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JP7185560B2 - 可変容量圧縮機 - Google Patents

可変容量圧縮機 Download PDF

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JP7185560B2
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Description

本発明は、可変容量圧縮機に関し、特に、クランク室の調圧によって吐出容量が制御される可変容量圧縮機に関する。
この種の可変容量圧縮機が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の可変容量圧縮機は、吐出圧領域から制御圧室(クランク室)へ冷媒を供給する供給通路の通路断面積を調整する第1制御弁33と、前記クランク室から吸入圧領域への冷媒を排出するための排出通路の通路断面積を調整する第2制御弁34と、前記供給通路における前記第1制御弁と前記クランク室との間に配置された逆止弁35と、を備えている。前記第2制御弁34は、前記第1制御弁33が開状態から閉状態に移行すると、閉状態から開状態へ移行するように構成されている。
特開2011-185138号公報
特許文献1に記載の可変容量圧縮機においては、第2制御弁34の弁体55はシリンダブロック11の後端面に凹設された孔(弁収容室53)内に収容されており、逆止弁35はシリンダブロック11の後端面に第2制御弁34用の弁収容室53とは別に凹設された孔(収容孔63)内に収容されている。このように、第2制御弁34(弁体55)と逆止弁35を収容するための孔(弁収容室53、収容孔63)は、シリンダブロック11に別々に形成されており、シリンダブロック11自体に複雑な加工をする必要があり、その分、シリンダブロック11の加工時間が長くなり、例えば、シリンダブロックの加工が製造工程におけるボトルネック工程となるおそれがある。
そこで、本発明は、シリンダブロックに複雑な加工を施すことなく逆止弁及び第2制御弁を設けることが可能な構造を備えた可変容量圧縮機を提供することを目的とする。
本発明の一側面によると、ハウジングと、吸入室と、圧縮部と、吐出室と、制御圧室と、第1制御弁と、逆止弁と、第2制御弁と、背圧逃がし通路と、を含み、前記制御圧室の圧力に応じて吐出容量が変化する可変容量圧縮機が提供される。前記ハウジングは、シリンダブロック、前記シリンダブロックの前端面側に設けられるフロントハウジング、及び、前記シリンダブロックの後端面側に設けられるシリンダヘッドを含む。前記吸入室は、前記シリンダヘッドに設けられ、外部から冷媒が導かれるものである。前記圧縮部は、前記シリンダブロックに設けられ、前記吸入室内の冷媒を吸入して圧縮する。前記吐出室は、前記シリンダヘッドに設けられ前記圧縮部によって圧縮された冷媒が吐出されるものである。前記制御圧室は、前記フロントハウジングに設けられる。前記第1制御弁は、前記吐出室内の冷媒を前記制御圧室に供給する供給通路に設けられ、前記供給通路の開度を制御する。前記逆止弁は、前記供給通路における前記第1制御弁よりも前記制御圧室側に設けられ、前記制御圧室から前記第1制御弁に向かう冷媒の流れを阻止する。前記第2制御弁は、前記制御圧室内の冷媒を前記吸入室に排出する排出通路に設けられ、前記排出通路の開度を制御する。前記背圧逃がし通路は、前記供給通路における前記第1制御弁と前記逆止弁との間の領域である弁間領域と前記吸入室とを連通し、絞り部を有する。前記逆止弁は、第1収容孔と第1弁体とを有する。前記第1収容孔は前記供給通路の一部を構成する。前記第1弁体は、前記第1収容孔内に収容され、前後の差圧に応じて移動して前記制御圧室から前記第1制御弁に向かう冷媒の流れを阻止するように構成される。前記第2制御弁は、第2収容孔と第2弁体とを有する。前記第2収容孔は、弁室と背圧室とを有する。前記弁室は、弁孔を介して前記制御圧室に連通すると共に排出孔を介して前記吸入室に連通し前記弁孔及び前記排出孔と共に前記排出通路の一部を形成する。前記背圧室は、前記弁間領域に連通する。前記第2弁体は、前記弁室内に配置された弁部と前記背圧室内に配置された受圧部とを有し、前後の差圧に応じて移動して前記弁孔を開閉するように構成される。前記可変容量圧縮機は、前記第1収容孔と前記第2収容孔とが形成された弁ハウジングと、前記第1弁体と、前記第2弁体と、を有する弁ユニットを、備える。前記弁ユニットは、前記シリンダブロックの前記後端面に凹設される凹部であって、凹部底面に開口される連通孔を介して前記制御圧室に連通する前記凹部内に収容されている。
前記可変容量圧縮機において、前記逆止弁の前記第1弁体を収容する前記第1収容孔と前記第2制御弁の前記第2弁体を収容する前記第2収容孔は、前記弁ハウジング内に形成されている。つまり、前記第1収容孔及び前記第2収容孔は、前記シリンダブロックとは別の部材である前記弁ハウジング内に形成されており、前記シリンダブロックには、弁ハウジングと前記第1弁体と前記第2弁体とを含む前記弁ユニットの全体を収容する一つの前記凹部を形成すればよい。このため、シリンダブロック自体には、前記第1収容孔及び前記第2収容孔を形成するための複雑な加工を施す必要がなくなる。
このようにして、シリンダブロックに複雑な加工を施すことなく逆止弁及び第2制御弁を設けることが可能な構造を備えた可変容量圧縮機を提供することができる。
本発明の実施形態に係る可変容量圧縮機の断面図である。 前記可変容量圧縮機の要部拡大断面図である。 図2と同じ部位の前記可変容量圧縮機の要部拡大断面図であり、図2と別の状態が示されている。 前記可変容量圧縮機の第2制御弁の変形例を説明するための要部拡大断面図である。 前記可変容量圧縮機の逆止弁の変形例を説明するための要部拡大断面図である。 前記可変容量圧縮機の供給通路の変形例を説明するための要部拡大断面図である。
〔第1実施形態〕
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る可変容量圧縮機100の断面図である。図2は、可変容量圧縮機100の要部拡大断面図であり、図3は、図2と同じ部位の要部断面図であり図2と別の状態が示されている。可変容量圧縮機100は、主に車両用のエアコンシステム(エア・コンディショナー・システム)に適用されるクラッチレス圧縮機として構成されている。なお、本実施形態では、斜板式の吐出容量可変の可変容量圧縮機の場合を一例に挙げて説明する。図1における上側が圧縮機設置状態における重力方向の上側であり、図1における下側が重力方向の下側である。後述する図2~図6においても同様に重力方向の上下関係が示されている。
