以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、部品実装装置、管理コンピュータの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図3、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図3における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図3における上下方向)が示される。
まず図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、フロアFに配置された3本の部品実装ラインL1~L3が有線または無線による通信ネットワーク2によって接続され、管理コンピュータ3によって管理される構成となっている。各部品実装ラインL1~L3は、後述するように部品実装装置を含む複数の製造装置を連結して構成され、基板に電子部品を実装した実装基板を製造する機能を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインL1は3本である必要はなく、1本、2本及び4本以上でも良い。
図1において、フロアFには、保管庫Sが設置されている。保管庫Sには、部品実装ラインL1~L3を構成する製造装置に補給される電子部品などの他、後述する部品実装ラインL1~L3において装置の検査又はメンテナンスなどの製造装置における作業に用いる治具J(図4参照)が保管されている。フロアFには、無人搬送車Vが配備されている。無人搬送車Vは無線通信部を有する搬送制御部Vcを備えており、管理コンピュータ3が備える管理側通信部57(図5参照)を介して、管理コンピュータ3との間で信号、情報を無線で送受信する。
無人搬送車Vは、管理コンピュータ3から送信される配送指示と、図示省略するフロアFに設置された走行路テープやビーコン、無人搬送車Vが内蔵する各種センサ(GPS、障害物センサ等)、カメラなどを使用して自ら収集する情報とに基づいて、自律してフロアFに設定された走行路を移動する。無人搬送車Vは、配送指示に従って保管庫Sから電子部品や治具Jを取り出して部品実装ラインL1~L3に配送し、又は部品実装ラインL1~L3から治具Jを受け取り、別の部品実装ラインL1~L3や保管庫Sに配送する。このように、無人搬送車Vは、部品実装ラインL1~L3へ治具Jを配送する配送手段である。
図1において、フロアF内では、作業者Wが各種作業を実行しており、作業者Wは携帯端末4を携帯している。携帯端末4は、管理コンピュータ3と無線で通信して情報の授受を行う端末側通信部5、表示機能と入力機能を有するタッチパネル6を備えている。携帯端末4は、管理コンピュータ3から受信した各種情報を表示処理してタッチパネル6に表示する。また、携帯端末4は、タッチパネル6から入力された各種情報などを管理コンピュータ3に送信する。
次に図2を参照して、部品実装ラインL1~L3の詳細な構成を説明する。部品実装ラインL1~L3は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1は、基板搬送方向の上流側(図2における左側)から順番に、基板供給装置M1、半田印刷装置M2、印刷検査装置M3、中間基板格納装置M4、部品実装装置M5~M8、実装検査装置M9、中間基板格納装置M10、リフロー装置M11、及び基板回収装置M12を備えている。
各装置は有線または無線による通信ネットワーク2によって管理コンピュータ3と接続されており、管理コンピュータ3との間でデータの送受信を行うことができる。各装置はベルトコンベア等を備える基板搬送機構を有しており、各装置の基板搬送機構で基板を上流側から下流側へ搬送しながら実装基板を製造する。各装置は管理コンピュータ3からの指示に従って基板搬送機構の搬送幅を変更することで、幅の異なる基板や治具Jを連続して搬送する機能を有する。
図2において、基板供給装置M1は、基板供給作業部(作業部)によって複数の基板を格納するラックより取り出した基板、あるいは上流側の基板搬入口Laから搬入された基板又は治具Jを下流側の装置に供給する基板供給作業を実行する機能を有する。半田印刷装置M2は、半田印刷作業部(作業部)によって実装対象の基板に半田を印刷する半田印刷作業を実行する機能を有する。すなわち、半田印刷装置M2は、基板に半田を塗布する印刷機である。部品実装装置M5~M8は、それぞれ部品実装作業部(作業部)によって基板に電子部品を搭載する部品実装作業を実行する機能を有する。
