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JP7267487B1 - 回転電機の制御装置および回転電機の制御方法 - Google Patents

回転電機の制御装置および回転電機の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ベクトル制御を行うためのマップの記憶に必要な記憶容量を少なくできる回転電機の制御装置を提供する。【解決手段】回転電機1の制御装置100は、トルク指令値および回転数に基づいてd軸およびq軸基準電流指令値を生成する基準電流指令生成部110と、d軸およびq軸基準電流指令値、トルク指令値、回転数並びに電源電圧に基づいて電流位相指令を生成する電流位相生成部120と、d軸およびq軸基準電流指令値並びに電流位相指令に基づいてd軸およびq軸電流指令値を生成する電流指令生成部130と、d軸およびq軸電流指令値、回転数、回転位置並びに三相電流に基づいて三相電圧指令値を生成してインバータ3に出力する電圧指令生成部140とを備えている。【選択図】図1

Description

本願は、回転電機の制御装置および回転電機の制御方法に関する。
自動車、鉄道などの動力源として、高効率、高出力が得られる永久磁石埋め込み型回転電機が採用される場合がある。この回転電機においては、コイルと永久磁石との間に働く吸引力および反発力に起因するマグネットトルクと、ステータとロータとのギャップの磁気抵抗の変化に起因するリラクタンストルクとが得られる。
永久磁石埋め込み型回転電機の従来の制御装置として、回転電機の効率を優先させる制御進角が記憶された効率ベスト進角IdマップおよびIqマップと、特定の回転周波数領域において回転電機の駆動時に発生するトルクリプルを抑制する制御進角が記憶されたトルクリプル最小ベスト進角IdマップおよびIqマップとを用いてベクトル制御を行う制御装置が知られている。この制御装置においては、回転電機のトルク指令値に基づいて効率ベスト進角IdマップおよびIqマップの制御進角でベクトル制御が行われると共に、特定の回転周波数領域においてはトルクリプル最小ベスト進角IdマップおよびIqマップの制御進角に切り替えてベクトル制御が行われる。このように構成された制御装置においては、回転電機の出力トルクの最大化を図りつつ、トルクリプルに起因する騒音、振動などの発生を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
特開2021-150966号公報
従来の制御装置においては、効率ベスト進角IdマップおよびIqマップとトルクリプル最小ベスト進角IdマップおよびIqマップとを予めメモリなどに記憶しておく必要がある。自動車、鉄道などの動力源として回転電機を制御する場合、電源電圧が大きく変化する。電源電圧が大きく変化する場合、電圧に応じて効率のよいd軸電流およびq軸電流が変化する。そのため、効率ベスト進角IdマップおよびIqマップ並びにトルクリプル最小ベスト進角IdマップおよびIqマップを電源電圧に応じて複数用意しておくことが必要となる。そのため、従来の制御装置においては、これらのマップを記憶するための記憶容量が膨大になるという問題があった。
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、ベクトル制御を行うためのマップを記憶するために必要な記憶容量を少なくできる回転電機の制御装置を提供することを目的とする。
本願の回転電機の制御装置は、インバータからの三相電流で駆動される回転電機の制御装置であって、トルク指令値および回転電機の回転数に基づいてd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値を生成する基準電流指令生成部と、基準電流指令生成部で生成されたd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値、トルク指令値、回転数並びに回転電機の電源電圧に基づいて電流位相指令を生成する電流位相生成部と、基準電流指令生成部で生成されたd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値並びに電流位相生成部で生成された電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令生成部と、電流指令生成部で生成されたd軸電流指令値およびq軸電流指令値、回転数、回転電機の回転位置、並びに三相電流に基づいて三相電圧指令値を生成すると共に、インバータに三相電圧指令値を出力する電圧指令生成部とを備えている。そして、電流指令生成部は、d軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値からd軸基準磁束およびq軸基準磁束を演算する第一磁束演算部と、第一磁束演算部で演算されたd軸基準磁束およびq軸基準磁束、並びにd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値に基づいて基準トルク指令値を演算する基準トルク指令演算部と、電流指令生成部で生成された前回のd軸電流指令値および前回のq軸電流指令値から前回のd軸磁束および前回のq軸磁束を演算する第二磁束演算部と、第二磁束演算部で演算された前回のd軸磁束および前回のq軸磁束、基準トルク指令演算部で演算された基準トルク指令値、並びに電流位相指令に基づいて、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を演算する電流指令補正演算部とを備えている。
