以下、添付図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、添付図面は本発明の原理に則った具体的な実施例を示しているが、これらは本発明の理解のためのものであり、決して本発明を限定的に解釈するために用いられるものではない。
以下の実施例は、試料中の化学物質成分の含有量の分析、又は異種成分あるいは異物の検査等の検査工程において、遠赤外領域の光を用いて試料の分析を行う遠赤外分光装置に関する。ここで、遠赤外領域の光とは、例えば波長25μmから4mm程度にわたる光である。なお、「遠赤外領域」の定義として様々な波長の数値範囲が存在するが、以下で説明する遠赤外領域の光は、あらゆる分野で定義されている範囲の中で最も広い範囲で解釈されるべきである。また、用語「テラヘルツ波」は、上述した遠赤外領域に含まれるものとする。
[第1実施例]
図1A及び図1Bは、第1実施例による遠赤外分光装置の全体構成の例を示す。一例として、遠赤外分光装置は、試料200を透過した光を用いて試料200の吸収スペクトルを測定する装置である。
遠赤外分光装置は、遠赤外光を発生する波長可変遠赤外光源100と、遠赤外光を試料200に照射する照明光学系150と、試料200を搭載する試料ステージ202と、試料200からの遠赤外光を検出用非線形光学結晶132に結像する遠赤外光結像光学系170と、試料200からの遠赤外光をポンプ光を用いて近赤外光に変換する検出用非線形光学結晶132と、光検出器(センサ)290と、信号処理部400と、制御部500とを備える。
波長可変遠赤外光源100は、ポンプ光115用の光源110と、シード光125用の波長可変光源120と、入射角調整光学系121と、非線形光学結晶(遠赤外光発生用非線形光学結晶)130とを備える。波長可変遠赤外光源100として、波長の異なる2本のレーザ光(ポンプ光115及びシード光125)を非線形光学結晶130に入れて差周波発生あるいはパラメトリック発生によって遠赤外光を発生させる構成を用いる。
例えば、非線形光学結晶130としてMgO:LiNbO3を用い、ポンプ光115の光源110として短パルスのQスイッチYAGレーザを用いてもよい。この構成において、波長可変光源120からの光をシード光125として入射角調整光学系121及びミラー126を経てポンプ光115に対してわずかな角度をつけて非線形光学結晶130に入れる。これにより、パラメトリック発生によって遠赤外光を得ることができる。
非線形光学結晶130にSiプリズム140を取り付けてもよい。この構成によれば、発生した遠赤外光を効率よく取り出すことができる。シード光125の波長を1066nm~1076nm程度の間で変化させ、また、非線形光学結晶130への入射角を入射角調整光学系121で調整すれば、発生する遠赤外光の周波数を0.5THz~3THz程度の範囲で変えることができる。
こうして得られた遠赤外光を、照明光学系150を用いて試料200上の照射領域205に照射する。図1Cは、試料200の照射領域を示す平面図である。
照明光学系150は、少なくとも3枚のシリンドリカルレンズ152,154,156から構成されるアナモルフィック結像光学系である。ここで、「アナモルフィック」とは、光軸を含む直交する2平面内で互いに光学特性が異なることを意味する。具体的に「結像光学系」においては、アナモルフィックとは、光軸を含む直交する2平面内で互いに倍率が異なることを言う。
照明光学系150をより具体的に説明する。図1Bの面内では、シリンドリカルレンズ152,154がパワー(optical power)を有する。遠赤外光の発光領域が、シリンドリカルレンズ152の前側焦点面に配置される。ここでの発光領域とは、ポンプ光115に沿った線状の発光領域(例えば、図2のB0とA0を通る線状の領域)である。また、シリンドリカルレンズ154は、シリンドリカルレンズ152の後側焦点面とシリンドリカルレンズ154の前側焦点面が一致するように配置される。さらに、試料200は、シリンドリカルレンズ154の後側焦点面に配置される。
シリンドリカルレンズ152の後側焦点面(すなわち、シリンドリカルレンズ154の前側焦点面でもある)に開口絞りを設置してもよい。この構成によれば、図1Bの面内で厳密に両側テレセントリックな光学系となるが、ここでは開口絞りは必須ではない。開口絞りを用いることにより、遠赤外光の使用範囲を限定することができる。
なお、照明光学系150は、アフォーカル光学系であって、非線形光学結晶130から射出される遠赤外ビームの広がり特性から、実質的に両側テレセントリックな光学系として機能すればよい。
また、図1Aの面内では、シリンドリカルレンズ156がパワー(optical power)を有する。シリンドリカルレンズ156は、遠赤外光の発光領域が試料200に結像されるように配置される。
