以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
図1(A)および図1(B)は、本発明の実施形態に係る電気コネクタ1に被覆電線2が接続された状態を示す斜視図である。図2(A)は、被覆電線2が接続された電気コネクタ1の背面図であり、図2(B)は、電気コネクタ1の平面図である。図3(A)は、電気コネクタ1の正面図であり、図3(B)は、被覆電線2が接続された電気コネクタ1の底面図である。図4(A)は、電気コネクタ1に被覆電線2が接続された状態を示す斜視図であり、切断面を示している。図4(B)は、図4(A)に示す電気コネクタ1の主要部を側面に見た断面図である。図5(A)は、電気コネクタ1のコンタクト7の平面図であり、図5(B)は、コンタクト7の斜視図であり、図5(C)は、コンタクト7の側面図であり、図5(D)は、コンタクト7の斜視図である。
図1(A)~図5(D)を参照して、電気コネクタ1(以下、単にコネクタ1ともいう。)は、電子機器等に備えられる。コネクタ1は、図示しない相手側コネクタに接続されることで、被覆電線2と相手側コネクタとを電気的に接続する。コネクタ1は、ソケットコネクタであり、レセプタクルコネクタとしての相手側コネクタに接続される。コネクタ1は、多極コネクタであり、本実施形態では、5極のコネクタである。コネクタ1と被覆電線2とが互いに接続されることで、電線付きコネクタが形成されている。
被覆電線2は、コネクタ1の極数と同じ数設けられており、本実施形態では、5本設けられている。各被覆電線2は、合成樹脂等の絶縁性の材料を用いて形成された筒状の被覆部3内を、銅またはアルミニウム等で形成された電線4が通る構成を有している。被覆電線2の一端部において、被覆部3から電線4が露出しており、電線4は、対応するコンタクト7に機械的且つ電気的に接続されている。
以下では、コネクタ1の長さ方向を、長さ方向X1という。長さ方向X1は、本発明の「長手方向」の一例である。また、コネクタ1の平面視において、長さ方向X1と直交する方向を、幅方向Y1という。また、長さ方向X1および幅方向Y1の双方と直交する方向を、厚み方向Z1という。
コネクタ1は、全体として、幅方向Y1に細長く延び厚み方向Z1に薄い扁平に形成されている。コネクタ1に被覆電線2が接続されている状態において、各被覆電線2の一端部は、長さ方向X1と平行に配置されている。
コネクタ1は、ハウジング5と、ハウジング5から下方に突出するロック部6と、ハウジング5に保持される複数のコンタクト7と、ハウジング5に保持される複数のリテーナ8と、を有している。
ハウジング5およびロック部6は、合成樹脂等の絶縁材料を用いて形成されている。ハウジング5およびロック部6は、射出成形等によって形成された一体成形品である。ハウジング5は、複数(本実施形態では、5つ)のコンタクト7を保持している。より具体的には、ハウジング5は、複数のコンタクト7を幅方向Y1に並べた状態で保持するように構成されている。ハウジング5は、幅方向Y1に対称な形状に形成されている。ハウジング5は、長さ方向X1において、被覆電線2と接続された基端側部分の厚みが厚く、先端側部分の厚みが薄くされている。
ハウジング5は、ハウジング本体11と、ハウジング本体11から長さ方向X1の一方に突出する突出部12と、ハウジング本体11から突出部12にかけて形成された複数のコンタクト保持孔部13と、ハウジング本体11に形成されハウジング5の天面5aに開放された複数のリテーナ保持孔部14と、を有している。
ハウジング本体11は、ハウジング5のうち基端側部分を形成している。ハウジング本体11は、幅方向Y1に細長い略四角柱状のブロック部分である。長さ方向X1におけるハウジング本体11の先端部から長さ方向X1に沿って、突出部12が延びている。
突出部12は、ハウジング5のうち先端側部分を形成している。突出部12は、幅方向Y1に細長いブロック状に形成されている。突出部12は、ハウジング本体11の厚みよりも薄く形成されているとともに、幅方向Y1においてハウジング本体11の長さと同じ長さを有している。本実施形態において、長さ方向X1において、突出部12の長さは、ハウジング本体11の長さよりも短い。
