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JP7265354B2 - 立毛人工皮革及びそれを用いたコンポジット材 - Google Patents

立毛人工皮革及びそれを用いたコンポジット材 Download PDF

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Description

本発明は高いレベルの難燃性と優れた表面高級感とを兼ね備えた立毛人工皮革に関する。
従来から、極細繊維の不織布等の繊維絡合体にポリウレタンを含浸付与した人工皮革生機の一面を起毛して得られる、スエード皮革のような外観を有する立毛人工皮革が知られている。立毛人工皮革は、靴,衣料,手袋,鞄,ボール等の素材や、建造物や車輌の内装材として用いられている。立毛人工皮革は、スエード皮革のような天然皮革に比べて、品質安定性,耐熱性,耐水性,耐摩耗性に優れ、また、手入れもしやすい等の長所がある。
ところで近年、航空機,船舶,鉄道車輌等の公共輸送機の内装材や、ホテル,デパート等の公共建造物の内装材として、人工皮革等の皮革様シートを用いた内装材が採用されている。公共の場で用いられる内装材には、火災時の安全性を確保するために、高いレベルの、自消性,低発煙性,低発熱性などの難燃性が要求される。このような難燃性の要求をクリアするために、従来、内装材に高い難燃化性能を有するハロゲン系難燃剤を配合することが広く行われていた。しかし、ハロゲン系難燃剤は燃焼時に有毒なハロゲンガスを発生するために、ハロゲン系難燃剤の不使用が環境に関する公的団体やユーザーにより推奨されている。例えば、下記特許文献1~3は、皮革様シートを難燃化するために、リン系難燃剤や金属水酸化物系難燃剤を使用する技術を開示する。
特開昭56-050985号公報 特開2009-235628号公報 特開2013-227685号公報
繊度1dtex未満の極細繊維の繊維絡合体の内部の空隙にポリウレタンを含浸付与して得られる立毛人工皮革は、レギュラー繊維とも称される1~5dtex程度の繊維の編織物を基材とする立毛人工皮革に比べると、表面タッチがスムースで高級感に優れる。しかし、極細繊維を含む立毛人工皮革はレギュラー繊維を含む立毛人工皮革よりも繊維の表面積が大きくなるために難燃性が低かった。また、極細繊維を含む立毛人工皮革にハロゲン系難燃剤を使用せずに高いレベルの難燃性を付与することは難しかった。非ハロゲン系難燃剤としてはリン系難燃剤が挙げられる、具体的には、例えば、ポリリン酸金属塩,ポリリン酸アンモニウム,ポリリン酸カルバメート等のポリリン酸無機塩,リン酸グアニジン等のリン酸塩等のリン系難燃剤が挙げられる。しかし、これらのポリリン酸無機塩やリン酸塩は、水溶解度が比較的高いために使用環境における湿気や水、熱により難燃剤が膨潤したり溶解したり、難燃剤を付与した後の乾燥処理においてブリードしたりする。難燃剤が膨潤したり溶解したりブリードしたりすることにより、難燃剤が主面である立毛面を白化させたり着色させたりして立毛人工皮革の表面高級感が損なわれることがあった。また、芳香族含有リン酸エステルや、脂肪族ホスホン酸エステル,脂肪族環式ホスホン酸エステル等の脂肪族リン酸エステル等は、水溶解度が比較的低いが、難燃化の効果が不充分であったり、立毛人工皮革の風合いを損なったり、ブリード等を起こしやすかったりした。
本発明は、極細繊維の繊維絡合体を含む立毛人工皮革において、表面高級感を損なわずに、非ハロゲン系難燃剤を用いて高いレベルの難燃性を付与した立毛人工皮革を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と、繊維絡合体に含浸付与された、ポリウレタン及びリン系難燃剤粒子と、を含み、極細繊維を立毛させた立毛面である主面を有する厚さ0.25~1.5mmの立毛人工皮革であって、ポリウレタンは、厚さ断面全体に存在する第1のポリウレタンと、主面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在する第2のポリウレタンと、を含み、リン系難燃剤粒子の90~100質量%が、第2のポリウレタンに付着しており、第1のポリウレタンは、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、高分子ポリオールは60質量%以上がポリカーボネートポリオールであって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6.5以下であり、有機ポリイソシアネートが、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリウレタンを含み、リン系難燃剤粒子は、平均粒子径0.1~30μm、リン原子含有率が14質量%以上、30℃の水に対する溶解度が0.2質量%以下、融点または融点が存在しない場合には分解温度が150℃以上であり、立毛人工皮革中の、リン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算含有割合で1~6質量%である立毛人工皮革である。このような構成によれば、極細繊維の繊維絡合体を含む立毛人工皮革において、表面高級感を損なわずに、非ハロゲン系難燃剤を用いて高いレベルの難燃性を付与した立毛人工皮革を得ることができる。
ン系難燃剤粒子の90~100質量%が厚さ200μm以下の範囲に存在することにより、表面高級感を損なわない。
また、リン系難燃剤粒子と第1のポリウレタンと第2のポリウレタンとの総量中のリン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算で5~20質量%であることが、ポリウレタンによる難燃性の低下を充分に抑制できる点から好ましい。
また、ポリウレタンは厚さ断面全体に存在する第1のポリウレタンと、厚さ200μm以下の範囲に偏在する第2のポリウレタンとを含み、リン系難燃剤粒子が第2のポリウレタンに付着していることにより、リン系難燃剤粒子を厚さ200μm以下の範囲に偏在させることができる。
また、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとの総量中のリン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算で10~30質量%であることが、第2のポリウレタンによる難燃性低下の影響が小さい点から好ましい。
上述したリン系難燃剤粒子としては、有機ホスフィン酸金属塩,芳香族ホスホン酸エステル,及びリン酸エステルアミドがとくに好ましい。
本発明によれば、極細繊維の繊維絡合体を含む立毛人工皮革において、表面高級感を損なわずに、非ハロゲン系難燃剤を用いて高いレベルの難燃性を付与した立毛人工皮革が得られる。
本実施形態の立毛人工皮革は、繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と、繊維絡合体に含浸付与されたポリウレタンとを含み、極細繊維を立毛させた立毛面である主面を有する厚さ0.25~1.5mmの立毛人工皮革であって、主面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在するポリウレタンに付着したリン系難燃剤粒子をさらに含み、ポリウレタンは、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、高分子ポリオールは60質量%以上がポリカーボネートポリオールであって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6.5以下であり、有機ポリイソシアネートが、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、第1のポリウレタンを含み、リン系難燃剤粒子は、平均粒子径0.1~30μm、リン原子含有率が14質量%以上、30℃の水に対する溶解度が0.2質量%以下、融点または融点が存在しない場合には分解温度が150℃以上であり、リン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算含有割合で1~6質量%である立毛人工皮革である。