照明光学系150は、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の光軸を含む第1の断面内では遠赤外光をコリメートし再び試料200面に集光させる結像光学系であり、かつ、前記第1の断面と直交する第2の断面内では波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光を試料200面に集光させる集光光学系である。詳細には、波長可変遠赤外光源100から射出される遠赤外光は、ポンプ光115のビームに沿った線状の光源(図2)となっている。波長可変遠赤外光源100から射出される遠赤外光は、図1Aの面内では広がるが、図1Bの面内では平行な光束となる。図1Aの面内では、遠赤外光は、シリンドリカルレンズ156によって試料200上の照射領域に収束される。一方、図1Bの面内では、遠赤外光は、シリンドリカルレンズ152によって一旦集光され、シリンドリカルレンズ154で再び平行光束とされ、試料200上に照射される。このように、照明光学系150は、波長可変遠赤外光源100によって形成される線状の発光領域を、その線状の領域の長手方向を縮小して試料200に結像させることができる。
照明光学系150は、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の光軸を含む第1の断面ではアフォーカルである。照明光学系150をアフォーカル系とする(すなわち、シリンドリカルレンズ152の後側焦点面とシリンドリカルレンズ154の前側焦点面が一致するように、シリンドリカルレンズ154を配置する)ことで、非線形光学結晶130内で発生する図1Bの面内でほぼ平行な遠赤外光をそのまま平行光束として試料200に照射することが可能となる。また、試料200を透過した遠赤外光を効率よく遠赤外光結像光学系170に取り込むことが可能となる。
この様に、照明光学系150を結像光学系とすることによって、波長可変遠赤外光源100から射出される遠赤外光の波長を変えたときの照明の安定性を確保することが可能となる。すなわち、照明光学系150を結像光学系とすることによって、試料200上での遠赤外光の照射位置が、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の波長に依存しない。
遠赤外光の波長を変えるためには、シード光125の波長を変えるとともに非線形光学結晶130への入射角を調整する。その際、発生する遠赤外光の射出方向が図1Bの面内方向で変化する(例えば、図1B中のθ1~θ2)。この場合でも、照明光学系150を結像光学系とし、遠赤外光の発光領域と試料200面を共役関係(結像関係)とすることで、試料200面上でも遠赤外光のスポットが移動しないようにすることができる。遠赤外光の波長を変えても試料200の照射位置がずれないため、照明光量の変化も生じず、安定した照明を確保することが可能となる。これに対して、照明光学系150を結像光学系としない場合には、照明光の照明位置が全く異なってしまう可能性もあり、安定した撮像が難しくなる。ただし、波長固定で撮像する場合や、波長の変化範囲が小さく、遠赤外光の方位の変化が十分小さい場合には、この限りではない。
また、照明光学系150をアナモルフィック光学系とすることによって、波長可変遠赤外光源100の線状の発光領域を、その線状の領域の長手方向を縮小し、スポットとして試料200を照明することができる。この構成によれば、以下で説明するように、スポットを試料200上で走査することにより、2次元データを得ることができる。
撮像対象の試料200は、ステージ202に搭載される。ステージ202は、少なくとも1方向に移動可能な機構を備える。例えば、ステージ202は、図1中のx方向に移動可能である。この構成によれば、試料200をx方向に移動させることにより、試料200の面上で照射領域205を走査することができ、試料200のライン状の領域のデータを取得することができる。さらに、ステージ202は、x方向及びy方向に移動可能なxyステージでもよい。x方向の走査とy方向の走査を組み合わせることで、試料200のより広い領域の2次元データ(画像)を得ることもできる。
試料200を透過した遠赤外光は、検出用非線形光学結晶132で波長1066nm~1076nm付近の近赤外光に波長変換される。その変換された近赤外光は、近赤外光に感度を有する光検出器290で光電変換され、検出信号として検出される。近赤外光用の光検出器(センサ)290は、複数の受光素子が1次元配列に並んだ受光素子(1Dアレイ検出器)でもよいし、又は、複数の受光素子が2次元配列に並んだ受光素子(2Dアレイ検出器)でもよい。近赤外用の1Dアレイ検出器及び2Dアレイ検出器は、比較的入手が容易であり、応答速度も速く、常温で使用できる。したがって、これらの検出器は産業応用に適している。
上記例のように、検出用非線形光学結晶132を用いて遠赤外光を近赤外光に波長変換する場合に、ポンプ光115の一部を分岐させて、調整後に検出用非線形光学結晶132に入射させる。例えば、ポンプ光115は、偏光ビームスプリッタ(以下PBS)127により透過光と反射光に分岐される。PBS 127を透過した透過光は、非線形光学結晶130に入射する。PBS 127で反射した反射光(波長変換用のポンプ光)235は、検出用非線形光学結晶132に入射する。
