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JP7027221B2 - 造形データ生成システム及び造形データ生成方法 - Google Patents

造形データ生成システム及び造形データ生成方法 Download PDF

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付加製造装置に係る造形データ生成システム及び造形データ生成方法に関する。
金属等の粉末材料に光ビームを照射し溶融固化することによって所望の造形物(以下、目的物と称する)を製造する、粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)に代表される付加製造(Additive Manufacturing)が一般に知られている。付加製造装置による造形は、従来の鋳造装置による造形では実現困難であった複雑で精緻な目的物の形状が実現できるものとして近年期待されている。
米国特許出願公開第2014/0154088号明細書 特開2017-211977号公報
付加製造装置による造形では、造形時の残留応力により最終形状に歪みが生じ、寸法精度の悪化が生じることがある。従来は、付加製造装置での施工条件(出力、走査速度等)や照射パターン等を組み合せて最適化を図っているが、例えば、強度、組成、充填率(空隙率)、表面粗さ、耐熱温度、耐食性、並びに微細構造(結晶粒径の状態や結晶構造)等、寸法精度以外にも考慮すべき指標があり、上記の方法では解を得られない、若しくは、生産性が低い解になる場合がある。
本発明の一実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、付加製造装置が造形する目的物の造形品質を従来よりも向上させることが可能な造形データ生成システム及び造形データ生成方法を提供する。
本発明の一実施形態に係る造形データ生成システムは、付加製造装置で利用可能な造形データを生成する造形データ生成システムであって、前記付加製造装置で造形する目的物の品質に関する要求仕様データに基づいて、前記目的物を造形する際の加熱計画を作成し、当該加熱計画に対応する施工条件データを生成する加熱計画部と、前記加熱計画部で前記加熱計画を作成した後、前記加熱計画に基づいて、前記付加製造装置が前記施工条件データに従って前記目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成する入力形状設定部と、前記施工条件データと前記入力形状データとを、前記造形データの少なくとも一部として、前記付加製造装置に送信する送信部と、を有することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係る造形データ生成方法は、付加製造装置で利用可能な造形データを生成する造形データ生成方法であって、前記付加製造装置で造形する目的物の品質に関する要求仕様データに基づいて前記目的物を造形する際の加熱計画を作成し、前記加熱計画に対応する施工条件データを生成し、前記加熱計画を作成した後、前記加熱計画に基づいて、前記付加製造装置が前記施工条件データに従って前記目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成し、前記施工条件データと前記入力形状データとを、前記造形データの少なくとも一部として、前記付加製造装置に送信する、ことを特徴とする。
付加製造装置が造形する目的物の造形品質を従来よりも向上させることが可能な造形データ生成システム及び造形データ生成方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る造形データ生成システムを示す概略図である。 造形データ生成システムに接続される付加製造装置を示す概略図である。 本発明の一実施形態に係る造形データ生成方法を示すフローチャートである。 入力形状データの補正に基づく予測形状の変化を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態に係る造形データ生成システム及び造形データ生成方法について、図1から図4を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係る造形データ生成システムは、図1に示すように、造形データ生成装置10を備えている。造形データ生成装置10は、ネットワーク(通信回線)20を介して、付加製造装置30と接続されている。ここでは1つの付加製造装置30のみを図示しているが、造形データ生成装置10は、複数の付加製造装置30と接続されていても良い。複数の付加製造装置30と接続される場合、これら複数の付加製造装置30同士は同一の地点に配置されていても良いし、異なる地点に配置されていても良い。