印刷検査装置M3は、半田検査カメラを含む印刷検査作業部(作業部)によって基板に印刷された半田の状態を検査する印刷検査作業を実行する機能を有する。実装検査装置M9は、部品検査カメラを含む搭載検査作業部(作業部)によって基板に搭載された電子部品の状態を検査する搭載検査作業を実行する機能を有する。すなわち、印刷検査装置M3は基板に印刷された半田の状態を検査する検査手段であり、実装検査装置M9は基板への電子部品の搭載結果を検査する検査手段である。検査手段(印刷検査装置M3、実装検査装置M9)による検査結果(印刷結果、搭載結果)は、管理コンピュータ3に送信される。なお検査手段は、異常を検知した時にのみ、管理コンピュータ3に検査結果を送信するようにしてもよい。
図2において、中間基板格納装置M4,M10は、それぞれ中間基板格納作業部(作業部)によって上流側の印刷検査装置M3又は実装検査装置M9によって検査された基板をラックに格納し、又は下流側の装置に搬出する中間基板格納作業を実行する機能を有する。リフロー装置M11は、装置内に搬入された基板を基板加熱部(作業部)によって加熱して、基板上の半田を硬化させ、基板の電極部と電子部品とを接合する基板加熱作業を実行する機能を有する。すなわち、リフロー装置M11は、基板を加熱するリフロー炉である。
リフロー装置M11は、予め記憶する情報に従って基板加熱部の温度を調整する他、管理コンピュータ3からの指示に従って基板加熱部の温度を変更する。基板回収装置M12は、基板回収作業部(作業部)によって上流側の装置から基板を受け取ってラックに格納し、又は上流側の装置から基板又は治具Jを受け取って下流側の基板搬出口Lbから搬出する基板回収作業を実行する機能を有する。
次に図3を参照して、部品実装装置M5~M8の詳細な構成を説明する。部品実装装置M5~M8は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M5について説明する。基台7の中央には、基板搬送機構8がX方向に設置されている。基板搬送機構8は、上流側から搬入された基板9及び治具JをX方向へ搬送し、以下に説明する実装ヘッドによる実装作業位置に位置決めして保持する。また、基板搬送機構8は、部品実装作業が完了した基板9を下流側に搬出する。すなわち、基板搬送機構8は、基板9及び製造装置の検査又はメンテナンスなどの部品実装ラインL1~L3の装置における所定の作業に用いる治具Jを搬送する搬送部である。
基板搬送機構8の両側方には、部品供給部10が設置されている。部品供給部10には、それぞれ複数のテープフィーダ11がX方向に並列に装着されている。テープフィーダ11は、電子部品を格納するポケットが形成されたキャリアテープを部品供給部10の外側から基板搬送機構8に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、実装ヘッドが電子部品をピックアップする部品取出し位置に電子部品を供給する。このように、部品供給部10は、電子部品を供給する。
図3において、基台7の上面におけるX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル12が配置されている。Y軸テーブル12には、同様にリニア機構を備えたビーム13がY方向に移動自在に結合されている。ビーム13には、実装ヘッド14がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド14は、複数(ここでは8つ)のノズルユニット14aを備えている。実装ヘッド14は、ノズルユニット14aの下端部に装着された吸着ノズルによって部品供給部10によって供給された電子部品を真空吸着して保持する。すなわち、実装ヘッド14は、部品供給部10から供給された電子部品を保持する部品保持部である。
Y軸テーブル12およびビーム13は、実装ヘッド14を水平方向(X方向、Y方向)に移動させる実装ヘッド移動機構15を構成する。実装ヘッド移動機構15および実装ヘッド14は、部品供給部10に装着されているテープフィーダ11の部品取出し位置から電子部品を吸着ノズルによって吸着してピックアップし、基板搬送機構8に保持された基板9の実装位置に搭載する部品実装作業を実行する。
図3において、ビーム13には、ビーム13の下面側に位置して実装ヘッド14とともに一体的に移動するヘッドカメラ16が装着されている。実装ヘッド14が移動することにより、ヘッドカメラ16は基板搬送機構8の実装作業位置に位置決めされた基板9の上方に移動して、基板9に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板9の位置を認識する。
