JP7138003B2 - 工作機械の誤差同定方法及び誤差同定システム - Google Patents
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Description
各軸は、図2に示す位置検出器22により軸の位置を検出し、制御装置20は位置検出器22から取得した各軸の位置情報をもとにサーボモータ21を制御・駆動して、テーブル3に保持した工作物を主軸2に保持した工具により加工を行う。
5軸機の幾何誤差を補正制御するためには、機械に内在する幾何誤差を計測して、同定する必要がある。機械の幾何誤差を計測・同定する方法として、特許文献1のような方法が提案されている。特許文献1に記載の方法は、主軸に位置計測センサであるタッチプローブを装着して、テーブルに計測ターゲットであるターゲット球を設置し、予め設定された計測条件に従って回転軸をある角度からある角度まで任意角度ピッチで割り出して、各割り出し角度でテーブルに固定したターゲット球の中心位置をタッチプローブにより計測し、得られた円弧軌跡を0次と、1次と、2次の円弧で近似して、その円弧の1次成分から回転軸に関する幾何誤差と、2次成分から並進軸の傾き誤差(幾何誤差)とを同定する方法である。
これらの基本精度は機械の製造・組立段階で調整されるが、回転軸に位置を保持するためのブレーキ機構がある場合、その影響により前記回転軸の割り出し指令位置に対して実際に割り出した際の位置にずれ(DIFFERENCE、以下「DIFF」と称する。)が生じやすくなる。回転軸にDIFFが生じると位置決め精度が低下するため、幾何誤差の計測・同定精度も低下してしまう。また、回転軸にかみ合い方式のクランプ機構、もしくは位置決め用のピンが設けられたクランプ機構がある場合、回転軸をクランプ機構によりクランプすると、回転軸の位置決め精度はクランプ機構の精度によって決まることとなる。クランプ機構の精度を幾何誤差の計測・同定精度に影響しないレベルに調整するのは困難であり、回転軸をクランプ機構によりクランプして幾何誤差の計測・同定を行うと、クランプ機構の精度に応じたDIFFが生じて幾何誤差の計測・同定精度が低下してしまうといった問題がある。
前記テーブルと前記主軸との何れか一方に計測ターゲットを設置し、他方に位置計測センサを装着し、前記回転軸を任意の位置に割り出して、前記計測ターゲットの3次元空間上の初期位置を前記位置計測センサで計測する初期位置計測ステップと、
前記回転軸を割り出した際の指令位置と、前記位置検出器により検出した位置との差分値を取得する第1差分値取得ステップと、
前記初期位置計測ステップで計測した前記計測ターゲットの初期位置から、前記第1差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値の影響を除外する初期位置修正ステップと、
前記初期位置修正ステップで得られた前記計測ターゲットの修正位置をもとに、前記回転軸を複数の角度に割り出して前記計測ターゲットを複数の箇所に位置決めし、前記回転軸を割り出した際の指令位置と、前記位置検出器により検出した位置との差分値の取得を複数の位置に対して実施する第2差分値取得ステップと、
各位置決め位置で前記位置計測センサにより前記計測ターゲットの3次元空間上の位置を計測する誤差計測ステップと、
前記誤差計測ステップで計測した複数の前記計測ターゲットの位置から、前記第2差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値の影響を除外して、複数の前記計測ターゲットの位置に対する修正位置をそれぞれ算出する誤差計測位置修正ステップと、
前記誤差計測位置修正ステップで得られた複数の修正位置の円弧軌跡に対して円弧近似を行う円弧近似ステップと、
前記円弧近似ステップから得られた円弧近似成分を用いて前記幾何学的な誤差の演算を行う誤差同定ステップと、を実施することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記初期位置修正ステップでは、