コンタクト保持孔部13は、コンタクト7の数と同じ数だけ設けられており、本実施形態では、幅方向Y1に等ピッチに5箇所設けられている。すなわち、複数のコンタクト7をそれぞれ保持する複数のコンタクト保持孔部13が設けられている。本実施形態では、各コンタクト保持孔部13の形状は、同じである。各コンタクト保持孔部13は、ハウジング本体11から突出部12に亘って延びている。コンタクト保持孔部13の基端部は、ハウジング本体11におけるハウジング5の基端面5cに開放されている。作業員がコンタクト7をコンタクト保持孔部13へ挿入する際、作業員は、コンタクト7をコンタクト保持孔部13へ基端面5cから挿入し、コンタクト7の先端部を突出部12内へ収容する。コンタクト保持孔部13は、長さ方向X1の一方としての挿入方向D1に沿って進むに従い、挿入方向D1と直交する断面での断面積が段階的に小さくなるような形状に形成されている。コンタクト保持孔部13において、挿入方向D1の先端には、先端ストッパ13fが設けられている。コンタクト7は、この先端ストッパ13fに受けられることで、挿入方向D1へのハウジング5からの飛び出しを規制されている。
ハウジング本体11におけるコンタクト保持孔部13の内面には、突起状のランス15が形成されている。ランス15は、コンタクト7の後述する抜け止め用の貫通孔部30aの縁部に係合するように構成されている。ランス15は、挿入方向D1の下流側に進むに従いコンタクト保持孔部13の内面からの突出量が大きくなるようにハウジング5の天面5a側に向けて延びている。
各コンタクト保持孔部13の先端側部分には、上下一対の開放孔部13d,13eが設けられている。一対の開放孔部13d,13eは、幅方向Y1の位置を揃えられており、厚み方向Z1に向かいあっている。一方の開放孔部13dは、長さ方向X1に沿って突出部12の全域に延びており、突出部12におけるハウジング5の天面5a側に開放されている。他方の開放孔部13eは、長さ方向X1に沿って突出部12の全域に延びており、突出部12におけるハウジング5の底面5b側に開放されている。上記の構成を有するコンタクト保持孔部13のうち、ハウジング本体11に形成されている基端側部分に、リテーナ保持孔部14が連続している。
リテーナ保持孔部14は、コンタクト7の数と同じ数だけ設けられており、本実施形態では、幅方向Y1に等ピッチに5箇所設けられている。すなわち、対応するコンタクト保持孔部13にそれぞれ連続し対応するリテーナ8を保持する複数のリテーナ保持孔部14が設けられている。本実施形態では、各リテーナ保持孔部14の形状は、同じである。各リテーナ保持孔部14は、長さ方向X1におけるハウジング本体11の先端部寄りに配置されている。各リテーナ保持孔部14は、ハウジング5の天面5aから対応するコンタクト保持孔部13に向けて延びており、上記天面5aと対応するコンタクト保持孔部13との間を貫通している。リテーナ保持孔部14は、対応するコンタクト保持孔部13と幅方向Y1における中央位置を揃えられており、長さ方向X1に沿ってリテーナ保持孔部14、上下一対の開放孔部13d,13eが順に並んでいる。平面視において、リテーナ保持孔部14は、長さ方向X1に細長く、幅方向Y1に薄い矩形状に形成されている。本実施形態では、リテーナ保持孔部14は、長さ方向X1に対称な形状に形成されている。
図4(A)および図4(B)を参照して、リテーナ保持孔部14は、大孔部16と、小孔部17と、大孔部16と小孔部17とを繋ぎ長さ方向X1に延びる段部18,19と、を有している。
大孔部16は、ハウジング5の天面5aに開放された部分であり、当該天面5aにおけるリテーナ保持孔部14の開口部を含んでいる。大孔部16は、厚み方向Z1におけるリテーナ8の基端側部分を収容する部分であり、長さ方向X1に細長い四角柱状の空間を形成している。ハウジング本体11のうち、厚み方向Z1において、ハウジング5の天面5aとコンタクト保持孔部13との間に形成された天面部11aが、リテーナ保持孔部14を形成している。厚み方向Z1に関して、天面部11aのうち大孔部16が形成されている長さは、小孔部17が形成されている部分の長さよりも短い。大孔部16は、厚み方向Z1に沿って延びる内周面を有している。長さ方向X1における大孔部16の一対の端部から、段部18,19が延びている。