本実施形態の立毛人工皮革は、例えば、繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体に含浸付与された第1のポリウレタンを含み、極細繊維を立毛させた立毛面である主面を有する厚さ0.25~1.5mmの立毛人工皮革の生機の主面に対する裏面に、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとを含む樹脂液を裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在させるように難燃化処理することにより得られる。
繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体としては、繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む不織布,織物,編物等の繊維構造体が挙げられる。これらの中では、極細繊維の不織布が、均質性が高くなるために、しなやかさと充実感に優れた立毛人工皮革が得られる点から特に好ましい。本実施形態では、極細繊維の繊維絡合体として、極細繊維の不織布について、代表例として詳しく説明する。
極細繊維の不織布の製造方法としては、例えば、海島型複合繊維を溶融紡糸してウェブを製造し、ウェブを絡合処理した後、海島型複合繊維から海成分を選択的に除去して極細繊維を形成するような方法が挙げられる。ウェブを製造する方法としては、スパンボンド法などにより紡糸した長繊維の海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維ウェブを形成する方法や、長繊維をステープルにカットして短繊維ウェブを形成する方法が挙げられる。これらの中では、緻密さ及び充実感に優れている点から長繊維ウェブが特に好ましい。また、形成されたウェブには形態安定性を付与するために融着処理を施してもよい。絡合処理としては、例えば、ウェブを5~100枚程度重ね、ニードルパンチや高圧水流処理する方法が挙げられる。また、海島型複合繊維の海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、水蒸気による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施すことにより、海島型複合繊維を緻密化して充実感を向上させることができる。
本実施形態においては、海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明するが、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維を用いても、また、極細繊維発生型繊維を用いずに、直接極細繊維を紡糸して不織布を製造してもよい。なお、海島型複合繊維以外の極細繊維発生型繊維の具体例としては、紡糸直後に複数の極細繊維が軽く接着されて形成され、機械的操作により解きほぐされることにより複数の極細繊維が形成されるような剥離分割型繊維や、溶融紡糸工程において花弁状に複数の樹脂を交互に集合させてなる花弁型繊維のような、極細繊維を形成しうる繊維であれば特に限定されずに用いられる。
海島型複合繊維の、極細繊維を形成する島成分の樹脂は、特に限定されない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ポリアミド6,ポリアミド66,ポリアミド10,ポリアミド11,ポリアミド12,ポリアミド6-12等のポリアミド;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、PETまたは変性PET,ポリ乳酸,ポリアミド6,ポリアミド12,ポリアミド6-12,ポリプロピレン等が好ましい。
また、海島型複合繊維を形成する海成分の樹脂としては、島成分の樹脂とは溶剤に対する溶解性または分解剤に対する分解性を異にする樹脂が選ばれる。海成分を構成する熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレンプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンエチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、などが挙げられる。
海島型複合繊維の海成分は、ウェブを形成させた後の適当な段階で溶解または分解して除去される。このような分解除去または溶解抽出除去により海島型複合繊維が極細繊維化されて、繊維束状の極細繊維が形成される。
極細繊維の繊度は0.5dtex以下である。さらには0.001~0.4dtex、とくには0.01~0.3dtexであることが好ましい。繊度が0.5dtexを超える場合には立毛面の高級感が低下しやすい。なお、繊度は、立毛人工皮革の厚み方向の断面を走査型顕微鏡で倍率2000倍で撮影し、単繊維の断面積を求め、その断面積と繊維を形成する樹脂の比重から、一つの単繊維の繊度を算出することができる。繊度は、撮影像から万遍なく求めた平均的な100個の単繊維の繊度の平均値と定義することができる。
第1のポリウレタンは不織布の全体に万遍なく付与される。第1のポリウレタンは、極細繊維を拘束することにより繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体に形態安定性を付与したり、立毛面に高級感を付与したりする。なお、ポリウレタンは極細繊維よりも燃えやすい傾向がある。本実施形態の立毛人工皮革においては、裏面側に難燃剤を付与することにより難燃剤の付与による立毛面である主面の外観等への影響を抑制できる。一方で、ポリウレタンとして、特定のポリウレタンを用いることにより、立毛面である主面の難燃性も向上させることができる。
ポリウレタンは、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、高分子ポリオールは60質量%以上がポリカーボネートポリオールであって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6.5以下であり、有機ポリイソシアネートが、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、第1のポリウレタンを含む。このような第1のポリウレタンは、自消性に優れ、発熱量や発煙量が小さく、高いレベルの難燃性を発現する。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンカーボネートジオール等のポリカーボネートポリオールおよびそれらの共重合体が挙げられる。
また、高分子ポリオールとしては、その40質量%を超えない範囲で、ポリカーボネート系ポリオール以外の高分子ポリオールを含んでもよい。ポリカーボネート系ポリオール以外の高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテルポリオールおよびその共重合体;ポリエチレンアジペートジオール、ポリ1,2-プロピレンアジペートジオール、ポリ1,3-プロピレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール,ポリブチレンセバケートジオール,ポリヘキサメチレンアジペートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンアジペート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンタンセバケート)ジオール,ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステルポリオールおよびその共重合体;炭素数6.5以上のポリカーボネートポリオール;ポリエステルカーボネートポリオール等が挙げられる。また、3官能アルコールや4官能アルコールなどの多官能アルコールやエチレングリコール等の短鎖アルコールを用いてもよい。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1のポリウレタンの製造に用いられる高分子ポリオールは、60質量%以上がポリカーボネートポリオールであって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6.5以下である。
