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JP7189537B2 - 血液試料の酸化hdl量の反映値を測定する工程を含む、測定方法 - Google Patents

血液試料の酸化hdl量の反映値を測定する工程を含む、測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、測定方法に関する。
近年、空腹時血糖値は正常値であるにも関わらず、食後血糖値が高い「隠れ糖尿病」なる疾患が増加している。例えば健康診断では空腹時血糖値を測定することが一般的であるため、隠れ糖尿病を見つけることは困難であり、当該疾患を検出できる方法の開発が望まれている。また、一般的に糖尿病の診断(耐糖能の測定)には、75g経口ブドウ糖負荷試験(Oral glucose tolerance test,OGTT)が実施されるが、OGTTは試験前に絶食が必要であり、試験時間も長時間であるため、手間と時間がかかるなどの欠点がある。また、OGTTは血糖値を意図的に上昇させる試験であるため、被験者の負担も大きいことから、簡便に耐糖能を測定できる方法の開発が望まれている。
特開2017-227618号公報
糖尿病治療ガイド2018-2019、日本糖尿病学会、2018年
本発明は、簡便に耐糖能異常リスクを測定する方法を提供することを課題とする。一実施形態において、簡便に隠れ肥満リスクを測定する方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の指標を用いることにより、簡便に耐糖能異常リスク、又は隠れ肥満リスクを測定できることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
本発明は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、当該血液試料を採取した対象の耐糖能異常リスクを測定する方法。
項2.
前記血液試料が、糖尿病ではない人由来である、項1に記載の方法。
項3.
血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、当該血液試料を採取した対象の隠れ肥満リスクを測定する方法。
項4.
前記血液試料が、BMIが23未満の人由来である、項3に記載の方法。
項5.
酸化HDL量の反映値の測定が、
(1)血液試料と、遷移金属化合物及び酸性緩衝液を含む溶液とを混合する工程を含む方法により行われる、
項1~4のいずれか1項に記載の方法。
項6.
酸化HDL量の反映値の測定が、
さらに、
(2)前記工程(1)により産生されたフリーラジカルを測定する工程を含む方法により行われる、
項5に記載の方法。
特定の指標を用いることにより、好適な一実施形態において、簡便に耐糖能異常リスクを測定する方法を提供することができる。一実施形態において簡便に隠れ肥満リスクを測定する方法を提供することができる。
酸化HDL量の反映値と空腹時血糖値の相関関係を解析した結果を示す。 酸化HDL量の反映値とHbA1cの相関関係を解析した結果を示す。 。HbA1cを空腹時血糖値で割った値の中央値で対象者を2群(Low群/High群)に分けた時の、各群の酸化HDL量の反映値を示す。 対象者を酸化HDL量の反映値の中央値で2群(Low群/High群)に分けた時の、各群の体脂肪率(%)を示す。
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
本発明は、血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、当該血液試料を採取した対象の耐糖能異常リスクを測定する方法を包含する。
血液試料としては、対象から採取された血液由来の試料であれば特に制限されず、例えば、全血であってもよいし、あるいは血液の分離物(例えば血清、血漿等)であってもよい。
酸化HDL量の反映値としては、血液試料に含まれる酸化HDL量を反映する値をいい、例えば酸化HDLの重量(質量)、濃度等が挙げられる。また、例えば、血液試料に含まれる酸化HDL量を反映する測定値であってもよく、例えば吸光度、蛍光強度、等を用いることができる。当該測定値は、測定補助試薬を用いて測定された値であってもよい。当該測定補助試薬としては、例えば蛍光色素、酸化HDL特異的認識分子(例えば抗体若しくはその断片)、あるいはそれらの2以上組み合わせ等が挙げられる。測定方法も特に制限はされず、公知の測定方法を適宜選択して用いることができる。
