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JP7131318B2 - オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼 Download PDF

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Description

本開示は、ステンレス鋼に関し、さらに詳しくは、オーステナイト系ステンレス鋼に関する。
従来、高温浸炭環境下で使用される火力発電ボイラ及び化学プラント等の設備では、耐熱鋼として、Cr含有量及びNi含有量を高めたオーステナイト系ステンレス鋼、又は、Cr含有量を高めたNi基合金が使用されている。これらの耐熱鋼は、20~40質量%程度のCr及び20~70質量%程度のNiを含有するオーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金である。
火力発電ボイラ及び化学プラント等の設備の配管は、上述のオーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金が溶製された後、熱間加工されて管の形状に製造される。管の形状に製造された後、火力発電ボイラ及び化学プラント等の設備の配管は、1000℃以上の高温環境で使用される。そのため、上述の耐熱鋼には、長寿命化を目的として、1000℃以上での高温でのクリープ強度(以下、高温クリープ強度ともいう)に優れることが求められる。
ところで、最近では、いわゆるシェール革命により、安価なシェールガスが生産されている。化学プラント等の設備において、シェールガスを原料ガスとして使用する場合、ナフサ等の従来原料と比較して、原料ガス由来の炭素(C)により、化学プラント等の設備で用いられる金属管(たとえば反応管)の腐食現象である浸炭が生じやすい。そのため、化学プラント等の設備に使用される鋼には、優れた耐浸炭性も求められる。
高温浸炭環境下で使用可能なオーステナイト系ステンレス鋼がたとえば、国際公開第2017/119415号(特許文献1)、特開2018-3064号公報(特許文献2)及び国際公開第2010/113830号(特許文献3)に提案されている。
特許文献1に開示されたオーステナイト系耐熱合金は、質量%で、C:0.03~0.25%未満、Si:0.01~2.0%、Mn:2.0%以下、Cr:10~30%未満、Ni:25超~45%、Al:2.5超~4.5%未満、Nb:0.2~3.5%、N:0.025%以下、Ti:0~0.2%未満、W:0~6%、Mo:0~4%、Zr:0~0.1%、B:0~0.01%、Cu:0~5%、希土類元素:0~0.1%、Ca:0~0.05%、及び、Mg:0~0.05%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、不純物中のP及びSが各々、P:0.04%以下、及びS:0.01%以下の化学組成を有し、組織中において、円相当径が6μm以上の析出物の総体積率が5%以下であることを特徴とする。
特許文献2に開示されたオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.25~0.7%、Si:0.01~2.0%、Mn:2.0%以下、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Cr:10~19%、Ni:20~40%、Al:2.5超~4.5%未満、Nb:0.01~3.5%、N:0.03%以下、Ti:0~0.2%未満、Ca:0~0.05%、及び、Mg:0~0.05%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、式(1)を満たす。0.4≦(CCr´/CAl´)/(CCr/CAl)≦0.8 (1)。ここで、式(1)中のCCr´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるCr濃度(質量%)が代入される。CAl´にはオーステナイト系ステンレス鋼の表面から2μm深さまでの範囲におけるAl濃度(質量%)が代入される。また、CCrにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のCr濃度(質量%)が代入される。CAlにはオーステナイト系ステンレス鋼母材のAl濃度(質量%)が代入される。
特許文献3に開示された鋳造製品は、質量%にて、C:0.05~0.7%、Si:0%を超えて2.5%以下、Mn:0%を超えて3.0%以下、Cr:15~50%、Ni:18~70%、Al:2~4%、希土類元素:0.005~0.4%、並びに、W:0.5~10%及び/又はMo:0.1~5%を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる耐熱合金の鋳造体を有し、高温雰囲気と接触する鋳造体の表面にバリア層が形成されており、バリア層は、厚さ0.5μm以上のAl23層であって、該バリア層の最表面の80面積%以上がAl23であり、Al23層と鋳造体との界面に、合金の基地よりもCr濃度が高いCr基粒子が分散していることを特徴とする。
国際公開第2017/119415号 特開2018-3064号公報 国際公開第2010/113830号
上述の特許文献1~特許文献3に開示された技術により、高温浸炭環境で使用可能なオーステナイト系ステンレス鋼が得られる。