図1に示されるように、可変容量圧縮機100は、環状に配列された複数のシリンダボア101aを有するシリンダブロック101と、シリンダブロック101の前端面側(図1では左側)に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の後端面側(図1では右側)にバルブプレート103等を介して設けられたシリンダヘッド104と、を含む。フロントハウジング102内にはクランク室140が設けられており、駆動軸110がクランク室140内を横断して設けられている。なお、本実施形態では、クランク室140が本発明に係る「制御圧室」に相当する。
フロントハウジング102、センターガスケット(図示省略)、シリンダブロック101、シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151、ヘッドガスケット153、シリンダヘッド104が順次接続され、複数の通しボルト105によって締結されて可変容量圧縮機100のハウジングが形成される。つまり、シリンダブロック101とシリンダヘッド104との間に、シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153が挟まれている。なお、本実施形態においては、シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153が本発明に係る「介在部材」に相当する。
駆動軸110の軸方向の中間部の周囲には、斜板111が配置されている。斜板111は、駆動軸110に固定されたロータ112にリンク機構120を介して連結され、斜板111の駆動軸110の軸心Oに対する角度(斜板111の傾角)は変更可能に構成されている。
リンク機構120は、ロータ112から突設された第1アーム112aと、斜板111から突設された第2アーム111aと、一端側が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに対して回動自在に連結され、他端側が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに対して回動自在に連結されたリンクアーム121と、を含む。
駆動軸110が挿通される斜板111の貫通孔111bは、斜板111が最大傾角と最小傾角の範囲で傾動可能な形状に形成されている。貫通孔111bには駆動軸110と当接する最小傾角規制部が形成されている。斜板111が駆動軸110の軸心Oに直交するときの斜板111の傾角を0°とした場合、貫通孔111bの前記最小傾角規制部は、斜板111の傾角がほぼ0°となると駆動軸110に当接し、斜板111のそれ以上の傾動を規制するように形成されている。斜板111は、その傾角が最大傾角となるとロータ112に当接してそれ以上の傾動が規制される。
駆動軸110には、斜板111の傾角を減少させる方向に斜板111を付勢する傾角減少バネ114と、斜板111の傾角を増大させる方向に斜板111を付勢する傾角増大バネ115とが装着されている。傾角減少バネ114は、斜板111とロータ112との間に配置され、傾角増大バネ115は、斜板111と駆動軸110に固定されたバネ支持部材116との間に装着されている。
ここで、斜板111の傾角が最小傾角であるとき、傾角増大バネ115の付勢力の方が傾角減少バネ114の付勢力よりも大きくなるように設定されており、駆動軸110が回転していないとき、斜板111は、傾角減少バネ114の付勢力と傾角増大バネ115の付勢力とがバランスする傾角に位置決めされる。
駆動軸110の一端(図1における左端)は、フロントハウジング102の外側に突出するボス部102a内を貫通してフロントハウジング102の外側まで延在している。そして、駆動軸110の前記一端には、図示省略の動力伝達装置が連結されている。駆動軸110とボス部102aとの間には軸封装置130が設けられており、クランク室140の内部は、軸封装置130によって外部空間から遮断されている。
駆動軸110と駆動軸110に固定されたロータ112とからなる連結体は、ラジアル方向においては軸受131、132で支持され、スラスト方向においてはスラスト軸受133、スラストプレート134で支持されている。そして、駆動軸110は、外部駆動源からの動力が前記動力伝達装置に伝達されることにより、前記動力伝達装置の回転と同期して回転するように構成されている。なお、駆動軸110の他端、すなわち、スラストプレート134側の端部と、スラストプレート134との隙間は、調整ネジ135によって所定の隙間に調整されている。
各シリンダボア101a内には、ピストン136が配置されている。ピストン136のクランク室140内に突出する突出部に形成された内側空間には、斜板111の外周部及びその近傍が収容されており、斜板111は、一対のシュー137を介してピストン136と連動するように構成されている。そして、駆動軸110の回転に伴う斜板111の回転によってピストン136がシリンダボア101a内を往復動する。
シリンダヘッド104には、中央部に配置された吸入室141と、吸入室141を環状に取り囲む吐出室142とが区画形成されている。つまり、吸入室141及び吐出室142がシリンダヘッド104に設けられている。吸入室141とシリンダボア101aとは、バルブプレート103に設けられた連通孔103a及び吸入弁形成板150に形成された吸入弁(図示省略)を介して連通している。吐出室142とシリンダボア101aとは、吐出弁形成板151に形成された吐出弁(図示省略)及びバルブプレート103に設けられた連通孔103bを介して連通している。
シリンダヘッド104には、吸入ポート106及び吸入通路107で構成される吸入通路が形成されている。前記吸入通路は、シリンダヘッド104の径方向外側から吐出室142の一部を横切るように直線状に延びている。吸入室141は、前記吸入通路を介して前記エアコンシステムの冷媒回路の低圧側に接続され、吸入室141には、前記エアコンシステムの冷媒回路の低圧側の冷媒(つまり、外部から圧縮前の冷媒)が導かれる。吸入室141内の冷媒は、各ピストン136の往復運動によって対応するシリンダボア101a内に吸入され、圧縮される。この圧縮された冷媒は吐出室142に吐出される。つまり、駆動軸110の回転に伴うピストン136の往復運動によって吸入室141からシリンダボア101a内に吸入された冷媒が圧縮されて吐出室142に吐出される。シリンダブロック101に設けられるシリンダボア101a及びピストン136によって、吸入室141内の冷媒を吸入して圧縮する圧縮部が構成されている。
シリンダブロック101の上部にはマフラが設けられている。マフラは、吐出ポート108が形成された蓋部材109aと、シリンダブロック101の上部に形成されたマフラ形成壁109bとが図示省略のシール部材を介してボルトにより締結されることによって形成されている。
