以下、図面を参照し、本発明の車両制御システム、車両制御方法、および車両制御プログラムの実施形態について説明する。
<共通構成>
図1は、実施形態の車両制御システム100が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)の構成要素を示す図である。車両制御システム100が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の自動車であり、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関を動力源とした自動車や、電動機を動力源とした電気自動車、内燃機関および電動機を兼ね備えたハイブリッド自動車等を含む。電気自動車は、例えば、二次電池、水素燃料電池、金属燃料電池、アルコール燃料電池等の電池により放電される電力を使用して駆動される。
図1に示すように、自車両Mには、ファインダ20-1から20-7、レーダ30-1から30-6、およびカメラ(撮像部)940等のセンサと、ナビゲーション装置(表示部)50と、車両制御システム100とが搭載される。
ファインダ20-1から20-7は、例えば、照射光に対する散乱光を測定し、対象までの距離を測定するLIDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)である。例えば、ファインダ20-1は、フロントグリル等に取り付けられ、ファインダ20-2および20-3は、車体の側面やドアミラー、前照灯内部、側方灯付近等に取り付けられる。ファインダ20-4は、トランクリッド等に取り付けられ、ファインダ20-5および20-6は、車体の側面や尾灯内部等に取り付けられる。上述したファインダ20-1から20-6は、例えば、水平方向に関して150度程度の検出領域を有している。また、ファインダ20-7は、ルーフ等に取り付けられる。ファインダ20-7は、例えば、水平方向に関して360度の検出領域を有している。
レーダ30-1および30-4は、例えば、奥行き方向の検出領域が他のレーダよりも広い長距離ミリ波レーダである。また、レーダ30-2、30-3、30-5、30-6は、レーダ30-1および30-4よりも奥行き方向の検出領域が狭い中距離ミリ波レーダである。
以下、ファインダ20-1から20-7を特段区別しない場合は、単に「ファインダ20」と記載し、レーダ30-1から30-6を特段区別しない場合は、単に「レーダ30」と記載する。レーダ30は、例えば、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体を検出する。
カメラ40は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ40は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ40は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの前方を撮像する。カメラ40は、複数のカメラを含むステレオカメラであってもよい。
なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
図2は、車両制御システム100を中心とした機能構成図である。自車両Mには、ファインダ20、レーダ30、およびカメラ40等を含む検知デバイスDDと、ナビゲーション装置50と、通信装置55と、車両センサ60と、HMI(Human Machine Interface)70と、車両制御システム100と、走行駆動力出力装置200と、ステアリング装置210と、ブレーキ装置220とが搭載される。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、請求の範囲における車両制御システムは、「車両制御システム100」のみを指しているのではなく、車両制御システム100以外の構成(検知デバイスDDやHMI70等)を含んでもよい。
ナビゲーション装置50は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や地図情報(ナビ地図)、ユーザインターフェースとして機能するタッチパネル式表示装置、スピーカ、マイク等を有する。ナビゲーション装置50は、GNSS受信機によって自車両Mの位置を特定し、その位置からユーザによって指定された目的地までの経路を導出する。ナビゲーション装置50により導出された経路は、車両制御システム100の目標車線決定部110に提供される。自車両Mの位置は、車両センサ60の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。また、ナビゲーション装置50は、目的地に至る経路について音声やナビ表示によって案内を行う。なお、自車両Mの位置を特定するための構成は、ナビゲーション装置50とは独立して設けられてもよい。また、ナビゲーション装置50は、例えば、ユーザの保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。この場合、端末装置と車両制御システム100との間で、無線または有線による通信によって情報の送受信が行われる。
通信装置55は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)等を利用した無線通信を行う。通信装置55は、例えば無線通信により接続される外部装置から交通情報(例えば、渋滞情報)や天候情報等を取得することができる。
車両センサ60は、車速(走行速度)を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
図3は、HMI70の構成図である。HMI70は、例えば運転操作系の構成と、非運転操作系の構成とを備える。これらの境界は明確なものではなく、運転操作系の構成が非運転操作系の機能を備える(或いはその逆)ことがあってもよい。また、これらの運転操作系は、自車両Mの車両乗員(乗員)の操作を受け付ける操作受付部の一例である。また、非運転操作系には、インターフェース装置が含まれる。
HMI70は、運転操作系の構成として、例えばアクセルペダル71、アクセル開度センサ72およびアクセルペダル反力出力装置73と、ブレーキペダル74およびブレーキ踏量センサ(或いはマスター圧センサ等)75と、シフトレバー76およびシフト位置センサ77と、ステアリングホイール78、ステアリング操舵角センサ79およびステアリングトルクセンサ80と、その他運転操作デバイス81とを含む。
アクセルペダル71は、車両乗員による加速指示(或いは戻し操作による減速指示)を受け付けるための操作子である。アクセル開度センサ72は、アクセルペダル71の踏み込み量を検出し、踏み込み量を示すアクセル開度信号を車両制御システム100に出力する。なお、車両制御システム100に出力するのに代えて、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、またはブレーキ装置220に直接出力することがあってもよい。以下に説明する他の運転操作系の構成についても同様である。アクセルペダル反力出力装置73は、例えば車両制御システム100からの指示に応じて、アクセルペダル71に対して操作方向と反対向きの力(操作反力)を出力する。
ブレーキペダル74は、車両乗員による減速指示を受け付けるための操作子である。ブレーキ踏量センサ75は、ブレーキペダル74の踏み込み量(或いは踏み込み力)を検出し、検出結果を示すブレーキ信号を車両制御システム100に出力する。
シフトレバー76は、車両乗員によるシフト段の変更指示を受け付けるための操作子である。シフト位置センサ77は、車両乗員により指示されたシフト段を検出し、検出結果を示すシフト位置信号を車両制御システム100に出力する。
ステアリングホイール78は、車両乗員による旋回指示を受け付けるための操作子である。ステアリング操舵角センサ79は、ステアリングホイール78の操作角を検出し、検出結果を示すステアリング操舵角信号を車両制御システム100に出力する。ステアリングトルクセンサ80は、ステアリングホイール78に加えられたトルクを検出し、検出結果を示すステアリングトルク信号を車両制御システム100に出力する。なお、ステアリングホイール78に関する制御として、例えば反力モータ等によりステアリング軸にトルクを出力することで、ステアリングホイール78に対して操作反力を出力してもよい。
その他運転操作デバイス81は、例えば、ジョイスティック、ボタン、ダイヤルスイッチ、GUI(Graphical User Interface)スイッチ等である。その他運転操作デバイス81は、加速指示、減速指示、旋回指示等を受け付け、車両制御システム100に出力する。
HMI70は、非運転操作系の構成として、例えば、表示装置(表示部)82、スピーカ83、接触操作検出装置84およびコンテンツ再生装置85と、各種操作スイッチ86と、シート88およびシート駆動装置89と、ウインドウガラス90およびウインドウ駆動装置91と、車室内カメラ(撮像部)95とを含む。
