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JP7195588B2 - 予測装置、予測方法、及び予測プログラム - Google Patents

予測装置、予測方法、及び予測プログラム Download PDF

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JP7195588B2 JP2018201240A JP2018201240A JP7195588B2 JP 7195588 B2 JP7195588 B2 JP 7195588B2 JP 2018201240 A JP2018201240 A JP 2018201240A JP 2018201240 A JP2018201240 A JP 2018201240A JP 7195588 B2 JP7195588 B2 JP 7195588B2
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Description

本発明は、予測装置、予測方法、及び予測プログラムに関する。
宇宙空間の利用拡大が進みつつある現在、衛星やスペースデブリなどの宇宙空間を移動する移動体(以下、宇宙機と称する)の軌道を高精度に予測することは、欠かせない技術になりつつある。軌道予測の高精度化を実現するためには、その軌道の推移に影響を及ぼす物理現象の解明が不可欠である。しかしながら、宇宙機が活動する高度域では、観測情報が少ないため、少ない観測量から構築されたモデルを介して軌道予測を行っている。このような状況下で、軌道予測の高精度化を目指した技術としては、例えば、地上に設けられた追尾用アンテナ角度の予測と実測とのずれを学習することで、宇宙機の軌道を予測したり、宇宙機に搭載されたセンサによって検出された観測情報に基づいて、宇宙機の軌道を予測したりする技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2016-223781号公報 特開2009-220622号公報
宇宙機の軌道を高精度に予測するためには、少なくとも宇宙機の飛行方向の断面積と質量比、宇宙機の抵抗係数、そして周辺大気の大気密度の複数の情報を知る必要がある。しかしながら、宇宙機が軌道を周回しているときに、上記の情報を高精度に知ることは困難である。そのため、従来の技術では、太陽パドルによる断面積変化があるにもかかわらず質量比は一定値と仮定したり、抵抗係数を人為的に与えたり、大気密度はモデルから得られる値を利用してきた。しかしながら、従来の技術では、宇宙機の断面積と質量比、宇宙機の抵抗係数、周辺大気の大気密度といった不確かなパラメータを陽に扱っているため、宇宙機の軌道を精度よく予測できない場合があった。また、このような軌道を精度よく予測するという課題は、宇宙機に限られず、抵抗を受ける環境下で運動する移動体全般に共通するところである。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、移動体の軌道を精度よく予測することができる予測装置、予測方法、及び予測プログラムを提供することを目的の一つとする。
本発明の一態様は、対象の移動体が移動する空間の環境を示す環境情報を取得する取得部と、ある移動体が移動した空間の環境を示す環境情報が入力されると、ある移動体の将来の軌道を示す軌道情報を出力するように学習されたモデルに対して、前記取得部により取得された前記環境情報を入力することで得られた前記モデルの出力結果に基づいて、前記対象の移動体の将来の軌道を予測する予測部と、を備える予測装置である。
本発明の一態様によれば、移動体の軌道を精度よく予測することができる。
実施形態の予測装置100の構成の一例を示す図である。 軌道半径変化率Adotの時間履歴の一例を示す図である。 太陽活動指数SFの時間履歴の一例を示す図である。 地磁気活動指数Apの時間履歴の一例を示す図である。 電離層全電子数の全球平均値TECの時間履歴の一例を示す図である。 学習時に制御部110により実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。 各モデルの予測結果の一例を示す図である。 各モデルの予測値と観測値との絶対誤差の和の一例を示す図である。 運用時に制御部110により実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照し、本発明の予測装置、予測方法、及び予測プログラムの実施形態について説明する。本実施形態における予測装置は、例えば、人工衛星や宇宙探査機、宇宙ステーション、スペースデブリといった宇宙機の将来の軌道を、機械学習を用いて予測する装置である。また、予測装置は、宇宙機に限られず、地上や水中、上空(例えば成層圏など)などを移動する他の移動体の将来の軌道(移動軌跡)を予測してもよい。