造形データ生成装置10は、例えば、ホストコンピュータ等の電子機器である。造形データ生成装置10は、装置構成として、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶装置、及び通信装置等を備えている(図示省略)。一方、造形データ生成装置10は、機能構成として、前処理部11、加熱計画部12、入力形状設定部13、総合評価部17、及び送信部18を備えている。入力形状設定部13は、解析部14、形状評価部15、及び逆解析部16を有している。造形データ生成装置10の備える各機能は、例えば、上述の演算装置が記憶装置から読み出したプログラムやソフトウェア等を実行することで実現される。
ネットワーク20は、例えばローカルエリアネットワークからなり、有線であっても無線であっても良い。また、ネットワーク20は、インターネット等のワイドエリアネットワークであっても良く、その場合には、造形データ生成装置10の遠隔地に付加製造装置30が配置されていても、ネットワーク20を介した通信が可能である。一方で、造形データ生成装置10と付加製造装置30とを近接して配置できる場合には、ネットワーク20を介することなく、造形データ生成装置10と付加製造装置30とを直接有線で接続するように構成しても良い。
付加製造装置30には様々な方式の装置が存在するが、本発明の一実施形態においては、付加製造装置30は、薄く積層した粉末をレーザ(又は電子ビーム)により焼結又は溶融固化させ、焼結又は溶融固化させた材料を積層して三次元形状の造形物(目的物)を製造する「粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion)方式」の装置であるとして説明する。なお、これと同様に、噴射ノズルから供給される粉末材料にレーザを照射することで基台上に焼結又は溶融固化させた材料を堆積させる方式の装置、例えば、「指向性エネルギー堆積(Directed Energy Deposition)方式」の装置等を用いても良い。
付加製造装置30は、図2に示すように、例えば、造形プラットフォーム101、金属フレーム102、レーザ照射装置103、集光レンズ104、発光装置105、及びリコータ106を備えている。造形プラットフォーム101は、付加製造装置30が目的物200を造形する際に目的物の底面を支持するための平板であり、装置垂直方向(例えば、図2の紙面上下方向)に移動可能とされている。金属フレーム102は、目的物200の原材料である粉末202であって、焼結又は溶融固化されずに残留した未硬化粉末201を収納するための金属製の格納容器である。未硬化粉末201(粉末202)は、レーザ照射装置103から照射されたレーザのエネルギーによって硬化する粉末材料である。
レーザ照射装置103は、集光レンズ104及び発光装置105を備えており、後述する施工条件データで規定される出力(強度)、走査速度、照射パターン等に基づき、入力形状データで規定される座標情報に従って、レーザ照射位置を走査する。レーザ照射を受けた粉末202が硬化・積層されることで目的物200が造形される。集光レンズ104は、発光装置105から増幅発振されたレーザ光を集光し、敷き詰められた粉末202の表面近傍に焦点位置を調整する。リコータ106は、造形プラットフォーム101上に粉末202を敷き詰めながら装置水平方向(例えば、図2の紙面左右方向)に移動することで、所定の厚さを有する粉末202の平坦化層を形成する。
付加製造装置30は、施工条件データ及び入力形状データに基づきレーザ照射装置103を制御し、平坦化層(第N層)にレーザを照射して粉末202の一部を硬化(焼結又は溶融固化)させる。造形プラットフォーム101が所定高さだけ降下した後、付加製造積層装置30は、リコータ106を用いて粉末202を敷き詰めることで次の平坦化層(第N+1層)を形成する。付加製造装置30は、レーザ照射装置103を用いて、当該平坦化層にレーザを照射して粉末202の一部を硬化させる。このステップを繰り返すことで、付加製造装置30は、入力形状データで規定された所望の三次元形状を有する目的物200を製造することができる。
