接、及び内部壁を介して間接に押圧力が加えられた状態にある医療用キャップを製造することができる。これにより、針抜けに対する保持力及び復元力に優れ、さらに針抜き後の再シール性を向上させたものにできる。また、本発明の医療用キャップの製造方法に於いて、上側枠部は、その環状壁が外部壁と内部壁の間隙に位置する様に成形されるので、当該環状壁と外部壁及び内部壁との接触面は溶着した構造にすることができる。さらに、内部壁は複数設けられているので、環状壁は、複数の当該内部壁の間隙に於いて弾性栓体と接触し溶着又は密着した構造にすることができる。即ち、前記の方法であると、弾性栓体と上側枠部、及び上側枠部と下側枠部が相互に溶着した構造の医療用キャップを製造することができる。そのため、例えば弾性栓体に対する針刺しの際に、弾性栓体と支持体の位置ズレにより空隙や液漏れの発生を防止し、密閉性に優れた医療用キャップを提供することができる。
(実施の形態1)
[医療用キャップ]
本実施の形態1に係る医療用キャップについて、図1~図5を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
図1(a)は、本実施の形態に係る医療用キャップを説明するための断面模式図であり、同図(b)は医療用キャップの平面視に於ける平面図である。図2(a)は医療用キャップに於ける外枠体の下側枠部を説明するための断面模式図であり、同図(b)は下側枠部の平面視に於ける平面図を表す。図3は、外枠体の下側枠部に於ける被係合部を表す要部拡大図である。図4は医療用キャップに於ける外枠体の上側枠部を説明するための断面模式図である。図5(a)は、医療用キャップに於ける弾性栓体を表す側面図であり、同図(b)は弾性栓体の針刺面側を表す平面図であり、同図(c)は弾性栓体の接液面側を表す底面図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る医療用キャップ10は、外枠体1と、弾性栓体2とを少なくとも備える。外枠体1は、その内部に弾性栓体2を保持することが可能であり、少なくとも弾性栓体2の周縁部26を針刺面21(上面)側から支持する上側枠部11と、接液面22(下面)側から支持する下側枠部12とを備える(図1(b)及び図2参照)。弾性栓体2は、針刺面21及び接液面22が共に凸状に変形した状態で外枠体1に保持されている。針刺面21及び接液面22の変形の程度は、特に限定されない。例えば、針刺面21及び/又は接液面22の全体が凸状に変形している場合や、針刺面21及び/又は接液面22の中央部分が凸状に変形している場合が挙げられる。
下側枠部12は、図2(a)及び2(b)に示すように、環状枠部16と、内部壁14と、外部壁19と、開口部20とを少なくとも備える。下側枠部12は、内部壁14の部分を除き、剛性成形体であることが好ましく、これにより、形状安定性に優れた医療用キャップ10を提供することができる。
前記内部壁14は、図2(b)に示すように、環状枠部16上に、円環状に複数立設して配置されている。また、複数の内部壁14は、弾性栓体2の側周部23を取り囲んで弾性栓体2を収容している。各内部壁14同士は相互に離間した状態で配置されており、間隙15が設けられている。間隙15の距離は特に限定されず、医療用キャップ10の直径や内部壁14の数に応じて適宜設定することができる。但し、各内部壁14は等間隔に配置されているのが好ましい。これにより、内部壁14を介して弾性栓体2に加える圧力に偏りが生じるのを防止することができる。また、間隙15は環状壁13(詳細については、後述する。)からの押圧により内部壁14同士が接触しない程度であることが好ましい。これにより、弾性栓体2に対する内部壁14の押圧力が低減するのを防止し、針抜けに対する保持力や復元力、針抜き後の再シール性を一層向上させることができる。隣り合う内部壁14の間隙の距離は、具体的には0.5mm~10mmの範囲内が好ましく、1mm~3mmの範囲内がより好ましい。前記間隙の距離を0.5mm以上にすることにより、内部壁14が中心方向に押圧される際、隣り合う内部壁14同士の接触を回避することができる。その一方、前記間隙の距離を10mm以下にすることにより、弾性栓体2に加えられる圧力の偏りを小さくすることができる。
内部壁14の幅はその数や弾性栓体2の大きさに応じて、適宜設定することができる。内部壁14の幅は、通常は1.5mm~15mmの範囲内が好ましく、3mm~9mmの範囲内がより好ましい。また、内部壁14の数も特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。例えば、内部壁14は対向して配置してもよい。これにより、内部壁14の変形を等方向に均一に行うことが可能なり、弾性栓体2に加える圧力に偏りが生じるのを防止することができる。
