JP7180494B2 - 超音波探傷装置および超音波探傷方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る超音波探傷装置は、図1に示すように、凹曲面30を有する被検体6の超音波探傷装置1であって、超音波を受発信する集束型超音波プローブP、集束型超音波プローブPに接続され、集束型超音波プローブPを発信させるとともに受信した超音波データを送信する送受信部3、被検体6に対し集束型超音波プローブPを相対的に走査する走査部4、送受信部3および走査部4に接続された制御部2を有し、制御部2は、集束型超音波プローブPから発信された超音波が、超音波の進行方向において、凹曲面30の手前で集束する第1焦点M1を有するとともに、凹曲面30以遠で集束する第2焦点M2を有するように、凹曲面30に対する集束型超音波プローブPの位置を設定することを特徴とする超音波探傷装置、いわゆる2重焦点法を適用した超音波探傷装置である。
超音波プローブPとしては、超音波の進行方向において所定の位置(焦点距離)で超音波が集束する焦点(この焦点が、後述する第1焦点となる。)を形成する集束型の超音波プローブを用いる。ここで、集束型の超音波プローブとは、上記したように単一素子の単一型の超音波プローブでもよいし、複数の素子を備えたアレイ型超音波プローブでもよい。なお、超音波プローブPと被検体6の間には、油などの液体、空気などの気体、ポリスチレンなどの固体でもよいが、検出性、走査性および保守性などを考慮し、以下、水で満たされているものとする。
走査部4は、スキャナ4aとスキャナ制御部4bからなる。スキャナ4aは超音波プローブPおよび被検体6の少なくとも一方を、制御軸に沿い移動させる。上記スキャナ4aを制御するスキャナ制御部4bは、後述する記憶部2bに格納された走査用軌道データに基づき、定められたタイミングおよび範囲でスキャナ4aを動作せしめ、超音波プローブPまたは被検体6を移動させ、超音波プローブPと被検体6の相対的な位置関係を変えることができる。
図1に示す送受信部3は、パルサ・レシーバ3aと送受信制御部3bにより構成されている。このうちパルサ・レシーバ3aは、超音波プローブPに内蔵された圧電素子にパルス電圧を印加し超音波を発振するための送信部(パルサ)と、被検体6から反射された超音波を圧電素子で受けて発生した電気信号を増幅し、A/D変換などして波形データとして取得し、後述する制御部2の受信波形メモリ2cへ転送する受信部(レシーバ)で構成される。なお、図1では、パルサ・レシーバ3aは送信部(パルサ)と受信部(レシーバ)が一体に形成されている。
制御部2は、検査条件データベース等の探傷用データが格納された記憶部2b、受信波形メモリ2cおよび走査軌道プランニング部2aからなる。なお、制御部2は、上記した送受信制御部3bの機能を含む形で構成されていてもよい。
記憶部2b内に格納された探傷用データである検査条件データベースには、超音波プローブPや被検体6の寸法などの仕様(プローブ仕様、被検体仕様)、超音波の送受信条件、走査用軌道データ、表示(ゲート)条件、例外条件など、超音波探傷時における検査条件に係るデータが保存されている。また、受信波形メモリ2cには、送受信制御部3bを経て超音波プローブPから送信された受信波形データが格納されている。
走査軌道プランニング部2aは、記憶部2bに格納された探傷用データに基づき超音波プローブPの走査用軌道データを演算し、走査部4へ送信する部位である。すなわち、走査軌道プランニング部2aは、記憶部2bの検査条件データベースに格納された、被検体6の外形や寸法のデータと、超音波プローブPの焦点距離および外形データと、超音波が伝搬する媒質および被検体6の音速データ等に基づき超音波プローブPの走査用軌道データを演算し、作成する機能を有する。このため走査軌道プランニング部2aは、被検体6の外形データや寸法データが保存された被検体データ保存部2a1と、凹曲面30を有する被検体6の凹曲面30の内部の探傷するため凹曲面30の形状を考慮した走査用軌道データを算出するプローブ位置算出部2a2とを備えている。この被検体データ保存部2a1とプローブ位置算出部2a2が連携して超音波プローブPの走査用軌道データを作成する。
入力部2Iは、キーボード、マウス、タッチパネルなどの手段を用いて入力する一般的な入力機器からなり、表示部2Dは、超音波の送受信の制御や収録条件に必要な値の他、計測した生波形、処理した後の波形、画像再構成結果などを表示する機能を有する。