蓋部材109aとマフラ形成壁109bで囲まれたマフラ空間143は、連通路144を介して吐出室142に連通している。マフラ空間143内には、吐出逆止弁200が、連通路144のマフラ空間143側の開口端を覆うように配置されている。吐出逆止弁200は、連通路144(上流側)とマフラ空間143(下流側)との圧力差に応答して動作し、前記圧力差が所定値より小さい場合は連通路144を閉塞し、前記圧力差が所定値より大きい場合は連通路144を開放する。
連通路144、吐出逆止弁200、マフラ空間143及び吐出ポート108は、可変容量圧縮機100の吐出通路を構成し、吐出室142は、前記吐出通路を介して前記エアコンシステムの冷媒回路の高圧側に接続されている。吐出室142に吐出された冷媒は、前記吐出通路を介して前記エアコンシステムの前記冷媒回路の高圧側へと導かれる。また、吐出逆止弁200によって前記エアコンシステムの前記冷媒回路の高圧側から吐出室142に向かう冷媒(冷媒ガス)の逆流が阻止される。
シリンダブロック101及びシリンダヘッド104には、吐出室142内の冷媒をクランク室140に供給するための供給通路145が形成されている。そして、供給通路145には、第1制御弁300が設けられている。第1制御弁300は、供給通路145の開度(通路断面積)を制御(調整)し、これにより、吐出室142内の冷媒(吐出冷媒)のクランク室140への供給量を制御するように構成されている。
第1制御弁300は、弁体ユニットと、前記弁体ユニットを開閉作動させる駆動ユニット(ソレノイド)と、を含み、シリンダヘッド104に形成された連通路104a(図1参照)を介して導入される吸入室141の圧力と、外部信号に応じてソレノイドに流れる電流によって発生する電磁力と、に応答して供給通路145の開度を制御するように構成されている。具体的には、前記駆動ユニットのコイルは、信号線等を介して、可変容量圧縮機100の外部に設けられた制御装置(図示せず)に接続されている。前記駆動ユニットは、前記制御装置から前記コイルに制御電流Iが供給されると、電磁力F(I)を発生する。前記駆動ユニットが電磁力F(I)を発生すると、前記弁体ユニットの弁体が閉弁方向に移動する。また、前記弁体は、吸入室141の圧力が制御電流Iにより設定された設定圧力より高くなると、吐出容量を増大させるために、弁孔(すなわち、供給通路145)の開度(通路断面積)を小さくしてクランク室140の圧力を低下させ、吸入室141の圧力が前記設定圧力を下回ると、吐出容量を減少するために、前記弁孔(すなわち、供給通路145)の開度を大きくしてクランク室140の圧力を上昇させる。つまり、第1制御弁300は、吸入室141の圧力が前記設定圧力に近づくように供給通路145の開度を自律制御する。前記弁体には、前記駆動ユニットの電磁力が閉弁方向に作用するので、前記コイルの通電量が増加すると供給通路145の開度を小さくする方向(すなわち、閉弁方向)の力が増大し、設定圧力が低下する方向に変化する。前記制御装置は、例えば400Hz~500Hzの範囲の所定の周波数でパルス幅変調(PWM制御)により前記駆動ユニットのコイルへの通電を制御し、前記コイルを流れる電流値が所望の値となるようにパルス幅(デューティ比)を変更する。なお、供給通路145については、後に詳細に説明する。
供給通路145における第1制御弁300よりもクランク室140側(つまり下流側)には、クランク室140から第1制御弁300に向かう冷媒の流れを阻止する逆止弁250が設けられている。逆止弁250は、第1制御弁300の開閉に連動して供給通路145を開閉するように構成されている。具体的には、本実施形態において、逆止弁250は、第1制御弁300が開弁して供給通路145を開放したときに開弁して供給通路145を開放し、第1制御弁300が閉弁して供給通路145を閉塞したときに閉弁して供給通路145を閉塞するように構成されている。供給通路145における第1制御弁300と逆止弁250との間の領域である弁間領域145aは、絞り部146aを有する背圧逃がし通路146を介して吸入室141に連通している。つまり、背圧逃がし通路146は、弁間領域145aと吸入室141とを連通し、絞り部146aを有する通路である。なお、逆止弁250及び背圧逃がし通路146については後に詳細に説明する。
また、クランク室140内の冷媒を吸入室141に排出するための排出通路147が設けられている。そして、排出通路147には、第2制御弁350が設けられている。第2制御弁350は、排出通路147の開度(通路断面積)を制御(調整)するように構成されている。排出通路147は絞り部147aを有する。第2制御弁350は、閉弁状態で絞り部147aにより規定される最小通路断面積を確保するように構成されている。なお、排出通路147及び第2制御弁350については後に詳細に説明する。
第1制御弁300及び逆止弁250が閉じているときは、第2制御弁350が開弁して排出通路147を開放する。このため、クランク室140内の冷媒が速やかに吸入室141に流出してクランク室140の圧力が吸入室141の圧力と同等となる。この場合、斜板111の傾角が最大となり、ピストン136のストローク(吐出容量)が最大となる。
一方、第1制御弁300及び逆止弁250が開いているときは、第2制御弁350が排出通路147を閉弁し、このとき排出通路147の通路断面積は絞り部147aにより規定される最小通路断面積に絞られる。このため、クランク室140内の冷媒が吸入室141に流出することが制限されて、クランク室140の圧力が上昇し易くなる。したがって、第1制御弁300による供給通路145の開度に応じてクランク室140の圧力が上昇して斜板111の傾角が最大から減少し、これによって、ピストン136のストローク(吐出容量)が可変制御される。
このように、可変容量圧縮機100は、供給通路145を介して吐出室142内(吐出圧力領域)の冷媒をクランク室140に供給し、排出通路147を介してクランク室140内の冷媒を吸入室141(吸入圧力領域)に流出させることによってクランク室140内の調圧を行い、このクランク室140内の調圧によって吐出容量が制御されるように構成されている。つまり、クランク室140の圧力に応じて吐出容量が変化する。なお、可変容量圧縮機100の内部には、潤滑用のオイルが封入されており、駆動軸110の回転に伴うオイルの撹拌や冷媒ガスの移動に伴うオイルの移動によって、可変容量圧縮機100内部が潤滑される。
以下では、供給通路145、逆止弁250、背圧逃がし通路146、排出通路147、第2制御弁350について詳細に説明する。
「供給通路145」
第1制御弁300が開弁すると、吐出室142とクランク室140とは供給通路145によって連通し、供給通路145を介して吐出室142内の冷媒がクランク室140に供給される。本実施形態において、供給通路145は、図1~図3に示すように、シリンダヘッド104に形成された連通路104b(図1参照)と、第1制御弁300内通路(図示省略)と、シリンダヘッド104に形成された連通路104cと、前記介在部材(シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153)を貫通する貫通孔103cと、逆止弁250を構成する後述する第1収容孔401と、シリンダブロック101に形成された連通孔101bに挿通される円筒状の通路管148と、によって構成されている。なお、本実施形態では、供給通路145における第1制御弁300と逆止弁250との間の領域である弁間領域145aは、連通路104cと貫通孔103cからなる領域により構成されている。