波長変換用のポンプ光235は、試料200を透過した遠赤外光のパルスを入射させるタイミングと同じタイミングで、検出用非線形光学結晶132に入射させる。このために、波長変換用のポンプ光235の光路上には、図示を省略しているが、光パルスのタイミングを合わせるための遅延光学系(例えば、光路長補正ステージなど)、及び、偏光方向を調節するための1/2波長板などが必要に応じて設けられる。この構成によれば、遠赤外光検出の際の波長変換用にプロファイルのきれいなビームを用いることができる。これにより、波長変換の効率を高め、検出感度を高めることが可能となる。
試料200を透過した遠赤外光は、遠赤外光結像光学系170を用いて検出用非線形光学結晶132に導かれる。例えば、遠赤外光結像光学系170は、少なくとも2枚のレンズ177,179から構成されるアフォーカルな結像光学系である。レンズ177はステージ178aに配置されている。また、レンズ179はステージ178bに配置されている。ステージ178a,178bは、少なくとも一方向(ここではy方向)に移動可能である。なお、2つのレンズ177,179のうち少なくとも試料200側のレンズを少なくとも一方向に移動させる機構が設けられればよい。試料200面の像は、Siプリズム142を通して検出用非線形光学結晶132内に形成される。検出用非線形光学結晶132としては、LiNbO3又はMgO: LiNbO3を用いるとよい。なお、検出用非線形光学結晶132及び非線形光学結晶130を抜けた各光は、終端処理部240で受けて処理される(図1B参照)。
ポンプ光115用の光源110の出力に余裕がない場合には、非線形光学結晶130を抜けてくるポンプ光を検出用非線形光学結晶132に導いて再利用してもよい(例えば、図6参照)。波長変換に用いるポンプ光のビームの品質が落ちるため、検出効率は低下するが、ポンプ光を遠赤外光発生と近赤外への波長変換とに対して効率良く使うことが可能となる。
信号処理部400は、光検出器290で光電変換された信号を取り込む。信号処理部400は、信号取り込み時のステージ202の位置情報をもとに、試料200を透過した光に比例した信号及びその分布画像を生成する。信号処理部400は、取得された画像データと、信号処理部400の記憶領域に蓄積された試料が無いときの分光画像データ(参照データ)とを比較することにより、吸収スペクトルを算出し、吸収スペクトルの2次元分布(吸収スペクトル画像)を得ることもできる。
制御部500は、装置全体を制御する。例えば、制御部500は、波長可変遠赤外光源100、ステージ202,178a,178b、及び信号処理部400を制御する。また、制御部500は、ユーザインターフェースとして機能する。例えば、制御部500は、信号処理部400で取得された信号及びデータ(分光情報)を表示する表示部を備えてもよい。波長を固定して試料200のデータを取得する場合には、制御部500は、波長可変遠赤外光源100を制御して指定の遠赤外光を発生させ、ステージ202の移動と光検出器290でのデータ取得の同期を制御する。また、波長を変えて試料200のデータを取得する場合には、制御部500は、波長可変遠赤外光源100の波長を設定するとともに、ステージ202の移動と光検出器290でのデータ取得との同期を制御する。
なお、本実施例では、波長可変遠赤外光源100のポンプ光用の光源110として、短パルスのQスイッチYAGレーザを用いる例を示したが、これに限定されない。基本となるスペクトルの線幅が狭ければよいので、ポンプ光用の光源110として、モードロックレーザを用いてもよい。モードロックレーザは、繰り返しが速いため、より高速な測定が可能となる。
ここで、遠赤外光の発生の様子について図4Aを用いて説明する。図4Aは、非線形光学結晶130としてMgO:LiNbO3を用い、パラメトリック発生で遠赤外光を発生させる例を示している。
非線形光学結晶130にポンプ光115を入射させ、これに対して角度θでシード光125を入射させる。シード光の波長とポンプ光に対する角度θを以下の条件を満たすように設定すると、高い効率で遠赤外光145を発生させることができる。非線形光学結晶130で発生する遠赤外光145の周波数(ωT)は、エネルギー保存則からポンプ光115とシード光125のそれぞれの周波数(ωpとωs)を用いて、以下の式から求められる(ただし、ωは角周波数)。
一方、遠赤外光145の発生効率は、運動量保存則が成り立つ場合に高くなる。すなわち、遠赤外光145の射出方向と、ポンプ光115とシード光125の方向との間に、以下の関係式及び図4Bの条件(位相整合条件)が成り立つときに高い効率が得られる。ここで、遠赤外光145、ポンプ光115、及びシード光125のそれぞれの波数ベクトルをkT、kp、ksとする。
従って、これらの条件を満たすように、シード光125の波長及び入射方向(θ)を設定することによって、高い効率で遠赤外光(テラヘルツ光)を発生させることが可能となる。
本実施例では、入射角調整光学系121によって、シード光125の非線形光学結晶130への入射角を調整する。図5は、入射角調整光学系121の構成例を示す。
