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JP7157859B2 - 電子デバイスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、ポリイミド、およびポリイミド基板に関する。
ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池等の電子デバイスにおいて、薄型化、軽量化、およびフレキシブル化が要求されており、ガラス基板に代えて樹脂フィルム基板の利用が検討されている。
これらの電子デバイスの製造プロセスでは、基板上に、薄膜トランジスタ等の半導体等や電極等の電子素子が形成される。これらの素子の形成は高温プロセスを要するため、樹脂クフィルム基板に高い耐熱性が要求される。基板上に設けられる素子は一般に無機材料からなる。基板の線熱膨張係数と素子を構成する無機材料の線熱膨張係数とが大きく異なると、素子形成界面の応力等に起因して、基板の反りや素子の破壊が生じる場合がある。そのため、樹脂フィルム基板は、素子を構成する無機材料と同等の線熱膨張係数を有することが望まれる。液晶ディスプレイやボトムエミッション型の有機EL素子では、表示素子からの光が基板を透過して出射するため、樹脂フィルム基板には透明性が求められ、特に、可視光領域での光透過率が高いことが要求される。上記の理由により、電子デバイス用の樹脂フィルム基板材料には、高耐熱性、低熱膨張、および高透明性が求められる。
電子デバイスの製造プロセスは、バッチタイプとロール・トゥ・ロールタイプに分けられる。樹脂フィルム基板は、ロール・トゥ・ロールプロセスにも適用できるが、ロール・トゥ・ロールプロセスによる電子デバイスの製造には、新たな設備が必要となることに加えて、ロール搬送に伴う新たな問題を克服しなければならない。一方、バッチプロセスでは、支持体上に樹脂溶液を塗布、乾燥してフィルム基板を形成し、その上に素子を形成すればよく、現行のガラス基板用プロセス設備を利用できるため、コスト面で優位である。
ガラスに匹敵する高耐熱性、低熱膨張、および高透明性を実現可能な樹脂材料として、耐熱性に優れるポリイミド系材料が検討されている。剛直な構造のモノマーや脂環式モノマーを用いたポリイミドは、透明性が高く、低熱膨張性を示すことが知られている(特許文献1、特許文献2)。また、ポリイミド前駆体としてのポリアミド酸にシリコーンオイルを添加してイミド化を行うことにより、得られるポリイミドフィルムが基材への高い密着性を示すことが知られている(特許文献3)。
特開2012-041530号公報 特許第5660249号 特開2015-229691号公報
ポリイミド基板をバッチプロセスに適用するためには、高耐熱性、低熱膨張、および高透明性に加えて、素子形成プロセスにおいて支持体として用いられるガラスとの適度の接着性を示し、かつ素子形成後にガラス支持体から容易に剥離できることが求められる。しかしながら、上記特許文献1~3に開示のポリイミド材料は、これらすべての要求特性を同時に満足することはできない。
上記に鑑みて、本発明は、高耐熱性、低熱膨張性、および高透明性を有し、かつ、支持体であるガラスと適度な密着性を示すポリイミド、およびその前駆体としてのポリアミド酸の提供を目的とする。
本願発明者らは、ポリマー骨格中に剛直な構造および脂環構造を導入し、さらにシロキサン結合を有するモノマー成分を併用することにより、上記特性を満足するポリイミド、およびその前駆体としてのポリアミド酸が得られることを見出した。
本発明のポリアミド酸は、一般式1で表される構成単位、および一般式2で表される構成単位を含有する。
Figure 0007157859000001
Figure 0007157859000002
本発明のポリイミドは、一般式Iで表される構成単位、および一般式IIで表される構成単位を端有する。
Figure 0007157859000003
Figure 0007157859000004
一般式1および一般式IにおけるA、ならびに一般式2および一般式IIにおけるBは、いずれも4価の芳香族基である。一般式2および一般式IIにおいて、RおよびRは、それぞれ独立に2価の炭化水素基であり、nは1~5の整数である。
4価の芳香族基AおよびBは、いずれも芳香族テトラカルボン酸二無水物の残基であり、好ましくは、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトライル基である。RおよびRは、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基であることが好ましく、中でもプロピレン基であることが特に好ましい。nは1~3であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
すなわち、本発明のポリアミド酸は、好ましくは、下記の式1Aで表される構成単位および下記の式2Cで表される構成単位を含有し、本発明のポリイミドは、好ましくは下記の式IAで表される構成単位および下記の式IICで表される構成単位を含有する。
Figure 0007157859000005
Figure 0007157859000006
Figure 0007157859000007
Figure 0007157859000008