図1は、実施形態の予測装置100の構成の一例を示す図である。図示のように、予測装置100は、例えば、通信部102と、制御部110と、記憶部130とを備える。予測装置100は、単一の装置であってもよいし、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)といったネットワークを介して接続された複数の装置が互いに協働して動作するシステムであってもよい。すなわち、予測装置100は、分散コンピューティングやクラウドコンピューティングを利用したシステムに含まれる複数のコンピュータ(プロセッサ)によって実現されてもよい。
通信部102は、例えば、NIC(Network Interface Card)などの通信インターフェースやDMA(Direct Memory Access)コントローラを含む。通信部102は、WANやLANなどのネットワークを介して、所定の端末装置などと通信する。所定の端末装置は、例えば、宇宙機の軌道を監視する地上のオペレータなどが利用可能なコンピュータである。
制御部110は、例えば、学習部112と、取得部114と、予測部116と、出力制御部118とを備える。制御部110の構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサが記憶部130に格納されたプログラムを実行することにより実現される。また、制御部110の構成要素の一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
記憶部130は、例えば、HDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより実現される。記憶部130は、ファームウェアやアプリケーションプログラムなどの各種プログラムの他に、学習モデル情報132や、軌道推移データベース134、環境データベース136などを格納する。
学習モデル情報132は、移動体(例えば宇宙機)の将来の軌道を予測する際に利用される学習モデルを定義した情報(プログラムまたはデータ構造)である。学習モデルには、例えば、正則化回帰の一つであるLASSO(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)、ランダムフォレスト、ガウス過程回帰、またはニューラルネットワークのうち一部または全部のモデルが含まれる。なお、学習モデルには、上記の4種類のモデルに加えて、あるいは代えて、他の回帰手法に基づくモデルが含まれていてもよい。
軌道推移データベース134は、宇宙機の軌道の時間推移を示す軌道情報が記録されたデータベースである。例えば、宇宙機が、高度100[km]~1000[km]の超高層大気内を航行する場合、わずかに存在する大気の影響により、宇宙機は大気からの抵抗力を受けることになる。この結果、宇宙機には加速度(機体を減速させる加速度)adragが生じ、宇宙機が軌道から徐々に地表面に近づいていく(落下していく)。軌道推移データベース134には、上記の加速度adragが生じ得る宇宙機が軌道から一日あたりにどの程度落下するのかを表した軌道半径変化率Adotが、宇宙機の軌道の時間履歴(時間推移)として記憶される。軌道推移データベース134は、新たに宇宙機の軌道(軌道半径変化率Adot)が観測されるたびに更新されてよい。
図2は、軌道推移データベース134に記録された軌道半径変化率Adotの時間履歴の一例を示す図である。図示の例では、およそ2012年から2018年までの期間において一日ごとに観測された軌道半径変化率Adotが、軌道推移データベース134に記録されている。例えば、軌道半径変化率Adotは、米国がインターネット上で公開している宇宙飛翔体の軌道情報TLE(Two Line Elemnt)、各国の宇宙機関が保有する宇宙機の軌道情報から取得されてよい。
環境データベース136は、宇宙機が軌道に沿って移動する空間(すなわち超高層大気)の環境を示す環境情報が記録されたデータベースである。
超高層大気の環境情報には、例えば、太陽活動指数SF(Solar Flux)と、地磁気活動指数Apと、電離層全電子数TEC(Total electron content)の全球平均値(または一日平均値ともいう)とのうち一部または全部の情報が含まれる。