入射角調整光学系121は、レンズ122と、光偏向器123と、結像光学素子124とから構成される。波長可変光源120からの光はファイバ128で導かれる。ファイバ128からの光は、レンズ122及び光偏向器123を経て結像光学素子124の前側焦点面付近にビームウエストを形成する。この構成によれば、結像光学素子124を経たビームはレーリー長の長い(すなわちコリメート状態に近い)ビームとなって非線形光学結晶130へ入射する。
一方、結像光学素子124は、光偏向器123の面を非線形光学結晶130の入射面に結像させるように構成される。これにより、光偏向器123でビームを振った際に非線形光学結晶130の入射面でビーム位置が変化せず入射角のみが変化するという条件を実現することが可能となる。
なお、光偏向器123として、ガルバノミラーやMEMS技術を用いたミラーなどの反射型の偏向器を用いてもよいし、又は、透過型の光偏向器を用いてもよい。すなわち、光偏向器123は、角度が制御できるものであれば、どの様なものを用いてもよい。
また、この例では、結像光学素子124として凹面鏡を用いる。しかしながら、光偏向器123と非線形光学結晶130の入射面を結像関係にできればよいので、結像光学素子124としてレンズを用いてもよい。光偏向器123としてガルバノミラーのような反射型の光偏向器を用い、かつ、結像光学素子124として凹面鏡を用いると、光路を折り曲げて畳み込むことができるため、入射角調整光学系121をコンパクトに形成することが可能となる。
入射角調整光学系121を直線的に実装する場合には、光偏向器123として透過型の光偏向器を用い、結像光学素子124としてレンズを用いてもよい。さらに、実装制約によっては、光偏向器123と結像光学素子124の一方を反射型の光学要素で構成し、他方を透過型の光学要素で構成してもよい。
なお、この実施例では、結像光学素子124として、単一のレンズ又は単一の凹面鏡のような単一の結像光学素子が利用可能である。したがって、光学系をコンパクトに形成することが可能となる。
また、本例の入射角調整光学系121によれば、波長可変光源120の波長を変えた際に、シード光125の非線形光学結晶130への入射角θを光偏向器123で制御して設定することによって、非線形光学結晶130への入射角θの高精度な設定が可能となる。したがって、シード光125の波長を変えた際の遠赤外光出力の安定性、及び吸収スペクトル測定の安定性を高めることが可能となる。その結果、高精度な定量測定が可能となる。
続いて、遠赤外光の伝搬の様子について図2を用いて説明する。波長可変遠赤外光源100から射出される遠赤外光は、ポンプ光115のビームに沿った線状の光源となっている。この線状光源が光軸(図2中のz軸)に対して傾いているため、ビームを検出用非線形光学結晶132へ導くにあたって注意が必要である。
図2には、非線形光学結晶130で発生した遠赤外光が、照明光学系150、試料200、及び遠赤外光結像光学系170を経て、検出用非線形光学結晶132に入射するまでの光路が示されている。
ここで、ポンプ光115のビームに沿った遠赤外光の線状の光源上の2点(A0とB0)を例として説明する。A0点とB0点は、照明光学系150によって試料200の近傍に結像されるが、B0点はA0点より照明光学系150から離れているため、その像であるB点は、試料200近傍で照明光学系150に近い位置に形成される。これらA点、B点は、再び遠赤外光結像光学系170で検出用非線形光学結晶132に導かれる。ここで、B点はA点より遠赤外光結像光学系170から離れているため、その像であるB’点は、検出用非線形光学結晶132内でA’点より遠赤外光結像光学系170に近い位置に形成される。そこで、非線形光学結晶130でのポンプ光115の入射方向と、検出用非線形光学結晶132におけるポンプ光235の入射方向が略平行となるように、非線形光学結晶130及び検出用非線形光学結晶132が配置される。非線形光学結晶130でのポンプ光115の入射方向と、検出用非線形光学結晶132におけるポンプ光235の入射方向が略平行であるため、A’点とB’点を両者とも波長変換用のポンプ光235のビーム上に重ねることが可能となり、遠赤外光を効率良く近赤外光に変換することが可能となる。
次に、試料200を透過した遠赤外光を検出用非線形光学結晶132に入射させる際の入射角の調整方法について図3を用いて説明する。
試料200を透過した遠赤外光の検出用非線形光学結晶132での近赤外光への変換を高い効率で行うためには、試料200を透過した遠赤外光の検出用非線形光学結晶132への入射角の最適化が必要である。本実施例では、その入射角の調整を、遠赤外光結像光学系170を構成するレンズ177,179の位置を調整することによって行う。
図3A及び図3Bは遠赤外光結像光学系170を示している。点A及びBは、試料200上の2点であり、これら点A及びBが、遠赤外光結像光学系170によって検出用非線形光学結晶132内の点A’及びB’に結像されている。
