JP7120081B2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents
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Description
特許文献1に記載の燃料噴射ポンプは、カムとプランジャの間に、ローラとシューを備えている。ローラは、カムの表面に接して自転可能である。シューは、そのローラを保持している。このシューは、プランジャの軸線上に設けられるインサート部材と、そのインサート部材の外側に設けられるベース部材により構成されている。
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態の燃料噴射ポンプ1は、内燃機関に噴射供給するための軽油などの燃料を圧送するものである。燃料噴射ポンプ1から圧送された燃料は、コモンレールに蓄圧され、そのコモンレールに接続される複数のインジェクタから内燃機関の各気筒内へ噴射供給される。
図1に示すように、燃料噴射ポンプ1は、ハウジング2、カム3、そのカム3に設けられた変形部4、ローラ5、シュー6、プランジャ7およびシリンダ8などを備えている。
第1実施形態のカム3は、2個のカムトップ31が径方向の一方と他方に設けられている。また、2個のカムボトム32は、その2個のカムトップ31を結ぶ線分に対し直交する方向に設けられている。
ローラ5に対しカム3とは反対側にシュー6が設けられている。シュー6は、ローラ5側に円弧状の摺接面61を有している。シュー6の摺接面61の曲率半径は、ローラ5の半径と同一または僅かに大きく形成されている。シュー6の摺接面61は、ローラ5のうちカム3とは反対側の面に摺接する。シュー6は、タペット9の内側に嵌合している。
シュー6は、タペット9の有する筒部91の内側に配置され、突出部92のカム3側の面に当接している。そのため、カム3の回転により、ローラ5とシュー6は、タペット9と共に摺動室22の内側を摺動室22の軸方向に往復移動する。
調量弁ユニット10は、調量弁11と電磁駆動部12とを有している。調量弁11は、図示しない燃料入口から燃料が供給される燃料供給通路13とポンプ室81とを連通および遮断する開閉バルブである。電磁駆動部12は、図示しない電子制御装置(ECU)の制御に応じた通電により、調量弁11の駆動を制御する。
燃料噴射ポンプ1による燃料の圧送は、吸入行程、調量行程、加圧行程、吐出行程を含んで行われる。
燃料噴射ポンプ1は、例えば内燃機関の始動時または電動モータの始動時など、カム3が回転を開始する際、シュー6とローラ5の間に油膜が無く、シュー6とローラ5の摩擦係数が高い状態から運転が開始される。そのため、ローラ5が自身の軸周りに回転せず、カム3とローラ5が滑り挙動となることが考えられる。
図5(A)は、カム3が回転を開始した後、ローラ5とカム3の接する位置が変形部4に到達する直前の状態を示している。このとき、シュー6とローラ5の間に油膜が無く、その間の摩擦係数が高い状態となっている。そのため、ローラ5は回転することなく、シュー6とローラ5は滑り挙動になっていない。一方、ローラ5とカム3は、滑り挙動となっている。このとき、圧力角θは、-側にある。
さらに、図5(C)は、図5(B)からカム3が僅かに回転し、ローラ5とカム3の接する位置が変形部4からカム3の回転方向後側に移動した後の状態を示している。このとき、圧力角θは、+側にある。
図6は、変形部4の曲率半径rを比較的大きく形成した例を示している。一方、図7は、変形部4の曲率半径rを比較的小さく形成した例を示している。そして、図6および図7は、それぞれの構成において、ローラ5が変形部4を通過するときの様子を示したものである。なお、図6および図7では、カム3の回転時、カム3に設けられた変形部4をローラ5が通過する際に、変形部4の上をローラ5が移動する方向を矢印Mで示している。
(1)第1実施形態の燃料噴射ポンプ1は、燃料の圧送に寄与するカムプロファイルとは異なる形状としてカム3の表面の一部に設けられた変形部4を備えている。変形部4は、カム3の回転軸方向に延びる溝である。
これによれば、カム3の回転に伴い、カム3の表面に設けられる変形部4をローラ5が移動する際、スクイズ効果によりシュー6とローラ5の間に油膜が形成、保持され、その間の摩擦係数が小さくなる。これにより、シュー制動トルクがカム駆動トルクより小さくなる。そのため、ローラ5とシュー6が滑り挙動となり、カム3とローラ5が転がり挙動となる。したがって、この燃料噴射ポンプ1は、簡素な構成でカム3とローラ5の焼き付きを防ぎ、信頼性を高めることができる。
