以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態について、図1~図5を参照して説明する。本実施形態では、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置1に本開示の圧縮機10を適用した例について説明する。冷凍サイクル装置1は、例えば、ヒートポンプ式の給湯機や、室内を空調する空調装置に採用される。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機10、圧縮機10から吐出された冷媒を放熱させる放熱器2、放熱器2から流出した冷媒を減圧させる減圧機器3、減圧機器3で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器4を含んでいる。
冷凍サイクル装置1は、冷媒としてフロン系冷媒(例えば、R134a、R1234yf)が採用されている。冷媒には、圧縮機10の内部の各摺動部位を潤滑する潤滑油が混合されている。潤滑油の一部は、冷媒とともにサイクル内を循環する。なお、冷媒としては、フロン系冷媒に限らず、例えば、二酸化炭素等の自然冷媒が採用されていてもよい。
以下、図2を参照して圧縮機10の詳細について説明する。図2は、圧縮機10の駆動軸14の軸心CLに沿って切断した断面を示す軸方向断面図である。なお、図2に示す上下を示す矢印は、圧縮機10を冷凍サイクル装置1に搭載した状態における上下方向DRvを示している。
図2に示すように、圧縮機10は、外殻を構成する金属製のハウジング12の内部に、駆動軸14、電動機20、およびスクロール型の圧縮機構30が収容されている。圧縮機10は、電動機20を動力源として駆動軸14が回転し、当該駆動軸14の回転に伴って圧縮機構30が駆動される電動圧縮機である。圧縮機10は、駆動軸14の軸心CLが略水平方向に延びるとともに、圧縮機構30と電動機20とが略水平方向に並んで配置される横置タイプの圧縮機で構成されている。
ハウジング12は、有底筒状のメインハウジング部121、メインハウジング部121の開口を閉塞するサブハウジング部122を備えている。ハウジング12は、メインハウジング部121およびサブハウジング部122が図示しないボルト等の締結手段によって気密に締結される密閉容器構造を有している。なお、メインハウジング部121およびサブハウジング部122は、溶接等の接合手段によって気密に接合されていてもよい。
ハウジング12には、蒸発器4を通過した低圧冷媒を吸い込む吸込口123、および圧縮機構30で圧縮された高圧冷媒を吐出する吐出口124が形成されている。吸込口123には、蒸発器4に連なる図示しない吸入配管が接続されている。また、吐出口124には、後述する油分離部50の分離パイプ51が圧入等によって固定されている。なお、圧縮機構30で圧縮された高圧冷媒は、吐出口124に固定された油分離部50の分離パイプ51を介して放熱器2に向けて吐出される。
具体的には、吸込口123は、メインハウジング部121の筒状の胴部121aのうち底面部121bに近い位置に設けられている。また、吐出口124は、サブハウジング部122の筒状の胴部122aのうち底面部122bに近い位置に設けられている。メインハウジング部121の内側の空間は、低圧雰囲気となる。すなわち、メインハウジング部121の内側の空間は、吸込口123から蒸発器4を通過した低圧冷媒が流入するので、雰囲気圧力が蒸発器4を通過した低圧冷媒と同等の圧力となる。
電動機20は、後述するインバータ25からの給電により駆動される三相交流モータで構成されている。電動機20は、ステータ21の内側にロータ22が配置されるインナーロータモータとして構成されている。
ステータ21は、磁性材からなるステータコア211、ステータコア211に巻き付けられたコイル212を有する。ステータ21は、後述するインバータ25から電力が供給されると、ロータ22を回転させる回転磁界を発生させる。
ロータ22は、内側に駆動軸14が圧入等によって固定された円筒状の部材である。ロータ22の内部には、図示しない永久磁石が配置されている。また、ロータ22の側面には、駆動軸14の偏心回転を抑えるためのバランスウェイト221、222が取り付けられている。
インバータ25は、ステータ21に対して電力を供給する装置である。インバータ25は、ハウジング12の外側に対して取り付けられている。具体的には、インバータ25は、メインハウジング部121のうち吸込口123に近い底面部121bに対して取り付けられている。これにより、インバータ25は、吸込口123から吸い込まれる低温の低圧冷媒によって冷却される。
このように構成される電動機20は、インバータ25からステータ21に電力が供給されてステータ21の周囲に回転磁界が発生すると、ロータ22および駆動軸14が一体に回転する。
駆動軸14は、略円筒状の部材で構成されている。駆動軸14には、駆動軸14の摺動部位に潤滑油を供給するための油供給路140が形成されている。油供給路140は、駆動軸14の軸方向DRaに沿って延びる主供給穴140a、駆動軸14の外側に開口するとともに主供給穴140aに連通する第1~第3油分配穴140b、140c、140dで構成されている。なお、駆動軸14の軸方向DRaは、駆動軸14の軸線CLに沿って延びる方向である。
主供給穴140aは、軸方向DRaの一方側が閉塞され、軸方向DRaの他方側が開口している。第1油分配穴140bは、駆動軸14のうち後述する軸受部材16に支持される摺動部位14aに開口している。第2油分配穴140cは、駆動軸14のうち後述する軸受部181aに支持される摺動部位14bに開口している。第3油分配穴140dは、駆動軸14のうち後述する偏心軸受部342aに支持される摺動部位14cに開口している。
駆動軸14の軸方向DRaの一方側は、ロータ22よりも軸方向DRaの一方側に突き出ている。駆動軸14のうち軸方向DRaの一方側に突き出た部位は、軸受部材16によって回転自在に支持されている。
軸受部材16は、介在部材17を介してメインハウジング部121の胴部121aに固定されている。介在部材17は、上下方向DRvに拡がる環状の板部171、板部171の外周部から屈曲して軸方向DRaの一方側に延びる筒部172を有している。介在部材17は、例えば、筒部172がメインハウジング部121の胴部121aに当接した状態で固定されている。なお、介在部材17には、吸込口123から導入された冷媒を電動機20側に流すための貫通穴173が形成されている。
軸受部材16には、滑り軸受を構成する筒状部161、および筒状部161の端部から上下方向DRvに拡がる連結部162を含んで構成されている。連結部162は、介在部材17の板部171に対してボルトB1によって締結固定されている。
駆動軸14の軸方向DRaの他方側は、ロータ22よりも軸方向DRaの他方側に突き出ている。駆動軸14のうち軸方向DRaの他方側に突き出た部位には、軸方向DRaの他方側の端部に駆動軸14の回転中心から偏心した偏心軸部141が設けられている。偏心軸部141は、後述する圧縮機構30の旋回スクロール34のボス部342に形成される偏心軸受部342aによって摺動可能に支持されている。
また、駆動軸14のうち軸方向DRaの他方側に突き出た部位には、上下方向DRvに拡がるフランジ部142が形成されている。フランジ部142には、駆動軸14の偏心回転を抑えるためのバランスウェイト142aが設けられている。
駆動軸14のうちロータ22とフランジ部142との間の部位は、ハウジング12の内側に収容されるミドルハウジング18に構成された軸受部181aによって回転自在に支持されている。
ミドルハウジング18は、軸方向DRaの他方側から一方側に向かって内径および外径が階段状に拡大する円筒形状を有している。ミドルハウジング18は、その最外周面がメインハウジング部121の胴部121aに当接した状態で固定されている。また、ミドルハウジング18のうち内径の最も小さい小径部位181の内側が軸受部181aを構成している。
ミドルハウジング18のうち小径部位181よりも内径が拡大された中間部位182には、前述のフランジ部142およびバランスウェイト142aが収容されている。また、ミドルハウジング18のうち内径が最も拡大された大径部位183には、圧縮機構30の旋回スクロール34が収容されている。
圧縮機構30は、駆動軸14の回転に伴って吸込口123から吸い込まれた低圧冷媒を圧縮するものである。圧縮機構30は、ハウジング12に対して固定された固定スクロール32、軸方向DRaに固定スクロール32と並ぶように配置された旋回スクロール34を含んで構成されている。圧縮機構30は、駆動軸14の回転に伴って旋回スクロール34が公転する際に固定スクロール32と噛み合うことで冷媒を圧縮する。
