以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電動ハンマ1について説明する。電動ハンマ(以下、単にハンマという)1は、所定の駆動軸A1に沿って先端工具91を直線状に駆動するように構成された打撃工具の一例であって、ハツリ作業やケレン作業に使用される。
まず、ハンマ1の概略構成について説明する。図1~図3に示すように、ハンマ1の外郭は、主としてハウジング20によって形成されている。本実施形態のハウジング20は、いわゆる防振ハウジングとして構成されており、第1ハウジング21と、第1ハウジング21に対して相対移動可能に弾性連結された第2ハウジング25とを含む。
図3に示すように、第1ハウジング21は、全体として側面視略L字状に形成されている。第1ハウジング21は、別体として形成され、互いに連結されたバレル部22と、クランクハウジング23と、モータハウジング24とを含む。
バレル部22は、円筒状に形成され、所定の駆動軸A1に沿って延在する。バレル部22の軸方向における一端部内には、先端工具91を着脱可能なツールホルダ221が配置されている。クランクハウジング23は、内部空間を有する中空体であって、バレル部22の軸方向における他端部に連結固定されている。バレル部22とクランクハウジング23には、駆動機構4が収容されている。モータハウジング24は、駆動軸A1に交差し、且つ、駆動軸A1から離れる方向に突出するように配置され、クランクハウジング23に連結固定されている。モータハウジング24には、モータ31が収容されている。モータシャフト315の回転軸A2は、駆動軸A1に直交している。
なお、以下の説明では、便宜上、ハンマ1の駆動軸A1の延在方向を、ハンマ1の前後方向と規定する。前後方向において、ツールホルダ221が設けられている一端部側をハンマ1の前側(先端領域側ともいう)、反対側を後側と規定する。また、モータシャフト315の回転軸A2の延在方向を、ハンマ1の上下方向と規定する。上下方向において、クランクハウジング23からモータハウジング24が突出する方向を下方向、反対方向を上方向と規定する。更に、前後方向および上下方向に直交する方向を、左右方向と規定する。
図1~図3に示すように、第2ハウジング25は、全体として略U字状に形成された中空体であって、把持部26と、上側ハウジング27と、下側ハウジング28とを含む。
把持部26は、使用者による把持が可能に構成され、概ね上下方向に延在する部分である。より詳細には、把持部26は、第1ハウジング21に対して後方に離間して、概ね上下方向に延在している。把持部26の前部には、使用者が指で押圧操作(引き操作)可能なトリガ261が設けられている。上側ハウジング27は、把持部26の上端部に接続する部分である。本実施形態では、上側ハウジング27は、把持部26の上端部から前方に延び、第1ハウジング21のバレル部22およびクランクハウジング23(図3参照)を覆うように構成されている。下側ハウジング28は、把持部26の下端部に接続する部分である。本実施形態では、下側ハウジング28は、把持部26の下端部から前方に延び、その大部分がモータハウジング24の下側に配置されている。下側ハウジング28の前後方向における略中央部には、バッテリ装着部29が設けられている。ハンマ1は、バッテリ装着部29に取り外し可能に装着されたバッテリ93を電源として動作する。
以上のような構成によって、ハンマ1では、第2ハウジング25に加え、第1ハウジング21のうちモータハウジング24が、上側ハウジング27と下側ハウジング28とに上下から挟まれた状態で外部に露出する。第2ハウジング25およびモータハウジング24は、ハンマ1の外表面を形成している。
以下、ハンマ1の詳細構成について説明する。
まず、ハウジング20の防振ハウジング構造について説明する。上述の通り、ハウジング20では、第1ハウジング21に対し、把持部26を含む第2ハウジング25が相対移動可能に弾性的に連結されている。これにより、第1ハウジング21から第2ハウジング25への振動伝達の抑制が図られている。
より詳細には、図3に示すように、第1ハウジング21のクランクハウジング23と、第2ハウジング25の上側ハウジング27との間には、弾性部材501が介在している。より詳細には、弾性部材501には、圧縮コイルバネが採用されている。また、クランクハウジング23の後端部を規定する後壁部231には、バネ受け部が設けられている。上側ハウジング27(詳細には、把持部26の上端部に隣接する領域)の内部には、このバネ受け部に対向するバネ受け部が設けられている。これらのバネ受け部は、夫々、凸部として構成されており、弾性部材501の前端部および後端部に嵌め込まれて、弾性部材501を支持している。また、第1ハウジング21のバレル部22と、上側ハウジング27の前端部の間には、環状の弾性部材(いわゆるOリング)504が介在している。
更に、第1ハウジング21のモータハウジング24と、第2ハウジング25の下側ハウジング28との間には、弾性部材505が介在している。より詳細には、弾性部材505には、圧縮コイルバネが採用されている。また、モータハウジング24の下端部の一部は、下側ハウジング28内に配置されており、バネ受け部を有する。下側ハウジング28の内部には、このバネ受け部に対向するバネ受け部が設けられている。これらのバネ受け部は、夫々、凹部として構成されており、弾性部材505の前端部および後端部を受けて、弾性部材505を支持している。
弾性部材501および505は、夫々、その弾発力の作用方向が前後方向と概ね一致するように配置され、第1ハウジング21と第2ハウジング25とを、駆動軸A1の延在方向において、互いから離れる方向(把持部26が第1ハウジング21から離れる方向)に付勢している。つまり、第1ハウジング21および第2ハウジング25は、夫々、前方および後方へ付勢されている。
更に、上側ハウジング27および下側ハウジング28は、夫々、モータハウジング24の上端部および下端部に対して摺動可能に構成されている。より詳細には、図4に示すように、上側ハウジング27の左右の側壁部の下端面511およびモータハウジング24の左右の側壁部の上端面513は、互いに当接した状態で摺動可能な摺動面である。下端面511および上端面513は、上側摺動部51を構成する。また、下側ハウジング28の左右の側壁部には、内側(左右方向の中心)へ向けて突出し、前後方向に延在するガイドレール521が設けられている。また、モータハウジング24の左右の側壁部の下端部には、前後方向に延在するガイド溝523が設けられている。ガイドレール521は、前後方向に摺動可能にガイド溝523に係合している。ガイドレール521およびガイド溝523は、下側摺動部52を構成する。第1ハウジング21と第2ハウジング25とは、上側摺動部51および下側摺動部52において前後方向に摺動する。
駆動軸A1に沿って先端工具91が駆動されることで、第1ハウジング21には振動が発生する。発生する振動のうち、最も大きく支配的なのは、前後方向の振動である。これに対し、本実施形態では、弾性部材501、504、505を介して連結された第1ハウジング21および第2ハウジング25が、上側摺動部51および下側摺動部52において摺動しつつ前後方向に相対移動することで、この前後方向の振動が第2ハウジング25(特に、把持部26)に伝達されるのを効果的に抑制することができる。
なお、第1ハウジング21および第2ハウジング25には、前後方向における相対移動可能範囲を規定するための構成が設けられている。より詳細には、図4に示すように、下側ハウジング28の上端部の左右の側壁部には、内側に突出する一対のストッパ部531が設けられている。各ストッパ部531は、凹部(図示略)を有する。一方、モータハウジング24の下端部には、下方に突出する左右一対の突起533が設けられている。一対の突起533は、夫々、一対のストッパ部531の凹部内に配置されている。このような構成により、第1ハウジング21および第2ハウジング25は、凹部の前端を規定する壁面に突起533が当接する位置と、凹部の後端を規定する壁面に突起533が当接する位置との間で、前後方向に相対移動可能である。つまり、凹部の前端を規定する壁面に突起533が当接するとき、第2ハウジング25は第1ハウジング21に対して最後方位置にあり、凹部の後端を規定する壁面に突起533が当接するとき、第2ハウジング25は第1ハウジング21に対して最前方位置にあるといえる。
上述のように、第1ハウジング21および第2ハウジング25は、弾性部材501および505によって、夫々、前方および後方へ付勢されている。このため、初期状態では、第2ハウジング25は、第1ハウジング21に対して最後方位置に保持されている。以下では、第2ハウジング25の最後方位置を、初期位置ともいう。図1および図3に示すように、第2ハウジング25が初期方位置にあるときには、前後方向において、モータハウジング24の上後端の位置と、上側ハウジング27のうち、クランクハウジング23の後端部を覆う後壁部271の下後端の位置とが概ね一致し、且つ、モータハウジング24の下前端の位置と、下側ハウジング28の上前端の位置とが概ね一致する。一方、図5に示すように、第2ハウジング25が第1ハウジング21に対して最前方位置に配置されると、モータハウジング24が上側ハウジング27および下側ハウジング28から後方にずれた位置に配置される。