血液試料を採取する対象としては、特にヒトに限定的ではなく、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。対象としては、例えば、健常者、糖尿病ではない人、動脈硬化保有またはそれが疑われる患者、心血管病患者、酸化HDL値や酸化LDL値が高いまたはそれが疑われる人、肥満の人、非肥満でBMIが23未満の人等が挙げられる。また、耐糖能異常リスクを測定する場合の血液試料を採取する対象としては、糖尿病ではない人がより好ましい。また、隠れ肥満リスクを測定する場合の血液試料を採取する対象としては、BMIが23未満の人がより好ましい。また、哺乳動物としては限定的していないが、ペット、家畜、実験動物等として飼育される哺乳動物が好ましい。このような哺乳動物としては、例えば、イヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、リャマ等が挙げられる。
対象から血液試料を採取する方法としては、特に限定的ではなく、公知の器具、機器などを用いて常法に従って行うことができる。なお、血液試料として血清又は血漿を用いる場合には、取り扱い易さ、感染防止等の観点から、血清又は血漿分離剤を含む真空採血管などを用いることが好ましい。また、採取した血液試料は、そのまま使用してもよいし、凍結乾燥等して保存した後、当該凍結乾燥物を後述する適当な溶媒に溶解して用いてもよい。さらに、採取した血液試料を、そのまま冷凍保存した後、あるいは適当な溶媒に溶解する等して冷凍保存した後、使用時に解凍して用いてもよい。なお、採取した血液試料を保存する方法、条件等については特に制限されず、常法に従って行うことができる。
本発明によれば、血液試料の酸化HDL量の反映値を測定することによって、複数の対象からなる集団において、当該血液試料を採取した対象の空腹時血糖値に対するHbA1cの値が、中央値よりも高いか低いかを判定することができる。例えば、複数の対象からなる集団において、酸化HDL量の反映値が(相対的に)高い対象は、空腹時血糖値に対するHbA1cの値が中央値よりも高いと判定することができる。また、複数の対象からなる集団において、酸化HDL量の反映値が(相対的に)低い対象は、空腹時血糖値に対するHbA1cの値が中央値よりも低いと判定することができる。集団を構成する対象の数は、少人数の臨床研究のような場において、例えば、10人以上、30人以上、又は50人以上であってもよい。上限は、特に限定されないが、大人数の健康診断のような場において、例えば、1億人、5000万人、1000万人、100万人、10万人、1万人、1000人、又は100人であってもよい。
空腹時血糖値に対するHbA1cの値が高値である場合、つまり空腹時血糖値が低値であるにも関わらずHbA1cの値が高値である場合には、食後血糖値も高値であることが予想される。よって、本発明によれば、血液試料の酸化HDL量の反映値を測定することによって、複数の対象からなる集団において、当該血液試料を採取した対象の食後血糖値が、(相対的に)高いか低いかを判定することができる。例えば、複数の対象からなる集団において、酸化HDL量の反映値が(相対的に)高い対象は、食後血糖値が(相対的に)高いと判定することができる。また、複数の対象からなる集団において、酸化HDL量の反映値が(相対的に)低い対象は、食後血糖値が(相対的に)低いと判定することができる。
このようなことを利用して、本発明によれば、対象の耐糖能異常リスクを測定することができる。本発明において、耐糖能異常リスクとは、糖尿病とは診断されないが、血糖値の上昇抑制機能が正常に働いていないリスクを意味する。酸化HDL量の反映値が高い場合、耐糖能異常リスクが高いことを示し、酸化HDL量の反映値が低い場合、耐糖能異常リスクが低いことを示す。耐糖能異常リスクが高い場合、例えば75g経口ブドウ糖負荷試験において正常型と糖尿病型のいずれにも含まれない境界型と判断されるような状態や、空腹時血糖値は低いものの食後の血糖値が高い状態など、いわゆる「隠れ糖尿病」で見られるような状態であると考えられる。
本発明によれば、耐糖能を測定するためにOGTTを実施しなくても、空腹時血糖値を測定することによって、耐糖能異常リスクを簡便に測定することができる。また、本発明によれば、HbA1cが6.5%未満又は空腹時血糖値が126mg/dL未満の糖尿病ではない人を対象とした場合に、簡便に耐糖能異常リスクを測定することができ、隠れ糖尿病を検出することができる。