本発明は、上記のポリイミドを含有するポリイミド基板に関する。例えば、上記のポリアミド酸と有機溶媒とを含有するポリアミド酸溶液を支持体上に塗布し、有機溶媒の除去およびポリアミド酸のイミド化を行うことにより、ポリイミド基板が得られる。このポリイミド基板は、支持体に密着積層されたポリイミド膜として形成される。ポリアミド酸溶液を塗布する支持体としては、例えばガラスが用いられる。
本発明のポリアミド酸から得られるポリイミドは、高耐熱性、低熱膨張性、および高透明性に加えて、ガラス等の支持体への適度な密着性を有する。そのため、バッチプロセスにおいて支持体への適度な密着性が要求される電子デバイス用基板材料として好適である。
[ポリアミド酸およびポリイミドの構造]
本発明のポリアミド酸は、以下の一般式1で表される構成単位および一般式2で表される構成単位を含む。
Figure 0007157859000009
Figure 0007157859000010
本発明のポリイミドは、以下の一般式Iで表される構成単位および一般式IIで表される構成単位を含み、例えば上記の構造1および構造2を有するポリアミド酸をイミド化することにより得られる。
Figure 0007157859000011
Figure 0007157859000012
上記一般式1および上記一般式IにおけるA、ならびに上記一般式2および上記一般式IIにおけるBは、いずれも4価の芳香族基である。芳香族基は、単一の芳香族環を有するものでもよく、複数の芳香族環が結合したものでもよく、縮合多環でもよい。上記一般式2および上記一般式IIにおいて、RおよびRはそれぞれ独立に2価の炭化水素基であり、nは1~5の整数である。
上記一般式1の構成単位および上記一般式2の構成単位を有するポリアミド酸をイミド化することにより、一般式Iの構成単位および一般式IIの構成単位を有するポリイミドが得られる。この構造を有するポリイミドは、ガラスとの密着性に優れるため、バッチプロセスでの樹脂フィルム基板の形成、およびフィルム基板上への素子の形成プロセスへの利用に適している。
上記AおよびBは、好ましくは芳香族テトラカルボン酸二無水物の残基である。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9’-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,3’,4,4′-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸二無水物、パラテルフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、メタテルフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般式1および一般式IにおけるAと、一般式2および一般式IIにおけるBとは、同一でもよく異なっていてもよい。
高透明性かつ低線膨張係数のポリイミドを得られることから、Aは、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の残基(下記の化学式で表されるビフェニル-3,3’,4,4’-テトライル基)であることが特に好ましい。
Figure 0007157859000013
すなわち、一般式1の構成単位は、下記の式1Aで表されるアミド酸構成単位であることが好ましく、一般式Iの構成単位は、下記の式IAで表されるイミド構成単位であることが好ましい。これらの構成単位は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と1,4-シクロヘキサンジアミンとから得られる。
Figure 0007157859000014
Figure 0007157859000015
高透明性かつ低線膨張係数のポリイミドを得られることから、Bは、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の残基であることが特に好ましい。すなわち、一般式2で表される構成単位は、下記の一般式2Aで表されるアミド酸構成単位であることが好ましく、一般式IIで表される構成単位は、下記の一般式IIAで表されるイミド構成単位であることが好ましい。これらの構成単位は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とシロキサン構造含有ジアミンとから得られる。
Figure 0007157859000016
Figure 0007157859000017
前述のように、AとBは同一でもよい。ポリイミドフィルムの高透明性と低線膨張係数とを同時に実現する観点から、AおよびBは、いずれもビフェニル-3,3’,4,4’-テトライル基であることが好ましい。
ポリアミド酸の重合時の反応性に優れ、かつポリイミドが低熱膨張性を示すことから、上記一般式2および上記一般式IIにおけるRおよびRは、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、またはプロピレン基であることが好ましく、中でもプロピレン基であることが特に好ましい。ポリアミド酸が高い溶解性を示し、かつポリイミドフィルムが高透明性を示すことから、上記一般式2および上記一般式IIにおけるnは、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。
すなわち、一般式2の構成単位は、下記の一般式2Bで表されるアミド酸構成単位であることが好ましく、一般式IIの構成単位は、下記の一般式IIBで表されるイミド構成単位であることが好ましい。これらの構成単位は、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分としての1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンとから得られる。
