JP7268778B2 - 化粧シート及び化粧板 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の技術は、裏面(接着面)に、裏面プライマーとしてポリウレタン系バックコート層が形成されている、ポリオレフィン系化粧シートである。そして、特許文献1に記載の技術では、ポリウレタン系バックコート層が、木質基材の表面に塗工されたアクリル樹脂や酢酸ビニル樹脂の水性接着剤によって貼り合わされることで、化粧板となる。
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等のフィルム原反に、インキで印刷した化粧層等を形成して製造した化粧シートには、インキの印刷後に、巻き取ったシート同士が貼りつく可能性が高い。
このため、化粧シートをロール状で保管すると、フィルム原反同士が密着し、ブロッキングが発生する。ブロッキングの強度が大きくなると、印刷ロールを剥がした際に、インキの剥がれやフィルム原反が切れる等の問題が発生するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、安定した接着強度を維持することが可能な、化粧シート及び化粧板を提供することを目的とする。
また、前記課題を解決するために、本発明の一態様は、化粧シートに、接着剤層で基板を貼り付けて形成された化粧板であり、接着剤層が、基板の化粧シートと対向する面に積層され、且つ水性接着剤またはポリウレタン系ホットメルト接着剤を含む。
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(化粧板)
図1を参照して、化粧板100の構成について説明する。
図1中に表すように、化粧板100は、基板10と、接着剤層20と、化粧シート1を備えており、基板10の一方の面(図1中では、基板10の上側の面、すなわち、基板10の化粧シート1と対向する面)に積層した接着剤層20を用いて、基板10に化粧シート1を貼り合わせて形成されている。
基板10は、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等を材料として用いた、単板、合板、繊維板、複合材、集成材等を用いて形成されている。
第一実施形態では、基板10として、中密度繊維板(MDF)を用いる場合について説明する。すなわち、第一実施形態の化粧板100が備える基板10は、MDF基材である。
MDFは、木質繊維を原料とする成型板(ファイバーボード)の一種であり、木材チップを蒸煮・解繊したものに、接着剤となる合成樹脂を加えて板状に熱圧成型したものである。また、MDFは、同じ木材チップを原料とするパーティクルボードや配向性ストランドボード(OSB)と比較して、構成要素(セグメント)が小さく、表面だけでなく木口部分も平滑である。
なお、基板10としては、パーティクルボードや配向性ストランドボード(OSB)を用いても良い。また、基板10としては、プラスチックフィルム、紙、金属、布、皮革、ガラス、陶磁器等を用いることも可能である。
接着剤層20は、例えば、接着剤を乾燥・硬化させることで形成されており、水性接着剤またはポリウレタン系ホットメルト接着剤を含んでいる。
水性接着剤は、引火の危険性や毒性の心配が少なく、比較的安全性が高い。そして、水性接着剤としては、例えば、エマルジョン接着剤を用いることが可能である。
エマルジョン接着剤は、合成樹脂のポリマーを水の中へ均一に分散させた接着剤であり、被着体の隙間に浸透して、楔のように硬化する投錨効果を有する。そして、エマルジョン接着剤としては、例えば、主剤としてウレタン変性エチレン-酢酸ビニル重合体が用いられ、硬化剤として脂肪族イソシアネートが用いられるものがある。
ポリウレタン系ホットメルト接着剤としては、例えば、一液湿気硬化型ウレタンホットメルト接着剤等(DIC株式会社製:「タイフォースFH315」等)を用いることが可能である。
ホットメルト接着剤は、常温では固体であるが、80[℃]以上100[℃]以下の範囲内程度における加熱溶融により液状化した状態で被着体に塗布され、冷却固化によって接合を形成する熱可塑性接着剤である。また、ホットメルト接着剤は、硬化が早く、溶剤を使っていないため、ガスが発生しない。
接着剤層20を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等を用いることが可能である。
図1を参照して、化粧シート1の構成について説明する。
化粧シート1は、基板10の一方の面に意匠性を付与するためのシート状の化粧材である。
図1中に表すように、化粧シート1は、基材シート2と、化粧層4と、プライマー層6を備えている。また、化粧シート1は、基材シート2の一方の面(図1中において、基材シート2の下側の面)にプライマー層6を積層し、基材シート2の他方の面(図1中において、基材シート2の上側の面)に化粧層4を積層して形成されている。
なお、化粧シート1のうち、プライマー層6を除く構成は、特に限定されるものではない。
基材シート2は、樹脂フィルムを用いて形成されたシート状の層である。
基材シート2を形成する樹脂フィルムは、特に限定されるものではなく、既知の樹脂フィルムを用いることが可能である。