また、前記内部壁14は、環状壁13からの押圧に対して、間接的にその押圧力を弾性栓体2に伝達する特性を有していることが好ましい。この様な観点から、少なくとも下側枠部12に於ける内部壁14の部分は可撓性成形体であることが好ましい。これにより、環状壁13から押圧されたときには、当該押圧力に抗することなく弾性栓体2側に傾斜する様に撓ませることができる。その結果、弾性栓体2はその接液面22に於いて凸状に変形させた状態で外枠体1内に保持させることができる。また、弾性栓体2に対し効果的に押圧力を加えることができるので、針抜けに対する保持力や復元力、針抜き後の再シール性を一層向上させることができる。
前記内部壁14の厚さは特に限定されないが、環状壁13からの押圧に対し、弾性栓体2側に傾斜する様に撓ませる必要がある。この様な観点からは、0.3mm~2mmの範囲内が好ましく、0.5mm~1mmの範囲内がより好ましい。
内部壁14は環状壁13との接触面に於いて溶着しており、これにより、上側枠部11と下側枠部12は一体的な構造となって外枠体1を構成している。ここで、前記「溶着」とは、後述の通り、上側枠部11を射出成形等により成形する際に注入される溶融樹脂の熱により、これに接した内部壁14の表面が溶融した結果、当該上側枠部11の成形後に、環状壁13と内部壁14とがその接触面に於いて結合した状態にあることを意味する。尚、内部壁14は弾性栓体2との接触面に於いては溶着していない。
内部壁14の高さ位置は、弾性栓体2をその内部に収容したときに、前記弾性栓体2の側周部23の高さ位置以上であり、かつ、弾性栓体2の針刺面21以下であることが好ましく、当該弾性栓体2の側周部23の高さ位置と略同一であることがより好ましい。内部壁14の高さ位置を、弾性栓体2の側周部23の高さ位置以上にすることにより、弾性栓体2がゴムや熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合には、その側周部23が高さ方向に於いて、内部壁14から略均一な押圧力が受けられなくなるのを防止することができる。さらに、弾性栓体2が熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合には、上側枠部11の成形の際に、弾性栓体2の側周部23の一部が溶融樹脂と接触して熱変形するのを防止する。これにより、溶融樹脂との接触による内部応力の低減ないしは内部応力が存在しなくなるのを抑制し、針抜けに対する保持力及び復元力の低下や、針抜き後の再シール性の低減を防止することができる。また、内部壁14の高さ位置を弾性栓体2の針刺面21以下にすることにより、内部壁14の先端部分の弾性栓体2側に於いてボイド(気泡)が発生するのを防止することができる。尚、内部壁14の「高さ位置」とは、載置部17に対して鉛直方向に於ける内部壁14の頂部の位置を意味する。また、側周部23の「高さ位置」とは、載置部17に対して鉛直方向に於ける側周部23の上端の位置を意味する。
また、内部壁14の断面形状は特に限定されるものではない。例えば、内部壁14の断面形状が頂部に向かうに従い先細りとなる形状であってもよい。また、内部壁14の底部に於ける厚さが頂部と同等又は薄くしてもよい。これにより、内部壁14の底部に於いても弾性栓体2に加える圧力を大きくすることができる。尚、内部壁14の厚さは、前述の数値範囲内で適宜設定するものとする。さらに、内部壁14の平面視に於ける形状は四角形の他、台形状等であってもよい。
また、内部壁14の底部には、弾性栓体2を載置可能にする載置部17が設けられている。載置部17は、内部壁14から中心方向に環状に張り出す様にして設けられている。これにより、弾性栓体2の接液面22の周縁部24を支持することができる。その結果、例えば、針刺しの際に、弾性栓体2が下側枠部12の外部に押し出されるのを防止することができる。尚、本実施の形態に於いては、載置部17が環状の場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、所定の間隔で複数の載置部を設けた態様であってもよい。この場合、隣接する載置部の離間距離は、上側枠部11の成形の際に、下側枠部12から押し出されない程度に、弾性栓体2を支持できる態様であれば、特に限定されない。