本願の回転電機の制御装置においては、基準電流指令生成部において、Id、Iqの基準電流指令マップを用いd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値が生成され、電流位相生成部において、d軸基準電流指令値、q軸基準電流指令値、回転数および回転電機の電源電圧に基づいて電流位相指令が生成され、電流指令生成部において、d軸基準磁束、q軸基準磁束、d軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値に基づいて基準トルク指令値が生成されると共に、前回のd軸磁束、前回のq軸磁束、基準トルク指令値および電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値が演算されるので、ベクトル制御を行うためのマップを記憶するために必要な記憶容量を少なくすることができる。
実施の形態1に係る回転電機の制御装置の構成図である。 実施の形態1に係る回転電機の断面図である。 実施の形態1に係るId、Iqの基準電流指令マップの説明図である。 実施の形態1に係る電流指令生成部の構成図である。 実施の形態1に係る回転電機の制御装置を実現するハードウェア構成を示す図である。
以下、本願を実施するための実施の形態に係る回転電機の制御装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る回転電機の制御装置の構成図である。図1は、本実施の形態の回転電機の制御装置を含めた回転電機の制御システム全体を示している。この回転電機制御システム10は、回転電機1と、電源2と、インバータ3と、電圧検出器4と、電流検出器5と、位置検出器6と、制御装置100とで構成されている。
図2は、本実施の形態の制御装置100で駆動される回転電機1の断面図である。この回転電機1は、4極12スロットの磁石埋め込み型回転電機である。図2に示すように、回転電機1は、円環状のステータ11と、ステータ11に回転可能に支持された円柱状のロータ12とを有する。ステータ11は、円環状のステータコア13と、コイル14とを備えている。ステータコア13は、円環状のコアバック15とコアバック15から内周側に突出した複数のティース16とを備えている。複数のティース16の間はスロットとなっており、コイル14はこのスロットを利用してティース16に集中巻きで巻き回されている。コイル14は、U相、V相、W相の三相コイルで構成されている。
ロータ12は、円柱状のロータコア17と、永久磁石18と、ロータコア17の中心に締結された回転軸19とを備えている。ロータコア17には、周方向に並んで配置された磁石挿入孔20が形成されている。永久磁石18は、この磁石挿入孔20の内部に固定されている。なお、本実施の形態の制御装置100で制御される回転電機1は、三相電流で駆動される回転電機であれば図2に示した4極12スロットの磁石埋め込み型回転電機に限るものではない。
図2に示す回転電機1において、ロータ12の永久磁石18が発生する磁束の方向がd軸であり、このd軸と電気的に直交する方向がq軸である。本実施の形態の回転電機の制御装置100は、回転電機1をベクトル制御で制御する。ベクトル制御においては、界磁の強さを制御する励磁電流(d軸電流)とトルクを発生させるトルク電流(q軸電流)とをd軸およびq軸の二次元の直交ベクトル座標系で制御する。ベクトル制御では、回転電機1のロータの回転位置(回転角)に応じた座標変換を導入することで、回転電機1に流れる三相の電流Iu、IvおよびIwが、d軸電流(以下、Idとも記す)とそれに直交するq軸電流(以下、Iqとも記す)に変換され、直流モータ的に各成分が独立して制御される。
電源2は、直流電圧を出力する直流電源である。電源2としては、例えばリチウムイオン電池などを用いることができる。インバータ3は、複数のスイッチング素子とこのスイッチング素子に逆接続されたダイオードとを含む三相インバータである。インバータ3は、制御装置100からの三相電圧指令値に基づいて電源2から入力される直流電圧を三相交流電圧に変換し、U相、V相、W相の三相出力で回転電機1を駆動する。
電圧検出器4は、電源2の出力電圧を検出する。電圧検出器4は、例えば電源の電圧を抵抗で分圧した電圧をオペアンプなどで構成された電圧検出回路で検出する。電圧検出器4で検出された電源電圧情報は、制御装置100に入力される。
