JP7067491B2 - 複合正極活物質 - Google Patents
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Description
本開示の複合正極活物は、正極活物質と、前記正極活物質の表面に形成され、LixTi5O12-y(x>4、y<12)で示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含む被覆層と、を有する、ことを特徴とする。
複合正極活物質50は、正極活物質11と、正極活物質11の表面に形成された被覆層12とを有する(図1(b)参照)。被覆層12は、LixTi5O12-y(x>4、y<12)で示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含むものである。
被覆層の形成に一般に用いられている、リチウムイオン伝導性酸化物(例えば、LiNbO3(引用文献4の比較例2))は、電子伝導性が高くないことから、当該被覆層を備えた複合正極活物質を用いると、正極活物質-固体電解質界面における電子伝導性が低くなるという問題がある。
これに対して、本開示の複合正極活物質は、被覆層の形成に一般に用いられているリチウムイオン伝導性酸化物よりも高い電子伝導性を有する、スピネル型のチタン酸リチウムを含む被覆層を備えるため、高い電子伝導性を発揮できる。このため、当該複合正極活物質を用いた全固体電池において、内部抵抗を低減することができる。
正極活物質11-被覆層22間に反応相23が生成すると、当該複合正極活物質を用いた全固体電池では、正極活物質-固体電解質の間における界面抵抗が増加し、内部抵抗が高くなるため、出力特性が低下する。
従って、リチウムイオン伝導性酸化物として、例えばLi4Ti5O12で示される組成を有するチタン酸リチウムを含む被覆層22を形成する場合には、正極活物質11-被覆層22の界面における反応相の生成を抑制するために、熱処理温度を例えば400℃以下の低温で行う必要がある。このため、被覆層22の結晶性を十分に高められず、当該被覆層22のイオン伝導性が乏しくなるという問題がある。
従って、本開示の複合正極活物質を全固体電池に用いた場合、内部抵抗(電池抵抗)を小さくすることができ、当該全固体電池の出力特性の向上を図ることができる。
酸化物系正極活物質としては、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等の岩塩層状型活物質、LiMn2O4、LiNi1/2Mn3/2O4等のスピネル型活物質、LiFePO4、LiMnPO4等のオリビン型活物質、LiNi0.82Co0.15Al0.03O2等を挙げることができる。
正極活物質が粒子の形状の場合の当該粒子の平均粒径(D50)は、例えば0.1μm~50μmであることが好ましい。正極活物質の平均粒径が小さすぎると、取り扱い性が悪くなるおそれがあり、正極活物質の平均粒径が大きすぎると、当該複合正極活物質を含む正極活物質層を平坦に形成するのが困難になるおそれがあるからである。
本開示において、粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に粒子を並べた場合に、粒子の累積体積が全体の半分(50%)となる径である。
本開示において、被覆層は、LixTi5O12-y(x>4、y<12)で示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含む。
xの範囲がx>4であることにより、当該チタン酸リチウムを、Li過剰でありかつ酸素欠損である組成とすることができる。このため、当該組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含有する被覆層を備えることで、正極活物質に含まれるLiの被覆層側への拡散や、これに伴う、正極活物質-被覆層間における反応相の生成を抑制することができる。このため、当該複合正極活物質を全固体電池に用いる場合、正極活物質-固体電解質間における界面抵抗の増加を抑制することができる。
また、x>4であることにより、複合正極活物質を作製する際に、正極活物質-被覆層間における反応相の生成を抑制した状態を維持しながら、高温で熱処理できるため、被覆層を結晶性の高いものとすることができる。このため、本開示の複合正極活物質は、高いイオン伝導性を発揮することができる。
xがx≦4であると、複合正極活物質を作製するときに、例えば500℃以上の高温で熱処理すると、正極活物質-被覆層の界面に生成した反応相により、界面抵抗が増加する虞がある。また、xがx≦4である場合、複合正極活物質を作製するときに、正極活物質-被覆層間における反応相の生成を抑制するためには、例えば400℃以下の低温で熱処理する必要があるため、被覆層の結晶性が十分に高められず、イオン伝導性に劣るものとなる可能性がある。