外部壁19は、環状枠部16上に、内部壁14を取り囲む様に円環状に立設して設けられている。また、外部壁19は、環状壁13を含む上側枠部11との接触面に於いて溶着している(詳細については後述する。)。これにより、上側枠部11を下側枠部12と一体的に結合させることができ、上側枠部11の脱落を防止することができる。また、外部壁19は内部壁14及び弾性栓体2の復元力に対抗することができ、医療用キャップとしての形状を安定させる機能をも併せ持つ。尚、前記「溶着」とは、上側枠部11を射出成形等により成形する際に注入される溶融樹脂の熱により、これに接した外部壁19の表面が溶融した結果、当該上側枠部11の成形後に、外部壁19と上側枠部11の接触面に於いて結合した状態にあることを意味する。
前記外部壁19の高さ位置は、弾性栓体2の針刺面21以上であることが好ましい。外部壁19の高さ位置が針刺面21よりも低いと、前記外部壁19との接触面で押圧部28(詳細については、後述する。)と溶着し、かつ保持することが困難になる。その結果、弾性栓体2の上面側の周縁部及び段差部25に対し圧縮応力を十分に働かせることができない場合があるからである。前記外部壁19の高さは、具体的には4mm~20mmの範囲内が好ましく、5mm~18mmの範囲内がより好ましい。また、外部壁19の厚さは特に限定されないが、外枠体1の形状を保持させるとの観点からは、内部壁14よりも厚い方が好ましい。前記外部壁19の厚さは、具体的には0.3mm~3mmの範囲内が好ましく、0.4mm~2mmの範囲内がより好ましい。
前記外部壁19と内部壁14の間隙の距離は、後述する上側枠部11の環状壁13の形状等に応じて適宜設定することができる。具体的には、0.3mm~5mmの範囲内が好ましく、0.5mm~2mmの範囲内であることがより好ましい。また、間隙の距離は、前記数値範囲内に於いて、外部壁19及び内部壁14の底部に向かうに従い狭くしてもよい。
前記開口部20は、環状枠部16の内周に於いて外方に突出する様に設けられている。これにより、開口部20は、容器の口部(図示しない)との嵌合を可能にしている。開口部20の開口径及び外径は、容器の口部の大きさや、針刺し面積に応じて適宜設定することができる。また、開口部20の高さH(即ち、環状枠部16から開口部20の先端までの距離)も特に限定されず、適宜設定することができる。
開口部20の内周面には、図3に示すように、共通下金型(詳細については後述する。)に係合させるための被係合部27が設けられている。これにより、例えば下側枠部12の成形後、金型の型開きの際に、成形された下側枠部12を共通下金型に係合させ固定させることができる。本実施の形態に係る被係合部27は、環状凹部からなる。但し、被係合部27の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、環状凸部であってもよい。被係合部27の深さ及び幅は、下側枠部12を共通下金型に係合させ固定させることができる程度であれば特に限定されず、適宜設定することができる。
前記上側枠部11は、内部壁14を取り囲む環状壁13と、弾性栓体2の段差部25(詳細については、後述する。)を押圧する押圧部28と、当該環状壁13及び押圧部28を支持する環状枠部18とを少なくとも備えた構造である。環状壁13は下側枠部12の内部壁14を介して弾性栓体2を押圧する機能を備える。また、押圧部28は、弾性栓体2の上面側の周縁部及び段差部25を押圧する機能を備えており、これにより針刺面21を凸状に変形させた状態を維持している。
上側枠部11の環状壁13は、前述の通り、下側枠部12の内部壁14及び外部壁19との接触面に於いて溶着している。また、環状壁13は、複数の内部壁14の間の間隙15に於いて、弾性栓体2とも接触して溶着又は密着している。これにより、環状壁13は弾性栓体2に対しても直接押圧力を加えることができ、弾性栓体2を変形させた状態を保持し続けることができる。また、上側枠部11の環状枠部18は、弾性栓体2の周縁部26に於いても、その接触面に於いて溶着又は密着している。これにより、弾性栓体2の針刺面21に針刺しを行う際に、弾性栓体2の周縁部26に於いて上側枠部11との間に隙間が生じるのを防止することができる。ここで、前記「溶着」とは、前述の場合と同様、弾性栓体2が熱可塑性エラストマー樹脂からなる場合に、上側枠部11を射出成形等により成形する際に注入される溶融樹脂の熱により、これに接した弾性栓体2の表面が溶融した結果、当該上側枠部11の成形後に、環状壁13と弾性栓体2とがその接触面に於いて結合した状態にあることを意味する。尚、弾性栓体2がゴムからなる場合(構成材料の詳細については後述する)、環状壁13は、複数の内部壁14の間の間隙15に於いて弾性栓体2と密着した状態となる。これは、射出成形等の際に注入される溶融樹脂の熱によっても、弾性栓体2の表面が溶融しないことによる。但し、環状壁13は弾性栓体2を押圧した状態で成形されるため、両者は密着した状態となっている。