以下、第1ハウジング21の詳細構成とその内部構造について説明する。
まず、モータハウジング24とその内部構造について説明する。図1~図3に示すように、モータハウジング24は、上側が開口した有底の矩形筒状に形成されている。モータハウジング24には、モータ31と、変速ダイアルユニット35と、検出ユニット6とが収容されている。
本実施形態では、モータ31として、ブラシレス直流モータが採用されている。モータ31は、ステータおよびロータを含むモータ本体部310と、ロータから延設され、ロータと一体的に回転するモータシャフト315とを含む。上下方向に延在するモータシャフト315は、上下端部において、ベアリングによって回転可能に支持されている。モータ本体部310と上側のベアリングの間には、ファン33が配置されている。ファン33は、モータシャフト315に固定されており、モータシャフト315と一体的に回転する。ファン33は、吸気口201(図1参照)を介してハウジング20の内部に流入し、モータ31の周囲を流れてモータ31を冷却した後、排気口(図示略)からハウジング20の外部に流出する空気流を生成するように構成されている。モータシャフト315の上端部は、クランクハウジング23内に突出しており、この部分に駆動ギアが形成されている。駆動ギアは、クランクシャフト41の被動ギアに噛合している。
変速ダイアルユニット35は、モータハウジング24の下端部において、モータ本体部310の後側に配置されている。変速ダイアルユニット35は、使用者による外部操作に応じてモータ31の回転速度の設定入力を受け付けるための機器である。詳細な図示は省略するが、変速ダイアルユニット35は、使用者がモータハウジング24の外部から回動操作可能な操作部材としてのダイアルを含む。変速ダイアルユニット35は、図示しない配線によってコントローラ30に接続されており、ダイアルの回動位置に応じた抵抗値(つまり、設定された回転速度)を示す信号をコントローラ30に出力するように構成されている。
検出ユニット6は、第1ハウジング21に対する第2ハウジング25の前後方向の相対位置を検出するように構成されている。図4および図6に示すように、本実施形態では、検出ユニット6は、レバー61と、ホールセンサ63と、ホルダ65とを含む。レバー61およびホールセンサ63は、ホルダ65に組み付けられ、単一のアセンブリとしての検出ユニット6を構成している。
ホルダ65は、ベース651と、レバー支持部653とを主体として構成されている。ベース651は、モータハウジング24に固定される長尺状の板状部である。レバー支持部653は、ベース651に対して直交するように、ベース651の背面から後方に突出する板状部である。
レバー61は、長尺板状のレバーアーム610と、レバーアーム610から突出する円筒部615とを含む。レバーアーム610の一端部の一面には、磁石62が固定されている。レバー61は、レバー支持部653によって、左右方向に延在する回動軸A4周りに回動可能に支持されている。より詳細には、レバー支持部653には、右側面から右方に突出する支持シャフトが設けられている。レバー61の円筒部615がレバー支持部653の支持シャフトに嵌合された状態で、支持シャフトに形成された雌ネジ部にネジが締め付けられることで、レバー61がレバー支持部653に回動可能に支持される。なお、レバーアーム610の2つの端部のうち、磁石62が固定された端部と反対側の端部は、第2ハウジング25の相対移動に応じて、第2ハウジング25によって作動される端部として機能する。以下では、磁石62が固定された端部と反対側の端部を第1端部611といい、磁石62が固定された端部を第2端部612というものとする。
更に、円筒部615には、捩りコイルバネ67が外装されている。捩りコイルバネ67の一端部はレバー支持部653に係止されている。捩りコイルバネ67の他端部は、レバーアーム610の第1端部611の近傍に係止されている。これにより、レバー61は、第1端部611がベース61から離れる方向に付勢され、第2端部612の近傍部分が、ベース651に設けられたストッパ突起655に当接する位置で保持されている。
ホールセンサ63は、ホール素子を備えた周知のセンサであって、基板631に搭載されている。基板631は、ホールセンサ63が搭載された面が、レバーアーム610の磁石62が固定された面に対向するように、ネジを介してレバー支持部653に固定されている。ホールセンサ63は、図示しない配線を介してコントローラ30に電気的に接続されており、磁石62が所定の検出範囲内に配置されている場合、特定の信号(オン信号)をコントローラ30へ出力するように構成されている。
以上のように構成された検出ユニット6は、ホルダ65がモータハウジング24に固定されることで、第1ハウジング21に固定されている。より詳細には、モータハウジング24の内部において、モータ31の後側には、前後方向に直交するように配置された内部後壁部243が設けられている(図3参照)。ベース651は、レバーアーム610の2つの端部のうち、第2端部612が下側、第1端部611が上側に配置された状態で、内部後壁部243の上端部の後面にネジ(図示略)で固定されている。
図7に示すように、レバーアーム610の第1端部611は、モータハウジング24の上端の開口から、上側ハウジング27の内部(クランクハウジング23と上側ハウジング27の後壁部271との間の空間)に突出している。後壁部271の下端部には、前方に突出する当接部273が設けられている。本実施形態では、図3および図7に示すように、第1ハウジング21に対して第2ハウジング25が初期位置(最後方位置)にあるときには、レバー61は、上述のように、第2端部612の近傍部分がストッパ突起655に当接する位置に保持され、レバー61の第1端部611は、その回動可能範囲において最後方位置に配置される。なお、このとき、第1端部611は、当接部273から僅かに前方に離間している。このときのレバー61の位置を、レバー61の初期位置という。レバー61が初期位置にあるとき、磁石62はホールセンサ63の右側でホールセンサ63に対向し、その検出範囲内にある。よって、ホールセンサ63は、コントローラ30にオン信号を出力する。
一方、図5および図8に示すように、第2ハウジング25が、第1ハウジング21に対して初期位置から前方へ移動すると、第1端部611が、当接部273を介して、捩りコイルバネ67の付勢力に抗して前方へ向けて押圧され、レバー61は、初期位置から、左側面視で反時計回り方向(図8の矢印CCWの方向)に回動する。つまり、レバー61は、第2ハウジング25の前方への相対移動に連動して回動する。第2ハウジング25が初期位置から所定位置まで前方へ相対移動すると、レバー61も初期位置から所定の角度範囲だけ回動し、対応する所定位置に配置される。これに伴い、磁石62はホールセンサ63の検出範囲から離脱し、オン信号の出力を停止する。
なお、本実施形態では、レバー61の回動軸A4と第2端部612との距離(詳細には、磁石62との間の距離)は、回動軸A4と第1端部611との距離(詳細には、第1端部611と当接部273との当接位置との間の距離)よりも若干短く設定されている。このため、第2ハウジング25の前方への相対移動に連動して、レバー61が初期位置から所定位置まで回動するときの第2端部612の動き(移動量)は、第1端部611の動き(移動量)よりも若干大きくなる。これにより、比較的小さな第2ハウジング25の前方への相対移動に連動して、磁石62をホールセンサ63の検出範囲から確実に離脱させている。
なお、この第2ハウジング25の所定位置(以下、オフ位置という)は、第2ハウジング25の移動可能範囲における最前方位置(図8に示す位置)よりも若干後方に設定されている。同様に、レバー61の所定位置(以下、オフ位置という)は、第1端部611が回動可能範囲の最前方位置に配置される位置(図8に示す位置)よりも若干後方に設定されている。第2ハウジング25およびレバー61がオフ位置から最前方位置の間にあるときには、ホールセンサ63はオン信号を出力しない。
詳細は後述するが、ホールセンサ63の検出結果は、コントローラ30によるモータ31の駆動制御に使用される。
以下、クランクハウジング23およびバレル部22と、その内部構造について説明する。
図3および図4に示すように、クランクハウジング23は、概ね矩形状の中空体として形成されている。一方、図3および図9に示すように、バレル部22は、長尺状の円筒体として形成されている。クランクハウジング23およびバレル部22は、ネジ(図示略)によって前後方向に互いに連結固定され、駆動機構4を収容する駆動機構収容部を構成している。更に、図3および図4に示すように、クランクハウジング23の下端部は、モータハウジング24の上端部内に配置された状態で、ネジ246によって、モータハウジング24に連結固定されている。これにより、単一のハウジングとしての第1ハウジング21が形成されている。