「逆止弁250」
図2は、前述したように、可変容量圧縮機100の要部拡大断面図であり、逆止弁250が供給通路145を開き、第2制御弁350が閉弁方向に作動して絞り部147aにより排出通路147の通路断面積が最小に絞られている状態を示している。図3は、逆止弁250が供給通路145を閉じ、第2制御弁350が開いている状態を示している。
本実施形態において、逆止弁250は、供給通路145の一部を構成する第1収容孔401と、弁座形成部材としての吸入弁形成板150と、第1収容孔401内に収容され前後差圧に応じて移動してクランク室140から第1制御弁300に向かう冷媒の流れを阻止するように構成された第1弁体251と、を含む。
第1収容孔401は、弁ハウジング450に形成され、駆動軸110の軸心Oに平行に延びている。第1収容孔401は、シリンダブロック101の前記後端面側に開口する段付き円孔状に形成されている。第1収容孔401は、前記開口側に配置された大径孔部401aと、大径孔部401aの孔底側に接続すると共に大径孔部401aよりも小径の小径孔部401bとを有する。
ここで、弁ハウジング450は、シリンダブロック101の前記後端面に凹設される凹部101c内に収容されている。弁ハウジング450は、例えば、円形断面を有する円柱状に形成され、凹部101cは、弁ハウジング450の外径より僅かに大きい内径を有した円形孔として形成されている。第1収容孔401は、弁ハウジング450における凹部底面101c1に対向する一端面451から弁ハウジング450における他端面452に向かって延びている。
凹部101cの孔底である凹部底面101c1には、連通孔101bの一端が開口し、連通孔101bの他端はクランク室140に開口している。
本実施形態では、凹部底面101c1に開口された連通孔101bに、円筒状の通路管148が挿通されている。通路管148の一端はクランク室140内に突き出しており、通路管148の他端は第1収容孔401の小径孔部401bの大径孔部401aとは反対側の開口部に接続されている。これにより、第1収容孔401は、通路管148及び連通孔101bを介してクランク室140に連通し、供給通路145の一部を構成している。また、通路管148は、弁ハウジング450の凹部101c内における径方向(つまり、第1弁体251及び後述する第2弁体351の移動方向と直交する方向)についての位置を決める位置決め部材としての機能も有している。
また、凹部底面101c1の径方向中央部には、駆動軸110支持用の貫通孔101dが開口されている。貫通孔101dの一端はクランク室140に開口し、貫通孔101dの他端は凹部底面101c1に開口している。貫通孔101dの一端側にはラジアル軸受132が装着され、貫通孔101dの他端側には雌ネジが形成され、この雌ネジに調整ネジ135が螺合されている。そして、凹部101cは、調整ネジ135及びスラストプレート134を貫通する貫通孔135aと、駆動軸110の他端部(すなわち、スラストプレート134側の端部)内に形成される軸内通路147bとからなる連通孔101eを介してクランク室140に連通している。つまり、凹部101cは、凹部底面101c1に開口される連通孔101eを介してクランク室140に連通している。軸内通路147bは、クランク室140内に露出する駆動軸110の外周面から径方向に延びて駆動軸110を貫通する第1通路147b1と、一端が駆動軸110内で第1通路147b1に接続すると共に他端が駆動軸110のスラストプレート134側の端面まで軸心Oに沿って延びる第2通路147b2とからなる。
本実施形態において、弁ハウジング450は、一端面451と凹部底面101c1との間と、凹部101cの内周面101c2とこれに対向する弁ハウジング450の外側面(外周面)453との間に、それぞれ隙間を有するように配置されている。凹部101cと弁ハウジング450との間には、気密部材500が設けられている。気密部材500は、例えば、円環状のOリングからなり、弁ハウジング450の外側面453における一端面451側の全周に形成される溝部453aに取り付けられている。
また、本実施形態において、弁ハウジング450の一端面451と凹部底面101c1との間には、弁ハウジング450を凹部101cの開口側へ付勢する付勢部材600が設けられている。付勢部材600は、例えば、圧縮コイルバネからなり、弁ハウジング450の一端面451の外縁部における周方向に離間した複数の位置に設けられている。
吸入弁形成板150は、第1収容孔401(詳しくは、大径孔部401a)の前記開口を閉塞する(覆う)と共に、第1弁体251が離接する弁座部150aと、第1弁体251の離接によって開閉される第1弁孔150bとを有する。第1弁孔150bは、前記介在部材(シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153)を貫通する貫通孔103cの開口端を構成している。
第1弁体251は、大径部251a1と大径部251a1よりも外径の小さい小径部251a2とで構成された段付き円筒状の側壁251aと、側壁251aの大径部251a1側の開口端を閉塞する端壁251bとを有する。換言すれば、第1弁体251は、有底の段付き円筒状に形成されている。また、第1弁体251は、側壁251aの内部空間251c1と、側壁251aの大径部251a1に形成された貫通孔251c2とで構成される内部通路251cを有している。第1弁体251は、樹脂材料で形成されるのが好ましいが、金属材料等の他の材料で形成されてもよい。
第1弁体251は、小径部251a2が第1収容孔401の小径孔部401bに摺動自在に支持されている。また、第1弁体251の大径部251a1と第1収容孔401の大径孔部401aとの間の空間は、第1弁体251の内部通路251cに連通する環状の通路を形成している。
第1収容孔401内において、第1弁体251は駆動軸110の軸線と平行な方向に移動可能である。第1弁体251の端壁251bが吸入弁形成板150の弁座部150aに当接することによって第1弁体251の一方の移動が規制され、第1弁体251の大径部251a1における小径部251a2側の端面が第1収容孔401の小径孔部401bと大径孔部401aとの間の段差部に当接することによって第1弁体251の他方の移動が規制される。そして、第1弁体251の端壁251bが弁座部150aに当接すると第1弁孔150bが閉塞され、第1弁体251の端壁251bが弁座部150aから離間すると第1弁孔150bが開放される。
