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JP7092150B2 - 水性インクジェットインク、水性インクジェットインクの製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インクジェットインク、水性インクジェットインクの製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

本発明は、水性インクジェットインク、水性インクジェットインクの製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法に関し、特に、基材との密着性や保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することができる水性インクジェットインク等に関する。
インクジェット法は簡便かつ安価に画像を作製できるため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷を含む様々な印刷分野に応用されてきている。特に、インクジェット法は、版を用いずデジタル印刷が可能であるため、多様な画像を少量ずつ形成するような用途に特に好適である。
インクジェット法で用いられるインクジェットインクには、水と少量の有機溶剤からなる水系インク、有機溶剤を含むが実質的に水を含まない非水系インク、室温では固体のインクを加熱溶融して印字するホットメルトインク、印字後に活性光線を照射されることにより硬化する活性光線硬化性インク等、複数の種類があり、これらのインクは用途に応じて使い分けられている。この中で、水系インクは一般に臭気が少なく安全性が高い点から家庭用プリンタなどに広く用いられる。
このような水性インクジェットインクとして、特定溶媒とポリオレフィン構造を有するポリエステルウレタン樹脂を含有し、オレフィン基材への密着性を向上させる水性インクジェットインクが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この水性インクジェットインクでは、同一ポリマー中にオレフィン構造とポリエステルウレタン構造を共存させているが、この状態ではオレフィン基材に対する樹脂中のオレフィン構造の効果が限定的となり、さらに特定溶剤で密着性を向上させているため、密着性が十分ではなかった。
また、ポリオレフィン構造を有するポリエステル樹脂を含有して、オレフィン基材への密着性を向上させる水性インクジェットインクが開示されている(例えば、特許文献2参照。)、しかしながら、当該水性インクジェットインクにおいても、内包する樹脂がポリエステル樹脂であると、ポリウレタン樹脂と比較してオレフィン基材に対する接着面に対する部分構造の作用が弱く、密着性が十分ではない。
さらに、水性インクジェットインクにおいて、保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することが要求されている。
特開2017-75291号公報 特開2016-196619号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、基材との密着性や保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することができる水性インクジェットインク、水性インクジェットインクの製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、特定の有機溶媒を用い、かつ、水不溶性樹脂微粒子としてポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂粒子を用いることにより、基材との密着性や保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することができる水性インクジェットインク等を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.水不溶性樹脂微粒子、有機溶媒、色材及び水を含有する水性インクジェットインクであって、
前記有機溶媒が、グリコール類、又はジオール類から選ばれる有機溶媒を含有し、かつ、
前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を含有することを特徴とする水性インクジェットインク。
2.前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化されてなる複合樹脂を含有することを特徴とする第1項に記載の水性インクジェットインク。
3.前記水不溶性樹脂微粒子の含有量が、2~10質量%の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の水性インクジェットインク。
4.前記複合樹脂のポリウレタン系樹脂(U)とポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)の値が、40/60~95/5の範囲内であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインク。
5.前記有機溶媒の含有量が、10~50質量%の範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインク
6.前記有機溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオールのいずれかを含有することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインク。
7.第1項から第6項までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインクを製造する水性インクジェットインクの製造方法であって、
ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、当該複合樹脂粒子、有機溶媒、色材及び水を混合する工程と、を備えることを特徴とする水性インクジェットインクの製造方法。
8.非吸収性のフィルム基材上に、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインクを用いて形成された印刷層を有することを特徴とする印刷物。
9.第1項から第6項までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインクを用いて、非吸収性のフィルム基材に画像の記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
本発明の上記手段により、基材との密着性や保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することができる水性インクジェットインク、水性インクジェットインクの製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
ポリウレタン系樹脂及びポリオレフィン系樹脂は、それぞれ非極性基材への密着性に優れており、さらに、近年より強固な密着性を持たせるために、これら樹脂を併用することなど考えられる。しかしながら、これらをインクに含有させると、溶媒、顔料分散剤及び界面活性剤などが共存するため、保存安定性が乏しくなる。例えば、ポリウレタン系樹脂のような極性樹脂とポリオレフィン系樹脂それぞれ単独の混合では安定性に乏しい。
そこで、本発明では、水不溶性樹脂微粒子として、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を用いることにより、複合樹脂では、一つの粒子に二つの樹脂部分が存在するため、安定性が向上すると推察される。
また、このような複合樹脂を含有するインクジェットインクを塗膜化した際には、単にポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂を有機溶媒中に混合して用いるよりも、海島構造のような層構造を形成するため、密着性が優れると推察される。以上より、基材への密着性と保存安定性を両立することができる。
さらに、本発明では、上記保存安定性に加えて、グリコール類又はジオール類の有機溶媒を共存させることによって、より保存安定性を向上させることができる。これは、両末端にヒドロキシ基を持ち、適度な分子量を有する上記有機溶媒が、顔料分散剤と複合樹脂との間の凝集を抑えることで安定化したと考えられる。
また、塗膜化した際のインク表面のブロンジングを抑制することができる。これは、両末端にヒドロキシ基を持つ有機溶媒が、顔料分散剤の粒子と複合樹脂の間に入ることで、粒子間に水素結合が生じ、この水素結合によって、インク乾燥過程で粒子が規則的に配向したまま乾燥することで、最終的な塗膜は各粒子が隙間なく均一に整列した状態となり、塗膜表面の光に対する乱反射が一定になったことで、ブロンジング抑制効果が生まれたものと推察される。
本発明に好ましいインクジェット記録装置の一例を示す模式図
本発明の水性インクジェットインクは、水不溶性樹脂微粒子、有機溶媒、色材及び水を含有する水性インクジェットインクであって、前記有機溶媒が、グリコール類、又はジオール類から選ばれる有機溶媒を含有し、かつ、前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を含有することを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化されてなる複合樹脂を含有することが、基材との密着性及び保存安定性に優れる点で好ましい。