一方、xの値が大き過ぎると、チタン酸リチウムが、例えばLi2TiO3等の、LixTi5O12-yとは異なる組成を有するものとなる虞がある。この場合、当該複合正極活物質において、所望のイオン伝導性を得られない虞がある。
xは、好ましくは4<x≦4.2であり、より好ましくは4<x≦4.1である。
yは、例えば0.08としてもよい。
なお、被覆層における酸素濃度は、例えば不活性ガス溶解―赤外線吸収法によって測定できる。
被覆層が結晶質であることは、例えば、XRD測定により確認することができる。
本開示の複合正極活物質を全固体電池に用いることで、正極活物質と固体電解質との界面抵抗の増加を抑制することができ、また、優れた電子伝導性及びイオン伝導性を付与することができるため、全固体電池の内部抵抗を小さくすることができ、出力特性の向上を図ることができる。
特に、本開示の複合正極活物質は、被覆層の電子伝導性及びイオン伝導性が高いため、当該複合正極活物質を全固体電池に用いることで、高出力条件下で充放電したときでも、放電容量の低下を抑制でき、優れた出力特性を得ることができる。
本開示の複合正極活物質の製造方法は、特に限定されないが、例えば、LixTi5O12-yで示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムの原料となる化合物と溶媒とを混合して、前駆体溶液を調製する工程(前駆体溶液調製工程)と、正極活物質の表面に前記前駆体溶液を塗布して前駆体層を形成する工程(前駆体層形成工程)と、前記前駆体層を備えた正極活物質を熱処理して、LixTi5O12-yで示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含む被覆層を形成する工程(被覆層形成工程)とを有する。
本工程において用いられる前駆体溶液は、溶媒に、LixTi5O12-yで示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムの原料となる化合物を混合して調製されるものである。
Li供給化合物としては、例えば、リチウムエトキシド、リチウムメトキシド等のLiアルコキシド、酢酸リチウム、水酸化リチウム等を挙げることができる。
また、Ti供給化合物としては、例えば、Tiアルコキシド、酢酸チタン、水酸化チタン等を挙げることができる。Tiを含有するアルコキシドとしては、チタンイソプロポキシド等を挙げることができる。
正極活物質の表面に前記前駆体溶液を塗布する方法としては、目的とする被覆層に応じて適宜選択されるものであり、公知の方法を用いることができる。本開示においては、正極活物質を転動流動状態にし、転動流動状態の正極活物質の表面に前駆体溶液を噴霧及び乾燥する転動流動層方式が好ましい。正極活物質の表面に均一な塗布膜を形成することができるからである。なお、転動流動層方式では、前駆体溶液の塗布及び乾燥が同時に行われ、また塗布及び乾燥が繰り返されることにより、均一な塗布膜が形成できる。また、本開示においては、上述した転動流動層方式以外に、ディップコート法、スピンコート法等の塗布法を用いることができる。
本工程においては、前述した前駆体層形成工程において形成された、前記前駆体層を備えた正極活物質を熱処理することにより、正極活物質の表面に、LixTi5O12-y(x>4、y<12)で示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含む被覆層を形成することができる。
熱処理温度としては、例えば、300℃~600℃の範囲内であることが好ましく、350℃~580℃の範囲内であることがより好ましく、400℃~550℃の範囲内であることが特に好ましい。
熱処理温度を高くするほど、被覆層の結晶性が高められるため、被覆層のイオン伝導性を高くすることが可能となるが、熱処理温度が高すぎると、正極活物質と被覆層との界面に反応相が形成され、正極活物質-固体電解質の界面における界面抵抗が高くなる可能性がある。
一方、熱処理温度が低すぎると、被覆層の結晶性が十分に高められないため、被覆層のイオン伝導性が低いものとなる。
本開示の複合正極活物質は、通常、全固体電池に用いられる。そのため、本開示においては、図3に示すように、正極活物質を含有する正極活物質層4と、正極活物質層4の一方の面に配置された正極集電体2と、負極活物質を含有する負極活物質層3と、負極活物質層3の一方の面に配置された負極集電体5と、前記正極活物質層4及び前記負極活物質層3との間に形成された固体電解質層1とを有する全固体電池であって、正極活物質が前述した複合正極活物質であることを特徴とする全固体電池100を提供することもできる。特に、全固体電池はリチウム全固体電池であることが好ましい。
