JP7145600B2 - 非水電解質二次電池用電極 - Google Patents
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Description
図1は、本発明の一実施形態である双極型二次電池を模式的に表した断面図である。図1に示す双極型二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、電池外装体であるラミネートフィルム29の内部に封止された構造を有する。
集電体は、正極活物質層と接する一方の面から、負極活物質層と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体を構成する材料に特に制限はないが、例えば、金属や、導電性を有する樹脂が採用されうる。
電極活物質層(正極活物質層、負極活物質層)は、電極活物質(正極活物質または負極活物質)と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダとを含む。また、電極活物質層は、必要に応じて、導電助剤、電解液、イオン伝導性ポリマー等を含みうる。なお、本発明において、電極活物質は、被覆用樹脂および導電助剤を含む被覆剤に被覆されている形態であってもよい。
正極活物質としては、例えば、LiMn2O4、LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)O2およびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属Mの1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、Li4Ti5O12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、上述の被覆用樹脂は特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有している。したがって、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池において、電極活物質層は、導電助剤をさらに含むことが好ましい。導電助剤は、電極活物質層中で電子伝導パス(導電通路)を形成する機能を有する。このような電子伝導パスが電極活物質層中に形成されると、電池の内部抵抗が低減し、高レートでの出力特性向上に寄与しうる。特に、導電助剤の少なくとも一部が、電極活物質層の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成している(本実施形態では、電極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成している)ことが好ましい。このような形態を有することで、電極活物質層中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減されるため、電池の高レートでの出力特性をより一層向上しうる。なお、導電助剤の少なくとも一部が、電極活物質層の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成している(本実施形態では、電極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成している)か否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて電極活物質層の断面を観察することにより確認することができる。
被覆剤は、被覆用樹脂および必要に応じて導電助剤を含む。被覆剤が電極活物質の表面に存在することで、電極活物質層において、電極活物質表面から電解質層へのイオン伝導パスおよび電極活物質表面から集電体への電子伝導パスを確保することができる。
被覆用樹脂は、電極活物質の表面に存在し、電解液を吸液して保持する機能を有する。これにより、電極活物質層において、電極活物質表面から電解質層へのイオン伝導パスを形成することができる。
ポリウレタン樹脂は、柔軟性が高く(後述の引張破断伸び率が大きく)、また、ウレタン結合どうしは強い水素結合を形成しうることから、これを被覆用樹脂として用いることで、柔軟性に優れつつも、構造的に安定した被覆剤を構成することが可能となる。
ポリビニル系樹脂は、柔軟性が高い(後述の引張破断伸び率が大きい)ことから、これを被覆用樹脂として用いることで、充放電反応に伴う活物質の体積変化を緩和し、活物質層の膨張を抑制することができる。
上記モノオールとしては、(i)脂肪族モノオール[メタノール、エタノール、n-及びi-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、n-オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等]、(ii)脂環式モノオール[シクロヘキシルアルコール等]、(iii)芳香脂肪族モノオール[ベンジルアルコール等]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(b33)窒素含有ビニル化合物
(b33-1)アミド基含有ビニル化合物
(i)炭素数3~30の(メタ)アクリルアミド化合物、例えばN,N-ジアルキル(炭素数1~6)もしくはジアラルキル(炭素数7~15)(メタ)アクリルアミド[N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド等]、ジアセトンアクリルアミド
(ii)上記(メタ)アクリルアミド化合物を除く、炭素数4~20のアミド基含有ビニル化合物、例えばN-メチル-N-ビニルアセトアミド、環状アミド(ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えば、N-ビニルピロリドン等))
(b33-2)(メタ)アクリレート化合物
(i)ジアルキル(炭素数1~4)アミノアルキル(炭素数1~4)(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]
(ii)4級アンモニウム基含有(メタ)アクリレート〔3級アミノ基含有(メタ)アクリレート[N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]の4級化物(前記の4級化剤を用いて4級化したもの)等〕