次に、図1及び図2と共に、図3及び図4を参照して、本発明の一実施形態に係る造形データ生成方法について説明する。ここで造形データは、目的物の造形のために付加製造装置30へ入力される施工条件データ及び入力形状データを含むものとする。造形データは、例えば、付加製造装置30が理解可能なファイルフォーマットで記述されている。
(ステップS1)
造形データ生成装置10は、目的物の設計情報である三次元形状データ及び要求仕様データを受信する。三次元形状データは、目的物の三次元形状に関する設計情報(例えば3D-CADデータ)を含んでいる。要求仕様データは、目的物が達成すべき品質目標に関する設計情報を含んでおり、例えば、寸法精度に係る品質目標(第1の品質目標値)及び材料物性に係る品質目標(第2の品質目標値)を含む。
材料物性に係る品質目標は、例えば、目的物の強度、組成、充填率、微細構造、表面粗さ、耐食性、及び耐熱性等に関する情報を含む。要求仕様データは、品質目標を達成するための指標を含んでいても良く、例えば、微細構造の目標を達成する指標としては、目的物の結晶構造、結晶粒の形状や粒径等の指標を規定すれば良い。このような規定を行うことにより、材料物性に係る品質目標が規定可能である。
ここで充填率は、目的物に含まれる空隙の少なさを意味する。表面粗さは、目的物の表面の粗さを意味する。組成は、目的物を作り上げている成分の組立を意味する。耐食性は、目的物の腐食のし難さの程度を意味する。耐熱性は、目的物の熱に対する抵抗力の程度を意味する。結晶構造は、目的物を構成する物質の結晶の構造を意味する。
(ステップS2)
造形データ生成装置10の備える前処理部11は、受信した三次元形状データに基づいて、目的物を造形する際に付加製造装置30に入力可能な中間形状データを生成する。なお、中間形状データを生成する際に、要求仕様データを考慮しても良い。付加製造装置30で造形しようとする目的物の形状によっては、例えば、造形姿勢を変更したり、目的物を下支えする支持部材(サポート)を追加したりする必要がある。前処理部11は、このような造形姿勢の設定や支持部材の範囲及び構成に関する設定を考慮して、中間形状データを生成する。なお、前処理部11は、目的物の立体形状を複数の積層断面に分割したスライスデータを生成し、このスライスデータを中間形状データに含めても良い。
目的物の造形姿勢については、造形データ生成装置10の操作者が手動設定しても良いし、また、造形姿勢を最適化するプログラムを用いて自動で設定しても良い。設定した造形姿勢に基づいて、目的物を造形する際の支持範囲(位置や数等)や支持部材の構成(外形形状、断面形状、骨組部分の寸法、間隔等)を設定する。支持範囲については、支持部材の位置や数等を設定するプログラムを用いて自動で設定しても良い。このようなプログラムとしては、コスト低減のため、例えば必要な支持部材の量等を最小化するように設定するものが望ましい。
支持部材の構成については、初期構造を予め設定しておき、最初に中間形状データを生成する際はこの初期構造を用いても良い。例えば、支持部材の外形形状を角柱とし、断面形状を井桁構造とし、骨組部分の寸法、間隔等については初期値を用いる。なお、支持部材は目的物の造形後に除去する必要があるため、支持部材の構成を設定する際には、目的物の造形後における支持部材の除去の容易性に関する指標も考慮される。前処理部11は、受信した三次元形状データと、上記造形姿勢の設定や支持部材の範囲及び構成に関する設定等を含む前処理の結果とを組み合わせて、中間形状データを生成する。
(ステップS3)
造形データ生成装置10の備える加熱計画部12は、目的物を造形する際の加熱計画を作成する。加熱計画は、例えば、目的物が造形中にどのような温度変化を経るかを経時的に表す熱履歴データに関する情報や目的物に対するエネルギー投入量に関する情報を含む。加熱計画部12は、目的物の造形に使用する材料の材料特性及び受信した要求仕様データの少なくとも一方に基づいて加熱計画を生成しているため、材料の材料特性又は要求仕様データが異なれば、加熱計画も異なるものになる。熱履歴データに係る温度変化としては、レーザ照射中における粉末202の焼結又は溶融固化に関する情報だけでなく、造形前の予備加熱、造形後の熱間等方圧加圧(HIP)等、目的物の最終形状に影響を与える全ての熱工程を考慮することができる。