段部18,19は、リテーナ8の後述する張出し部51,52を受けるために設けられている。段部18,19は、長さ方向X1に沿って大孔部16の内周面から互いに近接するように延びている。段部18,19は、本実施形態では、厚み方向Z1と直交する平面に形成されており、長さ方向X1に沿って互いに面一に延びている。長さ方向X1における段部18,19の互いの対向端部から、小孔部17が延びている。
小孔部17は、対応するコンタクト保持孔部13の内面に開放された部分である。小孔部17は、厚み方向Z1におけるリテーナ8の先端側部分(先端部50a)が貫通する部分であり、幅方向Y1から見て、長さ方向X1に細長い矩形状の空間を形成している。小孔部17から挿入方向D1に進んだ位置に、ランス15の先端部15aが配置されている。小孔部17の一部は、ランス15と厚み方向Z1に向かい合っている。
図1(A)、図2(A)および図3(A)を参照して、上記の構成を有するハウジング5から、ロック部6が延びている。ロック部6は、支柱20と、ロック片21と、を有している。
本実施形態では、支柱20は、幅方向Y1に離隔して一対設けられている。支柱20は、ハウジング本体11におけるハウジング5の底面5bから突出した形状を有している。長さ方向X1において、支柱20は、リテーナ8から挿入方向D1と反対の引き抜き方向D2に進んだ位置に配置されている。支柱20は、ロック片21に連続している。ロック片21は、板状の部材である。ロック片21は、支柱20を支点として揺動可能である。作業員がこのロック片21を揺動させることで、ロック片21の前端部を持ち上げることができる。ロック片21の先端部の一側面から、図示しない相手側コネクタのロック爪に係合するためのロック爪22が突出している。
図4(A)~図5(B)を参照して、次に、ハウジング5に、収容されているコンタクト7の構成を説明する。
コンタクト7は、被覆電線2の被覆部3と機械的かつ電気的に接続された状態で、相手側コネクタのコンタクト(図示せず)に接触する部分として設けられている。
コンタクト7は、複数設けられている。本実施形態では、コンタクト7の数は、コネクタ1の極数と同じであり、且つ、コンタクト保持孔部13の数と同じであり、本実施形態では5つ設けられている。コンタクト7は、複数の被覆電線2のそれぞれに対応して設けられている。各コンタクト7は、対応するコンタクト保持孔部13に挿入されており、当該コンタクト保持孔部13に保持されている。
コンタクト7は、導電性を有する材料を用いて形成されている。より具体的には、コンタクト7は、例えば、銅合金を素材として構成されている。そして、コンタクト7の表面には、例えば、すずめっきまたは金めっき等のめっき処理が施されている。
コンタクト7は、めっき処理が施された1枚の金属板に切断加工および曲げ加工等を施すことで形成されている。コンタクト7は、長さ方向X1に細長く延びる形状に形成されている。
コンタクト7は、底部30と、幅方向Y1に並ぶ第1側部31および第2側部32と、弾性片部33と、弾性片部33に形成された接触部34と、抜け止め部35と、電線かしめ部36と、被覆かしめ部37と、を有している。
底部30は、厚み方向Z1と直交するように延びる平板状の部分である。本実施形態では、底部30のうち長さ方向X1の中間部に、抜け止め用の貫通孔部30aが形成されている。貫通孔部30aは、長さ方向X1に細長い矩形状に形成されている。この貫通孔部30aの縁部は、前述したように、ランス15の先端部15aに係合していることで、引き抜き方向D2への移動が規制されている。
底部30は、コンタクト保持孔部13内において、ハウジング本体11から突出部12に亘って延びている。そして、底部30は、コンタクト保持孔部13のうちハウジング5の底面5b側の内面に受けられている。長さ方向X1において、底部30の基端部は、ハウジング5の基端面5cに隣接しており、先端ストッパ13fに隣接している。底部30は、第1側部31および第2側部32を互いに連結している。より具体的には、幅方向Y1における底部30の一対の端部から、第1側部31および第2側部32が延びている。