また、前記水不溶性樹脂微粒子の含有量が、2~10質量%の範囲内であることが、基材との密着性及び保存安定性に優れる点で好ましい。
また、前記複合樹脂のポリウレタン系樹脂(U)とポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)の値が、40/60~95/5の範囲内であることが好ましい。オレフィン系樹脂は非極性部位であるため、オレフィン系樹脂の組成比が多くなると安定性に乏しくなることから上記複合比率とすることが、安定性が向上するため好ましい。
また、前記有機溶媒の含有量が、10~50質量%の範囲内であることが、保存安定性及びブロンジング抑制効果に優れる点で好ましい。
また、前記有機溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオールのいずれかを含有することが、保存安定性及びブロンジング抑制効果に優れる点で好ましい。
本発明の水性インクジェットインクの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、当該複合樹脂粒子、有機溶媒、色材及び水を混合する工程と、を備えることを特徴とする。これにより、基材との密着性や保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することができる水性インクジェットインクを提供することができる。
本発明の印刷物は、非吸収性のフィルム基材上に、前記水性インクジェットインクを用いて形成された印刷層を有することを特徴とする。当該印刷物によれば、基材との密着性に優れ、ブロンジングが抑制された高画質な印刷物を得ることができる。
本発明のインクジェット記録方法は、前記水性インクジェットインクを用いて、非吸収性のフィルム基材に画像の記録を行うことを特徴とする。当該インクジェット記録方法によれば、基材との密着性に優れ、ブロンジングが抑制された高画質な印刷物を得ることができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
〔1〕水性インクジェットインク
本発明の水性インクジェットインク(以下、「インクジェットインク」又は「インク」ともいう。)は、水不溶性樹脂微粒子、有機溶媒、色材及び水を含有する水性インクジェットインクであって、前記有機溶媒が、グリコール類、又はジオール類から選ばれる有機溶媒を含有し、かつ、前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を含有することを特徴とする。
〔1.1〕水不溶性樹脂微粒子
本発明に係る水不溶性樹脂微粒子は、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を含有する。
本発明において、「オレフィン系樹脂が、ポリウレタン系樹脂に含有された状態」とは、種々の態様をとり得るが、オレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂中に複数の粒子として分散されていてもよく、また、オレフィン系樹脂がコアを形成し、ポリウレタン系樹脂をシェルとするコア・シェル構造を形成してもよい。なお、オレフィン系樹脂が一部表面に表出するように含有されていてもよい。
また、本願において、当該複合樹脂を含有する水不溶性樹脂微粒子を、複合樹脂粒子ともいう。
〔1.1.1〕ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、不飽和カルボン酸及び/又は酸無水物で変性されたポリオレフィン等の変性ポリオレフィンでもよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体の他、エチレン及び/又はプロピレンと、他のコモノマー、例えば1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネンなどの炭素数2以上、好ましくは2~6のα-オレフィンコモノマーとのランダム共重合体又はブロック共重合体(例えば、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体など)が挙げられる。また、これらの他のコモノマーを2種類以上共重合したものでもよい。また、これらのポリマーを2種以上混合して用いることもできる。
変性ポリオレフィンとしては、不飽和カルボン酸及び/又は酸無水物及び/又は1分子当り1個以上の二重結合を有する化合物で変性されたポリオレフィンが好ましく用いられる。
不飽和カルボン酸及び酸無水物としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸などの、α,β-不飽和カルボン酸及びその無水物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよく、2種以上併用した場合、塗膜物性が良好になることが多い。
上記1分子当り1個以上の二重結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸系モノマ-として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸、ジ(メタ)アクリル酸(ジ)エチレングリコ-ル、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオ-ル、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオ-ル、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロ-ルプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリルアミド等が挙げられる。また、スチレン系モノマ-として、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。さらに、この他に併用し得るモノマ-としては、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、バ-サチック酸のビニルエステル等のビニル系モノマ-が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸を示す。
ポリオレフィンの変性は、ポリオレフィンを一旦トルエン又はキシレンのような有機溶剤に溶解せしめ、ラジカル発生剤の存在下にα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物及び/又は1分子当り1個以上の二重結合を有する化合物で行うか、又は、ポリオレフィンの軟化温度又は融点以上まで昇温できる溶融状態で反応させうるオートクレーブ、又は1軸又は2軸以上の多軸エクストルーダー中で、ラジカル発生剤の存在下又は不存在下にα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物及び/又は1分子当り1個以上の二重結合を有する化合物を用いて行う。
該変性反応に用いられるラジカル発生剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーフタレート、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシエチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイドのようなパーオキサイド類や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソプロピオニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらの過酸化物を使用してグラフト共重合せしめる場合、その過酸化物量はポリオレフィンに対して0.1~50質量部の範囲が望ましく、特に好ましくは0.5~30質量部の範囲である。
以上の乳化原料としてのポリオレフィン系樹脂は、公知の方法で製造されたものでよく、それぞれの製造方法や変性度合については特に限定されない。
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、質量平均分子量が20000~100000の範囲内であることが好ましい。20000以上であると、塗膜の凝集力が強くなり、密着性や耐溶剤性(耐ガソホール性)のような塗膜物性が向上する。100000以下であると、有機溶剤に対する溶解性が良く、乳化分散体の粒子径の微小化が促進される。質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値であり、例えば、島津製作所株式会社製「RID-6A」(カラム:東ソー株式会社製「TSK-GEL」、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、カラム温度:40℃)を用いて、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から求めることができる。
また、本発明では市販のポリオレフィン系樹脂を用いることもでき、ポリオレフィン構造を有する樹脂からなる樹脂微粒子として、日本製紙社製「アウローレン150A」(ポリオレフィン樹脂微粒子)、日本製紙社製「スーパークロンE-415」(ポリプロピレン樹脂微粒子)、日本製紙社製「アウローレンAE-301」(ポリオレフィン樹脂微粒子)、東洋化成社製「ハードレンNa-1001」等の市販品を用いることができる。
