JP7078499B2 - 半導体素子、電子機器、イメージセンサ、計測装置、半導体素子の製造方法 - Google Patents
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Description
これらの計測器には、半導体素子を含む回路が備わっている。回路を構成する素子の中では、一般的に半導体素子が放射線に弱いとされており(例えば、特許文献1を参照。)、放射線が照射されると、半導体素子の酸化膜中で電子とホール(正孔)が生成される。
酸化膜中の電子は、ホールよりは移動度が大きいため、酸化膜中から抜け出すが、移動度が小さいホールは、正の電荷として酸化膜中に蓄積する。
また、その他の対策案として、アンプ(増幅器)のオフセット電圧のドリフトをゼロ点補正する方法(例えば、特許文献2を参照。)がある。
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術は、放射線照射による劣化自体を抑制するものではないため、放射線が照射されると、半導体素子及びそれを組み込んだ電子回路において、ドリフトは発生してしまう。
さらに、本発明の上記の目的及びその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
これにより、放射線が照射されても正確な値を出力でき、線量率が高い放射線環境で正常に動作できる、半導体素子、電子機器、イメージセンサ、計測装置を実現することができる。
第1の実施形態として、半導体素子を有する電子回路の概略構成図(ブロック図)を、図1に示す。
図1では、増幅機能を有する半導体素子の例として、放射線照射を実施したオペアンプ11と、放射線照射を実施したトランジスタ(バイポーラトランジスタ)12を示している。電子回路20は、さらに、図示しないが、増幅機能を有する他の半導体素子や、増幅機能を有しない半導体素子(ダイオード等)を、有していてもよい。
このように、半導体素子に事前に放射線照射が実施されていることにより、半導体素子を構成する酸化膜が、この酸化膜の内部に注入された正孔(ホール)を有する状態になっている。
また、事前に半導体素子に照射する放射線の積算線量は、5~10kGyが望ましい。
そして、酸化膜から成るゲート絶縁膜2は、その内部に注入された正孔(ホール)4を有する。
そして、酸化膜から成る絶縁膜5は、その内部に注入された正孔(ホール)4を有する。
なお、電極層7は、図示しない断面において、配線、もしくは絶縁層8に設けた開口内に形成された導体層と接続されており、配線と直接、もしくは配線から導体層を介して、電極と電気的に接続されている。
そして、酸化膜から成る絶縁層8は、その内部に注入された正孔(ホール)4を有する。
シリコンよりもバンドギャップの大きい半導体としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等が挙げられる。これは、シリコンは耐放射線性能が低く、かつ放射線照射の有無によってオフセット電圧の変動が大きいためである。
例えば、SiCのようなSiよりバンドギャップの大きい半導体によって構成された、半導体素子の場合には、5~10kGy程度の放射線照射であれば故障することはなく、放射線照射によって、オフセット電圧を安定した状態にすることができる。
ここで、半導体層1内の詳細な構成については、使用する半導体の種類(SiC,GaN等)毎に、それぞれ適切とされた構成が従来から提案されている。そして、半導体層1内の詳細な構成については、使用する半導体の種類によって構成(n型半導体領域やp型半導体領域の配置等)が異なるため、説明を省略する。
例えば、半導体層のpn接合付近の絶縁膜や絶縁層に、正孔が注入されている構成、等が考えられる。
特定の範囲に正孔を注入するには、放射線を照射する際に、放射線を遮蔽するマスク等を用いて、範囲外に放射線が照射されないようにすればよい。
(1)半導体素子の形成過程
半導体素子の形成過程のうち、少なくとも酸化膜の形成過程よりも後に、放射線を照射する。なお、詳細を後述するように、半導体素子に駆動電圧を印加する場合には、半導体素子と共に半導体素子を駆動するための構成(配線や駆動回路等)も形成する。
この時期に放射線を照射する場合には、照射の対象となる半導体素子と配線や駆動回路のみを先に形成して放射線を照射し、照射の対象となる半導体素子以外の他の半導体素子や、封止材等は、まだ形成しない。この場合、照射の対象とならない他の半導体素子には、放射線が照射されないので、放射線によるダメージは生じない。
ただし、この時期に照射した場合には、対象の半導体素子のみに放射線を照射するので、放射線照射にかかるコストは高くなる。
(2)各半導体素子を形成した後
回路基板にそれぞれの半導体素子(対象以外の他の半導体素子も含む)を形成して、半導体素子上に保護膜や封止材を形成する前もしくは後に、放射線を照射する。そして、放射線を照射した後で、チップ等の状態として、半導体装置を完成させる。
