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JP7066071B2 - 列車制御システム - Google Patents

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Description

本発明は、1両又は複数両の鉄道車両が連結された列車を制御する列車制御システムに関する。
鉄道の架線には、空気を絶縁体として異なる電力系統からの給電線を絶縁するエアセクションと呼ばれる設備が設けられている。列車は、このエアセクションによって、異なる電力系統から電力の供給を受けて走行を維持することができる。エアセクションには、異なる給電線に接続された2本の架線が存在する。2本の架線は、公称電圧が同じであっても実際には多少の電位差が生じている。このため、不測の事態によって、列車がエアセクション内に停車し、集電装置を上げた状態で走行を再開した場合には、2本の架線間に大電流が流れることがある。不測の事態の例としては、非常ブレーキが作動した場合、路線上に何らかの異常が発生した場合、他の列車に異常が生じた場合などが挙げられる。2本の架線間に大電流が流れた場合、集電装置の損傷、架線の溶断、又は変電所の停止などを生起させるおそれがある。
下記特許文献1には、列車がエアセクション内に停車したときに集電装置の位置を地上設備側で検出する技術が開示されている。地上設備側で検出された集電装置の位置情報を列車に送信するようにすれば、列車が停車した際に停車した列車の集電装置の位置がエアセクション内であるか否かを運転士に通知することは可能である。
特開2007-261401号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術では、列車が停車した際に停車した列車の集電装置の位置がエアセクション内であるか否かは判断できるが、走行中の列車の複数の集電装置のうちの特定の1つがエアセクション内に停止する可能性があることを個別に予測することは困難である。従って、特許文献1の技術を活用する場合には、列車が停車した後の事後の制御とならざるを得ない。そのため、特許文献1の技術では、走行中の列車がエアセクション内に進入する際に起こり得る、集電装置の損傷、架線の溶断、又は変電所の停止といった不具合事象の生起を抑止できないおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、走行中の列車がエアセクション内に進入する際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる列車制御システムを得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、集電装置を介して架線から供給される電力を受電して走行する鉄道車両の1両又は複数両が連結された列車を制御する列車制御システムである。列車制御システムは、列車に推進力を付与する主電動機を制御する推進制御装置と、主電動機以外の機器に電力を供給する補助電源装置と、推進制御装置及び補助電源装置の起動及び停止を制御する列車制御装置と、を備える。列車制御装置は、列車の位置情報に基づいて集電装置の位置を把握し、複数の集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置の動作が第1の条件に該当する場合、当該第1の条件に該当する集電装置に接続された推進制御装置の動作を停止させる制御を行う。
本発明に係る列車制御システムによれば、走行中の列車がエアセクション内に進入する際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができるという効果を奏する。
本実施の形態に係る列車制御システムを含む鉄道システムの構成例を示す図 本実施の形態に係る列車制御システムの動作説明に使用するフローチャート 本実施の形態における列車制御装置の機能を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図 本実施の形態における列車制御装置の機能を実現するハードウェア構成の他の例を示すブロック図
以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る列車制御システムについて詳細に説明する。なお、以下の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、添付図面においては、各部の縮尺比が、各部間で異なる場合がある。
実施の形態.
図1は、本実施の形態に係る列車制御システム50を含む鉄道システム100の構成例を示す図である。図1では、変電所10と、架線1a,1bと、列車80を構成する鉄道車両(以下、単に「車両」と略す)9a,9b,9cと、レール11とが、鉄道システム100の構成要素として示されている。車両9a,9bは動力車であり、車両9cは付随車である。車両9a,9bのそれぞれの上部には、集電装置2a,2bが設けられている。なお、図1では、列車80が3両編成の例を示しているが、これに限定されない。列車80の編成は、2両以下でもよいし、4両以上でもよい。
また、車両9aには、列車80を駆動するための4台の主電動機14a1,14a2,14a3,14a4が設けられている。車両9bにも同様に、4台の主電動機14b1,14b2,14b3,14b4が設けられている。なお、主電動機14a1~14a4,14b1~14b4のそれぞれを個々に区別しない場合、添字を付さずに「主電動機14」と記載する。他の構成部についても、同様の記載とする。
鉄道システム100が直流電化の鉄道システムである場合、地上に設置された変電所10は、図示しない電力系統から受電した電力を使用して、DC600~3000Vの電圧を生成し、異なる給電線12a,12bを使用して、架線1a,1bに電力を供給する。エアセクション13において、架線1a,1bは、それぞれが数十センチ離されて並列される。即ち、エアセクション13は、空気を絶縁体として2本の架線1a,1bを絶縁している。これにより、エアセクション13は、集電装置2a,2bの通常走行には支障がないように構成されている。