第1収容孔401の大径孔部401a内の空間は、第1弁孔150bを含む貫通孔103cと連通路104cとからなる弁間領域145aに連通している。また、第1収容孔401の小径孔部401bには、前述したように、通路管148の一端が接続されており、通路管148の他端は、クランク室140内に開口している。すなわち、第1収容孔401の小径孔部401b内の空間は、通路管148を介してクランク室140に連通している。
第1弁体251には、逆止弁250よりも上流側の供給通路145の圧力Pc′及び逆止弁250よりも下流側のクランク室140の圧力Pcが作用する。したがって、第1弁体251は第1弁体251の前後の差圧、つまり、上流側圧力と下流側圧力との差(Pc′-Pc)に応答して駆動軸110の軸線方向に移動する。
また、上述のように、供給通路145における第1制御弁300と逆止弁250との間の弁間領域145aは、絞り部146aを有する背圧逃がし通路146を介して吸入室141に連通している。
第1制御弁300が開弁して供給通路145を開いた状態では、吐出室142の冷媒ガスが供給通路145における弁間領域145aを経由して逆止弁250の第1弁孔150bに至る。このため、第1弁体251の上流側の圧力Pc′が上昇して(Pc′-Pc)>0となり、図2に示されるように、第1弁体251の端壁251bが弁座部150aから離間し、第1弁体251の大径部251a1における小径部251a2側の端面が第1収容孔401の前記段差部に当接した状態となる。したがって、吐出室142内の冷媒ガスは、図中矢印で示されるように、第1弁孔150bから第1収容孔401の大径孔部401a、内部通路251c、小径孔部401b及び通路管148を経由してクランク室140に供給される。
第1制御弁300が閉弁して供給通路145を閉じると、吐出室142の冷媒ガスは、供給通路145における第1制御弁300よりも下流側には供給されず、また、弁間領域145aの冷媒ガスは、背圧逃がし通路146を経由して吸入室141に流出する。このため、(Pc′-Pc)<0となり、さらに内部通路251cを逆流する冷媒流による動圧によって、図3に示されるように、第1弁体251の大径部251a1における小径部251a2側の端面が第1収容孔401の前記段差部から離間し、第1弁体251の端壁251bが弁座部150aに当接して第1弁孔150bを閉塞する。これにより、クランク室140から第1制御弁300に向かう冷媒の流れが阻止される。
このように、逆止弁250は、第1制御弁300が開弁して供給通路145を開いたときには吐出室142からクランク室140への冷媒の流れを許容し、第1制御弁300が閉弁して供給通路145を閉じたときにはクランク室140から第1制御弁300に向かう冷媒の流れを阻止するように構成されている。なお、逆止弁250は、第1弁体251を弁座部150aに向けて付勢する圧縮コイルバネ等の付勢部材を有してもよい。また、ここでは吸入弁形成板150が弁座部150a及び第1弁孔150bを有しているが、これに限られるものではなく、例えばバルブプレート103が弁座部150a及び第1弁孔150bを有してもよい。
「背圧逃がし通路146」
背圧逃がし通路146の一端は、弁間領域145aに開口し、背圧逃がし通路146の他端は、前記介在部材(シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153)を貫通して吸入室141に開口している。本実施形態では、背圧逃がし通路146は、第2制御弁350の後述する第2収容孔403の背圧室403bを経由するように形成され、絞り部146aは、前記介在部材を貫通する貫通孔103dにより構成されている。具体的には、バルブプレート103に形成される溝部103eの一端が前記介在部材を貫通する貫通孔103cに開口し、溝部103eの他端が背圧室403bと溝部103eとの間を連通するようにシリンダガスケット152及び吸入弁形成板150を貫通する貫通孔103fに開口している。したがって、本実施形態では、背圧逃がし通路146は、溝部103e、貫通孔103f、背圧室403b、及び、絞り部146aとしての貫通孔103dとによって形成されている。
上述のように、第1制御弁300が供給通路145を閉じると、供給通路145における弁間領域145aには冷媒ガスが供給されない。また、供給通路145における弁間領域145aにある冷媒ガスは、背圧逃がし通路146を経由して吸入室141に流出する(排出される)。このため、供給通路145における弁間領域145aの圧力は、吸入室141の圧力に近づいていく。一方、第1制御弁300が供給通路145を開くと、逆止弁250が開弁して吐出室142内の冷媒ガスがクランク室140に供給される。このとき、冷媒ガスの一部が背圧逃がし通路146を経由して吸入室141に漏れることになる。したがって、背圧逃がし通路146の絞り部146aの通路断面積は、できるだけ小さく設定されることが望ましい。
「排出通路147」
排出通路147は、クランク室140と吸入室141との間を連通する通路として形成されており、絞り部147aを有している。本実施形態では、排出通路147は、軸内通路147b及び貫通孔135aからなる連通孔101eと、弁ハウジング450の一端面451と凹部底面101c1との間の隙間と、後述する第2弁孔403a1と、絞り部147aと、後述する第2収容孔403の弁室403aと、後述する排出孔403a2と、凹部101cの内周面101c2とこれに対向する弁ハウジング450の外側面453との間の円環状隙間と、この円環状隙間の開口端の一部と吸入室141との間を連通するように前記介在部材(シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153)を貫通する貫通孔103gと、により構成されている。
「第2制御弁350」
本実施形態において、第2制御弁350は、第2収容孔403と、第2収容孔403内に収容されて第2収容孔403内を移動可能な第2弁体351とを有している。第2弁体351は、弁部351aと受圧部351bを有する。
第2収容孔403は、弁ハウジング450に形成され、駆動軸110の軸線に平行に延びている。第2収容孔403は、シリンダブロック101の前記後端面側に開口する有底の段付き円孔状に形成されており、孔底側の小径の弁室403aと、前記開口側の弁室403aより大径の背圧室403bとを有する。第2収容孔403は、弁ハウジング450における凹部底面101c1に対向する一端面451から弁ハウジング450における他端面452に向かって延びている。つまり、第1収容孔401及び第2収容孔403は互いに並列して、それぞれ、弁ハウジング450の一端面451から他端面452に向かって延びている。