電流検出器5は、回転電機1に流れる電流を検出する。具体的に電流検出器5は、U相電流Iu、V相電流Iv、W相電流Iwをそれぞれ検出するU相電流センサ、V相電流センサ、W相電流センサである。なお、各相の電流Iu、Iv、Iwの瞬時値の和は0であるので、電流検出器5は2相の電流(例えば、V相電流IvおよびW相電流Iw)を検出し、残りの1相の電流(例えば、U相電流Iu)を算出してもよい。電流検出器5で検出された各相の電流Iu、Iv、Iwに係る電流情報は、制御装置100に入力される。
位置検出器6は、回転電機1の回転軸の回転角θ(回転位置情報)を検出する。位置検出器6は、例えば、回転電機1の回転軸との磁気結合を用いて回転角θを高分解能で検出できるレゾルバおよび磁気式エンコーダ、光学式エンコーダなどが用いられる。検出された回転位置情報は、制御装置100に入力される。
制御装置100は、電圧検出器4、電流検出器5および位置検出器6からそれぞれ入力される電源電圧情報、電流情報および回転位置情報と外部機器から入力されるトルク指令値とに基づいて、回転電機1に重畳する電流の振幅、周波数に対する指令をインバータ3に出力する。制御装置100は、マイクロコンピュータ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのディジタル演算装置で構成されており、任意の時間間隔(一定時間間隔または可変時間間隔)でデータ入力、演算、データ出力を繰り返す機能を有する。
図1に示すように、本実施の形態の制御装置100は、基準電流指令生成部110、電流位相生成部120、電流指令生成部130、電圧指令生成部140および回転数演算部150を備えている。
基準電流指令生成部110は、上位の外部機器からトルク指令値が入力される。また、基準電流指令生成部110は、後述する回転数演算部150から回転電機1の回転数が入力される。上位の外部機器とは、例えば回転電機1が自動車の動力源として用いられている場合は、自動車の制御系のECU(Electronic Control Unit)などである。さらに、基準電流指令生成部110は、電圧検出器4から電源電圧が入力される。基準電流指令生成部110は、入力されたトルク指令値および回転数に基づいてId、Iqの基準電流指令値を出力する。
図3は、基準電流指令生成部110で用いられるId、Iqの基準電流指令マップの説明図である。図3(a)はIdの基準電流指令マップであり、図3(b)はIqの基準電流指令マップである。図3に示すように、それぞれの基準電流指令マップはトルク指令値と回転数とをそれぞれ軸とした二次元マップであり、トルク指令値と回転数とに応じて基準電流指令値が決められている。さらに、これらの基準電流指令マップは、電源電圧の電圧値毎に設定された複数のマップで構成されている。例えば基準電流指令マップは、5V間隔の電源電圧に対してそれぞれマップが設定されている。本実施の形態の制御装置100においては、回転電機1の電力損失とインバータ3の電力損失との合計が最小になるIdとIqとの組み合わせで基準電流指令マップが作成されている。この基準電流指令マップは、基準電流指令生成部110の内部または外部の記憶部に記憶されている。基準電流指令生成部110は、このId、Iqの基準電流指令マップを用いて、電源電圧、トルク指令値および回転数に基づいてId、Iqの基準電流指令値を出力する。なお、これ以降、基準電流指令生成部110が出力するd軸基準電流指令値、q軸基準電流指令値をそれぞれId_base、Iq_baseと記す。
電流位相生成部120は、上位の外部機器からトルク指令値が、回転数演算部150から回転電機1の回転数が入力される。また、電流位相生成部120は、電圧検出器4から電源電圧が、基準電流指令生成部110から基準電流指令値が入力される。電流位相生成部120は、入力されたデータに基づいて電流位相指令を出力する。なお、これ以降、電流位相生成部120が出力する電流位相指令をβと記す。
βを決定する方法には、関数を用いる方法、マップを用いる方法などがある。関数を用いる方法として、入力された回転数をパラメータとする関数を用いてβを算出する方法がある。マップを用いる方法として、入力された回転数と電源電圧とをそれぞれ軸とした二次元マップでβを決定する方法がある。このような関数を用いる方法またはマップを用いる方法では、回転電機1の回転周波数の特定の領域または複数の領域において、電力損失、トルク脈動、騒音、発熱の少なくとも1つが低減するように関数またはマップを設定してもよい。なお、これらの関数またはマップは、電流位相生成部120の内部または外部の記憶部に記憶されている。
関数を用いてβを決定する方法として、入力された基準電流指令値から次の(1)式を用いて基準電流指令値の電流位相βを算出し、算出された電流位相βと回転数とをパラメータとして電流位相指令βを算出する関数を設定してもよい。
Figure 0007267487000002
なお、電流位相生成部120は、複数の関数またはマップを備えていてもよい。そして、電流位相生成部120は、上位の外部機器から入力される、例えば効率最大モード、トルクリップル低減モード、騒音低減モード、発熱低減モードなどのモード識別信号に応じて複数の関数またはマップから電流位相指令βを算出する最適な関数またはマップを選択してもよい。