旋回スクロール34および固定スクロール32は、旋回スクロール34が軸方向DRaの一方側に配置され、固定スクロール32が軸方向DRaの他方側に配置されている。旋回スクロール34は、円盤状に形成された旋回基板部341を有する。旋回基板部341は、その略中心部に駆動軸14の偏心軸部141が摺動可能に挿入される円筒状のボス部342が形成されている。ボス部342は、その内側の部位が、偏心軸部141を摺動可能に支持する偏心軸受部342aを構成している。
旋回スクロール34には、偏心軸部141の周りを自転することを防止する自転防止機構を構成するオルダムリング36が連結されている。これにより、旋回スクロール34は、駆動軸14が回転すると、偏心軸部141の周りを自転することなく、駆動軸14の軸線CLを公転中心として公転する。換言すれば、旋回スクロール34は、駆動軸14が回転すると、駆動軸14の軸線CLを中心として旋回する。
旋回スクロール34とミドルハウジング18との間には、円環状に構成された2枚のスラストプレート184、343が配置されている。2枚のスラストプレート184、343のうちミドルハウジング18側のスラストプレート184は、ミドルハウジング18に対して固定されている。また、旋回スクロール34側のスラストプレート343は、旋回スクロール34と一体的に回転するように旋回スクロール34に対して固定されている。
旋回スクロール34には、旋回基板部341から固定スクロール32側に向かって突き出る渦巻き状の旋回歯部344が形成されている。図示しないが、旋回歯部344には、固定スクロール32側の先端部にチップシールが装着されている。
一方、固定スクロール32は、円盤状に形成された固定基板部321を有する。固定スクロール32には、固定基板部321から旋回スクロール34側に向かって突き出る渦巻き状の固定歯部322が形成されている。具体的には、固定基板部321には、渦巻き状の溝部が形成されており、当該渦巻き状の溝部の側壁が固定歯部322を構成している。図示しないが、固定歯部322には、旋回スクロール34側の先端部にチップシールが装着されている。
固定スクロール32および旋回スクロール34は、固定歯部322と旋回歯部344とが噛み合って複数箇所で接触することによって、三日月状の作動室31が複数箇所形成される。なお、図2では、図示の都合上、複数個の作動室31のうち1つの作動室にだけ符号を付している。
作動室31は、旋回スクロール34が公転することによって外周側から中心側へ容積を減少させながら移動する。図示しないが、作動室31には、ミドルハウジング18等に形成された冷媒供給通路を通じて、吸込口123からハウジング12内に吸い込まれた冷媒が供給されるようになっている。作動室31内の冷媒は、作動室31の容積が減少することによって圧縮される。
固定基板部321の中心部には、作動室31で圧縮された冷媒を吐出する吐出穴323が形成されている。固定基板部321には、作動室31への冷媒の逆流を防止する逆止弁をなす図示しないリード弁と、リード弁の最大開度を規制するストッパ324が設けられている。なお、リード弁およびストッパ324は、固定基板部321に対してボルトB2によって締結固定されている。
ここで、旋回スクロール34は、圧縮機構30の作動時に、作動室31で圧縮された高圧冷媒の圧力によって、固定スクロール32の固定基板部321から離れる方向に変位するように配置されている。旋回スクロール34の旋回基板部341は、圧縮機構30の作動時に、スラストプレート184、343を介してミドルハウジング18に摺動可能に支持される。また、固定基板部321と旋回基板部341との間には、旋回スクロール34の旋回基板部341が固定スクロール32の固定基板部321から離れる方向に変位することで微小な隙間Cが形成される。
ハウジング12の内部には、固定基板部321よりも軸方向DRaの他方側に、固定基板部321とサブハウジング部122との間に形成される空間を2つの空間に仕切るセパレータ125が配置されている。セパレータ125は、固定基板部321の上方側部位および吐出穴323を覆うカップ状の形状を有している。
ハウジング12の内部には、セパレータ125と固定基板部321との間に、吐出穴323と連通する吐出室126が形成されている。具体的には、吐出室126は、固定基板部321とセパレータ125の凹部によって区画形成されている。
また、ハウジング12の内部には、セパレータ125よりも軸方向DRaの他方側に油分離部50が収容される収容空間127、および収容空間127に連通する高圧貯油空間128が形成されている。本実施形態の高圧貯油空間128および吐出室126は、セパレータ125によって仕切られている。このため、吐出室126に吐出される冷媒の圧力脈動が高圧貯油空間128に貯留される潤滑油に殆ど影響しない。
具体的には、収容空間127は、セパレータ125とサブハウジング部122とで区画形成されている。収容空間127は、円柱状の空間で構成されている。収容空間127は、セパレータ125の上方側の部位に形成された連通路125aを介して吐出室126に連通している。
油分離部50は、吐出室126から収容空間127に流入した高圧冷媒から潤滑油を分離するオイル分離器である。油分離部50は、二重円筒構造を有する遠心分離型のオイル分離器で構成されている。
具体的には、油分離部50は、吐出口124に固定された分離パイプ51を含んで構成されている。分離パイプ51は、上方側に位置して吐出口124に固定される固定部511、および固定部511よりも下方側に位置して収容空間127に露出するパイプ部512を備えている。パイプ部512は、その側面が収容空間127において連通路125aと対向するように収容空間127に位置付けられている。また、パイプ部512は、収容空間127の内壁から離間するように固定部511よりも小径に構成されている。
これにより、連通路125aを介して収容空間127に流入した高圧冷媒は、パイプ部512の周囲を旋回する。この際、高圧冷媒に含まれる冷媒と潤滑油が分離される。パイプ部512で分離された高圧冷媒は、分離パイプ51の内側の吐出路513を介して外部に吐出される。一方、パイプ部512で分離された潤滑油は、自重によって下方に落下し、収容空間127の下方の高圧貯油空間128に貯留される。
高圧貯油空間128は、固定スクロール32の下方側部位とサブハウジング部122とで区画形成されている。高圧貯油空間128は、収容空間127の下方側に形成され、油分離部50で分離された潤滑油を貯留する空間である。この高圧貯油空間128は、連通路125aおよび収容空間127を介して吐出室126に連通しているので、雰囲気圧力が高圧冷媒と圧力と同等となる。高圧貯油空間128に貯留された潤滑油は、圧縮機構30に設けられた導入路60等を介して、ハウジング12の内部の摺動部位14a~14c、184、343に導入される。
圧縮機構30には、油分離部50で分離された潤滑油をハウジング12の内部の摺動部位14a~14c、184、343に導入するための導入路60が形成されている。導入路60は、固定スクロール32に形成された固定側導入路61、旋回スクロール34に形成された旋回側導入路62を含んで構成されている。ここで、ハウジング12の内部の主な摺動部位14a~14cは、高圧冷媒よりも低い圧力となる低圧冷媒の雰囲気圧力となる空間に位置する。このため、高圧貯油空間128に貯留された潤滑油は、高圧貯油空間128と主な摺動部位14a~14cが配置される空間との圧力差によって導入路60を介して供給される。
図3に示すように、固定側導入路61は、固定スクロール32の固定基板部321に形成されている。固定側導入路61は、作動室31に連通しないように、固定基板部321のうち固定歯部322が形成された部位を避けた位置に形成されている。固定側導入路61は、固定基板部321の表裏を貫通する貫通穴で構成されている。
固定側導入路61は、固定基板部321における高圧貯油空間128を形成する面に開口する固定側連通路611、固定側連通路611に連通するとともに旋回スクロール34に相対する面に開口する固定側絞り流路612で構成されている。
固定側絞り流路612は、固定側導入路61を流れる潤滑油が過剰にならないように潤滑油の流量を制限するものである。固定側絞り流路612は、固定側連通路611よりも通路断面積が小さくなっている。固定側絞り流路612は、旋回スクロール34に相対する面に開口する固定側開口613を有する。
一方、旋回側導入路62は、旋回スクロール34の旋回基板部341に形成されている。旋回側導入路62は、作動室31に連通しないように、旋回基板部341のうち旋回歯部344が形成された部位を避けた位置に形成されている。
旋回側導入路62は、潤滑油の少なくとも一部が偏心軸部141とボス部342との摺動部位14cに供給されるように、ボス部342の内側に連通している。具体的には、旋回側導入路62は、旋回基板部341における固定スクロール32に相対する面に開口する旋回側絞り流路621、旋回側絞り流路621に連通するとともに、ボス部342の内側に開口する旋回側連通路622で構成されている。
旋回側絞り流路621は、旋回側導入路62を流れる潤滑油が過剰にならないように潤滑油の流量を制限するものである。旋回側絞り流路621は、旋回側連通路622よりも通路断面積が小さくなっている。旋回側絞り流路612は、固定スクロール32に相対する面に開口する旋回側開口623を有する。