すなわち、基材シート2を形成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、または、その鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体を用いることが可能である。これに加え、基材シート2を形成する樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン系樹脂、繊維素誘導体、塩素系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることが可能である。
特に、溶融押し出し装置を用いた製造では、生産性、環境適合性、機械強度、耐久性、価格等を考慮すると、基材シート2を形成する樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂を用いることがより好ましい。また、基材シート2を形成する樹脂フィルムは、顔料を混合して着色することで、化粧シート1の意匠に合わせた基材色を設定してもよい。
ポリオレフィンは、プラスチック(樹脂)の一種であり、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等、炭素(C)と水素(H)のみで構成され、燃やすと水(H2
O)と二酸化炭素(CO2)等になる樹脂である。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等を用いることが可能である。
共重合ポリエステルとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(通称「PET-G」)を用いることが可能である。
ポリアミド系樹脂としては、例えば、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、12-ナイロン等を用いることが可能である。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等を用いることが可能である。
塩素系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等を用いることが可能である。
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体等を用いることが可能である。
なお、基材シート2としては、例えば、耐油性を有する耐油紙等の紙基材を用いることも可能である。
化粧層4は、化粧シート1に意匠性を付与するための絵柄が印刷により形成された層であり、複数の層で構成されている。化粧層4を構成する複数の層は、例えば、熱可塑性樹脂層、絵柄層と、表面保護層を含む、なお、化粧層4の層構成は、これに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂層は、化粧材の意匠性を高める目的で設けられ、基材シート2の表面に意図した色彩を与える隠蔽層、または、全面ベタ層とも呼称されるものであり、基材シート2の他方の面を全面に亘って被覆する一様且つ均一な層である。
また、熱可塑性樹脂層は、通常は不透明色で形成することが多いが、着色透明で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。また、熱可塑性樹脂層は、フィルムが白色であることを活かす場合には無色透明で形成する場合もある。
絵柄としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等、化粧シート1を用いる箇所に適した絵柄を選択することが可能である。
化粧層4を形成する印刷インキについては、印刷適性や耐候性等を考慮すれば、特に限定されず、既知の印刷インキを用いることが可能である。
したがって、化粧層4を形成する印刷インキとしては、例えば、凸版インキ、平板インキ、凹版のグラビアインキ、孔版のスクリーンインキ等を用いることが可能である。また、化粧層4を形成する印刷インキとしては、媒体の系から、例えば、オイルインキ、ソルベントインキ、水性インキのいずれかを用いることが可能である。
水溶性塩としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩;スチレン-マレイン酸系共重合体の水溶性塩や、インブチレン-マレイン酸系共重合体の水溶性塩(メタ)アクリルエステル系(共)重合体の水溶性塩を用いることが可能である。これに加え、水溶性塩としては、例えば、スチレン-(メタ)アクリルエステル系共重合体の水溶性塩を用いることが可能である。
絵柄の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等、既知の印刷方法を用いることが可能である。
特に、全面に同一色を着色する場合には、上述した印刷方法の他に、コーティングの手法や装置を用いてもよい。
また、表面保護層は、熱可塑性樹脂層、または、絵柄層の全面を被覆する一様且つ均一な部材である。
表面保護層の材料は、特に限定されるものではないが、樹脂成分として、電離放射線硬化型樹脂、または、二液硬化型ウレタン樹脂を含有することが好ましく、これらの樹脂から形成されているものが好適である。
電離放射線硬化型樹脂、または、二液硬化型ウレタン樹脂により表面保護層を形成する場合には、化粧材としての耐摩性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を向上させることが可能である。
プライマー層6は、プライマー(下塗り剤)を基材シート2の一方の面に塗布することで形成されている。また、基材シート2の一方の面に形成されたプライマー層6は、裏面プライマーと呼称される場合がある。