加熱計画では、例えば、目的物の組成、強度、充填率、微細構造(結晶構造、結晶粒の形状や粒径等)、表面粗さ、耐食性、及び耐熱性の少なくとも一つが、要求仕様データに規定された材料物性に係る品質目標値を満たすようにエネルギー投入量が決定されている。あるいは、目的物の組成、強度、充填率、微細構造(結晶構造、結晶粒の形状や粒径等)、表面粗さ、耐食性、及び耐熱性の少なくとも一つが、要求仕様データに規定された材料物性に係る品質目標値を満たすように熱履歴データが決定されている。なお、熱履歴データに代えて、熱履歴データに相当する条件(加熱領域への出力、加熱領域の走査速度、加熱領域の走査パターン等)を用いても良い。
(ステップS4)
造形データ生成装置10の備える加熱計画部12は、ステップS3で作成した加熱計画を採用した際に得られる目的物の材料物性を、熱履歴データから予測される充填率や微細構造等に基づいて推定する。加熱計画部12は更に、加熱計画から推定された目的物の材料物性が、要求仕様データで規定された材料物性に係る品質目標値(第2の品質目標値)を満たすか否か判断する。例えば、使用する材料を様々な条件下で加熱したときの理論特性や実験特性を示すデータベースやシミュレーション結果等を造形データ生成装置10に記憶しておき、これらの情報を参照することにより品質目標値を満たすかどうか評価すれば良い。
加熱計画から推定された目的物の材料物性が、要求仕様データで規定された材料物性に係る品質目標値を満たさない場合は、ステップS2へ戻り、中間形状データ及び加熱計画の少なくとも一方を変更する。前処理部11では、例えば、造形姿勢を変更したり、支持部材の数や位置を変更したりする。また、加熱計画部12では、例えば、目的物に対するエネルギー投入量を変更したり、熱履歴データを変更したりする。
(ステップS5)
加熱計画から推定された目的物の材料物性が、要求仕様データで規定された材料物性に係る品質目標値を満たす場合、加熱計画部12は、ステップS3で作成した加熱計画に対応する施工条件データを生成する。具体的には、加熱計画部12は、加熱計画に含まれる熱履歴データで規定される目的物の温度変化を実現するために必要な付加製造装置30の各種制御パラメータを導出する。例えば、レーザ照射装置103の出力、走査速度、走査パターン等の加熱領域に関連する付加製造装置30の制御パラメータを生成する。
加熱計画部12で施工条件データを生成した後、入力形状設定部13は、以下のステップS6からS9に従って、付加製造装置30が施工条件データに従って実際に目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成する。
ここで付加製造による造形では、一般に、寸法精度と材料物性の両立を求められるが、従来これらの両立は極めて困難であった。本願の発明者は、その知見により、材料物性に係る造形品質は熱履歴データ等で決定されるので制御性が低く(制御範囲が狭く)、寸法精度に係る造形品質は入力形状データを適宜変更すれば実現できるので制御性が高い(制御範囲が広い)という性質を見出し、このような性質を利用して、寸法精度に係る造形品質と材料物性(充填率や微細構造)に係る造形品質との両立を図ることに思い至った。
寸法精度に係る造形品質と材料物性に係る造形品質との両立を図るために、本発明の一実施形態では、制御性が高い寸法精度に係る品質条件(第1の品質目標値)を満たすための入力形状データの設定(後述のステップS6からS9参照)より前に、制御性が低い材料物性に係る品質条件(第2の品質目標値)を満たすための施工条件データを生成している(上述のステップS3からS5)。更に、加熱計画を生成する段階では、寸法精度に係る造形品質の達成よりも、材料物性に係る造形品質の達成を優先する。例えば、加熱計画を生成する段階では、寸法精度に係る造形品質を考慮しないこととしても良い。
(ステップS6)
造形データ生成装置10の備える解析部14は、加熱計画部12で作成された加熱計画及び前処理部11で生成した中間形状データに基づいて熱応力解析を実施し、当該加熱計画を採用した場合に造形される目的物の形状を表す予測形状データを生成する。熱応力解析を行うことにより、造形中の目的物に加わる熱応力によって、前処理部11が生成した中間形状データが表す三次元形状がどのように変化するのか予測する。即ち、加熱計画及び中間形状データを用いて、付加製造装置30で造形する目的物がどのような最終形状となるのかを予測している。ここで、予測形状データは、前処理に伴う造形姿勢の調整や支持部材の追加に関する影響を除外したものであり、後述するステップにおいて三次元形状データと直接比較が可能な設計情報を含むものとする。