また、本発明は血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、当該血液試料を採取した対象の隠れ肥満リスクを測定する方法をも包含する。
本発明によれば、血液試料の酸化HDL量の反映値を測定することによって、複数の対象からなる集団において、当該血液試料を採取した対象の体脂肪率が、(相対的に)高いか低いかを判定することができる。例えば、複数の対象からなる集団において、当該集団を酸化HDL量の反映値の中央値で2群に分けたときに、酸化HDL量の反映値が高値の群に属する対象は、酸化HDL量の反映値が低値の群に属する対象と比較して、体脂肪率が高いと判定することができる。また、複数の対象からなる集団において、当該集団を酸化HDL量の反映値の中央値で2群に分けたときに、酸化HDL量の反映値が低値の群に属する対象は、酸化HDL量の反映値が高値の群に属する対象と比較して、体脂肪率が低いと判定することができる。集団を構成する対象の数は、少人数の臨床研究のような場において、例えば、10人以上、30人以上、又は50人以上であってもよい。上限は、特に限定されないが、大人数の健康診断のような場において、例えば、1億人、5000万人、1000万人、100万人、10万人、1万人、1000人、又は100人であってもよい。
また、本発明によれば、血液試料の酸化HDL量の反映値を測定することによって、複数の対象からなる集団において、当該血液試料を採取した対象の異所性脂肪量が、(相対的に)多いか少ないかを判定することができる。例えば、複数の対象からなる集団において、当該集団を酸化HDL量の反映値の中央値で2群に分けたときに、酸化HDL量の反映値が高値の群に属する対象は、酸化HDL量の反映値が低値の群に属する対象と比較して、異所性脂肪量が多いと判定することができる。また、複数の対象からなる集団において、当該集団を酸化HDL量の反映値の中央値で2群に分けたときに、酸化HDL量の反映値が低値の群に属する対象は、酸化HDL量の反映値が高値の群に属する対象と比較して、異所性脂肪量が少ないと判定することができる。
このようなことを利用して、本発明によれば、対象の隠れ肥満リスクを測定することができる。本発明において、隠れ肥満リスクとは、BMIの数値からは肥満と判断されないが、内臓脂肪や異所性脂肪が蓄積しているリスクを意味し、隠れ肥満リスクが高いことは、内臓脂肪や異所性脂肪が蓄積している可能性が高いことを示すため、このリスクを測定することは重要である。酸化HDL量の反映値が高い場合、隠れ肥満リスクが高いことを示し、酸化HDL量の反映値が低い場合、隠れ肥満リスクが低いことを示す。隠れ肥満リスクが高い場合、例えば内臓脂肪や異所性脂肪が蓄積している状態など、いわゆる「隠れ肥満」で見られるような状態であると考えられる。
本発明によれば、肥満とは判断されないBMIが23未満の人を対象とした場合に、簡便に隠れ肥満リスクを測定することができる。
血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する方法としては、特に限定的ではなく、常法に従って行うことができる。例えば、ELISA法を使用して酸化HDL(マロンジアルデヒド修飾HDL)を測定する方法や、質量分析機により、HDLを構成する蛋白質のApo-A1のニトロ化やクロロ化を測定する方法、d-ROMs法(血液試料のヒドロキシペルオキシド濃度を測定する方法)、特開2017-227618に記載の、(1)血液試料と、遷移金属化合物及び酸性緩衝液を含む溶液とを混合する工程を含む方法などが挙げられる。中でも、(1)血液試料と、遷移金属化合物及び酸性緩衝液を含む溶液とを混合する工程を含む方法により測定することが好ましい。本明細書において、当該工程を「工程(1)」と記載する場合がある。さらに、(2)前記工程(1)により産生されたフリーラジカルを測定する工程を含む方法により測定することが、より好ましい。本明細書において、当該工程を「工程(2)」と記載する場合がある。
血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する方法としては、血液試料からHDLを分離する工程が含まれていてもよい。本明細書において、当該工程を「工程(0)」と記載する場合がある。工程(0)により分離されたHDLを工程(1)において血液試料として用いることができる。血液試料からHDLを分離する方法としては、特に限定的ではなく、常法に従って行うことができる。例えば、デキストラン硫酸とマグネシウムイオンを用いたデキストラン硫酸法などの方法が挙げられる。