図3Aは、基準の状態を示し、図3Bは、図3Aの状態に対して試料200を透過した遠赤外光の検出用非線形光学結晶132への入射角を変更した状態を示す。まず、ステージ178aを駆動することにより、レンズ177を-y方向に距離Sだけ移動させる。この状態においてレンズ179を動かさない場合、点A及びBの像点A’及びB’は、検出用非線形光学結晶132内で-y方向に移動してしまう。そこで、このずれを補正するために、ステージ178bを駆動することにより、レンズ179を+y方向に距離S’だけ移動させる。このような制御を行うことにより、点A’及びB’の位置は図3Aと同じ状態で、点A’及びB’に入射する遠赤外光の入射角θを変更(調整)することが可能となる。なお、上記の距離S及びS’は、必ずしも同じ値ではなく、焦点距離の関係で同じ値にならない場合もある。
以下に本実施例の効果を説明する。従来では遠赤外光発生用の光源の周波数を変えると、遠赤外光の出る方向が変化するため、試料への照射位置が変化し、成分の分布ムラや信号検出効率の変化が定量分析の精度を低下させてしまう課題があった。これに対して、本実施例によれば、光源からの照明光をアナモルフィックな結像光学系で分析対象物(試料200)上に照射し、試料200からの透過光(又は反射光)を検出用非線形光学結晶132を用いて波長変換し、光検出器290を用いて検出する。この構成によれば、周波数変更による遠赤外光の照射位置のずれを低減することができる。したがって、成分の分布ムラや信号検出効率の変化などが生じず、定量分析の精度を向上させることができる。
また、試料の照射位置のずれを低減するために光学系を複雑にすると、遠赤外光の光学系による減衰が著しく、遮蔽物を介しての測定が難しくなるという課題がある。これに対して、本実施例では、試料の照射位置のずれを低減するための構成が簡易な構成であり、遠赤外光の減衰も小さく、遮蔽物を通しての分析も可能である。本実施例によれば、遮蔽物の有無によらず粉体を含む様々な形態の試料の定量分析を実現することが可能となる。
[第2実施例]
図6は、第2実施例における分光装置の構成を示す。上述の実施例で説明した構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。図1の第1実施例との違いは、主に、(i)照明光学系150及び遠赤外光結像光学系170の構成、(ii)検出用非線形光学結晶132の配置、及び(iii)非線形光学結晶130を抜けてくる遠赤外光発生に用いたポンプ光を検出用非線形光学結晶132に導いて再利用する点である。
ポンプ光115の光源110は、主な構成要素として、短パルスのQスイッチYAGレーザ111と、偏光ビームスプリッタ(以下PBS)114と4分の1波長板116とからなる偏光分離系と、レーザの出力を増幅させる増幅器ユニット(ここでは固体アンプ118)とを備える。例えば、YAGレーザ111の出力ビームは、レンズ112でコリメートされ、PBS 114と4分の1波長板116とからなる偏光分離系を経て固体アンプ118で増幅される。
より詳細には、YAGレーザ111の出力ビームは、ミラー181で反射され、レンズ112でコリメートされ、ミラー182で反射され、PBS 114に入射する。PBS 114を通過したビームは、4分の1波長板116及び固体アンプ118を経てミラー183で反射される。反射されたビームは、固体アンプ118及び4分の1波長板116を経てPBS 114に入射する。その後、ビームは、PBS 114からミラー184を経てポンプ光115として出射される。固体アンプ118を用いることでYAGレーザ111の出力が増幅され、ピークパワーでkWレベルの強力な遠赤外光を非線形光学結晶130から取り出すことが可能となる。
この実施例では、照明光学系150は、シリンドリカルレンズ151と集光レンズ155とから構成される。ポンプ光115のビームに沿った線状の発光領域を持つ波長可変遠赤外光源100から射出される遠赤外光は、シリンドリカルレンズ151で平行光束となり、集光レンズ155で試料200上のスポットに集光される。
試料200を透過した遠赤外光は、遠赤外光結像光学系170によって検出用非線形光学結晶132に導かれる。遠赤外光結像光学系170は、試料200面を検出用非線形光学結晶132内に結像させる結像光学系となっている。遠赤外光結像光学系170は、レンズ176と、ミラー172と、集光レンズ174とから構成される。具体的には、試料200を透過した遠赤外光は、レンズ176でコリメートされ、ミラー172で反射され、集光レンズ174で検出用非線形光学結晶132に集光される。
図7Aは、試料200面上の遠赤外光のスポット205a,205b,205cを示す。先に示したとおり、波長可変遠赤外光源100から射出される遠赤外光は、波長走査を行ったとき、その射出方向が図6の面内で変化する(例えば、図6中のθ1~θ2)。そこで、例えばシード光125の波長を変えて、発生する遠赤外光の周波数を1THzから3THzまで変化させた場合、試料200面上において、遠赤外光のスポットは、低周波側の1THzでは205cの位置になり、中間の周波数の2THzでは205bの位置になり、高周波側の3THzでは205aの位置になる。このように周波数を変化させた場合、試料200上での照射位置が異なる。このため、吸収スペクトルに濃度分布の位置依存性が影響し、正確なスペクトルが得られない。そこで、本実施例では、遠赤外光の周波数が変化しても照射位置が変わらないように、遠赤外光の周波数に合わせて試料200のステージ202を制御する。