表示装置82は、例えば、インストルメントパネルの各部、助手席や後部座席に対向する任意の箇所等に取り付けられる、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)表示装置等である。また、表示装置82は、フロントウインドシールドやその他のウインドウに画像を投影するHUD(Head Up Display)であってもよい。スピーカ83は、音声を出力する。接触操作検出装置84は、表示装置82がタッチパネルである場合に、表示装置82の表示画面における接触位置(タッチ位置)を検出して、車両制御システム100に出力する。なお、表示装置82がタッチパネルでない場合、接触操作検出装置84は省略されてよい。
コンテンツ再生装置85は、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)再生装置、CD(Compact Disc)再生装置、テレビジョン受信機、各種案内画像の生成装置等を含む。表示装置82、スピーカ83、接触操作検出装置84およびコンテンツ再生装置85は、一部または全部がナビゲーション装置50と共通する構成であってもよい。上述した表示装置82、スピーカ83、コンテンツ再生装置85、およびナビゲーション装置50は、何れもインターフェース装置の一例であるが、これらに限定されるものではない。
各種操作スイッチ86は、車室内の任意の箇所に配置される。各種操作スイッチ86には、自動運転の開始(或いは将来の開始)および停止を指示する自動運転切替スイッチ87を含む。自動運転切替スイッチ87は、GUI(Graphical User Interface)スイッチ、機械式スイッチの何れであってもよい。また、各種操作スイッチ86は、シート駆動装置89やウインドウ駆動装置91を駆動するためのスイッチを含んでもよい。
シート88は、車両乗員が着座する座席シートである。シート駆動装置89は、シート88のリクライニング角、前後方向位置、ヨー角等を自在に駆動する。また、シート駆動装置89は、シート88のアームレストの角度や位置を変更する。ウインドウガラス90は、例えば各ドアに設けられる。ウインドウ駆動装置91は、ウインドウガラス90を開閉駆動する。
車室内カメラ95は、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。車室内カメラ95は、バックミラーやステアリングボス部、インストルメントパネル等、運転操作を行う車両乗員の少なくとも頭部(顔を含む)を撮像可能な位置に取り付けられる。車室内カメラ95は、例えば、周期的に繰り返し車両乗員を撮像する。
車両制御システム100の説明に先立って、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、およびブレーキ装置220について説明する。
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、自車両Mが内燃機関を動力源とした自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンを制御するエンジンECU(Electronic Control Unit)を備え、自車両Mが電動機を動力源とした電気自動車である場合、走行用モータおよび走行用モータを制御するモータECUを備え、自車両Mがハイブリッド自動車である場合、エンジン、変速機、およびエンジンECUと走行用モータおよびモータECUとを備える。走行駆動力出力装置200がエンジンのみを含む場合、エンジンECUは、後述する走行制御部160から入力される情報に従って、エンジンのスロットル開度やシフト段等を調整する。走行駆動力出力装置200が走行用モータのみを含む場合、モータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、走行用モータに与えるPWM信号のデューティ比を調整する。走行駆動力出力装置200がエンジンおよび走行用モータを含む場合、エンジンECUおよびモータECUは、走行制御部160から入力される情報に従って、互いに協調して走行駆動力を制御する。
ステアリング装置210は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、車両制御システム100から入力される情報、或いは入力されるステアリング操舵角またはステアリングトルクの情報に従って電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
ブレーキ装置220は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、制動制御部とを備える電動サーボブレーキ装置である。電動サーボブレーキ装置の制動制御部は、走行制御部160から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。電動サーボブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置220は、上記説明した電動サーボブレーキ装置に限らず、電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。電子制御式油圧ブレーキ装置は、走行制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する。また、ブレーキ装置220は、走行駆動力出力装置200に含まれ得る走行用モータによる回生ブレーキを含んでもよい。
[車両制御システム]
以下、車両制御システム100について説明する。車両制御システム100は、例えば、一以上のプロセッサまたは同等の機能を有するハードウェアにより実現される。車両制御システム100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、記憶装置、および通信インターフェースが内部バスによって接続されたECU(Electronic Control Unit)、或いはMPU(Micro-Processing Unit)等が組み合わされた構成であってよい。
図2に戻り、車両制御システム100は、例えば、目標車線決定部110と、自動運転制御部120と、走行制御部160と、HMI制御部170と、記憶部180とを備える。自動運転制御部120は、例えば、自動運転モード制御部130と、自車位置認識部140と、外界認識部142と、行動計画生成部144と、軌道生成部146と、切替制御部150とを備える。目標車線決定部110、自動運転制御部120の各部、および走行制御部160のうち一部または全部は、プロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらのうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
記憶部180には、例えば、高精度地図情報182、目標車線情報184、行動計画情報186等の情報が格納される。記憶部180は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ等で実現される。プロセッサが実行するプログラムは、予め記憶部180に格納されていてもよいし、車載インターネット設備等を介して外部装置からダウンロードされてもよい。また、プログラムは、そのプログラムを格納した可搬型記憶媒体が図示しないドライブ装置に装着されることで記憶部180にインストールされてもよい。また、車両制御システム100のコンピュータ(車載コンピュータ)は、複数のコンピュータ装置によって分散化されたものであってもよい。
目標車線決定部110は、例えば、MPUにより実現される。目標車線決定部110は、ナビゲーション装置50から提供された経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、高精度地図情報182を参照してブロックごとに目標車線を決定する。目標車線決定部110は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。目標車線決定部110は、例えば、経路において分岐箇所や合流箇所等が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な走行経路を走行できるように、目標車線を決定する。目標車線決定部110により決定された目標車線は、目標車線情報184として記憶部180に記憶される。
高精度地図情報182は、ナビゲーション装置50が有するナビ地図よりも高精度な地図情報である。高精度地図情報182は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、高精度地図情報182には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等が含まれてよい。道路情報には、高速道路、有料道路、国道、都道府県道といった道路の種別を表す情報や、道路の車線数、各車線の幅員、道路の勾配、道路の位置(経度、緯度、高さを含む3次元座標)、車線のカーブの曲率、車線の合流および分岐ポイントの位置、道路に設けられた標識等の情報が含まれる。交通規制情報には、工事や交通事故、渋滞等によって車線が封鎖されているといった情報が含まれる。