Figure 0007157859000018
Figure 0007157859000019
前述のように、一般式2および一般式IIにおける4価の芳香族基Bはビフェニル-3,3’,4,4’-テトライル基であることが好ましい。したがって、一般式2の構成単位は、下記の式2Cで表されるアミド酸構成単位であることが特に好ましく、一般式IIの構成単位は、下記の式IICで表されるイミド構成単位であることが特に好ましい。これらの構成単位は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンとから得られる。
Figure 0007157859000020
Figure 0007157859000021
ポリイミドフィルムに、高耐熱性、低熱膨張性、高透明性、およびガラスとの適度な密着性を持たせる観点から、ポリイミド中の一般式Iで表される構成単位と一般式IIで表される構成単位との合計は、ポリイミド全量に対して、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が特に好ましい。一般式Iで表される構成単位と一般式IIで表される構成単位との合計を上記範囲とするためには、前駆体であるポリアミド酸中の一般式1で表される構成単位と一般式2で表される構成単位との合計が、ポリアミド酸全量に対して、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。
ポリイミドのモル数とは、ポリイミドを構成する全ジアミン由来の構成単位のモル数である。ポリアミド酸のモル数とは、ポリアミド酸を構成する全ジアミン由来構成単位のモル数である。ポリイミドおよびポリアミド酸は、ジアミン由来の構成単位と酸二無水物由来の構成単位を等モル有するため、ポリイミドおよびポリアミド酸では、全ジアミン由来の構成単位のモル数は、全酸二無水物由来の構成単位のモル数に等しい。
高透明性および低熱膨張性に加えて、支持体との適度の密着性を有するポリイミドを得る観点から、ポリイミド中の一般式Iで表される構成単位のモル数Mと一般式IIで表される構成単位のモル数Mとの比M/Mは、95.0/5.0~99.9/0.1の範囲であることが好ましい。すなわち、本発明のポリイミドは、ジアミン成分の大半が1,4-シクロヘキサンジアミンであり、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン等のシロキサン構造含有ジアミンを少量含むことが好ましい。ジアミン成分に少量のシロキサン構造を導入することにより、ガラス等の支持体へのポリイミドの密着性が向上する傾向がある。そのため、支持体上にポリアミド酸溶液を塗布してイミド化したとき、ポリイミドと支持体との間の剥離または浮きを抑制できる。
シロキサン構造の含有量の増大に伴ってガラス等との密着性が向上する傾向がある。一方、密着性が過度に高いと、支持体からポリイミド膜の剥離が困難となったり、剥離時に寸法変化や不透明化を生じる場合がある。M/Mが95.0/5.0以上であれば、ポリイミド膜上に電子素子等を形成した後の支持体からのポリイミド膜の剥離を問題なく実施可能である。また、M/Mが95.0/5.0以上であれば、ポリイミド膜の低熱膨張特性および高透明性を維持できる。
/Mは、96.0/4.0~99.8/0.2がより好ましく、97.0/3.0~99.7/0.3がさらに好ましく、98.0/2.0~99.6/0.4が特に好ましく、99.0/1.0~99.5/0.5が最も好ましい。
ポリイミド中の一般式Iで表される構成単位と一般式IIで表される構成単位との比率を上記範囲とするためには、前駆体であるポリアミド酸中の一般式1で表される構成単位のモル数mと一般式2で表される構成単位のモル数mとの比m/mが、95.0/5.0~99.9/0.1の範囲であることが好ましく、96.0/4.0~99.8/0.2がより好ましく、97.0/3.0~99.7/0.3がさらに好ましく、98.0/2.0~99.6/0.4が特に好ましく、99.0/1.0~99.6/0.4が最も好ましい。
本発明のポリアミド酸およびポリイミドは、ゲルパーミレーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレンオキシド換算の重量平均分子量が、10,000~500,000であることが好ましく、20,000~300,000あることがより好ましく、30,000~200,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、ポリアミド酸およびポリイミドを塗膜またはフィルムとすることが可能となる。一方、重量平均分子量が500,000以下であると、溶媒に対して十分な溶解性を示すため、表面が平滑で膜厚が均一な塗膜またはフィルムが得られやすい。
[ポリアミド酸およびポリイミドの合成]
上記の構造Iおよび構造IIを含むポリイミドは、公知の方法により得られる。ポリイミドは、ポリアミド酸やポリイミドエステル等の前躯体を経由する合成法、および前躯体を経由しない合成法により合成できる。モノマーの入手性および重合の簡便さから、前駆体としてのポリアミド酸のイミド化により、ポリイミドを合成することが好ましい。