駆動機構4について説明する。本実施形態では、駆動機構4は、モータ31の動力によって、先端工具91を駆動軸A1に沿って直線状に駆動する動作(以下、ハンマ動作という)を行うように構成されており、図3に示すように、運動変換機構40と、打撃要素46とを含む。
運動変換機構40は、モータシャフト315の回転運動をピストン43の直線運動に変換するように構成された機構である。本実施形態では、運動変換機構40として、クランクシャフト41と、連接ロッド42と、ピストン43と、シリンダ45とを含む周知のクランク機構が採用されている。
クランクシャフト41は、モータシャフト315の後側に配置され、上下方向に延在している。クランクシャフト41は、クランクハウジング23に保持された2つのベアリングによって、モータシャフト315の回転軸A2に平行、且つ、駆動軸A1に直交する回転軸A3周りに回転可能に支持されている。クランクシャフト41は、モータシャフト315の駆動ギアに噛合する被動ギアを有しており、モータシャフト315の回転に伴って、回転軸A3周りに回転する。また、クランクシャフト41は、回転軸A3から偏心した位置に設けられた偏心ピンを有する。連接ロッド42の一端部は偏心ピンに連結され、他端部は連結ピンを介してピストン43に連結されている。シリンダ45は、長尺状の円筒体であって、バレル部22に収容され、駆動軸A1に沿って前後方向に延在している。ピストン43は、シリンダ45内に摺動可能に配置されている。ピストン43は、クランクシャフト41の回転に伴って、シリンダ45内で前後方向に往復動する。
打撃要素46は、ピストン43の往復動に伴って前後方向に直線状に移動し、先端工具91に対して打撃力を加えるように構成されている。本実施形態では、打撃要素46は、ストライカ461と、インパクトボルト463とを含む。ストライカ461は、シリンダ45内に前後方向に摺動可能に配置されている。ストライカ461とピストン43との間には、ピストン43の往復動によって生じる空気の圧力変動を介してストライカ461を直線状に移動させるための空気室465が形成されている。インパクトボルト463は、バレル部22の前端部内に保持されたツールホルダ221内で前後方向に摺動可能に配置されている。
モータ31が駆動され、ピストン43が前方に向けて移動されると、空気室465の空気が圧縮されて内圧が上昇する。このため、ストライカ461は、空気バネの作用で高速に前方に押し出されてインパクトボルト463に衝突し、インパクトボルト463を介して運動エネルギを先端工具91に伝達する。先端工具91は、伝達された運動エネルギを受けて駆動軸A1に沿って直線状に駆動され、被加工物を打撃する。一方、ピストン43が後方へ移動されると、空気室465の空気が膨張して内圧が低下し、ストライカ461は後方へ引き込まれる。先端工具91は、被加工物への押し付けにより、後方へ移動する。このようにして、運動変換機構40および打撃要素46によってハンマ動作が繰り返されることで、ハツリ作業やケレン作業が遂行される。
ところで、上述のように、ハンマ1では、ハンマ動作が行われることで、第1ハウジング21には前後方向に比較的大きな振動が生じる。そこで、図4および図10に示すように、本実施形態では、ハンマ1には、第1ハウジング21に生じる振動を吸収するための左右一対の動吸振器7が設けられている。なお、一対の動吸振器7は、同一構成を有するとともに、駆動軸A1を含み、上下方向に延在する仮想平面(駆動軸A1、回転軸A2および回転軸A2を含む仮想平面)Pに対して対称に配置されている。また、図1に示すように、一対の動吸振器7は、駆動軸A1よりもやや下側で、駆動軸A1に平行に、前後方向に延在している。
以下、動吸振器7の詳細構成について説明する。図10に示すように、本実施形態では、各動吸振器7は、ウェイト71と、ウェイト71の両側に配置された2つのバネ72と、ウェイト71およびバネ72を収容する収容部73とを主体として構成されている。
ウェイト71は、前後方向に延在する長尺の円柱状部材として形成されている。より詳細には、ウェイト71は、均一径を有する大径部711と、大径部711よりも径が小さく、大径部711の前端および後端から突出する小径部713を有する。2つのバネ72は、夫々、小径部713に嵌め込まれており、各バネ72の一端は、大径部711の端部に当接している。なお、以下では、2つのバネ72を総称する場合および何れかを区別なく指す場合、単にバネ72といい、2つのバネ72のうち、ウェイト71の前側に配置されたバネ72を指す場合には、前側バネ721といい、ウェイト71の後側に配置されたバネ72を指す場合には、後側バネ723というものとする。
収容部73は、全体としては、両端が閉塞された円筒状に形成されており、複数の部材が連結されることで形成されている。本実施形態では、収容部73は、バレル部22の一部およびクランクハウジング23の一部を利用して構成されている。より詳細には、収容部73は、バレル部22の一部である第1支持部74と、クランクハウジング23の一部である第2支持部75と、スリーブ76と、キャップ77とを含む。
図9および図10に示すように、一対の動吸振器7の一対の第1支持部74は、夫々、バレル部22の下後端部に、左右に突出するように設けられている。第1支持部74は、前後方向を軸方向とし、前端が閉塞され、後端が開放された有底円筒状に形成されている。言い換えると、第1支持部74は、後方に開口する凹部を有する。凹部は、後側部分よりも前側部分の内径が小さい段付き凹部として構成されている。
図4および図10に示すように、一対の第2支持部75は、夫々、クランクハウジング23の下中央部に、左右に突出するように設けられている。なお、一対の第2支持部75は、一対の第1支持部74から後方に離間した位置に、同軸状に配置されている。第2支持部75は、前後方向を軸方向とする円筒状に形成されている。
スリーブ76は、第1支持部74および第2支持部75とは別個の円筒体として形成されている。スリーブ76は、ウェイト71(詳細には、大径部711)の安定した摺動動作を確保するための部材であって、大径部711の径と概ね同一の内径を有する。
キャップ77は、後端が閉塞され、前端が開放された有底円筒状に形成されている。キャップ77は、スリーブ76の後端部に同軸状に嵌め込まれて連結され、スリーブ76の後端の開口を閉塞する。図11および図12に示すように、キャップ77の後端部には、径方向外側に突出する突起771が設けられている。
図10に示すように、スリーブ76およびキャップ77は、第1支持部74および第2支持部75によって同軸状に支持されている。より詳細には、スリーブ76の前端部は、第1支持部74の凹部の大径部内に挿入されている。また、スリーブ76の後端部およびキャップ77の前側部分は、第2支持部75内に挿入されている。キャップ77の後側部分は、第2支持部75から後方へ突出している。このような構成により、円柱状の内部空間(収容空間)を有する収容部73が形成されている。なお、スリーブ76の前端部には、第1支持部74の内周面と、スリーブ76の外周面との間の隙間をシールするためのOリング761が装着されている。また、スリーブ76の後端部およびキャップ77の中央部には、第2支持部75の内周面とスリーブ76およびキャップ77の外周面との間の隙間を夫々シールするためのOリング762および773が装着されている。
ウェイト71およびバネ72は、2つのバネ72が圧縮され、ウェイト71の大径部711が、バネ72の付勢力を受けつつスリーブ76内を摺動可能な状態で、収容部73の内部空間に収容されている。また、スリーブ76およびキャップ77は、バネ72の付勢力を利用して、クランクハウジング23に固定状に保持されている。
より詳細には、前側バネ721の前端部には、バネ受け部材725が嵌めこまれている。バネ受け部材725は、第1支持部74の凹部の小径部に嵌め込まれ、凹部の底面に当接している。後側バネ723の後端部は、キャップ77に当接している。本実施形態では、2つのバネ72の圧縮に伴い、スリーブ76およびキャップ77は後方へ付勢されるが、クランクハウジング23に固定されたストッパピン772によって後方への移動が規制され、所定位置で保持される。具体的には、図11および図12に示すように、キャップ77の突起771が、上方へ突出するように配置され、ストッパピン772に前方から当接して係止されることで、スリーブ76およびキャップ77が前後方向において位置決めされ、保持される。なお、ストッパピン772は、一対の第2支持部75の後側且つ上側に、一対で設けられ、夫々、クランクハウジング23の左右の側壁部から、左方および右方に突出している。このような構成により、第1支持部74がバネ受け部材725を介してバネ72による前方への付勢力を受け、ストッパピン772がキャップ77を介してバネ72による後方への付勢力を受けている。