自動運転制御部120は、目的地までの経路に沿って自車両Mが走行するように、自車両Mの加減速および操舵のうち少なくとも一方を自動的に制御する。また、自動運転制御部120は、自動運転の度合が異なる複数のモードの何れかで自動運転制御を行う。なお、自動運転の度合は、例えば自車両Mの車両乗員に要求される車両の運転に関する義務(以下、単に「運転に関する義務」ともいう)の度合、および車両乗員の操作を受け付けるとともに情報を出力するHMI70の各インターフェース装置への操作許容度の度合の一方または双方である。
自動運転モード制御部130は、自動運転制御部120が実施する自動運転のモードを決定する。本実施形態における自動運転のモードには、以下のモードが含まれる。なお、以下はあくまで一例であり、自動運転のモード数やモード内容は任意に決定されてよい。
[第1モード]
第1モードは、他のモードと比べて最も自動運転の度合が高いモードである。第1モードが実施されている場合、複雑な合流制御等、全ての車両制御が自動的に行われるため、車両乗員に要求される運転に関する義務が生じない。例えば、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視する必要がない(車両乗員に要求される周辺監視義務が生じない)。また、車両乗員は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリング等について運転操作をする必要がなく(車両乗員に要求される運転操作義務が生じない)、車両の運転以外に意識を向けてもよい。
ここで、第1モードの一例としては、渋滞時に前走車両に追従する渋滞追従モード(低速追従モード)等がある。第1モードでは、例えばTJP(Traffic Jam Pilot)のように混雑した高速道路上で前走車両に追従することで安全な自動運転を実現することができ、渋滞が解消した時点でTJPが終了する。渋滞の解消は、例えば自車両Mの走行速度が所定速度以上(例えば、40km/h以上)になった場合に、渋滞が解消されたと判断することができるが、これに限定されるものではなく、例えば通信装置55により外部装置から交通情報(渋滞情報)を受信することで、渋滞が解消されたことを検出してもよい。また、TJPの終了するタイミングで第1モードが他のモードに切り替わる場合もあるが、TJPが終了した所定時間後、またはTJPを終了した速度よりも速い速度に至った場合に、モードが切り替わってもよい。なお、第1のモードは、他のモードと比べて最もHMI70の各インターフェース装置(非運転操作系)の操作許容度が高いモードである。
[第2モード]
第2モードは、第1モードの次に自動運転の度合が高いモードである。第2モードが実施されている場合、原則として全ての車両制御が自動的に行われるが、場面に応じて自車両Mの運転操作が車両乗員に委ねられる(第1モードと比べて車両運転に関する義務が増加する)。このため、車両乗員は、自車両Mの周辺や状態を監視し、車両の運転に意識を向ける必要がある(第1モードと比べて車両運転に関する義務が増加する)。なお、第2のモードは、第1モードよりもHMI70の各インターフェース装置(非運転操作系)の操作許容度が低いモードである。
[第3モード]
第3モードは、第2モードの次に自動運転の度合が高いモードである。第3モードが実施されている場合、車両乗員は、場面に応じた確認操作をHMI70に対して行う必要がある(第2モードと比べて車両運転に関する義務が増加する)。第3モードでは、例えば、車線変更のタイミングが車両乗員に通知され、車両乗員がHMI70に対して車線変更を指示する操作を行った場合に、自動的な車線変更が行われる。このため、車両乗員は自車両Mの周辺や状態を監視している必要がある(第2モードと比べて車両運転に関する義務が増加する)。なお、第3のモードは、第2モードよりもHMI70の各インターフェース装置(非運転操作系)の操作許容度が低いモードである。
自動運転モード制御部130は、HMI70に対する車両乗員の操作、行動計画生成部144により決定されたイベント、軌道生成部146により決定された走行態様等に基づいて、自動運転のモード(運転モード)を決定する。なお、運転モードには、手動運転のモードが含まれていてもよい。自動運転のモードの一つとして手動運転モードを含むように考える場合、手動運転モードは、第3モードの次に自動運転の度合が高いモード、すなわち、自動運転の度合が最も低いモードである。
決定された自動運転のモード(モード情報)は、HMI制御部170に通知される。また、自動運転のモードには、自車両Mの検知デバイスDDの性能等に応じた限界が設定されてもよい。例えば、検知デバイスDDの性能が低い場合には、第1モードは実施されないものとしてよい。
何れの自動運転のモードにおいても、HMI70における運転操作系の構成に対する操作によって、手動運転モードに切り替えること(オーバーライド)は可能である。オーバーライドは、例えば自車両Mの車両乗員によるHMI70の運転操作系に対する操作が、所定時間以上継続した場合、所定の操作変化量(例えばアクセルペダル71のアクセル開度、ブレーキペダル74のブレーキ踏量、ステアリングホイール78のステアリング操舵角)以上の場合、または運転操作系に対する操作を所定回数以上行った場合に開始される。
自動運転制御部120の自車位置認識部140は、記憶部180に格納された高精度地図情報182と、ファインダ20、レーダ30、カメラ40、ナビゲーション装置50、または車両センサ60から入力される情報とに基づいて、自車両Mが走行している車線(走行車線)、および、走行車線に対する自車両Mの相対位置を認識する。
自車位置認識部140は、例えば、高精度地図情報182から認識される道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ40によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
図4は、自車位置認識部140により走行車線L1に対する自車両Mの相対位置が認識される様子を示す図である。自車位置認識部140は、例えば、自車両Mの基準点(例えば重心)の走行車線中央CLからの乖離OS、および自車両Mの進行方向の走行車線中央CLを連ねた線に対してなす角度θを、走行車線L1に対する自車両Mの相対位置として認識する。なお、これに代えて、自車位置認識部140は、自車線L1の何れかの側端部に対する自車両Mの基準点の位置等を、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。自車位置認識部140により認識される自車両Mの相対位置は、行動計画生成部144に提供される。
外界認識部142は、ファインダ20、レーダ30、カメラ40等から入力される情報に基づいて、周辺車両の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。周辺車両とは、例えば、自車両Mの周辺を走行する車両であって、自車両Mと同じ方向に走行する車両である。周辺車両の位置は、他車両の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、他車両の輪郭で表現された領域で表されてもよい。周辺車両の「状態」とは、上記各種機器の情報に基づいて把握される、周辺車両の加速度、車線変更をしているか否か(あるいは車線変更をしようとしているか否か)を含んでもよい。また、外界認識部142は、周辺車両に加えて、ガードレールや電柱、駐車車両、歩行者その他の物体の位置を認識してもよい。
行動計画生成部144は、自動運転のスタート地点、および/または自動運転の目的地を設定する。自動運転のスタート地点は、自車両Mの現在位置であってもよいし、自動運転を指示する操作がなされた地点でもよい。行動計画生成部144は、そのスタート地点と自動運転の目的地との間の区間において、行動計画を生成する。なお、これに限らず、行動計画生成部144は、任意の区間について行動計画を生成してもよい。
行動計画は、例えば、順次実行される複数のイベントで構成される。イベントには、例えば、自車両Mを減速させる減速イベントや、自車両Mを加速させる加速イベント、走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させるレーンキープイベント、走行車線を変更させる車線変更イベント、自車両Mに前走車両を追い越させる追い越しイベント、分岐ポイントにおいて所望の車線に変更させたり、現在の走行車線を逸脱しないように自車両Mを走行させたりする分岐イベント、本線に合流するための合流車線において自車両Mを加減速させ、走行車線を変更させる合流イベント、自動運転の終了予定地点で自動運転モードから手動運転モードに移行させたりするハンドオーバイベント等が含まれる。行動計画生成部144は、目標車線決定部110により決定された目標車線が切り替わる箇所において、車線変更イベント、分岐イベント、または合流イベントを設定する。行動計画生成部144によって生成された行動計画を示す情報は、行動計画情報186として記憶部180に格納される。