第1のポリウレタンの製造に用いられる高分子ポリオールに含まれるポリカーボネートの質量比率は60質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましい。高分子ポリオールに含まれるポリカーボネートの質量比率が60質量%未満の場合には発熱量や発煙量が大きくなる。
また、ポリウレタンの製造に用いられる高分子ポリオールの反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数は6.5以下であり、6.0以下であることが好ましい。高分子ポリオールの反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6.5を超える場合にも発熱量や発煙量が大きくなる。ここで、高分子ポリオールの反応性官能基を除いた平均炭素数とは、カーボネート基(-OCOO-)、エステル基(-COO-)、エーテル基(-O-)などの高分子ポリオール化反応における反応性官能基を除いた炭化水素数の炭素数と定義される。また、2種以上の高分子ポリオールを用いた場合の反応性官能基を除いた平均炭素数は、2種以上のカーボネート基、エステル基、エーテル基などの反応性官能基を除いた炭化水素数の炭素数の平均値を算出した値とする。
高分子ポリオールの分子量は特に限定されないが、例えば、平均分子量200~6000程度である。
また、第1のポリウレタンの製造に用いられる有機ポリイソシアネートは、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。また、有機ポリイソシアネートの60質量%以上、さらには70質量%以上、とくには80質量%以上が4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが自消性に優れ、また、発熱量や発煙量が小さくなる点から好ましい。
また、第1のポリウレタンの製造に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートに加えて、他の有機イソシアネートを併用してもよい。このような有機イソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート,2,6-トリレンジイソシアネート,キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能イソシアネートや4官能イソシアネートなどの多官能イソシアネートやブロック化した多官能イソシアネートを併用してもよい。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第1のポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびその誘導体,アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4-シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール,アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン,ピペラジン,エチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,イソホロンジアミンおよびその誘導体,ジエチレントリアミンなどのトリアミン、エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオールおよびその誘導体の中から2種以上組み合わせて用いることが機械的特性に優れる点から好ましい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン,プロピルアミン,ブチルアミンなどのモノアミン類;4-アミノブタン酸,6-アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。中でも、自消性に優れ、発熱量や発煙量が小さいことから、反応性官能基を除いた炭素数が6以下であることが好ましい。
また、ポリウレタンの吸水率や繊維との接着性や硬さを制御するために、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤、例えば、カルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、或いは、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物を添加することにより架橋構造を形成しても良い。
ポリウレタンのエマルジョンとしては、ポリウレタン骨格にイオン性基を有さず乳化剤を添加してエマルジョン化された強制乳化型ポリウレタンエマルジョンや、ポリウレタン骨格にカルボキシル基,スルホン酸基,アンモニウム基などのイオン性基を有し、自己乳化によりエマルジョン化された自己乳化型ポリウレタンエマルジョンや、乳化剤とポリウレタン骨格のイオン性基を併用したポリウレタンエマルジョンが挙げられる。例えば、ポリウレタン骨格にカルボキシル基を導入するためには、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオール等の単位をポリウレタン骨格に組み込む方法が挙げられる。
第1のポリウレタンは、100%モジュラスが0.5~7MPa、さらには、1~5MPaであることが、しなやかな風合いが得られ、スムースな表面タッチや表面物性を付与できる点から好ましい。100%モジュラスが低すぎる場合には熱を受けた場合に軟化して極細繊維を拘束することによりしなやかな風合いやスムースな表面タッチが低下する傾向がある。また、100%モジュラスが高すぎる場合にはスムースな表面タッチが低下したり、風合いが硬くなったりする傾向がある。
第1のポリウレタンは、例えば、極細繊維を形成するための海島型複合繊維等の極細繊維発生型繊維の繊維絡合体、または、極細繊維の繊維絡合体に、ポリウレタンエマルジョン等のポリウレタンのエマルジョンやポリウレタン溶液を含浸した後、凝固させることにより、繊維絡合体に付与される。繊維絡合体に第1のポリウレタンのエマルジョンや溶液を含浸させる方法としては、ナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターを用いる方法や、ディッピングする方法が挙げられる。また、エマルジョンを用いる場合には、50~200℃の乾燥装置中で熱処理する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で熱処理する方法、スチーム処理した後に乾燥機で熱処理する方法、或いは、超音波加熱の後に乾燥機で熱処理する方法、並びに、これらを組み合わせた方法によりポリウレタンを凝固させることができる。