環状壁13の高さは、当該環状壁13が内部壁14及び外部壁19の間隙に溶融樹脂が流れ込むことにより成形されるものであるため、基本的には当該間隙の深さと同一になる。
前記外枠体1(上側枠部11及び下側枠部12)を構成する材料としては、合成樹脂のうち、医療用途としての安全性が確立されたものを好適に用いることができる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましいが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、上側枠部11と下側枠部12は、両者を溶着させて外枠体1を構成するものであるため、各々に用いられる構成材料は、同一の材料又は相溶性のある材料であることが好ましい。また、上側枠部11又は下側枠部12の一方又は両方に、着色剤等の任意の成分を添加してもよい。
弾性栓体2は、針刺面21を上面にし、接液面22を下面にして下側枠部12に於ける内部壁14の内側に収容されるのが好ましい。ここで「針刺面」とは、本実施の形態に係る医療用キャップ10が薬剤容器に装着され、薬液等を取り出す際に、穿刺針により針刺しが行われる面を意味する。また、「接液面」とは、薬剤容器に貯蔵されている薬液等が接する面を意味する。尚、針刺面21には、穿刺針により刺通する際の位置指標の役目を果たす凹部21aが3つ設けられている。但し、凹部21aの数については特に限定されず、少なくとも1つ設けられていればよい。
弾性栓体2の全体形状は特に限定されないが、本実施の形態に於いては、図5(a)~5(c)に示すように、略円柱状である。但し、針刺面21側の周縁部26には段差部25が設けられている。また、接液面22側には、弾性栓体2を下側枠部12の載置部17に載置可能にするための周縁部24が設けられている。尚、弾性栓体2の形状は図5(a)に示すような形態に限定されるものではなく、例えば、針刺面及び接液面の両方ともフラットな形状の弾性栓体であってもよい。
弾性栓体2の側周部23には、弾性栓体2を金型に係合させるための被係合部23aが設けられている。これにより、例えば弾性栓体2の成形後、金型の型開きの際に、成形された弾性栓体2を金型に係合させ固定させることができる。その結果、弾性栓体2が他方の金型に密着して離型不良が発生するのを防止することができる。
弾性栓体2の全体の直径は特に限定されず、前記外枠体1に於ける内部壁14の内部に収容できる程度であればよい。但し、弾性栓体2の直径が小さ過ぎると、環状壁13による押圧により内部壁14をその直径が縮小する方向に傾斜させても、弾性栓体2の側周部23と密着させることが困難になるので好ましくない。弾性栓体2の直径は具体的には、10mm~30mmの範囲内で設定される。さらに、弾性栓体2の直径は、下側枠部12の内部壁14の内径に対し、0.03mm~1mmの範囲で小さめに設定されていることが好ましい。これにより、内部壁14の内側への弾性栓体2の挿入の容易性を確保している。弾性栓体2の針刺面21の直径(上面側に於ける段差部25を除いた直径)は特に限定されないが、通常は10mm~30mmの範囲で設定される。また、弾性栓体2の接液面22の直径(下面側に於ける周縁部24を除いた直径)は特に限定されないが、通常は10mm~30mmの範囲で設定される。さらに、弾性栓体2の厚み(針刺面21と接液面22の距離)は特に限定されないが、通常は2.5mm~12mmの範囲内であり、好ましくは3mm~9mmの範囲内である。
弾性栓体2の特性については特に限定されず、医療用注入針等が貫通できる程度の硬度を有していればよい。また、通常の保管の際に容易に変形したり、破損したりしない程度の形状保持性を有するものが好ましい。弾性栓体2の硬度は、JIS K6253法による測定に於いて、A5~A50であることが好ましく、A10~A45であることがより好ましい。
前記弾性栓体2に用いる材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーが挙げられる。前記ゴムとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム等が例示できる。また、熱可塑性エラストマーとしては特に限定されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系等が例示できる。中でも共役ジエン系の熱可塑性エラストマーに水素添加した熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS、HSBR、SEBR、CEBC)が好適である。