旋回側連通路622は、旋回基板部341の外側端部からボス部342の内側に向かって延びる貫通穴で構成されている。旋回側連通路622は、旋回基板部341の外側端部が閉塞部材622aによって閉塞されている。
ところで、固定側導入路61と旋回側導入路62とが間欠的に連通する構造になっている場合、圧縮機構30の作動時に、各導入路61、62が連通する連通状態と各導入路61、62の連通が遮断される遮断状態とが交互に繰り返される。
本発明者らの調査によると、圧縮機構30の作動時に、導入路60が連通状態から遮断状態に切り替わる際に導入路60に圧力脈動が生ずることが判った。圧力脈動は、圧縮機10における振動を増大させる要因となることから好ましくない。
そこで、固定側導入路61および旋回側導入路62は、固定側導入路61から旋回側導入路62に潤滑油が流れる構造になっている。固定側導入路61および旋回側導入路62は、圧縮機構30の作動時に高圧冷媒の圧力によって固定スクロール32と旋回スクロール34との間に生ずる隙間Cを介して連通する構造になっている。すなわち、導入路60は、隙間Cを介して固定側導入路61および旋回側導入路62が常時連通するとともに、固定側絞り流路612と旋回側絞り流路621とが直列に連なる絞り構造を有している。なお、固定スクロール32と旋回スクロール34との間に生ずる隙間Cは、固定側導入路61から流出した潤滑油を旋回側導入路62に導入させる隙間流路CFを兼ねている。
本実施形態の固定側開口613は、固定基板部321のうち、上下方向DRvにおいて、旋回側導入路62の旋回側開口623と対向する部位とは異なる部位に開口している。具体的には、固定側開口613は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側開口613と旋回側開口623との位置関係が変化しても、軸方向DRaにおいて旋回側開口623と重なり合わない位置に開口している。換言すれば、固定側開口613は、旋回スクロール34が公転しても、旋回基板部341における旋回側開口623が形成されていない部位に対向する位置に開口している。
ここで、図4は、旋回側開口623の移動軌跡Tと固定側開口613との位置関係を説明するための説明図である。図4では、旋回スクロール34が公転する際の旋回側開口623の移動軌跡Tを二点鎖線で示している。なお、移動軌跡Tを二点鎖線で示すことは、図4以外の図面でも同様である。
図4に示すように、固定側開口613は、旋回側開口623の移動軌跡Tの内側に位置するように開口している。これにより、固定側開口613は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側開口613と旋回側開口623との位置関係が変化しても、軸方向DRaにおいて旋回側開口623とは重なり合わないことになる。
より詳しくは、固定側開口613は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側開口613と旋回側開口623との位置関係が変化しても旋回側開口623の中心と固定側開口613の中心との中心間距離Lが一定となる位置に開口している。換言すれば、固定側開口613は、旋回側開口623の移動軌跡Tの中心となる位置に開口している。
次に、圧縮機10の作動について図5を参照して説明する。圧縮機10は、インバータ25から電動機20のステータ21に電力が供給されると、ロータ22および駆動軸14が回転するとともに旋回スクロール34が駆動軸14に対して公転運動する。
これにより、旋回歯部344と固定歯部322との間に形成された三日月状の作動室31が外周側から中心側へ容積を減少させながら移動する。このとき、外周側に位置する作動室31に対して冷媒が供給される。作動室31に供給された冷媒は、作動室31の容積の減少に伴って圧縮される。作動室31内の圧力がリード弁の開弁圧に達すると、作動室31で圧縮された冷媒が固定スクロール32の吐出穴323から吐出室126に吐出される。
吐出室126に吐出された冷媒は、連通路125aを介して収容空間127に流入し、油分離部50にて冷媒から潤滑油が分離される。潤滑油が分離された冷媒は、油分離部50の吐出路513から圧縮機10の吐出冷媒として吐出される。
一方、冷媒から分離された潤滑油は、図5の矢印F1に示すように、自重によって落下して高圧貯油空間128に貯められる。高圧貯油空間128に貯められた潤滑油は、圧縮機構30の導入路60を介してハウジング12の内部の各摺動部位14a、14b、14cに供給される。
具体的には、高圧貯油空間128に貯留された潤滑油は、図5の矢印F2に示すように、固定側導入路61に流入する。固定側導入路61に流入した潤滑油は、固定側絞り流路612を通過する際に中間圧Pmとなるまで減圧される。
ここで、圧縮機構30の作動時には、旋回スクロール34に作用する高圧冷媒の圧力Phによって、旋回スクロール34が固定スクロール32から離れるように変位する。すなわち、旋回スクロール34は、高圧冷媒の圧力Phによってミドルハウジング18側に押し付けられる。これにより、旋回スクロール34と固定スクロール32との間に隙間Cが形成される。
固定側絞り流路612にて減圧された潤滑油は、図5の矢印F3に示すように、旋回スクロール34と固定スクロール32との間の隙間Cを介して旋回側導入路62に流入し、旋回側絞り流路621によってさらに減圧される。旋回側導入路62に流入した潤滑油は、旋回側絞り流路621によって減圧された後、旋回側連通路622を介してボス部342の内側に流入する。
ボス部342の内側に流入した潤滑油は、図5の矢印F4に示すように、駆動軸14に形成された油供給路140を介して各摺動部位14a~14cに供給される。また、第3摺動部位14cに供給された潤滑油は、その一部が重力によってミドルハウジング18の内壁に沿って流下し、2枚のスラストプレート184、343の摺動部位に供給される。これらにより、駆動軸14における各摺動部位14a~14c、およびスラストプレート184、343同士の摺動部位の潤滑性を良好に維持することができる。
以上説明した本実施形態の圧縮機10は、潤滑油をハウジング12の各摺動部位14a~14c、184、343に導くための導入路60である固定側導入路61および旋回側導入路62が圧縮機構30に形成されている。そして、固定側導入路61および旋回側導入路62が、圧縮機構30の作動時に高圧冷媒の圧力Phによって各スクロール32、34の間に生ずる隙間Cを介して常時連通する構成になっている。
これによると、隙間Cを介して固定側導入路61から旋回側導入路62に潤滑油が連続的に流れる。すなわち、本実施形態の圧縮機10は、圧縮機構30の作動時に導入路60が開閉されないので、導入路60を流れる潤滑油の流れが瞬時に止められることがない。このため、圧縮機構30に形成された導入路60を介して潤滑油をハウジング12の内部の摺動部位14a~14cに導く際の圧力脈動を抑制することができる。この結果、圧縮機10の振動および騒音の発生を抑制することができる。
また、本実施形態の導入路60は、隙間Cを介して固定側絞り流路612と旋回側絞り流路621とが直列に連なっている。これによると、導入路60を介して適量の潤滑油をハウジング12の内部の摺動部位14a~14cに供給することができる。
ここで、旋回側開口623と固定側開口613とが、旋回スクロール34が所定の位置に公転した際に軸方向DRaにおいて重なり合う構成が考えられる。
このような構成では、旋回側開口623と固定側開口613とが軸方向DRaに重なり合う場合、旋回側開口623と固定側開口613とが軸方向DRaに重なり合わない場合に比べて潤滑油が導入路60に流れ易くなってしまう。すなわち、当該構成では、旋回スクロール34の公転に伴って潤滑油に圧力変動や流量変動が生じる可能性がある。
これに対して、本実施形態では、旋回側開口623および固定側開口613が、旋回スクロール34が公転しても、軸方向DRaにおいて重なり合わない構成になっている。これによると、旋回スクロール34の公転に伴う潤滑油の圧力変動や流量変動を抑制することができる。
また、旋回スクロール34が公転する際の旋回側開口623の移動軌跡Tの外側に固定側開口613が開口していると、旋回スクロール34の公転に伴って旋回側開口623と固定側開口613との距離が大きく変化する。すなわち、旋回スクロール34が公転する際の旋回側開口623の移動軌跡Tの外側に固定側開口613が開口していると、旋回スクロール34が公転する際の旋回スクロール34と固定スクロール32との隙間Cのうち潤滑油が流れる流路長さが大きく変化する。このことは、導入路60を流れる潤滑油に微小な圧力脈動を生じさせる要因となり得る。
これに対して、本実施形態の固定側開口613は、旋回スクロール34が公転する際の旋回側開口623の移動軌跡Tの内側に位置するように開口している。具体的には、固定側開口613は、旋回スクロール34の公転に伴って旋回側開口623と固定側開口613との位置関係が変化しても旋回側開口623の中心と固定側開口613の中心との中心間距離Lが一定となる位置に開口している。