また、ストッパピン772の中央部は、湾曲状に凹んでおり、突起771の後端面は、この凹部に整合する形状を有する。突起771がストッパピン772の凹部に係合することで、キャップ77は、クランクハウジング23に対し、前後方向のみならず、収容部73の軸周りの周方向においても位置決めされ、保持されている。
なお、本実施形態では、動吸振器7の組み付けは、次のように行われる。
図13に示すように、まず、作業者は、Oリング761、762が装着されたスリーブ76に、Oリング773が装着されたキャップ77を嵌めこみ、連結する。次に、作業者は、後側バネ723、ウェイト71、およびバネ受け部材725が嵌めこまれた前側バネ721を、順に、スリーブ76およびキャップ77の連結体に挿入する。このとき、バネ受け部材725を含む前側バネ721の前端部は、スリーブ76の前端の開口から前方へ突出した状態である。作業者は、ウェイト71とバネ72が収容されたスリーブ76およびキャップ77の連結体を、第2支持部75に後方から挿入し、更に、前側バネ721およびスリーブ76の前端部を第1支持部74に後方から挿入する。なお、このとき、作業者は、突起771がストッパピン772に干渉しないように、連結体の周方向の位置を調整する。
続いて、作業者は、突起771がストッパピン772よりも前側に配置されるまで、バネ72を圧縮しつつキャップ77を前方へ押し込み、その後、突起771がストッパピン772の凹部に係合する位置まで、キャップ77を周方向に回動させる。作業者がキャップ77の押込みを解除すると、バネ72の付勢力によって、突起771がストッパピン772に係止され、組み付けが完了する。なお、キャップ77の後端面には、マイナスドライバの先端を係合可能な溝775が形成されている。よって、作業者は、マイナスドライバを用いて、キャップ77を押込み、回動させる一連の作業を容易に行うことができる。
なお、スリーブ76およびキャップ77の連結体が第1支持部74および第2支持部75に挿入される前には、前後方向において、第1支持部74と第2支持部75の間には、空間が存在する。そこで、本実施形態では、この空間を利用して、クランクハウジング23が、下側に配置されたモータハウジング24に対し、ネジ246によって連結固定される。
より詳細には、図4および図13に示すように、クランクハウジング23の下端部には、一対のベース部233が設けられている。一対のベース部233は、前後方向において、第1支持部74と第2支持部75の間、且つ、上下方向において第1支持部74および第2支持部75よりも下側で、左方および右方に突出する。一方、モータハウジング24には、上方に突出する左右一対のベース部245が設けられている。そして、ベース部233とベース部245とが、ベース部233の上側から、ネジ246によって固定されている。このように、第1支持部74および第2支持部75の間の空間を利用して、作業者は、動吸振器7の組み付け前に、ネジ246によって、クランクハウジング23とモータハウジング24を容易に連結固定することができる。
なお、図13に示すように、第2支持部75の後側(キャップ77が配置される位置)でも、同様にして、動吸振器7の組み付け前に、クランクハウジング23とモータハウジング24とが、ネジで連結固定される。
ところで、本実施形態の動吸振器7は、バレル部22およびクランクハウジング23内の圧力変動を利用してウェイト71を積極的に加振する方式(いわゆるエア加振方式)の動吸振器として構成されている。より詳細には、図10に示すように、収容部73の内部空間は、ウェイト71(詳細には、大径部711)によって、ウェイト71の前側に形成される前側空間731と、ウェイト71の後側に形成される後側空間733とに区画されている。
図9に示すように、前側空間731は、通路741を介して、シリンダ45(図9では図示略)を収容するバレル部22の内部空間と連通されている。なお、通路741の前側空間731側の端は、第1支持部74の小径部内に通じている(図10参照)。上述のように、この位置には、スリーブ76が配置されていない。よって、通路741は、第1支持部74からバレル部22に亘って斜め上方に延びる単一の貫通孔として形成されている。
また、図4に示すように、後側空間733は、通路743を介して、クランクシャフト41を収容するクランクハウジング23の内部空間と連通している。通路743の後側空間733側の端は、キャップ77内に通じている。よって、通路743は、キャップ77に設けられた貫通孔744と、この貫通孔に連続するように、第2支持部75からクランクハウジング23に亘って上方に延びる貫通孔745とによって形成されている。なお、キャップ77に設けられた貫通孔744は、上述のように突起771およびストッパピン772によってキャップ77が周方向に位置決めされることで、貫通孔745と連通する。
ハンマ1の駆動時には、バレル部22の内部空間およびクランクハウジング23の内部空間の圧力は、運動変換機構40および打撃要素46の駆動に伴って夫々変動し、その圧力変動は、概ね180度の位相差を有する。つまり、バレル部22の内部空間の圧力が上昇したときには、クランクハウジング23の内部空間の圧力が低下し、バレル部22の内部空間の圧力が低下したときには、クランクハウジング23の内部空間の圧力が上昇するという関係にある。よって、動吸振器7の前側空間731および後側空間733を、夫々、バレル部22の内部空間およびクランクハウジング23の内部空間に連通させることで、これらの圧力変動を利用して、動吸振器7のウェイト71を積極的に駆動し、振動を効果的に吸収することができる。なお、このエア加振方式自体は公知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
以下、第2ハウジング25の詳細構成とその内部構造について説明する。
まず、上側ハウジング27について説明する。図1~図3に示すように、上側ハウジング27の後側部分は、下側が開口した略矩形箱状に形成されており、クランクハウジング23を上方から覆っている。また、上側ハウジング27の前側部分は、円筒状に形成されており、バレル部22の外周を覆っている。この円筒状の部分の外周面には、補助ハンドル97(図1および図2参照)を着脱可能である。なお、補助ハンドル97の構成については周知であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
把持部26とその内部構造について説明する。図3に示すように、把持部26は、上下方向に延在する筒状部として構成されている。把持部26の前部には、作業者による押圧操作(引き操作)が可能なトリガ261が設けられている。把持部26の内部には、トリガ261の操作に応じてオン状態とオフ状態との間で切り替えられるスイッチ263が設けられている。スイッチ263は、配線を介して、コントローラ30に電気的に接続されており、オン状態またはオフ状態を示す信号を、コントローラ30に出力するように構成されている。
下側ハウジング28とその内部構造について説明する。図1~図4に示すように、下側ハウジング28は、上側が一部開口する矩形箱状に形成されている。下側ハウジング28は、把持部26の下端部から前方に延びており、大部分がモータハウジング24の下側に配置されている。下側ハウジング28は、バッテリ装着部29と、バッテリ保護部280と、接続部285とを含む。
上述の通り、バッテリ装着部29は、下側ハウジング28の前後方向における略中央部の下端部に設けられている。本実施形態では、バッテリ装着部29は、充電式のバッテリ93を1つのみ着脱可能に構成されている。なお、本実施形態のハンマ1に着脱可能なバッテリ93は、最大電圧が40ボルトのバッテリである。
ここで、バッテリ93の構成について、簡単に説明する。なお、説明の便宜上、バッテリ93の方向に関しては、ハンマ1に装着された状態で、その上下方向を規定する。図3および図4に示すように、バッテリ93は、略直方体状に形成されている。バッテリ93の重心Gは、長手(長さ)方向、短手(幅)方向、高さ方向の何れにおいても、概ね中心位置にある。バッテリ93は、フック931と、ボタン933と、端子(図示せず)と、一対のガイド溝935とを有する。
フック931と端子は、バッテリ93の上面に設けられている。フック931は、バッテリ93の長手方向(図3の紙面直交方向、図4の左右方向)における一端部に設けられ、常時には、バネ(図示せず)によって付勢され、上面から上方へ突出している。ボタン933は、短手方向を規定するバッテリ93の側面の上端部に設けられている。フック931は、ボタン933の下方への押圧操作に応じて、上面から下方へ引っ込むように構成されている。端子は、フック931に隣接してバッテリ93の上面に設けられている。一対のガイド溝935は、バッテリ93の長手方向に沿って配置された一対の側面の上端部に、長手方向に直線状に延在する溝として形成されている。