また、熱可塑性エラストマー材料は、ゴム材料に比べて極めて衛生的な素材であるが、使用する薬液によっては、弾性栓体2の接液面22に、ラミネート加工を行ってもよい。ラミネート加工には、下側枠部12又は取り付けるべき容器本体と同一種類の樹脂が一般に用いられる。これにより、薬液が接触する容器内や弾性栓体2の接液面22と同一又は類似した性質の材料とすることができる。
本実施の形態に係る医療用キャップ10に於いては、弾性栓体2に対してその中心方向に、環状壁13から直接、及び内部壁14を介して間接に圧力が加わるように、当該環状壁13を備えた上側枠部11が成形されている。弾性栓体2に加えられる圧力は、内部壁14や環状壁13の形状及び厚さにもよるが、通常は、弾性栓体2の中心軸に於ける接液面22の方向に向かって作用する。また、弾性栓体2に加えられる圧力は接液面22側に向かうに従い小さくなる。さらに、弾性栓体2の段差部25に対しても、上側枠部11の押圧部28から圧力が加わり、当該圧力も弾性栓体2の中心軸に於ける接液面22の方向に向かって作用する。
これらの作用により、弾性栓体2自身が有する復元力が弾性栓体2の側周面の方向に働き拡張しようとする結果、弾性栓体2と内部壁14との密着性の向上が図れる。その結果、弾性栓体2の針刺面21に針刺しを行った際には、液漏れの発生を防止し、かつ、針抜けに対する保持力及び復元力も向上させることができる。さらに、針を抜いたときには、弾性栓体2は内部壁14からの中心軸に於ける針刺面方向に向かって押しやられる力を受けるので、針で生じた穴を閉塞させることができる。これにより、針抜け後の再シール性にも優れたものにできる。尚、弾性栓体2の接液面22側は、それぞれ中央部が凸条に僅かに膨出した形状になる場合がある。また、本実施の形態では、医療用キャップとして横断面が円形状のものを例にして説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば楕円形状のもの等、本発明の作用効果を奏する形状であれば特に限定されない。
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法について、図6~図8に基づき説明する。
図6は、実施の形態1に係る医療用キャップの製造方法を説明するための断面図であって、同図(a)は下側枠部を成形する様子を表し、同図(b)は第1上金型と共通下金型を型開きした様子を表し、同図(c)は下側枠部に弾性栓体を載置した様子を表す。図7は、共通下金型に於ける係合部の概略を表す拡大断面図である。図8は、医療用キャップの製造方法を説明するための断面図であって、同図(a)は第2上金型と、弾性栓体が載置された下側枠部が固定されている共通下金型とを表し、同図(b)は第2上金型と共通下金型を型閉じした様子を表し、同図(c)は上側枠部が成形され型開きされた様子を表す。
前記医療用キャップ10の製造方法は、下側枠部12を成形する工程と、成形した下側枠部12に弾性栓体2を載置する工程と、上側枠部11を成形する工程とを含む。
下側枠部12の成形工程は、図6(a)に示すように、第1上金型42と共通下金型41を用いて、下側枠部12を射出成形することにより行われる。第1上金型42はコア(凸型)であり、共通下金型41はキャビティ(凹型)である。第1上金型42と共通下金型41は、両者を型閉じした際に、下側枠部12の成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。また、共通下金型41は、弾性栓体2の接液面22側を凸状に変形させるのを可能にするため、平面視が円形状の凹陥部46を備えている(図6(b)参照)。凹陥部46の深さは特に限定されないが、通常は0.5mm~3mmであり、好ましくは0.5mm~1mmの範囲である。また、凹陥部46の直径も特に限定されず、弾性栓体2の接液面22の直径よりも小さくなるように設定されている。さらに、凹陥部46の内周面には、図7に示すように、環状に突出した係合部45が設けられている。これにより、下側枠部12の開口部20の内周面に被係合部27が形成されるのを可能にしている。
下側枠部12の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂47は、第1上金型42内のスプル、ランナーを通過し、ゲート42aからキャビティ内に注入する。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂47は所定時間冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