(b33-3)複素環含有ビニル化合物
ピリジン化合物(炭素数7~14、例えば2-および4-ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(炭素数5~12、例えばN-ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニルピロール)、ピロリドン化合物(炭素数6~13、例えばN-ビニル-2-ピロリドン)
(b33-4)ニトリル基含有ビニル化合物
炭素数3~15のニトリル基含有ビニル化合物、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(炭素数1~4)アクリレート
(b33-5)その他ビニル化合物
ニトロ基含有ビニル化合物(炭素数8~16、例えばニトロスチレン)等
(b34)ビニル炭化水素
(b34-1)脂肪族ビニル炭化水素
炭素数2~18またはそれ以上のオレフィン[エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセンなど]、炭素数4~10またはそれ以上のジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエンなど]等
(b34-2)脂環式ビニル炭化水素
炭素数4~18またはそれ以上の環状不飽和化合物、例えばシクロアルケン(例えばシクロヘキセン)、(ジ)シクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン]、テルペン(例えばピネン、リモネンおよびインデン)
(b34-3)芳香族ビニル炭化水素
炭素数8~20またはそれ以上の芳香族不飽和化合物、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン
(b35)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、不飽和ジカルボン酸ジエステル
(b35-1)ビニルエステル
脂肪族ビニルエステル[炭素数4~15、例えば脂肪族カルボン酸(モノ-およびジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)]、芳香族ビニルエステル[炭素数9~20、例えば芳香族カルボン酸(モノ-およびジカルボン酸)のアルケニルエステル(例えばビニルベンゾエート、ジアリルフタレート、メチル-4-ビニルベンゾエート)、脂肪族カルボン酸の芳香環含有エステル(例えばアセトキシスチレン)]
(b35-2)ビニルエーテル
脂肪族ビニルエーテル〔炭素数3~15、例えばビニルアルキル(炭素数1~10)エーテル[ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2-エチルヘキシルエーテルなど]、ビニルアルコキシ(炭素数1~6)アルキル(炭素数1~4)エーテル[ビニル-2-メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、3,4-ジヒドロ-1,2-ピラン、2-ブトキシ-2’-ビニロキシジエチルエーテル、ビニル-2-エチルメルカプトエチルエーテル等]、ポリ(2~4)(メタ)アリロキシアルカン(炭素数2~6)[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]〕
芳香族ビニルエーテル(炭素数8~20、例えばビニルフェニルエーテル、フェノキシスチレン)
(b35-3)ビニルケトン
脂肪族ビニルケトン(炭素数4~25、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン)
芳香族ビニルケトン(炭素数9~21、例えばビニルフェニルケトン)
(b35-4)不飽和ジカルボン酸ジエステル
炭素数4~34の不飽和ジカルボン酸ジエステル、例えばジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数1~22の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基)
上記(b3)として例示したもののうち電解液の吸液及び耐電圧の観点から好ましいのは、(b31)、(b32)および(b33)であり、さらに好ましいのは、(b31)のうちのメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートである。
溶媒:オルトジクロロベンゼン
標準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列(ポリマーラボラトリーズ社製)
カラム温度:135℃。
被覆電極活物質の製造方法は、特に制限されないが、例えば以下の方法が挙げられる。まず電極活物質を万能混合機に入れて10~500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂および溶媒を含む溶液(被覆用樹脂溶液)を1~90分間かけて滴下混合する。この際の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好適に使用できる。その後、さらに導電助剤を添加し、混合する。そして、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に、10~150分間保持することにより、被覆電極活物質粒子を得ることができる。
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
本発明の一形態に係る非水電解質二次電池において、電極活物質層は、電解液をさらに含むことが好ましい。たとえば、後述の方法で電極活物質層を製造する際、電極活物質スラリーの分散媒として電解液を使用することで、当該電解液は電極活物質層に含まれうる。層に含まれる電解液は、電池の電解液として利用できるため、除去する必要がない。