(ステップS7)
造形データ生成装置10の備える形状評価部15は、受信した三次元形状データと、解析部14で生成した予測形状データ(前処理に伴う造形姿勢の調整や支持部材の追加に関する影響を除外したもの)とを比較し、その差異が寸法精度に係る品質条件(第1の品質目標値)満たすか否かを判断する。即ち、三次元形状データが表す設計形状と、解析部14で生成した予測形状とを比較し、両者が一致するかどうか判断する。なお、一致するか否かの判断は、完全一致に限らず、寸法精度に係る品質条件が定める所定の許容範囲を持って判断しても良い。例えば、研磨や切削等により造形後の形状修正が可能な場合には、所定の許容範囲を持って、一致すると判断しても良い。また、造形後の形状修正が不可能な場合、例えば、設計形状よりも凹んでいる(陥没している又は窪んでいる等)といった場合には、一致しないと判断しても良い。
(ステップS8)
形状が一致しないと判断した場合、造形データ生成装置10の備える逆解析部16は、解析部14で生成した予測形状データが設計形状である三次元形状データに一致するように逆解析を行い、この逆解析結果に基づいて、前処理部11で生成した中間形状データを補正(調整・修正・変更)する。例えば、逆解析部16において、設計形状である三次元形状データと解析部14で生成した予測形状データとの差分を求め、求めた差分が小さくなるように(予測形状データと三次元形状データとが一致するように)シミュレーションを実施し、中間形状データを補正すれば良い。この中間形状データの補正後、上述したステップS6へ戻る。
ステップS8からステップS6に戻った後、解析部14は、加熱計画部12で作成された加熱計画及び逆解析部16で生成した補正後の中間形状データに基づいて熱応力解析を実施し、当該加熱計画を採用した場合に造形される目的物の形状を表す予測形状データを再度生成する。その後ステップS7において、形状評価部15は、受信した三次元形状データと解析部14で再度生成した補正後の予測形状データとが一致するか否か判断する。形状が一致しない場合は、ステップS8へ進み、形状が一致する場合は、ステップS9へ進む。即ち、設計形状と熱応力解析に基づく予測形状とが一致する(又は所定の許容範囲内に収束する)まで、ステップS6からS8を繰り返す。
例えば、図4(a)に示すように、ステップS8での逆解析を実施する前の中間形状データに対応する中間形状PM1(図面では前処理に伴う造形姿勢の調整や支持部材の追加に関する影響を省略している)に対して、加熱計画部12で作成された加熱計画に基づく熱応力解析を実施することで、予測形状データに対応する予測形状PP1が得られる。この予測形状PP1は、受信した三次元形状データに対応する設計形状PTと比較して、高さが低くなり、且つ、幅が広くなっているので、ステップS7の条件を満たさない。
逆解析部16は、例えば、図4(b)に示すように、予測形状PP1と設計形状PTとの差分を考慮して逆解析を実施し、高さが中間形状PM1よりも高く、且つ、幅が中間形状PM1よりも狭くなるように中間形状データを補正する。補正後の中間形状PM2に対して、加熱計画部12で作成された加熱計画に基づく熱応力解析を再度実施することで、予測形状PP2が得られる。この予測形状PP2は設計形状PTと一致するため、ステップS7の条件を満たす。このようにして、加熱計画及びそれに対応する施工条件を先に確定させたうえで、熱応力による歪みの傾向を把握し、把握した傾向に基づき入力形状を修正している。
(ステップS9)
三次元形状データと予測形状データとの差異が寸法精度に係る品質条件を満たす場合、即ち、設計形状と熱応力解析による予測形状とが実質的に一致する場合、形状評価部15は、一致したときの中間形状データを、付加製造装置30が施工条件データに従って実際に目的物を造形する際に用いられる入力形状データとして設定する。
(ステップS10)
造形データ生成装置10の備える総合評価部17は、加熱計画部12で生成された施工条件データと形状評価部15で生成された入力形状データとを含む造形データに関して、総合評価を実施する。具体的には、付加製造装置30に入力される造形データが、寸法精度に係る品質条件(第1の品質目標値)及び材料物性に係る品質条件(第2の品質目標値)の両方を満たすか否か、造形データに基づいて付加製造装置30が目的物を造形する際の生産性(生産コスト、生産スループット等)は許容範囲にあるか否か、及び標準化/規格化団体の定める所定の品質仕様を満たすか否か等の複数の判断基準の少なくとも一つに関して評価を行えば良い。
