以下、いくつかの実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器の概略構成を示す模式図である。図2は、図1の電子機器の概略構成を示す断面図である。電子機器100は、把持部110と、測定部120とを備える。図1は、被検部位に接触する裏面120a側から電子機器100を観察した図である。
電子機器100は、被検者が電子機器100を把持して測定部120を被検部位に接触させた状態で、被検者の生体情報を測定する。電子機器100が測定する生体情報は、測定部120で測定可能な被検者の脈波である。一実施形態においては、被検者は、被検者の頸動脈における脈波を取得可能な位置に測定部120が接触するように、電子機器100を把持して、脈波を取得する。
一実施形態において、被検者は、測定部120の裏面120aが被検部位に接触するように電子機器100を首に接触させて、脈波の測定を行う。電子機器100は、被検者の首において、頸動脈を流れる血液の脈波を測定する。
測定部120は、脈波の測定時に被検者の首に接触する裏面120aと、裏面120aと反対側の表面120bとを有する。測定部120は、裏面120a側に開口部111を有する。センサ部130は、被検者の首に接触する第1端と、測定部120に接する第2端とを有する。センサ部130は、弾性体140が押圧されていない状態において、開口部111から裏面120a側に第1端が突出している。センサ部130の第1端は、脈あて部132を有する。センサ部130の第1端は、裏面120aの平面とほぼ垂直な方向に変位可能である。センサ部130の第2端は、軸部133を介して測定部120に接している。また、測定部120は、裏面120a側において、脈波の測定時に首と接触することにより電子機器100の首への接触状態を安定させるためのセンサ支持部121を備える。
センサ部130の第1端は、弾性体140を介して測定部120に接している。センサ部130の第1端は、測定部120に対して変位可能である。弾性体140は、例えばばねを含む。弾性体140は、ばねに限らず、他の任意の弾性体、例えば樹脂、スポンジ等であってもよい。
なお、測定部120には制御部、記憶部、通信部、電源部、報知部、及びこれらを動作させる回路、接続するケーブル等が配置されていてもよい。
センサ部130は、センサ部130の変位を検出する角速度センサ131を備える。角速度センサ131はセンサ部130の角度変位を検出できればよい。センサ部130が備えるセンサは、角速度センサ131に限らず、例えば加速度センサ、角度センサ、その他のモーションセンサであってもよいし、これらのセンサを複数備えていてもよい。
図3は、被検者による電子機器100の使用状態の一例を示す図である。図3では、説明のため、模式的に頸動脈の位置を示している。被検者は、測定部120が被検部位に接触するように、電子機器100の把持部110を指で把持する。一実施形態では、被検者は、特に皮膚上において頸動脈が存在する位置に脈あて部132が接触するように、電子機器100を把持する。被検者が、センサ支持部121が胸鎖乳突筋に接触するように電子機器100を把持することにより、脈あて部132は安定して頸動脈が存在する位置に接触しやすくなる。
電子機器100が被検者の首に接触している状態において、センサ部130の第1端は、測定部120とセンサ部130との間に配置される弾性体140の弾性力により、被検者の頸動脈上の皮膚を所定の圧力で押圧するように接触している。センサ部130は、被検者の頸動脈の動き、すなわち脈動に応じて変位する。角速度センサ131は、センサ部130の変位を検出することにより、頸動脈の脈波を取得する。脈波とは、血液の流入によって生じる血管の容積時間変化を体表面から波形としてとらえたものである。
再び図2を参照すると、センサ部130は、弾性体140が押圧されていない状態において、開口部111から第1端が突出した状態である。被検者が電子機器100を首に接触させた際、センサ部130の第1端は被検者の首の皮膚に接触しており、脈動に応じて、弾性体140が伸縮し、センサ部130の第1端が変位する。弾性体140は、脈動を妨げず、かつ脈動に応じて伸縮するように、適度な弾性率を有するものが用いられる。開口部111の開口幅Wは、血管径、一実施形態では頸動脈径より十分大きい幅を有していてもよい。測定部120に開口部111を設けることにより、電子機器100を首に接触させた状態において、測定部120の裏面120aは頸動脈を圧迫しない。そのため、電子機器100はノイズの少ない脈波の取得が可能となり、脈波の測定の精度が向上する。
図3では、電子機器100を首に接触させ、頸動脈における脈波を取得する例を示したが、電子機器100は、例えば、被検者の手首において、橈骨動脈又は尺骨動脈を流れる血液の脈波を取得してもよい。具体的には、被検者は、脈あて部132を橈骨動脈又は尺骨動脈の位置に軽く押し当てて、脈波の測定を行ってもよい。