制御部500は、シード光125の波長を変化させたときに、試料200面で発生しうる遠赤外光の照射位置の変化に応じてステージ202を移動させる。この構成により、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の波長が変化したときに、遠赤外光を試料200の同一位置に照射することができる。すなわち、試料200上での遠赤外光の照射位置が、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の波長に依存しない。
例えば、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の波長が低周波側の1THzの場合、遠赤外光のスポットが205cの位置になるため、制御部500は、ステージ202を-y方向に駆動する(図7C参照)。また、波長可変遠赤外光源100からの遠赤外光の波長が高周波側の3THzの場合、遠赤外光のスポットが205aの位置になるため、制御部500は、ステージ202を+y方向に駆動する(図7B参照)。制御部500は、シード光125の波長を変化させたときに、試料200面で発生しうる遠赤外光の照射位置の変化に応じてステージ202を移動させ、試料の同一位置(図7A~図7Cでは中央)に遠赤外光のスポットを照射するように構成される。この構成によれば、吸収スペクトルに対する、濃度分布の位置依存性の影響を回避し、正確で安定したスペクトル測定が可能となる。
また、本実施例では、非線形光学結晶130を通過したポンプ光を波長変換用のポンプ光として利用する。具体的には、非線形光学結晶130を通過したポンプ光が、ミラー210で反射され、波長変換用のポンプ光235として検出用非線形光学結晶132に導かれる。この構成は、ポンプ光115を効率よく利用することが可能であり、ポンプ光115のパワーに余裕がない場合に適している。ただし、再利用のため、波長変換用のポンプ光235は時間波形がくずれたものとなりうる。そのため、近赤外光への変換効率や変換された近赤外光のビーム品質が低下する場合がある。ポンプ光115のパワーに余裕がある場合には、図1に示したように、ポンプ光を遠赤外光発生用と近赤外光への変換用に2つに分岐することが望ましい。
図8は、波長可変遠赤外光源100で用いられるポンプ光115用の光源110の別の構成例を示す。なお、図8で示す光源110の構成は、他の実施例にも適用可能である。図8において、図6と同一の構成要素については同じ符号を付している。
本例における波長可変遠赤外光源100は、固体アンプ118で生じる熱レンズ効果を補正するレンズ119a,119bを備える。すなわち、図6で示した例との違いは、熱レンズ効果を補正する2つのレンズ119a,119bが固体アンプ118とミラー183との間に配置されている点である。固体アンプ118を用いてYAGレーザ111の出力を増幅する場合、熱レンズ効果によって増幅後のビームが絞られ、PBS 114及び4分の1波長板116にダメージを与える場合がある。そこで、固体アンプ118で生じる熱レンズを補正する光学系が、固体アンプ118と折り返しのミラー183との間に設けられる。補正用のレンズ119a,119bには固体アンプ118から出射された増幅光が入射され、レンズ119a,119bを通過した光がPBS 114及び4分の1波長板116に入射される。
具体的には、凹レンズ119aと凸レンズ119bの組み合わせが、固体アンプ118とミラー183との間に配置され、合成焦点距離が負となるようにする。さらに、合成した主面が固体アンプ118付近に位置するように構成される。この構成によれば、熱レンズによって収束ビームとなったビームを平行ビームに戻してミラー183に当てることが可能となり、ミラー183で反射されたビームは逆の光路をたどって再び固体アンプ118に入射し、熱レンズによって平行光束に戻って射出されるという構成が可能となる。固体アンプ118から出力されるビームが平行光束となるため、偏光ビームスプリッタ114及び4分の1波長板116上でのエネルギー密度を抑えることが可能となり、ダメージを回避することが可能となる。
さらに、熱レンズ効果を補正する光学系を2つのレンズ119a,119bで構成することにより、補正系の焦点距離を調整することが可能となる。固体アンプ118のゲインを変え、熱レンズ効果が変化した場合にも、レンズ119a,119bの面間隔調整で対応することが可能であり、自由度の高い系を構成することができる。また、本実施例では、熱レンズを補正する光学系を固体アンプ118と折り返しのミラー183の間に設けたが、これは光学系のダメージ回避の効果が期待できる。この位置では、ビームが固体アンプ118を1度しか通っておらず、まだビームのパワーがそれほど上がっていないためである。
従来では、周波数可変なコヒーレント光源では、高出力のレーザを必要とするため、熱レンズ効果によって光学系がダメージを受け、安定的な測定が難しいという課題があった。これに対して、本実施例では、熱レンズ効果を補正する光学系として2つのレンズ119a,119bを設けることにより、光学系のダメージを回避し、安定的な測定を可能にする。なお、図8で示したポンプ光115用光源110の構成は、他の実施例にも適用可能である。