図5は、ある区間について生成された行動計画の一例を示す図である。図5に示すように、行動計画生成部144は、目標車線情報184が示す目標車線上を自車両Mが走行するために必要な行動計画を生成する。なお、行動計画生成部144は、自車両Mの状況変化に応じて、目標車線情報184に拘わらず、動的に行動計画を変更してもよい。例えば、行動計画生成部144は、車両走行中に外界認識部142によって認識された周辺車両の速度が閾値を超えたり、自車線に隣接する車線を走行する周辺車両の移動方向が自車線方向に向いたりした場合に、自車両Mが走行予定の運転区間に設定されたイベントを変更する。例えば、レーンキープイベントの後に車線変更イベントが実行されるようにイベントが設定されている場合において、外界認識部142の認識結果によって当該レーンキープイベント中に車線変更先の車線後方から車両が閾値以上の速度で進行してきたことが判明した場合、行動計画生成部144は、レーンキープイベントの次のイベントを、車線変更イベントから減速イベントやレーンキープイベント等に変更してよい。この結果、車両制御システム100は、外界の状態に変化が生じた場合においても、安全に自車両Mを自動走行させることができる。
図6は、軌道生成部146の構成の一例を示す図である。軌道生成部146は、例えば、走行態様決定部146Aと、軌道候補生成部146Bと、評価・選択部146Cとを備える。
走行態様決定部146Aは、例えば、レーンキープイベントを実施する際に、定速走行、追従走行、低速追従走行、減速走行、カーブ走行、障害物回避走行等のうち何れかの走行態様を決定する。例えば、走行態様決定部146Aは、自車両Mの前方に他車両が存在しない場合に、走行態様を定速走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、前走車両に対して追従走行するような場合に、走行態様を追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、渋滞場面等において、走行態様を低速追従走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により前走車両の減速が認識された場合や、停車や駐車等のイベントを実施する場合に、走行態様を減速走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により自車両Mがカーブ路に差し掛かったことが認識された場合に、走行態様をカーブ走行に決定する。また、走行態様決定部146Aは、外界認識部142により自車両Mの前方に障害物が認識された場合に、走行態様を障害物回避走行に決定する。
軌道候補生成部146Bは、走行態様決定部146Aにより決定された走行態様に基づいて、軌道の候補を生成する。図7は、軌道候補生成部146Bにより生成される軌道の候補の一例を示す図である。図7は、自車両Mが車線L1から車線L2に車線変更する場合に生成される軌道の候補を示している。
軌道候補生成部146Bは、図7に示すような軌道を、例えば、将来の所定時間ごとに、自車両Mの基準位置(例えば重心や後輪軸中心)が到達すべき目標位置(軌道点K)の集まりとして決定する。図8は、軌道候補生成部146Bにより生成される軌道の候補を軌道点Kで表現した図である。軌道点Kの間隔が広いほど、自車両Mの速度は速くなり、軌道点Kの間隔が狭いほど、自車両Mの速度は遅くなる。従って、軌道候補生成部146Bは、加速したい場合には軌道点Kの間隔を徐々に広くし、減速したい場合は軌道点の間隔を徐々に狭くする。
このように、軌道点Kは速度成分を含むものであるため、軌道候補生成部146Bは、軌道点Kのそれぞれに対して目標速度を与える必要がある。目標速度は、走行態様決定部146Aにより決定された走行態様に応じて決定される。
ここで、車線変更(分岐を含む)を行う場合の目標速度の決定手法について説明する。軌道候補生成部146Bは、まず、車線変更ターゲット位置(或いは合流ターゲット位置)を設定する。車線変更ターゲット位置は、周辺車両との相対位置として設定されるものであり、「どの周辺車両の間に車線変更するか」を決定するものである。軌道候補生成部146Bは、車線変更ターゲット位置を基準として3台の周辺車両に着目し、車線変更を行う場合の目標速度を決定する。図9は、車線変更ターゲット位置TAを示す図である。図中、L1は自車線を表し、L2は隣接車線を表している。ここで、自車両Mと同じ車線で、自車両Mの直前を走行する周辺車両を前走車両mA、車線変更ターゲット位置TAの直前を走行する周辺車両を前方基準車両mB、車線変更ターゲット位置TAの直後を走行する周辺車両を後方基準車両mCと定義する。自車両Mは、車線変更ターゲット位置TAの側方まで移動するために加減速を行う必要があるが、この際に前走車両mAに追いついてしまうことを回避しなければならない。このため、軌道候補生成部146Bは、3台の周辺車両の将来の状態を予測し、各周辺車両と干渉しないように目標速度を決定する。
図10は、3台の周辺車両の速度を一定と仮定した場合の速度生成モデルを示す図である。図中、mA、mBおよびmCから延出する直線は、それぞれの周辺車両が定速走行したと仮定した場合の進行方向における変位を示している。自車両Mは、車線変更が完了するポイントCPにおいて、前方基準車両mBと後方基準車両mCとの間にあり、且つ、それ以前において前走車両mAよりも後ろにいなければならない。このような制約の下、軌道候補生成部146Bは、車線変更が完了するまでの目標速度の時系列パターンを、複数導出する。そして、目標速度の時系列パターンをスプライン曲線等のモデルに適用することで、上述した図7に示すような軌道の候補を複数導出する。なお、3台の周辺車両の運動パターンは、図10に示すような定速度に限らず、定加速度、定ジャーク(躍度)を前提として予測されてもよい。
評価・選択部146Cは、軌道候補生成部146Bにより生成された軌道の候補に対して、例えば、計画性と安全性の二つの観点で評価を行い、走行制御部160に出力する軌道を選択する。計画性の観点からは、例えば、既に生成されたプラン(例えば行動計画)に対する追従性が高く、軌道の全長が短い場合に軌道が高く評価される。例えば、右方向に車線変更することが望まれる場合に、一旦左方向に車線変更して戻るといった軌道は、低い評価となる。安全性の観点からは、例えば、それぞれの軌道点において、自車両Mと物体(周辺車両等)との距離が遠く、加減速度や操舵角の変化量等が小さいほど高く評価される。
切替制御部150は、自動運転切替スイッチ87から入力される信号に基づいて自動運転モードと手動運転モードとを相互に切り替える。また、切替制御部150は、HMI70における運転操作系の構成に対する加減速または操舵を指示する操作に基づいて、自動運転モードから手動運転モードに切り替える。例えば、切替制御部150は、HMI70における運転操作系の構成から入力された信号の示す操作量が閾値を超えた状態が、基準時間以上継続した場合に、自動運転モードから手動運転モードに切り替える(オーバーライド)。なお、切替制御部150は、オーバーライドによる手動運転モードへの切り替えの後、所定時間の間、HMI70における運転操作系の構成に対する操作が検出されなかった場合に、自動運転モードに復帰させてもよい。また、切替制御部150は、例えば自動運転の終了予定地点で自動運転モードから手動運転モードに移行するハンドオーバ制御を行う場合に、車両乗員に対して事前にハンドオーバリクエストを通知するため、その旨の情報を、HMI制御部170に出力する。
走行制御部160は、軌道生成部146によって生成された軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ステアリング装置210、およびブレーキ装置220を制御する。
HMI制御部170は、自動運転制御部120により得られる運転モードの情報に基づいてHMI70を制御する。例えば、HMI制御部170は、運転モードに基づいて、HMI70の非運転操作系やナビゲーション装置50等に対する車両乗員による操作の可否を制御する。また、HMI制御部170は、車両乗員の運転に関する義務が増加する自動運転のモードの変更が行われる所定時間前および/または所定速度前に、HMI70のインターフェース装置に所定の情報を出力させる。
図11は、自車両M内におけるアームレストについて説明するための図である。図11において、アームレスト本体88Aの一端側が、シート88の背もたれ部の側面側88Bの一部に取り付けられ、アームレスト本体88Aの他端側すなわち先端側が自車両Mの正面側であって略水平方向に向かうように取り付けられている。この場合におけるアームレスト本体88Aの位置は、例えば、車両乗員Pがステアリングホイール78を把持している場合に、車両乗員Pの腕に触れない位置となっている。アームレスト本体88Aがこの位置にある状態について、以下、第1状態と称する。
アームレスト本体88Aは、主に筐体の上面側を含む部位であるアームレスト上側部88A1と、主に筐体の下側部を含む部位であるアームレスト下側部88A2と、延出部88A3とを含む。アームレスト本体88Aのうち、アームレスト下側部88A2に設けられた回転軸が、アームレスト本体88Aに設けられた角度変更部88Cと、シート88内の軸受けに連結されている。角度変更部88Cは、シート駆動装置89内に設けられており、HMI制御部170からの制御信号に従って駆動する。この角度変更部88Cが駆動することによって、アームレスト下側部88A2の回転軸を中心としてアームレスト本体88Aの先端側(アームレスト上側部88A1側)が上方側と下方側のいずれかに動くことで位置を変更することができる。