特に、上述の特許文献1及び特許文献2に開示された技術によれば、優れた耐浸炭性及び高い高温クリープ強度を有するオーステナイト系ステンレス鋼が得られる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術とは異なる方法によっても、オーステナイト系ステンレス鋼の耐浸炭性及び高温クリープ強度を高めることができれば望ましい。
特許文献3の技術では、常温環境における延性については評価しているものの、高温環境における高温クリープ強度については評価していない。
本開示の目的は、耐浸炭性に優れ、高い高温クリープ強度を有するオーステナイト系ステンレス鋼を提供することである。
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.250~0.700%、Si:0.01~2.00%、Mn:2.00%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Cr:10.00~25.00%未満、Ni:30.00~60.00%、Al:2.50%超~3.50%、Nb:0.20~3.50%を含有し、さらに、Zr:0.0001~0.1000%、Hf:0.0001~0.1000%、Sn:0.0001~0.1000%及びAs:0.0001~0.1000%からなる群から選択される1種又は2種以上、Ti:0~0.20%未満、Mo:0~0.10%、W:0~0.20%、B:0~0.1000%、V:0~0.500%、Cu:0~5.0%、Ca:0~0.0500%、Mg:0~0.0500%、REM:0~0.1000%、N:0~0.030%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。
0.06≦1.96×Zr+Hf+1.50×Sn+2.38×As≦0.55 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、耐浸炭性に優れ、高い高温クリープ強度を有する。
本発明者らは、高温浸炭環境におけるオーステナイト系ステンレス鋼の耐浸炭性、及び、高温クリープ強度について調査及び検討を行い、次の知見を得た。高温浸炭環境とは、炭化水素ガス雰囲気での1000℃以上の環境のことをいう。
オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金にCrを含有させれば、鋼表面に保護皮膜であるCr23が形成され、耐浸炭性が高まる。しかしながら、Cr23は熱力学的に不安定である。そこで本発明においては、Alを含有させ、鋼表面にAl23皮膜を形成する。Al23は保護皮膜として働く。Al23は、高温浸炭環境において、Cr23よりも熱力学的に安定である。つまり、Al23であれば、1000℃以上の環境であっても、オーステナイト系ステンレス鋼の耐浸炭性を高めることができる。
一方で、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金にAlが過剰に含有された場合、粗大なγ’-Ni3Alが析出する。粗大なγ’-Ni3Alは、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金の高温クリープ強度を著しく低下させる。したがって、Al含有量は一定量以下に制限する必要がある。
そこで本発明者らは、Al含有量を一定量以下に抑制したうえで、Al23皮膜の形成を促進する方法を検討した。その結果、Zr、Hf、Sn及びAsを適切に添加することで、保護性のある均一なAl23の形成が促進されることがわかった。これにより、Al含有量を過剰に高めなくとも、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金の耐浸炭性を向上することができる。
Zr、Hf、Sn及びAsが、Al23皮膜の均一な形成を促進する理由は定かではない。Alは、Al23形成を阻害するC、N及びOと結合し、炭窒化物及び酸化物を形成することで、Alの外部酸化を促進することにより、Al23皮膜の均一な形成を促進すると推測される。
一方で、Zr、Hf、Sn及びAsが過剰に含有された場合、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金のミクロ組織中に粗大な析出物が形成される。粗大な析出物は、オーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金の高温クリープ強度を著しく低下させる。したがって、優れた耐浸炭性と、高い高温クリープ強度とを両立するためには、Zr、Hf、Sn及びAsの含有量を適切に調整する必要がある。具体的には、Zr、Hf、Sn及びAsの含有量が式(1)を満たせば、優れた耐浸炭性と、高い高温クリープ強度とを両立したオーステナイト系ステンレス鋼又はNi基合金が得られる。
0.06≦1.96×Zr+Hf+1.50×Sn+2.38×As≦0.55 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