〔1.1.2〕ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂としては、親水基を有するものが用いられる。親水基を導入することで、上記ポリオレフィン系樹脂に対する乳化剤としての機能を、ポリウレタン系樹脂に付与することができ、ポリオレフィン系樹脂の乳化分散体である複合樹脂粒子を得ることができる。
かかる親水基としては、カルボキシ基(-COOH)及びその塩、スルホン酸基(-SOH)及びその塩などが挙げられる。上記塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アミン塩などが挙げられる。これらの中でも、親水基としては、カルボキシ基又はその塩が好ましい。
本発明に係る複合樹脂粒子に使用し得るポリウレタン系樹脂は、分子内に水溶性官能基を有する自己乳化型ポリウレタンを分散させた水分散体、又は界面活性剤を併用して強力な機械剪断力の下で乳化した強制乳化型ポリウレタンの水分散体であることが好ましい。上記水分散体におけるポリウレタン系樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネート及び親水基含有化合物との反応により得られるものである。
ポリウレタン系樹脂水分散体の調製に使用し得るポリオールとして、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィン系ポリオールのいずれも使用することができる。中でも、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールを用いて、ウレタン系樹脂中に、カーボネート基又はエーテル基を有する構造とすることが好ましい。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール等の低分子ポリオールと、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、ヘキサヒドロフタル酸などの多価カルボン酸との縮合物を挙げることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンポリテトレメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのような各種のポリエーテルポリオールを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲン等の炭酸誘導体と、ジオールとの反応により得ることができる。そのようなジオールの適当な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-及び1,3-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-及び1,4-ブタンジオール、3-メチルペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノールを挙げることができる。これらのうちで、1,6-ヘキサンジオールを用いたポリカーボネートポリオールが、耐候性及び耐溶剤性の観点から好ましい。
次に有機ポリイソシアネート化合物としては、ウレタン工業の分野において公知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI、H12MDI)などの脂環族イソシアネートなどを挙げることができ、これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環族イソシアネートを用いることが好ましい。また、無黄変性を要求される場合には、脂肪族イソシアネートではHMDI、脂環族イソシアネートではIPDI、H12MDI、芳香族イソシアネートではXDI、TMXDIを使用することが好ましい。
親水基含有化合物としては、分子内に1個以上の活性水素原子と上記親水基とを有する化合物が挙げられる。例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸、グリシンなどのカルボン酸含有化合物、及び、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩などの誘導体;タウリン(即ち、アミノエチルスルホン酸)、エトキシポリエチレングリコールスルホン酸などのスルホン酸含有化合物、及び、そのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩などの誘導体などを挙げることができる。
本発明に係るポリウレタン系樹脂は、ポリオールと有機ポリイソシアネート及び親水基含有化合物とを混合し、公知の方法により、30~130℃で30分~50時間反応させることにより、まずウレタンプレポリマーが得られる。
得られたウレタンプレポリマーは、鎖伸長剤により伸長してポリマー化することで、親水基を有するポリウレタン系樹脂が得られる。鎖伸長剤としては、水及び/又はアミン化合物が好ましく用いられる。鎖伸張剤として水やアミン化合物を用いることにより、遊離イソシアネートと短時間で反応して、イソシアネート末端プレポリマーを効率よく伸長させることができる。
鎖伸長剤としてのアミン化合物としては、ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、メタキシレンジアミン、トルイレンジアミンなどの芳香族ポリアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドのようなポリヒドラジノ化合物などが用いられる。アミン化合物には、上記ポリアミンとともに、ポリマー化を大きく阻害しない程度で、ジブチルアミンなどの1価のアミンやメチルエチルケトオキシム等を反応停止剤として含んでいてもよい。
なお、ウレタンプレポリマーの合成においては、イソシアネートと不活性で、かつ、ウレタンプレポリマーを溶解しうる溶剤を用いてもよい。これらの溶剤として、ジオキサン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。反応段階で使用されるこれらの親水性有機溶剤は、最終的に除去されるのが好ましい。
また、ウレタンプレポリマーの合成においては、反応を促進させるために、アミン触媒(例えば、トリエチルアミン、N-エチルモルフォリン、トリエチルジアミン等)、錫系触媒(例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫等)、チタン系触媒(例えば、テトラブチルチタネート等)などの触媒を添加してもよい。
ポリウレタン系樹脂の分子量は、分岐構造や内部架橋構造を導入して可能な限り大きくすることが好ましく、分子量50000~10000000であることが好ましい。分子量を大きくして溶剤に不溶とした方が、耐候性、耐水性に優れた塗膜が得られるからである。
また、本発明では市販のポリウレタン系樹脂を用いることもでき、例えば、カチオン性又はノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子を好ましく用いることができる。
以下に、カチオン性又はノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子の具体例を挙げる。カチオン性のポリウレタン樹脂微粒子としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス620」及び「スーパーフレックス650」(「スーパーフレックス」は同社の登録商標)、三洋化成工業株式会社製の「パーマリンUC-20」(「パーマリン」は同社の登録商標)、大原パラヂウム化学株式会社製の「パラサーフUP-22」などを挙げることができる。ノニオン性のポリウレタン樹脂微粒子としては、例えば、第一工業製薬株式会社製の「スーパーフレックス500M」及び「スーパーフレックスE-2000」などを挙げることができる。
〔1.1.3〕複合樹脂粒子
本発明に係る複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を含有する。
好ましくは、本発明に係る複合樹脂粒子は、ポリオレフィン系樹脂が、上記親水基を有するポリウレタン系樹脂により乳化されて複合樹脂化したものである。
すなわち、前記複合樹脂粒子において、ポリウレタン系樹脂は、水不溶性樹脂としてのポリオレフィン系樹脂と連続相である水との界面に存在して、前記水不溶性樹脂を保護する前記樹脂と異なる水不溶性樹脂層として機能している。このようにポリオレフィン系樹脂をポリウレタン系樹脂により乳化させてなる複合樹脂粒子とすることで、ポリウレタン系樹脂、有機溶媒、顔料分散剤及び界面活性剤等との相溶性の低下を抑制することができ、又、ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂をそれぞれ乳化させて単に混合する場合に比べて、塗膜物性を向上することができ、基材との密着性及び保存安定性に優れる点で好ましい。
なお、当該複合樹脂粒子は、後述する(1)の製造方法により得られたものでもよく、また(2)の製造方法により得られたものであってもよい。
複合樹脂におけるポリウレタン系樹脂(U)とポリオレフィン系樹脂(O)との質量比率の値(U/O)は、40/60~95/5の範囲内であることが好ましい。