上記の構造1および構造2を含むポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得られる。例えば、ジアミンを、有機溶媒中に溶解またはスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とし、テトラカルボン酸二無水物を、有機溶媒に溶解もしくはスラリー状に分散させた溶液または固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。テトラカルボン酸二無水物溶液中に、ジアミンを添加してもよい。ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の溶解および反応は、アルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。
ポリアミド酸の合成においては、ジアミン成分全量のモル数と、テトラカルボン酸二無水物成分全量のモル数とを、実質上等モルに調整することが好ましい。複数種のジアミンおよび/または複数種のテトラカルボン酸二無水物を用いることにより、複数の構造を有するポリアミド酸が得られる。また、構造の異なるポリアミド酸をブレンドすることにより、構造の異なる複数種の構成単位を有するポリアミド酸を得ることもできる。
テトラカルボン酸二無水物として芳香族テトラカルボン酸二無水物を用い、ジアミンとして1,4-シクロヘキサンジアミンおよびシロキサン構造含有ジアミンを用いることにより、一般式1で表される構成単位および一般式2で表される構成単位を含有するポリアミド酸が得られる。芳香族テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用い、シロキサン構造含有ジアミンとして1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンを用いることにより、式1Aで表されるアミド酸構成単位および式Cで表されるアミド酸構成単位を有するポリアミド酸が得られる。1,4-シクロヘキサンジアミンのモル数とシロキサン構造含有ジアミンのモル数の比を、95.0/5.0~99.9/0.1の範囲とすることにより、m/mが95.0/5.0~99.9/0.1の範囲のポリアミド酸が得られる。
ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒は特に限定されない。有機溶媒は、使用するテトラカルボン酸二無水物およびジアミン類を溶解可能であり、かつ重合により生成するポリアミド酸を溶解可能であるものが好ましい。有機溶媒の具体例としては、テトラメチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホキシドまたはスルホン系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ―ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化アルキル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;フェノール、クレゾール等のフェノール系溶媒;シクロペンタノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。必要に応じて2種以上の有機溶媒を組合せて用いてもよい。ポリアミド酸の溶解性および反応性を高めるために、ポリアミド酸の合成に使用する有機溶媒は、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒およびエーテル系溶媒より選択されることが好ましく、特にDMF、DMAC、NMP等のアミド系溶媒が好ましい。
ポリアミド酸の合成反応の温度条件は、特に限定されない。ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。1,4-シクロヘキサンジアミン等の脂環式ジアミンを用いると、塩形成が起こる場合があるため、合成反応の温度を、必要に応じて50℃~150℃の範囲としてもよい。塩が溶解し、重合反応が進行しはじめた後は、ポリアミド酸の解重合による分子量低下を抑制するために、温度を80℃以下とすることが好ましく、0℃~50℃とすることがより好ましい。反応時間は10分~30時間の範囲で任意に設定すればよい。
有機溶媒中でジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合することにより、ポリアミド酸と有機溶媒とを含むポリアミド酸溶液が得られる。この重合溶液は、そのままポリアミド酸溶液として使用できる。また、重合溶液から溶媒の一部を除去したり、溶媒を添加することにより、ポリアミド酸の濃度および溶液の粘度を調整してもよい。添加する溶媒は、ポリアミド酸の重合に用いた溶媒と異なっていてもよい。また、重合溶液から溶媒を除去して得られた固体のポリアミド酸樹脂を溶媒に溶解してポリアミド酸溶液を調製してもよい。ポリアミド酸溶液の有機溶媒としては、ポリアミド酸の溶解性が高いものが好ましく、ポリアミド酸の合成に使用する有機溶媒として先に例示の有機溶媒を使用できる。中でも、DMF、DMAC、NMP等のアミド系溶媒が好ましい。