以上の知見に基づいて完成した、本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、質量%で、C:0.250~0.700%、Si:0.01~2.00%、Mn:2.00%以下、P:0.040%以下、S:0.010%以下、Cr:10.00~25.00%未満、Ni:30.00~60.00%、Al:2.50%超~3.50%、Nb:0.20~3.50%を含有し、さらに、Zr:0.0001~0.1000%、Hf:0.0001~0.1000%、Sn:0.0001~0.1000%及びAs:0.0001~0.1000%からなる群から選択される1種又は2種以上、Ti:0~0.20%未満、Mo:0~0.10%、W:0~0.20%、B:0~0.1000%、V:0~0.500%、Cu:0~5.0%、Ca:0~0.0500%、Mg:0~0.0500%、REM:0~0.1000%、N:0~0.030%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する。
0.06≦1.96×Zr+Hf+1.50×Sn+2.38×As≦0.55 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本開示のオーステナイト系ステンレス鋼は、式(1)を満たす。そのため、耐浸炭性に優れ、高い高温クリープ強度を有する。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、Ti:0.005~0.20%未満、Mo:0.005~0.10%、W:0.005~0.20%、B:0.0001~0.1000%、V:0.001~0.500%、及び、Cu:0.005~5.0%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、Ca:0.0001~0.0500%、Mg:0.0001~0.0500%、及び、REM:0.0005~0.1000%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、質量%で、N:0.0005~0.030%を含有してもよい。
以下、本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.250~0.700%
炭素(C)は主にCrと結合して鋼中にCr炭化物を形成し、高温浸炭環境での使用時における高温クリープ強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、鋼の鋳造後の凝固組織中に粗大な共晶炭化物を多数形成し、鋼の靭性を低下する。したがって、C含有量は0.250~0.700%である。C含有量の好ましい下限は0.280%であり、より好ましくは0.300%である。C含有量の好ましい上限は0.650%であり、より好ましくは0.600%である。
Si:0.01~2.00%
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。他の元素で脱酸を十分に実施できる場合、Siの含有量はできるだけ少なくてもよい。一方、Si含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.01~2.00%である。Si含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%である。Si含有量の好ましい上限は1.00%である。
Mn:2.00%以下
マンガン(Mn)は不可避に含有される。Mnは鋼中に含まれるSと結合してMnSを形成し、鋼の熱間加工性を高める。しかしながら、Mn含有量が高すぎれば、鋼が硬くなりすぎ、熱間加工性及び溶接性が低下する。したがって、Mn含有量は2.00%以下である。上記効果を安定して得る場合、Mn含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.10%である。Mn含有量の好ましい上限は1.50%であり、さらに好ましくは1.30%である。
P:0.040%以下
燐(P)は不純物である。Pは鋼の溶接性及び熱間加工性を低下する。したがって、P含有量は0.040%以下である。P含有量の好ましい上限は0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量を過剰に低減するとコストが高くなる。そのため、P含有量の下限はたとえば、0.0005%である。
S:0.010%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは鋼の溶接性及び熱間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.010%以下である。S含有量の好ましい上限は0.008%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量を過剰に低減するとコストが高くなる。そのため、S含有量の下限はたとえば、0.001%である。
Cr:10.00~25.00%未満
クロム(Cr)は、熱処理工程中及び高温浸炭環境下でAl23皮膜の形成を促進する。Crはさらに、鋼中のCと結合して鋼中にCr炭化物を形成し、高温クリープ強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、高温浸炭環境下で、Crは雰囲気ガス(炭化水素ガス)由来のCと結合し、鋼表面にCr炭化物を形成する。鋼表面にCr炭化物が形成されると鋼表面のCrが局所的に欠乏する。この場合、いわゆるTEE効果(Third Element Effect)が得られず、均一なAl23皮膜が形成されない。Cr含有量が高すぎればさらに、鋼表面のCr炭化物が均一なAl23皮膜の形成を物理的に阻害する。したがって、Cr含有量は10.00~25.00%未満である。Cr含有量の好ましい下限は11.00%であり、さらに好ましくは12.00%である。Cr含有量の好ましい上限は24.00%であり、さらに好ましくは23.00%である。