ポリウレタンのエマルジョンとしては、自己乳化型ポリウレタンと強制乳化ポリウレタンを併用し、例えば、自己乳化型ポリウレタン20~100質量%と強制乳化ポリウレタン0~80質量%とを含むポリウレタンエマルジョンを用いるのも、しなやかな風合いが得られる点から好ましい。また、ポリウレタンのエマルジョンの分散平均粒子径としては、0.01~1μm、さらには、0.03~0.5μmであることが好ましい。
繊維絡合体にポリウレタンのエマルジョンを含浸させた後、乾燥する場合、繊維絡合体の表層にエマルジョンがマイグレーションすることにより、厚み方向に均一に付与しにくくなることがある。このような場合には、エマルジョンの分散粒子径を調整したり、ポリウレタンのイオン性基の種類や量を調整したり、40~100℃程度の温度によってpHが変わるアンモニウム塩を添加して水分散安定性を低下させたり、1価または2価のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ノニオン系乳化剤、会合型水溶性増粘剤、水溶性シリコーン系化合物などの会合型感熱ゲル化剤、または、水溶性ポリウレタン系化合物を添加して、水分散安定性を低下させたりすることによりマイグレーションを抑制することができる。
立毛人工皮革に含まれる第1のポリウレタンの割合は、3~50質量%、さらには5~40質量%、とくには7~35質量%であることが、高い難燃性と表面高級感や形態安定性や表面物性とのバランスに優れる点から好ましい。
第1のポリウレタンを含有する繊維絡合体は、必要に応じて、湿熱収縮処理されたり、プレス処理されたりして、見掛け密度や目付や厚さが調整されて人工皮革の生機に仕上げられる。そして、人工皮革の生機は、必要に応じてスライス処理される。そして、人工皮革の生機の少なくとも一面をコンタクトバフやエメリーバフなどでバフィング処理することにより、立毛面を有する立毛人工皮革の生機が製造される。バフィングは、例えば、120~600番手程度のサンドペーパーやエメリーペーパーを用いて行うことが好ましい。このようにしてバフィングされた面の繊維を起毛して極細繊維を立毛させた立毛面を有する立毛人工皮革の生機が製造される。立毛人工皮革の生機は、さらに必要に応じて、染色処理、揉み柔軟化処理、空打ち柔軟化処理、逆シールのブラッシング処理、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理等の仕上げ処理が施されてもよい。
立毛人工皮革の生機の厚さは、最終的に得られる立毛人工皮革の厚さにほぼ等しい。立毛人工皮革の生機の厚さは、具体的には、0.25~1.5mmであり、好ましくは0.3~1.0mm、さらに好ましくは0.4~1.0mmである。立毛人工皮革の生機の厚さが1.5mmを超える場合には、充分な難燃性の効果が得られにくくなる。
本実施形態の立毛人工皮革は、上述した、厚さ0.25~1.5mmの立毛人工皮革の生機の主面の立毛面に対する裏面に、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとを含む樹脂液を裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在させるように付与する処理である難燃化処理を施すことにより得られる。ここで、本実施形態の立毛人工皮革において、リン系難燃剤粒子が主面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在するとは、立毛人工皮革に存在するリン系難燃剤粒子の大部分、具体的には、リン系難燃剤粒子の90~100質量%、さらには95~100質量%が、主面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に存在することを意味する。リン系難燃剤粒子の偏在する主面に対する裏面からの厚さとしては、50~200μm、さらには、70~180μm、とくには100~150μmであることが好ましい。立毛人工皮革のリン系難燃剤粒子の偏在する領域の厚さは、立毛人工皮革の厚さ方向に平行な方向の断面を、走査型電子顕微鏡で観察することによって確認される。
このようにして立毛人工皮革の主面の立毛面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に、リン系難燃剤粒子の含有割合がリン原子換算含有割合で1~6質量%になるように、リン系難燃剤粒子を偏在させることにより、表面高級感を損なわずに、非ハロゲン系難燃剤を用いて高いレベルの難燃性を付与することができる。
主面の立毛面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在するリン系難燃剤粒子の、立毛人工皮革中における含有割合は、リン原子換算で1~6質量%であり、好ましくは1.5~5.5質量%である。立毛人工皮革中におけるリン系難燃剤粒子のリン原子換算の含有割合が1質量%未満の場合には高いレベルの難燃性が得られなくなる。また、立毛人工皮革中におけるリン系難燃剤粒子のリン原子換算の含有割合が6質量%を超える場合には、リン系難燃剤粒子を裏面から厚さ200μm以下の範囲に脱落させることなく固定して偏在させることが困難になり、また、立毛人工皮革のしなやかさが失われたり、表面高級感が低下したりする。
また、本実施形態の立毛人工皮革に含まれるリン系難燃剤粒子は、平均粒子径0.5~30μm、リン原子含有率が14質量%以上、30℃の水に対する溶解度が0.2質量%以下、融点または融点が存在しない場合には分解温度が150℃以上である、室温で粒子状の固体であるリン原子を含有する難燃性化合物である。
リン系難燃剤粒子の平均粒子径は0.1~30μmであり、0.5~10μm、さらには1~5μmであることが好ましい。平均粒子径が30μmを超える場合には立毛人工皮革の裏面から厚さ200μm以下の範囲に、リン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算含有割合で1~6質量%になるように充分に侵入させにくくなり、難燃性の効果が不充分になる傾向がある。また、平均粒子径が0.5μm未満である場合は、粒子が凝集しやすくなって不均一に分散することにより難燃性に斑を生じやすくなる。
また、リン系難燃剤粒子のリン原子含有率は14質量%以上であり、15質量%以上、さらには20質量%以上であることが好ましい。リン系難燃剤粒子のリン原子含有率が14質量%未満の場合には、高いレベルの難燃性を付与しにくくなる。
また、リン系難燃剤粒子は、30℃の水に対する溶解度が0.2質量%以下であり、0.15質量%以下であることが好ましい。30℃の水に対する溶解度が0.2質量%を超えるリン系難燃剤粒子を用いた場合には、製造時や使用時に吸湿したり水濡れした場合に、立毛面にブリードしたりしやすくなる。
また、リン系難燃剤粒子としては、90℃の熱水に対する熱水溶解度が5質量%以下、さらには3質量%以下であることが、製造時や使用時に熱水に接した場合にも、立毛面にブリードしにくかったり、吸湿による寸法変化がしにくかったりする点から好ましい。
また、リン系難燃剤粒子は、融点または融点が存在しない場合には分解温度が150℃以上、好ましくは200℃以上である、室温で粒子状の固体である。融点または融点が存在しない場合には分解温度が150℃未満である場合には、難燃剤を処理した後の乾燥等で軟化、固化して粒子状の形態でなくなり、極細繊維を集束して、表面タッチや風合いを損ないやすい。また、燃焼過程で溶融ドロップしやすくなって、高いレベルの難燃性を付与しにくくなる。ここで、リン系難燃剤粒子の融点は、熱重量示差熱分析(TG-DTA)、または示差走査熱量計分析(DSC)の融解ピーク温度によって特定される。また、融点が存在しない場合の熱分解温度は、熱重量示差熱分析(TG-DTA)による分解開始温度によって特定される。測定条件は、特に限定されないが、窒素雰囲気下にて昇温速度5~10℃/分で測定を行う。