これによると、旋回スクロール34が公転する際の旋回スクロール34と固定スクロール32との隙間Cのうち潤滑油が流れる流路の流路長さが実質的に変化しなくなるので、圧力脈動を充分に抑制することができる。
また、本実施形態では、導入路60が固定スクロール32に形成された固定側導入路61および旋回スクロール34に形成された旋回側導入路62で構成されている。これによると、例えば、ハウジング12に対して導入路60を形成する場合等に比べて、高圧貯油空間128に貯留された潤滑油を短いルートでボス部342の内側に導くことができる。
さらに、本実施形態では、固定側導入路61を固定側連通路611と固定側絞り流路612とで構成している。これによると、固定側絞り流路612の流路長さが短縮されるので、異物等による固定側導入路61の閉塞を抑制することができる。また、固定側絞り流路612の流路長さが短縮されると、固定スクロール32に対して固定側絞り流路612を形成する際の加工が行い易くなる。
(第1実施形態の変形例)
上述の第1実施形態では、固定側開口613が、旋回スクロール34が公転しても旋回側開口623の中心と固定側開口613の中心との中心間距離Lが一定となる位置に開口している例について説明したが、これに限定されない。
固定側開口613は、旋回側開口623の移動軌跡Tの内側に位置するように開口していれば、例えば、図6に示すように、旋回側開口623の中心と固定側開口613の中心との中心間距離Lが変化する位置に設けられていてもよい。
また、各スクロール32、34の隙間Cにおける潤滑油の流路長さの変化に起因する圧力脈動が極めて小さい場合、固定側開口613は、例えば、旋回側開口623の移動軌跡Tの外側に設けられていてもよい。なお、これらのことは、以下の第2実施形態においても同様である。
また、上述の第1実施形態では、固定側導入路61として固定側連通路611を含んで構成されているものを例示したが、これに限定されない。固定側導入路61は、例えば、固定側絞り流路612だけで構成されていてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図7、図8を参照して説明する。本実施形態では、各スクロール32、34の隙間Cからの意図しない潤滑油の漏れを抑制する構造を追加している点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図7に示すように、固定基板部321には、各スクロール32、34の隙間Cからの潤滑油漏れを抑制するシール構造63が設けられている。シール構造63は、固定基板部321において固定側開口613を囲むように形成された円環状の収容溝631、収容溝631に対して収容された円環状のシール部材632で構成されている。
シール部材632は、各スクロール32、34の隙間Cのうち、固定側導入路61から旋回側導入路62へと潤滑油を導く隙間流路CFを密封するためのものである。シール部材632は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴム)で構成されている。
シール部材632は、収容溝631に対して軸方向DRaに変位可能に収容されている。すなわち、シール部材632の軸方向DRaの長さは、収容溝631の底部から旋回基板部341までの距離よりも短くなっている。なお、シール部材632は、収容溝631から外れないように、その軸方向DRaの長さが各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。
また、シール部材632は、シール部材632と収容溝631の底部との間に潤滑油が流入可能なように、その内径が収容溝631の内周側の側面よりも若干大きくなっている。これにより、圧縮機構30の作動時には、シール部材632が、シール部材632と収容溝631の底部との間に流入する潤滑油の圧力によって旋回基板部341側に押し付けられる。
収容溝631は、固定基板部321のうち固定側開口613の周囲に形成された凹部である。収容溝631は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側開口613と旋回側開口623との位置関係が変化しても、シール部材632によって旋回側開口623を囲むことが可能な大きさを有している。
具体的には、収容溝631は、図8に示すように、旋回側開口623の移動軌跡Tの外側を囲むことが可能な大きさを有している。すなわち、収容溝631は、その径が旋回側開口623の移動軌跡Tの外径よりも大きくなっている。なお、図8では、シール部材632が占める範囲にドット柄のハッチングを付している。
本実施形態では、収容溝631が形成された固定スクロール32の固定側開口613が旋回スクロール34に相対する第1開口を構成し、旋回側開口623が固定スクロール32に相対する第2開口を構成する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、第1実施形態と同様の構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。このことは、以降の実施形態においても同様である。
本実施形態の圧縮機10は、固定基板部321に対して、各スクロール32、34の隙間Cからの潤滑油漏れを抑制するシール構造63が設けられている。これによると、潤滑油をシール部材632の内側に止め置くことができるので、各スクロール32、34の間に生ずる隙間Cを介して圧縮機構30の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、固定基板部321に対して、シール構造63を設ける例について説明したが、これに限定されない。圧縮機10は、例えば、シール構造63と同様に構成されるシール構造が旋回基板部341に対して設けられていてもよい。シール構造は、例えば、旋回基板部341のうち旋回側開口623を囲む収容溝、当該収容溝に収容されるシール部材で構成することができる。この場合の収容溝は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側開口613と旋回側開口623との位置関係が変化しても、シール部材によって固定側開口613を囲むことが可能な大きさとすればよい。なお、本例では、収容溝が形成される旋回スクロール34の旋回側開口623が固定スクロール32に相対する第1開口を構成し、固定側開口613が旋回スクロール34に相対する第2開口を構成する。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図9、図10を参照して説明する。本実施形態では、固定側導入路61が、固定側連通路611、固定側絞り流路612に加えて、固定側溝流路614を有している点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図9に示すように、固定側導入路61は、固定側連通路611、固定側絞り流路612に加えて、旋回スクロール34に相対する面に開口する固定側溝流路614を有する。なお、本実施形態の固定側絞り流路612は、固定側連通路611および固定側溝流路614の双方と連通するように、固定側連通路611と固定側溝流路614との間に形成されている。
固定側溝流路614は、略円柱形状に形成された有底溝で構成されている。固定側溝流路614は、旋回スクロール34に相対する面に開口する固定側溝開口614aを有している。また、固定側溝流路614は、固定側絞り流路612よりも通路断面積が大きくなっている。また、固定側溝流路614の流路長さ(すなわち、溝深さ)は、各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。
固定側溝開口614aは、旋回スクロール34の公転に伴って固定側溝開口614aと旋回側開口623との位置関係が変化しても軸方向DRaにおいて旋回側開口623の全体を覆う大きさを有している。
具体的には、固定側溝開口614aは、図10に示すように、旋回側開口623の移動軌跡Tの外側を囲むことが可能な大きさを有している。すなわち、固定側溝開口614aは、その開口径が旋回側開口623の移動軌跡Tの外径よりも大きくなっている。
また、固定側溝流路614の底面に固定側絞り流路612が開口している。具体的には、固定側絞り流路612は、固定側溝流路614の底面のうち略中心となる位置に開口している。
本実施形態では、固定側溝流路614が、旋回スクロール34側に相対する面に開口する第1給油通路を構成し、固定側連通路611および固定側絞り流路612が、旋回スクロール34に相対する面の反対側に開口する第2給油通路を構成する。また、本実施形態では、固定側溝開口614aが第1給油通路において旋回スクロール34に相対する第1開口を構成し、旋回側開口623が固定スクロール32に相対する第2開口を構成する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、固定側溝流路614の固定側溝開口614aが、旋回スクロール34が公転しても軸方向DRaにおいて旋回側開口623の全体を覆う大きさを有している。