本発明に係る超音波探傷装置の凹曲面内部の探傷する場合の測定原理について、以下詳述する。まず、図1に示す被検体6を探傷するための水距離(超音波プローブPの表面と被検体6の表面までの水の層の厚さ)に関して説明する。
[超音波探傷方法]
上記構成の超音波探傷装置の動作(超音波探傷方法)について説明する。本発明に係る超音波探傷方法は、図4に示すように、凹曲面30を有する被検体6の超音波探傷方法であって、集束型超音波プローブPから発信された超音波の進行方向において、凹曲面30の手前で集束する第1焦点を有するとともに、凹曲面30以遠で集束する第2焦点を有するように、凹曲面30に対する位置が設定された集束型超音波プローブPから凹曲面30へ向けて超音波を入射し、被検体6から反射した反射波を用いて被検体の探傷を行うことを特徴とする超音波探傷方法、いわゆる2重焦点法を適用した超音波探傷方法である。以下、上記超音波探傷方法を実現する超音波探傷装置の処理の流れについて、図6および図7を用いて説明する。
[実施例]
本発明に係る2重焦点法を適用した実施例および適用しなかった比較例について説明する。図22に、本発明の実施例・比較例に用いた試験片を示すが、図22(b)に示すように紙面水平方向をx軸、上下方向をy軸、垂直方向をz軸とする。なお、試験片は、繊維含有率が体積率(VF)で62%となるよう東レ製T800の繊維を紙面水平方向(x軸方向)に配向した繊維強化樹脂で構成されている。図22(a)は試験片の側面図であり、表面からの深さが2mmとなるよう試験片の表面に、x軸(長さ)方向において30mmのピッチでR3,R10,R20の凹曲面30を形成している。また、図22(b)は試験片の底面図および図22(c)は図22(b)のH-H断面図である。図22(b)に示すように、凹曲面30ごとに、y軸(幅)方向において10mmピッチで、深さが相違する5個のφ1mmの人工欠陥d1~d5を形成した。各人工欠陥d1~d5の試験片底面からのz軸(厚さ)方向における深さは、d1:10mm、d2:8mm、d3:6mm、d4:4mm、d5:2mmとし、凹曲面30の底面からの深さが、d1:1mm、d2:3mm、d3:5mm、d4:7mm、d5:9mmとなるようにした。以下で説明する実施例・比較例では、上記試験片のうち図22(a)において符号Iで示すように、R10の凹曲面30の直下に形成された人工欠陥を検出対象とした。実施例・比較例で使用した集束型超音波プローブは、口径がφ10mm、焦点距離が25mm、公称周波数5MHzの超音波プローブであった。そして、2重焦点法を適用した実施例では、図4に示すように、焦点距離が25mmの集束型超音波プローブを、上記説明したように式4に基づき算出された第2の距離αが20mmとなる位置(α>R)、すなわち、凹曲面30の表面からの位置が45mmの位置にセットし、第2焦点M2が試験片内部(凹曲面30から8mmの深さ)に形成されるようにして探傷を行った。一方で、2重焦点法を適用しなかった比較例では、図5に示すように、集束型超音波プローブの焦点が、凹曲面30の曲率中心O2と一致するようにセットし(α=R)、探傷を行った。
2:制御部
2a:走査軌道プランニング部
2b:記憶部
2c:受信波形メモリ
2d:表示部
2I:入力部
3:送受信部
3a:パルサ・レシーバ
3b:送受信制御部
4:走査部
4a:スキャナ
4b:スキャナ制御部
6:被検体
P:集束型の超音波プローブ
Claims (12)
- 凹曲面を有する被検体の超音波探傷装置であって、
超音波を受発信する集束型超音波プローブ、前記集束型超音波プローブに接続され、前記集束型超音波プローブを発信させるとともに受信した超音波データを送信する送受信部、前記被検体に対し前記集束型超音波プローブを相対的に走査する走査部、前記送受信部および前記走査部に接続された制御部を有し、
前記制御部は、前記集束型超音波プローブから発信された超音波が、当該超音波の進行方向において、前記凹曲面の手前で集束する第1焦点を有するとともに、前記凹曲面以遠で集束する第2焦点を有するように、前記凹曲面に対する前記集束型超音波プローブの位置を設定することを特徴とする超音波探傷装置。 - 請求項1に記載の超音波探傷装置であって、
前記超音波の進行方向において、前記集束型超音波プローブの第1焦点から前記凹曲面までの距離がαであり、前記凹曲面の曲率がRである場合に、α>Rであることを特徴とする超音波探傷装置。 - 請求項1または2に記載の超音波探傷装置であって、