アームレスト上側部88A1とアームレスト下側部88A2は、延出部88A3によって互いに連結されている。
アームレスト上側部88A1は、車両乗員Pの腕が載せられるようになっている。また、アームレスト上側部88A1内部の上面側には、センサ88A4が設けられている。センサ88A4は、アームレスト上側部88A1に物体が載せられているか否かを検出する。このセンサ88A4は、物体が載せられているか否かを検出できればよく、例えば、荷重センサ、圧力センサ、静電容量型近接センサ等のうち少なくともいずれか一つを用いることができる。
また、アームレスト上側部88A1は、延出部88A3が延出することによって、アームレスト下側部88A2に対して離間するように移動することで、自車両Mの正面側(ステアリングホイール78に接近する方向)に位置を変更することができる。
アームレスト下側部88A2は、その回転軸が角度変更部88Cに連結されており、この回転軸を中心として上下方向に回転することが可能である一方、自車両Mの正面側あるいは後方側には移動しないように規制されている。この回転範囲としては、例えば、アームレスト本体88Aの長手方向が鉛直方向からステアリングホイール78の中心に向かう方向までの範囲である。例えば鉛直方向に対するアームレスト下側部88A2の長手方向の角度をθとした場合、角度θは、0度(鉛直方向)から110度程度までの範囲である。なお、第1状態において、角度θは、ほぼ水平方向をとなる角度であり、例えば、90度である。
延出部88A3は、一端側がアームレスト下側部88A2に連結され、他端側がアームレスト上側部88A1に連結される。この延出部88A3は、HMI制御部170からの制御信号に基づいて、一端側と他端側の距離を延ばすまたは縮めるように駆動する駆動部を有する。
次に、アームレスト本体88Aの第2状態について、図12を用いて説明する。
図12において、第2状態としては、延出部88A3が延びることによって、アームレスト上側部88A1がアームレスト下側部88A2から離間するように移動した状態である。この場合、アームレスト上側部88A1は、ステアリングホイール78から所定の距離だけ離れた位置に到達する。この場合における所定の距離としては、例えば、アームレスト上側部88A1に載せられた腕から手のひらをステアリングホイール78に速やかに把持あるいは、ステアリングホイール78を把持した手を離した際に、腕を速やかにアームレスト上側部88A1に載せることができる程度の距離に設定される。ここでは、アームレスト上側部88A1は、ステアリングホイール78から一定の距離内にあるが、ステアリングホイール78には当接しない距離に位置するため、アームレスト上側部88A1がステアリングホイール78に当接して運転操作の妨げにならないようになっている。
また、第2状態におけるアームレスト本体88Aの角度θを角度θ2として任意に設定するようにしてもよい。これにより、車両乗員Pの体型や腕の長さ等によっては、アームレスト本体88Aが水平方向よりも上側の方が、車両乗員Pの腕をアームレスト上側部88A1に載せた状態で車両乗員Pの手のひらをスムーズに近づけやすい場合等を考慮して設定することができ、車両乗員Pのハンドルを把持するあるいはハンドルを離すことをスムーズに行なうことができ、快適性を向上させることができる。
図13は、アームレスト本体88Aが第2状態である場合において、車両乗員Pの腕がアームレスト本体88Aに載せられた場合を表す図である。ここでは、運転モードが第1モードまたは、第2モードにおける運転操作が必要のない状態に移行した場合、車両乗員Pは、ステアリングホイール78を把持する必要がない。そのため、運転モードが第1モードまたは、第2モードにおける運転操作が必要のない状態に移行した場合に、アームレスト本体88Aが第2状態に移行した場合には、車両乗員Pは、ステアリングホイール78を離すことができ、この場合、アームレスト上側部88A1が腕の直ぐ近傍にあるため、そのまま腕をアームレスト上側部88A1にスムーズに載せることができる。これにより、ステアリングホイール78の操作が必要がない運転モードに移行した場合には、車両乗員Pの腕を直ぐに受けることができるため、車両乗員Pの自車両Mにおける快適性を向上させることができる。
この場合、センサ88A4は、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられたことを検出し、検出結果をHMI制御部170に出力する。
図14は、アームレスト本体88Aが第2状態から第1状態に移行しており、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられた状態を表す図である。この場合、車両乗員Pは、ステアリングホイール78の操作の必要がない運転モードにおいて、第2状態におけるアームレスト上側部88A1に腕を載せると、アームレスト本体88Aの状態が第1状態に移行する。これにより、車両乗員Pは、ステアリングホイール78の近傍まで伸ばしていた腕を縮めるようにすることができる。この場合、車両乗員Pの肘の位置が、車両乗員Pの腹部の近傍に近づくような姿勢に移行するため、腕を伸ばした状態に比べてリラックスした姿勢に移行させることができる。これにより、ステアリングホイール78の操作の必要がない運転モードに移行した場合には、車両乗員Pの肘を腹部に近い位置となるように腕を縮めさせることができ、車両乗員Pの自車両Mにおける快適性を向上させることができる。
図15は、アームレスト本体88Aの第3状態を表す図である。第3状態は、第1状態から移行する状態であり、アームレスト上側部88A1が、水平方向よりも下側に移動している。この場合、アームレスト本体88Aの角度θは、アームレスト本体88Aの長手方向が水平方向を向く角度よりも小さな角度θ3である。例えば、角度θ3は、70度~80度程度に設定される。
図16は、アームレスト本体88Aの第4状態を表す図である。第4状態は、第3状態から移行する状態であり、第3状態において、延出部88A3が延びることによって、アームレスト上側部88A1がアームレスト下側部88A2から離間した状態である。このとき、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられた状態のままアームレスト上側部88A1が離間する。そのため、車両乗員Pの腕が伸びるような姿勢に移行する。すなわち、車両乗員Pの肘が腹部から離れる方向に移動することで、車両乗員Pの手のひらがステアリングホイール78に近づく。ここでは、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載った状態のまま、第4状態に移行するため、車両乗員Pは、自ら腕をアームレスト上側部88A1から離して腕を伸ばしてステアリングホイール78を把持するような動作を行なわなくても、腕をアームレスト上側部88A1に載せておくだけで、手のひらがステアリングホイール78に近づく。そのため、第4状態に移行した後に、ステアリングホイール78を把持すればよいため、ステアリングホイール78を把持する必要が生じた場合であっても、快適性を保った状態を維持する期間をより長く確保することができる。
ここで、図11から図16において、シート88の右側方にアームレスト本体88Aが設けられる場合について図示されているが、シート88の左側方側にも同様に、アームレスト本体88Aが設けられる。
図17は、HMI制御部170の構成の一例を示す図である。この図に示すHMI制御部170は、上述した機能の他に、運転モード取得部171、位置制御部172、検出結果取得部175をさらに備える。
運転モード取得部171は、自動運転制御部120から運転モードに関する情報を取得する。この運転モードの取得は、例えば、自動運転モード制御部130が運転モードを決定する都度取得してもよいし、一定期間毎に、運転モードを取得してもよい。
位置制御部172は、運転モード取得部171によって取得した運転モードに基づいて、自動運転の度合に応じてアームレスト本体88Aの位置、特に、アームレスト上側部88A1の位置を制御する。位置制御部は172、自動運転の度合が遷移することに応じた位置となるように、アームレスト本体88Aの位置を制御する。
また、位置制御部172は、アームレスト本体88Aの位置を制御する場合、運転モード取得部171によって取得した運転モードに基づいて、自動運転の度合の遷移状態に応じて制御することもできる。この場合における自動運転の度合の遷移状態としては、例えば、自動運転の度合が低い状態から高い状態に上昇する遷移である場合と、自動運転の度合が高い状態から低い状態に低下する遷移である場合とがある。
自動運転の度合が上昇する場合としては、例えば、ステアリングホイール78の操作が必要な自動運転の度合からステアリングホイール78の操作が不要な自動運転の度合へ遷移する場合であってもよいし、自動運転の度合が他の運転モードから第1モードへ遷移する場合であってもよい。
