JP7152258B2 - 筆記具用油性インキ組成物およびそれを用いた筆記具 - Google Patents
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Description
特に、軸筒内に筆記先端を収容可能な出没式筆記具では、常にペン先が大気に晒されていることから、上述のような書き出し性能を考慮する必要がある。
このため、ノック式ボールペンや回転繰り出し式ボールペン等の出没式ボールペンにおいては、特に、上述のような潤滑性の向上とともに、書き出し性能をも向上させ、書き味、筆記性、さらには、書き出し性能を満足させることが必要とされている。
「1.ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルと、着色剤と、有機溶剤と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物。
2.前記分岐アルコールの炭素数が3~30である、第1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
3.前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.1~20質量%である、第1項または第2項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
4.20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下である、第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
5.第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
6.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、油性ボールペン。」とする。
本発明の特徴は、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルを含んでなる筆記具用油性インキ組成物とすることである。
ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルを用いることで、筆記先端部と被筆記面との間、さらには、ボールペンチップのボールとボール座との間の潤滑性を向上することができる。このため、筆記先端部と被筆記面との間に生じる筆記抵抗が抑えられ、さらには、ボール座の摩耗が抑制されることから、滑らかな書き味を奏しつつ、線とびが改善された優れた筆跡を形成することが可能となる。
また、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルを用いることは、筆記先端部を大気中に放置した場合に形成される筆記先端の乾燥被膜が、容易に破壊できるようになることから、筆記先端部が大気中に放置された場合でも、書き出し時の筆跡カスレが改善され、優れた書き出し性能を得ることができる。
よって、本発明のインキ組成物は、書き味、筆記性、さらには書き出し性能の全てを満足するものとなる。
本発明で用いるラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルは、ラノリン脂肪酸と分岐アルコールとのエステル化合物である。このエステル化合物の製造方法は、特に限定されないが、以下の製造方法、すなわち、ラノリン脂肪酸と分岐アルコールを無溶媒で150~260℃でエステル化反応させる方法、触媒と溶媒を用いて50~150℃でエステル化反応させる方法などがある。酸触媒等の触媒を使用する場合には、パラトルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、チタンアルコラート、固体酸触媒等の一般的な酸触触媒を用いることができる。溶媒を用いる場合には、トルエン、ヘプタン等の一般的に使用される溶剤を使用することができる。エステル化反応終了後、未精製、若しくは、減圧蒸留、水洗、水蒸気蒸留脱臭、活性炭処理等の通常の精製方法で精製することにより、目的とする本発明のエステルを得ることができる。
尚、前記ラノリン脂肪酸とは、羊の毛の表面に分泌される羊毛脂または、前記羊毛脂をろ過、脱色、脱臭、脱水、溶剤抽出、遠心分離、蒸留などの精製をして得られるラノリンを、加水分解して得られる脂肪酸である。また、ラノリン脂肪酸は、分岐脂肪酸やα-ヒドロキシ脂肪酸を含む脂肪酸である。また、前記分岐アルコールとは、分岐鎖を有するアルコールである。
これは、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルが、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)に吸着して潤滑層を形成し、筆記先端部と被筆記面との間、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性を向上することができるためと考える。
よって、筆記先端部と被筆記面との筆記抵抗が抑えられ、さらに、形成される潤滑層によりボールとボール座との接触が緩和され、ボール座の摩耗が抑制される。このため、本発明のインキ組成物は、滑らかな書き味を奏しつつ、線とびが改善された優れた筆跡を形成することができる。