(ステップS11)
総合評価部17は、上述した総合評価の結果が所定の基準(総合評価基準)を満たしているか否か判断する。総合評価の結果が所定の基準を満たしている場合は、ステップS12へ進む。総合評価の結果が所定の基準を満たしていない場合は、ステップS2へ戻り、前処理から条件を見直す(施工条件データや中間形状データを変更し、再度総合評価を実施する)。
(ステップS12)
総合評価が所定の基準を満たしていると判断した場合、造形データ生成装置10の備える送信部18は、加熱計画部12で生成された施工条件データと形状評価部15で生成された入力形状データとを造形データの少なくとも一部として付加製造装置30に送信することで、造形開始の指示を行う。なお、送信部18は、入力形状データに基づき、支持部材を含み所定の造形姿勢が設定された目的物を複数の積層断面に分割したスライスデータを生成し、このスライスデータを造形データに含めても良い。なお、このスライスデータの生成は、ステップ1で上述した通り、前処理部11が行っても良い。
以上説明したように、造形データ生成装置10は、受信した設計情報(三次元形状データ及び要求仕様データ)に基づいて、付加製造装置30へ入力する造形データ(施工条件データ及び入力形状データ)を生成している。この際、まず、材料物性に関する品質目標を満たすように加熱計画を生成し、この加熱計画に基づいて施工条件データを生成している。次に、三次元形状データに対応する設計形状と、加熱計画を考慮した予測形状データに対応する予測形状とが一致するように逆解析を行うことで入力形状データを生成している。即ち、制御性が低い材料物性に係る品質目標を満たす施工条件データを先に設定し、その後、制御性が高い寸法精度に係る品質目標を満たす入力形状データを設定している。
従って、制御性が高い寸法精度に係る造形品質の達成よりも、制御性が低い材料物性に係る造形品質の達成を優先することが可能となり、施工条件データの設定を容易に行うことができる。そして、施工条件データの設定後、確定した加熱計画に基づく逆解析を実施して付加製造装置30に入力する入力形状データを生成しているので、従来のように施工条件や照射パターン等を逐次組み合わせて目的物の最終形状の最適化を行う必要がなくなり、短時間で効率良く所望の目的物を造形することが可能となる。
このようにして、付加製造装置30に入力する造形データ(施工条件データ及び入力形状データ)の最適化を容易にすると共に、寸法精度に係る造形品質だけではなく、他の指標(強度、組成、充填率、表面粗さ、耐熱温度、耐食性、並びに微細構造等)に係る造形品質との両立を図ることができる。その結果、高品質な部品を提供し、かつ、生産性の高い付加製造造形が可能になる。
本発明の一実施形態は、付加製造装置30で作製される全ての部品に適用可能である。例えば、ガスタービン、ターボ、コンプレッサ、航空・宇宙部品等にも適用可能である。
10 造形データ生成装置
11 前処理部
12 加熱計画部
13 入力形状設定部
14 解析部
15 形状評価部
16 逆解析部
17 総合評価部
18 送信部
20 ネットワーク
30 付加製造装置
101 造形プラットフォーム
102 金属フレーム
103 レーザ照射装置
104 集光レンズ
105 発光装置
106 リコータ

Claims (18)

  1. 付加製造装置で利用可能な造形データを生成する造形データ生成システムであって、
    前記付加製造装置で造形する目的物の品質に関する要求仕様データに基づいて、前記目的物を造形する際の加熱計画を作成し、当該加熱計画に対応する施工条件データを生成する加熱計画部と、
    前記加熱計画部で前記加熱計画を作成した後、前記加熱計画に基づいて、前記付加製造装置が前記施工条件データに従って前記目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成する入力形状設定部と、
    前記施工条件データと前記入力形状データとを、前記造形データの少なくとも一部として、前記付加製造装置に送信する送信部と、
    前記付加製造装置で造形する目的物の形状に関する三次元形状データに基づいて、前記目的物を造形する際に前記付加製造装置に入力可能な中間形状データを生成する前処理部と、
    を有し、
    前記入力形状設定部は、前記中間形状データ及び前記加熱計画に基づいて、前記目的物の予測形状データを生成し、前記予測形状データと前記三次元形状データとが一致するように前記中間形状データを補正することで、前記入力形状データを生成することを特徴とする造形データ生成システム。