図1~図4に示すように、このような構成のバッテリ93に対応して、バッテリ装着部29は、その下側にバッテリ93の一部が露出した状態で、バッテリ93の上端部が装着されるように構成されている。本実施形態では、バッテリ装着部29は、バッテリ93の長手方向が左右方向と一致する向きで、バッテリ93を左右方向にスライド係合可能に構成されている。具体的には、バッテリ装着部29は、一対のガイドレール293と、フック係合部291と、バッテリ接続端子(図示せず)とを有する。一対のガイドレール293は、左右方向に直線状に延在し、バッテリ93の一対のガイド溝935にスライド係合可能に構成されている。フック係合部291は、上方へ凹んだ凹部であって、バッテリ93のフック931を係合可能に構成されている。バッテリ接続端子は、ガイド溝935がガイドレール293にスライド係合され、フック931がフック係合部291に係合するのに伴い、バッテリ93の端子と電気的に接続するように構成されている。
なお、本実施形態では、バッテリ93は、フック931が左側に配置された状態で、ハンマ1の左方から右方へ向けてスライドされることで、バッテリ装着部29に装着される。このため、フック係合部291はバッテリ装着部29において左端部に配置され、バッテリ接続端子は、バッテリ93の端子に対して右方から接続するように構成されている。フック931の係合を解除するためのボタン933は、左側面の上端部に設けられている。このため、下側ハウジング28のうち、ボタン933の上側に隣接する部分には、凹部287が設けられている。凹部287は、使用者が指を挿入可能に構成されており、使用者のボタン933の操作を容易とする。
更に、バッテリ装着部29は、バッテリ93が装着されたときに、バッテリ93の重心Gが、前後方向において(左側または右側からみて)、モータシャフト315の回転軸A2と、クランクシャフト41の回転軸A3の間に位置するように構成されている(図3参照)。また、バッテリ装着部29は、バッテリ93が装着されたときに、バッテリ93の重心Gが、左右方向において(前側または後側からみて)、概ねハウジング20の中心線(上述の仮想平面P)上に位置するように構成されている(図4参照)。
以下、バッテリ保護部280およびその内部構成について説明する。
バッテリ保護部280は、バッテリ93がバッテリ装着部29に装着された場合に、バッテリ93の露出部分を外力から保護するように構成されている。本実施形態では、バッテリ保護部280は、前後方向において、バッテリ装着部29に対して両側に設けられた前側保護部281と後側保護部282とを含む。本実施形態では、前側保護部281および後側保護部282は、夫々、ハウジング20(下側ハウジング28)の一部として形成されている。より詳細には、前側保護部281および後側保護部282は、夫々、下側ハウジング28のうち、バッテリ装着部29を挟んでバッテリ装着部29よりも下方に突出する中空部として形成されている。
図3および図4に示すように、上下方向に関しては、前側保護部281および後側保護部282は、夫々、その下面が、バッテリ装着部29に装着されたバッテリ93の下面よりも下方に突出するように構成されている。また、左右方向に関しては、前側保護部281および後側保護部282は、バッテリ93よりも若干短い。よって、バッテリ装着部29に装着された状態において、バッテリ93の左右端部は、下側ハウジング28から左右方向に僅かに突出する。
本実施形態では、バッテリ93の上端部はバッテリ装着部29に装着され、バッテリ93の大部分は、バッテリ装着部29の下方に露出する。そこで、前側保護部281および後側保護部282は、バッテリ93のバッテリ装着部29からの露出部分を保護するように設けられている。具体的には、前側保護部281は、バッテリ93の前面側部分を外力から保護するように構成されている。一方、後側保護部282は、バッテリ93の後面側部分を外力から保護するように構成されている。より詳細には、前側保護部281は、主に前側保護部281よりも前方から(斜め方向を含む)前面側部分に向かう外力に干渉することで、前面側部分を保護する。後側保護部282は、主に後側保護部282よりも後方から(斜め方向を含む)後面側部分に向かう外力に干渉することで、後面側部分を保護する。
また、バッテリ93は略直方体形状に形成されているため、下端部の隅部領域930は4つ(前側の左右に2つと、後側の左右に2つ)存在する。これら4つの隅部領域930は、ハンマ1の落下時に特に外力にさらされやすい。そこで、前側保護部281および後側保護部282は、特に落下時の衝撃から効果的に隅部領域930を保護するように構成されている。具体的には、バッテリ93がバッテリ装着部29に装着されたときのハンマ1(補助ハンドル97を含む)の重心と、バッテリ93の下前端部の何れかの隅部領域930とを結ぶ仮想直線を規定し、更に、仮想直線に直交し、且つ、その隅部領域930を通る仮想平面を規定した場合、前側保護部281は、この仮想平面よりも、重心から離れる方向に突出するように形成されている。また、後側保護部282は、ハンマ1の重心と、バッテリ93の下前端部の何れかの隅部領域930とを結ぶ仮想直線に直交し、且つ、その隅部領域930を通る仮想平面から突出している。
一般的に、バッテリ93が装着され、ハンマ1の重心が隅部領域930に乗った状態で(言い換えると、重心が隅部領域930の真上に位置する姿勢で、または、隅部領域930にハンマ1の全重量が作用する状態で))ハンマ1が落下し、隅部領域930が地面や床に衝突すると、隅部領域930に加わる衝撃が大きくなり、バッテリ93の損傷の可能性が高まる。これに対し、前側保護部281および後側保護部282を、上記の仮想平面よりも突出するように形成することで、下端部の隅部領域930の何れかに重心が乗った状態でハンマ1が落下した場合でも、前側保護部281または後側保護部282が先に地面や床に接触するため、隅部領域930を効果的に保護することができる。
本実施形態では、後側保護部282の内部には、コントローラ30が収容されている。詳細な図示は省略するが、コントローラ30は、モータ31の駆動を制御する制御回路300と、制御回路300が搭載された基板と、これらを収容するケースとを含む。コントローラ30は、全体としては、長さ、幅および厚みを有する略直方体形状に形成されている。なお、長さ、幅、厚みのうち、長さが最大で厚みが最小である。コントローラ30は、後側保護部282内に、長さ方向、幅方向、厚み方向が、夫々、左右方向、上下方向、前後方向と一致するように配置されている。なお、本実施形態では、制御回路300は、CPU、ROM、RAM、タイマ等を含むマイクロコンピュータとして構成されている。コントローラ30は、配線301(一部のみ図示)によって、モータ31、スイッチ263、検出ユニット6、バッテリ装着部29の端子等と電気的に接続されている。コントローラ30によるモータ31の駆動制御については、後で詳述する。
以下、接続部285およびその内部構造について説明する。
図1~図3に示すように、接続部285は、把持部26の下端部と後側保護部282とを接続する中空部であって、把持部26の下端部から後側保護部282に向けて前方へ延びている。把持部26および下側ハウジング28の内部には、連続した内部空間が形成されている。把持部26の内部空間と、後側保護部282の内部空間とは、接続部285の内部空間を介して接続する。そこで、本実施形態では、接続部285の内部空間を有効活用して、把持部26内に配置されたスイッチ263と、後側保護部282内に配置されたコントローラ30とを電気的に接続する配線(図示略)や、配線用のコネクタ(図示略)等が配置されている。
更に、接続部285の内部には、無線通信ユニット286が収容されている。無線通信ユニット286は、外部機器との無線通信が可能に構成された電子機器である。本実施形態では、無線通信ユニット286は、コントローラ30からの制御信号に従って、ハンマ1とは別個の定置式の集塵機(図示略)に対し、所定の周波数帯の電波を使って所定の連動信号を無線送信するように構成されている。なお、このようなシステム自体は公知であるため、簡単に説明すると、コントローラ30は、トリガ261が押圧操作され、スイッチ263がオン状態とされている間、無線通信ユニット286に連動信号を送信させる。集塵機のコントローラは、無線通信ユニット286から送信された連動信号を受信している間、集塵機のモータを駆動するように構成されている。つまり、ハンマ1の使用者は、トリガ261の押圧操作をするだけで、集塵機をハンマ1に連動して動作させることができる。
このように、本実施形態では、空きスペースとなりやすい接続部285の内部空間を有効活用して、無線通信ユニット286を配置することで、ハンマ1の利便性が高められている。なお、無線通信ユニット286は、集塵機に対して連動信号を送信するものに限られず、その他の外部機器(例えば、携帯端末)と無線通信を行うように構成されていてもよいし、省略されてもよい。
また、接続部285の左右の側壁部には、接続部285の内部と外部とを連通させる吸気口201が形成されている。モータ31の駆動に伴い、ファン33によって生成される空気流は、吸気口201から接続部285の内部に流入し、下側ハウジング28内を通過して、モータハウジング24へと流れる。本実施形態では、吸気口201の近傍で、この空気流の通路上にコントローラ30が配置されている。このため、ファン33によって生成される空気流によって、モータ31のみならず、コントローラ30も効果的に冷却される。