上述したようなリン系難燃剤粒子としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸金属塩,モノアルキルホスフィン酸金属塩等の有機ホスフィン酸金属塩;芳香族ホスホン酸エステル;リン酸エステルアミド等から選択される。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ジアルキルホスフィン酸金属塩またはモノアルキルホスフィン酸金属塩が、耐水性及び耐熱性が高く、リン原子含有率が高く、難燃効果が高い点から好ましい。
本実施形態の立毛人工皮革に含まれるリン系難燃剤粒子を固着するために用いられる第2のポリウレタンは、上述した第1のポリウレタンと同じものであっても異なるものであってもよい。また、第2のポリウレタンは、100%モジュラスが0.5~5MPa、さらには、1~4MPaであることが、しなやかな風合いが得られ、難燃剤の脱落を防止できる点から好ましい。
上述した、厚さ0.25~1.5mmの立毛人工皮革の生機の主面の立毛面に対する裏面に、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとを含む樹脂液を裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在させるように付与する難燃化処理する方法は特に限定されない。具体的には、立毛人工皮革の生機の主面の立毛面に対する裏面に、例えば、グラビアコート、ダイレクトコート、ロールコート、スプレーコートにより、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとを含む処理液を塗布量や粘度を調整しながら塗布し、乾燥する方法が挙げられる。
リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとを含む処理液の粘度としては、200~10000mPa・sec、さらには500~5000mPa・secであることが、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとを立毛人工皮革の生機の裏面から適度に沈み込ませて厚さ200μm以下の範囲に偏在させやすく、それにより、主面である立毛面の高級感を損なわずに、高い難燃性を付与することができる点から好ましい。
第2のポリウレタンを含む樹脂液としては、例えば、第2のポリウレタンのエマルジョンであるポリウレタンのエマルジョンにリン系難燃剤粒子を分散して調製されたリン系難燃剤粒子を含有するポリウレタンエマルジョンが好ましく用いられる。ポリウレタンのエマルジョンの場合、エマルジョンの平均粒子径としては、10μm以下、さらには5μmであることが好ましい。また、樹脂液の乾燥温度は特に限定されないが、通常、100~160℃であることが好ましい。
リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとの総量中のリン系難燃剤粒子の含有割合は、リン原子換算で10~30質量%、さらには、12~30質量%、とくには15~25質量%であることが好ましい。リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとの総量中のリン系難燃剤粒子の含有割合が上記割合の場合には、第2のポリウレタンの燃焼による難燃性低下の影響が小さい点から好ましい。
また、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンとの総量中のリン系難燃剤粒子の含有割合は、リン原子換算で10~30質量%の範囲であって、且つ、リン系難燃剤粒子の質量として、60~90質量%、さらには、70~85質量%であることが好ましい。
また、立毛人工皮革中に含まれる第2のポリウレタンの割合は、特に限定されないが、2~15質量%、さらには4~10質量%であることが、第2のポリウレタンによる難燃性の低下を小さくしながら、リン系難燃剤粒子を充分に固定できる点から好ましい。
ポリウレタンは、極細繊維が海島型複合繊維に由来する繊維束を形成している場合には、繊維束の内部に含浸していても、繊維束の外部に付着していてもよい。海島型複合繊維を極細繊維化処理した場合、海島型複合繊維から海成分の熱可塑性樹脂が除去されて極細繊維束の内部に空隙が形成される。そのために、海島型複合繊維を極細繊維化処理した後に付与される第2のポリウレタンは、繊維束の内部に含浸して繊維束を形成する極細繊維を拘束しやすい。そのために、極細繊維束内に含浸した第2のポリウレタンは、極細繊維束を拘束して繊維絡合体の形態保持性を向上させることに寄与する。
立毛人工皮革中に含まれる第1のポリウレタン及び第2のポリウレタンを含むポリウレタンの総量の割合としては、特に限定されないが、2~40質量%、さらには5~35質量%であることが、ポリウレタンの燃焼による難燃性の低下の影響を小さできる点から好ましい。
また、リン系難燃剤粒子と第1のポリウレタン及び第2のポリウレタンを含むポリウレタンとの総量中のリン系難燃剤粒子の含有割合は、リン原子換算で5~20質量%であることが好ましく、さらには6~20質量%であることが難燃性と立毛人工皮革のしなやかさとのバランスに優れる点から好ましい。
立毛人工皮革に含有される第1のポリウレタンと第2のポリウレタンを含むポリウレタンの合計目付としては、10~150g/m2、さらには10~100g/m2、とくには10~50g/m2であることが自消性と表面高級感とのバランスにとくに優れる立毛人工皮革が得られる点から好ましい。
立毛人工皮革には、表面の平滑性を向上させながら表面タッチをスムースにすることを目的として、柔軟加工を施してもよい。柔軟加工としては、例えば、立毛人工皮革を弾性体シートに密着させてタテ方向(製造ラインのMD)に機械的に収縮させ、その収縮状態で熱処理してヒートセットする方法が挙げられる。
このようにして得られる本実施形態の立毛人工皮革は、目付が150~600g/m2であり、さらには170~400g/m2、であることが、高い難燃性を充分に維持し、リン系難燃剤粒子が立毛面の外観や触感に影響を与えにくく、表面高級感をより低下させにくい点から好ましい。
また、立毛人工皮革の厚さは0.25~1.5mmであり、好ましくは0.3~1.0mm、さらに好ましくは0.4~1.0mmである。立毛人工皮革の厚さが0.25mm未満の場合には、表面に難燃剤が露出しやすくなって表面の品位、タッチが低下する。また、立毛人工皮革の厚さが1.5mmを超える場合には、難燃性が低下する。
また、立毛人工皮革の見かけ密度は、特に限定されないが、0.25~0.75g/cm3、さらには0.35~0.65g/cm3であることが表面の繊維密度が高く、表面の立毛感や表面タッチが良好である点から好ましい。
本実施形態の立毛人工皮革は、例えば、立毛人工皮革と内装下地材(裏ボード)とをコンポジット用の接着剤で貼り合せた壁装材として好ましく用いられる。内装下地材の具体例としては、例えば、コンクリート,れんが,瓦,陶磁器質タイル,繊維強化セメント板,ガラス繊維混入セメント板,ケイ酸カルシウム板,鉄鋼,アルミニウム,金属板,ガラス,モルタル,しっくい,石,石膏ボード,ロックウール,グラスウール板,木毛セメント板,硬質木毛セメント板,木毛セメント板,パルプセメント板,難燃合板などが挙げられる。これらの中では、立毛人工皮革との組み合わせにおいて燃焼性が抑えられる点から、コンクリート,れんが,瓦,陶磁器質タイル,繊維強化セメント板,ガラス繊維混入セメント板,ケイ酸カルシウム板,鉄鋼,アルミニウム,金属板,ガラスが好ましい。
また、コンポジット用の接着剤としては、例えば、デンプン系,(アルキル)セルロース系,酢酸ビニル系,エチレン酢酸ビニル系,アクリル樹脂系,ポリウレタン系,クロロプレン系,フェノール系,ニトリル系,エステル系,シリコーン系,フッ素系及びこれらの共重合体や混合体、或いは金属塩や水酸化物などの金属化合物を混合した接着剤が挙げられる。これらの中では、立毛人工皮革との組み合わせにおいて燃焼性が抑えられる点から、デンプン系,(アルキル)セルロース系,酢酸ビニル系,クロロプレン系,フェノール系,ニトリル系,フッ素系,シリコーン系及びこれらの共重合体や混合体、金属塩や水酸化物を混合した接着剤が挙げられる。