部品供給部10と基板搬送機構8との間には、部品認識カメラ17が設置されている。部品認識カメラ17は、部品供給部10から電子部品を取り出した実装ヘッド14が上方を移動する際に、吸着ノズルに保持された電子部品を撮像して形状を認識する。実装ヘッド14による電子部品の基板9への部品実装作業では、ヘッドカメラ16による基板9の認識結果と部品認識カメラ17による電子部品の認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
図3において、部品実装装置M5は、基板搬送機構8の実装作業位置に位置決めされた治具Jが備える治具側通信部24(図4参照)と無線によりデータなどの送受信を行う無線通信部18を備えている。無線通信部18は、治具Jにデータや命令を送信すると共に、治具Jが備える各種センサの計測結果などを受信する。このように、部品実装装置M5は、部品供給部10と部品保持部(実装ヘッド14)と搬送部(基板搬送機構8)とを有し、搬送部により搬送された基板9に電子部品を搭載する。
部品実装装置M5の両側方で作業者Wが作業する位置には、それぞれ作業者Wが操作するタッチパネル19が設置されている。タッチパネル19は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者Wがデータ入力や部品実装装置M5の操作を行う。
次に図4を参照して、部品実装ラインL1~L3を構成する製造装置の検査(以下、「装置検査」と称する。)又はメンテナンスなどの部品実装ラインL1~L3の装置における作業に用いる治具Jについて説明する。図4は、部品実装装置M5~M8において使用される治具Jの一例である。部品実装装置M5~M8は、基板搬送機構8によって治具Jを実装作業位置に搬送して保持した状態で、所定の動作を実行することにより装置検査又はメンテナンスを実行する。以下、治具Jを使用した装置検査又はメンテナンスなどの部品実装ラインL1~L3の装置における作業を「治具作業」と総称する。また、部品実装装置M5~M8による治具作業のための所定の動作を「治具作業動作」と称する。
図4において、治具Jは、複数の基準位置マーク20が規則的に配置された実装面21、振動測定部22、荷重測定部23を備えている。実装面21は平坦な形状で上面に電子部品Dを搭載することができる。部品実装装置M5~M8による実装面21を使用した治具作業動作である搭載精度測定処理では、まず部品実装装置M5~M8は、ヘッドカメラ16で基準位置マーク20を撮像する。次いで部品実装装置M5~M8は、矩形の頂点に位置する4つの基準位置マーク20の重心を基準位置20aとして認識し、基準位置20aを実装目標として搭載精度測定用の電子部品Dを搭載する。
次いで部品実装装置M5~M8は、ヘッドカメラ16で基準位置マーク20と基準位置20aを実装目標として搭載された電子部品Dを撮像し、電子部品Dの搭載精度を算出する。部品実装装置M5~M8では、算出結果に基づいて、部品実装作業のための制御パラメータが校正(更新)される。このように、治具Jは、電子部品Dを搭載する基準位置20aを示す基準位置マーク20と電子部品Dを搭載する実装面21とを有している。また、部品実装装置M5~M8が備えるヘッドカメラ16は、実装面21に搭載された電子部品Dを認識して電子部品Dの搭載精度を測定する認識部である。
図4において、振動測定部22は、加速度センサなどを備えており、部品実装装置M5~M8における振動を測定する機能を有している。部品実装装置M5~M8による振動測定部22を使用した治具作業動作である振動測定処理では、部品実装装置M5~M8は部品実装作業を模擬して実装ヘッド14を移動させる。その間、振動測定部22は、実装ヘッド14の移動に伴って発生する振動を測定する。測定結果は、部品実装装置M5~M8における異常の有無などの判断に使用される。
荷重測定部23は、上面にロードセルなどを備えており、実装ヘッド14(部品保持部)に装着された吸着ノズルが保持する電子部品Dを基板9に搭載する時に電子部品Dに加わる荷重を測定する。部品実装装置M5~M8による荷重測定部23を使用した治具作業動作である荷重測定処理では、部品実装装置M5~M8は実装ヘッド14に装着された吸着ノズルを荷重測定部23に上方から下降させ、荷重測定部23はこの時に加わる荷重を測定する。部品実装装置M5~M8では、測定結果に基づいて、部品実装作業のための制御パラメータが校正(更新)される。