以下、コントローラ30によるモータ31の駆動制御について説明する。
本実施形態では、コントローラ30(より詳細には、制御回路300)は、いわゆるソフトノーロード制御を行うように構成されている。ソフトノーロード制御とは、スイッチ263がオン状態にある場合、先端工具91に負荷が加えられていない無負荷状態では、モータ31の回転速度を、予め定められた比較的低い回転速度(以下、初期回転速度という)以下に制限する一方、負荷状態では、モータ31の回転速度が初期回転速度を超えることを許容する駆動制御手法である。ソフトノーロード制御によれば、無負荷状態におけるモータ31の無駄な電力消費を低減することができる。なお、本実施形態では、変速ダイアルユニット35によって設定された回転速度が、トリガ261の最大操作量に対応する回転速度(つまり、最高回転速度)として用いられる。そして、モータ31の回転速度は、最高回転速度と、実際のトリガ261の操作量(操作割合)に基づいて設定される。
本実施形態では、ソフトノーロード制御における無負荷状態と負荷状態の判別に、検出ユニット6の検出結果が用いられる。上述のように、検出ユニット6のホールセンサ63は、第1ハウジング21に対する第2ハウジング25の相対移動に連動するレバー61の位置を、磁石62を介して検出することで、第1ハウジング21に対する第2ハウジング25の相対位置を検出するものである。
無負荷状態では、弾性部材501および505の付勢力により、第2ハウジング25は最後方位置(初期位置)に配置されており、レバー61も初期位置に配置される(図3および図7参照)。よって、ホールセンサ63が磁石62を検出し、検出ユニット6はオン信号を出力する。コントローラ30は、検出ユニット6からの出力がオンの場合、モータ31は無負荷状態にあると判定する。コントローラ30は、スイッチ263がオフ状態からオン状態とされると、モータ31の駆動を開始する。このとき、最高回転速度とトリガ261の操作量に基づいて算出される回転速度が初期回転速度以下であれば、算出された回転速度がそのままモータ31の回転速度として設定される。一方、算出される回転速度が初期回転速度を超える場合、初期回転速度がモータ31の回転速度として設定される。モータ31の駆動に伴い、駆動機構4が駆動され、ハンマ動作が行われる。
使用者が把持部26を把持した状態で、先端工具91を被加工物に押し付けると、第2ハウジング25は、上側摺動部51および下側摺動部52において、第2ハウジング25に対して摺動し、弾性部材501および505を圧縮しつつ、初期位置から前方へ移動する。第2ハウジング25の前方への相対移動に連動して、レバー61も初期位置から回動する。第2ハウジング25およびレバー61がオフ位置へ到達すると、ホールセンサ63はオン信号の出力を停止する。コントローラ30は、ホールセンサ63からの出力のオンからオフへの変化を、無負荷状態から負荷状態への移行と認識する。
コントローラ30は、負荷状態への移行を認識すると、最高回転速度とトリガ261の操作量に基づいて算出される回転速度でモータ31を駆動する。このとき、コントローラ30は、モータ31の回転速度を算出された回転速度まで上昇させる場合には、直ちにその速度まで上昇させてもよいし、徐々に上昇させてもよい。コントローラ30は、トリガ261の引き操作が解除され、スイッチ263がオフ状態となると、モータ31の駆動を停止する。なお、ホールセンサ63からの出力がオフの状態で(つまり、負荷状態で)スイッチ263がオン状態にされた場合には、コントローラ30は、最高回転速度とトリガ261の操作量に基づいて算出される回転速度で、モータ31の駆動を開始する。
コントローラ30は、トリガ261の引き操作が解除され、スイッチ263がオフ状態となると、モータ31の駆動を停止する。
なお、コントローラ30は、スイッチ263がオン状態で、ホールセンサ63からの出力のオフからオンへの変化(つまり、第2ハウジング25およびレバー61のオフ位置から初期位置へ向かう相対移動、負荷状態から無負荷状態への移行)を認識した場合、モータ31の回転速度を初期回転速度以下に制限するように構成されていてもよい。この場合、例えば、コントローラ30は、タイマにより、変化後のホールセンサ63のオン状態の継続時間を監視する。そして、所定時間に亘ってオン状態が継続した場合に限り、モータ31の回転速度を初期回転速度以下に制限すればよい。これは、加工作業に伴って第1ハウジング21が振動しているときの一時的なオン状態への変化と、負荷状態から無負荷状態への変化とを確実に区別するためである。
具体的には、第2ハウジング25は、第1ハウジング21の前後方向の振動により、第1ハウジング21に対して前後方向に往復移動する。これに連動して、磁石62を有するレバー61も回動する。この場合、ホールセンサ63からの出力は、短い周期でオンとオフの間で切り替わる可能性がある。これに対し、先端工具91の押し付けが解除され、無負荷状態に移行した場合には、ホールセンサ63からの出力がオフからオンに切り替わった後、所定時間に亘ってオン状態が継続する。よって、上述のような制御を採用すれば、コントローラ30が、ホールセンサ63の検出結果に基づいて、負荷状態から無負荷状態への移行をより確実に認識することが可能となる。
以上に説明したように、本実施形態のハンマ1は、モータ31および駆動機構4を収容する第1ハウジング21と、把持部26を含み、第1ハウジング21に対し、少なくとも前後方向に相対移動可能に弾性連結された第2ハウジング25とを備えている。また、ハンマ1は、被加工物に対する先端工具91の押付けを検出するように構成された検出ユニット6と、検出ユニット6による検出結果に基づいて、モータ31の駆動を制御するように構成されたコントローラ30(詳細には、制御回路300)を備えている。そして、検出ユニット6は、第1ハウジング21に設けられ、第2ハウジング25の前後方向の相対移動に連動するように構成されたレバー61と、第1ハウジング21に設けられ、レバー61の動きを介して先端工具91の押付けを検出するように構成されたホールセンサ63とを含む。
先端工具91が被加工物に押し付けられると、第1ハウジング21に弾性連結された第2ハウジング25は、第1ハウジング21に対して相対的に前方へ移動する。つまり、無負荷状態から負荷状態への移行は、第2ハウジング25の前方への相対移動に対応する。そして、第2ハウジング25の前後方向の相対移動は、レバー61の動きに対応する。よって、ホールセンサ63は、レバー61の動き(詳細には、レバー61の第2端部612に取り付けられた磁石62の検出の有無)を介して、被加工物に対する先端工具91の押付け(無負荷状態から負荷状態への移行)を適切に検出することができる。そして、コントローラ30は、検出ユニット6による検出結果に基づいて、先端工具91が無負荷状態にあるか負荷状態にあるかに応じて、モータ31の駆動を制御することができる。
本実施形態では、検出ユニット6のレバー61およびホールセンサ63の両方が、同じ第1ハウジング21に設けられている。レバー61が第1ハウジング21および第2ハウジング25のうち一方に設けられ、ホールセンサ63が他方に設けられる場合、第1ハウジング21および第2ハウジング25の夫々の寸法誤差に起因して、レバー61とホールセンサ63との位置関係が本来の設定とは異なってしまい、ホールセンサ63が無負荷状態から負荷状態への移行を正確に検出できない可能性がある。これに対し、本実施形態のように、レバー61およびホールセンサ63の両方を、同じ第1ハウジング21に配置することで、レバー61とホールセンサ63との位置関係をより安定化し、誤検出の可能性を低減することができる。
本実施形態では、検出ユニット6は、レバー61とホールセンサ63とを含む1つのアセンブリとして構成されている。よって、ハンマ1の組み立て工程において、作業者は、先に組み立てられた単一のアセンブリである検出ユニット6を、第1ハウジング21に組み付けることができ、組立性が向上する。
また、ホールセンサ63は、レバー61に取り付けられた磁石62を検出することで、レバー61の動きを非接触で検出することができる。よって、ホールセンサ63が、検出対象と接触して摩耗することがなく、摩耗による検出精度の低下を防止することができる。
また、本実施形態では、第2ハウジング25の前後方向の相対移動に連動する連動部材として、第1端部611と第2端部612とを有し、第2端部612よりも第1端部611に近い位置にある回動軸A4周りに回動可能に支持されたレバー61が採用されている。この場合、回動式のレバー61の形状、サイズ、回動軸A4の位置等を適宜設定することで、直線状に移動する連動部材が採用される場合に比べ、ホールセンサ63の配置位置の自由度を高めることができる。また、回動軸A4を、レバー61の動きの検出に用いられる第2端部612よりも、第2ハウジング25によって作動される第1端部611の近くに設定することで、第2端部612の動きを、第1端部611の動きよりも増大させることができる。よって、比較的小さな第2ハウジング25の相対移動により、磁石62をホールセンサ63の検出範囲から確実に離脱させることが可能となる。