遷移金属化合物は、混合液中で電離して金属イオンになり得るものであり、かつヒドロキシペルオキシド(R-OOH)と反応してフリーラジカルを産生し得るものであれば特に限定的ではなく、例えば、銅(II)化合物、鉄(II)化合物、(2価の鉄化合物)、鉄(III)化合物(3価の鉄化合物)などが挙げられる。これらの中でも、鉄(II)化合物、鉄(III)化合物などの鉄化合物が好ましい。鉄化合物としては、例えば、硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物、塩化鉄(III)六水和物などが挙げられる。工程(1)において遷移金属化合物を用いることにより、1)ヒドロキシペルオキシドと反応する遷移金属イオンが十分量存在することにより少量の血液サンプルで酸化HDLの測定が可能となる、2)血液に含まれる鉄分の量に影響されることなく酸化HDLの測定が可能となる、などの有利な効果が奏される。
なお、酸化HDL量の反映値は、3価の鉄化合物にくらべ、2価の鉄化合物を含む溶液で大きくなる。換言すると、3価の鉄化合物よりも2価の鉄化合物を用いた測定法は、高い感度で酸化HDLを測定できる。従って、上記した鉄化合物の中でも、2価の鉄化合物が特に好ましい。
混合液中における遷移金属化合物の濃度としては、特に限定的ではなく、例えば、0.1~150μM程度、好ましくは、1~100μMとすることができる。
酸性緩衝液としては、pHが酸性であり、かつ緩衝作用を有するものであれば特に制限されず、公知の緩衝液を用いることができる。例えば、酢酸緩衝液などが挙げられる。
酸性緩衝液のpHは、酸性であれば特に限定的ではなく、2~6.9程度であることが好ましく、3~6.5程度であることがより好ましく、4.5~6であることがさらに好ましい。なお、後述する工程(2)において、フリーラジカルを測定する方法として、発色法を採用する場合には、酸性緩衝液のpHは3~6.9程度であることが特に好ましい。
酸性緩衝液の濃度としては、特に限定的ではなく、例えば、0.005~0.5M、好ましくは、0.01~0.2Mである。
工程(1)における反応温度としては、特に限定的ではなく、例えば、20~40℃程度とすることができる。
上記の通り、工程(1)では、血液試料に含まれる酸化HDLにおけるヒドロペルオキシド(R-OOH)と遷移金属イオンとが反応することによってペルオキシラジカル(R-OO)やアルコキシラジカル(R-O)等のフリーラジカルが産生される。工程(1)において産生されたフリーラジカルを測定することにより、酸化HDLを測定することができる。
従って、酸化HDL量の反映値の測定方法としては、さらに(2)上記工程(1)により産生されたフリーラジカルを測定する工程を含むことが好ましい。
フリーラジカルを測定する方法としては、特に限定的ではなく、公知の方法を採用することができる。例えば、発色法、化学発光法、電子スピン共鳴法(ESR法)などが挙げられる。
発色法は、フリーラジカルと反応して発色する作用を有する物質(発色性物質)を用い、発色した物質の吸光度を分光光度計などを用いて測定する方法である。
発色性物質としては、フリーラジカルやアルコキシラジカルと反応して呈色する作用を有する化合物であれば特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩などが挙げられる。
Figure 0007189537000001
上記一般式(1)中、各Rは同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子、メチル、又はエチルを示す。特に、各Rの少なくとも2つがメチル又はエチルであることが好ましく、同一の窒素原子に置換するRが共にメチル又はエチルであることがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン(DMPD)、N,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン(DPD)が好ましい。
一般式(1)で表される化合物の塩としては、例えば、硫酸塩、シュウ酸塩、二酢酸塩などが挙げられる。