電流指令生成部130は、電圧指令生成部140が電流制御(ベクトル制御)を行うための電流指令値を出力する。電流指令生成部130は、基準電流指令生成部110から基準電流指令値Id_base、Iq_baseが、電流位相生成部120から電流位相指令βが、電圧検出器4がら電源電圧が入力される。電流指令生成部130は、入力された基準電流指令値および電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を電圧指令生成部140に出力する。なお、これ以降、d軸電流指令値をId、q軸電流指令値をIqをと記す。
図4は、本実施の形態1係る電流指令生成部の構成図である。図4に示すように、本実施の形態の電流指令生成部130は、第一磁束演算部131、基準トルク指令演算部132、電流指令補正演算部133、電流指令記憶部134および第二磁束演算部135を備えている。
第一磁束演算部131は、基準電流指令生成部110からd軸基準電流指令値Id_base、q軸基準電流指令値Iq_baseが入力される。第一磁束演算部131は、入力された基準電流指令値に基づいて、d軸基準磁束Φd_base、q軸基準磁束Φq_baseを演算し、その結果を基準トルク指令演算部132に出力する。第一磁束演算部131は、例えば電圧指令生成部140の電流制御演算(ベクトル制御演算)の非干渉補償演算で用いられる磁束マップを適用して基準電流指令値から基準磁束を演算することができる。なお、インダクタンスに電流指令値を掛け合わせれば磁束が得られるため、第一磁束演算部131は、磁束マップの替わりにインダクタンスマップを用いてもよい。
第二磁束演算部135は、後述する電流指令記憶部134から前回の電流指令値Id_old、Iq_oldが入力される。第二磁束演算部135は、入力された前回の電流指令値に基づいて、前回のd軸磁束Φd_old、前回のq軸磁束Φq_oldを演算し、その結果を電流指令補正演算部133に出力する。第二磁束演算部135は、第一磁束演算部131と同様に、電圧指令生成部140の電流制御演算の非干渉補償演算で用いられる磁束マップを適用して基準電流指令値から基準磁束を演算することができる。
第一磁束演算部131および第二磁束演算部135は、入力された電流指令値から磁束を演算するときに電圧指令生成部140の電流制御演算の非干渉補償演算で用いられる磁束マップを適用することができるので、磁束マップのための記憶容量の追加を抑制できる。
基準トルク指令演算部132は、基準電流指令生成部110からd軸基準電流指令値Id_base、q軸基準電流指令値Iq_baseが、第一磁束演算部131からd軸基準磁束Φd_base、q軸基準磁束Φq_baseが入力される。基準トルク指令演算部132は、次の(2)式を用いて基準電流指令値および基準磁束から基準トルク指令値T’を算出する。(2)式で算出される基準トルク指令値は、回転電機1の鉄損、機械損によるトルクロス補償分を含めた基準トルク指令値T’である。基準トルク指令演算部132は、算出した基準トルク指令値T’を電流指令補正演算部133に出力する。
Figure 0007267487000003
ここで、pは回転電機1の極対数である。図2に示す回転電機1ではp=4である。
電流指令補正演算部133は、電流位相生成部120から電流位相指令βが、基準トルク指令演算部132から基準トルク指令値T’が、第二磁束演算部135から前回のd軸磁束Φd_old、q軸磁束Φq_oldが入力される。電流指令補正演算部133は、次の(3)式、(4)式および(5)式を用いてId、Iqを算出する。
Figure 0007267487000004
Figure 0007267487000005
Figure 0007267487000006
ここで、Iは電流振幅である。
電流指令記憶部134は、電流指令補正演算部133から出力されたId、Iqを記憶する。そして、電流指令記憶部134は、すでに記憶されているId、Iqを前回の電流指令値Id_old、Iq_oldとして第二磁束演算部135に出力する。
(3)式に示すように、電流振幅は、トルクと電流位相と磁束との情報から求めることができる。しかし、回転電機の磁束はロータコアおよびステータコアが磁気飽和特性を有するため、d軸電流およびq軸電流が定まらないと磁束が算出できないという問題がある。その結果、Id、Iqが算出できないという問題がある。本実施の形態の制御装置においては、第二磁束演算部135で前回のd軸電流およびq軸電流から前回のd軸磁束Φd_oldおよびq軸磁束Φq_oldを算出している。そして、(3)式に示すように、前回のd軸磁束Φd_oldおよびq軸磁束Φq_oldを用いて電流振幅を算出しているので、Id、Iqの算出が可能となる。
なお、(2)式から(5)式は、トルク、磁束、電流および電流位相の関係から求めた式である。トルク、磁束、電流および電流位相の関係を表す式は、変形することによって様々な表現ができる。そのため、電流指令補正演算部133で用いられる式は、同様の結果が得られるのであれば、別の表現の式であってもよい。