ポリウレタン系樹脂の存在割合が上記範囲内であると、分散剤との相溶性が向上する傾向が見られ、また、耐溶剤性についても優れる。また、ポリオレフィン系樹脂の存在割合が上記範囲であると、ポリオレフィン系フィルム基材に対する密着性に優れる。また、オレフィン系樹脂は、非極性部位を有するため、オレフィン系樹脂の存在割合が上位範囲内であると、保存安定性にも優れる。
前記存在割合のより好ましい範囲は、(U/O)=40/60~80/20である。
複合樹脂粒子中におけるポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを合わせた合計での樹脂濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10~70質量%である。
乳化に際しては、上記ポリウレタン系樹脂とともに、乳化剤として界面活性剤を用いることもできる。すなわち、本発明に係る複合樹脂粒子においては、さらに界面活性剤を乳化剤として含有してもよい。界面活性剤を添加することにより、複合樹脂粒子の貯蔵安定性をさらに向上することができる。
かかる界面活性剤としては、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤のいずれか一方、又は両方を用いることが好ましい。これらのアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤は、全樹脂質量100質量部に対して、両活性剤の合計で1~20質量部配合することが好ましい。配合量が20質量部以下であれば、耐水性や耐溶剤性が優れる傾向となる。
また、アニオン界面活性剤(X)とノニオン界面活性剤(Y)の配合質量比(X/Y)の値は、100/0~50/50であることが好ましい。アニオン界面活性剤の配合量を上記範囲とすることにより、乳化性や貯蔵安定性をより向上することができる。
ここで、アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、N-アシルアミノ酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル等が挙げられる。これらの中でもスルホコハク酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩が良好である。また、塩の種類としては、特に限定されるものではないが、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、トリエタノールアミン塩などが好ましい。
また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類等が好ましい。
本発明に係る複合樹脂粒子には、他に酸化防止剤、耐光剤、可塑剤、発泡剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、他の水性樹脂、各種フィラーを性能の損なわない限り添加することができる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系又はセミカルバジド系などの酸化防止剤の溶液又はエマルションが挙げられる。耐光剤としては、ヒンダードアミン(HALS)系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの耐光剤の溶液又はエマルションが挙げられる。
また、本発明に係る複合樹脂粒子には、エポキシ系、カルボジイミド系、オキサゾリジン系、ブロックイソシアネート系、イソシアネート系等の各種架橋剤をより高い耐久性を付与するために添加することができる。
本発明に係る複合樹脂粒子の製造方法について説明する。
上述した複合樹脂粒子は、下記(I)又は(II)の製造方法により調製することができる。
(I)ポリオレフィン系樹脂を親水基を有するウレタンプレポリマーにより水に乳化させ、次いで、鎖伸長剤としてのアミン化合物又はその水溶液を添加して前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長(高分子量化)する方法。
(II)親水基を有するウレタンプレポリマーを水に乳化し、さらに鎖伸長剤としてのアミン化合物又はその水溶液を添加して前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長させてポリウレタン系樹脂の水分散体を調製し、次いで、ポリオレフィン系樹脂を前記ポリウレタン系樹脂の水分散体で乳化する方法。
上記(I)の製造方法に係る実施形態について説明する。この方法では、まず、ポリオレフィン系樹脂を溶剤に溶解して得られた樹脂溶液と、親水基を有するウレタンプレポリマーの溶液とを混合し、混合物に水を添加して撹拌することにより乳化させる。
上記溶剤としては、ヘキサン、イソヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、メチルエチルケトン、キシレン、トルエン、ベンゼンなどの有機溶剤、及び、超臨界状態にある二酸化炭素などの水以外の溶剤が挙げられ、これらはいずれか単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
また、乳化方法は、公知の強制乳化法、転相乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法等のいずれの方法でも構わず、使用機器は、例えば、撹拌羽、ディスパー、ホモジナイザー等による単独撹拌、及びこれらを組み合わせた複合撹拌、サンドミル、多軸押出機の使用が可能である。また、該乳化に際して、ウレタンプレポリマーとともに、上記界面活性剤を混合しても良い。
次いで、上記乳化液を水で希釈した後に、鎖伸長剤としてのアミン化合物を添加して、ウレタンプレポリマーの残存イソシアネート基を該鎖伸長剤により架橋させ、ポリウレタン系樹脂を高分子量化する。その後、有機溶剤を留去することで、ポリウレタン系樹脂の内部にポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂粒子分散体(すなわち、水不溶性樹脂微粒子が分散された分散体)が得られる。
このようにして得られる複合樹脂粒子分散体において、上記ポリオレフィン系樹脂が変性ポリオレフィンである場合、塩基性物質を加えることによりポリマ-中に導入された酸成分を中和してもよい。中和により同部分を電離せしめることで、ポリマー分子が伸長されて系全体が粘度上昇を起こすため、複合樹脂粒子分散体はより安定性を増すことができる。また、この場合、塩基性物質の添加量によって希望するPHに調製することができる。
使用される塩基性物質としては、ポリオレフィン系樹脂中の酸部分を中和できるものであれば特に限定されず、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノ-ルアミン、プロパノ-ルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジエタノ-ルアミン、ジプロパノ-ルアミン、N-メチルジエタノ-ルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノ-ルアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノ-ル、2-アミン-2-メチル-1-プロパノ-ル、モルフォリン等の有機の塩基物質、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム等の無機の塩基性物質を挙げることができる。これらの塩基性物質を用いる際、1種類でもよいが2種類以上の塩基性物質を併用すると、本発明の目的がより効果的に達成される場合が多い。なお、塩基性物質としてアミン化合物を用いる場合、ウレタンプレポリマーを鎖伸張させる前に添加するものとしては、遊離イソシアネートと反応しないように3級アミンが用いられる。一方、鎖伸張後に変性ポリオレフィンを中和する場合、1級、2級、3級アミンのいずれも用いることができる。
中和するのに用いられる塩基性物質の量は、変性ポリオレフィンの変性度合いによっても異なるが、変性ポリオレフィン100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましい。塩基性物質の量が0.1質量部以上では、pHが中性になり、そのため複合樹脂粒子分散体の保存性が向上する。一方、塩基性物質の量が10質量部以下では複合樹脂粒子分散体の保存安定性は良好であり、塩基性が強くなく親水性物質が多量に塗膜中に導入されないため、同塗膜の耐水性が向上する。
上記(II)の製造方法に係る実施形態について説明する。この方法では、まず、親水基を有するウレタンプレポリマーの溶液に水を添加して乳化させ、次いで、得られた乳化液に、鎖伸長剤としてのアミン化合物を添加して、ウレタンプレポリマーの残存イソシアネート基を該鎖伸長剤により架橋させ、高分子量化したポリウレタン系樹脂の水分散体を調製する。
その後、ポリオレフィン系樹脂を溶剤に溶解して得られた樹脂溶液と、上記で得られた親水基を有するポリウレタン系樹脂の水分散体とを混合して、該親水基を有するポリウレタン系樹脂によりポリオレフィン系樹脂を乳化させ、次いで、水で希釈した後に、有機溶剤を留去することで、ポリウレタン系樹脂の内部にポリオレフィン系樹脂を含有する複合樹脂粒子分散体(すなわち、水不溶性樹脂微粒子が分散された分散体)が得られる。