前記第1差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値と、前記回転軸の中心位置から前記計測ターゲットの位置までの距離とから、前記回転軸の差分値による前記回転軸に対する接線方向誤差を算出する接線方向誤差算出ステップと、
前記回転軸の割り出し指令位置を用いて、前記接線方向誤差を並進軸方向誤差に変換する誤差変換ステップと、
前記初期位置計測ステップで計測した前記計測ターゲットの位置から、前記誤差変換ステップで変換した前記並進軸方向誤差を加算もしくは減算する接線誤差除外ステップと、を実施することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、前記誤差計測位置修正ステップでは、前記第2差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値と、前記回転軸の中心位置から前記計測ターゲットの位置までの距離とから、前記回転軸の差分値による前記回転軸に対する接線方向誤差を算出する接線方向誤差算出ステップと、
前記回転軸の割り出し指令位置を用いて、前記接線方向誤差を並進軸方向誤差に変換する誤差変換ステップと、
前記誤差計測ステップで計測した前記計測ターゲットの位置から、前記誤差変換ステップで変換した前記並進軸方向誤差を加算もしくは減算する接線誤差除外ステップと、を前記誤差計測ステップで計測した複数の位置に対して実施することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、工作機械の誤差同定システムであって、
工作物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸とが、3軸以上の並進軸と、任意の位置で軸を保持可能なブレーキ機構及び/又はクランプ可能なクランプ機構を備えた1軸以上の回転軸とによって相対移動可能であり、前記軸の位置を検出する位置検出器により前記各軸の位置を検出して、前記各軸を制御・駆動する工作機械と、
前記テーブルと前記主軸との何れか一方に設置される計測ターゲットと、
他方に設置される位置計測センサとを含み、
請求項1乃至3の何れかに記載の工作機械の誤差同定方法を実施可能であることを特徴とする。
また、回転軸にブレーキ機構もしくはクランプ機構を備えていない工作機械であっても、何らかの要因で回転軸にDIFFが生じるような場合には、本発明を適用することで回転軸のDIFFの影響を受けることなく幾何誤差の計測・同定が可能となる。
図1に示した5軸機は、本発明の工作機械の一例であり、3つの並進軸(X軸、Y軸、Z軸)と、2つの回転軸(A軸、C軸)とを有している。また、並進軸および回転軸は、図2に示すように、それぞれサーボモータ21及び位置検出器22を備えており、制御装置20が入力手段23により軸移動指令を受けると、位置検出器22にて検出した軸位置情報をもとにサーボモータ21を制御・駆動させて各軸の位置決めを行う。また、回転軸は、任意の位置で軸を保持可能なブレーキ機構もしくはクランプ可能なクランプ機構を備えており、入力手段23により指令を受けることでこれらの機構によって軸を保持もしくは、クランプする。
なお、本発明に関わる工作機械は図1に示すマシニングセンタベースの多軸工作機によらず、旋盤ベースの多軸工作機械などであってもよい。また、回転軸に軸位置を保持するための機構を備えていなくとも本発明を適用することが可能である。
本例の5軸機の場合、各軸間と、C軸と工作物間と、Z軸と工具間とに前記6成分の幾何誤差がそれぞれ存在するため、合計36個の幾何誤差が存在する。ただし、36個のうち冗長な関係のものを除くと13個であり、幾何誤差が存在する軸間を工具側からの順番を添え字として表すと、13個の幾何誤差は、α1、β1、α2、β2、γ3、δy4、δz4、β4、γ4、δx5、δy5、α5、β5となる。これらは順に、工具-Y軸間直角度、工具-X軸間直角度、Y-Z軸間直角度、Z-X軸間直角度、X-Y軸間直角度、A軸中心位置Y方向誤差、A軸中心位置Z方向誤差、A-X軸間直角度、A-Y軸間直角度、C軸中心位置X方向誤差、C-A軸間オフセット誤差、A軸原点オフセット誤差、C-A軸間直角度である。