立毛人工皮革の裏面に内装下地材を接着剤で接着してなるコンポジット材の難燃性は、ISO5660-1のコーンカロリメータを用いて評価することができる。 コーンカロリメータを用いた燃焼試験により評価される難燃性としては、燃焼による総発熱量(THR;MJ/m2)、単位面積及び単位時間当たりの燃焼による発熱量の最大値(PHRR;kW/m2)、熱放散の最大平均率(MARHE;kW/m2)が挙げられる。
本実施形態の立毛人工皮革の裏面に内装下地材を接着剤で接着してなるコンポジット材は、総発熱量(THR)が10MJ/m2以下、さらには8MJ/m2以下のコンポジット材を実現可能である。また、本実施形態のコンポジット材は、最大発熱量(PHRR)が、250kW/m2以下、さらには、200kW/m2以下のコンポジット材を実現可能である。また、本実施形態のコンポジット材は、熱放散の最大平均率(MARHE;kW/m2)が90kW/m2以下のコンポジット材を実現可能である。
また、本実施形態の立毛人工皮革は、高いレベルの難燃性と、表面高級感、しなやかな風合い、充実感を兼ね備えるために、例えば、航空機、船舶、鉄道、車輌等の公共輸送機、或いはホテル、デパート等の公共建造物のシートやソファーの素材や壁などの内装など、自消性、低発熱性、低発煙性などの高いレベルの難燃性が要求される用途に好ましく用いられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1]
海成分樹脂として水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)、島成分樹脂としてイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-トを用いて海島型複合繊維を溶融防止した。具体的には、海成分樹脂中に島成分樹脂が25個分布した断面を形成するためのノズル孔が配置された複合紡糸用口金に、海成分樹脂及び島成分樹脂の溶融樹脂をそれぞれ供給し、ノズル孔から海島型複合繊維の溶融繊維を吐出させた。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。
そして、海島型複合繊維の溶融繊維を吸引装置で吸引して延伸することにより、繊度が3.3dtexの海島型複合繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合繊維は、可動型のネット上に連続的に堆積され、加熱された金属ロールで軽く押さえられ、表面の毛羽立ちを抑えられた。そして、海島型複合繊維をネットから剥離した後、金属ロールとバックロールとの間を通過させて熱プレスすることにより、目付31g/m2のウェブを得た。
次に、クロスラッパー装置を用いて総目付が300g/m2になるようにウェブを8層重ね、その両面から交互にニードルパンチして絡合処理した。ニードルパンチ後のウェブである絡合ウェブの目付は440g/m2であった。
そして、絡合ウェブを70℃、50%RH湿度の条件で30秒間湿熱収縮を生じさせた。湿熱収縮処理前後の面積収縮率は47%であった。
そして、収縮させた絡合ウェブに、ゲル化剤として硫酸アンモニウムを含む、第1のポリウレタンのエマルジョンを含浸付与した後、乾燥させた。第1のポリウレタンは、ポリカーボネート系ポリオール100%であって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6である高分子ポリオールと、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、100%モジュラスが3.0MPaである自己乳化型の非晶性ポリカーボネートウレタンであった。
そして、第1のポリウレタンを付与された絡合ウェブを熱水に浸漬し、PVAを溶解除去することにより、繊度0.1dtexの極細繊維を25本含む繊維束が3次元的に交絡した不織布を含む人工皮革の生機を作製した。人工皮革の生機の第1のポリウレタンの含有率は12質量%であった。
そして、人工皮革の生機をスライスして厚み方向に2分割し、反スライス面をバフィングすることによりスエード調の立毛面を有する立毛人工皮革の生機に仕上げた。立毛人工皮革の生機は、厚さ0.5mm、目付250g/m2、見掛け密度0.50g/cm3であった。
そして、サーキュラー染色機を用いて、立毛人工皮革の生機を染色し、乾燥した後、柔軟剤を含侵処理し、さらに乾燥した。
そして、染色後の立毛人工皮革生機のスライス面に、35メッシュのグラビアロールを備えたグラビア塗装機を用いて、リン系難燃剤であるジアルキルホスフィン酸金属塩の粒子を分散させた2000mPa・secの第2のポリウレタンエマルジョンを110g/m2となるように塗布した後、120℃で水分を乾燥させた。なお、ジアルキルホスフィン酸金属塩の粒子は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定された分散粒子径(メジアン径:D50)が4μmであり、リン原子含有率が23.5質量%、30℃の水に対する溶解度が0.2質量%未満、融点及び分解温度が250℃超であった。
また、第2のポリウレタンエマルジョンは10質量%の第2のポリウレタンと28質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有していた。第2のポリウレタンは、ポリカーボネート系ポリオール100%であって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が5.5である高分子ポリオールと、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、100%モジュラスが1.0MPaである強制乳化型の非晶性ポリカーボネートウレタンであった。
そして、難燃化処理された立毛人工皮革生機をドラム温度120℃、搬送速度10m/分で収縮加工処理してタテ方向(長さ方向)に5.0%収縮させた後、表面にシール処理を施すことによりスエード調の立毛面を有する立毛人工皮革を得た。立毛人工皮革は、厚さ0.52mm、目付290g/m2、見掛け密度0.56g/cm3であった。
また、立毛人工皮革は、第1のポリウレタン10質量%、第2のポリウレタン5質量%、ジアルキルホスフィン酸金属塩の粒子15質量%を含有していた。その結果、立毛人工皮革は、リン原子換算含有割合で2.6質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有していた。また、ジアルキルホスフィン酸金属塩の粒子と第1のポリウレタンと第2のポリウレタンとの総量に対するリン原子換算質量%は10.3質量%であった。また、第2のポリウレタンとジアルキルホスフィン酸金属塩の粒子との総量に対するリン原子換算質量%は、17.3質量%であった。
そして、得られた立毛人工皮革を以下の評価方法に従って評価した。
(表面高級感)
立毛人工皮革の立毛面を触り、以下の基準で判定した。
A:表面タッチがスムースであり、リン系難燃剤粒子に起因するザラザラした触感もなかった。
B:表面タッチがザラザラしており、高級感に劣っていた。
C:風合いが硬く、高級感に劣っていた。
D:保管中にリン系難燃剤粒子がブリードして表面が白化した。
(厚さ、目付け、見掛け密度)
JIS L1913に準じて、立毛人工皮革の厚さ(mm)及び目付(g/cm2)を測定し、目付けを厚さで除して換算することにより、見掛け密度(g/cm3)を算出した。
(ポリウレタンに付着したリン系難燃剤粒子の偏在する領域の厚さの測定)
立毛人工皮革の断面方向を切り出し、断面全体から満遍なく10点を選択し、走査型電子顕微鏡で倍率100倍で裏面からリン系難燃剤粒子が存在する領域の厚さを10点測定した。そして厚さの最大値及び最小値を除外した8点の平均値をリン系難燃剤粒子の偏在する厚さとした。