弁室403aの孔底には、第2弁孔403a1が開口され、弁室403aは、第2弁孔403a1(詳しくは、第2弁孔403a1、弁ハウジング450の一端面451と凹部底面101c1との間の隙間、及び、連通孔101e)を介してクランク室140に連通している。詳しくは、第2弁孔403a1の一端は弁室403aの孔底に開口し、第2弁孔403a1の他端は弁ハウジング450の一端面451に開口している。本実施形態において、第2弁孔403a1が本発明に係る第2制御弁350の「弁孔」に相当する。
また、弁室403aの孔壁には、排出孔403a2が開口され、弁室403aは、排出孔403a2(詳しくは、排出孔403a2、凹部101cの内周面101c2と弁ハウジング450の外側面453との間の円環状隙間、貫通孔103g)を介して吸入室141に連通している。詳しくは、排出孔403a2の一端は弁室403aの孔内壁面に開口し、排出孔403a2の他端は弁ハウジング450の外側面453(外周面)に開口している。このように、弁室403aは、第2弁孔403a1及び排出孔403a2と共に排出通路147の一部を形成している。
本実施形態において、前述したように、弁ハウジング450は、一端面451と凹部底面101c1との間と、凹部101cの内周面101c2とこれに対向する弁ハウジング450の外側面453との間に、それぞれ隙間を有するように配置されている。凹部101cと弁ハウジング450との間には、気密部材500が設けられている。そして、気密部材500は、前記隙間のうち第2弁孔403a1及び第1収容孔401が開口する領域と前記隙間のうちの残りの領域(詳しくは、凹部101cの内周面101c2と弁ハウジング450の外側面453との間の円環状隙間のうちの排出孔403a2が開口している領域)との間を気密に区画している。
背圧室403bは、第2収容孔403の開口端をなし、前記介在部材(シリンダガスケット152、吸入弁形成板150、バルブプレート103、吐出弁形成板151及びヘッドガスケット153)により閉塞されている。背圧室403bの開口部は第1収容孔401側に偏心して拡径されている。この拡径して偏心した部分に、貫通孔103fが接続されている。つまり、背圧室403bは、貫通孔103f、溝部103eを介して弁間領域145aに連通している。
第2弁体351は、弁室403a内に配置された弁部351aと背圧室403b内に配置された受圧部351bを有し、前後の差圧に応じて移動して第2弁孔403a1を開閉するように構成されている。本実施形態において、第2弁孔403a1が本発明に係る「弁孔」に相当する。
弁部351aは、弁室403aに摺動自在に支持されている(図では弁部351aと弁室403aの内壁との間の隙間が誇張して表されている)。弁部351aは、弁室403a内に位置し、弁部351aから延長した延長部が背圧室403b内に突出している。受圧部351bは、円筒状に形成され、弁部351aから延長した前記延長部に圧入固定されている。これにより、弁部351aと受圧部351bとからなる第2弁体351が構成されている。
第2収容孔403内において、第2弁体351は駆動軸110の軸線と平行な方向に移動可能である。第2弁体351の弁部351aの一端面が弁室403aの孔底に形成された弁座部403a3に当接することによって第2弁体351の一方の移動が規制され、第2弁体351の受圧部351bにおける前記介在部材側の端面に円環状に突設された突条351b1の端面が前記介在部材に当接することによって第2弁体351の他方の移動が規制される。そして、第2弁体351の弁部351aの一端面が弁座部403a3に離接することで第2弁孔403a1が開閉される。弁部351aの一端面には、切り欠き溝が形成されており、前記切り欠き溝が排出通路147の絞り部147aを構成する。弁部351aの一端面が弁座部403a3に当接した状態で、第2弁孔403a1は、絞り部147aとしての前記切り欠き溝を介して、弁室403aの孔内壁面と弁部351aの外周面との間の隙間に連通している。また、受圧部351bに形成された突条351b1は、受圧部351bの前記介在部材に対する当接面積を小さくするために形成されたものである。また、突条351b1に、切り欠き溝351b2を形成することにより、前記介在部材に対する当接面積が小さくなっている。これにより、受圧部351bの前記介在部材に対する離接動作が容易になるように構成されている。
ここで、第2制御弁350の動作について説明する。まず、第1制御弁300が供給通路145を開いたとき、第2制御弁350は、受圧部351bの端面に作用する圧力、すなわち、供給通路145における弁間領域145aの圧力Pc′(以下、「背圧Pc′」という)の上昇を利用して第2弁体351を閉弁方向に移動させ、図2に示すように、第2弁体351の弁部351aの一端面を弁座部403a3に当接させる。これにより、排出通路147は、絞り部147aにより絞られ、排出通路147の開度(通路断面積)は、最小となる。
次に、第1制御弁300が供給通路145を閉じたとき、第2制御弁350は、受圧部351bの端面に作用する背圧Pc′の低下を利用して第2弁体351を開弁方向に移動させ、図3に示すように、受圧部351bの突条351b1の端面を前記介在部材に当接させると共に弁部351aの一端面を弁座部403a3から離間させて、排出通路147を開放する。これにより、排出通路147の開度(通路断面積)は、最大となる。
このようにして、逆止弁250の第1弁体251用の第1収容孔401と第2制御弁350用の第2収容孔403とが形成された弁ハウジング450と、第1弁体251と、第2弁体351と、を有する弁ユニット400を備えた可変容量圧縮機100が構成されている。そして、弁ユニット400は、シリンダブロック101の前記後端面に凹設される凹部101c内に収容されている。
「可変容量圧縮機100の動作」
まず、車両のエンジンが停止している場合など、可変容量圧縮機100が停止している状態では、第1制御弁300の前記駆動ユニットのコイルへの通電はOFFになっており、第1制御弁300は供給通路145を最大に開放する(通路断面積を最大とする)。また、逆止弁250は、第1弁体251の端壁251bが弁座部150aから離間すると共に、第1弁体251の大径部251a1における小径部251a2側の端面が第1収容孔401の前記段差部に当接して、供給通路145を開放した状態になっている。また、第2制御弁350は、弁部351aの一端面が弁座部403a3に当接しており、排出通路147の通路断面積は最小となっている。
上記の状態で車両のエンジンが始動し、可変容量圧縮機100の駆動軸110が回転すると、吐出逆止弁200が吐出通路を閉塞しているので、圧縮吐出された冷媒(吐出室142内の冷媒ガス)は供給通路145を経由してクランク室140に供給される。すると、クランク室140の圧力が上昇して斜板111の傾角は最小となり、ピストン136のストローク(吐出容量)が最小となる。このとき、可変容量圧縮機100は非作動状態で運転されている状態となっている。なお、前記圧縮吐出された冷媒は、吐出室142、供給通路145、クランク室140、排出通路147、吸入室141及びシリンダボア101aで構成される内部循環路を循環する。