更に、本実施形態では、第1ハウジング21および第2ハウジング25は、前後方向に摺動可能に弾性連結されている。これにより、第1ハウジング21および第2ハウジング25前後方向の相対移動と、これに伴うレバー61の動きがより安定化され、先端工具91の押付けをより精度よく検出することができる。特に、本実施形態では、第1ハウジング21および第2ハウジング25は、上下方向に互いに離間して配置された2つの摺動部(上側摺動部51および下側摺動部52)を備えている。つまり、第1ハウジング21および第2ハウジング25は、上下2箇所で摺動可能である。そして、検出ユニット6は、上側摺動部51および下側摺動部52のうち、駆動軸A1により近い上側摺動部51の近傍に設けられている。ハンマ1では、先端工具91は駆動軸A1に沿って配置されるため、先端工具91の被加工物に対する押付けに伴う第2ハウジング25の前方への相対移動は、駆動軸A1に近い位置の方が正確に検出しやすい。本実施形態では、第1ハウジング21および第2ハウジング25の前後方向の摺動を、2つの摺動部によって更に安定化し、且つ、駆動軸A1により近い上側摺動部5の近傍で、先端工具91の押付けをより精度よく検出することができる。
また、本実施形態では、コントローラ30(制御回路300)は、ホールセンサ63によって、先端工具91の押付けが検出されない場合(ホールセンサ63の出力がオンの場合)、所定の回転速度(初期回転速度)を超えない回転速度でモータ31を駆動するように構成されている。コントローラ30(制御回路300)は、更に、ホールセンサ63によって先端工具91の押付けが検出された場合(ホールセンサ63の出力がオンからオフに変化した場合)、初期回転速度を超える回転速度でモータ31を駆動可能に構成されている。これにより、先端工具91が被加工物に押し付けられていない無負荷状態における省電力化を実現することができる。
また、本実施形態のハンマ1は、モータ31および駆動機構4を収容する第1ハウジング21と、2つの動吸振器7とを備えている。駆動機構4は、クランクシャフト41、ピストン43およびシリンダ45を含むクランク機構として構成されている。第1ハウジング21は、モータ31を収容するモータハウジング24と、クランクシャフト41を収容するクランクハウジング23と、クランクハウジング23の前側に配置され、シリンダ45を収容する円筒状のバレル部22とを含む。各動吸振器7は、ウェイト71と、ウェイト71の前側および後側に配置された2つのバネ72と、ウェイト71およびバネ72を収容する収容部73とを含む。そして、収容部73の一部である第1支持部74と第2支持部75は、夫々、バレル部22の一部と、クランクハウジング23の一部によって構成されている。
よって、例えば、クランクハウジング23の前後方向の長さが動吸振器7に必要な長さに満たない場合でも、バレル部22およびクランクハウジング23の一部を利用しつつ、動吸振器7を配置することができる。つまり、クランクハウジング23の前後方向の長さによる制約を受けることなく、動吸振器7を合理的に配置することができる。
更に、本実施形態では、動吸振器7の収容部73は、ウェイト71の少なくとも一部を収容し、前後方向に延在する筒状のスリーブ76を含む。そして、第1支持部74と第2支持部75とは、前後方向において互いから離間して配置され、スリーブ76を支持している。このような構成により、例えば、第1支持部74と第2支持部75の間の距離およびスリーブ76の長さを適宜変更することで、収容部73の前後方向の長さ(ウェイト71のストローク長)を設定することができる。よって、収容部73の長さ設定の自由度を高めることができる。
また、本実施形態では、スリーブ76は、バネ72の付勢力を利用して、第1ハウジング21(詳細には、クランクハウジング23)に保持されている。よって、スリーブ76をネジ等で第1ハウジング21に固定する必要がないため、作業者は、収容部73の組み付けおよび分解を容易に行うことができる。
更に、本実施形態では、第1支持部74は、バネ72の前方への付勢力を受けるバネ受け部として構成されている。より詳細には、第1支持部74は、前端が閉塞された有底筒状に形成され、内部に挿入されたバネ72(前側バネ721)を保持しつつ、その前端部を受けている。このような構成により、部品数を増やすことなく、バネ72を効率的に配置することができる。
また、本実施形態では、2つの動吸振器7は、駆動軸A1を含む仮想平面Pに対して対称に配置されている。よって、2つの動吸振器7が、仮想平面Pの両側で、バランスよく振動を吸収することができる。
また、本実施形態では、収容部73の内部空間は、ウェイト71の前側に形成される前側空間731と、ウェイトの後側に形成される後側空間733とを含む。そして、第1支持部74は、バレル部22の内部空間と前側空間731とを連通させる通路741を有し、第2支持部75は、クランクハウジング23の内部空間と後側空間733とを連通させる通路743を有する。このような構成によれば、バレル部22の内部空間およびクランクハウジング23の内部空間における圧力変動を利用して、積極的にウェイトを加振することができる。これにより、より効果的に振動を吸収することができる。
また、本実施形態のハンマ1は、モータ31および駆動機構4を収容するハウジング20と、ハウジング20に設けられ、略直方体形状を有する1つのバッテリ93を着脱可能なバッテリ装着部29とを備えている。駆動機構4は、クランクシャフト41を含むクランク機構として構成されている。クランクシャフト41は、モータシャフト315の後側に配置されており、モータシャフト315の回転軸A2に平行な回転軸A3周りに回転可能である。バッテリ装着部29は、モータ31の下側に配置されている。また、バッテリ装着部29は、バッテリ93を左右方向に装着可能、且つ、バッテリ93が装着されたときに、バッテリ93の重心Gが、前後方向において(つまり、右側または左側からみて)、回転軸A2と回転軸A3の間に位置するように構成されている。
このようなバッテリ装着部29によれば、複数のバッテリが前後方向に並んで装着される場合に比べ、前後方向においてハウジング20をコンパクトにすることができる。なお、本実施形態では、更に、バッテリ装着部29は、バッテリ93の長手方向が左右方向と一致する向きでバッテリ93を装着可能に構成されている。よって、1つのバッテリが、その長手方向が前後方向と一致する向きで装着される場合に比べても、前後方向においてハウジング20をコンパクトにすることができる。また、バッテリ装着部29は、バッテリ装着部29に装着されたときのバッテリ93の重心が、比較的重量が大きいモータ31およびクランクシャフト41の夫々の重心の近傍に位置するように構成されている。このような重心の集中化により、バッテリ93の重心がハンマ1の重心から離れることを抑制することができ、作業性に優れたハンマ1が実現されている。
また、本実施形態では、ハンマ1は、前後方向において、バッテリ装着部29に対して前側および後側に夫々設けられた前側保護部281と後側保護部282を有する。前側保護部281と後側保護部282は、夫々、バッテリ93の前面側部分および後面側部分を外力から保護するように構成されている。バッテリ装着部29に装着されたバッテリ93の露出部分は、外力が加わった場合に損傷を受けやすい箇所である。これに対し、前側保護部281および後側保護部282を設けることで、バッテリ93が損傷する可能性を低減することができる。更に、本実施形態では、前側保護部281と後側保護部282は、夫々、下前端部および下後端部の隅部領域930を外力から保護するように構成されている。よって、特に落下時の衝撃による隅部領域930の損傷の可能性も効果的に低減することができる。なお、前側保護部281および後側保護部282は、ハウジング20の一部によって形成されているため、部品数を増加させることなく、バッテリ93の保護機能をハンマ1に付加することができる。
また、本実施形態では、後側保護部282の内部には、モータ31の駆動を制御するように構成された制御回路300を含むコントローラ30が配置されている。更に、コントローラ30は、長さ、幅および厚みを有する略直方体形状を有する。なお、長さ、幅および厚みのうち、長さが最大、厚みが最小である。そして、コントローラ30は、厚み方向が前後方向と一致し、且つ、長さ方向が左右方向と一致する向きで配置されている。このように、空きスペースとなりやすい後側保護部282の内部空間を有効活用して、後側保護部282の前後方向および上下方向の長尺化を抑制しつつ、コントローラ30が、後側保護部282の内部に合理的に配置されている。