電圧指令生成部140は、電流指令生成部130からd軸電流指令値Idおよびq軸電流指令値Iqが入力される。電圧指令生成部140は、Id、Iqに基づいてベクトル制御演算を行い、インバータ3に三相電圧指令値Vu、Vv、Vwを出力する。
電圧指令生成部140は、例えば、PID(Proportional-Integral -Differential Controller)要素で構成される演算部、電流座標変換部および電圧座標変換部を備える。電流座標変換部は、位置検出器6で検出された回転電機1のロータの回転角θに係る情報を用いて電流検出器5で検出された三相電流(Iu、Iv、Iw)を、d軸およびq軸の二次元の直交ベクトル座標系に座標変換して実d軸電流Idおよび実q軸電流Iqを算出する。演算部は、電流座標変換部で算出された実d軸電流Idおよび実q軸電流Iqを用いて、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを算出する。電圧座標変換部は、位置検出器6で検出される回転電機1のロータの回転角θに係る情報とId、Iqとを用いて、演算部で算出されたd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqを、三相の電圧指令値(Vu、Vv、Vw)にそれぞれ変換する。
回転数演算部150は、位置検出器6からの回転位置情報に基づいて回転電機1のロータの回転数を算出する。回転数演算部150は、例えば位置検出器6において異なる時間T1、T2で検出された回転位置情報の差を演算し、これをT2とT1との時間差で除算することで回転数を算出する。回転数演算部150は、算出した回転数を基準電流指令生成部110、電流位相生成部120および電圧指令生成部140に出力する。
図1に示したように、本実施の形態の回転電機の制御装置は、トルク指令値および回転電機の回転数に基づいてd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値を生成する基準電流指令生成部と、d軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値、トルク指令値、回転数並びに回転電機の電源電圧に基づいて電流位相指令を生成する電流位相生成部と、d軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値並びに電流位相生成部で生成された電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令生成部と、d軸電流指令値およびq軸電流指令値、回転数、回転電機の回転位置、並びに三相電流に基づいて三相電圧指令値を生成すると共に、インバータに三相電圧指令値を出力する電圧指令生成部とを備えている。
そして、図4に示したように、電流指令生成部は、d軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値からd軸基準磁束およびq軸基準磁束を演算する第一磁束演算部と、d軸基準磁束およびq軸基準磁束、並びにd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値に基づいて基準トルク指令値を演算する基準トルク指令演算部と、電流指令生成部で生成された前回のd軸電流指令値および前回のq軸電流指令値から前回のd軸磁束および前回のq軸磁束を演算する第二磁束演算部と、前回のd軸磁束および前回のq軸磁束、基準トルク指令値、並びに電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を演算する電流指令補正演算部とを備えている。
本実施の形態の回転電機の制御装置は、基準電流指令生成部において、Id、Iqの基準電流指令マップを用いd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値が生成される。また、電流位相生成部において、d軸基準電流指令値、q軸基準電流指令値、トルク指令値、回転数および回転電機の電源電圧に基づいて電流位相指令が生成される。そして、電流指令生成部において、d軸基準磁束、q軸基準磁束、d軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値に基づいて基準トルク指令値が生成されると共に、前回のd軸磁束、前回のq軸磁束、基準トルク指令値および電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値が演算される。