次に、図6(b)に示すように、第1上金型42と共通下金型41の型開きを行う。このとき、下側枠部12は、被係合部27を共通下金型41の係合部45に係合させることにより共通下金型41に固定されている。これにより、本実施の形態に於いては、第1上金型42と共通下金型41の型開きの際に、下側枠部12が第1上金型42に密着して離型不良が発生するのを防止することができる。その結果、製造効率の低下を防止することができる。
次に、図6(c)に示すように、下側枠部12の載置部17上に、弾性栓体2をその針刺面(上面)21が上向きとなる様に載置する。ここで、下側枠部12の開口部20の内径は、弾性栓体2の接液面22の直径と比べ小さくなる様に設計され、成形されているのが好ましい。これにより、弾性栓体2を載置部17上に載置した際に、開口部20の内周面と、弾性栓体2の接液面22を形成する部分との間に、例えば数mm程度のクリアランスを環状に形成することができる。その結果、弾性栓体2の下側枠部12へのインサートを容易に行うことができる。
尚、弾性栓体2の製造方法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性エラストマーを圧潰しながら行うコンプレッション成形や射出成形により製造可能である。
続いて、図8(a)に示すように、上側枠部11の成形を行う。上側枠部11の成形には、第2上金型43と共通下金型41とを用いる。第2上金型43には、弾性栓体2の針刺面21の周縁部26を押圧するためのリング状突起部(突起部)44が設けられている。第2上金型43と共通下金型41は、両者を型閉じすると、上側枠部11の成形が可能なキャビティが形成される構造となっている。
また、第2上金型43と共通下金型41を型閉じすると、リング状突起部44が、弾性栓体2の針刺面21に於ける周縁部26に当接して変形させる。これにより、針刺面21側が凸状に変形した状態となる。また、共通下金型41には凹陥部46が設けられており、第2上金型43と共通下金型41の型閉じの際、弾性栓体2の接液面22が支持されない構造となっている。そのため、型閉じの際には、接液面22側も凸状に変形した状態となる(図8(b)参照)。また、弾性栓体2の針刺面21に於ける周縁部26にリング状突起部44を当接させることで、溶融樹脂が弾性栓体2の針刺面21と第2上金型43の隙間に流れ込むのを防止することもできる。
前記リング状突起部44の外径rは成形する上側枠部11の形状、サイズに応じて適宜設定されるが、弾性栓体2に於ける針刺面21の直径よりも小さいのが好ましい。但し、外径rが小さすぎると、上側枠部11の環状枠部18が必要以上に大きく成形される結果、針刺面21として機能させる領域が小さくなりすぎ、針刺しの際の利便性が低下する場合がある。
また、リング状突起部44の高さhは特に限定されず、弾性栓体2のサイズや成形する上側枠部11の形状等に応じて適宜設定される。通常は、0.3~6mmの範囲内であることが好ましく、0.8~4mmの範囲内であることがより好ましい。高さhを6mm以下にすることにより、第2上金型43と共通下金型41との型閉じが困難になるのを防止することができる。その一方、高さhを0.3mm以上にすることにより、弾性栓体2の中央部を下方に押し下げるのが不十分になり、弾性栓体2の中央に向かう圧縮応力の発生しなくなるのを防止することができる。
次に、型閉じにより形成されたキャビティ内に、上側枠部11の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を注入する。溶融樹脂は、第2上金型43内のスプル、ランナーを通過し、ゲート43aからキャビティ内に注入する。ここで、ゲート43aの位置は、リング状突起部44の外側に設けられ、溶融樹脂が弾性栓体2の段差部25に向けて射出が可能となっている。また、ゲート43aの位置は4箇所設けられ、相互に等間隔となる様に配置されている。尚、ゲート43aの位置について、本実施の形態は4箇所設けられている場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも複数設けられていればよい。従って、例えば、ゲート43aが、相互に等間隔に3箇所設けられた態様でもよい。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂は所定時間冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。型開き後、図8(c)に示すように、上側枠部11が形成される。