ポリアミド酸を脱水閉環することにより、イミド化が行われる。脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法により行われる。溶液の状態でイミド化を行う場合は、イミド化剤および/または脱水触媒をポリアミド酸溶液に添加して、化学的イミド化を行うことが好ましい。イミド化剤は特に限定されないが、3級アミンを用いることが好ましく、中でも複素環式の3級アミンが好ましい。複素環式の3級アミンとしては、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン、イミダゾール類等が挙げられる。脱水触媒としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、n-酪酸無水物、安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、γ―バレロラクトン等が挙げられる。
ポリアミド酸溶液から溶媒を除去してイミド化を行う場合は、加熱により脱水閉環を行う熱イミド化が好ましい。ポリアミド酸を加熱する方法は特に制限されないが、例えば、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の支持体に、ポリアミド酸溶液を塗布した後、80℃~500℃の範囲内で熱処理を行えばよい。加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分~5時間加熱を行うことが好ましい。ポリアミド酸溶液にイミド化剤および/または脱水触媒を加えて、上記のような方法で加熱してイミド化を行ってもよい。
ポリアミド酸からポリイミドへのイミド化は、1~100%の任意の割合で行うことができ、一部がイミド化されたポリアミド酸を合成してもよい。ポリアミド酸からポリイミドへのイミド化が進行すると、有機溶媒への溶解性や溶液の粘度が変化する傾向がある。また、特定のイミド化率でイミド化を停止することは一般に容易ではない。溶液の塗布および乾燥によりフィルムを形成する場合は、溶液の粘度やチクソトロピーが膜厚の均一性に影響を及ぼす。そのため、プロセスの安定性を考慮すると、ポリアミド酸にはイミド化剤および脱水触媒を添加せずに、イミド化率が略ゼロの状態で支持体上への塗布を行い、支持体上での加熱により溶媒の除去およびイミド化を行うことが好ましい。
[ポリアミド酸およびポリイミドの用途]
ポリアミド酸およびポリイミドは、そのまま製品や部材の作製に用いてもよい。ポリアミド酸およびポリイミドに、熱硬化性成分、光硬化性成分、非重合性バインダー樹脂、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、シランカップリング剤、微粒子、増感剤等を添加して組成物としてもよい。これらの任意成分の配合割合は、ポリイミドの固形分全体に対し、0.1重量%~95重量%の範囲であることが好ましい。なお、組成物の固形分とは有機溶媒以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
本発明のポリイミドは、透明性および耐熱性に優れるため、ガラス代替用途等の透明基板として使用可能であり、例えば、TFT基板、電極基板等の電子デバイス用基板への適用が期待できる。電子デバイスの中でも、液晶表示装置、有機EL素子、電子ペーパー、タッチパネル等の光透過性を必要とするデバイス用の基板としての使用が好ましい。本発明のポリイミドは、カラーフィルター、反射防止膜、ホログラム等の光学部材または建築材料や構造物の材料としても利用できる。本発明のポリイミドの表面に、金属酸化物や透明電極等の各種無機薄膜を形成していてもよい。無機薄膜は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法およびイオンプレーティング法等のPVD法、ならびにCVD法等のドライプロセスにより形成される。
[ポリイミド基板および電子デバイスの作製]
本発明のポリイミドは、耐熱性、低熱膨張性、および透明性に加えて、支持体との密着性が良いことから、バッチプロセスで製造される電子デバイスの基板として好ましく用いられる。バッチプロセスでは、支持体上にポリイミド膜(基板)を形成し、その上に素子を形成した後、素子が形成されたポリイミド基板を支持体から剥離することにより電子デバイスが得られる。
支持体上にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱による乾燥およびイミド化を行うことにより、支持体上に密着積層されたポリイミド膜(ポリイミド基板)が得られる。ポリイミド基板の厚みは、1~200μm程度であり、5~100μm程度が好ましい。
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体としては、ガラス基板;SUS等の金属基板または金属ベルト;ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルム等が挙げられる。現行のバッチタイプのデバイス製造プロセスに適応させるためには、支持体としてガラス基板を用いることが好ましい。
ガラス等の支持体にポリアミド酸溶液を塗布し、加熱すると、溶媒の蒸発とともにポリアミド酸のイミド化が始まり、有機溶媒およびイミド化(ポリアミド酸の脱水)により生成した水がポリアミド酸溶液から揮発する。このとき、一部の水および/または有機溶媒が揮発せずに、支持体とイミド化中の樹脂膜との間に滞留し、支持体と樹脂膜との界面での剥離の原因となる。支持体と樹脂膜との界面に滞留した水および/または有機溶媒は、その後、高温で加熱する工程において、ポリイミド膜を透過して排出され、剥離または浮きが生じた部分に気泡が残存する。このような気泡が生じると、ポリイミド基板上に素子を形成する際に不具合を生じる。特に、薄型化または小型化されたデバイスでは、細かい剥離または浮きでも、素子等の形成または実装に大きな影響を与える。