これにより、カム3の表面のうち変形部4をローラ5が移動する際のローラ5の中心位置の移動速度は、カム3の表面のうち変形部4を除く部位をローラ5が移動する際のローラ5の中心位置の移動速度より速くなる。そのため、スクイズ効果により、シュー6とローラ5の間の油が押しつぶされてその油に圧力が発生することで、シュー6とローラ5の間に油膜を形成、保持することができる。
これによれば、カムボトム32は、カム3の表面をローラ5が移動する際に圧力角θが変化する速度がカムプロファイルの中で最も速くなる部位である。そのため、そのカムボトム32に変形部4を設けることで、圧力角θが変化する速度をより速くすることが可能である。したがって、カム3の表面のうち変形部4をローラ5が移動する際のローラ5の中心位置の移動速度をより速くし、シュー6とローラ5の間に油膜を確実に形成、保持することで、カム3とローラ5を確実に転がり挙動にすることができる。
これによれば、例えば内燃機関の始動時または電動モータの始動時など、カム3の回転開始から早期にカム3とローラ5を転がり挙動にすることで、カム3とローラ5の焼き付きを防ぐことができる。
これにより、変形部4の曲率半径rを製造可能な範囲で小さくすることで、ローラ5が変形部4を移動する際に圧力角θが変化する速度を速くすることが可能である。したがって、ローラ5が変形部4を移動する際のローラ5の中心位置の移動速度を速くし、スクイズ効果によりシュー6とローラ5の間に油膜を形成、保持することで、カム3とローラ5を確実に転がり挙動にすることができる。
第2~第4実施形態は、第1実施形態に対して変形部4の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。第2~第4実施形態の燃料噴射ポンプ1が備えるカム3は、第1実施形態と同様に、2個のカム山を有している。なお、第2~第4実施形態で参照する図8~図10は、燃料噴射ポンプ1が備えるカム3のみを示している。
第2実施形態について図8を参照しつつ説明する。第1実施形態で説明したように、燃料噴射ポンプ1による燃料の圧送は、吸入行程、調量行程、加圧行程、吐出行程を含んで行われる。吸入行程では、プランジャ7が上死点から下死点側へ移動する。したがって、吸入行程が行われる際にカム3の表面にローラ5が接する範囲は、所定のカムトップ31から、カム3の回転方向後側にあるカムボトム32までの範囲である。以下の説明では、カム3の表面のうち、吸入行程が行われる際にカム3の表面にローラ5が接する範囲を「カム表面のうち吸入行程に寄与する範囲」という。図8では、「カム表面のうち吸入行程に寄与する範囲」を、両矢印αで示している。
燃料噴射ポンプ1が燃料を圧送する中で、加圧行程および吐出行程は、ポンプ室81の燃料圧力が高くなる。そのため、ポンプ室81の燃料圧力からプランジャ7が受ける力がプランジャ7とシュー6を経由してローラ5に伝わり、ローラ5とカム3の接触箇所に作用する圧力が大きくなる。これに対し、燃料噴射ポンプ1が燃料を圧送する中で吸入行程は、ポンプ室81の燃料圧力が負圧になる。そのため、ローラ5とカム3の接触箇所に作用する圧力は、加圧行程および吐出行程のときに作用する圧力よりも小さくなる。したがって、第2実施形態では、「カム表面のうち吸入行程に寄与する範囲」に変形部4を設けることで、その変形部4をローラ5が移動する際に変形部4とローラ5に作用する負荷を小さくし、ローラ5の焼き付きを防ぐことができる。
第3実施形態について図9を参照しつつ説明する。第1実施形態で説明したように、燃料噴射ポンプ1による燃料の圧送のうち、調量行程、加圧行程、吐出行程では、プランジャ7が下死点から上死点側へ移動する。したがって、調量行程、加圧行程、吐出行程が行われる際にカム3の表面にローラ5が接する範囲は、所定のカムボトム32から、カム3の回転方向後側にあるカムトップ31までの範囲である。以下の説明では、カム3の表面のうち、調量行程、加圧行程、吐出行程が行われる際にカム3の表面にローラ5が接する範囲を「カム表面のうち調量~吐出行程に寄与する範囲」という。図9では、「カム表面のうち調量~吐出行程に寄与する範囲」を両矢印βで示している。なお、図9でも、図8と同じく、「カム表面のうち吸入行程に寄与する範囲」を両矢印αで示している。
第4実施形態について図10を参照しつつ説明する。第4実施形態の変形部4は、燃料噴射ポンプ1による燃料の圧送に寄与するカムプロファイルとは異なる形状としてカム3の表面の一部に設けられた突起である。この突起は、カム3の径方向外側に突出し、カム3の回転軸方向に延びている。突起の高さは、燃料噴射ポンプ1の燃料圧送に殆ど影響を与えることの無いものである。