なお、主軸2にターゲット球12を、テーブル3にタッチプローブ11を固定してもよい。
タッチプローブ11の先端にはスタイラスが付いており、スタイラスが測定対象に接触するとその瞬間に信号を発信する。制御装置20は、接続された受信機24にてその信号を受信すると、その時点での各軸の位置を位置検出器22より取得して接触位置とし、記憶手段20aに記憶する。
まず、回転軸A軸を0°(C軸とZ軸とが平行になるよう)に、回転軸C軸を任意位置に割り出し、テーブル3に固定されたターゲット球12の直上に、タッチプローブ11のスタイラス先端が位置するよう位置決めする(S1)。また、回転軸A,C軸は後述する計測条件に従って、軸を保持もしくはクランプさせておく。
次に、ターゲット球12の外周にスタイラスを複数回接触させてターゲット球12の初期位置である設置中心位置(Xm0,Ym0,Zm0)を計測するとともに、各回転軸の割り出し指令位置(Ac0,Cc0)と、各軸の位置検出器22により検出した位置(Am0,Cm0)との差分値であるDIFF(ΔA0,ΔC0)を取得する(S2:初期位置計測ステップ及び第1差分値取得ステップ)。
次に、S3で算出したターゲット球12の修正中心位置(Xm0",Ym0",Zm0")と、記憶手段20aに予め記録された幾何誤差を計測するための回転軸割り出し条件などの計測条件をもとに、各回転軸の割り出し指令位置(Aci,Cci)や、各回転軸を指令位置に割り出した際のターゲット球12の中心指令位置(Xci,Yci,Zci)と、タッチプローブ11をターゲット球12の直上に位置決めするための位置を算出する(S4)。
また、計測条件には前記回転軸割り出し条件のほかに、回転軸を割り出し条件に従って割り出した後、ブレーキ機構もしくはクランプ機構により回転軸を保持もしくはクランプするかどうかといった情報もあり、これも記憶手段20aに予め記録させておくこととなる。
次に、S3と同様の方法で計測した複数のターゲット球12の中心位置に対して回転軸DIFFの影響を除外した中心位置(Xmi',Ymi',Zmi')の算出を行う(S6:誤差計測位置修正ステップ)。
次に、S6から得られた円弧軌跡に対して円弧近似を行う(S7:円弧近似ステップ)。
次に、A軸計測に対しても同様の計測(S8:第2差分値取得ステップ及び誤差計測ステップ)、回転軸DIFFの影響の除外(S9:誤差計測位置修正ステップ)、円弧近似(S10:円弧近似ステップ)を実施する。
次に、S7とS10とから得られた各円弧近似成分をもとに幾何誤差の算出を行う(S11:誤差同定ステップ)。
まず、回転軸A、C軸をAci、Cciの角度に割り出した際のターゲット球12の中心指令位置(Xci,Yci,Zci)は、以下の数1から算出することができる。
まず、回転軸中心位置からターゲット球12の中心位置までの距離Ra、Rcを以下の数3により算出する(S3-1)。
まず、S6で算出したターゲット球12の中心位置(Xmi',Ymi',Zmi')と、S4で算出したターゲット球12の中心指令位置との差分値(ΔXi,ΔYi,ΔZi)を算出する。
次に、以下の数6と数7とにより、軸方向成分と半径方向成分とを算出する。
まず、S9で算出したターゲット球12の中心位置(Xmi',Ymi',Zmi')と、S4で算出したターゲット球12の中心指令位置との差分値(ΔXl,ΔYl,ΔZl)を算出する。
次に、以下の数10と数11とにより、軸方向成分と半径方向成分とを算出する。
また、回転軸にブレーキ機構もしくはクランプ機構を備えていない工作機械であっても、何らかの要因で回転軸にDIFFが生じるような場合には、本発明を適用することで回転軸のDIFFの影響を受けることなく幾何誤差の計測・同定が可能となる。
Claims (4)
- 工作物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸とが、3軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動可能であり、前記軸の位置を検出する位置検出器により前記各軸の位置を検出して、前記各軸を制御・駆動する工作機械において、前記並進軸及び前記回転軸に関する幾何学的な誤差を同定する方法であって、