なお、電子機器100の構成は、図2に示すものに限られない。図4は、電子機器100の他の一例の概略構成を示す断面図である。図4に示す電子機器100は、弾性体140として、ねじりコイルばねを備える。ねじりコイルばねは2つのアームを有する。第1のアームは、センサ部130に接続される。第2のアームは、圧力調整部141に接続される。圧力調整部141は、弾性体140によるセンサ部130から被検部位への圧力を調整可能な機構である。圧力調整部141は、例えば偏心軸を有する回転機構により構成され、当該回転機構が回転することにより、弾性体140による圧力を調整できる。電子機器100が圧力調整部141を有する場合には、被検者に応じてセンサ部130から被検部位にかかる圧力を調整できるため、各被検者に応じてより高い精度で脈波の測定を行うことができる。
図5は、電子機器100の機能ブロック図である。電子機器100は、センサ部130と、制御部143と、電源部144と、記憶部145と、通信部146と、報知部147とを含む。一実施形態では、制御部143、電源部144、記憶部145、通信部146及び報知部147は、測定部120又は把持部110の内部に含まれていてもよい。
センサ部130は、角速度センサ131を含み、被検部位から脈動を検出して脈波を取得する。
制御部143は、電子機器100の各機能ブロックをはじめとして、電子機器100の全体を制御及び管理するプロセッサである。また、制御部143は、取得された脈波から、被検者の頸動脈の状態を推定するプロセッサである。制御部143は、制御手順を規定したプログラム及び頸動脈の状態を推定するプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される。これらのプログラムは、例えば記憶部145等の記憶媒体に格納される。制御部143は、報知部147へのデータの報知を行ってもよい。
電源部144は、例えばリチウムイオン電池並びにその充電及び放電のための制御回路等を備え、電子機器100全体に電力を供給する。電源部144は、リチウムイオン電池等の二次電池に限らず、例えばボタン電池等の一次電池であってもよい。
記憶部145は、プログラム及びデータを記憶する。記憶部145は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の非一過的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。記憶部145は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。記憶部145は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部145は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。記憶部145は、各種情報や電子機器100を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。記憶部145は、例えばセンサ部130により取得された脈波の測定結果を記憶してもよい。
通信部146は、外部装置と有線通信又は無線通信を行うことにより、各種データの送受信を行う。通信部146は、例えば、健康状態を管理するために被検者の生体情報を記憶する外部装置と通信を行う。通信部146は、電子機器100が測定した脈波の測定結果や、電子機器100が推定した健康状態を、当該外部装置に送信する。
報知部147は、音、振動、及び画像等で情報を報知する。報知部147は、スピーカ、振動子、及び表示デバイスを備えていてもよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等とすることができる。一実施形態において、報知部147は、例えば、被検者の頸動脈の状態を報知する。
次に、電子機器100による脈波の測定処理の詳細について説明する。図6は、電子機器100による脈波の測定処理について説明するための模式図である。図7は、電子機器100による脈波の測定処理の手順を示すフロー図である。図6において、横軸は時間を示し、縦軸は脈波に基づく角速度センサ131の出力(rad/秒)を模式的に示すものである。図6では、角速度センサ131の出力は、各脈波のピークのみを示している。
被検者は、時刻t0において、電子機器100に対して脈波測定処理を開始するための所定の入力操作を行ったとする。すなわち、電子機器100は、時刻t0において脈波の測定を開始したとする。被検者は、脈波測定処理を開始するための所定の入力操作を行った後、把持部110を把持して測定部120を首に接触させる。電子機器100は、被検者が脈波測定処理を開始するための所定の入力操作を行うと、図7に示すフローを開始する。
電子機器100では、制御部143が、脈波測定処理を開始すると、頸動脈の脈動に応じた角速度センサ131の出力を検出する。測定開始直後の所定期間(図6における時刻t0から時刻t1まで)は、被検者が電子機器100を首に接触させる位置を調整させること等により、角速度センサ131の出力が安定しない。この期間は脈波を正確に取得できない。そのため、電子機器100は、この期間に測定された脈波を、頸動脈の状態の推定に使用しなくてもよい。電子機器100は、例えば、この期間に測定された脈波を記憶部145に記憶しなくてもよい。
