以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、第1実施形態に係る自動制動装置が適用された車1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、車1は、自動制動ECU(Electric Control Unit)2、カメラ3、画像処理ユニット4、車速センサ51、表示装置6、警報装置7、および制動装置8を備える。なお、車1はその他の構成も備えるが、図1においては記載を省略している。
カメラ3は、車1の前方の画像を撮影する撮影装置であり、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を備え、所定の撮影領域を所定のフレームレートで撮影する。カメラ3は、車1の前部の車幅方向中央付近に取り付けられている。カメラ3は、ステレオカメラであって、車幅方向に離れた2つのレンズを有し、各レンズを通して入力される画像をそれぞれ撮像素子によって画像データとして取得する。つまり、カメラ3は、一対の画像データを取得する。カメラ3が撮影した画像データは、画像処理ユニット4に出力される。
画像処理ユニット4は、画像処理を行う処理ユニットであり、マイクロコンピュータによって実現されている。画像処理ユニット4は、カメラ3から入力される一対の画像データを画像処理する。画像処理ユニット4は、障害物検出部41、距離算出部42および相対速度算出部43を備えている。
障害物検出部41は、カメラ3から入力される一対の画像データに基づいて、車1の前方の障害物を検出する。障害物を検出する方法は限定されない。距離算出部42は、障害物検出部41が検出した障害物と自車(車1)との距離を検出する。距離算出部42は、カメラ3から入力される一対の画像データから、一対の画像の対応位置の画素のずれ量を検出し、当該ずれ量から三角測量の原理に基づいて距離を算出する。なお、距離の算出方法は限定されない。相対速度算出部43は、障害物検出部41が検出した障害物と自車との相対速度を算出する。相対速度算出部43は、距離算出部42が算出した障害物と自車との距離の変化に基づいて、相対速度を算出する。本実施形態では、自車に対する障害物の相対速度を、自車の進行方向に進む場合を正の値として算出する。つまり、障害物が自車に向かって進行する場合は、相対速度が負の値になる。なお、相対速度の定義の方法および算出方法は限定されない。画像処理ユニット4は、検出した障害物の情報、当該障害物との距離および相対速度を関連付けて、自動制動ECU2に出力する。
車速センサ51は、車1の車速を検出するセンサである。車速センサ51は、車輪の回転に同期したパルス信号を生成し、自動制動ECU2に出力する。自動制動ECU2は、車速センサ51から入力されるパルス信号の周波数に基づいて、車1の車速(以下では「自車速」とする)を算出する。なお、車速センサ51が自車速を算出して、自動制動ECU2に出力してもよい。
表示装置6は、例えばLCD(液晶表示装置)によって構成されており、車1のセンターコンソール部分に設置される。なお、表示装置6は、LCDに限定されず、有機ELディスプレイやプラズマディスプレイなどであってもよい。また、設置位置もセンターコンソール部分に限定されず、運転者から見ることができる範囲にあればよい。表示装置6は、各種表示を行うものであり、本実施形態では、自動制動を行うときに、そのことを運転者に知らせるための表示を行う。なお、表示装置6は、ナビゲーションシステムなどのディスプレイと兼用してもよい。
警報装置7は、運転者に音声による情報の伝達やブザーによる警告を行うものである。本実施形態では、自動制動を行うときに、そのことを運転者に知らせるための音声案内を行う。なお、警報装置7は、ナビゲーションシステムなどの音声システムと兼用してもよい。
制動装置8は、車1の制動を行うものである。制動装置8は、運転者によるブレーキペダルの操作に応じて、ディスクブレーキまたはドラムブレーキを作動させて、制動力を発生させる。また、制動装置8は、自動制動ECU2から入力される電気信号に応じて、制動力を発生させる。
自動制動ECU2は、自動制動を行うための電子制御ユニットであり、CPUおよびメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現されている。自動制動ECU2は、画像処理ユニット4および車速センサ51などの各種センサより入力される情報に基づいて、障害物との衝突可能性を判断し、衝突の可能性がある場合に、制動装置8に自動制動を行わせる。また、この場合、自動制動ECU2は、表示装置6に自動制動を行うことを表示させ、警報装置7に自動制動を行うことの音声案内を行わせる。なお、自動制動ECU2は、制動装置8に自動制動を行わせる前に、もうすぐ自動制動を行うことを、表示装置6に表示させ、警報装置7に音声で案内させてもよい。