方法(II)における溶剤及び乳化方法は、方法(I)と同様である。また、方法(II)においても、ポリオレフィン系樹脂の乳化に際し、上記ポリウレタン系樹脂とともに、界面活性剤を混合してもよい。さらに、得られた複合樹脂粒子分散体において、塩基性物質により変性ポリオレフィンを中和してもよいのも、上記方法(I)と同様である。
複合樹脂粒子の平均粒子径は、格別限定されないが、10~500nmの範囲であることが好ましく、10~300nmの範囲であることがより好ましく、10~200nmの範囲であることがさらに好ましい。平均粒子径の測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、かつ、該粒子径領域を精度よく測定できる。
また、インクジェットインクには、複合樹脂を含有する水不溶性樹脂微粒子をインクジェットインクの全質量に対して、2~10質量%の範囲内で含有することが、基材との密着性及び保存安定性に優れる点で好ましい。
〔1.2〕有機溶媒
本発明のインクジェットインクに用いられる有機溶媒は、グリコール類、ジオール類から選ばれる有機溶媒の少なくとも1種を含有する。
グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレンオキサイド基の数が5以上のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、プロピレンオキサイド基の数が4以上のポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、チオジグリコール等が挙げられる。
ジオール類としては、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられる。
特に、本発明に係る有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールのいずれかを少なくとも含有することが、保存安定性及びブロンジング抑制効果に優れる点で好ましい。
本発明に係る有機溶媒としては、前記グリコール類及びジオール類以外の、他の有機溶媒をさらに用いてもよい。
他の有機溶媒としては、水溶性の有機溶剤が好適であり、例えば、アルコール類、アミン類、アミド類、グリコールエーテル類、炭素数が4以上である1,2-アルカンジオール類などが好ましく例示できる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等を好ましく例示できる。
アミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルフォリン、N-エチルモルフォリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等を好ましく例示できる。
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等を好ましく例示できる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等を好ましく例示できる。
炭素数が4以上である1,2-アルカンジオール類としては例えば、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、及び1,2-ヘプタンジオール等を好ましく例示できる。
また、インクジェットインクが2種以上の有機溶媒を含有するとき、有機溶媒全体の質量に対する前記グリコール類及びジオール類の質量比率は50%以上であることが好ましい。
また、グリコール類及びジオール類から選ばれる有機溶媒の少なくとも1種を含有する有機溶媒の、インクジェットインクに対する含有量は、10~50質量%の範囲内であることが、保存安定性及びブロンジング抑制効果に優れる点で好ましい。
〔1.3〕色材
本発明の水性インクジェットインクに含まれる色材としては、顔料又は染料でありうる。得られる画像の耐擦性を高める点などから、顔料が好ましい。
顔料としては、アニオン性の分散顔料、例えば、アニオン性の自己分散性顔料や、アニオン性の高分子分散剤により顔料を分散したものを用いることができ、特に、アニオン性の高分子分散剤により顔料を分散したものが好適である。
顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料及び、酸化チタン等の無機顔料を好ましく用いることができる。
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
好ましく用いることのできる具体的な有機顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
マゼンタ又はレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155等が挙げられる。特に色調と耐光性のバランスにおいて、C.I.ピグメントイエロー155が好ましい。
グリーン又はシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
〔1.4〕分散剤
顔料を分散させるために用いる分散剤は、格別限定されないがアニオン性基を有する高分子分散剤が好ましく、分子量が5000~200000の範囲内のものを好適に用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体に由来する構造を有するブロック共重合体、ランダム共重合体及びこれらの塩、ポリオキシアルキレン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等を挙げることができる。
高分子分散剤は、アクリロイル基を有することが好ましく中和塩基で中和して添加することが好ましい。ここで中和塩基は特に限定されないが、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルフォリン等の有機塩基であることが好ましい。特に、顔料が酸化チタンであるとき、酸化チタンは、アクリロイル基を有する高分子分散剤で分散されていることが好ましい。
また、高分子分散剤の添加量は、顔料に対して、10~100質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内がより好ましい。
顔料は、顔料を上記高分子分散剤で被覆した、いわゆるカプセル顔料の形態を有することが特に好ましい。顔料を高分子分散剤で被覆する方法としては、公知の種々の方法を用いることができるが、例えば、転相乳化法、酸析法、又は、顔料を重合性界面活性剤により分散し、そこへモノマーを供給し、重合しながら被覆する方法などを好ましく例示できる。
特に好ましい方法として、水不溶性樹脂を、メチルエチルケトンなどの有機溶剤に溶解し、さらに塩基にて樹脂中の酸性基を部分的、もしくは完全に中和後、顔料及びイオン交換水を添加し、分散したのち、有機溶剤を除去し、必要に応じて加水して調製する方法を挙げることができる。
インクジェットインク中における顔料の分散状態の平均粒子径は、50~200nmの範囲内であることが好ましい。これにより、顔料の分散安定性を向上でき、記録インクの保存安定性を向上できる。顔料の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができるが、動的光散乱法による測定が簡便で、かつ、該粒子径領域を精度よく測定できる。
顔料は、分散剤及びその他所望する諸目的に応じて必要な添加物とともに、分散機により分散して用いることができる。
分散機としては、従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等を使用できる。中でもサンドミルによって顔料を分散させると、粒度分布がシャープとなるため好ましい。また、サンドミル分散に使用するビーズの材質は、格別限定されないが、ビーズ破片の生成やイオン成分のコンタミネーションを防止する観点から、ジルコニア又はジルコンであることが好ましい。さらに、このビーズ径は、0.3~3mmの範囲内であることが好ましい。
インクジェットインクにおける顔料の含有量は格別限定されないが、酸化チタンについては、7~18質量%の範囲内が好ましく、有機顔料については0.5~7質量%の範囲内が好ましい。
〔1.5〕水
本発明の水性インクジェットインクに含まれる水については、特に限定されるものではなく、イオン交換水、蒸留水、又は純水であり得る。
〔1.6〕その他の成分
本発明のインクジェットインクには、界面活性剤を含有させることもできる。これにより、インク出射安定性の向上や、記録媒体に着弾した液滴の広がり(ドット径)を制御することができる。
インクジェットインクの表面張力は、35mN/m以下が好ましく、30mN/m以下に調整することがより好ましい。
本発明に用いられるインクジェットインクで用いることができる界面活性剤は、特に制限なく用いることができるが、インクの他の構成成分にアニオン性の化合物を含有するときは、界面活性剤のイオン性はアニオン、ノニオン又はベタイン型が好ましい。
本発明において、好ましくは静的な表面張力の低下能が高いフッ素系又はシリコーン系界面活性剤や、動的な表面張力の低下能が高い、ジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン界面活性剤、比較的低分子量のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アセチレングリコール類、プルロニック型界面活性剤、ソルビタン誘導体などのノニオン界面活性剤が好ましく用いられる。フッ素系又はシリコーン系界面活性剤と、前記動的な表面張力の低下能が高い界面活性剤を併用して用いることも好ましい。