制御部143は、脈波測定処理の開始後、所定回数連続して安定した脈波を検出したか否かを判定する(図7のステップS101)。所定回数は、図6に示す例では4回であるが、これに限られない。また、安定した脈波は、例えば、各脈波のピーク出力のばらつき及び/又は各脈波のピーク同士の間隔のばらつきが、所定の誤差範囲内となる脈波をいう。ピーク同士の間隔における所定の誤差範囲は、例えば±150msecであるが、これに限られない。図6に示す例では、制御部143が、時刻t1から時刻t2まで、各脈波のピーク同士の間隔のばらつきが4回連続で±150msec以内となる脈波を検出した場合の例を示している。
制御部143は、脈波測定処理の開始後、所定回数連続して安定した脈波を検出したと判定した場合(図7のステップS101のYes)、脈波の取得を開始する(ステップS102)。すなわち、制御部143は、頸動脈の状態を推定するために使用する脈波を取得する。脈波取得開始時刻は、例えば図6では時刻t3である。制御部143は、このようにして取得した脈波を記憶部145に記憶してもよい。電子機器100は、このように所定回数連続して安定した脈波を検出したと判定した場合に脈波の取得を開始するため、実際には被検者が電子機器100を接触させていない場合等における、誤検出を防止しやすくなる。
制御部143は、脈波の取得を開始した後、脈波取得の終了条件が満たされると、脈波の取得を終了する。終了条件は、脈波の取得を開始した後、例えば所定時間が経過した場合であってもよい。終了条件は、例えば、所定の脈拍数分の脈波を取得した場合であってもよい。なお終了条件は、これに限られず他の条件が適宜設定されてもよい。図6に示す例では、制御部143は、時刻t3から所定時間(例えば8秒又は15秒)経過後の時刻t4において脈波の取得を終了する。これにより、図7に示すフローは終了する。
なお、制御部143は、脈波測定処理の開始後、所定回数連続して安定した脈波を検出していないと判定した場合(図7のステップS101のNo)、脈波測定処理を開始するための所定の入力操作を行ってから所定時間経過したか否かを判定する(ステップS103)。
脈波測定処理を開始するための所定の入力操作を行ってから所定時間(例えば30秒)経過していないと制御部143が判定した場合(ステップS103のNo)、図7に示すフローは、ステップS101に移行する。
一方、制御部143は、脈波測定処理を開始するための所定の入力操作を行ってから所定時間経過しても、安定した脈波を検出できない場合(ステップS103のYes)、自動的に測定処理を終了(タイムアウト)して、図7のフローを終了する。
図8は、電子機器100が図7に示すフローにより取得した脈波の一例を示す図である。電子機器100は、脈動によるセンサ部130の変位を、角速度センサ131の出力により検知する。図8は、電子機器100が取得した脈波を、時間経過に伴う角速度センサ131の出力により表したものである。図8では、角速度センサ131の出力の基準位置は、脈あて部132の被検者に接触する面が、センサ支持部121の被検者に接触する面(つまり測定部120の裏面120a)と同一平面上となる位置である。図8では、脈あて部132が裏面120aから落ち込む側を正方向(+)、裏面120aよりも突出する側を負方向(-)として示されている。
本発明者は、電子機器100が取得する図8に一例として示す波形が、超音波を用いた診断装置により取得される信号(レーザドップラ信号)に類似していることを見出した。そして、本発明者は、レーザドップラ信号に代わり、電子機器100が取得した波形により被検者の頸動脈の状態を推定できることに想到した。
ここで、電子機器100による、被検者の頸動脈の状態の推定処理の詳細について説明する。電子機器100は、頸動脈の状態を推定するため、DN(ダイクロティックノッチ:Dicrotic Notch)を算出する。DNは、重複切痕とも呼ばれる。DNは、図8に示す波形においては、(i)で示される脈あて部132の負方向への落込みにより表される。電子機器100の制御部143は、(i)で示される負方向への落込み部分について、落込み量bにより、DNを算出してもよい。
電子機器100は、算出したDNに基づいて、頸動脈の状態として、例えば、頸動脈における動脈硬化の度合いを推定する。動脈硬化の度合いは、血管の内膜が肥厚して形成されるプラークの状態に大きく依存することが従来知られている。電子機器100は、プラークの状態を推定することにより動脈硬化の度合いを推定できる。
電子機器100が取得する脈波は、頸動脈内のプラークの状態、例えばプラーク数及びプラークの肥厚度合い等により変化する。そのため、頸動脈内のプラークの状態に応じてDNは変化する。このように、DNに頸動脈の影響が表れるため、電子機器100は、算出したDNに基づいてプラークの状態を推定できる。
具体的には、電子機器100は、例えば予め記憶部145に記憶されたDNとプラークスコアとの関係に基づいて、プラークの状態として、プラークスコアを推定する。プラークスコアは、頸動脈に存在するプラークの高さに関する指標である。プラークスコアは、例えば、左右の頸動脈において、各頸動脈の分岐部を基点として、頸動脈に沿って、末梢(頭部)側に1.5cm、中枢(胴体)側に4.5cmの範囲に存在する1.1mm以上のIMT(内膜中膜複合体:Intima-Media Thickness)の総和とすることができる。