これによると、潤滑油は、固定側導入路61から旋回側導入路62に流れる際に固定側溝流路614を経由する。そして、固定側溝開口614aは、旋回スクロールが公転しても軸方向DRaにおいて常に旋回側開口623の全体を覆う大きさを有しているので、固定側導入路61から旋回側導入路62に連続的に潤滑油を流すことができる。
ここで、例えば、旋回スクロール34と固定スクロール32との隙間Cの間隔が変化すると、固定側導入路61から旋回側導入路62へ潤滑油を導く隙間流路CFに流量変動や圧力変動が生じてしまうことが懸念される。
これに対して、固定側溝開口614aが旋回側開口623の全体を覆う大きさを有していれば、隙間流路CFを充分に確保することができるので、隙間流路CFに流量変動や圧力変動を抑制することができる。
加えて、固定側溝流路614は、その通路断面積が固定側絞り流路612よりも大きくなっているので、潤滑油の導入路60としての機能だけでなく、固定側導入路61から旋回側導入路62に流れる潤滑油の圧力変動や流量変動を抑えるバッファとしても機能する。このように、固定側導入路61および旋回側導入路62の一方に対してバッファとなる機能を付加すれば、導入路60における圧力脈動を充分に抑制することができる。
さらに、固定側絞り流路612は、固定側溝流路614よりも通路断面積が小さくなっている。このため、導入路60を介して潤滑油が過剰に摺動部位14a~14cに流れてしまうことを抑制することができる。
(第3実施形態の変形例)
上述の第3実施形態では、固定側絞り流路612が、固定側溝流路614の底面のうち略中心となる位置に開口する例について説明したが、これに限定されない。固定側絞り流路612は、その開口が、例えば、図11に示すように、固定側溝流路614の底面における中心から外れた位置に設けられていてもよい。これによっても第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図12を参照して説明する。本実施形態では、旋回側導入路62が、旋回側絞り流路621、旋回側連通路622に加えて、旋回側溝流路624を有している点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図12に示すように、旋回側導入路62は、旋回側絞り流路621、旋回側連通路622に加えて、固定スクロール32に相対する面に開口する旋回側溝流路624を有する。なお、本実施形態の旋回側絞り流路621は、旋回側連通路622および旋回側溝流路624の双方と連通するように、旋回側連通路622と旋回側溝流路624との間に形成されている。
旋回側溝流路624は、略円柱形状に形成された有底溝で構成されている。旋回側溝流路624は、固定スクロール32に相対する面に開口する旋回側溝開口624aを有している。旋回側溝流路624は、旋回側絞り流路621よりも通路断面積が大きくなっている。また、旋回側溝流路624の流路長さ(すなわち、溝深さ)は、各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。
旋回側溝開口624aは、旋回スクロール34の公転に伴って固定側開口613と旋回側溝開口624aとの位置関係が変化しても軸方向DRaにおいて固定側開口613の全体を覆う大きさを有している。
旋回側溝流路624の底面には、旋回側絞り流路621が開口している。本実施形態では、旋回側溝流路624が、固定スクロール32側に相対する面に開口する第1給油通路を構成し、旋回側絞り流路621および旋回側連通路622が、固定スクロール32に相対する面の反対側に開口する第2給油通路を構成する。また、本実施形態では、旋回側溝開口624aが第1給油通路において固定スクロール32に相対する第1開口を構成し、固定側開口613が旋回スクロール34に相対する第2開口を構成する。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、旋回側溝流路624の旋回側溝開口624aが、旋回スクロール34が公転しても軸方向DRaにおいて固定側開口613の全体を覆う大きさを有している。これによると、第3実施形態と同様に、固定側導入路61から旋回側導入路62に連続的に潤滑油を流すことができる。また、旋回側溝流路624によって隙間流路CFを充分に確保することができるので、隙間流路CFに流量変動や圧力変動を抑制することができる。
加えて、旋回側溝流路624は、固定側導入路61から旋回側導入路62に流れる潤滑油の圧力変動や流量変動を抑えるバッファとしても機能するので、導入路60における圧力脈動を充分に抑制することができる。
さらに、旋回側絞り流路621は、旋回側溝流路624よりも通路断面積が小さくなっている。このため、導入路60を介して潤滑油が過剰に摺動部位14a~14cに流れてしまうことを抑制することができる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図13、図14を参照して説明する。本実施形態では、各スクロール32、34の隙間Cからの意図しない潤滑油漏れを抑制する構造を追加している点が第3実施形態と相違している。本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明し、第3実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図13に示すように、固定基板部321には、各スクロール32、34の隙間Cからの潤滑油漏れを抑制するシール構造64が設けられている。シール構造64は、固定基板部321において固定側溝開口614aを囲むように形成された円環状の収容溝641、収容溝641に対して収容された円環状のシール部材642で構成されている。
シール部材642は、各スクロール32、34の隙間Cのうち、固定側導入路61から旋回側導入路62へ潤滑油を導く隙間流路CFを密封するためのものである。シール部材642は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂)で構成されている。
シール部材642は、収容溝641に対して軸方向DRaに変位可能に収容されている。すなわち、シール部材642の軸方向DRaの長さは、収容溝641の底部から旋回基板部341までの距離よりも短くなっている。なお、シール部材642は、収容溝641から外れないように、その軸方向DRaの長さが各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。
また、シール部材642は、シール部材642と収容溝641の底部との間に潤滑油が流入可能なように、その内径が収容溝641の内周側の側面よりも若干大きくなっている。これにより、圧縮機構30の作動時には、シール部材642が、シール部材642と収容溝641の底部との間に流入する潤滑油の圧力によって旋回基板部341側に押し付けられる。
収容溝641は、固定基板部321のうち固定側溝開口614aの周囲に形成された凹部である。収容溝641は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側溝開口614aと旋回側開口623との位置関係が変化しても、シール部材642によって旋回側開口623を囲むことが可能な大きさを有している。
具体的には、収容溝641は、図14に示すように、旋回側開口623の移動軌跡Tの外側を囲むことが可能な大きさを有している。すなわち、収容溝631は、その内径が旋回側開口623の移動軌跡Tの外径よりも大きくなっている。なお、図14では、シール部材632が占める範囲にドット柄のハッチングを付している。
本実施形態では、収容溝641が形成された固定スクロール32の固定側溝開口614aが旋回スクロール34に相対する第1開口を構成し、旋回側開口623が固定スクロール32に相対する第2開口を構成する。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、固定基板部321に対して、各スクロール32、34の隙間Cからの潤滑油漏れを抑制するシール構造64が設けられている。これによると、潤滑油をシール部材642の内側に止め置くことができるので、各スクロール32、34の間に生ずる隙間Cを介して圧縮機構30の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
(第5実施形態の変形例)