図4において、治具Jは、治具側通信部24と電池25を備えている。電池25は、振動測定部22、荷重測定部23、治具側通信部24に電力を供給する。治具側通信部24は振動測定部22及び荷重測定部23と接続されており、治具作業において振動測定部22又は荷重測定部23によって測定された測定結果などを、部品実装装置M5~M8の無線通信部18に無線で送信する。また治具側通信部24は、部品実装装置M5~M8から無線通信部18によって送信された命令を受信して振動測定部22又は荷重測定部23に伝達する。
なお、治具Jは、LEDや受光センサなどの光送受信手段を備えて、部品実装装置M5~M8が備える光源やヘッドカメラ16(光送受信手段)との間で、光の点滅によりデータの送受信を実行するようにしてもよい。
次に図5、図6を参照して、部品実装システム1の制御系の構成について説明する。部品実装システム1が備える部品実装ラインL1~L3は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1が備える装置は同様の構成をしており、以下、基板供給装置M1について説明する。
基板供給装置M1は、作業制御部30、作業部31、装置記憶部32、装置通信部33を備えている。作業制御部30は、装置記憶部32が記憶する部品実装関連データに基づいて基板搬送機構(搬送部)を備える作業部31を制御することにより、基板供給装置M1による部品供給作業を制御する。装置通信部33は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインL1~L3を構成する他の装置や管理コンピュータ3との間で信号、データの授受を行う。
なお、作業部31は、半田印刷装置M2では半田印刷作業部、印刷検査装置M3では印刷検査作業部、部品実装装置M5~M8では部品実装作業部、実装検査装置M9では実装検査作業部、中間基板格納装置M4,M10では中間基板格納作業部、リフロー装置M11では基板加熱作業部、基板回収装置M12では基板回収作業部である。また、作業制御部30は、半田印刷装置M2では半田印刷作業、印刷検査装置M3では印刷検査作業、部品実装装置M5~M8では部品実装作業、実装検査装置M9では実装検査作業、中間基板格納装置M4,M10では中間基板格納作業、リフロー装置M11では基板加熱作業、基板回収装置M12では基板回収作業を制御する。
ここで図6を参照して、部品実装装置M5~M8の制御系の構成について詳細に説明する。部品実装装置M5~M8は同様の構成をしており、以下、部品実装装置M5について説明する。部品実装装置M5が備える制御部40には、基板搬送機構8、部品供給部10、実装ヘッド14、実装ヘッド移動機構15、ヘッドカメラ16、部品認識カメラ17、無線通信部18、タッチパネル19、実装通信部34が接続されている。制御部40は、実装データ記憶部41、実装制御部42、搭載精度測定処理部43、振動測定処理部44、荷重測定処理部45を備えている。
実装データ記憶部41は記憶装置であり、部品データ41a、実装データ41b、稼動情報41cなどが記憶されている。部品データ41aには、電子部品Dの種類毎に、部品名(種類)、電子部品Dのサイズなどが含まれている。実装データ41bには、製造される実装基板の種類毎に、基板9に実装される電子部品Dの部品名(種類)、実装位置(XY座標)などが含まれている。稼動情報41cには、部品実装装置M5が部品実装作業を実行した累計時間である実装時間、部品実装装置M5が電子部品Dを基板9に装着した累計回数である実装回数を含む部品実装装置M5の稼動結果が含まれている。
図6において、実装通信部34は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインL1~L3を構成する他の装置や管理コンピュータ3との間で信号、データの授受を行う。実装制御部42は、基板搬送機構8、部品供給部10、実装ヘッド14、実装ヘッド移動機構15、ヘッドカメラ16、部品認識カメラ17を制御して、電子部品Dを基板9に実装させる部品実装作業を実行させる。
すなわち、実装制御部42は部品実装装置M5における作業制御部30であり、基板搬送機構8、部品供給部10、実装ヘッド14、実装ヘッド移動機構15、ヘッドカメラ16、部品認識カメラ17は、部品実装装置M5における作業部31である部品実装作業部35を構成する。また、実装データ記憶部41は部品実装装置M5における装置記憶部32であり、実装通信部34は部品実装装置M5における装置通信部33である。