また、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルは、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性を含む)も向上できる。このため、本発明のインキ組成物は、書き味と筆記性を向上できることは勿論のこと、筆記先端部を大気中に放置した場合において、筆記先端に形成される乾燥被膜を容易に破壊できるようになり、書き出し時の筆跡カスレが改善され、優れた書き出し性能を得ることができる。
なお、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルは、ラノリン脂肪酸および分岐アルコール由来の分岐鎖を有するために嵩高い構造を有しており、このため、筆記先端(ボールペンの場合には、ボールとボール座)に吸着して形成される潤滑層は、厚く安定して保つことが可能であり、よって、優れた潤滑効果をもたらすと考える。
特に、後述するようなポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、このラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの乾燥被膜の軟化効果が得られやすい。
また、油性インキ中の溶解安定性を向上し、上記効果を経時的にバランス良く得て、書き味、筆記性、さらには、ボール座の摩耗抑制、また、書き出し性能の更なる向上を考慮すると、分岐アルコールの炭素数は、3~10であることがさらに好ましく、3~5であることが特に好ましい。
また、上記効果の向上をより考慮すると、分岐アルコールは、1価のアルコールであることが好ましい。また、分岐アルコールは、脂肪族アルコールであることが好ましく、さらには、飽和脂肪族アルコールであることがより好ましい。
以上より、本発明において、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの分岐アルコールとしては、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコールであることが好ましく、特には、イソブチルアルコールであることが好ましい。
また、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの酸価は、0~15であることが好ましく、0~10であることがより好ましく、2~10であることがさらに好ましい。これは、油性インキ中のラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの他成分との親和性が良好であり、経時的に安定してインキ中に存在し、長期的に書き味、筆記性、および書き出し性能を向上しやすくなるためである。
尚、本発明における酸価は、試料1g中に含まれる酸性成分(遊離脂肪酸)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
尚、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルは、1種または2種以上の混合物として使用することが可能である。
本発明に用いる有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール等のグリコールエーテル溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール等のグリコール溶剤、ベンジルアルコール、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、t-ブタノール、プロパギルアルコール、アリルアルコール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタートやその他の高級アルコール等のアルコール溶剤など、筆記具用インキとして一般的に用いられる有機溶剤が例示できる。
また、本発明のインキ組成物は、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルを含んでおり、グリコールエーテル溶剤を用いることは、筆記先端に形成される被膜の軟化効果が相乗的に得られやすい。この点からも、本発明においてグリコールエーテル溶剤を用いることは好適である。さらに、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの溶解性、インキの経時安定性を考慮すれば、芳香族グリコールエーテル溶剤を用いることが好ましい。
また、グリコールエーテル溶剤以外の有機溶剤については、アルコール溶剤を用いることが好ましい。これは、アルコ-ル溶剤は揮発して、筆記先端での乾燥をしやすくし、筆記先端部内(チップ先端部内)をより早く増粘させることで、筆記先端部の間隙からインキが漏れ出すことを抑制できるためである。特に、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコ-ルは、潤滑性を向上する効果もあるため、少なくとも用いる方が好ましく、よって、本発明において、グリコールエーテル溶剤とアルコ-ル溶剤を併用することが特に好ましい。
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができ、染料、顔料は併用して用いても良い。