前記テーブルと前記主軸との何れか一方に計測ターゲットを設置し、他方に位置計測センサを装着し、前記回転軸を任意の位置に割り出して、前記計測ターゲットの3次元空間上の初期位置を前記位置計測センサで計測する初期位置計測ステップと、
前記回転軸を割り出した際の指令位置と、前記位置検出器により検出した位置との差分値を取得する第1差分値取得ステップと、
前記初期位置計測ステップで計測した前記計測ターゲットの初期位置から、前記第1差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値の影響を除外する初期位置修正ステップと、
前記初期位置修正ステップで得られた前記計測ターゲットの修正位置をもとに、前記回転軸を複数の角度に割り出して前記計測ターゲットを複数の箇所に位置決めし、前記回転軸を割り出した際の指令位置と、前記位置検出器により検出した位置との差分値の取得を複数の位置に対して実施する第2差分値取得ステップと、
各位置決め位置で前記位置計測センサにより前記計測ターゲットの3次元空間上の位置を計測する誤差計測ステップと、
前記誤差計測ステップで計測した複数の前記計測ターゲットの位置から、前記第2差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値の影響を除外して、複数の前記計測ターゲットの位置に対する修正位置をそれぞれ算出する誤差計測位置修正ステップと、
前記誤差計測位置修正ステップで得られた複数の修正位置の円弧軌跡に対して円弧近似を行う円弧近似ステップと、
前記円弧近似ステップから得られた円弧近似成分を用いて前記幾何学的な誤差の演算を行う誤差同定ステップと、
を実施することを特徴とする工作機械の誤差同定方法。 - 前記初期位置修正ステップでは、
前記第1差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値と、前記回転軸の中心位置から前記計測ターゲットの位置までの距離とから、前記回転軸の差分値による前記回転軸に対する接線方向誤差を算出する接線方向誤差算出ステップと、
前記回転軸の割り出し指令位置を用いて、前記接線方向誤差を並進軸方向誤差に変換する誤差変換ステップと、
前記初期位置計測ステップで計測した前記計測ターゲットの位置から、前記誤差変換ステップで変換した前記並進軸方向誤差を加算もしくは減算する接線誤差除外ステップと、
を実施することを特徴とする請求項1に記載の工作機械の誤差同定方法。 - 前記誤差計測位置修正ステップでは、
前記第2差分値取得ステップで取得した前記回転軸の差分値と、前記回転軸の中心位置から前記計測ターゲットの位置までの距離とから、前記回転軸の差分値による前記回転軸に対する接線方向誤差を算出する接線方向誤差算出ステップと、
前記回転軸の割り出し指令位置を用いて、前記接線方向誤差を並進軸方向誤差に変換する誤差変換ステップと、
前記誤差計測ステップで計測した前記計測ターゲットの位置から、前記誤差変換ステップで変換した前記並進軸方向誤差を加算もしくは減算する接線誤差除外ステップと、を
前記誤差計測ステップで計測した複数の位置に対して実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械の誤差同定方法。 - 工作物を保持するテーブルと、工具を保持する主軸とが、3軸以上の並進軸と、任意の位置で軸を保持可能なブレーキ機構及び/又はクランプ可能なクランプ機構を備えた1軸以上の回転軸とによって相対移動可能であり、前記軸の位置を検出する位置検出器により前記各軸の位置を検出して、前記各軸を制御・駆動する工作機械と、
前記テーブルと前記主軸との何れか一方に設置される計測ターゲットと、
他方に設置される位置計測センサとを含み、
請求項1乃至3の何れかに記載の工作機械の誤差同定方法を実施可能であることを特徴とする工作機械の誤差同定システム。
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