[第3実施例]
図9A及び図9Bは、第3実施例による遠赤外分光装置の全体構成の例を示す。図9Cは、第3実施例における試料の照射領域を示す平面図である。上述の実施例で説明した構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
本実施例の遠赤外分光装置は、試料200の反射光を用いて吸収スペクトルを測定する。試料200面を中心として、波長可変遠赤外光源100から照明光学系150までの構成要素と、遠赤外光結像光学系170以降の構成要素を試料200の面に対して傾斜させる。本実施例の遠赤外分光装置では、試料200に対して斜めに遠赤外光を入射させ、試料200からの反射光が検出される。
この構成によれば、照明光学系150及び遠赤外光結像光学系170を試料200の面に対して傾斜して配置することにより、試料200からの反射光を検出することができる。これにより、透過率の低い試料200の測定、又は試料200の表面の分光特性の測定が可能となる。なお、照明光学系150からの入射角及び遠赤外光結像光学系170への角度を変えることが可能な機構を設けてもよい。これにより、分光特性の入射角依存性の測定も可能となる。
[第4実施例]
図10A及び図10Bは、第4実施例による遠赤外分光装置の全体構成の例を示す。図10Cは、第4実施例における試料の照射領域を示す平面図である。上述の実施例で説明した構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
本実施例では、照明光学系150及び遠赤外光結像光学系170のそれぞれが、遠赤外光の光路を曲げ、かつ遠赤外光の光路長を補正する光学系をさらに備える。より詳細には、照明光学系150と試料200bとの間に、光路長を調整する光学系158a及びミラー159aが配置される。さらに、試料200bと遠赤外光結像光学系170との間に、ミラー159b及び光路長を調整する光学系158bが配置される。また、本実施例では、試料200bはステージ202bのyz平面上に配置される。この構成によれば、試料200bの反射光を用いた吸収スペクトル測定が可能となる。
なお、単にミラー159a,159bで遠赤外光の光路を曲げ、試料の反射光を検出するレイアウトとすると、遠赤外光の光路長が伸びるため試料面で焦点が合わなくなる。そこで、本実施例の特徴として、光路長を補正するための光学系158aがミラー159aの前段に配置され、かつ、光路長を補正するための光学系158bがミラー159bの後段に配置される。光学系が試料200bを中心として対称に配置されるため、光学系158aと158bは同じものでもよい。光学系158a,158bは、光路長を伸ばす作用が必要なため、例えば凹レンズ1枚で構成することが可能である。この構成によれば、追加部品が最小限に抑えられるため、実装制約が厳しい場合に有効である。
一方、光学系158a,158bは、凸レンズと凹レンズの組み合わせで構成されてもよい。この構成によれば、これらのレンズの間隔を調整することで、これらの合成で得られる凹レンズの焦点距離を調整することが可能となる。したがって、既製品のレンズを用いることが可能となる。また、レンズの間隔を調整することにより、焦点位置を調整することが可能となる。
なお、図1A及び図1Bの構成との違いが、上記ミラー159a,159bと光路長を調整する光学系158a,158bを追加する点と、試料200bをyz平面で保持する点だけである。したがって、ミラー159a,159b及び光学系158a,158bを出し入れする機構と、試料200b及びステージ202bを試料200a及びステージ202aと取り替える機構を設けてもよい(図10B参照)。ミラー159a,159b及び光学系158a,158bを遠赤外光の光路から取り外し、かつ、ステージ202bをステージ202aに取り替えることで、反射光による測定を透過光による測定に容易に切り替えることが可能となる。
[第5実施例]
図11Aは、第5実施例による遠赤外分光装置の全体構成の例を示す。上述の実施例で説明した構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
上述した実施例との違いは、遠赤外光の照明光学系150に用いる光学素子(例えば、レンズ)、光路長を調整する光学系158a,158bに用いる光学素子(例えば、レンズ)、及び、遠赤外光結像光学系170に用いる光学素子(例えば、レンズ)が、図11A~図11Cに示したような反射防止のための構造を備えている点である。照明光学系150及び遠赤外光結像光学系170に用いられる少なくとも1つの光学素子は、遠赤外光の反射を低減させるような溝形状の加工を有する。