自動運転の度合が低下する場合としては、例えば、ステアリングホイール78の操作が不要な自動運転の度合からステアリングホイール78の操作が必要な自動運転の度合へ遷移する場合であってもよいし、自動運転の度合が少なくとも1段階低下する場合であってもよいし、自動運転の度合が他の運転モードから手動運転モードへ遷移する場合であってもよい。
例えば、位置制御部172は、自動運転の度合が低い状態から高い状態に遷移する場合に、アームレスト上側部88A1の位置をステアリングホイール78から所定の距離だけ離れた第1位置まで移動させた後、ステアリングホイール78から第1位置よりも離れた第2位置に移動させる。
自動運転の度合が低い状態である場合、例えば図11に示すように、アームレスト本体88Aは、第1状態となっている。この第1状態において、アームレスト本体88Aは、延出部88A3による延出がされておらず、アームレスト上側部88A1とアームレスト下側部88A2が、ほぼ接しており(離間していない)、アームレスト本体88Aの長手方向の向きが略水平方向(角度θ1が90°程度)となっている。車両乗員Pは、自動運転の度合が低い状態であるためステアリングホイール78を把持しており、このとき、車両乗員Pの腕は、アームレスト本体88Aには触れない状態になっている。自動運転の度合が低い状態から高い状態に遷移すると、アームレスト上側部88A1の位置がステアリングホイール78から所定の距離だけ離れた第1位置まで移動する。この第1位置としては、例えば、図12に示すように、アームレスト本体88Aの延出部88A3が延出されることでアームレスト上側部88A1がアームレスト下側部88A2から離間し、アームレスト本体88Aの角度がθ1よりも大きな角度θ2に設定されることで第1状態よりもやや上方を向くような位置である。このように延出部88A3による延出が行なわれ、アームレスト本体88Aの角度がθ2に設定されることで、アームレスト上側部88A1の先端側の位置が、第1状態に比べてステアリングホイール78に近い位置に近づく。自動運転の度合が低い状態から高い状態(運転操作をする必要がない運転モード)に遷移すると、車両乗員Pは、ステアリングホイール78を把持する必要がないため、ステアリングホイール78から手を離す。このとき、アームレスト上側部88A1がステアリングホイール78に近づいた位置まで延出しているため、車両乗員Pは、腕を伸ばした状態でそのまま腕を下に下ろすと、例えば図13に示すように、腕を少し下ろすだけでアームレスト本体88Aに、少なくとも前腕の一部を自然に載せることができる。これにより、車両乗員Pは、運転操作の必要がない運転モードに遷移した場合に、速やかに腕を休めることができる。
また、位置制御部172は、アームレスト本体88Aの位置を第1位置に移動した後、アームレスト本体88Aの位置がステアリングホイール78から第1位置よりも離れた第2位置になるように移動させる。第1位置から第2位置へ移行を開始するトリガーとしては、例えば、センサ88A4によって車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられたことを検出した場合、アームレスト本体88Aが第1位置に到達してから所定の時間が経過したと判定した場合、のいずれかであってもよい。センサ88A4によって車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられたことを検出して第1位置から第2位置に移行する場合には、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられる前に、アームレスト本体88Aが第2状態から第1状態に移行してしまうことを防止することができる。また、アームレスト本体88Aが第1位置に到達してから所定の時間が経過したと判定した場合に第1位置から第2位置に移行する場合には、車両乗員Pがアームレスト本体88Aを利用しない状況であるにもかかわらず、延出部88A3が延出されたままの状態となってしまうことを防止することができる。車両乗員Pがアームレスト本体88Aを利用しない場合としては、例えば、車両乗員Pが両腕を頭上に挙げて伸ばしてストレッチをする場合や、周囲に置いてある荷物を取り出す場合がある。
ここで、第2位置としては、例えば図14に示すように、延出されていた延出部88A3が収縮することで、アームレスト上側部88A1がアームレスト下側部88A2にほぼ接する位置となり、その際のアームレスト本体88Aの角度が角度θ1(90°程度)となる位置である。第1位置から第2位置に移行する場合、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられたままの状態で延出部88A3が収縮してアームレスト上側部88A1の位置がアームレスト下側部88A2に接する位置に到達し、かつ、アームレスト本体88Aの角度が角度θ1に到達する。これにより、車両乗員Pは、腕の姿勢を変えるような意識をしなくても、腕を伸ばした状態から肘が曲げられてその肘が体の側方側に近づくような姿勢にすることができる。これにより車両乗員Pは、自身の体に近い位置で腕を休めることができる。
また、位置制御部172は、自動運転の度合が高い状態から低い状態に遷移する場合に、アームレスト上側部88A1をステアリングホイール78から所定の距離よりも離れた位置(第1状態)から所定の距離だけ離れた位置(第2状態)まで移動させる。ここで、自動運転の度合が高い状態から低い状態に遷移する場合としては、例えば、車両乗員Pによるステアリングホイール78の操作が不要な運転モード(例えば、第1モード、第2モード(ステアリングホイール78の操作が必要な状態))から車両乗員Pによるステアリングホイール78の操作が必要な運転モード(例えば、手動運転モード、第3モード、第2モード(ステアリングホイール78の操作が必要な状態)に遷移する場合である。
自動運転の度合が高い状態である場合、例えば、図14に示すように延出部88A3が収縮しておりアームレスト上側部88A1とアームレスト下側部88A2とがほぼ接する位置であって、アームレスト本体88Aの向きが略水辺方向(角度θ1が90°程度)である状態である。このとき、車両乗員Pの腕は、肘を曲げた状態でアームレスト本体88Aの上に載せられている。
位置制御部172は、アームレスト上側部88A1を第2状態から第1状態に遷移させるまでの少なくとも一部の期間において、アームレスト本体88Aの向きを水平方向よりも下方となるように、アームレスト本体88Aの角度を角度θ1から角度θ3(<角度θ1)に傾ける(例えば、図15、第3状態)。これにより、車両乗員Pの手首の位置が肘よりも下方に下がることで車両乗員Pが曲げていた肘の角度を、アームレスト本体88Aが第1状態(略水平方向)における肘の角度に比べて、緩やかにする(肘をやや伸ばす)ことができる。
位置制御部172は、第3状態に移行した後、図16に示すように第4状態に移行する。ここでは、位置制御部172は、アームレスト本体88Aの角度が角度θ3のままで、延出部88A3を延出させることで、アームレスト上側部88A1をアームレスト下側部88A2から離間させる。車両乗員Pの前腕はアームレスト上側部88A1に載せられているため、延出部88A3の延出によりアームレスト上側部88A1の位置がステアリングホイール78の位置に近づく方向に移動すると、車両乗員Pの前腕の位置もアームレスト上側部88A1の移動とともに、肘の角度がさらに緩やかになりつつ、ステアリングホイール78の位置に近づく方向に移動する(例えば、図16)。これにより、車両乗員Pは、腕の姿勢を変更するような意識を特にすることなく、腕を少しずつ伸ばし、前腕をステアリングホイール78に近づく方向に移動させることができる。第4状態に移行した後、位置制御部172は、延出部88A3を延出させた状態でアームレスト本体88Aの角度を角度θ3から角度θ2に変更することで、アームレスト本体88Aの角度を水平方向よりもやや上方に向ける(図13、第2状態)。これにより、アームレスト上側部88A1に腕を載せていた車両乗員Pの手の位置が、ステアリングホイール78の下方側からステアリングホイール78に近づくように移動するため、車両乗員Pは、アームレスト上側部88A1から腕を少し持ち上げることで、ステアリングホイール78を自然に把持することができる(図12、第2状態)。また、車両乗員Pは、腕を少し持ち上げるだけで手をステアリングホイール78の位置に到達させステアリングホイール78を把持することができるため、運転操作が必要となった際にステアリングホイール78の位置を視認することなくステアリングホイール78を速やかに把持することができる、あるいはステアリングホイール78を容易に見つけることができる。