このように構成された回転電機の制御装置においては、前回の電流指令値を用いて前回の磁束を演算し、その前回の磁束と電流位相指令と基準トルク指令とを用いて電流指令値の振幅を算出しているので、効率優先とトルクリップル最小優先とで異なるマップを用意する必要がない。そのため、電源電圧に応じてそれぞれ1つのIdの基準電流指令マップとIqの基準電流指令マップとを用意するだけでよいので、ベクトル制御を行うためのマップを記憶するために必要な記憶容量を少なくすることができる。例えば、従来の回転電機の制御装置においては、Id、Iqにそれぞれ効率優先マップとトルクリップル最小優先マップとの2種類の計4つのマップを準備する必要があり、さらにそれぞれに電源電圧に応じた複数のマップが必要であった。これに対して本実施の形態の回転電機の制御装置においては、上記4つのマップの代わりに(2)式から(5)式を用いることでId、Iqにそれぞれ1種類の2つのマップを準備するだけでよく、さらにそれぞれに電源電圧に応じた複数のマップが必要となるだけである。その結果、本実施の形態の回転電機の制御装置は、マップの数を従来の半分にすることができる。
なお、(2)式から(5)式の演算においては、電流指令が連続的に変化することを仮定して、前回の電流指令値を用いて今回の電流指令値を算出するようにしている。このため、基準トルク指令値T’または電流位相指令βが不連続に変化すると、Id、Iqが不連続に変化する恐れがある。これを防ぐために、トルク指令値、基準電流指令値、電流位相指令が不連続に変化しないように、予め滑らかになるようにマップまたは関数を設定しておけばよい。または、電流指令補正演算部133は、(3)式から(5)式を用いて算出したId、Iqに対してフィルタ処理、変化率制限処理などを行ってId、Iqが不連続に変化することを抑制すればよい。
また、本実施の形態の回転電機の制御装置においては、電流位相生成部120が複数の関数またはマップを備えることができる。そのため、上位の外部機器から入力される、効率最大モード、トルクリップル低減モード、騒音低減モード、発熱低減モードなどのモード識別信号に応じて複数の関数またはマップの中から最適な関数またはマップを選択することができる。そのため、それらのモードに対応するために従来必要であった制御装置のハードウェアの設計変更が不要となる効果もある。
なお、制御装置100は、ハードウェアの一例を図5に示すように、プロセッサ101と記憶装置102から構成される。記憶装置102は、図示していないがランダムアクセスメモリなどの揮発性記憶装置と、フラッシュメモリなどの不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ101は、記憶装置102から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ101にプログラムが入力される。また、プロセッサ101は、演算結果などのデータを記憶装置102の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独でまたは様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
1 回転電機、2 電源、3 インバータ、4 電圧検出器、5 電流検出器、6 位置検出器、10 回転電機制御システム、11 ステータ、12 ロータ、13 ステータコア、14 コイル、15 コアバック、16 ティース、17 ロータコア、18 永久磁石、19 回転軸、20 磁石挿入孔、100 制御装置、101 プロセッサ、102 記憶装置、110 基準電流指令生成部、120 電流位相生成部、130 電流指令生成部、131 第一磁束演算部、132 基準トルク指令演算部、133 電流指令補正演算部、134 電流指令記憶部、135 第二磁束演算部、140 電圧指令生成部、150 回転数演算部。

Claims (8)

  1. インバータからの三相電流で駆動される回転電機の制御装置であって、
    トルク指令値および前記回転電機の回転数に基づいてd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値を生成する基準電流指令生成部と、
    前記基準電流指令生成部で生成された前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値、前記トルク指令値、前記回転数並びに前記回転電機の電源電圧に基づいて電流位相指令を生成する電流位相生成部と、
    前記基準電流指令生成部で生成された前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値並びに前記電流位相生成部で生成された前記電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令生成部と、
    前記電流指令生成部で生成された前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値、前記回転数、前記回転電機の回転位置、並びに前記三相電流に基づいて三相電圧指令値を生成すると共に、前記インバータに前記三相電圧指令値を出力する電圧指令生成部とを備え、
    前記電流指令生成部は、前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値からd軸基準磁束およびq軸基準磁束を演算する第一磁束演算部と、