なお、本形態の双極型二次電池においては、電極活物質層の構成部材として、上記の電極活物質や、必要に応じて用いられる被覆剤(被覆用樹脂、導電助剤)、電解液、イオン伝導性ポリマー以外の部材を適宜使用しても構わない。ここで、電池のエネルギー密度を向上させるという観点からは、充放電反応の進行にあまり寄与しない部材を電極活物質層に含有させないほうが好ましい。例えば、電極活物質とその他の部材とを結着させ、電極活物質層の構造を維持するために添加されるバインダの含有量は、体積エネルギー密度の向上の観点からは少ないことが好ましい。また、バインダの含有量が多くなる場合、高レート時における放電容量を損なう恐れもある。ただし、本発明者らの検討によれば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダを結晶化していない状態で所定量含むと、電池の形状維持、およびサイクル耐久性の向上という観点から、本発明の課題を解決できることが判明した。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダを結晶化していない状態で、電極活物質層の総体積に対して、0.5~3.3体積%の量で、好ましくは1.0~2.5体積%の量で、さらに好ましくは1.5~2.0体積%の量で含むことで、本発明の課題を解決できることが判明した。前記ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダを0.5体積%以上で含むことで、バインダをほとんどまたはまったく含まない場合と比較して、電池の液量係数の値を大きくしたとしても電極活物質層が崩壊するのを効果的に抑制することができるという利点がある。言い換えれば、バインダをほとんどまたはまったく含まない場合に電池の液量係数の値を単に大きくしてしまうと、電極活物質層の形状を維持することができず、電極活物質層は崩れてしまうのである。また、前記ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダを3.3体積%以下で含むことで、高レート時の放電容量を損なうことなく、電極活物質層の形状保持が可能になる。
電極活物質層の空隙率は、下記式(1)に従って算出する。なお、前記空隙内の一部には電解液が存在していてもよい。
式(1):空隙率(%)=100-電極活物質層の固形分占有体積率(%)
ここで、電極活物質層の「固形分占有体積率(%)」は、下記式(2)より算出される。
式(2):固形分占有体積率(%)=(固形材料体積(cm3)/電極活物質層体積(cm3))×100
なお、電極活物質層体積は電極の厚みと塗布面積から算出する。また、固形材料体積は以下手順により求める。
(a)電極活物質層用スラリーに含まれる各材料の添加量を秤量する。
(b)集電体表面に電極活物質層用スラリーを塗布した後、集電体および塗膜の重さを秤量する。
(c)塗布後のスラリーをプレスし、プレス後の集電体および塗膜の重さを秤量する。
(d)プレス時に吸出した電解液量を「(c)で得られた値-(b)で得られた値」より算出する。
(e)(a)、(c)、(d)の値より、プレス後の電極活物質層中の各材料の重量を算出する。(f)(e)で算出した各材料の重量および各材料の密度から、電極活物質層中の各材料の体積を算出する。
(g)(f)で算出した各材料の体積のうち、固体材料の体積のみを足し合わせることにより固形材料体積を算出する。
電極活物質層の度が上述した下限値以上の値であれば、十分なエネルギー密度を有する電池を得ることができる。一方、電極活物質層の密度が上述した上限値以下の値であれば、上述の負極活物質層の空隙率の低下を防止することができる。空隙率の低下を抑えれば空隙を満たす電解液が十分に確保され、負極活物質層におけるイオン移動抵抗の増大が防止できる。その結果、電池の出力特性(特に高レートでの出力特性)の低下も抑制されうる。なお、本明細書において、負極活物質層の密度は、以下の方法により測定されうる。同じ値が得られるのであれば、他の方法によって測定された値を用いてもよい。
活物質層の密度は、下記式(3)に従って算出する。
式(3):電極密度(g/cm3)=固体材料重量(g)÷電極体積(cm3)
なお、固体材料重量は、上記(e)で得られたプレス後の電極中の各材料の重量のうち、固体材料の重量のみを足し合わせることにより算出する。電極体積は電極の厚みと塗布面積から算出する。
本形態に係る非水電解質二次電池用電極の製造方法は、特に制限されないが、電極活物質スラリーを調製し、前記電極活物質スラリーを前記集電体の表面に塗工することにより塗膜を形成することを含む方法が好ましい。
電極活物質スラリーを調製する際には、まず、電極活物質と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダと、前記ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が溶解しない第1の溶媒と、前記ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が溶解しうる第2の溶媒と、を混合する。これにより、分散液を調製する。
第1の溶媒は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が溶解しない溶媒である。本明細書において、ある固形分がある溶媒に「溶解しない」とは、当該固形分の当該溶媒に対する溶解度(25℃)が0.1g/100g溶媒未満であることを意味する。
第2の溶媒は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が溶解しうる溶媒である。本明細書において、ある固形分がある溶媒に「溶解しうる」とは、当該固形分の当該溶媒に対する溶解度(25℃)が0.1g/100g溶媒以上であることを意味する。
電極活物質スラリーは、その他の成分を含んでもよい。例えば、電極活物質層の構成成分として上述した成分(導電助剤、電解液、イオン伝導性ポリマーなど)を用いる場合には、本工程において分散液を調製する際に同時に含ませることができる。これらの成分の具体的な構成については上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
続いて、上記工程において得られた分散液から第2の溶媒を除去する。これにより、電極活物質スラリーを調製する。なお、第2の溶媒を除去する工程は、上述した分散液の調製の後、一定時間をおいた後に行ってもよいし、分散液の調製中またはその直後から連続的に行ってもよい。
塗工工程では、上記で得られた電極活物質スラリーを集電体の表面に塗工して塗膜を形成する。この塗膜は、最終的に電極活物質層を構成することとなる。
以上、本発明の好ましい実施形態に係る双極型二次電池の構成要素のうち、電極およびその製造方法について詳細に説明したが、その他の構成要素については、従来公知の知見が適宜参照されうる。