また、自動制動ECU2は、障害物が対向車であるか否かを判断する。自動制動ECU2は、対向車であると判断した場合は、自動制動を規制して、自動制動を行わないようにする。障害物が対向車である場合は、別の車線を走っているので、衝突の可能性が低い。したがって、自動制動を行う必要がないと判断される。車1が直線道路を走行している場合は、対向車は正面に位置しないので、障害物として認識されない。しかし、車1が直線道路から旋回道路に進入して行くときなどには、対向車が車1の正面に位置する場合がある。この場合、対向車が同じ車線を走行する先行車であると認識され、不要な自動制動が行われることになる。これを防ぐために、自動制動ECU2は、障害物が対向車であるか否かを判断して、対向車であると判断した場合は自動制動を規制する。
図2は、車1が直線道路から旋回道路に進入して行くときの状況を示している。車11は、車1と同じ車線を走行する先行車である。車12は、対向車線を走行する対向車である。車1、車11および車12に付している実線の矢印は進行方向を示している。車1の自動制動ECU2は、正面に位置する車11を障害物であると認識する。また、車12も車1の正面に位置するので、車1の自動制動ECU2は、車12も障害物であると認識する。
自動制動ECU2は、障害物を認識した場合は、当該障害物に衝突する可能性があるか否かを判断する。自動制動ECU2は、障害物に衝突する可能性があると判断した場合、障害物の進行方向に基づいて、障害物が対向車であるか否かを判断する。そして、自動制動ECU2は、当該障害物が対向車でないと判断した場合は自動制動を行い、当該障害物が対向車であると判断した場合は自動制動を行わない。例えば、図2の例においては、車11の進行方向は車1の進行方向と一致する。したがって、自動制動ECU2は、車11を検知し衝突可能性があると判断した場合には、車11が対向車でないと判断して、自動制動を行う。一方、車12の進行方向は車1の進行方向と反対方向である。したがって、自動制動ECU2は、車12を検知し衝突可能性があると判断した場合でも、車12が対向車であると判断して、自動制動を規制する。自動制動ECU2および制動装置8を合わせたものが、本発明の「自動制動装置」に相当する。
自動制動ECU2は、機能ブロックとして、衝突可能性判断部21、対向車判断部22、自動制動規制部23、および記憶部24を備える。
記憶部24は、各種データを記憶する。本実施形態では、後述する衝突回避閾値テーブルおよび判定閾値テーブルを記憶している。
衝突可能性判断部21は、障害物との衝突の可能性を判断する機能ブロックである。衝突可能性判断部21は、画像処理ユニット4より入力される障害物に関する情報に基づいて、車1が当該障害物と衝突する可能性があるか否かを判断する。具体的には、衝突可能性判断部21は、入力された相対速度に対応する衝突回避閾値を記憶部24から読み出す。衝突回避閾値は、運転者による制動または操舵によって障害物との衝突を回避できる距離であるか否かを判断するための閾値である。衝突回避閾値は、相対速度の大きさによって異なり、相対速度の絶対値が大きいほど大きくなる。記憶部24には、相対速度の絶対値と衝突回避閾値との対応関係を示す衝突回避閾値テーブルが記憶されている。衝突可能性判断部21は、入力された障害物との距離と、読み出した衝突回避閾値とを比較する。そして、距離が衝突回避閾値以下の場合、衝突の可能性があると判断する。
対向車判断部22は、障害物が対向車であるか否かを判断する機能ブロックである。対向車判断部22は、画像処理ユニット4より入力される障害物に関する情報と、車速センサ51より入力されるパルス信号に基づいて算出した自車速(または入力された自車速)とに基づいて、車1が対向車であるか否かを判断する。具体的には、対向車判断部22は、自車速と入力された相対速度とを加算して、障害物の速度(正確には障害物の速度の車1の進行方向成分)を算出する。本実施形態における相対速度は自車に対する障害物の相対速度なので、自車速と当該相対速度とを加算することで、理屈上は、障害物の速度を算出できる。ただし、画像処理ユニット4で算出された相対速度には、誤差が含まれる。したがって、算出された障害物の相対速度を用いて算出された障害物の速度の正負によって対向車か否かの判断を行うと、誤った判断を行う可能性がある。
また、相対速度に含まれる誤差は、障害物との距離および自車速によって異なる。障害物との距離が大きいほど、距離算出部42が算出する距離の精度が悪くなるので、算出された距離に含まれる誤差が大きくなる。相対速度算出部43は、距離算出部42が算出する距離に基づいて、相対速度を算出する。したがって、相対速度算出部43が算出する相対速度も、障害物との実際の距離が大きいほど、含まれる誤差が大きくなる。また、自車速が大きいほど、距離算出部42が算出する距離の精度が悪くなる。したがって、相対速度算出部43が算出する相対速度は、自車速が大きいほど、含まれる誤差が大きくなる。対向車判断部22は、障害物との距離および自車速によって異なる相対速度の誤差を考慮して、対向車か否かの判断を行う。