図9は、DNとプラークスコアとの関係を示す図である。図9に示すように、DNとプラークスコアとは負の相関がある。電子機器100は、例えば図9に示すDNとプラークスコアとの関係に基づいて、算出したDNを用いて、被検者のプラークスコアを算出する。このようにして、電子機器100は、頸動脈の状態として、プラークスコアを推定できる。そして、電子機器100は、プラークの状態を示すプラークスコアに基づき、動脈硬化の度合いを推定する。
電子機器100は、推定した動脈硬化の度合いに関する情報を報知部147から報知してもよい。電子機器100は、推定した動脈硬化の度合いに関する情報を、例えばプラークスコア等のプラークの状態に関する情報と対応付けて報知してもよい。
このように、一実施形態に係る電子機器100は、角速度センサ131の変位により取得した頸動脈の脈波に基づいて、被検者の頸動脈の状態を推定できる。例えば超音波を用いた診断装置により頸動脈の状態を推定する場合、被検部位へのプローブの当て方によって頸動脈の位置が変化し、得られる超音波画像が変化したり、取得される超音波画像が不鮮明になったりする。これにより、超音波を用いた診断装置では、正確な診断結果を得にくい場合がある。これに対し、本実施形態に係る電子機器100は、頸動脈における脈動に基づいて頸動脈の状態を推定するため、超音波を用いた診断装置と比較して、頸動脈の状態をより安定して推定しやすくなる。
なお、被検者は、頸動脈の脈波において、良好なDNが取得しやすい所定の条件下で頸動脈の脈波を取得してもよい。例えば、食後は、脈波が血管において反射される反射波の影響により、良好なDNが取得しにくい。そのため、被検者は、食前に頸動脈の脈波を取得してもよい。
また、被検者は、電子機器100を用いて、血液の流動性、糖代謝又は脂質代謝の状態を推定させることもできる。被検者は、例えば上述の電子機器100を、被検部位である首に接触させる。電子機器100は、被検者の頸動脈が存在する位置に接触された脈あて部132の変位によって角速度センサ131が取得したセンサ部130の変位を検出することにより、脈波を取得する。電子機器100は、制御部143は、脈波の伝播現象に基づく指標を算出して、被検者の血液の流動性、糖代謝又は脂質代謝の状態を推定する。
図10は、電子機器100を用いて首で取得された脈波の一例を示す図である。図10は、角速度センサ131を脈動の検知手段として用いた場合のものである。図10は、角速度センサ131で取得された角速度を積分したものであり、横軸は時間、縦軸は角度を表す。取得された脈波は、例えば被検者の体動が原因のノイズを含む場合があるので、DC(Direct Current)成分を除去するフィルタによる補正を行い、脈動成分のみを抽出してもよい。
取得された脈波から、脈波に基づく指標を算出する方法を、図10を用いて説明する。脈波の伝播は、心臓から押し出された血液による拍動が、動脈の壁や血液を伝わる現象である。心臓から押し出された血液による拍動は、前進波として手足の末梢まで届き、その一部は血管の分岐部、血管径の変化部等で反射され反射波として戻ってくる。脈波に基づく指標は、例えば、前進波の脈波伝播速度PWV(Pulse Wave Velocity)、脈波の反射波の大きさPR、脈波の前進波と反射波との時間差Δt、脈波の前進波と反射波との大きさの比で表されるAI(Augmentation Index)等である。
図10に示す脈波は、利用者のn回分の脈拍であり、nは1以上の整数である。脈波は、心臓からの血液の駆出により生じた前進波と、血管分岐や血管径の変化部から生じた反射波とが重なりあった合成波である。図10において、PFnは脈拍毎の前進波による脈波のピークの大きさ、PRnは脈拍毎の反射波による脈波のピークの大きさ、PSnは脈拍毎の脈波の最小値である。また、図10において、TPRは脈拍のピークの間隔である。
脈波に基づく指標とは、脈波から得られる情報を定量化したものである。例えば、脈波に基づく指標の一つであるPWVは、首と手首等、2点の被検部位で測定された脈波の伝播時間差と2点間の距離とに基づいて算出される。具体的には、PWVは、動脈の2点における脈波(例えば首と手首)を同期させて取得し、2点の距離の差(L)を2点の脈波の時間差(PTT)で除して算出される。例えば、脈波に基づく指標の一つである反射波の大きさPRは、反射波による脈波のピークの大きさPRnを算出してもよいし、n回分を平均化したPRaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つである脈波の前進波と反射波との時間差Δtは、所定の脈拍における時間差Δtnを算出してもよいし、n回分の時間差を平均化したΔtaveを算出してもよい。例えば、脈波に基づく指標の一つであるAIは、反射波の大きさを前進波の大きさで除したものであり、AIn=(PRn-PSn)/(PFn-PSn)で表わされる。AInは脈拍毎のAIである。AIは、例えば、脈波の測定を数秒間行い、脈拍毎のAIn(n=1~nの整数)の平均値AIaveを算出し、脈波に基づく指標としてもよい。
脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIは、血管壁の硬さに依存して変化するため、動脈硬化の状態の推定に用いることができる。例えば、血管壁が硬いと、脈波伝播速度PWVは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、反射波の大きさPRは大きくなる。例えば、血管壁が硬いと、前進波と反射波との時間差Δtは小さくなる。例えば、血管壁が硬いと、AIは大きくなる。さらに、電子機器100は、これらの脈波に基づく指標を用いて、動脈硬化の状態を推定できると共に、血液の流動性(粘性)を推定することができる。特に、電子機器100は、同一被検者の同一被検部位、及び動脈硬化の状態がほぼ変化しない期間(例えば数日間内)において取得された脈波に基づく指標の変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。ここで血液の流動性とは、血液の流れやすさを示し、例えば、血液の流動性が低いと、脈波伝播速度PWVは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、反射波の大きさPRは小さくなる。例えば、血液の流動性が低いと、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなる。例えば、血液の流動性が低いと、AIは小さくなる。
一実施形態では、脈波に基づく指標の一例として、電子機器100が、脈波伝播速度PWV、反射波の大きさPR、前進波と反射波との時間差Δt、及びAIを算出する例を示したが、脈波に基づく指標はこれに限ることはない。例えば、電子機器100は、脈波に基づく指標として、後方収縮期血圧を用いてもよい。
図11は、算出されたAIの時間変動を示す図である。一実施形態では、脈波は、角速度センサ131を備えた電子機器100を用いて約5秒間取得された。制御部143は、取得された脈波から脈拍毎のAIを算出し、さらにこれらの平均値AIaveを算出した。一実施形態では、電子機器100は、食事前及び食事後の複数のタイミングで脈波を取得し、取得された脈波に基づく指標の一例としてAIの平均値(以降AIとする)を算出した。図11の横軸は、食事後の最初の測定時間を0として、時間の経過を示す。図11の縦軸は、その時間に取得された脈波から算出されたAIを示す。
電子機器100は、食事前、食事直後、及び食事後30分毎に脈波を取得し、それぞれの脈波に基づいて複数のAIを算出した。食事前に取得された脈波から算出されたAIは約0.8であった。食事前に比較して、食事直後のAIは小さくなり、食事後約1時間でAIは最小の極値となった。食事後3時間で測定を終了するまで、AIは徐々に大きくなった。
電子機器100は、算出されたAIの変化から、血液の流動性の変化を推定することができる。例えば血液中の赤血球、白血球、血小板が団子状に固まる、又は粘着力が大きくなると、血液の流動性は低くなる。例えば、血液中の血漿の含水率が小さくなると、血液の流動性は低くなる。これらの血液の流動性の変化は、例えば、後述する糖脂質状態や、熱中症、脱水症、低体温等の被検者の健康状態によって変化する。被検者の健康状態が重篤化する前に、被検者は、一実施形態の電子機器100を用いて、自らの血液の流動性の変化を知ることができる。図11に示す食事前後のAIの変化から、食事後に血液の流動性が低くなったこと、及び、食事後約1時間で最も血液の流動性は低くなったこと、及び、その後徐々に血液の流動性が高くなったことが推定できる。電子機器100は、血液の流動性が低い状態を「どろどろ」、血液の流動性が高い状態を「さらさら」と表現して報知してもよい。例えば、電子機器100は、「どろどろ」「さらさら」の判定を、被検者の実年齢におけるAIの平均値を基準にして行ってもよい。電子機器100は、算出されたAIが平均値より大きければ「さらさら」、算出されたAIが平均値より小さければ「どろどろ」と判定してもよい。電子機器100は、例えば、「どろどろ」「さらさら」の判定を、食事前のAIを基準にして判定してもよい。電子機器100は、食事後のAIを食事前のAIと比較して「どろどろ」度合いを推定してもよい。電子機器100は、例えば、食事前のAIすなわち空腹時のAIとして、被検者の血管年齢(血管の硬さ)の指標として用いることができる。電子機器100は、例えば、被検者の食事前のAIすなわち空腹時のAIを基準として、算出されたAIの変化量を算出すれば、被検者の血管年齢(血管の硬さ)による推定誤差を少なくすることができる。電子機器100は、血液の流動性の変化をより精度よく推定することができる。
図12は、算出されたAIと血糖値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、図11に示した実施形態と同じである。図12の右側の縦軸は血中の血糖値を示し、左側の縦軸は算出されたAIを示す。図12の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された血糖値を示す。血糖値は、脈波取得直後に測定された。血糖値は、テルモ社製の血糖測定器「メディセーフフィット」を用いて測定された。食事前の血糖値と比べて、食事直後の血糖値は約20mg/dl上昇している。食事後約1時間で血糖値は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、血糖値は徐々に小さくなり、食事後約3時間でほぼ食事前の血糖値と同じになった。