  2. 付加製造装置で利用可能な造形データを生成する造形データ生成システムであって、
    前記付加製造装置で造形する目的物の品質に関する要求仕様データに基づいて、前記目的物を造形する際の加熱計画を作成し、当該加熱計画に対応する施工条件データを生成する加熱計画部と、
    前記加熱計画部で前記加熱計画を作成した後、前記加熱計画に基づいて、前記付加製造装置が前記施工条件データに従って前記目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成する入力形状設定部と、
    前記施工条件データと前記入力形状データとを、前記造形データの少なくとも一部として、前記付加製造装置に送信する送信部と、
    を有し、
    前記要求仕様データは、前記目的物の寸法精度に係る第1の品質目標値と、前記目的物の材料物性に係る第2の品質目標値とを含み、
    前記加熱計画部は、前記加熱計画を作成する際に、前記第1の品質目標値よりも前記第2の品質目標値を優先することを特徴とする造形データ生成システム。
  3. 前記加熱計画部は、前記加熱計画を作成する際に、前記第1の品質目標値を考慮しないことを特徴とする請求項に記載の造形データ生成システム。
  4. 前記加熱計画部は、
    前記加熱計画を採用した際に前記目的物が前記第2の品質目標値を満たすか判断し、
    前記第2の品質目標値を満たさないと判断した場合、前記目的物を造形する際に前記付加製造装置に入力可能な中間形状データ又は前記加熱計画の少なくとも一方を変更することを特徴とする請求項又は請求項に記載の造形データ生成システム。
  5. 前記加熱計画部は、前記目的物の組成、強度、充填率、微細構造、表面粗さ、耐食性、及び耐熱性の少なくとも一つが、前記第2の品質目標値を満たすように、前記加熱計画におけるエネルギー投入量を決定することを特徴とする請求項又は請求項に記載の造形データ生成システム。
  6. 前記入力形状設定部は、
    前記加熱計画に対応する前記施工条件データに基づいて、前記中間形状データに対する熱応力解析を行うことで、前記予測形状データを生成する解析部と、
    前記三次元形状データと前記予測形状データとの差分を検出することで、前記加熱計画に起因する前記目的物の形状変化が許容範囲内であるか否かを判断する形状評価部と、
    前記目的物の形状変化が許容範囲内でない場合に、前記予測形状データが前記三次元形状データに近付くように逆解析を行い、前記中間形状データを補正する逆解析部と、
    を有することを特徴とする請求項に記載の造形データ生成システム。
  7. 前記前処理部は、前記三次元形状データに基づいて、前記目的物の造形姿勢を設定し、当該造形姿勢に基づいて、前記中間形状データを生成することを特徴とする請求項に記載の造形データ生成システム。
  8. 前記前処理部は、前記三次元形状データに基づいて、前記目的物の造形に必要な支持部材を設定し、当該支持部材に関する情報に基づいて、前記中間形状データを生成することを特徴とする請求項に記載の造形データ生成システム。
  9. 前記造形データが前記第1の品質目標値及び前記第2の品質目標値及び前記目的物の生産性に関する条件の少なくとも一方を含む総合評価基準を満たすか否かを判断する総合評価部を更に有し、前記総合評価部は、前記総合評価基準を満たす場合には前記送信部に前記造形データの送信を許可し、前記総合評価基準を満たさない場合は、前記目的物を造形する際に前記付加製造装置に入力可能な中間形状データ又は前記加熱計画の少なくとも一方を変更することを特徴とする請求項2に記載の造形データ生成システム。
  10. 付加製造装置で利用可能な造形データを生成するためのコンピュータが実行する造形データ生成方法であって、
    前記付加製造装置で造形する目的物の品質に関する要求仕様データに基づいて前記目的物を造形する際の加熱計画を作成し、前記加熱計画に対応する施工条件データを生成する加熱計画工程と
    前記加熱計画を作成した後、前記加熱計画に基づいて、前記付加製造装置が前記施工条件データに従って前記目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成する入力形状設定工程と
    前記施工条件データと前記入力形状データとを、前記造形データの少なくとも一部として、前記付加製造装置に送信する送信工程と、