太陽活動指数SFは、電波の波長を10.7[cm]としたときの周波数当たりの電波流束値である。太陽活動指数SFは、太陽フラックスや太陽電波フラックスとも呼ばれる。また、太陽活動指数SFは、10.7[cm]という電波の波長を基準にしたときの電波密度強度であってもよい。この場合、太陽活動指数SFは、F10.7とも呼ばれる。
地磁気活動指数Apは、世界12ヶ国の地磁気観測所の観測を元にした地磁気の活動度を示すap指数を、1日8回の観測したものの平均である。
電離層全電子数の全球平均値は、世界中のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信局で取得した測位信号データを利用することにより求められた信号の視線方向の遅延量から算出される。
太陽活動指数SFおよび地磁気活動指数Apは、宇宙機の軌道推移に強い影響を及ぼす大気密度に関連する因子として広く知られている。一方で、電離層全電子数の全球平均値については、宇宙機の軌道推移にどの程度影響を及ぼすのか知られていない。なお、宇宙空間の環境情報には、上述した3つの情報に加えて、あるいは代えて、他の情報が含まれてもよい。環境データベース136は、太陽活動指数SFや地磁気活動指数Ap、電離層全電子数の全球平均値などが観測されるたびに更新されてよい。
図3は、太陽活動指数SFの時間履歴の一例を示す図であり、図4は、地磁気活動指数Apの時間履歴の一例を示す図であり、図5は、電離層全電子数の全球平均値の時間履歴の一例を示す図である。これらの環境情報は、軌道半径変化率Adotと同じ期間、またはそれ以上の期間において観測されているものとする。
[学習時(トレーニング)の処理フロー]
以下、フローチャートに即して制御部110の学習時の一連の処理の流れを説明する。学習時とは、運用時に利用される学習モデルを学習させる状態である。図6は、学習時に制御部110により実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定の周期で繰り返し行われてよい。また、予測装置100が、分散コンピューティングやクラウドコンピューティングを利用したシステムに含まれる複数のコンピュータによって実現される場合、本フローチャートの処理の一部または全部は、複数のコンピュータによって並列処理されてよい。
まず、学習部112は、複数の宇宙機の中から、モデルの学習対象とする宇宙機(以下、着目宇宙機と称する)を選択する(ステップS100)。
次に、学習部112は、記憶部130に格納された軌道推移データベース134から、ある基準とする日時(以下、基準日時)tから、N日先の将来の日時t+Nに観測された着目宇宙機の軌道半径変化率Adott+Nを軌道情報として抽出するとともに、環境データベース136から、基準日時tからT日前の日時t-Tまでの期間Tに観測された太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、および電離層全電子数TECの全球平均値を環境情報Xt-T|tとして抽出する(ステップS102)。N日は「第2所定日」の一例であり、T日は「第1所定日」の一例である。
例えば、N=1、T=10とした場合、学習部112は、軌道推移データベース134から、基準日時tから1日経過した日時t+1に観測された着目宇宙機の軌道半径変化率Adott+1を軌道情報として抽出し、環境データベース136から、基準日時t以前の10日間に観測された太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、および電離層全電子数の全球平均値を環境情報Xt-10|tとして抽出する。なお、Nは、どの程度先の将来まで予測するのかに応じて任意に変更されてよく、一日後の将来であればNは1であってよく、一週間後の将来であればNは7であってよい。また、Tは、例えば、太陽の自転周期に応じて変更されてよく、太陽の自転周期の3倍の周期に近い83日程度であることが好ましい。
次に、学習部112は、環境データベース136から抽出した環境情報Xt-10|tに含まれる複数の指標値の中から、学習モデルの説明変数とする指標値を選択する(ステップS104)。
学習モデルは、例えば、数式(1)に示すように、環境情報Xt-T|tを説明変数としたときに、軌道半径変化率Adott+Nを目的変数とする関数モデルによって表される。この学習モデルは、基準日時tからT日前までの環境情報Xt-T|tを使って、基準日時tからN日後の軌道半径変化率Adott+Nを求めている。また、数式(2)は、N=1であり、T=83であり、環境情報Xt-83|tが、太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、および電離層全電子数の全球平均値の3つの要素を含んでいる場合の学習モデルを表す数式である。