Ni:30.00%~60.00%
ニッケル(Ni)は、オーステナイトを安定化させ、高温クリープ強度を高める。Niはさらに、鋼の耐浸炭性を高める。Ni含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、これらの効果が飽和するだけでなく、原料コストが高くなる。Ni含有量が高すぎればさらに、製造工程中に、たとえばγ‘-Ni3Alなどの、Alを含有する金属間化合物が析出し、熱間加工性が著しく低下する。したがって、Ni含有量は30.00%~60.00%である。Ni含有量の好ましい下限は31.00%であり、さらに好ましくは32.00%である。Ni含有量の好ましい上限は55.00%であり、さらに好ましくは50.00%である。
Al:2.50%超~3.50%
アルミニウム(Al)は、熱処理工程中及び高温浸炭環境下で鋼表面にAl23皮膜を形成し、鋼の耐浸炭性を高める。特に本発明にて想定している高温浸炭環境においては、従来用いられているCr23皮膜と比較して、Al23皮膜は熱力学的に安定である。Al含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、製造工程中に、たとえばγ’-Ni3Alなどの、Alを含有する金属間化合物が粗大に析出する。粗大な金属間化合物は、鋼の高温クリープ強度を著しく低下させる。したがって、Al含有量は2.50%超~3.50%である。Al含有量の好ましい下限は2.55%であり、さらに好ましくは2.60%である。Al含有量の好ましい上限は3.45%であり、さらに好ましくは3.40%である。本発明によるオーステナイト系ステンレス鋼において、Al含有量は、鋼材中に含有する全Al量を意味する。
Nb:0.20~3.50%
ニオブ(Nb)は、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相及びNi3Nb相)を形成して、結晶粒界及び結晶粒内を析出強化し、鋼のクリープ強度を高める。一方、Nb含有量が高すぎれば、金属間化合物が過剰に生成して、鋼の靭性が低下する。Nb含有量が高すぎればさらに、長時間時効後の靭性も低下する。したがって、Nb含有量は0.20~3.50%である。Nb含有量の好ましい下限は0.25%であり、さらに好ましくは0.30%である。Nb含有量の好ましい上限は3.20%未満であり、さらに好ましくは3.00%である。
Zr:0.0001~0.1000%、Hf:0.0001~0.1000%、Sn:0.0001~0.1000%及びAs:0.0001~0.1000%からなる群から選択される1種又は2種以上
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成は、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、錫(Sn)及び砒素(As)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する。含有される場合のZr、Hf、Sn及びAsの各含有量は、以下のとおりである。ただし、Zr、Hf、Sn及びAsの含有量は、後述する式(1)を満たす。
Zr:0.0001~0.1000%
ジルコニウム(Zr)は熱処理工程中及び高温浸炭環境下で、Al23形成の阻害要因となるC、N、Oと結合し、炭窒化物及び酸化物を形成する。その結果、Al23皮膜の形成を促進する。一方、Zr含有量が高すぎれば、鋼中の短窒化物及び酸化物の体積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。したがって、Zr含有量は0.0001~0.1000%である。Zr含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。Zr含有量の好ましい上限は0.0800%であり、さらに好ましくは0.0500%である。
Hf:0.0001~0.1000%
ハフニウム(Hf)は熱処理工程中及び高温浸炭環境下で、Al23形成の阻害要因となるC、N、Oと結合し、炭窒化物及び酸化物を形成する。その結果、Al23皮膜の形成を促進する。一方、Hf含有量が高すぎれば、鋼中の短窒化物及び酸化物の体積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。したがって、Hf含有量は0.0001~0.1000%である。Hf含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。Hf含有量の好ましい上限は0.0800%であり、さらに好ましくは0.0500%である。
Sn:0.0001~0.1000%
錫(Sn)は熱処理工程中及び高温浸炭環境下で、Al23形成の阻害要因となるC、N、Oと結合し、炭窒化物及び酸化物を形成する。その結果、Al23皮膜の形成を促進する。一方、Sn含有量が高すぎれば、鋼中の短窒化物及び酸化物の体積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。したがって、Sn含有量は0.0001~0.1000%である。Sn含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。Sn含有量の好ましい上限は0.0500%であり、さらに好ましくは0.0100%である。
As:0.0001~0.1000%