インクジェットインクにおける界面活性剤の含有量は、格別限定されないが、0.1~5.0質量%の範囲であることが好ましい。
本発明に用いられるインクジェットインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコーンオイル等の油滴微粒子、特開昭57-74193号公報、同57-87988号公報及び同62-261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57-74192号公報、同57-87989号公報、同60-72785号公報、同61-146591号公報、特開平1-95091号公報及び同3-13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59-42993号公報、同59-52689号公報、同62-280069号公報、同61-242871号公報及び特開平4-219266号公報等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
〔1.7〕物性
本発明のインクジェットインクの粘度としては、25℃で1~40mPa・sの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2~10mPa・sの範囲内である。
〔2〕水性インクジェットインクの製造方法
本発明の水性インクジェットインクの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、当該複合樹脂粒子、有機溶媒、色材及び水を混合する工程と、を備えることを特徴とする。
〔2.1〕複合樹脂粒子を形成する工程
この工程では、上述した複合樹脂粒子の製造方法で説明したとおり、下記(I)又は(II)の製造方法により調製する。
(I)ポリオレフィン系樹脂を親水基を有するウレタンプレポリマーにより水に乳化させ、次いで、鎖伸長剤としてのアミン化合物又はその水溶液を添加して前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長(高分子量化)する方法。
(II)親水基を有するウレタンプレポリマーを水に乳化し、さらに鎖伸長剤としてのアミン化合物又はその水溶液を添加して前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長させてポリウレタン系樹脂の水分散体を調製し、次いで、ポリオレフィン系樹脂を前記ポリウレタン系樹脂の水分散体で乳化する方法。
〔2.2〕混合する工程
この工程では、上記工程で得られた複合樹脂粒子、有機溶媒、色材(顔料)及び水と、任意の各成分とを、常温下、又は必要に応じて加熱下において混合する。
その後、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、顔料及び分散剤を含む分散体をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して混合してもよい。
〔3〕印刷物
本発明の印刷物は、非吸収性のフィルム基材上に、前記水性インクジェットインクを用いて形成された印刷層を有することを特徴とする。
本発明の印刷物は、基材上に、水性インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して塗布、定着して印刷層を形成したものである。また、基材上に、あらかじめ、インクジェット記録用前処理液をインクジェットヘッドから吐出して前処理層を形成し、当該前処理層を塗布、定着した位置に前記印刷層を形成したものであることが好ましい。
また、基材と前処理層との層間に他の機能性層を形成してもよく、また、印刷層の上層に、例えばラミネート接着層を介して非吸収性のフィルム基材等を貼合してもよい。
本発明でいう「インクジェット記録用前処理液」とは、基材にインクジェットプリント法によって画像を記録する際に、インクの画像形成を速めたり、画質を向上させる機能を有する、あらかじめ基材上に付与するインクの1種である。具体的には、インクジェット記録用前処理液は、画像を形成する色インクが記録媒体に滲まないよう、前処理液を記録媒体に塗布した位置にインクを定着させるためのインクである。このようなインクジェット記録用前処理液は、少なくとも樹脂微粒子、凝集剤及び水を含有することが好ましい。
〔3.1〕基材
前記基材としては、特に限定されず、吸水性の高い紙基材でもよいし、グラビア又はオフセット印刷用のコート紙など吸水性の低い基材でもよいし、フィルム、プラスチックボード(軟質塩化ビニル、硬質塩化ビニル、アクリル板、ポリオレフィン系など)、ガラス、タイル及びゴムなどの非吸水性の基材であってもよい。
これらのうち、吸水性の低い基材及び非吸水性の基材としては、特に好ましくはフィルムである(本発明では、非吸収性のフィルム基材という。)。このような基材において、本発明のインクジェット記録用前処理液を塗布することによって、水系インクを十分にピニングさせて、滲みの少ない高画質な画像を形成することができる。
上記フィルムの例には、公知のプラスチックフィルムが含まれる。上記プラスチックフィルムの具体例には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム(PET)、高密度ポリエチレンフィルム及び低密度ポリエチレンフィルムなどを含むポリエチレンフィルム(PE)、ポリプロピレンフィルム(PP)、ナイロン(NY)などのポリアミド系フィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリアクリル酸(PAA)フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリ乳酸フィルムなどの生分解性フィルムなどが含まれる。ガスバリアー性、防湿性、及び保香性などを付与するために、フィルムの片面又は両面にポリ塩化ビニリデンがコートされていてもよいし、金属酸化物が蒸着されていてもよい。また、フィルムには防曇加工が施されていてもよい。また、フィルムにはコロナ放電及びオゾン処理などが施されていてもよい。
上記フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。
また、上記フィルムは、紙などの吸収性の基材の表面にPVAコートなどの層を設けて、記録をすべき領域を非吸収性とした、多層性の基材でもよい。
また、一般に記録インクの密着性を得るのが困難である防曇加工が施された非吸水性のフィルムに対して記録を行う際に、本発明の効果が顕著になる。
防曇加工が施されたフィルムとしては、一般的に、界面活性剤を含有させたフィルムが用いられているが、この界面活性剤が記録インクの密着性に悪影響を及ぼすことが知られている。このようなフィルムに本発明の前処理液をプレコートすると、前処理液に界面活性剤が溶解、拡散して、記録インク層との界面に界面活性剤が高濃度に配向することを抑制する結果、密着性を阻害しないものと推定している。
また、透明性の高い記録媒体に対して記録を行う際に、透明性が損なわれにくいという本発明の効果は顕著である。
上記フィルムの厚さは、250μm未満であることが好ましい。
〔4〕インクジェット記録方法
本発明のインクジェット記録方法は、前記水性インクジェットインクを用いて、非吸収性のフィルム基材に画像の記録を行うことを特徴とする。
本発明のインクジェット記録方法は、あらかじめ非吸収性のフィルム基材の表面をインクジェット記録用前処理液によりプレコートした後、インクジェットインクにより画像の記録を行うことが好ましい。
前処理液をプレコートする方法は特に限定されないが、良好な記録インクの密着性を得るために、前処理液に含む本発明に係る複合樹脂微粒子の付与量を、記録媒体に対して0.3g/m以上、より好ましくは0.8g/m以上とすることが好ましい。フィルム基材上への前処理液の塗布方法は格別限定されないが、例えば、ローラー塗布法、カーテン塗布法、スプレー塗布法、インクジェット法等を好ましく挙げることができる。
本発明において使用できるインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でもかまわない。また、吐出方式としては電気-機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気-熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等などいずれの吐出方式を用いてもかまわない。
特に、電気-機械変換方式に用いられる電気-機械変換素子として圧電素子を用いたインクジェットヘッド(ピエゾ型インクジェットヘッドともいう)が好適である。
一般的なフィルムの多くがロール形態で流通していることに鑑みて、シングルパス方式のインクジェット記録方法を用いることが好ましい。本発明の効果は、特にシングルパス方式のインクジェット記録方法において特に顕著になる。即ち、シングルパス方式のインクジェット記録方法を用いた場合、高精細な画像を形成できる。
シングルパス方式のインクジェット記録方法とは、記録媒体が一つのインクジェットヘッドユニットの下を通過した際に、一度の通過でドットの形成されるべき全ての画素にインク滴を付与するものである。
シングルパス方式のインクジェット記録方法を達成する手段として、ラインヘッド型のインクジェットヘッドを使用することが好ましい。