Figure 0007195588000001
Figure 0007195588000002
環境情報Xt-T|tは、基準日時tからT日前の日時t-Tまでの各日の太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、または電離層全電子数の全球平均値のうち一部または全部が要素として含まれる多次元の情報(例えばベクトル)である。例えば、83日前までの太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、および電離層全電子数の全球平均値が環境情報Xt-T|tとして抽出された場合、その環境情報Xt-T|tは、84×3の合計252の要素を含むことになる。
環境情報Xt-T|tに含まれる複数の要素のそれぞれは、学習モデルの説明変数として扱われるが、この複数の要素の中には、互いに相関を有する要素が含まれていたり、目的変数を説明する能力が低い要素が含まれていたりする場合がある。
そのため、学習部112は、環境情報Xt-T|tに含まれる複数の要素の中から、互いに相関を有する要素や目的変数を説明する能力が低い要素を取り除くことで、学習モデルの説明変数の数を削減する。言い換えれば、学習部112は、環境情報Xt-T|tの次元を圧縮する。
具体的には、学習部112は、LASSOによる説明変数の選択結果を利用して、学習モデルの説明変数の数を削減してもよいし、ランダムフォレストにより得られた説明変数の特徴量のうち、最大の特徴量の大きさの数[%]までの特徴量を有する説明変数を残し、それ以外の特徴量を有する説明変数を取り除くことで、学習モデルの説明変数の数を削減してもよい。例えば、学習部112は、ランダムフォレストにより得られた複数の説明変数の特徴量の中で、最大の特徴量の大きさの5[%]程度までの特徴量を有する説明変数を残してよい。なお、この数値はあくまでも一例であり、1[%]や2[%]といったように任意の数値であってよい。このように、学習モデルの説明変数とする環境情報Xt-T|tの次元を圧縮しておくことで、多重共線性を回避したり、目的変数に対してより影響を及ぼしやすい説明変数のみを抽出したりすることができるため、よりシンプルな構造でモデル化することができる。この結果、過学習を抑制することができる。
次に、学習部112は、過学習を抑制するために選択した環境情報Xt-T|tの要素と、軌道推移データベース134から軌道情報として抽出した軌道半径変化率Adott+Nとに基づいて、着目宇宙機の学習モデルを学習する(ステップS106)。
例えば、学習部112は、LASSO、ランダムフォレスト、ガウス過程回帰、およびニューラルネットワークのそれぞれの学習手法に基づいて学習モデルを学習し、4種類の学習モデルを生成する。数式(3)は、LASSOに基づく学習モデルの一例を示す数式である。
Figure 0007195588000003
数式(3)におけるwは、太陽活動指数SFに乗算される重み係数ベクトルを表し、wは、地磁気活動指数Apに乗算される重み係数ベクトルを表し、wは、電離層全電子数の全球平均値に乗算される重み係数ベクトルを表している。例えば、学習部112は、数式(3)に例示するようなLASSOに基づく学習モデルに、基準日時tから83日前までの太陽活動指数SFt-83|tと、地磁気活動指数Apt-83|tと、電離層全電子数の全球平均値TECt-83|tとを代入し、基準日時tの1日後の軌道半径変化率Adott+1を予測する。そして、学習部112は、学習モデルに基づいて予測した軌道半径変化率Adott+1(すなわち予測値)と、軌道推移データベース134から基準日時tの1日後の軌道情報として抽出した軌道半径変化率Adott+1(すなわち観測値)との差分を導出し、その導出した差分が小さくなるように、学習モデルのパラメータである重み係数ベクトルwやバイアス成分などを決定することで、学習モデルを学習する。また、学習対象のパラメータには、重み係数ベクトルwやバイアス成分のほかに、設計者が任意に決定することができるハイパーパラメータが含まれてもよい。
次に、学習部112は、学習した学習モデルを着目宇宙機に対応付けて、これを学習モデル情報132として記憶部130に記憶させる(ステップS108)。これによって本フローチャートの処理が終了する。