(リン系難燃剤粒子の平均粒子径)
立毛人工皮革の断面方向を切り出し、断面全体から満遍なく10点を選択し、走査型電子顕微鏡で倍率1000倍で裏面からリン系難燃剤粒子が存在する領域を選択し、10個の粒子の直径を計測した。そして、最大値及び最小値を除外した8個の粒子径の平均値をリン系難燃剤粒子の平均粒子径とした。
(垂直法燃焼試験:自消性)
立毛人工皮革を、FAR25 Appendix F Part1(a)(1)(ii)の米国航空機内装材の燃焼試験規格により垂直法難燃性を測定した。具体的には、立毛人工皮革を50.8mm×304.8mmに切断して試験片を作成した。そして試験片を燃焼試験装置の試料ホルダーに垂直に固定した。バーナーを試験片の一端の真下に配置し、12秒間接炎させた後、試験片の燃焼距離、自消時間、ドロップ自消時間を計測した。n=10の平均を算出した。
(水平法燃焼試験)
スエード調人工皮革を、FMVSS302の燃焼試験規格により水平法燃焼試験を測定した。具体的には、スエード調人工皮革を102mmmm×356mmに切断して、サンプル片端から38mmに標線を引いた試験片を作成した。そして試験片を燃焼試験装置の試料ホルダーに水平に固定した。バーナーを試験片の標線を引いた側のサンプル端に配置し、15秒間接炎させた後、試験片の燃焼距離、燃焼時間を計測した。n=10の平均を算出した。標線前で自消した場合を標線前自消(SE)、標線を超えて燃焼距離50mm以下及び燃焼時間60秒以下を自消、燃焼速度100mm/min以下を遅燃性、燃焼速度100mm/min以上を易燃性とした。
以上の評価結果を下記表1に示す。
Figure 0007265354000001
[実施例2]
実施例1において、10質量%の第2のポリウレタンと28質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有する第2のポリウレタンエマルジョンに代えて、22質量%の第2のポリウレタンと28質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有する第2のポリウレタンエマルジョンを用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、第1のポリウレタンの含有率が12質量%の人工皮革の生機の代わりに、第1のポリウレタンの含有率が24質量%の人工皮革の生機を用いた以外は、同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、リン系難燃剤であるジアルキルホスフィン酸金属塩の粒子を分散させた第2のポリウレタンエマルジョンを110g/m2となるように塗布した代わりに、60g/m2となるように塗布した以外は、同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、0.1dtexの極細繊維を25本含む繊維束が3次元的に交絡した不織布に代えて0.4dtexの極細繊維を6本含む繊維束が3次元的に交絡した不織布を形成した。また、第1のポリウレタンとして、非晶性ポリカーボネート(反応性官能基を除いた平均炭素数5.5)とポリエーテルポリオール(反応性官能基を除いた平均炭素数4)の質量比率60/40であって、反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が4.9である高分子ポリオールと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、100%モジュラスが3.0MPaである自己乳化型の非晶性ポリカーボネートウレタンを用いた。さらに、リン系難燃剤粒子としてジアルキルホスフィン酸金属塩の代わりに表1に示したモノアルキルホスフィン酸金属塩を用いた。その他は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、リン系難燃剤粒子としてジアルキルホスフィン酸金属塩の代わりに表1に示した芳香族ホスホン酸エステルを用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、リン系難燃剤粒子としてジアルキルホスフィン酸金属塩の代わりに表1に示したリン酸エステルアミドを用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例8]
海成分樹脂としてポリエチレン、島成分樹脂としてイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-トを用いて海島型複合繊維を溶融防止した。具体的には、海成分樹脂中に島成分樹脂が25個分布した断面を形成するためのノズル孔が配置された複合紡糸用口金に、海成分樹脂及び島成分樹脂の溶融樹脂をそれぞれ供給し、ノズル孔から海島型複合繊維の溶融繊維を吐出させた。このとき、海成分と島成分との質量比が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。
そして、海島型複合繊維の溶融繊維を吸引装置で吸引して延伸することにより海島型複合繊維を紡糸した。紡糸された海島型複合繊維は、可動型のネット上に連続的に堆積され、加熱された金属ロールで軽く押さえられ、表面の毛羽立ちを抑えられた。そして、海島型複合繊維をネットから剥離した後、金属ロールとバックロールとの間を通過させて熱プレスしてウェブを得た。
次に、クロスラッパー装置を用いて総目付が320g/m2になるようにウェブを8層重ね、その両面から交互にニードルパンチして絡合処理した。そして、絡合ウェブを70℃、50%RH湿度の条件で30秒間湿熱収縮を生じさせた。
そして、収縮させた絡合ウェブに、第1のポリウレタンのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を含浸付与した後、N,N-ジメチルホルムアミドと水の混合液に浸漬、凝固させた後、トルエンでポリエチレンを抽出し乾燥した。なお、第1のポリウレタンは、ポリカーボネートポリオール(反応性官能基を除いた平均炭素数6)とポリエステルポリオール(反応性官能基を除いた平均炭素数4)の質量比率75/25であって、反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が4.9である高分子ポリオールと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、100%モジュラスが5.0MPaである非晶性ポリカーボネートウレタンであった。
その他は実施例1と同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例9]
海成分樹脂としてポリエチレン、島成分樹脂として6-ナイロンを用いて海島型複合繊維を溶融防止した。具体的には、ポリエチレンと6-ナイロンを質量比率で50/50に混合して溶融させ、混合紡糸用口金に溶融樹脂を供給し、ノズル孔から吐出させた。島数は平均600個前後であり、延伸して5.5dtexの繊維を得た。この繊維を捲縮処理した後51mmにカットしカード処理することで目付100g/m2の短繊維ウェブを得た。これをクロスラッパー装置を用いて6層の重ね合わせウェブを作製し、油剤をスプレーした後、1500パンチ/cmの条件でニードルパンチ処理を行った後、熱プレス処理して、見掛け密度0.40g/cm、厚み1.5mmの繊維絡合体を得た。