図6において、搭載精度測定処理部43は、部品供給部10、実装ヘッド14、実装ヘッド移動機構15、ヘッドカメラ16(認識部)を制御して、基板搬送機構8に保持された治具Jを使用した搭載精度測定処理を実行させる。振動測定処理部44は、実装ヘッド移動機構15を制御して、基板搬送機構8に保持された治具Jを使用した振動測定処理を実行させる。荷重測定処理部45は、実装ヘッド14、実装ヘッド移動機構15を制御して、基板搬送機構8に保持された治具Jを使用した荷重測定処理を実行させる。搭載精度測定処理部43、振動測定処理部44、荷重測定処理部45は、それぞれ治具作業の結果を実装通信部34を介して管理コンピュータ3に送信する。
図5において、管理コンピュータ3は、管理制御部50、管理記憶部51、治具搬送決定部52、治具搬送指示部53、治具作業指示部54、稼動情報取得部55、検査結果取得部56、管理側通信部57、入力部58、表示部59、通信部60を備えている。入力部58は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部59は液晶パネルなどの表示装置であり、入力部58による操作のための操作画面などの各種画面の他、各種情報を表示する。通信部60は通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインL1~L3を構成する装置との間で信号、データの授受を行う。
管理制御部50はCPUなどの演算装置であり、管理記憶部51が記憶する情報に基づいて部品実装システム1を管理する。管理記憶部51は記憶装置であり、部品実装データの他、治具情報51a、稼動情報51b、検査結果情報51c、搬送処理情報51dなどを記憶する。治具情報51aには、部品実装ラインL1~L3で使用される治具J毎に、治具Jを特定する情報(治具番号)、治具Jのサイズ、治具Jで実施可能な治具作業、フロアFにおける治具Jの所在などが含まれる。
図5において、稼動情報取得部55は、部品実装ラインL1~L3を構成する部品実装装置M5~M8を含む各装置の稼動情報(部品実装装置M5~M8の稼動情報41cなど)を取得して、稼動情報51bとして管理記憶部51に記憶させる。検査結果取得部56は、部品実装ラインL1~L3を構成する印刷検査装置M3や実装検査装置M9などの検査手段による検査結果を取得して、検査結果情報51cとして管理記憶部51に記憶させる。
治具搬送決定部52は、内部処理部として稼動情報処理部52a、検査結果処理部52bを備えている。稼動情報処理部52aは、稼動情報51bに含まれる各装置の実装時間又は実装回数の前回の治具作業からの増加分が、所定の閾値に到達したか否かを判断する。閾値は、フロアFに配置されている複数の部品実装ラインL1~L3を構成する複数の装置が、定期的な治具作業の期限を超過する前に治具作業が完了できる値に設定される。
稼動情報処理部52aは、閾値に到達した装置がある場合、その装置での治具作業の内容を決定する。次いで稼動情報処理部52aは、治具情報51aに含まれる治具Jの所在などに基づいて、部品実装ラインL1~L3に配送する治具Jを決定し、その治具Jの配送順序を決定する。稼動情報処理部52aは、決定した治具Jの治具番号、治具作業の対象となる装置(以下「対象装置」と称する。)、対象装置での治具作業の内容、治具Jの配送順序などを搬送処理情報51dとして管理記憶部51に記憶させる。
図5において、検査結果処理部52bは、検査結果情報51cに含まれる検査結果が異常の場合、異常の原因となる作業を実行した装置を特定する。次いで検査結果処理部52bは、異常の原因を調査するにあたり、治具Jを使用した治具作業が必要か、治具Jを使用せずに調査(装置検査)が可能かを判断する。
検査結果処理部52bは、治具Jを使用せずに調査が可能と判断した場合、異常の原因となる作業を実行した装置に調査を指示する。検査結果処理部52bは、治具Jを使用した治具作業が必要と判断した場合、治具作業の対象となる装置(対象装置)、対象装置での治具作業の内容、対象装置に搬送する治具J(治具番号)を決定して、搬送処理情報51dとして管理記憶部51に記憶させる。
このように、稼動情報処理部52a(治具搬送決定部52)は、稼動情報51bに基づいて、治具作業の対象となる対象装置、対象装置での治具作業の内容、複数の部品実装ラインL1~L3に治具Jを配送する順序を決定する。また、検査結果処理部52b(治具搬送決定部52)は、検査結果情報51cに含まれる検査結果に基づいて、異常がある部品実装ラインL1~L3を構成する部品実装装置M5~M8を含む装置(対象装置)に治具Jを搬送するように決定する。すなわち、治具搬送決定部52は、治具Jの搬送処理を決定する。