ラインヘッド型のインクジェットヘッドとは、印字範囲の幅以上の長さを持つインクジェットヘッドのことを指す。ラインヘッド型のインクジェットヘッドとしては、一つのヘッドで印字範囲の幅以上であるものを用いてもよいし、複数のヘッドを組み合わせて印字範囲の幅以上となるように構成してもよい。
また、複数のヘッドを、互いのノズルが千鳥配列となるように並設して、これらヘッド全体としての解像度を高くすることも好ましい。
記録媒体の搬送速度は、例えば1~120m/minの範囲内で設定することができる。搬送速度が速いほど画像形成速度が速まる。本発明によれば、シングルパスのインクジェット画像形成方法で適用可能な、線速50~120m/minの範囲内という非常に速い線速でもインク滲みの発生をより抑制し、かつ、インク密着性の高い画像を得ることができる。
前処理液又はインクジェットインクの付与後には、基材を乾燥させてもよい。乾燥は、赤外線ランプ乾燥、熱風乾燥、バックヒート乾燥、及び減圧乾燥などの公知の方法で行うことができる。乾燥の効率をより高める観点からは、これらの乾燥方法のうち2種以上を組み合わせて基材を乾燥させることが好ましい。
以下、本発明のインクジェット記録方法及び記録装置について好ましい一例を下記に示す。
図1は、本発明に好ましいインクジェット記録装置(10)の模式図である。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1乾燥部は省略することも可能である。
送り出しローラーから繰り出される非吸収性である基材(F)は、ロールコーター(2)によって、ノズル(3)から吐出された前処理液滴(4)が塗布されて、前処理層(P)が形成される。この時に、第1乾燥部によって前処理層(P)は乾燥される。
次いで、当該前処理層(P)上に、インクジェットヘッド(6)から吐出されるインク液滴(7)が印刷されて、インク印刷層(R)が形成されて、第2乾燥部(8)によって乾燥後巻取りローラー(9)によって、巻き取られる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[実施例1]
<ウレタンプレポリマー溶液A-1の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリカーボネートポリオール(分子量1000、商品名ニッポラン981、日本ポリウレタン工業(株))を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6重量部と、N-メチル-N,N-ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(三級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50~60℃で30~60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50質量%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液A-1を得た。
<複合樹脂粒子分散体B-1の調製>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリオレフィン系樹脂(商品名:アウローレン150S、日本製紙(株)製(表Iでは「150S」と表記。))80.0質量部、メチルシクロヘキサン240.0質量部及びメチルエチルケトン48.0質量部を投入し、80℃に昇温して加熱溶解させた。溶解後、内温を40℃に保ち、ウレタンポリマー溶液A-1(不揮発分約50質量%)を40.0質量部を添加し、混合した。この溶液に58.0質量部の水を加え、ホモジナイザーを使用して乳化した後、570質量部の水を徐々に加え希釈し、これにエチレンジアミン1.0質量部と水12質量部を混合した水溶液を徐々に添加し、1時間撹拌してポリマー化を行った。これを50℃減圧下、脱溶剤を行い、不揮発分(粒子としての固形分)約30質量%の複合樹脂粒子分散体B-1を得た。
<水性インクジェットインク1の調製>
顔料(ピグメントブルー15:3)を18質量%に、顔料分散剤(水酸化ナトリウム中和されたカルボキシ基を有するアクリル系分散剤(BASF社製「ジョンクリル819」、酸価75mgKOH/g、固形分20質量%)を31.5質量%と、エチレングリコール20質量%と、イオン交換水(残量;全量が100質量%となる量)を加えた混合液をプレミックスした後、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、顔料の含有量が18質量%の顔料分散液を調製した。
この顔料分散液に含まれる顔料粒子の平均粒子径は109nmであった。なお、平均粒子径の測定はマルバルーン社製「ゼータサイザ1000HS」により行った。
上記顔料分散液10.0質量部に、複合樹脂粒子分散体B-1を3.3質量部、有機溶媒(トリエチレングリコール)5.0質量部、界面活性剤(日信化学工業株式会社、オルフィンE1010、「オルフィン」は同社の登録商標)1.0質量部及びイオン交換水(残量;80.7質量部)を撹拌しながら添加し、得られた混合液を1μmのフィルターにより濾過して水性インクジェットインク1を得た。濾過前後で実質的な組成変化はなかった。
<水性インクジェットインク2~20、25~27の調製>
上記複合樹脂粒子分散体B-1調製において、ポリオレフィン系樹脂及びウレタンプレポリマー溶液A-1の質量比を表Iに示すとおりに変更して各複合樹脂粒子分散体を得た。
上記水性インクジェットインク1の調製において、複合樹脂粒子分散体及び有機溶媒の種類、各インク成分(複合樹脂粒子分散体、有機溶媒、顔料分散液、界面活性剤及び水)の質量部を下記表I及び表IIに示すとおりに変更した以外は、同様にして水性インクジェットインク2~20及び25~27を得た。
<水性インクジェットインク21の調製>
特開2017-75291号公報の合成例1に記載の方法(明細書段落[0067]参照。)と同様の方法で合成し、ポリオレフィン構造を有するポリエステルウレタン樹脂エマルジョン(樹脂粒子分散体C-1)を得た。
上記水性インクジェットインク1の調製において、複合樹脂粒子分散体A-1の代わりに樹脂粒子分散体C-1を用い、その他のインク成分の種類及び質量部については下記表IIに示すとおりに変更した以外は、同様にして水性インクジェットインク21を得た。
<水性インクジェットインク22の調製>
特開2016-196619号公報の製造例5に記載の方法(明細書段落[0110]参照。)と同様の方法で合成し、ポリオレフィン構造を有するポリエステル樹脂粒子(複合樹脂粒子分散体C-2)を得た。
上記水性インクジェットインク1の調製において、複合樹脂粒子分散体A-1の代わりに複合樹脂粒子分散体C-2を用い、その他のインク成分については下記表IIに示すとおりに変更した以外は、同様にして水性インクジェットインク22を得た。
<水性インクジェットインク23の調製>
上記水性インクジェットインク1の調製において、複合樹脂粒子分散体A-1の代わりに、WBR-016U(大成ファインケミカル社製)8.35質量部及びハードレン EH-801(東洋紡社製)8.35質量部を混合した混合樹脂粒子を用い、その他のインク成分については下記表IIに示すとおりに変更した以外は、同様にして水性インクジェットインク23を得た。
<水性インクジェットインク24の調製>
上記水性インクジェットインク1の調製において、複合樹脂粒子分散体A-1の代わりに、WBR-2101(大成ファインケミカル社製)8.35質量部及びハードレン NZ-1004(東洋紡社製)8.35質量部を混合した混合樹脂粒子を用い、その他のインク成分については下記表IIに示すとおりに変更した以外は、同様にして水性インクジェットインク24を得た。
<評価>
(インクジェット記録方法)
コニカミノルタ社製ピエゾ型インクジェットヘッド(360dpi、吐出量14pL)の独立駆動ヘッド二つをノズルが互い違いになるように配置し、720dpi×720dpiのヘッドモジュールを作成し、ステージ搬送機上に、搬送方向にノズル列が直交するように設置した。
ヘッドモジュールのインクジェットに、上記により得られた水性インクジェットインクを充填し、ステージ搬送機によって搬送されるフィルム基材の被膜上にシングルパス方式でベタ画像を記録できるようにインクジェット記録装置を構成した。
基材としてポリエチレンフィルム(PEフィルム)太閤FE#50-FE2001(フタムラ化学株式会社製)を用いた。上記基材のコロナ処理面上に、プレコート液を#3のワイヤーバーで塗布して乾燥したのち、コニカミノルタ社製ピエゾ型インクジェットヘッド(360dpi、吐出量14pL)の独立駆動ヘッドを用いて、インク付量が11.2cc/mである720dpi×720dpiのベタ画像が形成されるように、水性インクジェットインク1の液滴を吐出した。
(密着性)
上記形成した画像のベタ画像にて、画像に1mm間隔で5×5の碁盤目状にカッターで切れ込みを入れたクロスカット法によるテープ剥離試験を行い、下記の基準で評価した。
◎:テープによるはがれなく良好
○:碁盤目状の切れ込み1マス以上3マス以下剥がれるが、良好なレベル
△:碁盤目状の切れ込み4マス以上6マス以下剥がれるが、実用状許容できるレベル
×:碁盤目状の切れ込み7マス以上が剥がれ実用上許容できないレベル
(保存安定性)
上記調製したインクジェットインクを60℃、1週間の条件でサーモ保存した後に、マルバルーン社製「ゼータサイザ1000HS」を用いて平均粒子径を測定した。得られた平均粒子径と保存前の平均粒子径から粒径増加率を算出し、下記の基準に基づいて評価した。