また、位置制御部172は、第1状態から第2状態に移行した後において、ステアリングホイール78が乗員によって把持されたことを検出するセンサから得られる検出信号に基づいて、ステアリングホイール78が乗員によって把持されたことが検出された場合に、アームレスト上側部88A1を第2状態から第1状態に移行させる。ステアリングホイール78が車両乗員Pによって把持されたことを検出するセンサとしては、例えば、車室内カメラ95を用いることができる。車室内カメラ95を用いる場合、この車室内カメラ95から得られる画像データを画像認識することで、ステアリングホイール78と車両乗員Pとを認識し、そのステアリングホイール78の周方向の一部の画像に、車両乗員Pの一部(手)の画像が存在する場合には、車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されていると検出する。また、ステアリングホイール78に圧力センサや静電容量型近接センサを設け、車両乗員Pがステアリングホイール78に触れたか否かを検出するようにすることもできる。
圧力センサを用いる場合、ステアリングホイール78の周方向に複数個の圧力センサを並べるように設置し、複数個の圧力センサからそれぞれ所定以上の圧力を検出した場合に車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されたことを検出する。複数個の圧力センサによって所定値以上の圧力を検出することで、例えば、ステアリングホイール78の把持可能な領域のうち離れた位置において把持された、すなわち右手と左手によって把持されたことを検出することができる。
静電容量型近接センサを用いる場合、ステアリングホイール78の周方向に沿うように静電容量型近接センサを設け、検出対象の領域のうち所定以上の面積において物体が近接したことを静電容量の変化に基づいて検出した場合に、ステアリングホイール78が車両乗員Pによって把持されたと判定する。例えば、車両乗員Pの右手と左手のそれぞれによってステアリングホイール78が把持されると、右手と左手の手の平がステアリングホイール78に接することとなり、この場合に静電容量が所定値以上変化するため、ステアリングホイール78が把持されたことを検出することができる。
また、位置制御部172は、第3状態または第1状態から第2状態に遷移するまでの間の一部の期間において、シート88の右側方に設けられたアームレスト本体88Aのアームレスト上側部88A1と、シート88の左側方に設けられたアームレスト本体88Aのアームレスト上側部88A1との位置(距離)について、車両乗員Pの肩幅程度に広がっている状態からお互いに近づくように移動させるようにしてもよい。これにより、シート88の右側方に設けられたアームレスト上側部88A1に載せられた車両乗員Pの右腕と、シート88の左側方に設けられたアームレスト上側部88A1に載せられた車両乗員Pの左腕とを近づけることができる。例えば、右側方及び左側方のアームレスト上側部88A1との距離が肩幅程度に広がっている状態からステアリングホイール78の直径程度の距離まで近づけるようにすることで、車両乗員Pの両腕の距離が肩幅程度に広がっている状態からステアリングホイール78の直径程度まで近づくため、車両乗員Pに対してステアリングホイール78を把持しやすい状態にすることができる。
また、位置制御部172は、アームレスト本体88Aの位置を変更する場合、アームレスト本体88Aの位置や角度を移行する順序を示す移行順序データを参照し、どの位置、角度にどのような順で変更するかを決定する。移行順序データは、例えば、位置制御部172の内部のメモリ領域に記憶するようにしてもよいし、車両制御システム100の記憶部180内に記憶するようにしてもよい。
図18は、移行順序データの一例を示すデータテーブルである。移行順序データは、自動運転の度合の遷移状態と移行順序IDと移行順序とが対応付けられたデータである。ここでは一例として、自動運転の度合が第1モード、第2モード、第3モードのいずれかから、遷移する先の自動運転の度合が「手動運転モード」である場合には、移行順序IDが「移行順序1」であり、移行順序として「第1状態→第3状態→第4状態→第2状態→第1状態」が対応付けられる。また、自動運転の度合が第2モード、第3モード、手動運転モードのいずれかから「第1モード」に遷移する場合には、移行順序IDは「移行順序2」であり、移行順序として「第1状態→第2状態→第1状態」が対応付けされている。図18に示す移行順序データについては、遷移先の自動運転の度合が「手動運転モード」や「第1モード」について例示したが、「手動運転モード」や「第1モード」以外の自動運転の度合に対し、種々の移行順序を記憶することもできる。
また、図18に示す移行順序データについては、遷移先の自動運転の度合と移行順序IDと移行順序とが対応付けられた場合について説明したが、自動運転の度合が上昇する場合と、自動運転の度合が低下する場合に対してそれぞれ、移行順序IDと移行順序とを対応づけて記憶するようにしてもよい。
<処理フロー>
以下、本実施形態に係る車両制御システム100よる処理の流れについて説明する。なお、以下の説明では、車両制御システム100のおける各種処理のうち、主にHMI制御部170により実施されるアームレストの角度や位置を変更する処理の流れについて説明する。この処理フローは、自車両Mの運転が開始されてから終了するまでの間、一定時間毎に実施される。
図19は、HMI制御処理の第1の実施例を示すフローチャートである。図19の例において、HMI制御部170の運転モード取得部171は、自動運転制御部120よりモード情報を取得する(ステップS101)。位置制御部172は、この取得されたモード情報に含まれる運転モードが、現在の運転モードから他の運転モードに変更されるか否かを判定する(ステップS102)。運転のモードの変更がない場合(ステップS102-NO)、HMI制御部170は、一定時間待ち(ステップS103)、その後にステップS101に移行し、モード情報を取得する。
一方、運転モードの変更がある場合(ステップS102-YES)、変更後の運転モードのレベル(度合)が変更前の運転モードのレベルに対して低下する変更であるか否かを判定する(ステップS104)。ここでは、運転モードのレベルの低下であるか否かを判定する場合、いずれかの自動運転のモードから手動運転モードに変更される運転モードのレベルの低下であるか否かを判定するようにしてもよいし、ステアリングホイールの操作が不要な自動運転のモードからステアリングホイールの操作が必要となる自動運転モードへの低下であるか否かを判定するようにしてもよい。いずれかの自動運転のモードから手動運転モードに変更される運転モードのレベルの低下である場合、または、ステアリングホイールの操作が不要な自動運転のモードからステアリングホイールの操作が必要となる自動運転モードへの低下である場合には、運転モードのレベルが低下する変更であると判定する(ステップS104-YES)。運転モードのレベルが低下する変更であると判定された場合、位置制御部172は、「移行順序1」に対応する移行順序に従って、アームレスト本体88Aの位置を変更するよう、シート駆動装置89の角度変更部88C、延出部88A3に制御信号を出力し、アームレスト上側部88A1の位置の変更を開始する(ステップS105)。この場合における移動順序は、「第1状態→第3状態→第4状態→第2状態→第1状態」である。そして、位置制御部172は、アームレスト本体88Aの状態が第3状態、第4状態を経て第2状態に移行したか否かを判定し(ステップS106)、第2状態に移行していない場合には(ステップS106-NO)、一定時間待ち(ステップS107)、その後に再度ステップS106に移行し、第2状態に移行したか否かを判定する。
第2状態に移行したと判定されると(ステップS106-YES)、位置制御部172は、車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されたか否かを判定する(ステップS108)。ステアリングホイール78が把持されたか否かの判定は、例えば、車室内カメラ95、ステアリングホイール78に設けられる圧力センサ、ステアリングホイール78に設けられる静電容量型近接センサのうち少なくともいずれか1つによる検出結果を参照することで判定する。車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されたと判定されると(ステップS108-YES)、位置制御部172は、第1状態に移行し(ステップS109)、処理を終了する。ここでは、車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されたと判定された場合には、車両乗員Pの姿勢は、腕を休める状態から、運転操作をするためにステアリングホイール78を把持する状態に移行したものとし、これにより、延出されたアームレスト上側部88A1を収納し、車両乗員Pが運転操作をしやすい環境を作ることができる。
一方、ステップS108において、車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されていないと判定されると(ステップS108-NO)、一定時間待ち(ステップS110)、ステップS108の判定を行なった時点から予め設定された所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS111)。この所定の時間は、任意に設定することができる。例えば、運転モードのレベルが低下すると判定されてからアームレスト本体88Aの位置の変更が行なわれて車両乗員Pによってステアリングホイール78を把持するまでにかかる時間に応じて決めることができる。ステップS111において、所定の時間が経過していないと判定された場合には(ステップS111-NO)、位置制御部172は、ステップS108に移行し、車両乗員Pによってステアリングホイール78が把持されたか否かを再度判定する(ステップS108)。