硫化物固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)、10LiI-15LiBr-75(0.75Li2S-0.25P2S5)等を挙げることができる。なお、上記「Li2S-P2S5」の記載は、Li2S及びP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。硫化物固体電解質は、LiX(Xは、F、Cl、Br又はI)をさらに含有していてもよい。また、固体電解質は、非晶質であっても良く、結晶質であっても良く、ガラスセラミックスであってもよい。
正極活物質粒子としてLiNi0.82Co0.15Al0.03O2(トヨタ自動車株式会社製)の粒子を準備した。
まず、エタノール中で、リチウムエトキシド及びチタンイソプロポキシドを、モル比(Li/Ti)でそれぞれ0.79(前駆体溶液C)、0.80(前駆体溶液A)、0.82(前駆体溶液B)となる割合で混合して、前駆体溶液A、前駆体溶液B、前駆体溶液Cを得た。
前駆体溶液A、前駆体溶液B、前駆体溶液Cに含まれる、各チタン酸リチウムの組成式(LixTi5O12-y)における、xの値(Li量)及び(12-y)の値(酸素量)の値を、表1に示す。
[前駆体層形成工程]
[前駆体溶液調製工程]で得られた前駆体溶液Bを、転動流動層を用いたコート装置にて、正極活物質粒子上に、厚さが12nmになるように塗布し、温風で乾燥させた。これにより、正極活物質粒子の表面に前駆体層を有する粉末を得た。
[被覆層形成工程]
次に、[前駆体層形成工程]で得られた粉末を、大気中、400℃の条件で30分間熱処理し、正極活物質粒子の表面を、スピネル型チタン酸リチウムを含む被覆層で被覆した複合正極活物質を得た。
得られた実施例1の複合活物質粒子と硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75Li2S-0.25P2S5)、トヨタ自動車株式会社製)とを、質量比で複合活物質粒子:硫化物系固体電解質=75:25となるように秤量し、これを、正極用スラリー作製用の容器へと投入した。
さらに、複合正極活物質100質量部に対して1.5質量部となる量の、バインダー成分であるPVDF-HFP(Soref(登録商標);21510、Solvay社製)及び、複合正極活物質100質量部に対して3.0質量部となる量の導電助剤(気相成長炭素繊維、昭和電工株式会社製)を秤量し、これらを、正極用スラリー作製用の容器へと投入した。
さらに、主溶媒(メチルイソブチルケトン(脱水グレード)、ナカライテスク株式会社製)、及び、モレキュラーシーブにて脱水処理した副溶媒(n-デカン、東京化成工業株式会社製)を、体積比で主溶媒:副溶媒=90:10となるように混合し、正極用スラリー作製用の容器へと投入することにより、正極用混合物を作製した。
次いで、作製した正極用混合物を超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製。以下において同じ。)で1分間に亘って分散させることにより正極用スラリーを作製した。得られた正極用スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(昭和電工株式会社製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗工し、30分間自然乾燥させた後、100℃で30分間乾燥させることにより、アルミニウム箔上に正極活物質層を有する正極板(正極構造体)を作製した。
負極活物質(天然黒鉛)と硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75Li2S-0.25P2S5)、トヨタ自動車株式会社製)とを、体積比で負極活物質:硫化物系固体電解質=5:5となるように秤量し、これを、ヘプタンを入れた負極用スラリー作製用の容器へと投入することにより、負極用混合物を作製した。
次いで、作製した負極用混合物を超音波ホモジナイザーで分散させることにより得た負極用スラリーを、負極集電体としての銅箔の上面に塗工し、引き続き、100℃で30分間乾燥させることにより、銅箔上に負極活物質層を有する負極板(負極構造体)を作製した。
Ar雰囲気中のグローブボックス内で、硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75Li2S-0.25P2S5)、トヨタ自動車株式会社製)100質量部に対して、バインダー成分であるPVDF-HFP(Soref(登録商標);21510、Solvay社製)1質量部を加え、さらに主溶媒であるメチルイソブチルケトン(脱水グレード、ナカライテスク株式会社製)を、固形分が35質量%となるように加えたものを、超音波ホモジナイザーで分散させることにより、固体電解質層用スラリーを得た。得られた固体電解質層用スラリーを、アルミニウム箔(昭和電工株式会社製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗工し、乾燥させることにより、アルミニウム箔上に固体電解質層を作製した。