対向車判断部22は、障害物速度算出部221、閾値設定部222、および判定部223を備える。
障害物速度算出部221は、画像処理ユニット4より入力される障害物の相対速度と、自車速とを加算して、障害物の速度を算出する。障害物速度算出部221は、算出した障害物の速度を、判定部223に出力する。
例えば、図2の例において、車1の自車速が30km/hで、車12の相対速度が-50km/h(車12が車1に対して50km/hで近づいてくる)と算出された場合、障害物速度算出部221は、車12の速度(車1の進行方向の成分)を-20km/hと算出する。また、車11の相対速度が-25km/h(車11が車1に対して25km/hで近づいてくる)と算出された場合、障害物速度算出部221は、車11の速度(車1の進行方向の成分)を5km/hと算出する。しかし、検出誤差により相対速度が-35km/h(車11が車1に対して35km/hで近づいてくる)と算出された場合、障害物速度算出部221は、車11の速度(車1の進行方向の成分)を-5km/hと算出する。この場合、障害物の速度の正負で対向車であるか否かを判断すると、誤った判断になる。
閾値設定部222は、対向車か否かの判断を行うための判定閾値を設定する。閾値設定部222は、画像処理ユニット4より入力される障害物との距離と、車速センサ51より入力されるパルス信号に基づいて算出した自車速(または入力された自車速)とに基づいて、判定閾値を設定する。具体的には、閾値設定部222は、障害物との距離と自車速とに対応する判定閾値を記憶部24から読み出す。判定閾値は、障害物が対向車であるか否かを判断するための閾値であり、算出された障害物の速度と比較される。判定閾値は、障害物との距離によって異なり、距離が大きいほど小さく(絶対値が大きく)なる。また、判定閾値は、自車速によって異なり、自車速が大きいほど小さく(絶対値が大きく)なる。記憶部24には、障害物との距離および自車速と判定閾値との対応関係を示す判定閾値テーブルが記憶されている。
図3は、判定閾値テーブルの一例を示す図である。図3に示す判定閾値テーブルにおいては、障害物との距離Dが0mから50mまで10mごとに分けられ、かつ、自車速V1が0km/h~60km/hまで10km/hごとに分けられて、それぞれに対応する判定閾値が記憶されている。図3においては、距離Dが0≦D≦10で自車速V1が0≦V1≦10の場合に、ほとんど誤差がないので、判定閾値として最小の「0」が記憶されている。また、距離Dが40<D≦50で自車速V1が50<V1≦60の場合に、誤差が最大になるので、判定閾値として「-20」が記憶されている。また、距離Dが20<D≦30で自車速V1が20<V1≦30の場合に、判定閾値として「-10」が記憶されている。また、距離Dが40<D≦50で自車速V1が20<V1≦30の場合に、判定閾値として「-12」が記憶されている。その他の欄については数値の記載を省略しているが、自車速V1が同じ範囲内であれば距離Dが大きくなるほど、また、距離Dが同じ範囲内であれば自車速V1が大きくなるほど、小さい値が記憶されている。なお、図3に示す各判定閾値は一例であって、これに限定されず、実際の誤差を検証して適宜設定される。
相対速度の検出値は、検出誤差により、実際の値より大きくなる場合もあるし、小さくなる場合もある。対向車でないにもかかわらず対向車であると誤って判断され、自動制動が規制された場合、衝突の危険性が増す。一方、対向車であるにもかかわらず対向車でないと誤って判断され、自動制動が規制されない場合、不要な自動制動が行われる。対向車であると誤って判断した場合の方が、対向車でないと誤って判断した場合より、問題が大きくなる。したがって、対向車であると誤って判断されることを抑制するために、判定閾値は、誤差によって相対速度が最も小さく検出された場合でも、対向車であると誤って判断されない値が設定される。
なお、図3においては、距離Dが50m以下の場合で、自車速V1が60km/h以下の場合の判定閾値テーブルを示しているが、対向車の判断を行うときの距離Dおよび自車速V1に応じて、より広い範囲のテーブルとしてもよいし、より狭い範囲のテーブルとしてもよい。また、図3においては、距離Dを10mごとに分けているが、より細かく(例えば5mごとに)分けてもよいし、より大きく(例えば、30m以下と30mより大に)分けてもよい。また、図3においては、自車速V1を10km/hごとに分けているが、より細かく(例えば5km/hごとに)分けてもよいし、より大きく(例えば、30km/h以下と30km/hより大に)分けてもよい。