プライマーは、被着材表面の接着性を改善するために塗布する、不揮発分の少ない低粘度液体である。プライマー層6の上に接着剤を塗布する場合には、プライマーが充分に乾いたところで接着剤を塗り重ねる。プライマーの種類は、被着材や接着剤の種類に応じて異なる。
混合体における、ウレタン系樹脂と、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂と、セルロース樹脂と、の混合比は、質量比で、70:20:10である。
セルロース樹脂としては、例えばエステル基を持つセルロース樹脂や酢酸セルロースなどが例示出来る。セルロースは天然のものでも人工のものでも構わない。
セルロース樹脂の添加量は、混合体の100質量部に対して、3質量部以上10質量部以下の範囲内である。
シリカの平均粒径は、2[μm]以上4[μm]以下の範囲内である。
シリカの添加量は、混合体の100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下の範囲内である。
硬化剤の添加量は、混合体の100質量部に対して、2質量部以上5質量部以下の範囲内である。
第一実施形態の化粧シート1であれば、プライマー層6に対し、ウレタン系樹脂と塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂とセルロース樹脂とを質量比で70:20:10の混合比で配合した混合体と、平均粒径が2[μm]以上4[μm]以下の範囲内であるシリカを添加する。これに加え、シリカの添加量を、混合体の100質量部に対して20質量部以上60質量部以下の範囲内に設定する。
その結果、安定した接着強度を維持することが可能な、化粧シート1を提供することが可能となる。
その結果、水性接着剤またはポリウレタン系ホットメルト接着剤で基板10に化粧シート1を貼り付けた場合であっても、安定した接着強度を維持することが可能な、化粧板100を提供することが可能となる。
実施例1の化粧板は、以下の構成を備える。
基板 … 厚さ3mmのMDF基材
基材シート … 厚さ0.07mmのポリプロピレン樹脂原反
プライマー層の主成分 … ウレタン系樹脂と塩酢ビ樹脂とセルロース樹脂の混合体
混合体の混合比 … ウレタン系樹脂70:塩酢ビ樹脂20:セルロース樹脂10
プライマーの塗布量 … 0.6以上[g/m2dry]0.9[g/m2dry]以下の範囲内
硬化剤の添加量 … 混合体の100質量部に対して3質量部
シリカの添加量 … 混合体の100質量部に対して33質量部
シリカの平均粒径 … 2[μm]
なお、シリカの添加量は、塗料中に含まれる有機樹脂分を100質量部として設定する。
実施例2の化粧板は、シリカの添加量が混合体の100質量部に対して50質量部である点を除き、実施例1の化粧板と同様の構成を備える。
(実施例3)
実施例3の化粧板は、シリカの平均粒径が4[μm]である点を除き、実施例1の化粧板と同様の構成を備える。
(実施例4)
実施例4の化粧板は、シリカの添加量が混合体の100質量部に対して50質量部である点と、シリカの平均粒径が4[μm]である点を除き、実施例1の化粧板と同様の構成を備える。
比較例1の化粧板は、シリカの添加量が混合体の100質量部に対して8質量部である点を除き、実施例1の化粧板と同様の構成を備える。
(比較例2)
比較例2の化粧板は、シリカの添加量が混合体の100質量部に対して17質量部である点を除き、実施例1の化粧板と同様の構成を備える。
(比較例3)
比較例3の化粧板は、シリカの添加量が混合体の100質量部に対して17質量部である点と、シリカの平均粒径が4[μm]である点を除き、実施例1の化粧板と同様の構成を備える。
環境試験後の剥離試験として、以下の試験を行った。
実施例及び比較例の化粧板が備えるプライマー層を、水性接着剤で基材に接着させる。そして、60[℃]の雰囲気下で化粧板を25[mm]幅にカットした後、片端部を基材から剥がし、先端部分の化粧シートを剥離させて、500[g]の重りを載せる。さらに、剥離された化粧シートを90[°]方向に500[g]荷重をかけて引っ張った状態で1時間放置し、基材と化粧シートとの剥離長さ(剥離距離)を測定した。
実施例1から4では、剥離距離が1.0[mm]であった。比較例1と比較例3では、剥離距離が1.5[mm]であり、比較例2では、剥離距離が2.0[mm]であった。
したがって、実施例の化粧シート及び化粧板は、比較例の化粧シート及び化粧板と比較して、安定した接着強度を維持することが可能であることが確認された。
Claims (2)
- 基材シートの一方の面に積層されたプライマー層を備える化粧シートであって、
前記プライマー層は、ウレタン系樹脂と、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合樹脂と、セルロース樹脂と、を質量比で70:20:10の混合比で配合した混合体と、前記混合体に対して添加されたシリカと、を含み、
前記シリカの平均粒径は、2μm以上4μm以下の範囲内であり、
前記シリカの添加量は、前記混合体の100質量部に対して20質量部以上60質量部以下の範囲内であることを特徴とする化粧シート。 - 請求項1に記載した化粧シートに、接着剤層で基板を貼り付けて形成された化粧板であって、
前記接着剤層は、前記基板の前記化粧シートと対向する面に積層され、且つ水性接着剤またはポリウレタン系ホットメルト接着剤を含むことを特徴とする化粧板。
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