砒素(As)は熱処理工程中及び高温浸炭環境下で、Al23形成の阻害要因となるC、N、Oと結合し、炭窒化物及び酸化物を形成する。その結果、Al23皮膜の形成を促進する。一方、As含有量が高すぎれば、鋼中の短窒化物及び酸化物の体積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。したがって、As含有量は0.0001~0.1000%である。As含有量の好ましい下限は0.0010%であり、さらに好ましくは0.0020%である。As含有量の好ましい上限は0.0500%であり、さらに好ましくは0.0100%である。
Zr、Hf、Sn及びAsからなる群から選択される1種又は2種以上が含有されればよい。したがって、Zr、Hf、Sn及びAsのうちいずれかの元素が含有されれば、Zr、Hf、Sn及びAsのうち他の元素については含有されなくても良い。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、オーステナイト系ステンレス鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、Mo、W、B、V及びCuからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、いずれも鋼のクリープ強度を高める。
Ti:0~0.20%未満
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Tiは、析出強化相となる金属間化合物(ラーベス相及びNi3Ti相)を形成して、析出強化によりクリープ強度を高める。一方、Ti含有量が高すぎれば、金属間化合物が過剰に生成して、高温延性及び熱間加工性が低下する。Ti含有量が高すぎればさらに、長時間時効後の靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0~0.20%未満である。Ti含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは、0.010%である。Ti含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは、0.10%である。
Mo:0~0.10%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは、母相であるオーステナイトに固溶する。固溶したMoは、固溶強化によりクリープ強度を高める。一方、Mo含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0~0.10%である。Mo含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Mo含有量の好ましい上限は0.08%であり、さらに好ましくは0.05%である。
W:0~0.20%
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Wは、母相であるオーステナイトに固溶する。固溶したWは、固溶強化によりクリープ強度を高める。一方、W含有量が高すぎれば、熱間加工性が低下する。したがって、W含有量は0~0.20%である。W含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。W含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.10%である。
B:0~0.1000%
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Bは粒界に偏析して、粒界での金属間化合物の析出を促進する。これにより、鋼のクリープ強度を高める。一方、B含有量が高すぎれば、鋼の溶接性及び熱間加工性が低下する。したがって、B含有量は0~0.1000%である。B含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。B含有量の好ましい上限は0.0800%であり、さらに好ましくは0.0600%である。
V:0~0.500%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは、Tiと同様に金属間化合物を形成し、鋼のクリープ強度を高める。一方、V含有量が高すぎれば、鋼中の金属間化合物の堆積率が過剰に高くなり、熱間加工性が低下する。したがって、V含有量は0~0.500%である。V含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。V含有量の好ましい上限は0.300%であり、さらに好ましくは0.100%である。
Cu:0~5.0%
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuはオーステナイトを安定化する。Cuはさらに、析出強化により鋼の強度及びクリープ強度を高める。一方で、Cu含有量が高すぎれば、鋼の延性及び熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0~5.0%である。Cu含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Cu含有量の好ましい上限は3.0%であり、さらに好ましくは1.0%である。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えてCa、Mg及びREMからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼の熱間加工性を高める。