次いで、正極活物質層上に転写された固体電解質層と、[負極板の作製]で得られた負極板の負極活物質層とを対向させて、固体電解質層と負極板とを重ね合わせ、ロールプレス法により、135℃の条件下で荷重4.3ton/cm2でホットプレスした後、ラミネート封止することにより、評価用電池1を得た。なお、評価用電池1は、正極の容量をA、負極の容量Bとした場合、A/Bが1.15となるように作製した。
マコール(登録商標)製のシリンダに、硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75Li2S-0.25P2S5)、トヨタ自動車株式会社製)粉末65.0mgを投入し、1ton/cm2でプレス成形して固体電解質層を形成した後、その上に、[正極板の作製]で作製した正極板を、直径11.28mmの大きさに打ち抜いたものを入れて、1ton/cm2でプレス成形した。次いで、シリンダ内に、正極板とは反対側から、Li-In合金を投入し、4.3ton/cm2でプレス成形して、Li-In合金層-固体電解質層-正極板の積層体を得た。得られた積層体を、3本のボルトによりトルク6N・mで締結した後、密閉容器内に入れることにより、評価用電池2(圧粉方式プレスセル(直径11.28mm))を作製した。
[被覆層形成工程]における熱処理温度を400℃から500℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
[被覆層形成工程]における熱処理温度を400℃から550℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
[前駆体層形成工程]において、正極活物質粒子上に塗布する前駆体溶液Bの厚さを、12nmから25nmに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
[前駆体層形成工程]及び[被覆層形成工程]を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
[前駆体層形成工程]において、正極活物質粒子上に塗布する前駆体溶液を、前駆体溶液Bから前駆体溶液Aに変更し、正極活物質粒子上に塗布する前駆体溶液の厚さを、12nmから11nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
[被覆層形成工程]における熱処理温度を400℃から500℃に変更したこと以外は、比較例2と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
[前駆体層形成工程]において、正極活物質粒子上に塗布する前駆体溶液を、前駆体溶液Bから前駆体溶液Cに変更し、正極活物質粒子上に塗布する前駆体溶液の厚さを、12nmから11nmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、複合正極活物質を得た。
その後、実施例1と同様に、評価用電池1、評価用電池2を作製した。
作製した実施例1~4及び比較例1~4の評価用電池2に対して、3.0V-4.3Vの電圧範囲で、0.1C相当電流で定電流充電した後、0.1C相当電流で、定電流放電した。次いで、3.0V-4.3Vの電圧範囲で、0.1C相当電流で定電流充電した後、1.5C相当電流で、定電流放電した。得られた1.5C相当電流での放電容量(mAh)を0.1C相当電流での放電容量(mAh)で除して、1.5C/0.1C容量維持率を算出した。
0.1C相当電流での放電容量、1.5C相当電流での放電容量及び1.5C/0.1C容量維持率を、表2に示す。
また、「1.5C相当電流での放電容量が高い」ことは、正極活物質の表面に形成された被覆層が、正極活物質と固体電解質との反応を抑制していることに加えて、被覆層の電子伝導性及びイオン伝導性が高いことを意味する。1.5C相当電流での放電容量が高い値を示す場合には、高出力の全固体電池を作製できる。反対に、1.5C相当電流での放電容量が低い値を示す場合には、高出力の全固体電池を作製できない。1.5C/0.1C容量維持率は、75%以上であることが望ましい。
即ち、0.1C相当電流での放電容量が190mAh以上であり、且つ1.5C/0.1C容量維持率が75%以上である複合正極活物質を全固体電池に用いることで、当該全固体電池において、従来よりも格段に高い出力特性を得ることが可能となる。
まず、作製した実施例1~4及び比較例2の評価用電池1について、0.1C相当電流で、2.5V-4.4Vの電圧範囲で、定電流条件下で1回充放電を行った後、0.1C相当電流で、4.4Vまで定電流充電し、次いで、0.1C相当電流で3.6Vまで放電することで電圧調整を行った。電圧調整後の評価用電池1について、振幅10mVで交流インピーダンス測定を行い、1kHzの抵抗値から、0.5MHzの抵抗値を差し引いた値を反応抵抗とした。また、電圧調整後の評価用電池1について、5C相当電流で、5秒間放電した後の電圧降下分を算出し、当該電圧降下分を電流値で除した値を算出した。得られた算出値から、反応抵抗を差し引いた値を拡散抵抗とした。反応抵抗及び拡散抵抗を表3に示す。