第1側部31および第2側部32は、底部30から、厚み方向Z1の一方側(ハウジング5の天面5a側)に向けて延びる、縦板状に形成されている。第1側部31および第2側部32において、長さ方向X1における先端側部分38の高さは、長さ方向X1における基端側部分39の高さよりも高くされている。この先端側部分38は、突出部12およびハウジング本体11に亘って配置されている。第1側部31および第2側部32の先端側部分38と、底部30と、で囲まれた空間に、弾性片部33が配置されている。
弾性片部33は、底部30の先端部からU字状に延びていることで弾性変形可能であり、挿入方向D1の下流側に向けて凸となる形状に形成されている。弾性片部33に接触部34が形成されている。接触部34は、相手側コネクタのコンタクトに接触するための部分として設けられており、一方の開放孔部13dを通してハウジング5の外部に露呈している。一方の開放孔部13dを通ってコンタクト保持孔部13に進入した相手側コネクタのコンタクトは、接触部34と接触することで、当該接触部34と電気的に接続される。この弾性片部33から引き抜き方向D2に進んだ箇所に、抜け止め部35が形成されている。
抜け止め部35は、コンタクト7がコンタクト保持孔部13から抜けることを防止するためにリテーナ8と接触可能に設けられており、各側部31,32から延びた突起状に形成されている。抜け止め部35は、第1側部31および第2側部32の先端側部分38のうち、リテーナ8に隣接する部分に設けられており、第1側部31から延びる第1片部41と、第2側部32から延びる第2片部42と、を有している。
各片部41,42は、本実施形態では、矩形板状に形成されており、対応する側部31,32の先端側部分38に対して略90度の向きとなるように配置されている。各片部41,42は、各側部31,32から厚み方向Z1においてハウジング5の天面5a側に突出している。各片部41,42は、厚み方向Z1の位置が揃えられている。また、各片部41,42の先端部は、互いに近接されており、これらの先端部間の隙間は、リテーナ8の板厚未満(ゼロを含む)である。抜け止め部35から引き抜き方向D2に進んだ位置に、電線かしめ部36が配置されている。
電線かしめ部36は、被覆電線2の一端部において被覆部3から露出する電線4にかしめられることで当該電線4に結合される。電線かしめ部36は、第1側部31および第2側部32のそれぞれの基端側部分39に設けられている。電線かしめ部36は、一対の側部31,32から延びる一対の片部を有している。これらの片部は、底部30と協働して電線4を挟むようにして、電線4にかしめられる。電線かしめ部36から引き抜き方向D2に進んだ位置に、被覆かしめ部37が配置されている。
被覆かしめ部37は、被覆電線2の一端部において被覆部3にかしめられることで当該被覆部3に結合される。被覆かしめ部37は、第1側部31および第2側部32のそれぞれの基端側部分39に設けられている。電線かしめ部36は、一対の側部31,32から延びる一対の片部を有している。これらの片部は、底部30と協働して被覆部3を挟むようにして、電線4にかしめられる。
図2(B)、図4(A)および図4(B)を参照して、次に、リテーナ8の構成を説明する。
リテーナ8は、複数設けられている。本実施形態では、リテーナ8の数は、コネクタ1の極数と同じであり、且つ、リテーナ保持孔部14の数と同じである。リテーナ8は、複数のコンタクト7のそれぞれに対応して設けられている。各リテーナ8は、対応するリテーナ保持孔部14に挿入されており、当該リテーナ保持孔部14に保持されている。各リテーナ8は、互いに同じ構成を有している。すなわち、コネクタ1の極数に拘わらず、同じ構成の複数のリテーナ8を用いることができる。
リテーナ8は、対応するコンタクト7に形成された抜け止め部35を受けることで、コンタクト保持孔部13から挿入方向D1へのコンタクト7の抜け動作を規制する。本実施形態では、リテーナ8は、めっきされた金属板を打ち抜き加工することで形成されている。本実施形態では、各リテーナ8は、長さ方向X1に対称な形状に形成されている。リテーナ8の厚み(幅方向Y1の長さ)は、1mm未満程度の小さな値に設定されている。リテーナ8は、本実施形態では、T字状に形成されている。リテーナ8は、長さ方向X1、すなわち、コンタクト7の長手方向と平行に延びる板状に形成されており、幅方向Y1と直交している。リテーナ8をこのように幅方向Y1と直交するように延びる形状に形成することで、コンタクト7から引き抜き方向D2に沿ってリテーナ8に作用する荷重に関して、断面係数を高くできる。