Ca:0~0.0500%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を高める。一方、Ca含有量が高すぎれば、靱性及び延性が低下する。そのため、熱間加工性が低下する。Ca含有量が高すぎればさらに、清浄性が低下する。したがって、Ca含有量は0~0.0500%である。Caの好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0300%であり、さらに好ましくは0.0100%である。
Mg:0~0.0500%
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Mgは、Sを硫化物として固定し、鋼の熱間加工性を高める。一方、Mg含有量が高すぎれば、靱性及び延性が低下する。そのため、熱間加工性が低下する。Mg含有量が高すぎればさらに、清浄性が低下する。したがって、Mg含有量は0~0.0500%である。Mgの好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%である。Mg含有量の好ましい上限は0.0300%であり、さらに好ましくは0.0100%である。
REM:0~0.1000%
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、REMは、Sを硫化物として固定し、熱間加工性を高める。REMはさらに、酸化物を形成して、耐食性、クリープ強度、及びクリープ延性を高める。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、酸化物等の介在物が多くなり、熱間加工性及び溶接性を低下させ、製造コストが上昇する。したがって、REM含有量は0~0.1000%である。REM含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。REM含有量の好ましい上限は0.0900%であり、さらに好ましくは0.0800%である。
本明細書において、REMとは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称である。REM含有量は、オーステナイト系ステンレス鋼に含有されるREMがこれらの元素のうち1種である場合、その元素の含有量を意味する。オーステナイト系ステンレス鋼に含有されるREMが2種以上である場合、REM含有量は、それらの元素の総含有量を意味する。REMについては、一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REM含有量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
上述のオーステナイト系ステンレス鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えてNを含有してもよい。Nは任意元素であり、オーステナイトを安定化する。
N:0~0.030%
窒素(N)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nは、オーステナイトを安定化する。一方、N含有量が高すぎれば、熱処理後でも未固溶で残存する粗大な窒化物及び/又は炭窒化物が生成する。粗大な窒化物及び/又は炭窒化物は鋼の靱性を低下する。したがって、N含有量は0~0.030%である。Nの好ましい下限は0.0005%である。Nの好ましい上限は0.010%である。
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、上述の化学組成を満たし、かつ、以下の式(1)を満たす。これによって初めて、耐浸炭性に優れ、高い高温クリープ強度を有するオーステナイト系ステンレス鋼が得られる。
[式(1)について]
本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は式(1)を満たす。
0.06≦1.96×Zr+Hf+1.50×Sn+2.38×As≦0.55 (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
オーステナイト系ステンレス鋼の耐浸炭性を向上させるためには、保護皮膜として鋼表面にAl23を形成することが重要である。Al23の形成を促進するためには、オーステナイト系ステンレス鋼中のAl濃度を増加させることが最も効果的である。しかしながら、前述の通りAlを3.50%より多く添加すると、高温クリープ強度が著しく低下する。本開示では、オーステナイト系ステンレス鋼にZr、Hf、Sn及びAsからなる群から選択される1種又は2種以上を添加する。これにより、Alが3.5%以下であっても、鋼表面にAl23を均一に形成することができる。
FN1=1.96×Zr+Hf+1.50×Sn+2.38×Asと定義する。FN1の値が0.06未満では、Zr、Hf、Sn及びAsの効果を得ることができない。一方で、これらの元素を過剰に添加すると、Al23皮膜の形成を促進する効果が飽和するだけでなく、オーステナイト系ステンレス鋼のミクロ組織中に粗大な析出物が形成される。粗大な析出物は、オーステナイト系ステンレス鋼の高温クリープ強度を著しく低下させる。具体的には、FN1の値が0.55超であれば、高温クリープ強度が低下する。そのため、良好な高温クリープ強度を維持しながら、Al23の形成を促進する効果を得るには、FN1の値は0.06~0.55である必要がある。