更に、ハンマ1は、使用者による把持が可能に構成され、上下方向に延在する筒状の把持部26と、把持部26の下端部と後側保護部282の後端部とを接続する中空の接続部285とを更に備える。よって、空きスペースとなりやすい接続部の内部空間を、例えば、各種部品、配線、コネクタ等の配置スペースとして有効に活用することができる。
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。電動ハンマ1は、「打撃工具」の一例である。先端工具91は、「先端工具」の一例である。モータ31は、「モータ」の一例である。駆動機構4は、「駆動機構」の一例である。駆動軸A1は、「駆動軸」の一例である。第1ハウジング21は、「工具本体」の一例である。第2ハウジング25および把持部26は、夫々、「弾性連結部」および「把持部」の一例である。検出ユニット6は、「検出機構」の一例である。コントローラ30(詳細には、制御回路300)は、「制御部」の一例である。レバー61(詳細には、レバーアーム610)およびホールセンサ63は、夫々、「連動部材」および「検出器」の一例である。上側摺動部51および下側摺動部52は、夫々、「上側摺動部」および「下側摺動部」の一例である。レバーアーム610の第1端部611、第2端部612、回動軸A4は、夫々、「第1端部」、「第2端部」、「回動軸」の一例である。初期回転速度は、「所定の回転速度」の一例である。
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る打撃工具は、例示されたハンマ1の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態に示すハンマ1、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
上記実施形態では、打撃工具の一例として、先端工具91を直線状に駆動させるハンマ動作のみを行うように構成されたハンマ1が例示されている。しかしながら、本発明は、ハンマ動作以外の動作も遂行可能な他の打撃工具として具現化されうる。例えば、打撃工具は、ハンマ動作に加え、先端工具91を駆動軸A1周りに回転駆動するドリル動作も遂行可能なハンマドリルであってもよい。
また、打撃工具に応じて、モータ31、駆動機構4、モータ31および駆動機構4を収容する第1ハウジング21(工具本体)、把持部26を有する第2ハウジング25(弾性連結部)の構成や配置関係は適宜変更されうる。以下に、これらについて採用可能な変更について例示する。
モータ31は、ブラシレスモータでなく、ブラシを有するモータであってもよい。また、モータ31は、交流モータであってもよい。この場合、ハウジング20には、バッテリ装着部29に代えて、外部の商用電源に接続可能な電源ケーブルが設けられ、バッテリ保護部280は省略される。また、駆動機構4の運動変換機構40として、上記実施形態のクランク機構に代えて、揺動部材を用いる周知の運動変換機構が採用されてもよい。
第1ハウジング21および第2ハウジング25の形状は、適宜変更されうる。例えば、上記実施形態では、第1ハウジング21に弾性連結された第2ハウジング25は、第1ハウジング21を部分的に覆う構造を有するが、第2ハウジング25が覆う第1ハウジング21の部分やその範囲は、実施形態の例示に限られるものではない。第1ハウジング21と第2ハウジング25の間に介在する弾性部材501および505の配置位置や、種類、数も、任意に選択されうる。なお、弾性部材501および505として、圧縮コイルバネのほか、各種バネ、ゴム、弾性を有する合成樹脂を採用することができる。
また、モータ31および駆動機構4を収容する本体ハウジングに対して、把持部を含むハンドルが弾性連結されてもよい。この場合、ハンドルの上端部および下端部の夫々が、1または複数の弾性部材を介して本体ハウジングに連結されてもよいし、ハンドルの上端部のみが片持ち状に本体ハウジングに弾性連結されてもよい。更には、ハンドルの上端部が、前後方向に相対移動可能に本体ハウジングに弾性連結される一方、ハンドルの下端部が、左右方向に延在する回動軸周りに回動可能に本体ハウジングに支持されてもよい。本体ハウジングとハンドルの間に介在する弾性部材については、弾性部材501および505と同様である。
第1ハウジング21と第2ハウジング25が前後方向に摺動する部分(摺動部)は、上側摺動部51および下側摺動部52に限られるものではない。例えば、摺動部は、上下方向において1箇所のみに設けられてもよい。また、複数の摺動部が、上記実施形態で例示されたのとは異なる位置に設けられてもよい。あるいは、摺動部は省略されてもよい。
バッテリ装着部29は、複数のバッテリ93を着脱可能に変更されてもよい。この場合、バッテリ装着部29の位置やバッテリ保護部280の構成は、適宜変更される。また、バッテリ保護部280は、省略されてもよい。
更に、被加工物に対する先端工具91の押付けを検出する検出ユニット6の構成やその配置位置についても、上記実施形態の例示に限られるものではない。具体的には、検出ユニット6は、第1ハウジング21および第2ハウジング25のうち一方に設けられ、他方の前後方向の相対移動に連動する連動部材と、連動部材と同じ一方に設けられ、連動部材の動きを介して被加工物に対する先端工具91の押付けを検出する検出器を含む限りにおいて、適宜、変更されうる。
例えば、回動式のレバー61に代えて、直線状に移動可能な連動部材が採用されてもよい。この場合、例えば、連動部材は、第1ハウジング21および第2ハウジング25のうち一方に設けられ、他方(またはこれと一体化された別部材)に当接して、前後方向に移動するように構成される。また、連動部材は、互いに組み合わせられた複数の部材(例えば、回動可能な部材と直線状に移動可能な部材)で構成されていてもよい。また、連動部材は、例えば、第1ハウジング21において、クランクハウジング23の後壁部231に取り付けられて、上側ハウジング27によって作動されてもよいし、モータハウジング24の下端部に取り付けられて、下側ハウジング28によって作動されてもよい。あるいは、連動部材は、第1ハウジング21ではなく第2ハウジング25に取り付けられ、第2ハウジング25に対する第1ハウジング21の前後方向の相対移動に連動するように構成されていてもよい。
また、検出器の検出方式は特に限定されるものではなく、磁界検出式のホールセンサ63に代えて、光学式のセンサが採用されてもよいし、接触方式の機械的スイッチが採用されてもよい。なお、検出器は、第1ハウジング21および第2ハウジング25のうち、連動部材と同じ一方に取り付けられる必要があるが、その位置は、連動部材の構成や検出方式に応じて適宜設定されうる。
上記実施形態では、検出ユニット6は、レバー61とホールセンサ63とを含むアセンブリとして構成されている。しかしながら、レバー61およびホールセンサ63は、夫々、別個のホルダに支持され、第1ハウジング21または第2ハウジング25に取り付けられていてもよい。
上記実施形態では、ハンマ1は、左右一対の動吸振器7を備えている。しかしながら、動吸振器7の構成、配置位置や数は、適宜変更されうる。なお、動吸振器7は省略されてもよい。
上記実施形態では、コントローラ30(制御回路300)は、検出ユニット6による検出結果に基づいて、ソフトノーロード制御を行うように構成されている。これに代えて、コントローラ30(制御回路300)は、ホールセンサ63によって先端工具91の押付けが検出されない間はモータ31を駆動せず、ホールセンサ63による先端工具91の押付けの検出に応じて、モータ31の駆動を開始するように構成されていてもよい。この場合、無負荷状態における更なる省電力化を実現することができる。なお、モータ31の駆動制御処理は、マイクロコンピュータで構成された制御回路300ではなく、他の種類の制御回路、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのプログラマブル・ロジック・デバイスによって行われてもよい。また、モータ31の駆動制御処理は、複数の制御回路で分散処理されてもよい。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様は、実施形態に示すハンマ1および上述の変形例、または各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記検出機構は、前記レバーを、前記工具本体および前記弾性連結部のうち前記他方に前記第1端部が当接する方向に付勢する付勢部材を更に備える。
捩りコイルバネ67は、本態様における「付勢部材」の一例である。なお、捩りコイルバネ67に代えて、他の種類のバネ、ゴム、または弾性を有する合成樹脂が採用されてもよい。
[態様2]
前記弾性連結部は、前記被加工物に対する前記先端工具の押付けに応じて、第1位置から第2位置へ、前記工具本体に対して前方へ移動するように構成されており、
前記連動部材は、前記弾性連結部の前記第1位置から前記第2位置への相対移動に連動して、第3位置から第4位置へ移動するように構成されており、
前記検出器は、前記連動部材の前記第3位置から前記第4位置への移動を検出するように構成されている。