以上により、上側枠部11と下側枠部12とが一体となった外枠体1が形成され、本実施の形態に係る医療用キャップ10が得られる。
(実施の形態2)
[医療用キャップ]
本実施の形態2に係る医療用キャップについて、図9及び図10を参照しながら以下に説明する。図9(a)は、本実施の形態に係る医療用キャップを説明するための断面模式図であり、同図(b)は医療用キャップの平面視に於ける平面図である。図10(a)は医療用キャップに於ける外枠体の下側枠部を説明するための断面模式図であり、同図(b)は下側枠部の平面視に於ける平面図を表す。尚、実施の形態1の医療用キャップ10と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施の形態2に係る医療用キャップ10’は、実施の形態1と比較して、下側枠部12’の載置部17上に環状突条部17aが設けられている点が異なる(図9(a)及び9(b)参照)。この様な構成であると、弾性栓体2の側周部23に於ける下面に環状突条部17aを埋入させることが可能になり、弾性栓体2の位置ずれや脱落を一層防止することができる。
環状突条部17aは、図10(a)及び10(b)に示すように、載置部17の最内周に、環状に設けられている。但し、環状突条部17aは突条の場合に限定されない。例えば、凸部が任意の間隔で環状に配列した態様であってもよい。また、環状突条部17aの形成位置は、弾性栓体2の側周部23の下面に埋入できる範囲内であれば限定されない。
環状突条部17aの高さは、弾性栓体2の側周部23の下面に埋入できる程度であれば特に限定されず、弾性栓体2の硬度等に応じて適宜設定される。また、環状突条部17aの断面視に於ける幅も、弾性栓体2の側周部23の下面に埋入できる程度であれば特に限定されず、弾性栓体2の硬度等に応じて適宜設定される。
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法について、図11及び図12に基づき説明する。
図11は、実施の形態2に係る医療用キャップの製造方法を説明するための断面図であって、同図(a)は下側枠部を成形する様子を表し、同図(b)は第1上金型と共通下金型を型開きした様子を表し、同図(c)は下側枠部に弾性栓体を載置した様子を表す。図12は、医療用キャップの製造方法を説明するための断面図であって、同図(a)は第2上金型と、弾性栓体が載置された下側枠部が固定されている共通下金型とを表し、同図(b)は第2上金型と共通下金型を型閉じした様子を表し、同図(c)は上側枠部が成形され型開きされた様子を表す。
先ず、下側枠部12’の成形工程は、図11(a)に示すように、第1上金型42’と共通下金型41を用いて、下側枠部12’を射出成形することにより行われる。第1上金型42’はコア(凸型)である。第1上金型42’と共通下金型41は、両者を型閉じした際に、載置部17上に環状突条部17aが設けられた下側枠部12’の成形が可能な様に、キャビティが形成される構造となっている。
下側枠部12’の構成材料となる溶融樹脂47は、第1上金型42’内のスプル、ランナーを通過し、ゲート42aからキャビティ内に注入する。射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂47は所定時間冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
次に、図11(c)に示すように、第1上金型42’と共通下金型41の型開きを行った後、下側枠部12の載置部17に於ける環状突条部17a上に、弾性栓体2をその針刺面(上面)21が上向きとなる様に載置する。
続いて、図12(a)に示すように、上側枠部11の成形を行う。上側枠部11の成形には、第2上金型43と共通下金型41とを用いる。第2上金型43と共通下金型41を型閉じすると、上側枠部11の成形を可能にするキャビティが形成される。また、リング状突起部44が、弾性栓体2の接液面22に於ける周縁部26に当接して変形を加えることにより、弾性栓体2の針刺面21側が凸状に変形する。さらに、載置部17上に設けられた環状突条部17aは、弾性栓体2に於ける側周部23の下面に埋入した状態となる(図12(b)参照)。
次に、型閉じにより形成されたキャビティ内に、上側枠部11の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を注入し、所定時間冷却させた後、図8(c)に示すように、型開きを行う。