上述の第5実施形態では、固定側絞り流路612が、固定側溝流路614の底面のうち略中心となる位置に開口する例について説明したが、これに限定されない。固定側絞り流路612は、その開口が、例えば、図15に示すように、固定側溝流路614の底面における中心から外れた位置に設けられていてもよい。これによっても第5実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、図15では、シール部材632が占める範囲にドット柄のハッチングを付している。
また、上述の第5実施形態では、固定側導入路61に固定側溝流路614が追加された第3実施形態の構成に対してシール構造64を適用する例に説明したが、これに限定されない。シール構造64は、例えば、旋回側導入路62に旋回側溝流路624が追加された第4実施形態の構成にも適用可能である。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図16を参照して説明する。本実施形態では、旋回基板部341に対して、各スクロール32、34の隙間Cからの意図しない潤滑油漏れを抑制する構造が追加されている点が第3実施形態と相違している。本実施形態では、第3実施形態と異なる部分について主に説明し、第3実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図16に示すように、旋回基板部341には、各スクロール32、34の隙間Cからの潤滑油漏れを抑制するシール構造65が設けられている。シール構造65は、旋回基板部341において旋回側開口623を囲むように形成された円環状の収容溝651、収容溝651に対して収容された円環状のシール部材652で構成されている。
シール部材652は、各スクロール32、34の隙間Cのうち、固定側導入路61から旋回側導入路62へ潤滑油を導く隙間流路CFを密封するためのものである。シール部材652は、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂)で構成されている。
シール部材652は、収容溝651に対して軸方向DRaに変位可能に収容されている。すなわち、シール部材652の軸方向DRaの長さは、収容溝651の底部から固定基板部321までの距離よりも短くなっている。なお、シール部材652は、収容溝651から外れないように、その軸方向DRaの長さが各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。
また、シール部材652は、シール部材652と収容溝651の底部との間に潤滑油が流入可能なように、その内径が収容溝651の内周側の側面よりも若干大きくなっている。これにより、圧縮機構30の作動時には、シール部材652が、シール部材652と収容溝651の底部との間に流入する潤滑油の圧力によって固定基板部321側に押し付けられる。
収容溝651は、旋回基板部341のうち旋回側開口623の周囲に形成された凹部である。収容溝651は、旋回スクロール34の公転に伴って固定側溝開口614aと旋回側開口623との位置関係が変化しても、シール部材642によって固定側溝開口614aを囲むことが可能な大きさを有している。
その他の構成は、第3実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、旋回基板部341に対して、各スクロール32、34の隙間Cからの潤滑油漏れを抑制するシール構造65が設けられている。これによると、潤滑油をシール部材652の内側に止め置くことができるので、各スクロール32、34の間に生ずる隙間Cを介して圧縮機構30の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
(第6実施形態の変形例)
上述の第6実施形態では、固定側導入路61に固定側溝流路614が追加された第3実施形態の構成に対してシール構造65を適用する例に説明したが、これに限定されない。シール構造65は、例えば、旋回側導入路62に旋回側溝流路624が追加された第4実施形態の構成にも適用可能である。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図17、図18を参照して説明する。本実施形態では、固定側導入路61の内側に可動給油部材66が追加されている点が第1実施形態と相違していしている。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図17に示すように、固定基板部321には、固定基板部321における高圧貯油空間128を形成する面に開口する固定側連通路611、固定側連通路611に連通するとともに旋回スクロール34に相対する面に開口する可動収容溝部326が形成されている。固定側連通路611および可動収容溝部326は、固定基板部321のうち固定歯部322が形成された部位を避けた位置に形成されている。可動収容溝部326は、可動給油部材66が収容される空間である。
可動給油部材66は、可動収容溝部326の内周面に対応した形状(例えば、円筒形状)を有する金属製のブロックで構成されている。可動給油部材66は、旋回スクロール34に近づく方向に変位可能に可動収容溝部326に収容されている。すなわち、可動給油部材66は、軸方向DRaに変位可能なように可動収容溝部326に収容されている。
具体的には、可動給油部材66は、軸方向DRaの長さが、可動収容溝部326の底部から旋回基板部341までの距離よりも短くなっている。なお、可動給油部材66は、可動収容溝部326から外れないように、その軸方向DRaの長さが各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。
可動給油部材66は、軸方向DRaの一方側に旋回スクロール34に対向する対向端面661が形成され、軸方向DRaの他方側に高圧受圧面662が形成されている。また、可動給油部材66には、対向端面661における後述する可動溝開口672aを囲む開口囲繞部663が設けられている。
高圧受圧面662は、油分離部50で分離された潤滑油の圧力を受ける受圧面である。高圧受圧面662には、油分離部50で分離された潤滑油の圧力が作用する。油分離部50で分離された潤滑油の圧力は高圧冷媒と同等の圧力となる。このため、高圧受圧面662には、実質的に高圧冷媒と同等の圧力が作用する。
可動給油部材66には、潤滑油を旋回側導入路62側に流す可動給油路67が形成されている。可動給油路67は、可動給油部材66の略中央部において軸方向DRaに沿って延びる貫通穴で構成されている。本実施形態の固定側導入路61は、固定側連通路611、可動収容溝部326の一部、可動給油路67で構成されている。
具体的には、可動給油路67は、高圧受圧面662に開口する可動絞り流路671、可動絞り流路671に連通するとともに対向端面661に開口する可動溝流路672で構成されている。
可動絞り流路671は、固定側導入路61を流れる潤滑油が過剰にならないように潤滑油の流量を制限するものである。可動絞り流路671は、その通路断面積S1が固定側連通路611の通路断面積S2よりも小さくなっている。可動絞り流路671は、可動給油部材66の高圧受圧面662に開口する絞り側開口671aを有している。本実施形態では、絞り側開口671aが、可動給油路67における一端側に位置する開口を構成する。
可動溝流路672は、略円柱形状に形成された有底溝で構成されている。可動給油部材66の対向端面661に開口する可動溝開口672aを有している。可動溝流路672の流路長さ(すなわち、溝深さ)は、各スクロール32、34の隙間Cの間隔よりも大きくなっている。本実施形態では、可動溝開口672aが、可動給油路67における他端側に位置する開口を構成する。
可動溝開口672aは、旋回スクロール34の公転に伴って可動溝開口672aと旋回側開口623との位置関係が変化しても軸方向DRaにおいて旋回側開口623の全体を覆う大きさを有している。具体的には、可動溝開口672aは、旋回側開口623の移動軌跡の外側を囲むことが可能な大きさを有している。すなわち、可動溝開口672aは、その開口径が旋回側開口623の移動軌跡の外径よりも大きくなっている。
可動溝開口672aは、図18に示すように、その開口面積S3が高圧受圧面662の受圧面積S4よりも小さくなっている(すなわち、S3<S4)。また、可動溝開口672aは、その開口面積S3が可動絞り流路671の通路断面積S1よりも大きくなっている(すなわち、S1<S3)。なお、受圧面積S4は、可動給油部材66における油分離部50で分離された潤滑油の圧力を受ける部分の面積である。
ここで、可動給油部材66には、潤滑油の圧力によって、高圧受圧面662に対して旋回スクロール34側に向かって押圧する第1押圧力Fhが作用し、対向端面661に対して可動収容溝部326側に向かって押圧する第2押圧力Fmが作用する。第1押圧力Fhは、受圧面積S4に対して油分離部50で分離された潤滑油の圧力を乗じた値となる。第2押圧力Fmは、可動溝開口672aの開口面積S3に対して可変絞り流路671を通過した後の潤滑油の圧力を乗じた値となる。