閾値設定部222は、障害物との距離と自車速とに対応する判定閾値を、判定閾値テーブルから読み出して、判定部223に出力する。例えば、図3の判定閾値テーブルが記憶されている場合、距離Dが30mで自車速V1が30km/hのとき、閾値設定部222は、判定閾値として「-10」を読み出して、判定部223に出力する。
判定部223は、障害物速度算出部221より入力される障害物の速度と、閾値設定部222より入力される判定閾値とを比較して、障害物の進行方向が車1の進行方向に一致するか否かを判定する。判定部223は、障害物の速度が判定閾値以下の場合、障害物の進行方向が車1の進行方向に一致せず、反対方向であると判定する。これにより、対向車判断部22は、障害物が対向車であると判断する。一方、判定部223は、障害物の速度が判定閾値より大きい場合、障害物の進行方向が車1の進行方向に一致すると判定する。これにより、対向車判断部22は、障害物が先行車であり、対向車でないと判断する。
例えば、図2の例において、車1の自車速が30km/hで、車11の実際の速度(車1の進行方向の成分)が5km/hであるが、検出誤差により相対速度が-35km/hと算出された場合、障害物速度算出部221は、車11の速度(車1の進行方向の成分)を-5km/hと算出する。閾値設定部222は、図3に示す判定閾値テーブルと、車1の自車速(30km/h)および車11との距離(30m)とに基づいて、誤差を想定した判定閾値(-10)を設定する。この場合、車11の速度(-5)が判定閾値(-10)より大きいので、判定部223は、車11の進行方向が車1の進行方向に一致すると判定する。これにより、対向車判断部22は、車11が先行車であり、対向車でないと判断する。
また、車12の相対速度が-50km/hと算出された場合、障害物速度算出部221は、車12の速度(車1の進行方向の成分)を-20km/hと算出する。閾値設定部222は、図3に示す判定閾値テーブルと、車1の自車速(30km/h)および車12との距離(50m)とに基づいて、誤差を想定した判定閾値(-12)を設定する。この場合、車12の速度(-20)が判定閾値(-12)以下なので、判定部223は、車12の進行方向が車1の進行方向に一致せず、反対方向であると判定する。これにより、対向車判断部22は、車12が対向車であると判断する。なお、車12の相対速度が検出誤差によって-42km/hより大きく算出された場合、対向車判断部22は、車12が対向車でないと誤って判断する。しかし、誤差がここまで大きくなることはまれであり、また、誤って判断された場合でも、不要な自動制動が行われるだけで、危険性はない。
自動制動規制部23は、自動制動の規制を行う機能ブロックである。自動制動規制部23は、対向車判断部22の判断結果に応じて、自動制動の規制を行う。すなわち、自動制動規制部23は、対向車判断部22が対向車でないと判断した場合に自動制動の規制を行わず、対向車判断部22が対向車であると判断した場合に自動制動の規制を行う。なお、自動制動規制部23は、他の条件によっても自動制動を規制する。例えば、運転者によるハンドルの操作やブレーキの操作があった場合や、自車速が所定速度以上の場合などにも、自動制動を規制する。本実施形態では、これらの他の条件の判断についての説明を省略している。
図4は、自動制動ECU2が行う自動制動制御処理を説明するためのフローチャートの一例である。自動制動制御処理は、所定のタイミング(例えば0.1秒ごと)で実施される。
まず、各種情報が取得される(S1)。具体的には、自動制動ECU2は、画像処理ユニット4より障害物の情報、当該障害物との距離および相対速度を取得する。また、自動制動ECU2は、車速センサ51よりパルス信号を入力され、当該パルス信号に基づいて自車速を算出することで取得する。
次に、衝突可能性判断部21によって、障害物との衝突可能性があるか否かが判断される(S2)。具体的には、衝突可能性判断部21は、取得した相対速度に対応する衝突回避閾値を、記憶部24に記憶された衝突回避閾値テーブルから読み出す。そして、衝突可能性判断部21は、取得した障害物との距離が、読み出した衝突回避閾値以下の場合、衝突の可能性があると判断する。
衝突可能性がないと判断された場合(S2:NO)、自動制動制御処理は終了される。一方、衝突可能性があると判断された場合(S2:YES)、障害物速度算出部221によって、障害物の速度(車1の進行方向の成分)V2が算出される(S3)。具体的には、障害物速度算出部221は、障害物の相対速度と自車速とを加算することで、障害物の速度V2を算出する。次に、閾値設定部222によって、判定閾値Vthが取得される(S4)。具体的には、閾値設定部222は、障害物との距離と自車速とに対応する判定閾値Vthを、記憶部24に記憶された判定閾値テーブル(図3参照)から読み出すことで取得する。