反応工程において用いる一般式(1)で表される化合物又はその塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、一般式(1)で表される化合物は、必要に応じて、溶媒に溶解して使用することもできる。溶媒としては、特に限定的ではなく、例えば、純水、緩衝液、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。溶液とする場合の濃度としては、特に限定的ではなく、例えば、0.1~50mM程度、好ましくは1~20mM程度とすることができる。
発色した物質の吸光度を測定する方法としては、特に限定的ではなく、常法により行うことができる。例えば、フリーラジカルと発色性物質とが反応することによって赤紫色を呈するラジカル陽イオンが生成されることから、公知の機器を用いて吸光度を測定することによってラジカル陽イオンを測定することができる。吸光度を測定する際の波長としては、例えば、460~570nm、好ましくは、500~560nmとすることができる。
また、吸光度の測定を行う際、定量的に測定するために、測定開始時間と測定終了時間との間の吸光度の時間経過を測定することが好ましい。例えば、フリーラジカルと発色性物質との反応開始時点から2分経過時点を始点とし、反応開始時点から5分経過時点を終点として、吸光度の上昇速度を測定することが好ましい。
化学発光法は、フリーラジカルと反応して発光する作用を有する物質(発光性物質)を用い、励起した物質が基底状態に戻る際に放出する光を発光光度計などを用いて測定する方法である。
発光物質としては、フリーラジカルと反応して発光する作用を有する化合物であれば特に制限されず、公知の化合物を用いることができる。例えば、ルミノール、Dansyl-TEMPO、ルシゲニンル、2-methyl-6-p-methoxyphenylethynylimidazopyrazinone(MPEC)、Hydroxyphenyl Fluorescein(HPF)、Aminophenyl Fluorescein(APF)、ウミホタル・ルシフェリン誘導体(MCLA)などが挙げられる。
発光した物質の光を測定する方法としては、特に限定的ではなく、用いる発光性物質の種類等に応じて適宜決定することができる。
電子スピン共鳴法(ESR法)は、不対電子が磁場中に置かれた際に生じる準位間の遷移を観測する分光分析である。電子スピン共鳴法としては、特に限定的ではなく、公知の方法及び機器を用いて行うことができ、フリーラジカルを直接測定する直接法、スピントラップ剤とフリーラジカルとを反応させて行う間接法のいずれであってもよい。間接法を採用する場合、スピントラップ剤としては特に限定されず、公知のスピントラップ剤を用いることができる。スピントラップ剤としては、例えば、5,5-ジメチル-1-ピロリン-N―オキシド(DMPO)、2,5,5-トリエチル-1-ピロリン-N-オキシド(MPO)、3,3,5,5-テトラメチル-1-ピロリン-N-オキシド(TMPO)、N-tert-α-フェニルニトロン(PBN)などのニトロン系スピントラップ剤;2-メチル-2-ニトロソプロパン(MNP)、ニトロソデュレン(ND)などのニトロソ系スピントラップ剤などが挙げられる。
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本発明は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、本実施例においては、酸化HDL量の反映値として、吸光度の変化(単位:mOD/min)を用いた。
試験例1(酸化HDL量の反映値の測定)
(1)血液試料の調製
真空採血管を用いて被検体の静脈から血液を採取し、1時間、室温に放置後、4℃、3500rpm(1100g)の条件で10分間遠心分離を行い、上清(血清)を血液試料として得た後、-80℃で保存した。具体的には、人間ドック受診者の血液を使用した。
(2)HDLの精製
上記(1)で得られた血清45μlに、1%デキストラン硫酸塩と0.5M塩化マグネシウムとの混合液(pH7.3)を5μl加え、室温で混合した。10分間室温で静置した後、4℃、1500gの条件で30分間遠心分離を行い、得られた上清をHDL画分として得た後、-80℃で保存した。
(3)酸化HDL量の反映値の測定
0.1M酢酸緩衝液(pH4.8)と100μM硫酸アンモニウム鉄(II)六水和物との混合液をマイクロプレートの各wellに加え、37℃に保温した。次いで、各wellにN,N-ジエチル-p-フェニレンジアミン硫酸塩溶液(溶媒:DMSO)を加えた後、上記(2)で得られたHDLを加えた。37℃に設定したマイクロプレートリーダー(バイオラッド社製)を用い、波長505nmの吸光度を測定した。なお、吸光度の測定は、Kineticsに設定し、10秒毎に計30回(合計5分間)測定し、測定開始2分後から5分後の各値から単位時間あたりの吸光度変化(単位:mOD/min)を算出することにより行った。