本実施形態では、可動溝開口672aの開口面積S3が受圧面積S4よりも小さいので、必然的に第1押圧力Fhが第2押圧力Fmよりも大きくなる。このため、可動給油部材66は、圧縮機構30の作動時に、高圧受圧面662に作用する油分離部50で分離された潤滑油の圧力によって開口囲繞部663が旋回スクロール34に近づくように押圧される。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、可動給油路67の可動溝開口672aが、旋回スクロール34の公転によらず軸方向DRaにおいて旋回スクロール34に形成された旋回側開口623の全体を覆う大きさを有している。これによると、可動給油路67を介して固定側導入路61から旋回側導入路62に連続的に潤滑油を流すことができる。
また、可動給油路67の可動溝開口672aが旋回側開口623の全体を覆う大きさを有している。このため、可動給油路67によって可動溝開口672aと旋回側開口623との間に形成される流路を充分に確保することができ、当該流路に流量変動や圧力変動を抑制することができる。
加えて、可動給油部材66に対して油分離部50で分離された潤滑油の圧力が作用すると、開口囲繞部663が旋回スクロール34側に押圧されることで、可動給油路67の可動溝開口672aが開口囲繞部663によって密封される。これによると、潤滑油を開口囲繞部663の内側に止め置くことができるので、各スクロール32、34の間に生ずる隙間Cを介して圧縮機構30の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
さらに、可動給油路67は、可動溝開口672aの開口面積S3よりも小さい通路断面積S1を有する可動絞り流路671を有している。これによると、可動溝開口672aの開口面積S3が可変絞り流路671の通路断面積S1よりも大きくなる。このため、可動給油路67の可動溝開口672aは潤滑油の導入路60としての機能だけでなく、固定側導入路61から旋回側導入路62に流れる潤滑油の圧力変動や流量変動を抑えるバッファとしても機能する。このように、固定側導入路61に対してバッファとなる機能を付加すれば、導入路60における圧力脈動を充分に抑制することができる。
また、可変絞り流路671は、可動溝開口672aの開口面積S3よりも通路断面積S1が小さくなっているので、導入路60を介して潤滑油が過剰に摺動部位14a~14cに流れてしまうことを抑制することができる。
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について、図19を参照して説明する。本実施形態では、可動給油路67が、可動絞り流路671、可動溝流路672に加えて、可動連通路673を有している点が第7実施形態と相違している。本実施形態では、第7実施形態と異なる部分について主に説明し、第7実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
図19に示すように、可動給油路67は、可動絞り流路671、可動溝流路672に加えて、可動収容溝部326の対向する面に開口する可動連通路673を有する。可動連通路673は、その通路断面積が可動側絞り流路671の通路断面積よりも大きくなっている。
可動絞り流路671は、可動連通路673および可動溝流路672の双方と連通するように、可動連通路673と可動溝流路672との間に形成されている。可動絞り流路671は、可動連通路673が追加されることに伴って、その流路長さが第7実施形態よりも短くなっている。
その他の構成は、第7実施形態と同様である。本実施形態の圧縮機10は、可動給油路67が、可動絞り流路671、可動溝流路672に加えて、可動連通路673を有している。これによると、可動絞り流路671の流路長さが短縮されるので、異物等による可動給油路67の閉塞を抑制することができる。また、可動絞り流路671の流路長さが短縮されると、可動給油部材66に対して可動絞り流路671を形成する際の加工が行い易くなる。
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
上述の実施形態では、潤滑油の少なくとも一部が偏心軸部141とボス部342との摺動部位14cに供給されるように、旋回側導入路62がボス部342の内側に連通している例について説明したが、これに限定されない。旋回側導入路62は、例えば、潤滑油がスラストプレート184、343の間に供給されるようにスラストプレート184、343の内側に連通するように構成されていてもよい。
上述の実施形態では、ハウジング12がメインハウジング部121およびサブハウジング部122といった2つの分割体を組み合せて構成されたものを例示したが、これに限定されない。ハウジング12は、3つ以上の分割体を組み合せて構成されていてもよい。
上述の実施形態では、ハウジング12における吸込口123および吐出口124の位置を具体的に特定したが、これに限定されない。吸込口123および吐出口124は、ハウジング12のうち上述の実施形態で示した位置以外に設けられていてもよい。
上述の実施形態では、軸受部材16、軸受部181a、偏心軸受部342aそれぞれが滑り軸受で構成されたものを例示したが、これに限定されない。圧縮機10は、軸受部材16、軸受部181a、偏心軸受部342aの少なくとも1つが、滑り軸受以外の軸受(例えば、玉軸受)で構成されていてもよい。
上述の実施形態では、旋回スクロール34の自転防止機構としてオルダムリング36を採用する例について説明したが、これに限定されない。旋回スクロール34の自転防止機構は、例えば、ピン-リング式の自転防止機構が採用されていてもよい。
上述の実施形態では、油分離部50として二重円筒構造を有する遠心分離型のオイル分離器が採用されたものを例示したが、これに限定されない。油分離部50は、例えば、フロート式のオイル分離器が採用されていてもよい。
上述の実施形態では、圧縮機10として、駆動軸14の軸心CLが略水平方向に延びるとともに、圧縮機構30と電動機20とが略水平方向に並んで配置される横置タイプの圧縮機を例示したが、これに限定されない。圧縮機30は、例えば、駆動軸14の軸心CLが略上下方向DRvに延びるとともに、圧縮機構30と電動機20とが略上下方向DRvに並んで配置される縦置タイプの圧縮機として構成されていてもよい。
上述の実施形態では、圧縮機10として、インバータ25がハウジング12に対して一体に取り付けられたインバータ一体型の圧縮機を例示したが、これに限定されない。圧縮機10は、例えば、インタバータ12が別体で構成されたもので構成されていてもよい。
上述の実施形態では、圧縮機30として、電動機20を動力源として圧縮機構30が駆動される電動圧縮機を例示したが、これに限定されない。圧縮機30は、例えば、内燃機関を動力源として圧縮機構30が駆動される構成になっていてもよい。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、圧縮機は、スクロール型の圧縮機構を備える。固定スクロールは、油分離部で分離された潤滑油をハウジングの内部の摺動部位に導く導入路を形成するための固定側導入路が設けられている。旋回スクロールは、固定側導入路とともに導入路を形成するための旋回側導入路が設けられるとともに、高圧冷媒の圧力によって固定スクロールから離れる方向に変位することで固定スクロールとの間に隙間が生ずるように配置されている。そして、旋回側導入路および固定側導入路は、圧縮機構の作動時に高圧冷媒の圧力によって固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間を介して連通する。
第2の観点によれば、圧縮機は、旋回側導入路が固定スクロールに相対する旋回側開口を有し、固定側導入路が旋回スクロールに相対する固定側開口を有する。固定側開口は、旋回スクロールの公転に伴って旋回側開口と固定側開口との位置関係が変化しても、軸方向において重なり合わない位置に開口している。
旋回側開口および固定側開口が、旋回スクロールが所定の位置に公転した際に軸方向において重なり合う構成になっていると、旋回スクロールの公転に伴って圧力変動や流量変動が生じ易くなってしまう。
これに対して、旋回側開口および固定側開口が、旋回スクロールが公転しても、軸方向において重なり合わない構成になっていれば、上述の構成に比べて圧力脈動を抑制することができる。
第3の観点によれば、圧縮機は、固定側開口が、旋回スクロールが公転する際の旋回側開口の移動軌跡の内側に位置するように開口している。
旋回スクロールが公転する際の旋回側開口の移動軌跡の外側に固定側開口が開口していると、旋回スクロールの公転に伴って旋回側開口と固定側開口との距離が大きく変化する。すなわち、旋回スクロールが公転する際の旋回側開口の移動軌跡の外側に固定側開口が開口していると、旋回スクロールが公転する際の旋回スクロールと固定スクロールとの隙間のうち潤滑油が流れる流路の流路長さが大きく変化してしまう。このことは、導入路を流れる潤滑油に微小な圧力脈動を生じさせる要因となる。