次に、判定部223によって、障害物の速度V2と判定閾値Vthとが比較される(S5)。判定部223は、障害物の速度V2が判定閾値Vth以下の場合(S5:YES)、障害物の進行方向が車1の進行方向とは反対方向であると判定する。この場合、自動制動規制部23によって、自動制動の規制が行われ、自動制動制御処理は終了される。一方、判定部223は、障害物の速度V2が判定閾値Vthより大きい場合(S5:NO)、障害物の進行方向が車1の進行方向に一致すると判定する。この場合、自動制動規制部23によって自動制動の規制が行われないので、自動制動が行われ(S6)、自動制動制御処理は終了される。具体的には、自動制動ECU2は、制動装置8に自動制動を行わせる。
ステップS6で、自動制動が行われた場合、車1にブレーキがかかるので、次の自動制動制御処理のタイミングでは、障害物の相対速度の絶対値が小さくなり、また、障害物との距離が長くなる。それでもまだ、ステップS2で衝突可能性があると判別されると(S2:YES)、自動制動(ステップS6)は継続される。一方、ステップS2で衝突可能性がないと判別されると(S2:NO)、自動制動は解除される。
なお、ステップS1で取得された情報から、障害物が複数検出された場合、ステップS2以降の処理は、障害物ごとに行われる。なお、自動制動ECU2が行う自動制動制御処理は、図4に示すフローチャートに限定されない。
本実施形態によると、障害物速度算出部221は、障害物の相対速度と自車速とを加算して、障害物の速度を算出する。判定部223は、障害物の速度が判定閾値以下の場合、障害物の進行方向が車1の進行方向とは反対方向であると判定する。これにより、対向車判断部22は、障害物が対向車であると判断する。この場合、自動制動が規制されるので、対向車に対する不要な自動制動を抑制できる。また、閾値設定部222は、障害物との距離と自車速とに基づいて、判定閾値を設定する。判定閾値は、障害物との距離が大きいほど小さくなり、自車速が大きいほど小さくなるように、あらかじめ記憶部24に記憶されている。障害物との距離および自車速により変化する誤差が相対速度の検出値に含まれていても、対向車であるか否かの判断のための判定閾値として、障害物との距離および自車速に応じた適切な値が用いられるので、対向車判断部22は、対向車でないにもかかわらず対向車であると誤って判断することを抑制できる。
なお、本実施形態においては、閾値設定部222が障害物との距離と自車速との両方に基づいて判定閾値を設定する場合について説明したが、これに限られない。閾値設定部222が、例えば図3(b)に示す判定閾値テーブルを用いて、距離Dにかかわらず、自車速V1に基づいた判定閾値を設定してもよい。また、例えば図3(c)に示す判定閾値テーブルを用いて、自車速V1にかかわらず、距離Dに基づいた判定閾値を設定してもよい。すなわち、閾値設定部222は、距離Dおよび自車速V1の少なくともいずれか一方に基づいた判定閾値を設定すればよい。また、閾値設定部222は、図3(b)、(c)に示す判定閾値テーブルを用いる場合、自車速V1または距離Dに応じて、線形補間により判定閾値を算出して用いてもよい。
本実施形態においては、閾値設定部222が記憶部24に記憶された判定閾値を読みだして設定する場合について説明したが、これに限られない。例えば、閾値設定部222は、所定の演算式に基づいて判定閾値を算出してもよい。例えば、演算式は、判定閾値Vth=a・V1+b・D(a,bは所定の係数)のような単純の演算式でもよいし、より複雑な演算式でもよい。この場合、判定閾値テーブルを記憶する必要がないので、記憶部24の記憶容量を抑制できる。
本実施形態においては、カメラ3および画像処理ユニット4が、障害物との距離および障害物の相対速度を検出する場合について説明したが、これに限定されない。レーザレーダやソナーなどの他のセンサが、障害物との距離および障害物の相対速度を検出してもよい。ただし、距離および相対速度の検出原理が異なると、検出された距離および相対速度に含まれる誤差も異なる。本実施形態においては、距離および相対速度の検出原理や検出センサを変更した場合、記憶部24に記憶する判定閾値テーブルを検出原理や検出センサに対応するものに変更するだけで、対向車判断部22は、適切な判定を行うことができる。なお、カメラ3による検出結果と、これらのセンサによる検出結果とに基づいて、障害物との距離および障害物の相対速度を算出してもよい。
本発明に係る自動制動装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る自動制動装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。