図12に示す通り、食前食後の血糖値は、脈波から算出されたAIと負の相関がある。血糖値が高くなると、血液中の糖により赤血球及び血小板が団子状に固まり、又は粘着力が強くなり、その結果血液の流動性は低くなることがある。血液の流動性が低くなると、脈波伝播速度PWVは小さくなることがある。脈波伝播速度PWVが小さくなると、前進波と反射波との時間差Δtは大きくなることがある。前進波と反射波との時間差Δtが大きくなると、前進波の大きさPFに対して反射波の大きさPRは小さくなることがある。前進波の大きさPFに対して反射波の大きさPRが小さくなると、AIは小さくなることがある。食事後数時間内(一実施形態では3時間)のAIは、血糖値と相関があることから、AIの変動により、被検者の血糖値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の血糖値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器100は、算出されたAIから被検者の血糖値を推定することができる。
食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPの発生時間に基づいて、電子機器100は被検者の糖代謝の状態を推定できる。電子機器100は、糖代謝の状態として、例えば血糖値を推定する。糖代謝の状態の推定例として、例えば食事後に最初に検出されるAIの最小極値AIPが所定時間以上(例えば食後約1.5時間以上)経ってから検出される場合、電子機器100は、被検者が糖代謝異常(糖尿病患者)であると推定できる。
食事前のAIであるAIBと、食事後に最初に検出されるAIの最小極値であるAIPとの差(AIB-AIP)に基づいて、電子機器100は被検者の糖代謝の状態を推定できる。糖代謝の状態の推定例として、例えば(AIB-AIP)が所定数値以上(例えば0.5以上)の場合、被検者は糖代謝異常(食後高血糖患者)であると推定できる。
図13は、算出されたAIと血糖値との関係を示す図である。算出されたAIと血糖値とは、血糖値の変動が大きい食事後1時間以内に取得されたものである。図13のデータは、同一被験者における異なる複数の食事後のデータを含む。図13に示す通り、算出されたAIと血糖値とは負の相関を示した。算出されたAIと血糖値との相関係数は0.9以上であった。例えば、図13に示すような算出されたAIと血糖値との相関を、あらかじめ被験者毎に取得しておけば、電子機器100は、算出されたAIから被験者の血糖値を推定することもできる。
図14は、算出されたAIと中性脂肪値の測定結果を示す図である。脈波の取得方法及びAIの算出方法は、図11に示した実施形態と同じである。図14の右側の縦軸は血中の中性脂肪値を示し、左側の縦軸はAIを示す。図14の実線は、取得された脈波から算出されたAIを示し、点線は測定された中性脂肪値を示す。中性脂肪値は、脈波取得直後に測定した。中性脂肪値は、テクノメディカ社製の脂質測定装置「ポケットリピッド」を用いて測定された。食事前の中性脂肪値と比較して、食事後の中性脂肪値の最大極値は約30mg/dl上昇している。食事後約2時間後に中性脂肪は最大の極値となった。その後、測定を終了するまで、中性脂肪値は徐々に小さくなり、食事後約3.5時間でほぼ食事前の中性脂肪値と同じになった。
これに対し、算出されたAIの最小極値は、食事後約30分で第1の最小極値AIP1が検出され、食事後約2時間で第2の最小極値AIP2が検出された。食事後約30分で検出された第1の最小極値AIP1は、前述した食後の血糖値の影響によるものであると推定できる。食事後約2時間で検出された第2の最小極値AIP2は、食事後約2時間で検出された中性脂肪の最大極値とその発生時間がほぼ一致している。このことから、食事から所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2は中性脂肪の影響によるものであると推定できる。食前食後の中性脂肪値は、血糖値と同様に、脈波から算出されたAIと負の相関があることがわかった。特に食事から所定時間以降(一実施形態では約1.5時間以降)に検出されるAIの最小極値AIP2は、中性脂肪値と相関があることから、AIの変動により、被検者の中性脂肪値の変動を推定することができる。また、あらかじめ被検者の中性脂肪値を測定し、AIとの相関を取得しておけば、電子機器100は、算出されたAIから被検者の中性脂肪値を推定することができる。
食事後所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2の発生時間に基づいて、電子機器100は被検者の脂質代謝の状態を推定できる。電子機器100は、脂質代謝の状態として、例えば脂質値を推定する。脂質代謝の状態の推定例として、例えば第2の最小極値AIP2が食事後所定時間以上(例えば4時間以上)経ってから検出される場合、電子機器100は、被検者が脂質代謝異常(高脂血症患者)であると推定できる。
食事前のAIであるAIBと、食事後所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2との差(AIB-AIP2)に基づいて、電子機器100は被検者の脂質代謝の状態を推定できる。脂質代謝異常の推定例として、例えば(AIB-AIP2)が0.5以上の場合、電子機器100は、被検者が脂質代謝異常(食後高脂血症患者)であると推定できる。