なお、表3において検証した実施例1~4及び比較例2は、いずれも、正極活物質と被覆層との間に反応相が生成していない場合の例であり、表3においては、反応抵抗及び拡散抵抗について、それぞれ、比較例2の値を100とした場合の値を示している。
上記表2に示すように、比較例1の複合正極活物質は、被覆層を有しないため、0.1C放電容量は155mAh/gと低く、1.5C/0.1C容量維持率も、50.3%と低かった。これは、正極活物質と固体電解質との界面において反応相が生成したためであると考えられる。
また、比較例2の複合正極活物質は、Li量が過剰でないチタン酸リチウムを用いた前駆体溶液Aを用いて作製しているものの、0.1C放電容量は198mAh/gと高かった。これは、比較例2の熱処理温度が400℃と比較的低温であるため、正極活物質と固体電解質との界面における反応相の生成が抑制されたためであると考えられる。一方、比較例2の1.5C/0.1C容量維持率は、71.7%と、必ずしも高い値ではなかった。これは、比較例2の熱処理温度が400℃と比較的低温であるため、被覆層の電子伝導性やイオン伝導性が十分に高められなかったためであると考えられる。
一方、比較例3の0.1C放電容量は161mAh/gと低く、1.5C/0.1C容量維持率も、63.4%と低かった。これは、比較例3の複合正極活物質は、Li量が過剰でないチタン酸リチウムを用いた前駆体溶液Aを用いて作製しており、また、熱処理温度が500℃と比較的高温であるため、正極活物質と被覆層との界面に、高抵抗の反応相が生成したためであると考えられる。
これに対し、Li量が過剰であるチタン酸リチウムを用いた前駆体溶液Bを用いて作製した、実施例1~4では、0.1C放電容量が196~199mAh/gと高く、1.5C/0.1C容量維持率も、76.1~88.3%と高かった。これは、実施例1~4の複合正極活物質が備える被覆層に含まれるチタン酸リチウムが、Li過剰な組成を有するため、熱処理したときに、正極活物質に含まれるLiが、被覆層(前駆体層B)側に拡散するのが抑制され、正極活物質と被覆層との間に反応相が生成するのが抑制されたためであると考えられる。
特に、実施例2では、0.1C放電容量が197mAh/gと高く、1.5C/0.1C容量維持率も84.3%と高かった。また、実施例3でも、0.1C放電容量が196mAh/gと高く、1.5C/0.1C容量維持率も88.3%と高かった。これは、前駆体層Bを熱処理して作製された実施例2~3の複合正極活物質は、500~550℃という高温で熱処理しても、正極活物質と被覆層との間での反応相の生成が抑制されたため、高い0.1C放電容量を得ることができ、また、高温で熱処理したことで被覆層の電子伝導性及びイオン伝導性が高められたため、高い1.5C放電容量を得ることができたためであると考えられる。
また、実施例4では、前駆体層の厚さを25nmと厚くした場合でも、0.1C放電容量が197mAh/gと高く、1.5C/0.1C容量維持率も、76.1%と高かった。これは、前駆体層Bを熱処理して作製された実施例4の複合正極活物質は、熱処理温度を550℃と高温としても、正極活物質と被覆層との間での反応相の生成が抑制されたため、高い0.1C放電容量を得ることができ、また、高温で熱処理したことで、被覆層の電子伝導性及びイオン伝導性が高められたためであると考えられる。
一方、比較例4では、熱処理を400℃と比較的低温で行っているものの、0.1C放電容量が167mAh/gと低く、1.5C/0.1C容量維持率も59.3%と低かった。これは、前駆体溶液Cに含まれるチタン酸リチウムが、Li3.95Ti5O11.97と、Li量が少ない組成であるため、正極活物質に含まれるLiが、より被覆層側に拡散し易くなった結果、熱処理温度を実施例1と同等の温度で行っても、正極活物質と被覆層との界面に反応相が生成したためであると考えられる。
また、熱処理温度を500~550℃と高くした実施例2~3では、400℃で熱処理を行った比較例2及び実施例1と比較して、拡散抵抗が低くなっていることから、被覆層のイオン伝導性が向上したものと考えられる。
2 正極集電体
3 負極活物質層
4 正極活物質層
5 負極集電体
11 正極活物質
12、22 被覆層
12´、22´ 前駆体層
23 反応相
50、51 複合正極活物質
100 全固体電池
Claims (1)
- 正極活物質と、
前記正極活物質の表面に形成され、LixTi5O12-y(x>4、y<12)で示される組成を有するスピネル型チタン酸リチウムを含む被覆層と、を有する、ことを特徴とする複合正極活物質。
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