    前記付加製造装置で造形する目的物の形状に関する三次元形状データに基づいて、前記目的物を造形する際に前記付加製造装置に入力可能な中間形状データを生成する前処理工程と、
    を有し、
    前記入力形状設定工程は、前記中間形状データ及び前記加熱計画に基づいて、前記目的物の予測形状データを生成し、前記予測形状データと前記三次元形状データとが一致するように前記中間形状データを補正することで、前記入力形状データを生成することを特徴とする造形データ生成方法。
  11. 付加製造装置で利用可能な造形データを生成するためのコンピュータが実行する造形データ生成方法であって、
    前記付加製造装置で造形する目的物の品質に関する要求仕様データに基づいて前記目的物を造形する際の加熱計画を作成し、前記加熱計画に対応する施工条件データを生成する加熱計画工程と
    前記加熱計画を作成した後、前記加熱計画に基づいて、前記付加製造装置が前記施工条件データに従って前記目的物を造形する際に用いられる入力形状データを生成する入力形状設定工程と
    前記施工条件データと前記入力形状データとを、前記造形データの少なくとも一部として、前記付加製造装置に送信する送信工程と、
    を有し、
    前記要求仕様データは、前記目的物の寸法精度に関する第1の品質目標値と、前記目的物の材料物性に関する第2の品質目標値とを含み、
    前記加熱計画工程では、前記加熱計画を作成する際に、前記第1の品質目標値よりも前記第2の品質目標値を優先することを特徴とする造形データ生成方法。
  12. 前記加熱計画工程は、前記加熱計画を作成する際に、前記第1の品質目標値を考慮しないことを特徴とする請求項11に記載の造形データ生成方法。
  13. 前記加熱計画工程は、
    前記加熱計画を採用した際に前記目的物が前記第2の品質目標値を満たすか判断し、
    前記第2の品質目標値を満たさないと判断した場合、前記目的物を造形する際に前記付加製造装置に入力可能な中間形状データ又は前記加熱計画の少なくとも一方を変更する、ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の造形データ生成方法。
  14. 前記加熱計画工程は、前記目的物の組成、強度、充填率、微細構造、表面粗さ、耐食性、及び耐熱性の少なくとも一つが、前記第2の品質目標値を満たすように、前記加熱計画におけるエネルギー投入量を決定する、ことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の造形データ生成方法。
  15. 前記入力形状設定工程は、
    前記加熱計画に対応する前記施工条件データに基づいて、前記中間形状データに対する熱応力解析を行うことで、前記予測形状データを生成する解析工程と
    前記三次元形状データと前記予測形状データとの差分を検出することで、前記加熱計画に起因する前記目的物の形状変化が許容範囲内であるか否かを判断する形状評価工程と
    前記目的物の形状変化が許容範囲内でない場合に、前記予測形状データが前記三次元形状データに近付くように逆解析を行い、前記中間形状データを補正する逆解析工程と
    を有することを特徴とする請求項10に記載の造形データ生成方法。
  16. 前記前処理工程は、前記三次元形状データに基づいて、前記目的物の造形姿勢を設定し、当該造形姿勢に基づいて、前記中間形状データを生成することを特徴とする請求項10に記載の造形データ生成方法。
  17. 前記前処理工程は、前記三次元形状データに基づいて、前記目的物の造形に必要な支持部材を設定し、当該支持部材に関する情報に基づいて、前記中間形状データを生成することを特徴とする請求項10に記載の造形データ生成方法。
  18. 前記造形データが前記第1の品質目標値及び前記第2の品質目標値及び前記目的物の生産性に関する条件の少なくとも一方を含む総合評価基準を満たすか否かを判断する総合評価工程を更に有し、前記総合評価工程は、前記総合評価基準を満たす場合には前記造形データの送信を許可し、前記総合評価基準を満たさない場合は、前記目的物を造形する際に前記付加製造装置に入力可能な中間形状データ又は前記加熱計画の少なくとも一方を変更することを特徴とする請求項11に記載の造形データ生成方法。
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