本形態の電解質層に使用される電解質は、特に制限はなく、液体電解質、ゲルポリマー電解質、またはイオン液体電解質が制限なく用いられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保されうる。
集電板(25、27)を構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板25と負極集電板27とでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
また、図示は省略するが、集電体11と集電板(25、27)との間を正極リードや負極リードを介して電気的に接続してもよい。正極および負極リードの構成材料としては、公知のリチウムイオン二次電池において用いられる材料が同様に採用されうる。なお、外装から取り出された部分は、周辺機器や配線などに接触して漏電したりして製品(例えば、自動車部品、特に電子機器等)に影響を与えないように、耐熱絶縁性の熱収縮チューブなどにより被覆することが好ましい。
シール部(絶縁層)は、集電体同士の接触や単電池層の端部における短絡を防止する機能を有する。シール部を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)、等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いてもよく、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いてもよい。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが好ましい。
電池外装体としては、公知の金属缶ケースを用いることができるほか、図1に示すように発電要素を覆うことができる、アルミニウムを含むラミネートフィルム29を用いた袋状のケースが用いられうる。該ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムが望ましい。また、外部から掛かる発電要素への群圧を容易に調整することができ、所望の電解液層厚みへと調整容易であることから、外装体はアルミネートラミネートがより好ましい。
図3は、二次電池の代表的な実施形態である扁平な双極型リチウムイオン二次電池の外観を表した斜視図である。
一般的な電気自動車では、一回の充電による走行距離(航続距離)は100kmが市場要求である。かような航続距離を考慮すると、電池の体積エネルギー密度は157Wh/L以上であることが好ましく、かつ定格容量は20Wh以上であることが好ましい。
組電池は、電池を複数個接続して構成した物である。詳しくは少なくとも2つ以上用いて、直列化あるいは並列化あるいはその両方で構成されるものである。直列、並列化することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。
本形態の非水電解質二次電池は、長期使用しても放電容量が維持され、サイクル特性が良好である。さらに、体積エネルギー密度が高い。電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池車やハイブリッド燃料電池自動車などの車両用途においては、電気・携帯電子機器用途と比較して、高容量、大型化が求められるとともに、長寿命化が必要となる。したがって、上記非水電解質二次電池は、車両用の電源として、例えば、車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
<PVdF溶液の調製>
外気および水分が混入しないよう、密閉ボトルにポリフッ化ビニリデン(PVdF,重量平均分子量380,000)5gおよび炭酸ジメチル(DMC)95gを入れ、60℃で30分撹拌し、5質量%のポリフッ化ビニリデン(PVdF)溶液を調製した。
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPF6を1mol/Lの割合で溶解させて、電解液を得た。
正極活物質であるLiNi0.8Co0.15Al0.05O2粉末93.9部、導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)5.8部、および導電助剤である炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)2.9部からなる材料1を、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
負極活物質であるハードカーボン(難黒鉛化炭素)粉末((株)クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパン製 カーボトロン(登録商標)PS(F))94部、導電助剤であるアセチレンブラック[デンカ(株)製 デンカブラック(登録商標)](平均粒子径(一次粒子径):0.036μm)4部、および導電助剤である炭素繊維(大阪ガスケミカル(株)製 ドナカーボ・ミルド S-243:平均繊維長500μm、平均繊維径13μm:電気伝導度200mS/cm)2部からなる材料2を、120℃、100mmHgの減圧下で16時間乾燥させ、含有水分の除去を行った。
正極集電体としてのカーボンコートアルミニウム箔(昭和電工株式会社製、カーボン層の厚さ1μm、アルミニウム層の厚さ20μm、サイズ61×72mm)を準備し、スラリー塗布部のサイズが29×40mmとなるようにPETシートを用いてマスクした。この正極集電体上に、上記で調製した正極活物質スラリー1を、アプリケーターを用いて、アプリケーターのギャップが270μmとなるように設定して塗布した(塗布工程)。塗布後のスラリーの表面にアラミドシート(日本バイリーン株式会社製、厚さ45μm)を配置し、ハイプレッシャージャッキ J-1(アズワン株式会社製)を用いてプレス圧35MPaでプレスすることで(プレス工程)、正極活物質層を得た。なお、当該正極活物質層は、厚さ280μm、空隙率45%、密度2.35g/cm3であった。また、得られた正極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認したところ、導電助剤(炭素繊維)の少なくとも一部が、正極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成していた。