FN1の値の下限は好ましくは0.08であり、より好ましくは0.09であり、さらに好ましくは0.10である。FN1の値の上限は好ましくは0.50であり、より好ましくは0.48であり、さらに好ましくは0.46であり、さらに好ましくは0.44である。
本実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼の形状は、特に限定されない。オーステナイト系ステンレス鋼はたとえば、鋼管である。オーステナイト系ステンレス鋼管は、化学プラント用反応管として使用される。オーステナイト系ステンレス鋼は、板材、棒材、線材等であってもよい。
[製造方法]
以下、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼の製造方法の一例として、鋼管の製造方法を説明する。
[準備工程]
上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼に対して、必要に応じて周知の脱ガス処理を実施する。溶鋼を用いて、鋳造により素材を製造する。素材は、造塊法によるインゴットであってもよいし、連続鋳造法によるスラブやブルーム、ビレット等の鋳片であってもよい。素材に対して、酸洗処理後に、ショット加工及び/又は切削加工を実施してもよい。
[熱間鍛造工程]
製造された素材に対して熱間鍛造を実施して円柱素材を製造してもよい。熱間鍛造を実施すれば、準備工程で製造した溶鋼の内部組織を、凝固組織から均質な整粒組織へと変化させることができる。熱間鍛造の温度は特に限定されないが、たとえば、900~1300℃である。
[熱間加工工程]
準備工程で製造された素材、又は熱間鍛造された素材(円柱素材)に対して熱間加工を実施して、鋼素管を製造してもよい。たとえば、機械加工により円柱素材中心に貫通孔を形成する。貫通孔が形成された円柱素材に対して熱間押出を実施して、鋼素管を製造する。熱間押出の加工温度は特に限定されないが、たとえば900~1300℃である。円柱素材を穿孔圧延(マンネスマン法等)して鋼素管を製造してもよい。
[冷間加工工程]
熱間加工後の鋼素管に対して冷間加工を実施し、中間材を製造してもよい。冷間加工はたとえば、冷間引抜等である。冷間加工工程において鋼表面に歪を付与すれば、Alが鋼表面に移動しやすくなる。冷間加工の加工率は特に限定されないが、たとえば10~90%である。
[熱処理工程]
準備工程で製造された素材、熱間加工後の鋼素管、又は、冷間加工後の中間材に対して、溶体化処理として、大気雰囲気で熱処理を実施してもよい。大気雰囲気での熱処理により、組織中の結晶粒を再結晶させ、均一な整粒組織を得ることができる。
熱処理条件は特に限定されないが、たとえば熱処理温度は900~1300℃であり、熱処理時間は1.0~60.0分である。
熱処理後の中間材に対して、鋼表面に形成したスケールの除去を行ってもよい。スケールの除去はたとえば、酸洗処理、ショット加工及び/又は切削加工により行ってもよい。酸洗処理後に、ショット加工及び/又はブラスト加工を実施してもよい。
酸洗処理により、鋼表面に形成したスケールを除去できる。酸洗条件は特に限定されないが、酸洗にはたとえば硝酸と塩酸の混酸溶液を用い、酸洗時間はたとえば、30~60分である。
ショット加工及び/又は切削加工により、鋼表面に形成したスケールを除去できる。ショット加工及び/又は切削加工を行えばさらに、鋼表面へ歪みを付与できる。ショット加工におけるショット粒の素材及び形状、ショット加工及び/又は切削加工の処理条件は指定しないが、鋼表面のスケールの剥離、又は鋼表面への歪みの付与に十分な素材、形状、及び処理条件とする。
以上の製造方法により、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼が製造される。なお、上記では鋼管の製造方法について説明した。しかしながら、同様の製造方法(準備工程、熱間鍛造工程、熱間加工工程、冷間加工工程、熱処理工程)により、板材、棒材、線材等を製造してもよい。本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、鋼管に適用することが特に好ましい。したがって、好ましくは、本実施形態のオーステナイト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼管である。
[製造方法]
表1に示す化学組成を有する溶鋼を、真空溶解炉を用いて製造した。表1において、REMとは、La、Ce及びNdの検出量の総和である。
Figure 0007131318000001
上記溶鋼を用いて、円柱状のインゴットを製造した。インゴットに対して溶体化処理を実施して、中間材を製造した。
[浸炭試験]
得られた中間材から、機械加工により8mm×20mm×30mmの試験片を製造した。試験片に対して、#600エメリー湿式研磨紙を用いて、全面を研磨仕上げした。研磨仕上げ後、アセトン中で超音波脱脂を行った。各試験番号の試験片を、67vol.%H2-30vol.%CH4-3vol.%CO2雰囲気にて1100℃×96時間保持した。浸炭後の試験片表面を#600研磨紙で乾式手研磨して、表面のスケール等を除去した。スケール除去後の試験片表面から0.5mmピッチで4層分の分析切粉を採取した。得られた分析切粉について、高周波燃焼赤外吸収法にてC濃度を測定した。測定結果から、鋼に元から含有されているC濃度を差し引いて、侵入C量とした。4層分の侵入C量の平均を、平均侵入C量(質量%)とした。結果を表2の「平均侵入C量(質量%)」に示す。