シロキサン構造を有する本発明のポリアミド酸およびポリイミドは、ガラスとの密着性が高いため、支持体上での溶媒の乾燥およびイミド化の際に、ガラス支持体と樹脂膜との界面への有機溶媒や水の滞留に起因する浮きや剥離が生じ難い。そのため、支持体上に密着積層されたポリイミド基板上への素子の形成や実装を正確に実施できる。また、ポリイミド中の脂環式構造(一般式I)とシロキサン構造(一般式II)との比率を調整することにより、素子を形成後のポリイミド基板の支持体からの剥離を容易に実施できる。
支持体上に密着積層されたポリイミド膜(ポリイミド基板)は、支持体からの90°ピール強度が、0.08~5.00N/cmがあることが好ましく、0.09~4.00N/cmであることがより好ましく、0.10~3.5N/cmであることがさらに好ましい。上記の密着性を有する場合、素子の形成および実装プロセスにおいて剥離が生じ難く、かつ素子の形成および実装後の支持体からの剥離が容易である。90°ピール強度は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
ポリイミド膜の透明性は、例えば、全光線透過率およびヘイズにより評価できる。ポリイミド膜の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。ヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。ポリイミドは短波長側の光を吸収しやすい傾向があり、膜自体が黄色に着色することが多い。着色の少ない膜とするためには、ポリイミド膜の波長450nmでの光透過率は70%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。本発明のポリイミドは、膜厚10μmの膜を形成した際の全光線透過率、ヘイズ、および波長450nmにおける光透過率が上記範囲であることが好ましい。
本発明のポリイミドを含むポリイミド基板は、線熱膨張が小さく、加熱前後の寸法安定性に優れる。ポリイミド膜の線熱膨張係数は、30ppm/K以下が好ましく、20ppm/K以下がより好ましい。線熱膨張係数は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。本発明のポリイミドは、膜厚10μmの膜を形成した際の線熱膨張係数が上記範囲であることが好ましい。
[ポリアミド酸溶液の調製]
<実施例1>
ステンレス製撹拌翼を備える撹拌機および窒素導入管を取り付けた500mLのガラス製セパラブルフラスコに、トランス-1,4-シクロヘキサンジアミン(CHDA)8.38g、およびN-メチル-2-ピロリドン(NMP)170.0gを仕込み、室温(23℃)で攪拌して溶解させた。CHDAの溶解を目視で確認した後、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(PAM-E)を0.02g添加し、さらに撹拌した。この溶液に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸無水物(BPDA)21.61gを加え、80℃で1時間加熱した後、室温で5時間攪拌して、ポリアミド酸溶液を得た。この反応溶液におけるジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は、反応溶液全量に対して15重量%であった。
<実施例2>
CHDAの仕込み量を8.37g、PAM-Eの仕込み量を0.04g、BPDAの仕込み量を21.60gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<実施例3>
CHDAの仕込み量を8.36g、PAM-Eの仕込み量を0.06g、BPDAの仕込み量を21.59gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<実施例4>
CHDAの仕込み量を8.33g、PAM-Eの仕込み量を0.09g、BPDAの仕込み量を21.58gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<実施例5>
CHDAの仕込み量を8.30g、PAM-Eの仕込み量を0.13g、BPDAの仕込み量を21.56gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<実施例6>
CHDAの仕込み量を8.28g、PAM-Eの仕込み量を0.18g、BPDAの仕込み量を21.54gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<実施例7>
CHDAの仕込み量を8.06g、PAM-Eの仕込み量を0.54g、BPDAの仕込み量を21.40gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<実施例8>
CHDAの仕込み量を7.84g、PAM-Eの仕込み量を0.90g、BPDAの仕込み量を21.26gに変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<比較例1>
CHDAの仕込み量を8.39gに変更し、PAM-Eを添加せずにBPDA21.61gを加えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<比較例2>