幅方向Y1において、隣り合うリテーナ8,8間の距離L1は、隣り合う開放孔部13d,13d間の距離L2よりも大きく設定されている(L1>L2)。また、隣り合うリテーナ8,8間の距離L1は、隣り合うコンタクト7,7間の距離よりも大きく設定されている。この構成により、リテーナ保持孔部14を設けたことによるハウジング5の強度低下量は、極めて小さい。
図4(A)および図4(B)を参照して、リテーナ8は、リテーナ本体50と、リテーナ本体50から長さ方向X1の両端に延びる一対の張出し部51,52と、を有している。
リテーナ本体50は、側面視において矩形状に形成されており、長さ方向X1の長さと厚み方向Z1の長さとが概ね同じである正方形状に形成されている。リテーナ本体50には、固定突起53が設けられている。固定突起53は、長さ方向X1におけるリテーナ本体50の両端縁部に形成された突起状部分である。固定突起53は、リテーナ保持孔部14の小孔部17の内側面に加圧されて摩擦接触している。これにより、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14に圧入固定されている。なお、リテーナ8は、圧入以外の固定方法、例えば、接着剤を用いた固定方法によってハウジング5に固定されてもよい。また、固定突起53は、小孔部17に設けられていてもよい。
固定突起53は、リテーナ本体50のうちコンタクト7の抜け止め部35と接触する先端部50aとは厚み方向Z1に近接している。この構成により、コンタクト7の抜け止め部35からリテーナ8に作用する引き抜き荷重F1によってリテーナ8に生じる曲げモーメントM1は、小さくされている。
厚み方向Z1におけるリテーナ本体50の先端部50aは、リテーナ保持孔部14の小孔部17からコンタクト保持孔部13内に突出している。この先端部50aは、コンタクト7の抜け止め部35の一対の片部41,42に対して引き抜き方向D2の下流側に配置されている。この先端部50aのうち、挿入方向D1の下流側の縁部は、一対の片部41,42と長さ方向X1に向かい合っている。本実施形態では、この先端部50aは、ランス15の先端部15aに対して引き抜き方向D2の下流側に配置されている。このような配置により、引き抜き荷重F1は、リテーナ本体50に加えてランス15の先端部15aに受けられる。これにより、曲げモーメントM1をより小さくできる。
張出し部51,52は、側面視において矩形状に形成されている。張出し部51,52、および、リテーナ本体50の基端部は、リテーナ保持孔部14の大孔部16に挿入されている。張出し部51,52は、リテーナ保持孔部14の段部18,19と厚み方向Z1に向かい合っている。張出し部51,52のうち、段部18,19と接触可能な縁部は、それぞれ、ストッパ部54を含んでいる。
ストッパ部54は、リテーナ保持孔部14へのリテーナ8の挿入量を規定するために設けられており、ハウジング5の段部18,19に受けられることで、リテーナ8がリテーナ保持孔部14にそれ以上コンタクト保持孔部13側へ深く挿入される動作を規制する。
一対の張出し部51,52のうち挿入方向D1の下流側の張出し部51において、段部18と対向する縁部は、ストッパ部54に加えて曲げモーメント受け部55を含んでいる。引き抜き方向D2に沿ってコンタクト7をコンタクト保持孔部13から引き抜く引き抜き荷重F1は、リテーナ8の先端部50aで受けられる。曲げモーメント受け部55は、この引き抜き荷重F1をリテーナ8が受けることによってリテーナ8に生じる曲げモーメントM1を受ける。
曲げモーメント受け部55は、リテーナ保持孔部14の一方の段部18と接触している。曲げモーメント受け部55と一方の段部18は、例えば、長さ方向X1と平行に延びている。なお、曲げモーメント受け部55および一方の段部18は、挿入方向D1に進むに従いコンタクト7の底部30側に進む傾斜状に形成されていてもよい。本実施形態では、長さ方向X1における一対の張出し部51,52の長さは同じに設定されているけれども、この通りでなくてもよい。例えば、長さ方向X1において、一方の張出し部51の長さを他方の張出し部52の長さよりも長くしてもよい。これにより、曲げモーメント受け部55を長さ方向X1により長く形成することもできる。