以上説明した第4実施形態の構成においても、第1実施形態等と同様の作用効果を奏することができる。なお、第4実施形態で説明した変形部4を突起とする構成を、第2、第3実施形態または後述する第5、第6実施形態に適用することも可能である。
第5および第6実施形態は、第1実施形態等に対してカム3の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態等と同様であるため、第1実施形態等と異なる部分についてのみ説明する。なお、第5、第6実施形態で参照する図11、図12も、燃料噴射ポンプ1が備えるカム3のみを示している。
図11に示すように、第5実施形態の燃料噴射ポンプ1が備えるカム3は、4個のカム山を有している。第5実施形態の変形部4は、カム3の回転軸側に凹む溝である。その溝は、カム3の回転軸方向に延びている。
図12に示すように、第6実施形態の燃料噴射ポンプ1が備えるカム3は、3個のカム山を有している。第6実施形態の変形部4も、カム3の回転軸側に凹む溝である。その溝は、カム3の回転軸方向に延びている。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
3 カム
2 ハウジング
4 変形部
5 ローラ
6 シュー
7 プランジャ
8 シリンダ
21 カム室
22 摺動室
Claims (7)
- 噴射燃料を加圧する燃料噴射ポンプにおいて、
カム山を有し、自身の回転軸(Ax)周りに回転するカム(3)と、
前記カムを収容するカム室(21)、および、前記カム室に連通する摺動室(22)を有し、潤滑油が供給されるハウジング(2)と、
前記カムの表面に接して自転可能なローラ(5)と、
前記ローラのうち前記カムとは反対側の面に摺接し、前記カムの回転により前記摺動室を往復移動するシュー(6)と、
前記シューと共に往復移動するプランジャ(7)と、
前記プランジャを収容し、前記プランジャの往復移動により燃料の圧送を行うポンプ室(81)を形成するシリンダ(8)と、
燃料の圧送に寄与するカムプロファイルとは異なる形状として前記カムの表面の一部に設けられ、前記カムの回転軸方向に延びる溝または突起としての変形部(4)と、を備える燃料噴射ポンプ。 - 前記カムおよび前記ローラの共通法線(N)と前記摺動室の軸(23)とのなす角を圧力角(θ)と呼び、
前記カムの回転時に、前記カムの表面のうち前記変形部を前記ローラが移動する際に前記圧力角が変化する速度が、前記カムの表面のうち前記変形部を除く部位を前記ローラが移動する際に前記圧力角が変化する速度より速くなるように前記変形部の溝または突起が構成されている、請求項1に記載の燃料噴射ポンプ。 - 前記カムは、複数の前記カム山を有しており、
前記変形部は、複数の前記カム山それぞれに設けられている、請求項1または2に記載の燃料噴射ポンプ。 - 前記カムは、2個の前記カム山それぞれの頂部であるカムトップ(31)が径方向の一方と他方に設けられた形状であり、
前記変形部は、前記カムの表面のうち2個の前記カムトップの中央部であるカムボトム(32)に設けられている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料噴射ポンプ。 - 燃料の圧送は、前記プランジャが前記ポンプ室の容積を拡大して燃料を前記ポンプ室に吸入する吸入行程と、前記プランジャが前記ポンプ室の容積を縮小して燃料を調量し加圧し吐き出す調量行程、加圧行程および吐出行程とを含むものであり、
前記変形部は、前記カムの表面のうち、前記吸入行程が行われる際に前記カムの表面に前記ローラが接する範囲(α)に設けられている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料噴射ポンプ。 - 前記変形部は、前記カムの表面のうち、前記吸入行程が行われる際に前記カムの表面に前記ローラが接する範囲に設けられ、且つ、前記調量行程、前記加圧行程および前記吐出行程が行われる際に前記カムの表面に前記ローラが接する範囲(β)に設けられている、請求項5に記載の燃料噴射ポンプ。
- 前記変形部は、前記カムの表面の一部に、前記カムの回転軸方向に延びるように設けられた溝であり、
前記変形部の曲率半径をrとし、前記ローラの半径をRとすると、
R<r<R×30の範囲内に設定されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料噴射ポンプ。
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