さらには、造塩染料を構成する有機酸については、フェニルスルホン基を有する有機酸であれば、金属に吸着し易い潤滑膜を形成しやすいことから、ボールペンに用いた場合、特に潤滑性を向上しやすく、ボール座の摩耗抑制や書き味を良好とするため好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられる。また、インキ中での長期安定性を考慮すれば、有機酸として、アルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
コハク酸エステルは、構造内に(ジ)エステル(-COOX、X:官能基)を少なくとも有しており、(ジ)エステルのカルボニル基が筆記先端(ボールペンの場合、ボールとボール座)に吸着し、潤滑層を形成するものである。特に、筆記先端が金属類である場合、潤滑層を形成しやすい。よって、コハク酸エステルを更に含んでなることで、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルが形成する潤滑層との相乗効果により、筆記先端部と被筆記面、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性が向上し、また、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性を含む)をも向上することができる。このため、軽く滑らかな書き味を奏しつつ、筆記先端部が大気中に放置された場合においても、筆記先端部に形成される乾燥被膜を、さらに容易に破壊することが可能となり、書き出し性能、特に短時間放置した場合の書き出し性能(短時間書き出し性能)を向上することができる。
脂肪酸は、脂肪酸が有するカルボキシル基により筆記先端(ボールペンの場合、ボールとボール座)に吸着して、優れた吸着層を形成する。特に、筆記先端が金属類の場合に吸着層を形成しやすい。よって、本発明において、脂肪酸を更に用いることは、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルが形成する潤滑層との相互作用により、筆記先端部と被筆記面、さらには、ボールとボール座との間の潤滑性をより向上することが可能となり、さらには、筆記先端部の滑り性(ボールペンの場合は、ボールの回転性を含む)をも向上することもできる。よって、軽く滑らかな書き味を奏しつつ、筆記先端部が大気中に放置された場合に形成される乾燥被膜はさらに容易に破壊可能となり、書き出し性能(短時間書き出し性能)を向上することができる。さらには、脂肪酸は、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルと同様、長時間、筆記先端部を大気中に放置した場合に形成される被膜を柔らかくする効果も併せ持つため、書き出し性能(長時間書き出し性能)をも、さらに向上することができる。
また、コハク酸エステルおよび脂肪酸を用いることは、短時間または長時間放置した場合でも、書き出しから良好な筆跡がさらに得られやすく、放置時間に関わらず、書き出し性能を向上することができる。
以上より、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステル、コハク酸エステル、脂肪酸の3成分を用いることは、より一層、軽く滑らかな書き味を奏しつつ、線とびのない良好な筆跡が得られ、短時間、長期間ともに書き出し性能を向上できる。よって、本発明において、コハク酸エステルおよび脂肪酸を更に含んでなることは、特段の効果が得られ、好ましい。
特に、コハク酸エステルと併用する場合、この効果向上が得られやすく、ボール座の摩耗の抑制と、書き味を向上しやすい。
より、潤滑性の向上を考慮すると、イソパルミチン酸(炭素数16)、イソステアリン酸(炭素数18)、イソアラキン酸(炭素数20)の中から1種以上選択することが好ましく、特に、潤滑性を向上しやすいバランスのとれた嵩高い構造を有することで、潤滑性が向上しやすい、イソステアリン酸(炭素数18)、イソアラキン酸(炭素数20)を用いることが好ましく、より考慮すれば、イソステアリン酸(炭素数18)を用いることが最も好ましい。
また、本発明において、樹脂をインキ粘度調整剤などとして、更に含んでなることが好ましい。本発明において、好ましく用いられる樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、その中でも、ポリビニルブチラール樹脂またはケトン樹脂を用いることが好ましい。
これは、ポリビニルブチラ-ル樹脂も、高い潤滑効果が得られる潤滑層を形成しやすいものであり、さらには、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルが形成する潤滑層との相乗効果により、さらに高い潤滑効果が得られ、書き味をより一層向上できるためである。特に、ボールペンに用いる場合に効果的であり、ボールとボール座との間に、弾力性を有するインキ層を形成し、ボールとボール座との間の直接接触を抑制して、書き味をより一層向上できる。
さらに、ポリビニルブチラール樹脂を用いることは、筆記先端に形成される被膜が、筆記先端からインキ漏れすることを抑制しやすくなり、この点からも効果的である。
また、前述の通り、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルは筆記先端に形成される乾燥被膜を軟化させ、書き出し性能を向上させることができるが、この被膜の軟化効果は、ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、特に効果的に得られる。よって、本発明において、ポリビニルブチラール樹脂を用いることは、書き出し性能をも、より一層向上できることからも効果的である。