長さ方向X1において、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14に挟まれている。また、幅方向Y1において、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14に挟まれている。上記の構成により、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14に対する位置ずれがより確実に抑制されている。
以上が、コネクタ1の概略構成である。
上記の電線付きコネクタ1の組立時には、作業員は、被覆電線2が取り付けられたコンタクト7を準備する。次に、このコンタクト7を、リテーナ8が取り付けられていないハウジング5の対応するコンタクト保持孔部13へ挿入方向D1に沿って挿入する。これにより、コンタクト7の貫通孔部30aがランス15を乗り越えてこのランス15の先端部15aが貫通孔部30a内に進入する。次いで、作業員は、各リテーナ保持孔部14にリテーナ8を挿入することで、リテーナ8をリテーナ保持孔部14に挿入する。これにより、リテーナ8の固定突起53は、リテーナ保持孔部14の小孔部17に係合することで、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14に圧入固定される。
例えば、作業員が被覆電線2をコネクタ1から引っ張るように力を加えることで、コネクタ1に、引き抜き方向D2に沿う引き抜き荷重F1が作用することがある。この引き抜き荷重F1によって、コンタクト7は、引き抜き方向D2に引っ張られ、その結果、各コンタクト7の抜け止め部35が対応するリテーナ8の先端部50aを引き抜き方向D2に引っ張る。この引き抜き荷重F1は、リテーナ8を介してリテーナ保持孔部14に受けられる。また、引き抜き荷重F1に起因して、リテーナ8には、一方の張出し部51がコンタクト7側に近づくようにリテーナ8を回転させる曲げモーメントM1が作用する。この曲げモーメントM1は、曲げモーメント受け部55とリテーナ保持孔部14の一方の段部18との接触によって受けられ、リテーナ8の回転が防止される。
以上説明したように、本実施形態のコネクタ1によると、リテーナ8は、1つのコンタクト7毎に1つ設けられる。この構成であれば、コネクタ1の極数、すなわち、コネクタ1におけるコンタクト7の数に拘わらず、共通の形状に形成された複数のリテーナ8を用いることで、各コンタクト7の抜け止めをリテーナ8で実現できる。よって、コネクタ1の極数に応じて異なる形状(長さ)のリテーナを準備する必要が無いので、リテーナ8用に複数種類の金型を準備する必要がなく、コネクタ1の製造コストをより低減できる。
また、コネクタ1によると、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14へのリテーナ8の挿入量を規定するためにハウジング5の段部18,19に受けられるストッパ部54を含んでいる。この構成によると、ハウジング5へのリテーナ8の挿入深さが深くなりすぎることを防止できる。その結果、リテーナ8がハウジング5内のコンタクト7の意図しない箇所に接触することを抑制できる。
また、コネクタ1によると、リテーナ8は、曲げモーメント受け部55を有している。この構成によると、例えば、コンタクト7に接続された被覆電線2からコンタクト7に引き抜き荷重F1が作用したときに、この引き抜き荷重F1を受けて曲げモーメントM1が作用するリテーナ8について、この曲げモーメントM1を受けて変位してしまうことを抑制できる。すなわち、ハウジング5からのコンタクト7の抜け防止効果を、リテーナ8がより確実に発揮できる。
また、コネクタ1によると、リテーナ8は、コンタクト7の長手方向と平行に延びる形状に形成されている。この構成によると、例えば、コンタクト7に接続された被覆電線2からコンタクト7に引き抜き荷重F1が作用したときに、この引き抜き荷重F1を、リテーナ8において高い断面係数で受けることができる。これにより、リテーナ8に生じる曲げ応力をより小さくできる。