◎:平均粒子径の増加率が120%未満
○:平均粒子径の増加率が120%以上140%未満
△:平均粒子径の増加率が140%以上160%未満
×:平均粒子径の増加率が160%以上
(ブロンジング)
上記形成した画像のベタ画像にて、印字乾燥後、蛍光灯下で目視観察を行い、以下の基準でブロンジングを評価した。
◎:反射した蛍光灯の光が白色を再現している。
○:反射した蛍光灯の光がわずかに着色を帯びているが認識が難しいレベル。
△:反射した蛍光灯の光が赤味を帯びており、すぐに認識できるレベル。
×:反射した蛍光灯の光が赤味を大きく帯びている。
Figure 0007092150000001
Figure 0007092150000002
表I及び表IIにおいて、「含有量」とは、樹脂粒子のインク全体に対する含有量(質量%)を表す。具体的には、インク1では、粒子としての固形分約30質量%の複合樹脂粒子分散体F-1において、複合樹脂粒子分散体A-1を3.3質量部用いたとき、インク全体に対して樹脂粒子が1質量%含有されていることを意味する。
なお、インク1~21では、全て固形分が約30質量%である。
上記結果に示されるように、本発明のインクは、比較例のインクに比べて保存安定性に優れ、基材との密着性が良好で、かつ、ブロンジング抑制効果に優れることが認められる。
[実施例2]
上記調製したインクを用いて、実施例1と同様にして、実施例1の非吸収性基材であるPEフィルムに代えて、OPP-1:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(AF-642、20μm厚、両面コロナ処理、両面防曇性、フタムラ化学株式会社製、防曇加工あり)、OPP-2:二軸延伸ポリプロピレンフィルム(FOS-BT、30μm厚、両面コロナ処理、フタムラ化学株式会社製、防曇加工なし)、PET:二軸延伸ポリエステルフィルム(E-5200、25μm厚、両面コロナ処理、東洋紡株式会社製、防曇加工なし)、及び印刷コート紙:キャストコート紙(ミラーコート・プラチナ、坪量157g/m、王子製紙株式会社製)を用いて、実施例1と同様にして、基材への密着性及びブロンジングの評価を実施したところ、本発明のインクを用いた場合、比較例のインクに比べて、密着性及びブロンジング抑制の効果の点でいずれも優れていることが確認された。
[実施例3]
実施例1で調製したインク1~20及び25~27で用いたポリオレフィン系樹脂:アウローレン150S、日本製紙(株)製)に代えて、ポリオレフィン系樹脂:ハードレンNa-1001(東洋化成(株)製)、又はスーパークロンE-415(日本製紙(株)製)を用いて、インク1~20及び25~27と同様に、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化させてなる複合樹脂粒子分散体をそれぞれ調製した。
得られた前述のインク1~20に対応するインクは、インク25~27に対応するインクに比べて、保存安定性に優れていた。また、得られたインク1~20に対応するインクを非吸収性基材(PEフィルム)に塗布して形成した画像は、得られたインク25~27に対応するインクを用いた場合に比べて、基材への密着性が良好で、ブロンジング抑制効果に優れていることが確認された。
[実施例4]
実施例1で調製したインク1~20及び25~27で用いたウレタンポリマー溶液A-1に代えて、下記のウレタンポリマー溶液A-2又はA-3を用いて、インク1~20及び25~27と同様に、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化させてなる複合樹脂粒子分散体をそれぞれ調製した。
得られた前述のインク1~20に対応するインクは、インク25~27に対応するインクに比べて、保存安定性に優れていた。また、得られたインク1~20に対応するインクを非吸収性基材(PEフィルム)に塗布して形成した画像は、得られたインク25~27に対応するインクを用いた場合に比べて、基材への密着性が良好で、ブロンジング抑制効果に優れていることが確認された。
<ウレタンプレポリマー溶液A-2の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオール(商品名テスラック 2461、日立化成(株)製)を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6質量部と、N-メチル-N,N-ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(三級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50~60℃で30~60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50質量%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液A-2を得た。
<ウレタンプレポリマー溶液A-3の合成>
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ポリエーテルポリオール(PolyTHF2000、BASF(株))を182質量部と、ポリエチレングリコール(PEG、分子量600、商品名PEG600、第一工業製薬(株))を22.0質量部と、トリメチロールプロパンを5.6質量部と、N-メチル-N,N-ジエタノールアミンを43.8質量部と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを204質量部と、メチルエチルケトン(MEK)216質量部を反応容器にとり(三級アミンの添加量9.6質量%、PEGの添加量4.8質量%)、75℃に保ちながら反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
このウレタンプレポリマーにジメチル硫酸を46.4質量部添加し、50~60℃で30~60分間反応させて、NCO含有率が2.2%であり、不揮発分約50質量%であるカチオン性ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液A-3を得た。
本発明の水性インクジェットインクは、基材との密着性や保存安定性に優れ、かつ、ブロンジングを抑制することができる水性インクジェットインク、水性インクジェットインクの製造方法、印刷物及びインクジェット記録方法を提供することができる。
F 基材
P 前処理層
R 印刷層
1 送り出しローラー
2 ロールコーター
3 ノズル
4 前処理液滴
5 第1乾燥部
6 インクジェットヘッド
7 インク液滴
8 第2乾燥部
9 巻取りローラー
10 インクジェット記録装置

Claims (9)

  1. 水不溶性樹脂微粒子、有機溶媒、色材及び水を含有する水性インクジェットインクであって、
    前記有機溶媒が、グリコール類、又はジオール類から選ばれる有機溶媒を含有し、かつ、
    前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に含有された複合樹脂を含有することを特徴とする水性インクジェットインク。
  2. 前記水不溶性樹脂微粒子が、ポリオレフィン系樹脂がポリウレタン系樹脂に乳化されてなる複合樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の水性インクジェットインク。
  3. 前記水不溶性樹脂微粒子の含有量が、2~10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水性インクジェットインク。
  4. 前記複合樹脂のポリウレタン系樹脂(U)とポリオレフィン系樹脂(O)の質量比率(U/O)の値が、40/60~95/5の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインク。
  5. 前記有機溶媒の含有量が、10~50質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインク
  6. 前記有機溶媒が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオールのいずれかを含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインク。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインクを製造する水性インクジェットインクの製造方法であって、
    ポリオレフィン系樹脂とポリウレタン系樹脂とを乳化分散して複合樹脂粒子を形成する工程と、当該複合樹脂粒子、有機溶媒、色材及び水を混合する工程と、を備えることを特徴とする水性インクジェットインクの製造方法。
  8. 非吸収性のフィルム基材上に、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインクを用いて形成された印刷層を有することを特徴とする印刷物。
  9. 請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の水性インクジェットインクを用いて、非吸収性のフィルム基材に画像の記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
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