また、図12乃至図14で示した測定結果から、一実施形態の電子機器100は、食事後に最も早く検出される第1の最小極値AIP1及びその発生時間に基づいて、被検者の糖代謝の状態を推定することができる。さらに、一実施形態の電子機器100は、第1の最小極値AIP1の後で所定時間以降に検出される第2の最小極値AIP2及びその発生時間に基づいて、被検者の脂質代謝の状態を推定することができる。
一実施形態では脂質代謝の推定例として中性脂肪の場合を説明したが、脂質代謝の推定は中性脂肪に限られない。電子機器100が推定する脂質値は、例えば総コレステロール、HDL(High Density Lipoprotein)コレステロール及びLDL(Low Density Lipoprotein)コレステロール等を含む。これらの脂質値は、上述の中性脂肪の場合と同様の傾向を示す。
図15は、AIに基づいて血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定する手順を示すフロー図である。図15を用いて、一実施形態に係る電子機器100による血液の流動性、並びに糖代謝及び脂質代謝の状態の推定の流れを説明する。
図15に示すように、電子機器100は、初期設定として、被検者のAI基準値を取得する(ステップS201)。AI基準値は、被検者の年齢から推定される平均的なAIを用いてもよいし、事前に取得された被検者の空腹時のAIを用いてもよい。また、電子機器100は、ステップS202~S208において食前と判断されたAIをAI基準値としてもよいし、脈波測定直前に算出されたAIをAI基準値としてもよい。この場合、電子機器100は、ステップS202~S208より後にステップS201を実行する。
続いて、電子機器100は、脈波を取得する(ステップS202)。例えば電子機器100は、所定の測定時間(例えば、5秒間)に取得された脈波について、所定の振幅以上が得られたか否かを判定する。取得された脈波について、所定の振幅以上が得られたら、ステップS203に進む。所定の振幅以上が得られなかったら、ステップS202を繰り返す(これらのステップは図示せず)。ステップS202において、例えば電子機器100は、所定の振幅以上の脈波を検出すると、自動で脈波を取得する。
電子機器100は、ステップS202で取得された脈波から、脈波に基づく指標としてAIを算出し記憶部145に記憶する(ステップS203)。電子機器100は、所定の脈拍数(例えば、3拍分)毎のAIn(n=1~nの整数)から平均値AIaveを算出して、これをAIとしてもよい。あるいは、電子機器100は、特定の脈拍におけるAIを算出してもよい。
AIは、例えば脈拍数PR、脈圧(PF-PS)、体温、被検出部の温度等によって補正されてもよい。脈拍とAI及び脈圧とAIは共に負の相関があり、温度とAIとは正の相関があることが知られている。補正を行う際には、例えばステップS203において、電子機器100はAIに加え脈拍、脈圧を算出する。例えば、電子機器100は、センサ部130に温度センサを搭載し、ステップS202における脈波の取得の際に、被検出部の温度を取得してもよい。事前に作成された補正式に、取得された脈拍、脈圧、温度等を代入することにより、電子機器100はAIを補正する。
続いて、電子機器100は、ステップS201で取得されたAI基準値とステップS203で算出されたAIとを比較して、被検者の血液の流動性を推定する(ステップS204)。算出されたAIがAI基準値より大きい場合(YESの場合)、血液の流動性は高いと推定され、電子機器100は例えば「血液はさらさらです」と報知する(ステップS205)。算出されたAIがAI基準値より大きくない場合(NOの場合)、血液の流動性は低いと推定され、電子機器100は例えば「血液はどろどろです」と報知する(ステップS206)。
続いて、電子機器100は、糖代謝及び脂質代謝の状態を推定するか否かを被検者に確認する(ステップS207)。ステップS207で糖代謝及び脂質代謝を推定しない場合(NOの場合)、電子機器100は処理を終了する。ステップS207で糖代謝及び脂質代謝を推定する場合(YESの場合)、電子機器100は、算出されたAIが食前、食後いずれかに取得されたものかを確認する(ステップS208)。食後ではない(食前)場合(NOの場合)、ステップS202に戻り、次の脈波を取得する。食後の場合(YESの場合)、電子機器100は、算出されたAIに対応する脈波の取得時間を記憶する(ステップS209)。続いて脈波を取得する場合(ステップS210のNOの場合)、ステップS202に戻り、電子機器100は次の脈波を取得する。脈波測定を終了する場合(ステップS210のYESの場合)ステップS211以降に進み、電子機器100は被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態の推定を行う。
続いて、電子機器100は、ステップS204で算出された複数のAIから、最小極値とその時間を抽出する(ステップS211)。例えば、図14の実線で示すようなAIが算出された場合、電子機器100は、食事後約30分の第1の最小極値AIP1、及び食事後約2時間の第2の最小極値AIP2を抽出する。