(3)半導体装置の完成後
半導体装置が完成した後に、放射線を照射する。例えば、半導体装置が完成したチップの状態になった後に、チップごと放射線照射装置に入れて、放射線を照射する。
この時期に放射線を照射する場合、例えば、複数個の半導体装置(チップ)に対して同時に放射線を照射することによって、放射線照射にかかるコストを低減することが可能になる。
半導体素子に放射線が照射されると、酸化膜中に電子とホールが生成されて、移動度の低いホールは、酸化膜中に正の電荷として蓄積する。増幅機能を有する半導体素子の場合も同様の現象が発生し、酸化膜中での電荷の蓄積によって、しきい値電圧の値が変動し、オフセット電圧のドリフトなどが起こる。
そこで、半導体素子をバンドギャップの大きい半導体素子(例えばSiC)で構成することで、放射線照射によるしきい値電圧の変動をシリコン(Si)よりも大幅に低減させることができる。
図9に示すように、照射直後から積算5~10kGyまでは、許容値以下であるが、ドリフトが確認される。そして、積算5~10kGyを超えると、ドリフトが収束して、オフセット電圧がほぼ一定の値となる。
図10では、具体例として、バンドギャップの小さいSiと、バンドギャップの大きいSiCで、それぞれ構成されたオペアンプにおいて、放射線照射前後でのオフセット電圧の推移を示している。そして、図10の中央部までは放射線照射をON状態として、その後は放射線照射をOFF状態としている。
一方、バンドギャップの小さいSiオペアンプは、放射線照射開始直後から許容値を超えて大きくオフセット電圧がドリフトし、放射線照射後も大きく値が変化している。
このことから、バンドギャップの小さいSiのような放射線照射の影響が大きい素子よりも、SiCのように放射線照射の影響が少なく、かつ放射線照射を停止した後でもオフセット電圧の値の変動が少ない半導体素子が適していることが分かる。
また、半導体素子が、シリコン(Si)よりもバンドギャップの大きい半導体で構成されているので、放射線照射による、半導体素子のオフセット電圧のドリフトが少なく、ある程度照射した後にほぼ一定の電圧に収束する。また、放射線照射後のオフセット電圧の値の変化も少ない。
これにより、半導体素子を有する電子回路20は、放射線が照射されても正確な値を出力することができるので、線量率が高い放射線環境でも正常に動作する。
従って、線量率が高い放射線環境でも正常に動作する、電子回路20及び電子回路20を備えた電子機器等を実現することができる。
また、半導体素子を有する電子回路20や電子回路20を備えた電子機器の交換頻度を削減することができ、運転コストの低減が可能になる。
次に、第2の実施形態として、半導体素子の製造方法の一形態を説明する。
この第2の実施形態で製造する半導体素子は、前述した第1の実施形態の半導体素子のように、シリコンよりもバンドギャップが大きい半導体から成り、増幅機能を有する半導体素子である。
図5に示すフローチャートでは、以下に説明するようにして、半導体素子へ放射線照射を行う。
半導体素子への放射線照射の時期は、前述した(1)~(3)のいずれかとする。
例えば、電圧を計測するための計器等を、半導体素子に直接取り付け、もしくは半導体素子を含む電子回路に取り付ける。そして、公知の方法によって、オフセット電圧のドリフト(ドリフトの量)を確認することができる。
ドリフトが飽和している場合には、ステップS15に進む。
ドリフトが飽和していない場合には、ステップS14において、放射線の照射を継続し、ステップS12に戻る。
なお、照射の対象とする半導体素子もしくは半導体装置全体の使用期間が短い場合や、ドリフトの変動の許容値が大きい場合には、5mV/年より大きい値を定義してもよい。
これにより、半導体素子の使用時の放射線照射によるオフセット電圧のドリフトを防ぐことができるので、放射線が照射されても正確な値を出力することができ、線量率が高い放射線環境でも正常に動作する、半導体素子を製造することができる。
次に、本発明の第3の実施形態として、半導体素子の製造方法の他の形態を説明する。
この第3の実施形態で製造する半導体素子も、前述した第1の実施形態の半導体素子のように、シリコンよりもバンドギャップが大きい半導体から成り、増幅機能を有する半導体素子である。
図6に示すフローチャートでは、以下に説明するようにして、半導体素子へ放射線照射を行う。
その後、ステップS22において、半導体素子への放射線照射を開始する。
次に、ステップS23において、放射線を照射しながら、半導体素子のオフセット電圧のドリフトを確認する。
ドリフトが飽和している場合には、ステップS26に進む。
ドリフトが飽和していない場合には、ステップS25において、放射線の照射を継続し、ステップS23に戻る。
さらに、ステップS27において、半導体素子の電源をオフにし、製造終了とする。
そのため、本実施形態のように、半導体素子に電源を印加した状態で、放射線を照射することが望ましい。