負極集電体としての銅箔(株式会社サンクメタル製、厚さ10μm、サイズ61×72mm)を準備し、スラリー塗布部のサイズが33×44mmとなるようにPETシートを用いてマスクした。この負極集電体上に、負極活物質スラリー1を、アプリケーターを用いて、アプリケーターのギャップが320μmとなるように設定して塗布した。塗布後のスラリーの表面にアラミドシート(日本バイリーン株式会社製、厚さ45μm)を配置し、ハイプレッシャージャッキ J-1(アズワン株式会社製)を用いてプレス圧20MPaでプレスすることで、負極活物質層を得た。なお、当該負極活物質層は、厚さ350μm、空隙率40%、密度0.89g/cm3であった。また、得られた負極活物質層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認したところ、導電助剤(炭素繊維)の少なくとも一部が、負極活物質層の電解質層側に接触する第1主面から集電体側に接触する第2主面までを電気的に接続する導電通路を形成していた。
上記で作製された正極および負極について、電極活物質層の性状を目視により評価した。その結果、正極および負極ともに、電極活物質層のクラック(割れ)は確認されなかった。
上記で得た正極の正極活物質層と、負極の負極活物質層とを対向させ、その間にセパレータ(セルガード社製、#3501、厚さ25μm、サイズ96×107mm)を配置し、発電要素を形成した。そして、正極集電体および負極集電体にそれぞれタブを接続し、アルミラミネートフィルム製の外装体で発電要素を挟んだ。そして外装体の3辺を熱圧着封止して発電要素を収納した。この発電要素に電解液を注液し、真空下において、タブが導出するように外装体を封止することで、非水電解質二次電池を得た。なお、電解液の注液量は、液量係数が1.5となるように調節した。なお、ここで注液した電解液は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合溶媒(体積比率1:1)に、LiPF6を1mol/Lの割合で溶解させたものである。
正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーをそれぞれ調製する際、最終に得られる正極活物質層および負極活物質層のそれぞれの全体積に対してポリフッ化ビニリデン(PVdF)が3.3体積%で含まれるように、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を得た。
液量係数が1.35となるように電解液の注液量を調節したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を得た。
正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーをそれぞれ調製する際、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)溶液を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を得た。当該非水電解質二次電池は、電解液を注液した際に、電極活物質層の崩れが確認されたため、後述のサイクル耐久性評価は実施しなかった。
正極活物質スラリーおよび負極活物質スラリーをそれぞれ調製する際、最終に得られる正極活物質層および負極活物質層のそれぞれの全体積に対してポリフッ化ビニリデン(PVdF)が7.9体積%で含まれるように、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を添加したこと以外は実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を得た。
実施例1および比較例1で作製した非水電解質二次電池について、以下の方法でサイクル耐久性を評価した。測定温度45℃、充電は0.5Cの電流値にて4.2Vに達するまで定電流充電した後、充電電流が0.025Cになるまで4.2Vにて定電圧充電を行なった。放電は、0.5Cの電流値にて2.5Vとなるまで放電するという操作(これを1サイクルとする)を300サイクル繰り返し行なった。その際、25サイクル終了毎に、0.05Cの電流値にて4.2Vに達するまで定電流充電した後、充電電流が0.01Cになるまで4.2Vにて定電圧充電を行なった。0.05Cの電流値にて2.5Vとなるまで放電する操作を行った。100サイクル目の放電容量を100%とし、これに対する200サイクル目および300サイクル目の放電容量の割合(放電容量維持率[%])を求めた結果を、下記の表1に示す。
さらに、実施例1、実施例2および比較例3で得られた非水電解質二次電池について、定電流放電方式によりして0.5C/0.05Cのレート特性を測定した。得られた結果を表2に示す。
11 集電体、
11a 正極側の最外層集電体、
11b 負極側の最外層集電体、
13 正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21、57 発電要素、
23 双極型電極、
25 正極集電板(正極タブ)、
27 負極集電板(負極タブ)、
29、52 ラミネートフィルム、
31 シール部、
58 正極タブ、
59 負極タブ、
101 PVdF
102 電極活物質。
Claims (3)
- 正極および負極を有する非水電解質二次電池であって、
前記正極および前記負極はそれぞれ、集電体と、前記集電体の表面に配置された、正極活物質層または負極活物質層である電極活物質層と、を有し、液量係数が1.4以上であって、
前記電極活物質層は、電極活物質と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなるバインダと、を含み、
前記電極活物質層において、前記ポリフッ化ビニリデン(PVdF)が結晶化していない状態であり且つ前記電極活物質層の全体積に対して0.5~3.3体積%の範囲で含まれている、非水電解質二次電池。 - 前記電極活物質層が導電助剤をさらに含む、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 前記電極活物質層の厚さが150~1500μmである、請求項1または2に記載の非水電解質二次電池。
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