よって、本発明において、ポリビニルブチラール樹脂は、インキ漏れを抑制し、さらに、書き味、書き出し性能の向上が可能であるため、好適に用いられる。また、着色剤として顔料を用いる場合には、ポリビニルブチラール樹脂を用いることは、顔料分散効果も得られることからも、効果的である。
なお、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)をブチルアルデヒド(BA)と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
さらに、水酸基量30mol%以上のポリビニルブチラール樹脂を用いることは、書き味が向上しやすくなるため、好ましく、特に、ボールペンに用いる場合、効果的である。これは、筆記時において、ボールの回転により摩擦熱が発生することで、ボールペンチップ先端部のインキが温められて、該インキの温度が高くなるが、前記ポリビニルブチラール樹脂を用いた場合、他の樹脂に比べ、インキ温度が上昇しても、インキ粘度が下がりづらい傾向にあることから、ボールとボール座との間に常に弾力性があるインキ層が形成され、ボールとボール座の直接接触が抑制され、書き味を向上しやすい傾向があるためと考える。また、前記水酸基量40mol%を越えるポリビニルブチラール樹脂を用いると、吸湿量が多くなりやすく、インキ成分との経時安定性に影響が出やすいため、水酸基量40mol%以下のポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。よって、本発明において、水酸基量30~40mol%のポリビニルブチラール樹脂を用いることがより好ましく、さらには、水酸基量30~36mol%であるポリビニルブチラール樹脂を用いることが好ましい。
なお、前記ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量(mol%)とは、ブチラール基(mol%)、アセチル基(mol%)、水酸基(mol%)の 全mol量に対して、水酸基(mol%)の含有率を示すものである。
本発明による筆記具用油性インキ組成物は、各種の筆記具に適用することができるが、特にボールペン、さらにはノック式や回転繰り出し式などの出没式ボールペンに好適に用いられる。このようなボールペンは、インキ組成物を収容した収容筒と、その収容筒の先端に配置された、ボール抱持室にボールを回転自在に抱持したボールペンチップとを具備したものであり、そのボールペンチップを軸筒の先端開口部から出没可能である、一般的に出没式ボールペンと呼ばれる構造を有するものである。一般的に、このような、ペン先が密閉されない出没式ボールペンにインキ組成物を用いた場合、チップ先端部が定常的に大気中に放置されるため、チップ先端部が乾燥し、書き出し時に筆跡カスレなどが生じやすいという課題を有している。しかし、本発明によるインキ組成物を用いることは、上述のような問題が改善されるため、本発明のインキ組成物を、出没式ボールペンに用いることは効果的である。
また、本発明で用いるボールペンチップのボール表面の算術平均粗さ(Ra)は、0.1~12nmとすることが好ましい。これは、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1nm未満だと、ボール表面に十分にインキが載りづらく、筆記時に濃い筆跡が得られづらく、筆跡に線とび、カスレが発生しやすく、算術平均粗さ(Ra)が12nmを越えると、ボール表面が粗すぎて、ボールとボール座の回転抵抗が大きいため、書き味が劣りやすく、さらに、筆跡にカスレ、線とびなどの筆記性能に影響が出やすくなるためである。また、ボール表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~10nmであると、本発明のようなインキ組成物を用いた場合、ボール表面にインキが載りやすいためより好ましく、より書き味を考慮すれば、2~8nmであることが好ましい。
なお、表面粗さの測定は(セイコーエプソン社製の機種名SPI3800N)で求めることができる。
以下、本発明を実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら
実施例に限定されるものではない。
予め有機溶剤、顔料、顔料分散剤を添加し、3本ロール分散機で分散させて、顔料分散体を作製し、その後、作製した顔料分散体、染料、有機溶剤、ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール樹脂を所定量秤量して、60℃に加温した後、ディスパー攪拌機を用いて完全溶解させ、実施例1の筆記具用油性インキ組成物を得た。具体的な配合量は下記の通りである。
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP-52スピンドルを使用して20℃の環境下で剪断速度5sec-1(回転数2.5rpm)にて実施例1のインキ粘度を測定したところ、3000mPa・sであった。
・着色剤(染料B:アミンと酸性染料との造塩染料) 2.0質量%
・着色剤(顔料分散体(顔料分20%)) 20.0質量%
・ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステル(イソブチルラノレート) 4.0質量%
・ポリビニルブチラール樹脂 6.0質量%
・アルコール溶剤(ベンジルアルコール) 28.1質量%
・グリコールエーテル溶剤(エチレングリコールモノフェニルエーテル)27.1質量%
・ポリビニルピロリドン 0.8質量%
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表に示した通りに変更した以外は、実施例1と同じ方法で、実施例2~14の筆記具用油性インキ組成物を得た。
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表に示した通りに変更した以外は、実施例1と同じ方法で、比較例1~2の筆記具用油性インキ組成物を得た。
得られたインキ組成物を以下の通りの方法で、試験および評価した。得られた結果は、表1および表2の通りである。
試験用ボールペンを用いて、手書きによる筆感を、官能試験により下記基準に従って評価した。
A++:非常に滑らかなもの
A+:滑らかであるもの
A:やや滑らかであるもの
B:やや重さを感じる部分もあるが、実用上問題のない滑らかさであるもの
C:重いもの
試験用ボールペンのチップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に30分放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定し、下記基準に従って評価した。
<筆記条件>筆記荷重70gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
A++:筆跡カスレの長さが、2.5mm未満であるもの
A+:筆跡カスレの長さが、2.5mm以上15mm未満であるもの
A:筆跡カスレの長さが、15mm以上、30mm未満であるもの
B:筆跡カスレの長さが、30mm以上、50mm未満であるもの
C:筆跡カスレの長さが、50mm以上であるもの
試験用ボールペンのチップ先端部を出したまま20℃、65%RHの環境下に24時間放置し、その後、走行試験で下記筆記条件にて筆記し、書き出しにおける筆跡カスレの長さを測定し、下記基準に従って評価した。
<筆記条件>筆記荷重200gf、筆記角度70°、筆記速度4m/minの条件で、走行試験機にて直線書きを行い評価した。
A++:筆跡カスレの長さが、2.5mm未満であるもの
A+:筆跡カスレの長さが、2.5mm以上10mm未満であるもの
A:筆跡カスレの長さが、10mm以上、15mm未満であるもの
B:筆跡カスレの長さが、15mm以上、25mm未満であるもの
C:筆跡カスレの長さが、25mm以上であるもの
試験用ボールペンを用いて、荷重200gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて、100m筆記試験後の得られた筆跡を観察し、下記基準に従って評価した。
A+:筆跡に線とびがなく、良好なもの
A:筆跡に線とびが若干あるが、良好なもの
B:筆跡に線とびがあるが、実用上問題のないもの
C:筆跡に線とびが多く、実用上懸念があるもの
試験用ボールペンを用いて、荷重200gf、筆記角度70°、4m/minの走行試験機にて、筆記試験後のボール座の摩耗量を測定し、下記基準に従って評価した。
A++:ボール座の摩耗が3μm未満のもの
A+:ボール座の摩耗が3μm以上、5μm未満のもの
A:ボール座の摩耗が5μm以上、10μm未満であるもの
B:ボール座の摩耗が10μm以上、20μm未満であるが、筆記可能であるもの
C:ボール座の摩耗がひどく、筆記不良になってしまうのもの
Claims (7)
- ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルと、着色剤と、有機溶剤と、を含んでなることを特徴とする、筆記具用油性インキ組成物であって、前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルがラノリン脂肪酸と分岐アルコールのエステル化合物であり、前記分岐アルコールが1価のアルコールである、筆記具用油性インキ組成物。
- 前記分岐アルコールの炭素数が3~30である、請求項1に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 前記ラノリン脂肪酸の分岐アルコールエステルの含有率が、前記インキ組成物の総質量を基準として、0.1~20質量% である、請求項1または2に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 20℃、剪断速度5sec-1におけるインキ粘度が、50000mPa・s以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、筆記具。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1~4のいずれか1項に記載の筆記具用油性インキ組成物を収容してなることを特徴とする、油性ボールペン。
- 前記ボールの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1~12nmである、請求項6に記載の油性ボールペン。
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