さらに、本実施形態によれば、電源を印加した状態で放射線を照射することによって、オフセット電圧のドリフトを早期に収束させることが可能になるため、製造コストの低減が可能となる。
第2の実施形態及び第3の実施形態(図5及び図6に示した各フローチャート)では、いずれも、放射線の照射を開始してから、オフセット電圧のドリフトの確認を行っていた。
これに対して、ドリフトの確認を行わなくてもドリフトの量を予測できる場合には、ドリフトを確認するステップ(図5のS12や図6のS23)を省略することも可能である。
例えば、寸法と構造が同一である、複数個の半導体素子に対して、順次放射線を照射する場合には、そのうちの1つ又は一部の半導体素子においてドリフトの確認を行えばよい。当該複数の半導体素子の他の半導体素子については、ドリフトの確認を行った半導体素子と同じ条件(照射強度及び時間)で放射線を照射すれば、ドリフトの量が同じになると予測されるからである。
次に、第4の実施形態として、半導体素子を適用したイメージセンサの概略構成図(ブロック図)を、図7に示す。
図7に示すように、イメージセンサ30は、光を検出する光電変換素子21と、光電変換素子21からの信号を増幅する増幅回路(MOSFET等)22を有して構成される。
即ち、例えば、図1に示した第1の実施形態の電子回路10のように、事前の放射線照射により酸化膜内に正孔が注入された、増幅機能を有する半導体素子(図1の素子11,12等)を含む電子回路によって、増幅回路22を構成する。
なお、増幅回路22には、増幅機能を有していないその他の半導体素子を含んでいてもよい。
そのため、イメージセンサのMOSFETをシリコンよりも高いバンドギャップの半導体で構成し、オフセット電圧のドリフトが収束するまで、事前に放射線を照射することで、使用中の放射線照射による故障を抑制することが可能である。これにより、安全かつ信頼性の高いプラントの運転を提供することができる。
これらのうち、計測装置の例を、次に示す。
次に、第5の実施形態として、半導体素子を適用した計測装置の概略構成図(ブロック図)を、図8に示す。
図8に示すように、計測装置40は、計測を行うセンサ部31と、センサ部31からの信号を増幅する増幅回路(MOSFET等)32を有して構成される。
増幅回路32は、事前の放射線照射により酸化膜内に正孔が注入された、半導体素子を有して構成される。
即ち、例えば、図1に示した第1の実施形態の電子回路10のように、事前の放射線照射により酸化膜内に正孔が注入された、増幅機能を有する半導体素子(図1の素子11,12等)を含む電子回路によって、増幅回路32を構成する。
なお、増幅回路32には、増幅機能を有していないその他の半導体素子を含んでいてもよい。
Claims (9)
- シリコンよりもバンドギャップが大きい半導体から成り、
増幅機能を有する半導体素子であって、
前記半導体素子を構成する酸化膜が、前記酸化膜内に注入されている正孔を有し、
前記半導体素子のオフセット電圧のドリフトが飽和している状態である
半導体素子。 - 前記シリコンよりもバンドギャップの大きい半導体が、SiCである請求項1に記載の半導体素子。
- ゲート電極及びゲート絶縁膜を有するトランジスタを備え、前記トランジスタを使用することによって前記増幅機能が実現される構成であり、前記トランジスタの前記ゲート絶縁膜内に正孔が注入されている請求項1に記載の半導体素子。
- 請求項1に記載の半導体素子を用いて構成された電子回路を有する
電子機器。 - 光を検出する光電変換素子と、前記光電変換素子からの信号を増幅する増幅回路とを備え、
前記増幅回路が、請求項1に記載の半導体素子を用いて構成されている
イメージセンサ。 - 計測を行うセンサ部と、前記センサ部からの信号を増幅する増幅回路とを備え、
前記増幅回路が、請求項1に記載の半導体素子を用いて構成されている
計測装置。 - シリコンよりもバンドギャップが大きい半導体から成り、増幅機能を有する半導体素子へ、放射線の照射を開始するステップと、
その後、前記半導体素子のオフセット電圧のドリフトの飽和を判定するステップと、
前記ドリフトが飽和していない場合に、前記半導体素子への前記放射線の照射を継続するステップと、
前記放射線の照射を終了するステップと、を有する
半導体素子の製造方法。 - 前記放射線の照射を開始するステップと、前記ドリフトの飽和を判定するステップとの間に、さらに、前記半導体素子のオフセット電圧のドリフトを確認するステップを有する、請求項7に記載の半導体素子の製造方法。
- 前記放射線の照射を開始するステップの前に、さらに、前記半導体素子へ電源電圧を印加するステップを有し、
前記放射線の照射を終了するステップの後に、さらに、前記電源電圧をオフ状態にするステップ、を有する、請求項8に記載の半導体素子の製造方法。
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