図5において、治具搬送指示部53は、搬送処理情報51dに基づいて、無人搬送車V(配送手段)又はフロアFで作業を行っている作業者Wに、搬送処理を指示する。より具体的には、治具搬送指示部53は、保管庫S又は治具作業が終了した部品実装ラインL1~L3から治具Jを取り出し、決定された部品実装ラインL1~L3の基板供給装置M1の基板搬入口Laに配送するように指示する。また、治具搬送指示部53は、治具作業が終了した治具Jを部品実装ラインL1~L3の基板回収装置M12の基板搬出口Lb、中間基板格納装置M4,M10などから回収するように指示する。
無人搬送車Vに指示する場合、治具搬送指示部53は、管理側通信部57を介して無人搬送車Vの搬送制御部Vcに指示を送信する。作業者Wに指示する場合、治具搬送指示部53は、管理側通信部57を介して作業者Wが携帯する携帯端末4の端末側通信部5に指示を送信する。これにより、指示内容が携帯端末4のタッチパネル6に表示される。
このように、治具搬送指示部53は、配送手段(無人搬送車V)又は携帯端末4に、治具Jを配送するように決定された部品実装ラインL1~L3、又は異常がある装置(部品実装装置M5~M8など)を含む部品実装ラインL1~L3への治具Jの配送を指示する。また、治具搬送指示部53は、部品実装ラインL1~L3からの治具Jの回収を指示する。すなわち、治具搬送指示部53は、搬送処理を指示する。配送手段によって治具Jを配送することで、フロアF内に複数の部品実装ラインL1~L3が配置されている場合でも、自動的に治具作業を実行することができてフロアF内の省人化が図れる。
また、治具搬送指示部53は、対象装置を含む部品実装ラインL1~L3の各装置に、治具Jを基板供給装置M1の基板搬入口Laから対象装置まで順次搬送するように指示する。また、治具搬送指示部53は、部品実装ラインL1~L3における全ての対象装置での治具作業が終了すると、部品実装ラインL1~L3の各装置に、治具Jを基板回収装置M12の基板搬出口Lbまで順次搬送するように指示する。指示を受けた各装置は、治具Jのサイズに合わせて搬送部の搬送幅を変更し、実装基板を製造するための作業を行うことなく下流側の装置に治具Jを搬出する(通過させる)。
また、治具搬送指示部53は、熱に弱い治具Jを基板回収装置M12の基板搬出口Lbから搬出させる場合、リフロー装置M11に基板加熱部の温度を下げてから治具Jを搬送する(通過させる)ように指示する。あるいは、治具搬送指示部53は、中間基板格納装置M4又は中間基板格納装置M10に、治具作業が終了した治具Jを回収するように指示する。すなわち、治具搬送指示部53は、治具Jの部品実装ラインL1~L3への配送と、部品実装ラインL1~L3内の搬送を含む搬送処理を指示する。
図5において、治具作業指示部54は、搬送処理情報51dに基づいて、対象装置に治具Jを使用した治具作業を指示する。指示を受けた装置は、治具Jが搬送されると、治具Jを使用した治具作業動作(搭載精度測定処理、振動測定処理、荷重測定処理など)を実行する。このように、管理コンピュータ3は、治具搬送決定部52(稼動情報処理部52a、検査結果処理部52b)と、治具搬送指示部53と、治具作業指示部54とを有する管理装置である。
次に図7のフローに沿って、部品実装装置M5~M8を含む部品実装ラインL1~L3を備える部品実装システム1における治具Jの搬送を管理する管理コンピュータ3(管理装置)による管理方法の第1の実施例である第1の管理方法について説明する。まず、稼動情報取得部55は、フロアFに配置される複数の部品実装ラインL1~L3の部品実装装置M5~M8を含む各装置の稼動情報を取得して稼動情報51bとして管理記憶部51に記憶させる(ST1:稼動情報取得工程)。
次いで稼動情報処理部52a(治具搬送決定部52)は、稼動情報51bに含まれる各装置の実装時間又は実装回数の前回の治具作業からの増加分が、所定の閾値に到達したか否かを判断する(ST2:閾値到達判断工程)。閾値に到達していない場合(ST2においてNo)、稼動情報取得工程(ST1)を繰り返し実行する。閾値に到達した場合(ST2においてYes)、稼動情報処理部52aは、治具作業の対象となる対象装置、治具作業の内容、治具Jの配送順序を決定する(ST3:第1治具搬送決定工程)。すなわち、稼動情報51bに基づいて、複数の部品実装ラインL1~L3に治具Jを配送する順序が決定される。