このように、学習部112は、後述する予測リクエストのように、外部装置などから特段の指示がなくても(あってもよい)、自発的に上述したフローチャートの処理を繰り返すことで、宇宙機の過去の軌道情報と過去の環境情報とを用いて学習した学習モデルを何度も再学習(トレーニング)する。これによって、学習モデルの精度を日々高めることができる。
図7は、各学習モデルによって予測された軌道半径変化率Adotと、実際に観測された軌道半径変化率Adotとの推移の一例を示す図である。図中の各モデルは、上述した各データベースを2つに分割し、分割した一方のデータを利用して学習された学習モデルである。4つの学習モデルのそれぞれによって予測された軌道半径変化率Adotは、いずれも観測値である軌道半径変化率Adotの時間推移と同様の傾向で変化している。また、いずれの学習モデルも、実際の観測値に対して最大1.0程度の誤差の精度で、軌道半径変化率Adotを予測することができており、実用に十分耐えることを示している。
図8は、各モデルの予測値と観測値との絶対誤差の和の一例を示す図である。図示の例では、LASSOに基づく学習モデルの予測値Adotと、観測値Adotとの誤差の絶対値の和は、5.1[m/day]であり、ランダムフォレスト(図中RF)に基づく学習モデルの予測値Adotと、観測値Adotとの誤差の絶対値の和は、4.0[m/day]であり、ガウス過程回帰(図中GP)に基づく学習モデルの予測値Adotと、観測値Adotとの誤差の絶対値の和は、2.9[m/day]であり、ニューラルネットワーク(図中NN)に基づく学習モデルの予測値Adotと、観測値Adotとの誤差の絶対値の和は、5.6[m/day]であることを表している。このような結果から、ある一つの例では、4つの学習モデルの中で、ガウス過程回帰に基づく学習モデルが最も予測精度が高いことを示している。
[運用時(ランタイム)の処理フロー]
以下、フローチャートに即して制御部110の運用時の一連の処理の流れを説明する。運用時とは、学習時に学習された学習モデルを利用して宇宙機の将来の軌道を予測する状態である。図9は、運用時に制御部110により実行される一連の処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、例えば、所定の周期で繰り返し行われてよい。なお、予測装置100が、分散コンピューティングやクラウドコンピューティングを利用したシステムに含まれる複数のコンピュータによって実現される場合、学習時と同様に、本フローチャートの処理の一部または全部も、複数のコンピュータによって並列処理されてよい。
まず、取得部114は、通信部102によって、地上のオペレータなどが利用する所定の端末装置から、監視対象の宇宙機の将来の軌道を予測するように要求するリクエスト(以下、予測リクエストと称する)が受信されたか否かを判定する(ステップS200)。予測リクエストには、例えば、監視対象として指定された宇宙機の識別情報や、現在の日時などが含まれる。
取得部114は、通信部102によって予測リクエストが受信されると、記憶部130に格納された環境データベース136から、現日時τからT日前の日時τ-Tまでの期間Tに観測された太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、および電離層全電子数の全球平均値を含む環境情報Xτ-T|τを取得する(ステップS202)。例えば、学習時に、基準日時tから83日前までの環境情報Xt-83|tを学習モデルの説明変数として学習が行われていた場合、取得部114は、環境データベース136から、現日時τから83日前までの環境情報Xτ-83|τを取得する。
次に、予測部116は、予測リクエストに含まれる宇宙機の識別情報を参照し、学習モデル情報132に含まれる複数の学習モデルの中から、監視対象の宇宙機に対応付けられた学習モデルを選択する(ステップS204)。上述したように、宇宙機に対して、LASSO、ランダムフォレスト、ガウス過程回帰、およびニューラルネットワークのそれぞれに基づく学習モデルが対応付けられている場合、予測部116は、4つの学習モデルの中から、最も予測誤差が小さい(最も予測精度が高い)学習モデルを選択してよい。例えば、予測部116は、予測値Adotと、観測値Adotとの誤差の絶対値の和が最も小さい学習モデルを、最も予測誤差が小さい学習モデルとして選択する。図8の例では、ガウス過程回帰に基づく学習モデルが選択される。