続いて、電子機器100は、第1の最小極値AIP1とその時間から、被検者の糖代謝の状態を推定する(ステップS212)。さらに、電子機器100は、第2の最小極値AIP2とその時間から、被検者の脂質代謝の状態を推定する(ステップS213)。被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態の推定例は、前述の図14と同様であるので省略する。
続いて、電子機器100は、ステップS212及びステップS213の推定結果を報知し(ステップS214)、図15に示す処理を終了する。報知部147は、例えば「糖代謝は正常です」、「糖代謝異常が疑われます」、「脂質代謝は正常です」、「脂質代謝異常が疑われます」等の報知を行う。また、報知部147は「病院で受診しましょう」、「食生活を見直しましょう」等のアドバイスを報知してもよい。そして、電子機器100は、図15に示す処理を終了する。
このように、本実施形態に係る電子機器100によれば、頸動脈の状態の推定と、血液の流動性、糖代謝又は脂質代謝の推定とを、1つの機器で実行させることができる。特に、電子機器100は、非侵襲かつ短時間で被検者の血液の流動性並びに糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。
また、電子機器100は、脈波に基づく指標の極値とその時間から、糖代謝の状態の推定と、脂質代謝の状態の推定とを行うことができる。このため、電子機器100は、非侵襲かつ短時間で被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。
また、電子機器100は、例えば、食事前(空腹時)の脈波に基づく指標を基準にして、被検者の糖代謝及び脂質代謝の状態を推定できる。このため、電子機器100は、短期的に変化しない血管径や血管の硬さ等を考慮せずに、被検者の血液の流動性及び糖代謝及び脂質代謝の状態を正確に推定できる。
また、電子機器100は、脈波に基づく指標と血糖値、脂質値とのキャリブレーションを取っておけば、被検者の血糖値、脂質値を非侵襲かつ短時間に推定することができる。
図16は、本発明の一実施形態に係る推定システムの概略構成を示す模式図である。図16に示した一実施形態の推定システムは、電子機器100と、推定装置であるサーバ151と、携帯端末150と、通信ネットワークを含む。図16に示したように、電子機器100で取得された脈波は、通信ネットワークを通じてサーバ151に送信され、被検者の個人情報としてサーバ151に保存される。サーバ151では、被検者の過去の取得情報や、様々なデータベースと比較することにより、被検者の頸動脈の状態を推定する。サーバ151はさらに被検者に最適なアドバイスを作成する。サーバ151は、被検者が所有する携帯端末150に推定結果及びアドバイスを返信する。携帯端末150は受信した推定結果及びアドバイスを携帯端末150の表示部から報知する。電子機器100の通信機能を利用することで、サーバ151には複数の利用者からの情報を収集することができるため、さらに推定の精度が上がる。また、携帯端末150を報知手段として用いるため、電子機器100は報知部147が不要となり、さらに小型化される。また、頸動脈の状態の推定をサーバ151で行うために、電子機器100の制御部143の演算負担は軽減する。また、被検者の過去の取得情報をサーバ151で保存できるために、電子機器100の記憶部145の負担は軽減する。電子機器100はさらに小型化、簡略化が可能となる。また、演算の処理速度は向上する。なお、上記推定システムにより、被検者の血液の流動性、糖代謝又は脂質代謝についても、同様に推定することができる。
一実施形態に係る推定システムはサーバ151を介して、電子機器100と携帯端末150とを通信ネットワークで接続した構成を示したが、本発明に係る推定システムはこれに限定されるものではない。一実施形態に係る推定システムは、サーバ151を用いずに、電子機器100と携帯端末150を直接通信ネットワークで接続して構成してもよい。
本発明を完全かつ明瞭に開示するためにいくつかの実施例に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。また、いくつかの実施形態に示した各要件は、自由に組み合わせが可能である。
例えば、上述の一実施形態においては、センサ部130に角速度センサ131を備える場合について説明したが、本発明に係る電子機器100はこれに限ることはない。センサ部130は、発光部と受光部からなる光学脈波センサを備えていてもよいし、圧力センサを備えていてもよい。また、電子機器100による、血液の流動性、糖代謝又は脂質代謝の状態の推定のための脈波の取得の位置(被検部位)は首に限らない。血液の流動性、糖代謝又は脂質代謝の状態の推定のための脈波の取得は、例えば手首、足首、太もも、耳等の動脈上にセンサ部130を配置することにより行ってもよい。
上述の一実施形態においては、センサ部130の固有振動数は、取得する脈波の振動数と近くなるように構成されてもよい。例えば、取得する脈波の振動数が0.5~2Hz(脈拍30~120)の場合、センサ部130は0.5~2Hzの範囲のいずれかの固有振動数を有するようにしてもよい。センサ部130の固有振動数は、センサ部130の長さ、重量、弾性体140の弾性率又はばね定数等を変化させることによって、最適化することができる。センサ部130の固有振動数を最適化することによって、電子機器100は、より高精度の測定が可能になる。