次いで、前記エアコンシステムが作動すると、第1制御弁300の前記駆動ユニットのコイルに電流が流れて、第1制御弁300が閉弁して供給通路145を閉じる。この場合、前記圧縮吐出された冷媒は供給通路145における弁間領域145aに供給されず、また、弁間領域145aにある冷媒は、背圧逃がし通路146を経由して吸入室141に流れてPc′<Pcとなる。したがって、逆止弁250は、供給通路145を閉じる。また、第2制御弁350は、排出通路147を開放し、排出通路147の通路断面積が最大となる。
このため、クランク室140内の冷媒が速やかに吸入室141に流出し、クランク室140の圧力が吸入室141の圧力と同等となる。この結果、斜板111の傾角が最大となってピストン136のストローク(すなわち、可変容量圧縮機100の吐出容量)が最大となる。そして、吐出逆止弁200が開弁して前記エアコンシステムを冷媒が循環し、前記エアコンシステムが作動状態となる。
そして、吸入室141の圧力が前記駆動ユニットのコイルに流れる電流によって設定された設定圧力まで低下すると、第1制御弁300が開弁し、これにより、前記圧縮吐出された冷媒は弁間領域145aに供給される。すると、Pc′>Pcとなって、逆止弁250が供給通路145を開放し、前記圧縮吐出された冷媒がクランク室140に供給される。また、第2制御弁350が閉弁方向に移動して排出通路147を絞り、排出通路147の通路断面積が最小となる。これにより、クランク室140内の圧力が上昇して斜板111の傾角が減少してピストン136のストローク(吐出容量)が減少し、吐出容量制御状態となる。
本実施形態に係る可変容量圧縮機100において、逆止弁250の第1弁体251を収容する第1収容孔401と第2制御弁350の第2弁体351を収容する第2収容孔403は、弁ハウジング450内に形成されている。つまり、第1収容孔401及び第2収容孔403は、シリンダブロック101とは別の部材である弁ハウジング450内に形成されている。したがって、シリンダブロック101には、弁ハウジング450と第1弁体251と第2弁体351とを含む弁ユニット400の全体を収容する一つの凹部101cを形成すればよい。このため、シリンダブロック101自体には、第1収容孔401及び第2収容孔403を形成するための複雑な加工を施す必要がなくなる。
このようにして、シリンダブロック101に複雑な加工を施すことなく逆止弁250及び第2制御弁350を設けることが可能な構造を備えた可変容量圧縮機100を提供することができる。
本実施形態では、背圧逃がし通路146は、背圧室403bを経由するように形成され、その絞り部146aは、シリンダブロック101とシリンダヘッド104との間に挟まれる前記介在部材を貫通する貫通孔103dにより構成されている。つまり、背圧逃がし通路146は前記介在部材及び背圧室403bを利用して形成されており、シリンダヘッド104に加工を施すことなく構築されている。これにより、背圧逃がし通路146を容易に構築することができる。
本実施形態では、第1収容孔401は、連通孔101bに挿通された通路管148を介してクランク室140に連通し、第2収容孔403は、第2弁孔403a1、凹部底面101c1と弁ハウジング450の一端面451との間の隙間、及び、凹部底面101c1に開口される連通孔101eを介してクランク室140に連通している。つまり、第1収容孔401と第2収容孔403は、それぞれ個別に、クランク室140に連通しており、冷媒ガスの経路としては、第1収容孔401からクランク室140に向かい、その後、クランク室140から第2収容孔403に向かう一方向の経路が形成されている。これにより、クランク室140内の異物がクランク室140外に排出され易くなる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形や変更が可能である。そのうちのいくつかを以下に記載する。
第2弁体351の受圧部351bは、前記介在部材に離接するものとしたが、これに限らない。例えば、図4に示すように、背圧室403bの開口部における第1収容孔401側に偏心して拡径された部分に、円環状の第2弁体ストッパー352を圧入固定し、この第2弁体ストッパー352の貫通孔周縁の端面に受圧部351bの円環状の端面が離接するように構成する。これにより、受圧部351bの端面に突条351b1や切り欠き溝351b2を形成することなく、受圧部351bの端面の当接面積を容易に小さくすることができ、受圧部351bの形状を簡素化することができる。
第1弁体251が離接する弁座部150a及び第1弁孔150bは、吸入弁形成板150に形成されるものとしたが、これに限らない。例えば、図5に示すように、第1収容孔401の大径孔部401aの開口端側に円環状の逆止弁ストッパー252を圧入固定し、この逆止弁ストッパー252の端面が弁座部150aを構成し、逆止弁ストッパー252の貫通孔が第1弁孔150bを構成してもよい。
また、背圧逃がし通路146は、溝部103e、貫通孔103f、背圧室403b、及び、絞り部146aとしての貫通孔103dとによって形成されるものとしたが、これに限らない。例えば、図5に示すように、弁ハウジング450の他端面452における第1収容孔401の大径孔部401aの開口端部と第2収容孔403の背圧室403bの開口端部との間に溝部454を形成する。これにより、背圧逃がし通路146は、溝部454、背圧室403b、及び、絞り部146aとしての貫通孔103dとによって形成される。なお、図示省略するが、第1弁孔150bの大径孔部401aの開口端部を更に大きく拡径した拡径部が形成され、逆止弁ストッパー252の一端面が前記拡径部と大径孔部401aとの間の段差部に突き当てられると共に、逆止弁ストッパー252の他端面と前記介在部材との間に圧縮コイルバネが設けられ、この圧縮コイルバネにより逆止弁ストッパー252が前記段差部に押し付けられた状態で、逆止弁ストッパー252が前記拡径部に圧入固定されてもよい。また、前記圧縮コイルバネに限らず、止め輪により逆止弁ストッパー252を前記段差部に押し付けて固定すると共に、逆止弁ストッパー252の外周にOリングを取り付けてもよい。
また、本実施形態では、気密部材500は、弁ハウジング450の外側面453における一端面451側の全周に形成される溝部453aに取り付けられるものとしたが、これに限らない。図示を省略するが、気密部材500は、凹部底面101c1と弁ハウジング450の一端面451との間に配置されてもよい。この場合、気密部材500は、弁ハウジング450を凹部101cの開口側へ付勢する付勢部材600として機能するため、付勢部材600を別途設けなくてもよい。