なお、予測部116は、学習モデル情報132に含まれる複数の学習モデルの中から、予測リクエストによって指定された監視対象の宇宙機の学習モデルを選択する際に、必ずしも識別情報が一致する宇宙機の学習モデルを選択しなくてもよい。例えば、予測部116は、学習モデル情報132に含まれる複数の学習モデルの中から、予測リクエストによって指定された監視対象の宇宙機と形状が同じであるような同種の宇宙機の学習モデルを選択してよい。また、予測部116は、学習モデル情報132に含まれる複数の学習モデルの中から、予測リクエストによって指定された監視対象の宇宙機と航行高度が同程度の宇宙機の学習モデルを選択してもよい。これによって、学習モデルを生成していない宇宙機が監視対象の宇宙機として選ばれた場合であっても、類似する宇宙機の学習モデルを利用して、監視対象の宇宙機の将来の軌道を予測することができる。
次に、予測部116は、選択した監視対象の宇宙機の学習モデルを利用して、監視対象の宇宙機の将来の軌道を予測する(ステップS206)。
具体的には、予測部116は、選択した監視対象の宇宙機の学習モデルに対して、取得部114によって取得された現日時τからT日前までの環境情報Xτ-T|τを説明変数として入力することで、学習モデルに、監視対象の宇宙機の軌道半径変化率Adotを予測させる。例えば、学習時に、基準日時tから1日先の将来の日時t+1に観測された着目宇宙機の軌道半径変化率Adott+1を学習モデルの目的変数として学習が行われていた場合、学習モデルは、現日時τから1日先の将来の日時τ+1に観測されるであろう宇宙機の軌道半径変化率Adotτ+1を予測することになる。
次に、出力制御部118は、通信部102を制御して、予測部116の予測結果である、監視対象の宇宙機の将来の軌道を示す情報を、予測リクエストの送信元の所定の端末装置に送信する(ステップS208)。これによって本フローチャートの処理が終了する。
以上説明した実施形態によれば、監視対象の宇宙機が航行する超高層大気の環境を示す環境情報を取得し、基準日時tからT日前までの期間における超高層大気の環境情報Xt-T|tが入力されると、基準日時tからN日先の宇宙機の軌道半径変化率Adott+Nを出力するように学習された学習モデルに対して、取得した環境情報を入力し、その環境情報を入力した学習モデルによって出力された結果に基づいて、監視対象の宇宙機の将来の軌道を予測するため、宇宙機の軌道を精度よく予測することができる。
一般的に、宇宙機の姿勢、形状、質量、抵抗係数、宇宙機の進行方向に対する投影面積、周辺大気に対する宇宙機の相対速度、周辺大気の大気密度などから、理論的に、高層大気の抵抗力によって生じる宇宙機の加速度adragを導出できることが知られており、このような理論式によって導出した加速度adragに基づいて、宇宙機の将来の軌道の推移を予測することが考えられる。
しかしながら、宇宙機が航行する超高層大気では、下層大気と宇宙空間からのエネルギー流入が激しく、常に複雑に変動しており、数百度の温度差が生じたり、大気密度が地表面の10億分の1となったりする場合があることから、上記の種々のパラメータのうち、周辺大気の大気密度や、周辺大気の温度に依存した宇宙機の抵抗係数、宇宙機の姿勢情報などは不確かなパラメータとなり得る。従って、このような不確かさを持つパラメータを陽として加速度adragを導出した場合、予測される宇宙機の軌道も不確かとなり得る。
これに対して、本実施形態では、軌道を予測する上で、不確かさを持つ大気密度や抵抗係数、姿勢情報といったパラメータを陽に扱うことなく(説明変数とせずに)、既に観測された軌道情報と環境情報とに基づいてモデルを学習し、そのモデルに宇宙機の軌道を予測させるため、宇宙機の軌道を精度よく予測することができる。
また、上述した実施形態によれば、モデル学習時に、環境情報Xt-T|tに含まれる複数の要素の中から、互いに相関を有する要素や目的変数を説明する能力が低い要素を取り除くことで、学習モデルの説明変数の数を削減するため、過学習を抑制することができる。
また、上述した実施形態によれば、LASSO、ランダムフォレスト、ガウス過程回帰、およびニューラルネットワークのそれぞれのモデルを学習し、最も予測誤差の小さい学習モデルを用いて、監視対象の宇宙機の将来の軌道を予測するため、宇宙機の軌道を更に精度よく予測することができる。
(変形例)
以下、上述した実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、学習モデルが、宇宙機の将来の軌道を予測するものとして説明したがこれに限られない。例えば、学習モデルは、地上を移動する車両などの移動体の将来の軌道を予測するように学習されてもよいし、水上を航行する船舶や水中を航行する潜水艦などの移動体の将来の軌道を予測するように学習されてもよいし、上空を飛行する航空機などの移動体の将来の軌道を予測するように学習されてもよい。このような場合、環境情報は、各移動体が移動する空間の環境を示すものであってよい。