また、コネクタ1によると、リテーナ8は、リテーナ保持孔部14に圧入固定されている。この構成によると、リテーナ8を簡易な構成で強固にハウジング5に固定できる。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上記実施形態に限られず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。例えば、次のように変更して実施してもよい。
(1)上述の実施形態では、リテーナ8が用いられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、リテーナ8に代えて、本発明の一変形例を示す図6(A)~図7(B)に示されているリテーナ8Aが用いられてもよい。
なお、以下では、上述の実施形態の構成と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態の構成と同様の構成については、図に同様の符号を付して説明を省略する。図6(A)は、コネクタ1の変形例を示す斜視図であり、図6(B)は、コネクタ1の変形例を示す正面図であり、図6(C)は、コネクタ1の変形例を示す平面図である。図7(A)は、コネクタ1の変形例の斜視図であり、一部を断面で示している。図7(B)は、コネクタ1の変形例の断面図であり、コネクタ1を側方から見た状態を示している。
図6(A)~図7(B)を参照して、本変形例では、前述したように、リテーナ8に代えてリテーナ8Aが設けられている。また、ハウジング5は、リテーナ保持孔部14に代えてリテーナ保持孔部14Aを有している。また、ハウジング5にけるランス15Aの形状と、コンタクト7の弾性片部33Aの形状が、上述の実施形態と異なっている。
ハウジング本体11におけるコンタクト保持孔部13の内面には、突起状のランス15Aが形成されている。ランス15Aは、コンタクト7の後述する弾性片部33Aの先端部33aに係合するように構成されている。ランス15Aは、挿入方向D1の下流側に進むに従いコンタクト保持孔部13の内面からの突出量が大きくなるようにハウジング5の天面5a側に向けて延びている。
リテーナ保持孔部14Aは、コンタクト7の数と同じ数だけ設けられており、本実施形態では、幅方向Y1に等ピッチに5箇所設けられている。すなわち、対応するコンタクト保持孔部13にそれぞれ連続する複数のリテーナ保持孔部14Aが設けられている。各リテーナ保持孔部14Aの形状は、同じである。各リテーナ保持孔部14Aは、長さ方向X1におけるハウジング本体11の先端部寄りに配置されている。各リテーナ保持孔部14Aは、ハウジング本体11におけるハウジング5の天面5aから対応するコンタクト保持孔部13に向けて延びており、上記天面5aと対応するコンタクト保持孔部13との間を貫通している。リテーナ保持孔部14は、対応するコンタクト保持孔部13と幅方向Y1の中央位置を揃えられており、長さ方向X1に沿ってリテーナ保持孔部14A、上下一対の開放孔部13d,13eが順に並んでいる。平面視において、リテーナ保持孔部14Aは、長さ方向X1に細長いT字状に形成されており、挿入方向D1の上流側端部が幅方向Y1に広がった形状を有している。
リテーナ保持孔部14Aは、厚み方向Z1と直交する断面形状が一定である。長さ方向X1におけるリテーナ保持孔部14Aの先端側部分は、ランス15Aと厚み方向Z1に向かい合っている。
コンタクト7の弾性片部33の先端部33aは、底部30に形成された貫通孔部30aを貫通している。そして、この先端部33aが、ランス15Aの先端部と長さ方向X1に向かい合っている。
リテーナ8Aは、複数設けられている。本実施形態では、リテーナ8Aの数は、コネクタ1の極数と同じであり、且つ、リテーナ保持孔部14Aの数と同じである。リテーナ8Aは、複数のコンタクト7のそれぞれに対応して設けられている。各リテーナ8Aは、対応するリテーナ保持孔部14Aに挿入されており、当該リテーナ保持孔部14Aに圧入固定等によって固定されている。なお、リテーナ8Aは、圧入以外の固定方法、例えば、接着剤を用いた固定方法によってハウジング5に固定されてもよい。各リテーナ8Aは、互いに同じ構成を有している。すなわち、コネクタ1の極数に拘わらず、同じ構成の複数のリテーナ8Aを用いることができる。
リテーナ8Aは、対応するコンタクト7に形成された抜け止め部35を受けることで、コンタクト保持孔部13Aからの引き抜き方向D2に沿うコンタクト7の抜け動作を規制する。本実施形態では、リテーナ8Aは、めっきされた金属板を打ち抜き加工することで形成されている。