以上により、上側枠部11と下側枠部12”とが一体となった外枠体1’が形成され、本実施の形態に係る医療用キャップ10’が得られる。
(その他の事項)
以上に述べた各実施の形態に於いては、下側枠部の内部壁に関し、その形状が略板状である場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、図13(a)~13(c)に示す様に、内部壁の先端の外側周縁部(外部壁に対向する壁面側の周縁部)に面取り部を設けたものを採用してもよい。面取り部を設けることにより、上側枠部の成形の際に金型内に流し込む上側枠部の構成材料の溶融樹脂を、内部壁と外部壁の間に流動し易くすることができる。図13は、内部壁の先端の外側周縁部に設けられた面取り部を表す要部拡大断面図であり、同図(a)は面取り部が勾配面である場合を表し、同図(b)は面取り部がC面である場合を表し、同図(c)は面取り部がR面である場合を表す。
ここで、図13(a)に示す内部壁61に於ける面取り部は、勾配面62である。勾配面62に於ける勾配の高さhは特に限定されないが、通常は0.2mm~3mmである。また、勾配面62の勾配の幅w1は特に限定されないが、通常は0.3mm~2mmである。さらに、勾配面62の勾配角度θは特に限定されないが、通常は10°~85°である。
図13(b)に示す内部壁63に於ける面取り部は、C面64である。また、内部壁63の頂部には、略平坦状の平坦面65が設けられている。C面64の面取り長さlは、0.1mm~1.9mmの範囲内が好ましく、0.15mm~1mmの範囲内がより好ましく、0.25mm~0.5mmの範囲内が特に好ましい。また、平坦面65の幅(内部壁63の壁面に対し垂直方向の断面形状における幅)w2は、0.1mm~1.9mmの範囲内が好ましく、0.15mm~1mmの範囲内がより好ましく、0.25mm~0.5mmの範囲内が特に好ましい。
図13(c)に示す内部壁66に於ける面取り部は、R面67である。R面67の曲率半径rは、0.3mm~2mmの範囲内が好ましく、0.5mm~1mmの範囲内がより好ましく、0.25mm~0.5mmの範囲内が特に好ましい。尚、内部壁66に於いても、当該内部壁63の頂部には、略平坦状の平坦面65が設けられている。平坦面65の幅w2については、前述の通りである。
また、内部壁14は、図14に示すように、それらの端面71と、環状枠部16に於いて当該内部壁14が立設する立設面72との間で任意の角度を形成する様に設けられていることが好ましい(前述の内部壁61、63、66の場合も同様。)。図14は、環状枠部16上に内部壁14が立設する様子を概略的に表す斜視図である。これにより、例えば、内部壁14の端面71と環状枠部16の立設面72との間にコーナーRが設けられる場合と比較して、内部壁14を弾性栓体2側に、一層傾倒し易くすることができる。その結果、押圧力を弾性栓体2に対して効率的に伝達することが可能になり、針抜けに対する保持力や復元力、針抜き後の再シール性を一層向上させることができる。尚、端面71と立設面72のなす角αは、通常180°未満であり、好ましくは90°~145°、より好ましくは91°~115°である。
また、以上に述べた各実施の形態に於いては、医療用キャップの製造方法に関し、突起部がリング状突起部44の態様である場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、図15(a)~15(c)に示す種々の突起部を備えたものを採用することもできる。即ち、円柱状の突起部54を備える第2上金型51(同図(a))や、円弧状に窪んだ凹型状の突起部55を備える第2上金型52(同図(b))、中央部が所定の曲率で湾曲して膨らんだ凸形状の突起部56を備える第2上金型53(同図(c))が例示できる。尚、図15(b)に示す第2上金型52の場合、凹部57の深さは特に限定されないが、第2上金型52と共通下金型41の型閉じの際に、押圧された弾性栓体2の針刺面21側の膨らみを収容できる程度の空間が形成されるものであることが好ましい。
また、各実施の形態に於いては、共通下金型41として凹陥部46を備えた態様を例にして説明した。しかし本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、弾性栓体2の接液面22側が凸状に変形するのを防止するため、第2上金型43と共通下金型41の型閉じの際に、接液面22が当接する構造の基台部を備えた共通下金型を用いてもよい。これにより、針刺面21側のみが凸状に変形した状態で弾性栓体が内部に保持される医療用キャップを作製することができる。