比較例1で合成したポリアミド酸溶液に、ポリアミド酸に対して0.1重量%のシランカップリング剤:γ―アミノプロピルトリエトキシシランを添加し、24時間撹拌して、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を調製した。
<比較例3>
CHDAの仕込み量を8.36gに変更し、PAM-Eを添加せずに、BPDA21.31gと、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物(以下、BPAF)0.335gとを同時に加えたこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
<比較例4>
ステンレス製撹拌翼を備える撹拌機および窒素導入管を取り付けた500mLのガラス製セパラブルフラスコに、パラフェニレンジアミン(PDA)7.98gおよびNMP170.0gを仕込み、室温で攪拌して溶解させた。PDAの溶解を目視で確認した後、PAM-Eを0.19g添加し、さらに撹拌した。その後、BPDA21.83gを加え、溶解するまで50℃で攪拌した後、溶液の温度を約90℃に調整して攪拌を続けて溶液の粘度を下げ、23℃における粘度が28,800mPa・sであるポリアミド酸溶液を得た。
<比較例5>
ステンレス製撹拌翼を備える撹拌機および窒素導入管を取り付けた500mLのガラス製セパラブルフラスコに、CHDA8.34gおよびNMP170.0gを仕込み、室温で攪拌して溶解させた。CHDAの溶解を目視で確認した後、信越シリコーン製の反応性シリコーンオイル:KF-8010(アミン当量:430g/mol)を0.13g添加し、さらに撹拌した。この溶液に、BPDA21.53gを加え、80℃で1時間加熱し、その後冷却し、室温(23℃)で5時間攪拌して、ポリアミド酸溶液を得た。
<比較例6>
CHDAの仕込み量を8.36g、BPDAの仕込み量を21.50gに変更し、反応性シリコーンオイルとして、KF-8010に代えて信越シリコーン製の反応性シリコーンオイル:X-22-168AS(酸無水物当量:500g/mol)0.15gを添加した。これらの変更点以外は、比較例5と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
[ポリアミド酸の評価]
<分子量>
表1の条件にて重量平均分子量(Mw)を求めた。
Figure 0007157859000022
[ポリイミド膜の作製]
上記の実施例および比較例で得られたポリアミド酸溶液を、固形分濃度が10%になるようにNMPで希釈した。希釈した溶液を、バーコーターを用いて、150mm×150mmの無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG、厚さ0.7mm)上に、乾燥後の厚みが10μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥して、ガラス板上にポリアミド酸の塗膜を形成した。ガラス板とポリアミド酸塗膜との積層体を、窒素雰囲気下で、20℃から350℃まで5℃/分で昇温した後、350℃で1時間加熱して、塗膜のイミド化を行い、ポリイミド膜とガラスとの積層体を得た。比較例4のみ、乾燥後の厚みが20μmとなるようにポリアミド酸溶液の流延を行い、熱風オーブンでの乾燥温度を120℃とし、窒素雰囲気下で昇温速度7℃/分で450℃まで昇温を行った後、450℃で10分間加熱してイミド化を実施した。
比較例1では、ガラスとポリイミド膜との間に多数の気泡が確認された。比較例1以外では、ポリイミド膜の剥離による気泡は確認されなかった。一方、実施例8では、ガラスとポリイミド膜との密着性が高く、ガラスから剥離することができなかったため、下記の物性評価は実施しなかった。
[ポリイミド膜の評価]
<ピール強度>
ガラス板とポリイミド膜との積層体を、23℃55%RHの環境下で24時間静置して調湿した後、ASTM D1876-01規格に従い、90°ピール強度を測定した。ポリイミド膜にカッターナイフにて10mm幅の切り込みを入れ、東洋精機製引張試験機(ストログラフVES1D)を用いて、23℃55%RH条件下、引張速度50mm/分、剥離長さ50mmにて90°ピール試験を実施し、剥離強度の平均値をピール強度とした。実施例6および実施例7では、ピール強度がロードセルの最大荷重(5.0N)を上回っていた。
<線熱膨張係数(CTE)>
線熱膨張係数の測定は、日立ハイテクサイエンス社製TMA/SS7100を用いて(サンプルサイズ:幅3mm×長さ10mm;膜厚を測定し、フィルムの断面積を算出)、荷重29.4mNとし、10℃/分で10℃から350℃まで一旦昇温させた後、40℃/分で降温させ、降温時の100~300℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線膨張係数を求めた。
<光透過率>
日本分光社製紫外可視近赤外分光光度計(V-650)を用いて、200~800nmにおける光透過率を測定し、450nmの波長における光透過率をポリイミド膜の透過率とした。
<ポリイミド膜の全光線透過率(TT)およびヘイズ>
日本電色工業製の積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K7105-1981記載の方法により測定した。