そして、繊維絡合体に、第1のポリウレタンのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を含浸付与した後、N,N-ジメチルホルムアミドと水の混合液に浸漬、凝固させた後、トルエンでポリエチレンを抽出し乾燥した。なお、第1のポリウレタンは、ポリカーボネートポリオール(反応性官能基を除いた平均炭素数6)とポリエステルポリオール(反応性官能基を除いた平均炭素数4)の質量比率75/25であって、反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が4.9である高分子ポリオールと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートである有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、100%モジュラスが5.0MPaであるポリウレタンであった。その他は、染料を分散染色から含金染色に変更する以外、実施例1と同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[実施例10]
実施例1において、厚さ1.3mmの人工皮革の生機を用いた以外は、同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、10質量%の第2のポリウレタンと28質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有する第2のポリウレタンエマルジョンに代えて、10質量%の第2のポリウレタンと6.8質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有する第2のポリウレタンエマルジョンを用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。なお、リン系難燃剤粒子と第2のポリウレタンからなる水分散液の粘度は100mPa・secであった。結果を表2に示す。
Figure 0007265354000002
[比較例2]
実施例1において、10質量%の第2のポリウレタンと28質量%のジアルキルホスフィン酸金属塩を含有する第2のポリウレタンエマルジョンに代えて、28質量%のポリリン酸アンモニウムを含有する水分散液を用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例1において、リン系難燃剤粒子としてジアルキルホスフィン酸金属塩の代わりに表1に示したポリリン酸アンモニウムを用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例4]
実施例1において、リン系難燃剤粒子としてジアルキルホスフィン酸金属塩の代わりに表1に示した芳香族リン酸エステルを用いた以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。なお、リン系難燃剤は、難燃剤処理の際は水分散液の形態で処理を行ったが、立毛人工皮革において観察すると樹脂被膜化し粒子状の形態ではなかった。
[比較例5]
実施例4において、第1の高分子弾性体を、ポリエーテル系ポリウレタン(反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数5)に変更した以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
[比較例6]
実施例4において、口金の島成分の個数を25個から4個に変更し、して平均繊度0.6dtexの極細繊維を用い、第1の高分子弾性体を、ポリカーボネート系ポリウレタン(反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数9)に変更した以外は同様にして立毛人工皮革を得、評価した。結果を表2に示す。
表1及び表2を参照すれば、実施例1~10で得られた立毛人工皮革はいずれも、表面高級感が良好で、しなやかな風合いを有し、さらに、自消性が良好で、発煙量、燃焼発熱量も少なく、高いレベルの難燃性を備えた立毛人工皮革であった。一方、リン系難燃剤粒子が少なく、内部まで難燃剤粒子が存在する比較例1で得られた立毛人工皮革は、リン系難燃剤が表面に露出し表面高級感に劣っており、難燃性も不充分であった。また、リン系難燃剤粒子にポリリン酸アンモニウムを用いた比較例2で得られた立毛人工皮革は、経時的なブリードが発生し表面高級感に劣っていた。また、比較例3で得られた立毛人工皮革は、難燃性がやや劣り、経時的なブリードが発生し表面高級感に劣っていた。また、リン系難燃剤粒子を芳香族リン酸エステルに変更した比較例4は、風合いが硬く、難燃性が不充分であった。また、立毛人工皮革の繊度が大きく、目付の高い比較例5は、難燃性が不充分であった。

Claims (7)

  1. 繊度0.5dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と、前記繊維絡合体に含浸付与された、ポリウレタン及びリン系難燃剤粒子と、を含み、前記極細繊維を立毛させた立毛面である主面を有する厚さ0.25~1.5mmの立毛人工皮革であって、
    前記ポリウレタンは、厚さ断面全体に存在する第1のポリウレタンと、前記主面に対する裏面から厚さ200μm以下の範囲に偏在する第2のポリウレタンと、を含み、
    前記リン系難燃剤粒子の90~100質量%が、前記第2のポリウレタンに付着しており、
    前記第1のポリウレタンは、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応生成物であり、前記高分子ポリオールは60質量%以上がポリカーボネートポリオールであって反応性官能基を除いた繰り返し平均炭素数が6.5以下であり、前記有機ポリイソシアネートが、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、ポリウレタンを含み、
    前記リン系難燃剤粒子は、平均粒子径0.1~30μm、リン原子含有率が14質量%以上、30℃の水に対する溶解度が0.2質量%以下、融点または融点が存在しない場合には分解温度が150℃以上であり、
    前記立毛人工皮革中の、前記リン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算含有割合で1~6質量%であることを特徴とする立毛人工皮革。
  2. 前記リン系難燃剤粒子と前記第1のポリウレタンと前記第2のポリウレタンとの総量中の前記リン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算で5~20質量%である請求項1に記載の立毛人工皮革。
  3. 前記リン系難燃剤粒子と前記第2のポリウレタンとの総量中の前記リン系難燃剤粒子の含有割合が、リン原子換算で10~30質量%である請求項1または2に記載の立毛人工皮革。
  4. 前記リン系難燃剤粒子が、有機ホスフィン酸金属塩,芳香族ホスホン酸エステル,及びリン酸エステルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む請求項1~3の何れか1項に記載の立毛人工皮革。
  5. 請求項1~4の何れか1項に記載の立毛人工皮革の前記裏面に内装下地材を接着剤で接着してなるコンポジット材。
  6. 前記内装下地材が、コンクリート,れんが,瓦,陶磁器質タイル,繊維強化セメント板,ガラス繊維混入セメント板,ケイ酸カルシウム板,鉄鋼,アルミニウム,金属板,ガラス,モルタル,しっくい,石,石膏ボード,ロックウール,グラスウール板,木毛セメント板,硬質木毛セメント板,木毛セメント板,パルプセメント板,難燃合板からなる群から選ばれる、請求項5に記載のコンポジット材。
  7. 前記接着剤が、デンプン系,(アルキル)セルロース系,酢酸ビニル系,クロロプレン系,フェノール系,ニトリル系,フッ素系,シリコーン系及びこれらの共重合体や混合体、金属塩や水酸化物を混合した接着剤からなる群から選ばれる、請求項5または請求項6に記載のコンポジット材。
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