一方、ステップS111において、所定の時間が経過したと判定された場合には(ステップS111-YES)、位置制御部172は、「ハンドオーバが発生しますので、アームレストを収縮させます。」等のアナウンスをナビゲーション装置50、表示装置82の画面上に表示させ、スピーカ83から音声によって出力する。これにより、車両乗員Pがステアリングホイール78を把持していない状態(車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1から離れていない状態)であっても、ハンドオーバが行なわれるまでの間に、アームレスト本体88Aの状態を第1状態に移行させることができる。また、アナウンスが出力されることで、ハンドオーバが発生するためにアームレスト本体88Aが収縮されることを車両乗員Pに認識させ、ステアリングホイール78を把持させるように促すことができる。そして、位置制御部172は、アナウンスを出力した後(ステップS112)、アームレスト本体88Aを第1状態に移行させる(ステップS109)。これにより、第1状態において肘を曲げてアームレスト本体88Aに前腕を載せて腕を休ませていた状態から腕を伸ばしてステアリングホイール78に近い位置に腕を案内し、かつ、アナウンスの出力がされたにもかかわらず車両乗員Pがステアリングホイール78を把持しない場合には、アームレスト本体88Aを第1状態に戻すことで、強制的に腕をアームレスト本体88Aから離間させることもできる。また、運転モードが、ステアリングホイール78の操作が必要な運転モードに切り替わった場合であっても、アームレスト本体88Aがステアリングホイール78の近傍に位置し続けて車両乗員Pにとってステアリングホイール78の操作の邪魔になってしまうことを防止することができる。
一方、ステップS104において、運転モードのレベルが下がる変更ではない場合、すなわち、運転モードのレベルが上昇する変更(例えば、いずれかの自動運転のモードから第1モードに変更される自動運転モードのレベルの上昇である場合、または、ステアリングホイールの操作が必要な自動運転のモードからステアリングホイールの操作が不要な自動運転のモードのレベルの上昇)である場合には(ステップS104-NO)、位置制御部172は、「移行順序2」に対応する移行順序に従って、アームレスト上側部88A1の移動を開始する(ステップS113)。この場合における移動順序は、「第1状態→第2状態→第1状態」である。ここでは、アームレスト上側部88A1が延出することで、車両乗員Pは、ステアリングホイール78から手を離して腕を休ませてよいことを認識することも可能であるが、位置制御部172が、「ステアリングホイールの操作が不要な運転モードに移行します。アームレストで腕を休めることができます。」等のアナウンスをナビゲーション装置50、表示装置82の画面上に表示させ、スピーカ83から音声によって出力するようにしてもよい。これにより、アームレスト本体88Aを利用できることをより認識しやすくすることができる。
そして位置制御部172は、第1状態から第2状態に移行したか否かを判定する(ステップS114)。第2状態に移行していないと判定された場合、位置制御部172は、一定時間待ち(ステップS115)、ステップS114に移行し、第2状態に移行したか否かの判定を再度行なう(ステップS115)。
ステップS115において、第2状態に移行したと判定されると、位置制御部172は、センサ88A4からの検出結果に基づいて、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載置されたか否かを判定する(ステップS116)。車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載置されたと判定されると(ステップS116-YES)、位置制御部172は、アームレスト本体88Aの状態を第1状態に移行させる。
一方、ステップS116において、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載置されていないと判定された場合には(ステップS116-NO)、位置制御部172は、一定時間待ち(ステップS117)、予め設定された所定時間が経過したか否かを判定する。この所定時間としては、任意に設定することができる。例えば、運転モードのレベルが上昇すると判定されてからアームレスト本体88Aの位置の変更が行なわれて車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載置されるまでにかかる時間に応じて決めることができる。
所定時間が経過していないと判定された場合には(ステップS118-NO)、位置制御部172は、ステップS116に移行し、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載置されたか否かの判定を再度行なう(ステップS117)。
一方、ステップS118において、所定時間が経過したと判定された場合には(ステップS118-YES)、「一定時間が経過しましたので、アームレストを収縮します」等のアナウンスをナビゲーション装置50、表示装置82の画面上に表示させ、スピーカ83から音声によって出力する(ステップS119)。第1状態から第2状態に移行しても車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載置されない場合としては、例えば、車両乗員Pがアームレスト上側部88A1を利用せずに、頭上に腕を伸ばしてストレッチをしたり、周囲においてある荷物を取り出したりするような場面が考えられる。このような場合には、所定時間経過後にアームレスト本体88Aの状態を第1状態に移行することで、アームレスト本体88Aを利用しないという車両乗員Pの意志に合わせてアームレスト本体88Aを収縮することができる。
また、上述した実施形態において、ステップS104において、変更後の運転モードのレベルが変更前の運転モードのレベルに対して低下する変更であると判定された場合に、移行順序1に従ってアームレスト本体88Aの状態を変更する場合について説明したが、運転モードのレベルの低下が、「予定されたレベルの低下」であるか「緊急のレベルの低下」であるかを判定し、「予定されたレベルの低下」である場合には、移行順序1に従ってアームレスト本体88Aの状態を変更し、「緊急のレベルの低下」である場合には、アームレスト本体88Aの状態遷移を行なわず、第1状態のままにするようにしてもよい。これにより、アームレスト本体88Aの状態が変更されるか否かによらず、車両乗員Pは、速やかにステアリングホイール78を把持することができる。
ここで、「予定されたレベルの低下」は、例えば、走行ルートを設定した際に、ハンドオーバすることが予め決められた場合における自動運転の度合の遷移状態であり、車線の合流地点やトンネルの入り口、高速道路の出口等において設定される。「緊急のレベルの低下」は、例えば、ハンドオーバすることが予め決められてはいなかったが、車両の走行時の状態に応じて自動運転の度合が高い状態(第1モード、第2モード、第3モードのいずれか)から低い状態(手動運転モード)に遷移する場合であり、例えば、検知デバイスの故障が発生した場合である。
また、上述した実施形態において、ステップS108において、ステアリングを把持したか否かを判定するようにしたが、車両乗員Pの腕がアームレスト本体88Aから離れたか否かを判定するようにしてもよい。この場合、センサ88A4によって、車両乗員Pの腕がアームレスト上側部88A1に載せられた状態から載せられていない状態に移行したか否かを検出するようにしてもよい。
また、上述した実施形態において、ステップS112、ステップS119において、アームレスト本体88Aを収縮する場合に、アームレスト本体88Aを収縮することをナビゲーション装置50や表示装置82を用いてアナウンスするようにしたが、アームレスト本体88Aを延出させる場合に、アームレスト本体88Aが延出されることをアナウンスするようにしてもよい。例えば、運転モードのレベルが低下することに伴ってアームレスト本体88Aが延出される際にアナウンスする場合には、ステアリングホイール78を把持する必要があることをより認識しやすくなる。また、運転モードのレベルが上昇することに伴ってアームレスト本体88Aが延出される際にアナウンスする場合には、ステアリングホイール78から手を離して腕を休ませてもよいことを認識しやすくすることができる。
なお、上述した図19に示すHMI制御処理は、自動運転制御部よりモード情報を取得した場合に実行してもよく、一定の時間間隔で実施してもよい。なお、実施形態としては、上述した各実施例の一部または全部を組み合わせてもよい。
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。