前記制御部は、探傷用データが格納された記憶部と、前記記憶部に格納された探傷用データに基づき前記集束型超音波プローブの走査用軌道データを演算し、前記走査部へ送信する走査軌道プランニング部とを有し、前記記憶部に格納された探傷用データに基づき算出した発信用データを前記送受信部へ送信するとともに前記送受信部から受信した超音波データを処理して前記記憶部へ送信し、
前記走査軌道プランニング部で演算された走査用軌道データは、少なくとも、前記超音波の進行方向における前記集束型超音波プローブの位置を指示するプローブ位置指示データを含み、
前記プローブ位置指示データは、前記超音波の進行方向において、前記第1焦点が前記凹曲面外で集束する位置に設定され、前記第2焦点が前記凹曲面以遠で集束する位置に設定されるデータであることを特徴とする超音波探傷装置。 - 請求項3に記載の超音波探傷装置であって、
前記走査軌道プランニング部は、前記記憶部に格納された探傷用データである、前記集束型超音波プローブの素子サイズおよびその焦点位置並びに媒質音速、被検体音速、被検体形状および検査範囲の各データをABCD行列の所定の項に代入し、前記プローブ位置指示データを算出することを特徴とする超音波探傷装置。 - 請求項4に記載の超音波探傷装置であって、
前記記憶部は、前記検査範囲における前記被検体の表面の形状データを有し、
前記走査軌道プランニング部は、前記記憶部に格納された形状データに基づき前記検査範囲に存在する凹曲面のうち最も小さい曲率半径を有する凹曲面を抽出し、抽出された凹曲面の曲率半径に基づき前記プローブ位置指示データを算出することを特徴とする超音波探傷装置。 - 請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の超音波探傷装置であって、
前記記憶部には、事前に設定した前記プローブ位置指示データが格納されており、前記前記走査軌道プランニング部は、前記記憶部に格納された前記プローブ位置指示データを読み込み、当該プローブ位置指示データを含む走査用軌道データを作成することを特徴とする超音波探傷装置。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の超音波探傷装置であって、
前記制御部は、前記送受信部から受信した超音波データのうち底面エコーの強弱に基づき欠陥の存在を判別することを特徴とする超音波探傷装置。 - 凹曲面を有する被検体の超音波探傷方法であって、
集束型超音波プローブから発信された超音波の進行方向において、前記凹曲面の手前で集束する第1焦点を有するとともに、前記凹曲面以遠で集束する第2焦点を有するように、前記凹曲面に対する位置が設定された集束型超音波プローブから前記凹曲面へ向けて超音波を入射し、前記被検体から反射した反射波を用いて被検体の探傷を行うことを特徴とする超音波探傷方法。 - 請求項8に記載の超音波探傷方法であって、
前記集束型超音波プローブの素子サイズおよびその焦点位置並びに媒質音速、被検体音速、被検体形状および検査範囲の各データをABCD行列の所定の項に代入し、前記集束型超音波プローブの位置を算出することを特徴とする超音波探傷方法。 - 請求項9に記載の超音波探傷方法であって、
前記被検体の検査範囲に複数の凹曲面が存在する場合には、前記複数の凹曲面のうち最も小さい曲率半径を有する凹曲面の曲率半径に基づき前記集束型超音波プローブの位置を算出することを特徴とする超音波探傷方法。 - 請求項8から請求項9のいずれか1項に記載の超音波探傷方法であって、
前記超音波の進行方向において、前記集束型超音波プローブの第1焦点から前記凹曲面までの距離がαであり、前記凹曲面の曲率がRである場合に、α>Rであることを特徴とする超音波探傷方法。 - 請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の超音波探傷方法であって、
前記被検体は、さらに平坦面を有し
前記平坦面の内部を探傷する場合には、超音波の進行方向において、前記第1焦点が前記平坦面以遠に存在するように、前記平坦面に対し垂直な方向における前記集束型超音波プローブと前記被検体間の距離が位置付けられた前記集束型超音波プローブから前記平坦面へ向けて超音波を入射し、前記被検体から反射した反射波を用いて被検体の探傷を行うことを特徴とする超音波探傷方法。
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