図7において、次いで治具搬送指示部53は、無人搬送車V(配送手段)又は携帯端末4に、決定された部品実装ラインL1~L3への治具Jの配送を指示する(ST4:治具配送指示工程)。すなわち、最初に治具Jを配送するように決定された部品実装ラインL1~L3への治具Jの配送が指示される。指示された無人搬送車V又は携帯端末4を携帯する作業者Wは、治具Jを対象装置を含む部品実装ラインL1~L3の基板供給装置M1の基板搬入口Laまで配送する。
次いで治具搬送指示部53は、対象装置を含む部品実装ラインL1~L3の各装置に、治具Jを対象装置まで搬送するように指示する(ST5:ライン内搬送指示工程)。指示された各装置は、治具Jを対象装置まで順次搬送する。次いで治具作業指示部54は、対象装置に治具作業を指示する(ST6:治具作業指示工程)。指示された対象装置は、治具Jを使用した治具作業を実行して結果を管理コンピュータ3に送信する。
指示された対象装置での治具作業が終了したが、その部品実装ラインL1~L3の他の装置での治具作業が予定されている場合(ST7においてYes)、ライン内搬送指示工程(ST5)、治具作業指示工程(ST6)が繰り返し実行され、他の装置での治具作業が実行される。例えば、部品実装ラインL1の部品実装装置M5と部品実装装置M8の治具作業が予定されている場合、治具Jが部品実装装置M5に搬送されて治具作業が実行された後、部品実装装置M6,M7を通過した治具Jが部品実装装置M8に搬送されて治具作業が実行される。
図7において、その部品実装ラインL1~L3での治具作業が全て終了すると(ST7においてNo)、治具搬送指示部53は、その部品実装ラインL1~L3の各装置に、治具Jを基板回収装置M12の基板搬出口Lbまで搬送するように指示する(ST8:治具搬出指示工程)。他の部品実装ラインL1~L3でその治具Jを使用した治具作業が予定されている場合(ST9においてYes)、治具配送指示工程(ST4)に戻ってライン内搬送指示工程(ST5)、治具作業指示工程(ST6)、治具搬出指示工程(ST8)が実行される。すなわち、他の部品実装ラインL1~L3にその治具Jが配送されて治具作業が実行される。
全ての部品実装ラインL1~L3でその治具Jを使用した治具作業が終了すると(ST9においてNo)、治具搬送指示部53は、無人搬送車V(配送手段)又は携帯端末4に、治具Jの回収を指示する(ST10:治具回収指示工程)。指示された無人搬送車V又は携帯端末4を携帯する作業者Wは、基板回収装置M12の基板搬出口Lbに搬出された治具Jを回収する。
このように、第1の管理方法では、稼動情報51bに含まれる実装時間、実装回数などの各装置の稼動実績に基づいて各装置の定期的な治具作業(装置検査、メンテナンス)を決定し、複数の部品実装ラインL1~L3に共通の治具Jを順に配送し、治具作業が必要な対象装置で治具作業を実行することにより、部品実装ラインL1~L3において効率的に治具作業を実行することができる。また、治具配送指示工程(ST4)、ライン内搬送指示工程(ST5)、治具搬出指示工程(ST8)、治具回収指示工程(ST10)は、搬送処理を指示する治具搬送指示工程である。
次に図8のフローに沿って、管理コンピュータ3(管理装置)による管理方法の第2の実施例である第2の管理方法について説明する。第2の管理方法は、検査手段(印刷検査装置M3、実装検査装置M9)の検査結果に基づいて、治具Jの配送を指示するところが第1の管理方法と異なる。以下、第1の管理方法と同じ工程には同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
図8において、まず、検査結果取得部56は、部品実装ラインL1~L3が備える検査手段(印刷検査装置M3、実装検査装置M9)による検査結果を取得して、検査結果情報51cとして管理記憶部51に記憶させる(ST21:検査結果取得工程)。次いで検査結果処理部52b(治具搬送決定部52)は、取得した検査結果が正常か否かを判断する(ST22:検査結果判断工程)。検査結果が正常な場合(ST22においてYes)、検査結果取得工程(ST21)を繰り返し実行する。すなわち、逐次、検査結果が取得される。
検査結果が異常な場合(ST22においてNo)、検査結果処理部52bは、異常の原因となる作業を実行した装置を特定し、治具Jを使用せずに異常の原因を調査可能か否かを判断する(ST23)。治具Jを使用せずに調査可能な場合(ST23においてYes)、検査結果処理部52bは、異常の原因となる作業を実行した装置に調査を指示する(ST24)。治具Jを使用せずに調査不可能な場合(ST23においてNo)、フロアFにある治具Jによる治具作業で異常の原因を調査可能か否かを判断する(ST25)。