また、上述した実施形態では、学習モデルに軌道半径変化率Adotを予測させるものとして説明したがこれに限られない。例えば、学習部112は、基準日時tからT日前の日時t-Tまでの太陽活動指数SF、地磁気活動指数Ap、および電離層全電子数の全球平均値を要素として含む環境情報Xt-T|tを説明変数とし、基準日時tからN日先の将来の日時t+Nに観測された宇宙機の加速度adragを目的変数として学習モデルを学習することで、学習モデルに、N日先の宇宙機の加速度adragを予測させるようにしてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
100…予測装置、102…通信部、110…制御部、112…学習部、114…取得部、116…予測部、118…出力制御部、130…記憶部

Claims (11)

  1. 対象の移動体が移動する空間の環境を示す環境情報を取得する取得部と、
    ある移動体が移動した空間の環境を示す環境情報が入力されると、ある移動体の将来の軌道を示す軌道情報を出力するように機械学習によりパラメータが決定された学習モデルに対して、前記取得部により取得された前記環境情報を入力し、前記環境情報が入力されたことに応じて前記学習モデルにより出力された前記軌道情報に基づいて、前記対象の移動体の将来の軌道を予測する予測部と、
    を備える予測装置。
  2. 前記移動体は、宇宙機であり、
    前記空間は、超高層大気であり、
    前記学習モデルは、前記宇宙機の軌道半径の変化率を、前記宇宙機の将来の軌道を示す軌道情報として出力する、
    請求項1に記載の予測装置。
  3. ある移動体が過去に移動した空間の環境を示す環境情報を説明変数として、ある移動体の過去の軌道を示す軌道情報を目的変数とするように前記学習モデルを学習する学習部を更に備える、
    請求項1または2に記載の予測装置。
  4. 前記学習部は、基準日時から第1所定日前の日時に観測された前記空間の環境を示す環境情報を前記説明変数とし、前記基準日時から、第2所定日先の日時に観測された前記移動体の軌道を示す軌道情報を前記目的変数として、前記学習モデルを学習する、
    請求項3に記載の予測装置。
  5. 前記学習部は、互いに種類の異なる複数の学習モデルを学習し、
    前記予測部は、前記学習部によって学習された複数学習モデルのうち、少なくともいずれか一つの学習モデルの出力結果に基づいて、前記対象の移動体の将来の軌道を予測する、
    請求項3または4に記載の予測装置。
  6. 前記複数の学習モデルには、正則化回帰、ランダムフォレスト、ガウス過程回帰、またはニューラルネットワークが含まれる、
    請求項5に記載の予測装置。
  7. 前記予測部は、前記学習部によって学習された複数学習モデルのうち、最も予測誤差の小さい学習モデルの出力結果に基づいて、前記対象の移動体の将来の軌道を予測する、
    請求項5に記載の予測装置。
  8. 前記学習部は、前記学習モデルを学習する際に、前記説明変数とする環境情報の数を削減する、
    請求項3からのうちいずれか一項に記載の予測装置。
  9. 前記環境情報には、太陽活動指数、地磁気活動指数、および電離層全電子数のうちの少なくとも1つが含まれる、
    請求項1からのうちいずれか一項に記載の予測装置。
  10. コンピュータが、
    対象の移動体が移動する空間の環境を示す環境情報を取得し、
    ある移動体が移動した空間の環境を示す環境情報が入力されると、ある移動体の将来の軌道を示す軌道情報を出力するように機械学習によりパラメータが決定された学習モデルに対して、前記取得した前記環境情報を入力し、前記環境情報が入力されたことに応じて前記学習モデルにより出力された前記軌道情報に基づいて、前記対象の移動体の将来の軌道を予測する、
    予測方法。
  11. コンピュータに、
    対象の移動体が移動する空間の環境を示す環境情報を取得する処理と、
    ある移動体が移動した空間の環境を示す環境情報が入力されると、ある移動体の将来の軌道を示す軌道情報を出力するように機械学習によりパラメータが決定された学習モデルに対して、前記取得した前記環境情報を入力し、前記環境情報が入力されたことに応じて前記学習モデルにより出力された前記軌道情報に基づいて、前記対象の移動体の将来の軌道を予測する処理と、
    を実行させるための予測プログラム。
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