[クリープ破断試験]
上記で得られた中間材から、クリープ試験片を作製した。クリープ試験片は、中間材の中心部から円柱長さ方向に平行に採取した。クリープ試験片は丸棒試験片であり、平行部の直径は6mm、評点間距離は30mmであった。得られたクリープ試験片を用いて、クリープ破断試験を実施した。クリープ破断試験は、1000℃の大気雰囲気において、15MPaの引張り負荷をかけて実施した。破断時間が1.0×103時間以上のものを合格(○)とした。破断時間が1.0×103時間未満のものを不合格(×)とした。結果を表2の「高温クリープ強度」に示す。
Figure 0007131318000002
[評価結果]
表1及び表2を参照して、鋼種A~鋼種J及び鋼種V~鋼種DDは、各元素の含有量が適切であり、FN1が式(1)を満たす化学組成を有した。その結果、侵入Cは0.20%以下であり、優れた耐浸炭性を示した。鋼種A~鋼種J及び鋼種V~鋼種DDはさらに、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間以上であり、高い高温クリープ強度を示した。
一方、鋼種Kでは、C含有量が低すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Lでは、Ni含有量が低すぎた。その結果、侵入C量が0.35%であり、耐浸炭性が低かった。鋼種Lではさらに、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Mでは、Al含有量が低すぎた。その結果、侵入C量が0.52%であり、耐浸炭性が低かった。
鋼種Nでは、Al含有量が高すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Oでは、Zr含有量が高すぎ、さらに、FN1の値が高すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Pでは、Hf含有量が高すぎ、さらに、FN1の値が高すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Qでは、Sn含有量が高すぎ、さらに、FN1の値が高すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Rでは、As含有量が高すぎ、さらに、FN1の値が高すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Sでは、各元素の含有量は適切であったものの、FN1の値が低すぎた。その結果、侵入C量が0.36%であり、耐浸炭性が低かった。
鋼種Tでは、各元素の含有量は適切であったものの、FN1の値が高すぎた。その結果、1000℃でのクリープ破断試験の破断時間が1.0×103時間未満であり、高温クリープ強度が低かった。
鋼種Uでは、Zr、Hf、Sn及びAsのいずれの含有量も検出限界値未満であり、よって、FN1の値が低すぎた。その結果、侵入C量が0.46%であり、耐浸炭性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.250~0.700%、
    Si:0.01~2.00%、
    Mn:2.00%以下、
    P:0.040%以下、
    S:0.010%以下、
    Cr:10.00~25.00%未満、
    Ni:30.00~60.00%、
    Al:2.50%超~3.50%、
    Nb:0.20~3.50%、
    Zr:0.0001~0.1000%、Hf:0.0001~0.1000%、Sn:0.0001~0.1000%及びAs:0.0001~0.1000%からなる群から選択される1種又は2種以上、
    Ti:0~0.20%未満、
    Mo:0~0.10%、
    W:0~0.20%、
    B:0~0.1000%、
    V:0~0.500%、
    Cu:0~5.0%、
    Ca:0~0.0500%、
    Mg:0~0.0500%、
    REM:0~0.1000%、
    N:0~0.030%、及び、
    残部はFe及び不純物からなり、式(1)を満たす化学組成を有する、オーステナイト系ステンレス鋼。
    0.06≦1.96×Zr+Hf+1.50×Sn+2.38×As≦0.55 (1)
    ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
    前記化学組成は、質量%で、
    Ti:0.005~0.20%未満、
    Mo:0.005~0.10%、
    W:0.005~0.20%、
    B:0.0001~0.1000%、
    V:0.001~0.500%、及び、
    Cu:0.005~5.0%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
    前記化学組成は、質量%で、
    Ca:0.0001~0.0500%、
    Mg:0.0001~0.0500%、及び、
    REM:0.0005~0.1000%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼であって、
    前記化学組成は、質量%で、
    N:0.0005~0.030%を含有する、オーステナイト系ステンレス鋼。
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