リテーナ8Aの厚み(幅方向Y1の長さ)は、2~3mm未満程度の小さな値に設定されている。リテーナ8は、本実施形態では、平面視においてT字状に形成されており、また、側面視でL字状に形成されている。
幅方向Y1において、隣り合うリテーナ8A,8A間の距離L1Aは、隣り合う開放孔部13d,13d間の距離L2よりも大きく設定されている(L1A>L2)。また、隣り合うリテーナ8A,8A間の距離L1Aは、隣り合うコンタクト7,7間の距離よりも大きく設定されている。この構成により、リテーナ保持孔部14Aを設けたことによるハウジング5の強度低下量は、極めて小さい。
リテーナ8Aのうち、挿入方向D1の上流側部分57は、コンタクト保持孔部13内に突出するように厚み方向Z1に延びている。そして、この上流側部分57は、コンタクト7の抜け止め部35に対して引き抜き方向D2の下流側に位置されている。一方、リテーナ8Aのうち、挿入方向D1の下流側部分58は、略全体がコンタクト保持孔部13内に配置されており、厚み方向Z1において、抜け止め部35と向かい合っている。
上記の電線付きコネクタ1の組立時には、作業員は、被覆電線2が取り付けられたコンタクト7を準備する。次に、作業員は、このコンタクト7を、リテーナ8Aが取り付けられていないハウジング5の対応するコンタクト保持孔部13に挿入方向D1に沿って挿入する。これにより、コンタクト7Aの先端部および弾性片部33の先端部33aが、ランス15を乗り越える。次いで、作業員は、各リテーナ保持孔部14Aにリテーナ8Aを挿入することで、リテーナ8Aをリテーナ保持孔部14Aに固定する。
例えば、作業員が被覆電線2をコネクタ1から引っ張るように力を加えることで、コネクタ1に、引き抜き方向D2に沿う引き抜き荷重F1が作用することがある。この引き抜き荷重F1によって、コンタクト7は、引き抜き方向D2に引っ張られ、その結果、各コンタクト7の抜け止め部35が対応するリテーナ8Aを引き抜き方向D2に引っ張る。この引き抜き荷重F1は、リテーナ8を介してリテーナ保持孔部14によって受けられるとともに、弾性片部33を介してランス15の先端部によって受けられる。
この変形例によると、平面視でT字状のリテーナ8Aによって、引き抜き荷重F1を堅固に受けることができる。
(2)また、上述の実施形態および変形例では、コンタクト7の抜け止め部35において、一対の片部41,42の先端部が互いに突き合わされる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。例えば、図8(A)および図8(B)に示すように、コンタクト7の抜け止め部35において、第1片部41Aおよび第2片部42Aが、互いに重ね合わされるように配置されてもよい。図8(A)は、コンタクト7の変形例を示す斜視図であり、図8(B)は、図8(A)に示すコンタクト7の正面図である。この場合、第1片部41Aが第2片部42A上に重ね合わされてもよいし、第2片部42Aが第1片部41A上に重ね合わされてもよい。このような重ね合わせの構成が採用されることで、引き抜き方向D2に沿ってリテーナ8,8Aと接触したときの抜け止め部35の強度をより高くできる。
また、図9(A)および図9(B)に示すように、コンタクト7の抜け止め部35において、第1片部41Bが第1側部31の先端側部分38から厚み方向Z1に沿って突出する突起状に形成されるとともに、第2片部42Bが第2側部32の先端側部分38から延びて第1側部31の先端側部分38に受けられるように形成されていてもよい。図9(A)および図9(B)は、それぞれ、コンタクト7の更なる変形例を示す斜視図である。この場合、第2片部42Bの先端部は、一部(この変形例では、挿入方向D1の先端側部分)が切り欠かれた形状となっており、この切り欠かれた部分に、第1片部41Bが配置されている。第2片部42Bの先端部は、第1側部31Bに予め所定のプレス圧でプレスされていることが好ましい。このようなブリッジ状の構成が採用されることで、引き抜き方向D2に沿ってリテーナ8,8Aと接触したときの抜け止め部35の強度をより高くできる。なお、第1片部41Bの形状と第2片部42Bの形状とを入れ替えてもよい。