    前記第一磁束演算部で演算された前記d軸基準磁束および前記q軸基準磁束、並びに前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値に基づいて基準トルク指令値を演算する基準トルク指令演算部と、
    前記電流指令生成部で生成された前回のd軸電流指令値および前回のq軸電流指令値から前回のd軸磁束および前回のq軸磁束を演算する第二磁束演算部と、
    前記第二磁束演算部で演算された前記前回のd軸磁束および前記前回のq軸磁束、前記基準トルク指令演算部で演算された前記基準トルク指令値、並びに前記電流位相指令に基づいて、前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値を演算する電流指令補正演算部とを備えたことを特徴とする回転電機の制御装置。
  2. 前記電流位相生成部は、前記d軸基準電流指令値、前記q軸基準電流指令値、前記回転数および前記回転電機の電源電圧をパラメータとする関数を用いて前記電流位相指令を算出することを特徴とする請求項1に記載の回転電機の制御装置。
  3. 前記電流位相生成部は前記関数を複数備え、入力されたモード識別信号に応じて複数の前記関数の中から1つの関数を選択することを特徴とする請求項2に記載の回転電機の制御装置。
  4. 前記電流指令補正演算部は、演算した前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に対してフィルタ処理または変化率制限処理を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
  5. インバータからの三相電流で駆動される回転電機の制御方法であって、
    トルク指令値および前記回転電機の回転数に基づいてd軸基準電流指令値およびq軸基準電流指令値を生成する基準電流指令生成ステップと、
    前記基準電流指令生成ステップで生成された前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値、前記トルク指令値、前記回転数並びに前記回転電機の電源電圧に基づいて電流位相指令を生成する電流位相生成ステップと、
    前記基準電流指令生成ステップで生成された前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値並びに前記電流位相生成ステップで生成された前記電流位相指令に基づいてd軸電流指令値およびq軸電流指令値を生成する電流指令生成ステップと、
    前記電流指令生成ステップで生成された前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値、前記回転数、前記回転電機の回転位置、並びに前記三相電流に基づいて三相電圧指令値を生成すると共に、前記インバータに前記三相電圧指令値を出力する電圧指令生成ステップとを備え、
    前記電流指令生成ステップは、前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値からd軸基準磁束およびq軸基準磁束を演算する第一磁束演算ステップと、
    前記第一磁束演算ステップで演算された前記d軸基準磁束および前記q軸基準磁束、並びに前記d軸基準電流指令値および前記q軸基準電流指令値に基づいて基準トルク指令値を演算する基準トルク指令演算ステップと、
    前記電流指令生成ステップで生成された前回のd軸電流指令値および前回のq軸電流指令値から前回のd軸磁束および前回のq軸磁束を演算する第二磁束演算ステップと、
    前記第二磁束演算ステップで演算された前記前回のd軸磁束および前記前回のq軸磁束、前記基準トルク指令演算ステップで演算された前記基準トルク指令値、並びに前記電流位相指令に基づいて、前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値を演算する電流指令補正演算ステップとを備えたことを特徴とする回転電機の制御方法。
  6. 前記電流位相生成ステップは、前記d軸基準電流指令値、前記q軸基準電流指令値、前記回転数および前記回転電機の電源電圧をパラメータとする関数を用いて前記電流位相指令を算出することを特徴とする請求項5に記載の回転電機の制御方法。
  7. 前記電流位相生成ステップは前記関数を複数備え、入力されたモード識別信号に応じて複数の前記関数の中から1つの関数を選択することを特徴とする請求項6に記載の回転電機の制御方法。
  8. 前記電流指令補正演算ステップは、演算した前記d軸電流指令値および前記q軸電流指令値に対してフィルタ処理または変化率制限処理を行うことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の回転電機の制御方法。
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