実施例および比較例のポリアミド酸重合時のモノマー仕込み量(酸二無水物およびジアミンのそれぞれのモル比)、ポリアミド酸の重量平均分子量および変性の有無、ポリイミド膜の膜厚、イミド化時のガラス板からの剥離の有無、ポリイミド膜のガラス板からのピール強度、ならびにポリイミド膜の特性の評価結果を、表2に示す。
Figure 0007157859000023
酸二無水物としてのBPDAとジアミンとしてのCHDAから得られた比較例1のポリアミド酸溶液は、ガラス板上への塗布後の熱イミド化の際にガラス板とポリイミド膜との間に多数の気泡が発生し、塗布面積の25%以上がガラス板から剥離していた。比較例1のポリアミド酸をシランカップリング剤により変性した比較例2では、比較例1に比べるとガラス板との密着性が向上していたが、ピール強度が小さく、密着性は十分といえるものではなかった。酸二無水物として、BPDAに1モル%のBPAFを添加した比較例3においても同様であった。
モノマー成分に反応性シリコーンオイルを添加した比較例5および比較例6では、比較例1に比べるとガラス板との密着性が向上していたが、ピール強度が小さく、密着性は十分ではなかった。また、比較例5および比較例6では、得られたポリイミド膜の線熱膨張係数(CTE)が高く寸法安定性が劣っており、透明性が低下していた。
ジアミン成分として、CHDAに加えてシロキサン構造を有するPAM-Eを用いた実施例1~8は、いずれもガラスに対して良好な密着性を示していた。CHDA/PAM-Eのモル数の比m/mが97/3~99.0/0.1である実施例1~7は、いずれも比較例1と同等の低CTEおよび高透明性を維持していた。CHDA/PAM-Eのモル数の比m/mが95/5である実施例8では、ポリイミド膜の特性評価を行っていないが、ガラス板上に形成されたポリイミド膜の目視では、実施例1~7と同様の透明性を有していた。また、実施例8は実施例7とポリアミド酸およびポリイミドの組成が類似であるため、実施例7と同様の低CTEおよび高透明性を維持していると推測される。CHDAに代えてPDAを用いた比較例4では、実施例1,2等と同等のピール強度を示したが、透明性(特に可視光短波長側)が大幅に低下しており、着色がみられた。
実施例1~8では、PAM-Eの仕込み量の増加に伴ってピール強度が増加し、ガラスとの密着性が向上する傾向がみられた。ガラス板上にポリイミド膜を形成し、必要に応じてポリイミド膜上への素子の形成や実装を行った後に、ガラス板からポリイミド膜を剥離する際の剥離の容易性を考慮すると、シロキサン構造含有ジアミンの使用量は、ジアミン全量に対して5モル%以下が好ましく、1モル%以下が特に好ましいといえる。
上記の実施例と比較例との対比から理解できるように、本発明のポリアミド酸は、ガラス支持体上への膜形成および加熱イミド化の際の加工性が良好であり、ガラス支持体との密着性に優れている。本発明のポリアミド酸のイミド化により得られるポリイミド膜は、100~300℃の高温領域においても低熱膨張性を有しており、かつ高透明性を有することから、ガラス代替の透明基板材料としての応用が期待できる。

Claims (6)

  1. 一般式1で表される構成単位および一般式2で表される構成単位を含有し、且つ一般式1で表される構成単位のモル数mと一般式2で表される構成単位のモル数mとの比m/mが97.0/3.0~99.9/0.1の範囲であるポリアミド酸と、有機溶媒とを含有するポリアミド酸溶液を支持体上に塗布し、前記有機溶媒の除去および前記ポリアミド酸のイミド化を行い、前記支持体上に密着積層されたポリイミド膜を形成し、前記ポリイミド膜の上に素子を形成した後、前記素子が形成された前記ポリイミド膜を前記支持体から剥離する、電子デバイスの製造方法であって、
    前記一般式1で表される構成単位と前記一般式2で表される構成単位との合計は、前記ポリアミド酸全量に対して、80モル%以上である、電子デバイスの製造方法。
    Figure 0007157859000024
    Figure 0007157859000025
    一般式1のAおよび一般式2のBはそれぞれ独立に4価の芳香族基であり;一般式2のRおよびRはそれぞれ独立に2価の炭化水素基であり;nは1~5の整数である。
  2. 前記比m/mが、99.3/0.7~99.9/0.1の範囲である、請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
  3. 前記ポリアミド酸は、構成単位として、前記一般式1で表される構成単位および前記一般式2で表される構成単位のみを含有する、請求項1または2に記載の電子デバイスの製造方法。
  4. 前記一般式2で表される構成単位が式2Bで表される構成単位である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
    Figure 0007157859000026
  5. 前記一般式1で表される構成単位が式1Aで表される構成単位であり、前記一般式2で表される構成単位が式2Cで表される構成単位である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
    Figure 0007157859000027
    Figure 0007157859000028
  6. 前記支持体がガラスである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
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