これに対して、旋回スクロールが公転する際の旋回側開口の移動軌跡の内側に固定側開口が開口していれば、旋回スクロールが公転する際の各スクロールの隙間のうち潤滑油が流れる流路の流路長さの変化が小さくなるので、圧力脈動が生じ難くなる。
第4の観点によれば、圧縮機は、固定側開口が、旋回スクロールの公転に伴って旋回側開口と固定側開口との位置関係が変化しても旋回側開口の中心と固定側開口の中心との距離が一定となる位置に開口している。
これによると、旋回スクロールが公転する際の各スクロールの隙間のうち潤滑油が流れる流路の流路長さが実質的に変化しなくなるので、圧力脈動を充分に抑制することができる。なお、「距離が一定」とは、厳密に距離が不変となる意味ではなく、距離が部材の寸法の交差や部材の組付時の交差等の製造誤差の範囲内に収まっている状態を意味する。
第5の観点によれば、圧縮機は、固定スクロールおよび旋回スクロールのうち一方のスクロールに、一方のスクロールに形成される導入路のうち他方のスクロールに相対する開口を囲む環状の収容溝が形成されている。一方のスクロールに形成される導入路のうち他方のスクロールに相対する開口を第1開口とし、他方のスクロールに形成される導入路のうち一方のスクロールに相対する開口を第2開口としたとする。収容溝は、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間のうち潤滑油が流れる隙間流路を密封するための環状のシール部材が収容される。さらに、収容溝は、旋回スクロールの公転に伴って第1開口と第2開口との位置関係が変化してもシール部材によって第2開口を囲むことが可能な大きさを有している。
これによると、潤滑油をシール部材の内側に止め置くことができるので、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間を介して圧縮機構の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
第6の観点によれば、圧縮機は、固定スクロールおよび旋回スクロールのうち一方のスクロールに形成される導入路が、他方のスクロールに相対する面に開口する第1給油路、他方のスクロールに相対する面の反対側に開口する第2給油路を含んでいる。
第2給油路は、潤滑油の流量を制限する絞り流路を含んでいる。第1給油路は、絞り部よりも通路断面積が大きくなっている。第1給油路において他方のスクロールに相対する開口を第1開口とし、他方のスクロールに形成される導入路において一方のスクロールに相対する開口を第2開口としたとする。このとき、第1開口は、旋回スクロールの公転に伴って第1開口と第2開口との位置関係が変化しても軸方向において第2開口の全体を覆う大きさを有している。
これによると、潤滑油は、固定側導入路から旋回導入路に流れる際に第1給油路を経由する。そして、第1給油路の第1開口は、旋回スクロールが公転しても軸方向において常に第2開口を覆う大きさを有しているので、固定側導入路から旋回側導入路に連続的に潤滑油を流すことができる。
ここで、例えば、旋回スクロールと固定スクロールとの隙間の間隔が変化すると、第1開口と第2開口との間における潤滑油が流れる流路に流量変動や圧力変動が生じてしまうことが懸念される。
これに対して、第1給油路の第1開口が第2開口の全体を覆う大きさを有していれば、第1給油路によって第1開口と第2開口との間における潤滑油が流れる流路を充分に確保することができる。このため、第1開口と第2開口との間における潤滑油が流れる流路に流量変動や圧力変動を抑制することができる。
加えて、第1給油路は、その通路断面積が絞り流路よりも大きくなっているので、潤滑油の導入路としての機能だけでなく、固定側導入路から旋回導入路に流れる潤滑油の圧力変動や流量変動を抑えるバッファとしても機能する。このように、固定側導入路および旋回側導入路の一方に対してバッファとなる機能を付加すれば、導入路における圧力脈動を充分に抑制することができる。
さらに、第2給油路の絞り流路は、第1給油路よりも通路断面積が小さくなっている。このため、導入路を介して潤滑油が過剰に摺動部位に流れてしまうことを抑制することができる。
第7の観点によれば、圧縮機は、一方のスクロールに、第1開口を囲む環状の収容溝が形成されている。収容溝は、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間のうち潤滑油が流れる隙間流路を密封するための環状のシール部材が収容される。さらに、収容溝は、旋回スクロールの公転に伴って第1開口と第2開口との位置関係が変化してもシール部材によって第2開口を囲むことが可能な大きさを有している。
これによると、潤滑油をシール部材の内側に止め置くことができるので、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間を介して圧縮機構の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
第8の観点によれば、圧縮機は、他方のスクロールに、第2開口を囲む環状の収容溝が形成されている。収容溝は、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間のうち潤滑油が流れる隙間流路を密封するための環状のシール部材が収容される。さらに、収容溝は、旋回スクロールの公転に伴って第1開口と第2開口との位置関係が変化してもシール部材によって第1開口を囲むことが可能な大きさを有している。
これによると、潤滑油をシール部材の内側に止め置くことができるので、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間を介して圧縮機構の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
第9の観点によれば、圧縮機は、固定側導入路に、旋回側導入路に向けて潤滑油を流す可動給油路を有する可動給油部材が旋回スクロールに近づく方向に変位可能に収容されている。可動給油路は、一端側に位置する開口が油分離部で分離された潤滑油の圧力を受ける高圧受圧面に形成され、他端側に位置する開口が旋回スクロールに対向する対向端面に形成されている。他端側に位置する開口は、旋回スクロールが公転しても軸方向において旋回側導入路における固定スクロールに相対する開口の全体を覆う大きさを有し、且つ、他端側に位置する開口の開口面積が高圧受圧面の受圧面積よりも小さくなっている。可動給油部材は、対向端面における他端側に位置する開口を囲む開口囲繞部を有し、高圧受圧面に作用する油分離部で分離された潤滑油の圧力によって開口囲繞部が旋回スクロールに近づくように押圧されている。そして、旋回側導入路および固定側導入路は、可動給油路を介して連通する。
これによると、可動給油路の他端側に位置する開口が、旋回スクロールの公転によらず軸方向において旋回スクロールにおける固定スクロールに相対する開口の全体を覆っている。このため、可動給油路を介して固定側導入路から旋回側導入路に連続的に潤滑油を流すことができる。
また、可動給油路の他端側に位置する開口が旋回スクロール側の開口の全体を覆う大きさを有していれば、可動給油路によって各スクロールの開口の間における潤滑油が流れる流路を充分に確保することができる。このため、各スクロールの開口の間における潤滑油が流れる流路に流量変動や圧力変動を抑制することができる。
加えて、可動給油部材は、油分離部で分離された潤滑油の圧力が作用すると、開口囲繞部が旋回スクロールに近づくように押圧されることで、可動給油路が開口囲繞部によって密封される。これによると、潤滑油を開口囲繞部の内側に止め置くことができるので、固定スクロールと旋回スクロールとの間に生ずる隙間を介して圧縮機構の外部に潤滑油が漏れることを抑制することができる。
第10の観点によれば、圧縮機は、可動給油路が、他端側に位置する開口の開口面積よりも小さい通路断面積を有する絞り流路を含んで構成されている。これによると、他端側に位置する開口は、その開口面積が絞り流路の通路断面積よりも大きくなる。このため、可動給油路における他端側は潤滑油の導入路としての機能だけでなく、固定側導入路から旋回導入路に流れる潤滑油の圧力変動や流量変動を抑えるバッファとしても機能する。このように、固定側導入路に対してバッファとなる機能を付加すれば、導入路における圧力脈動を充分に抑制することができる。
また、絞り流路は、他端側に位置する開口の開口面積よりも通路断面積が小さくなっているので、導入路を介して潤滑油が過剰に摺動部位に流れてしまうことを抑制することができる。
第11の観点によれば、圧縮機の駆動軸は、駆動軸の回転中心から偏心する偏心軸部が設けられている。旋回スクロールには、偏心軸部が摺動可能に挿入されるボス部が設けられている。旋回側導入路は、潤滑油の少なくとも一部が偏心軸部とボス部との摺動部位に供給されるように、ボス部の内側に連通している。これによると、ボス部におけるクランク部との摺動部位に対して圧縮機構に形成された導入路を介して潤滑油を供給することができる。