試験例2(空腹時血糖値(FPG)及びヘモグロビンA1c(HbA1c)の測定)
(1)空腹時血糖値(FPG)の測定方法
試験例1で得た人間ドック受診者の血液を用いて、酵素法により空腹時血糖値を測定した。
(2)ヘモグロビンA1c(HbA1c)の測定方法
試験例1で得た人間ドック受診者の血液を用いて、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)法または免疫学的測定法によりHbA1cを測定した。
試験例3(酸化HDL量の反映値と空腹時血糖値又はHbA1cの相関関係の解析)
酸化HDL量の反映値と空腹時血糖値又はHbA1cの相関関係を解析した。酸化HDL量の反映値及び空腹時血糖値を測定した185名についての結果を図1に、酸化HDL量の反映値及びHbA1cを測定した163名についての結果を図2に示す。
図1及び図2に示すとおり、血糖値及びHbA1cはいずれも酸化HDL量の反映値と正の相関があることが分かった。一方、酸化HDL量の反映値と総コレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロール、LDLコレステロールには有意な相関が認められなかった。
試験例4(耐糖能異常リスクの測定)
HbA1cを測定した人間ドック受診者のうち、糖尿病と診断されるHbA1cが6.5%以上かつ空腹時血糖値が126mg/dL以上の受診者を除外した156名を、HbA1cを空腹時血糖値で割った値(HbA1c/FPG)の中央値で2群(Low群/High群)に分け、各群の酸化HDL量の反映値を比較した。結果を図3に示す。
図3に示す通り、Low群と比較して、High群では酸化HDL量の反映値が有意に高いことが分かった。一般的にHbA1cは、過去1~2か月の血糖コントロールを反映する指標である。HbA1cと食後血糖値が正相関していることも知られつつあり、HbA1cが高いと食後血糖値が高いとも考えられる。HbA1c/FPGが高い場合は、空腹時血糖値が低く一見正常であっても、HbA1cが高いため、食後血糖値が高いと考えられる。図3の結果から、HbA1c/FPGが高いと酸化HDL量の反映値が高いことが示されたため、酸化HDL量の反映値は耐糖能異常リスクを測定できることが分かった。
試験例5(隠れ肥満リスクの測定)
酸化HDL量の反映値を測定した人間ドック受診者について、体重(kg)を身長(m)の2乗で除することによりBMI(kg/m)を算出し、肥満ではないと考えられるBMIが23未満の62名を、酸化HDL量の反映値の中央値で2群(Low群/High群)に分け、各群の体脂肪率(%)を比較した。結果を図4に示す。
図4に示す通り、Low群と比較して、High群では体脂肪率が有意に高いことが分かった。なお、各群のBMIを比較しても有意な差は見られなかった。この結果から、酸化HDL量の反映値が高い人は、BMIや外見からは判断できない、内臓脂肪や異所性脂肪が多いことが予想され、酸化HDL量の反映値は隠れ肥満リスクを測定できることが分かった。

Claims (6)

  1. 血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、当該血液試料を採取した対象の耐糖能異常リスクを測定する方法。
  2. 前記血液試料が、糖尿病ではない人由来である、請求項1に記載の方法。
  3. 血液試料の酸化HDL量の反映値を測定する工程を含む、当該血液試料を採取した対象の隠れ肥満リスクを測定する方法。
  4. 前記血液試料が、BMIが23未満の人由来である、請求項3に記載の方法。
  5. 酸化HDL量の反映値の測定が、
    (1)血液試料と、遷移金属化合物及び酸性緩衝液を含む溶液とを混合する工程を含む方法により行われる、
    請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 酸化HDL量の反映値の測定が、
    さらに、
    (2)前記工程(1)により産生されたフリーラジカルを測定する工程を含む方法により行われる、
    請求項5に記載の方法。
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