図11Aにおいて、遠赤外発生用の非線形光学結晶130から発生する遠赤外光は、紙面内で上下方向(図中のx軸方向)に振動する偏光成分が主成分となっている。反射防止のために、上述した光学素子の表面が、この偏光方向に対して直交する方向(y軸方向)を長手方向とするV字型の複数の溝を備える。当該複数の溝は略平行に形成される。図11B及び図11Cは、一例として、照明光学系150のシリンドリカルレンズ152の表面152aの拡大図である。複数の溝は、深さdを有し、かつ、周期pで形成される。
上記の構成において、溝の周期pを遠赤外光の波長に対して十分小さくすると、入射する遠赤外光にとっては界面の屈折率が徐々に変化する場合と等価になることが知られている。したがって、一例として、上述した光学素子の表面が遠赤外光の波長の1/3以下の周期の溝を備えることが好ましい(すなわち、複数の溝形状の間隔は、波長可変遠赤外光源100からの第1の遠赤外光又は試料200からの第2の遠赤外光の波長の1/3以下である)。より好ましくは、上述した光学素子の表面が遠赤外光の波長の1/5以下の周期の溝を備える。さらに好ましくは、上述した光学素子の表面が遠赤外光の波長の約1/10の周期の溝を備える。例えば、1~3THzの遠赤外光は波長が100~300umであるので、波長の1/10である10um程度の周期の溝を形成するとよい。反射低減の目的のためには溝の周期は小さい方が望ましいが、波長の1/10である10um程度を下回ると加工精度の確保が困難になる、あるいは、加工コストが高くなるため実用性が低下する。そのため、波長の1/10程度とするのが望ましい。溝の深さdは、周期pと同程度から周期pの10倍程度までが望ましい。反射低減の目的のためには、光学素子表面での屈折率の変化が波長のスケールでなだらかであることが望ましいからである。すなわち、溝が浅いと屈折率変化が緩和されず表面反射低減の効果が得られない。一方、周期pの10倍を超える深さでは、加工が難しくなり、形状の精度が保てなくなる。溝形状に乱れが生じると散乱光が生じ、反射低減効果が低下してしまう。
光学素子の表面での反射は、表面での屈折率の差が大きいほど大きくなるため、屈折率が徐々に変化するのに等しい構造を作ることで表面反射を低減することが可能となる。なお、V字型の溝を形成する際に、隣接する溝との間に元の面形状を保った部分を形成してもよい。図11Cに示すように、複数の溝形状の間には、波長可変遠赤外光源100からの第1の遠赤外光又は試料200からの第2の遠赤外光の光軸に直交する面と平行な方向の平坦面(w部分)が形成される。当該平坦面の幅は可視光の波長より大きい。この構成によれば、表面反射の低減効果は弱まるが、可視光を用いて光学系のアライメントを行うことが可能となり、光学系の調整が容易となる。V字型の溝が完全につながる(図11Cのw部分が残らない)ようにしてしまうと、アライメント用の可視光のビームは溝構造によって屈折されてしまうため、遠赤外光と同じ光路をたどらなくなってしまう。しかし、w部分の幅をアライメント用の可視光の波長より大きくする(例えば1um以上)と、w部分を通るアライメント用の可視光のビームは遠赤外光と同じ光路をたどるようになる。そこで、遠赤外光の表面反射を低減しつつ、可視光ビームを用いたアライメントが可能となる。
図12Aは、照明光学系150のシリンドリカルレンズ152,154の表面に上記で説明した溝構造を形成した例である。また、図12Bは、照明光学系150のシリンドリカルレンズ156の表面に上記で説明した溝構造を形成した例である。図12Cは、光路長を調整する光学系158a,158b及び遠赤外光結像光学系170に用いるレンズ177,179の表面に上記で説明した溝構造を形成した例である。図12Aの例では、シリンドリカルレンズ152,154の母線に直交する溝が形成される。また、図12Bの例では、シリンドリカルレンズ156の母線に平行な溝が形成される。図12Cの例では、球面のレンズが溝構造を備える。これらの遠赤外光用のレンズは、樹脂で作られることが多い。樹脂のレンズは型を用いた成形で製造可能であるため、この様に表面に溝構造があるものでも比較的容易に量産が可能である。
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることもできる。また、各実施例の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。
上述した信号処理部400及び制御部500の処理は、それらの機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をシステム或は装置に提供し、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
ここで述べたプロセス及び技術は本質的に如何なる特定の装置に関連することはなく、コンポーネントの如何なる相応しい組み合わせによってでも実装できる。更に、汎用目的の多様なタイプのデバイスが使用可能である。ここで述べた処理を実行するのに、専用の装置を構築するのが有益である場合もある。つまり、上述した信号処理部400及び制御部500の一部が、例えば集積回路等の電子部品を用いたハードウェアにより実現されてもよい。
さらに、上述の実施例において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。