本実施形態では、第1収容孔401と第2収容孔403は、それぞれ個別に、クランク室140に連通するものとしたがこれに限らない。例えば、図6に示すように、第1収容孔401が、凹部底面101c1と弁ハウジング450の一端面451との間の隙間に開口し、凹部底面101c1に開口される連通孔101eを介してクランク室140に連通して、第1収容孔401と第2収容孔403のいずれもが、連通孔101eを介してクランク室140に連通してもよい。この場合、凹部底面101c1と弁ハウジング450の一端面451との間の隙間と、軸内通路147b及び貫通孔135aからなる連通孔101eとからなる通路は、排出通路147の一部を構成すると共に供給通路145の一部を構成している。また、この場合は、図6に示すように、弁ハウジング450の凹部101c内における径方向についての位置を決める位置決め部材として、位置決めピン700を例えば凹部底面101c1と弁ハウジング450の一端面451との間に設ける。また、これに限らず、図示省略するが、弁ハウジング450の他端面452の外縁部にフランジ状のフランジ部を形成すると共に、凹部101cの開口端にこのフランジ部の形状に合わせた嵌合部を形成し、この嵌合部に前記フランジ部を嵌合させることにより、弁ハウジング450の凹部101c内における径方向の位置を決めてもよい。そして、図示を省略するが、図6に示す構造において、第1収容孔401の小径孔部401bの凹部底面101c1側の部位を更に縮径して縮径部を設けてもよい。この場合、第1弁体251の小径部251a2の端面が第1収容孔401の小径孔部401bと前記縮径部との間の段差部に当接することによって第1弁体251の開弁方向の移動が規制されるように構成する。
可変容量圧縮機100は、斜板式のクラッチレス圧縮機に限られず、電磁クラッチを装着した可変容量圧縮機やモータで駆動される可変容量圧縮機としてもよい。
100…可変容量圧縮機、101…シリンダブロック、101a…シリンダボア(圧縮部)、101c…凹部、101c1…凹部底面、101c2…内周面、101e…連通孔、102…フロントハウジング、103…バルブプレート(介在部材)、103d…貫通孔(背圧逃がし通路の絞り部)、104…シリンダヘッド、136…ピストン136(圧縮部)、140…クランク室(制御圧室)、141…吸入室、142…吐出室、145…供給通路、145a…弁間領域、146…背圧逃がし通路、146a…絞り部、147…排出通路、148…通路管(位置決め部材)、150…吸入弁形成板(介在部材)、151…吐出弁形成板(介在部材)、152…シリンダガスケット(介在部材)、153…ヘッドガスケット(介在部材)、250…逆止弁、251…第1弁体、300…第1制御弁、350…第2制御弁、351…第2弁体、351a…弁部、351b…受圧部、400…弁ユニット、401…第1収容孔、403…第2収容孔、403a…弁室、403a1…第2弁孔(弁孔)、403a2…排出孔、403b…背圧室、450…弁ハウジング、451…一端面、452…他端面、453…外側面、500…気密部材、600…付勢部材、700…位置決めピン(位置決め部材)

Claims (5)

  1. シリンダブロック、前記シリンダブロックの前端面側に設けられるフロントハウジング、及び、前記シリンダブロックの後端面側に設けられるシリンダヘッドを含むハウジングと、
    前記シリンダヘッドに設けられ外部から冷媒が導かれる吸入室と、
    前記シリンダブロックに設けられ前記吸入室内の冷媒を吸入して圧縮する圧縮部と、
    前記シリンダヘッドに設けられ前記圧縮部によって圧縮された冷媒が吐出される吐出室と、
    前記フロントハウジングに設けられる制御圧室と、
    前記吐出室内の冷媒を前記制御圧室に供給するための供給通路に設けられ、前記供給通路の開度を制御する第1制御弁と、
    前記供給通路における前記第1制御弁よりも前記制御圧室側に設けられ、前記制御圧室から前記第1制御弁に向かう冷媒の流れを阻止する逆止弁と、
    前記制御圧室内の冷媒を前記吸入室に排出するための排出通路に設けられ、前記排出通路の開度を制御する第2制御弁と、
    前記供給通路における前記第1制御弁と前記逆止弁との間の領域である弁間領域と前記吸入室とを連通し、絞り部を有する背圧逃がし通路と、
    を含み、前記制御圧室の圧力に応じて吐出容量が変化する可変容量圧縮機であって、
    前記逆止弁は、
    前記供給通路の一部を構成する第1収容孔と、
    前記第1収容孔内に収容され前後の差圧に応じて移動して前記制御圧室から前記第1制御弁に向かう冷媒の流れを阻止するように構成された第1弁体と、
    を有し、
    前記第2制御弁は、
    弁孔を介して前記制御圧室に連通すると共に排出孔を介して前記吸入室に連通し前記弁孔及び前記排出孔と共に前記排出通路の一部を形成する弁室と、前記弁間領域に連通する背圧室と、を有する第2収容孔と、
    前記弁室内に配置された弁部と前記背圧室内に配置された受圧部とを有し、前後の差圧に応じて移動して前記弁孔を開閉するように構成された第2弁体と、
    を有する構成とし、
    前記第1収容孔と前記第2収容孔とが形成された弁ハウジングと、前記第1弁体と、前記第2弁体と、を有する弁ユニットを、
    備え、
    前記弁ユニットは、前記シリンダブロックの前記後端面に凹設される凹部であって、凹部底面に開口される連通孔を介して前記制御圧室に連通する前記凹部内に収容されている、可変容量圧縮機。
  2. 前記背圧逃がし通路は、前記背圧室を経由するように形成され、
    前記絞り部は、前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドとの間に挟まれる介在部材を貫通する貫通孔により構成されている、請求項1に記載の可変容量圧縮機。
  3. 前記第1収容孔及び前記第2収容孔は互いに並列して、それぞれ、前記弁ハウジングにおける前記凹部底面に対向する一端面から前記弁ハウジングにおける他端面に向かって延び、
    前記弁ハウジングは、前記一端面と前記凹部底面との間と、前記凹部の内周面とこれに対向する当該弁ハウジングの外側面との間に、それぞれ隙間を有するように配置され、
    前記弁孔は、前記弁ハウジングの前記一端面に開口し、
    前記排出孔は、前記弁ハウジングの前記外側面に開口する構成とし、
    前記凹部と前記弁ハウジングとの間に設けられ、前記隙間のうち前記弁孔及び前記第1収容孔が開口する領域と前記隙間のうちの残りの領域との間を気密に区画する気密部材を、更に備える、請求項1又は2に記載の可変容量圧縮機。
  4. 前記弁ハウジングの前記凹部内における前記第1弁体及び前記第2弁体の移動方向と直交する方向についての位置を決める位置決め部材を、更に備える、請求項1~3のいずれか一つに記載の可変容量圧縮機。
  5. 前記弁ハウジングを前記凹部の開口側へ付勢する付勢部材を、更に備える、請求項1~4のいずれか一つに記載の可変容量圧縮機。
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