図8において、フロアFにある治具Jでは調査不可能な場合(ST25においてNo)、検査結果処理部52bは、管理コンピュータ3の表示部59に検査結果が異常である旨を報知させ(ST26)、作業者Wの判断を待つ。フロアFにある治具Jで調査可能な場合(ST25においてYes)、検査結果処理部52bは、治具作業の対象となる対象装置、治具作業の内容、搬送する治具Jを決定する(ST27:第2治具搬送決定工程)。すなわち、検査結果に基づいて、異常がある装置(部品実装装置M5~M8など)に治具Jが搬送されるように決定される。
次いで治具配送指示工程(ST4)が実行される。すなわち、異常がある装置(部品実装装置M5~M8など)を含む部品実装ラインL1~L3への治具Jの配送が指示される。次いでライン内搬送指示工程(ST5)、治具作業指示工程(ST6)が実行され、その部品実装ラインL1~L3での治具作業が全て終了すると(ST7においてNo)、治具搬出指示工程(ST8)、治具回収指示工程(ST10)が実行されて、治具Jが回収される。
このように、第2の管理方法では、検査手段(印刷検査装置M3、実装検査装置M9)による検査結果に基づいて装置の異常を検知し、異常の原因となる作業を実行した装置を特定し、特定された対象装置に治具Jを搬送して治具作業(装置検査、メンテナンス)を実行することにより、部品実装ラインL1~L3において効率的に治具作業を実行することができる。
上記のように、第1の管理方法または第2の管理方法における第1治具搬送決定工程(ST3)または第2治具搬送決定工程(ST27)は、治具Jの搬送処理を決定する治具搬送決定工程である。また、第1の管理方法または第2の管理方法における治具搬送指示工程(ST4、ST5、ST8、ST10)において、搬送処理が指示される。すなわち、本実施の形態の管理方法には、治具搬送決定工程と治具搬送指示工程とが含まれる。これによって、部品実装ラインL1~L3において効率的に治具Jを搬送して装置検査やメンテナンス(治具作業)を実行することができる。
上記説明したように、本実施の形態の部品実装システム1は、基板9に電子部品Dを搭載する部品実装装置M5~M8を含む部品実装ラインL1~L3と、部品実装ラインL1~L3を管理する管理装置(管理コンピュータ3)とを備えている。そして、部品実装装置M5~M8は、電子部品Dを供給する部品供給部10と、部品供給部10から供給された電子部品Dを保持する部品保持部(実装ヘッド14)と、基板9及び部品実装ラインL1~L3の製造装置における所定の作業に用いる治具Jを搬送する搬送部(基板搬送機構8)と、を有している。管理装置は、治具Jの搬送処理を決定する治具搬送決定部52と、搬送処理を指示する治具搬送指示部53と、を有している。これによって、部品実装ラインL1~L3において効率的に治具Jを搬送して装置検査やメンテナンス(治具作業)を実行することができる。
なお、上記の治具Jは、実装面21、振動測定部22、荷重測定部23が集合して備えられて、部品実装装置M5~M8における治具作業に対応するものであったが、治具Jはこれに限定されることはない。例えば、治具Jは、実装面21、振動測定部22、荷重測定部23をそれぞれ独立に備えるものであっても、これらのうち2つを集合して備えるものであってもよい。また、治具Jは、部品実装装置M5~M8が備える実装ヘッド14(部品保持部)に装着された吸着ノズルなどをクリーニングするクリーニング手段を有してもよい。その場合、部品実装装置M5~M8は吸着ノズルをクリーニング手段にアクセスさせるなどの治具作業動作を実行し、クリーニング手段が実装ヘッド14の吸着ノズルをクリーニングする。
また、治具Jは、半田印刷装置M2(印刷機)においてマスクのパターン孔に半田を押し込むスキージの荷重を測定するスキージ荷重測定部を有してもよい。その場合、半田印刷装置M2はスキージをスキージ荷重測定部に下降させる治具作業動作を実行し、スキージ荷重測定部がスキージの荷重を測定する。また、治具Jは、リフロー装置M11(リフロー炉)の基板加熱部の温度を測定する温度測定部を有してもよい。その場合、リフロー装置M11は基板9の代わりに治具Jを基板加熱部に搬入する治具作業動作を実行し、温度測定部が基板加熱部の温度を測定する。すなわち、治具Jは、印刷機(半田印刷装置M2)とリフロー炉(リフロー装置M11)の少なくとも一方における治具作業に用いられるものであってもよい。