エアセクション13において、2本の架線1a,1bの電位は同一であることが好ましい。しかしながら、実際には、架線1a下で走行する列車80による負荷状況と、架線1b下で走行する列車80による負荷状況とが異なることが通常である。このため、2本の架線1a,1b間には、電圧降下にばらつきが生じ、10%程度の電圧差が発生することが通常である。
このようなエアセクション13を集電装置2が通過する場合、2本の架線1a,1bのうち、片側の架線に接触している場合と、両方の架線に接触している場合とがある。集電装置2が片側の架線に接触している場合において、接触していないもう一方の架線の電圧のほうが高い場合、接触していない架線から集電装置2へアークが発生する場合がある。このようなアークは、列車80が数km/h以下の極低速でエアセクション13に進入する場合、列車80がエアセクション13で停止した場合などに起こり得る。アークによって発生するアーク熱は、当該接触部位の温度を上昇させる。また、集電装置2が両方の架線に接触している場合、片側の架線からもう一方の架線に対し、集電装置2を介して、他の列車への供給電流が流れる場合がある。この場合、通常より大きな電流が、架線と集電装置2との接触点に流れることになるので、大きなジュール熱が発生する。
何れの場合でも、集電装置2と架線1とが接触している箇所を中心に高温状態となる。この状態が継続すると、架線1が溶融して切断されるおそれがある。或いは、集電装置2が溶損してしまうおそれがある。或いは、変電所10が停止してしまうおそれがある。
本実施の形態に係る列車制御システム50には、走行中の列車80がエアセクション13内に進入する際に起こり得る、上記のような不具合事象を確実に抑止することができる機能が付与されている。以下、この機能を「架線等保護制御機能」と呼ぶ場合がある。
次に、列車制御システム50の構成及び機能について説明する。列車制御システム50は、列車制御装置4と、推進制御装置7a,7bと、補助電源装置8a,8bと、集電装置上昇禁止論理部6とを備える。集電装置上昇禁止論理部6は、集電装置上昇スイッチ5に対応して設けられる構成部である。
図1の例では、推進制御装置7a及び補助電源装置8aは車両9aに搭載され、推進制御装置7b及び補助電源装置8bは車両9bに搭載されている。推進制御装置7aは、列車80に推進力を付与する主電動機14a1~14a4を制御する制御装置である。推進制御装置7bは、列車80に推進力を付与する主電動機14b1~14b4を制御する制御装置である。補助電源装置8a,8bは、主電動機14a1~14a4,14b1~14b4以外の機器である補機に電力を供給する電源装置である。補機の例は、車内照明装置、ドア開閉装置、空調装置、保安機器、車両ブレーキの空気源を生成するコンプレッサである。
列車制御装置4は、推進制御装置7及び補助電源装置8の起動及び停止を制御する制御装置である。列車制御装置4は、列車80の位置情報である地点情報に基づいて主回路動作指令を生成する。主回路動作指令は、推進制御装置7及び補助電源装置8に出力される。ここで言う主回路は、推進制御装置7及び補助電源装置8のそれぞれに具備されている電力変換に寄与する回路部を意味している。推進制御装置7及び補助電源装置8は、主回路動作指令によって、起動及び停止が制御される。なお、主回路動作指令には、起動及び停止以外の制御指令が含まれていてもよい。
集電装置2は、昇降が可能なように構成されている。集電装置2の昇降は、ばね力又は空気圧により行われる。集電装置動作回路3は、集電装置2の昇降を制御するための回路である。図1において、車両9aには集電装置動作回路3aが設けられ、車両9bには集電装置動作回路3bが設けられている。集電装置動作回路3には、列車制御装置4から集電装置下降指令が入力される。また、集電装置動作回路3には、集電装置上昇禁止論理部6を介して列車制御装置4及び集電装置上昇スイッチ5からの集電装置上昇指令が入力される。なお、図1の例では、車両9bに集電装置上昇スイッチ5及び集電装置上昇禁止論理部6が設けられているが、この構成に限定されない。集電装置上昇スイッチ5及び集電装置上昇禁止論理部6は、車両9aに設けられていてもよい。
車両9を起動又は再起動する際、運転士は、集電装置上昇スイッチ5を操作する。この操作により、集電装置動作回路3a,3bを動作させ、集電装置2a,2bを上昇させることができる。前述したように、集電装置上昇禁止論理部6には、列車制御装置4から集電装置下降指令が入力される構成となっている。集電装置上昇禁止論理部6は、集電装置下降指令が有効な状態においては、集電装置動作回路3に対する集電装置上昇指令をカットする構成となっている。即ち、列車制御装置4から集電装置下降指令が出力されている場合、集電装置上昇スイッチ5が操作されていても、集電装置上昇禁止論理部6からは集電装置上昇指令が出力されない。これにより、集電装置2が下降状態にあるときに誤って運転士が集電装置上昇スイッチ5を操作した場合でも、集電装置2が上昇するのを防止することができる。
列車制御装置4は、地点情報に基づいて、列車80の現在位置及びエアセクション13の位置を認識している。また、列車制御装置4は、列車80の編成も把握している。このため、列車制御装置4は、列車80の現在位置に基づいて、集電装置2a,2bの現在位置も認識可能である。更に、列車制御装置4は、集電装置2a,2bの各位置とエアセクション13の位置との間の位置関係も認識可能である。
また、列車制御装置4は、任意の時間経過後の集電装置2の推定位置を演算する。これにより、当該推定位置とエアセクション13の位置との間の推定位置関係も認識可能である。例えば、列車制御装置4は、エアセクション13の手前でブレーキが掛けられた場合、そのときの列車80の速度及び減速度の情報に基づいて、列車80が停止するまでの距離である停止距離を演算する。そして、エアセクション13は距離方向に幅を有しているので、列車制御装置4は、ブレーキが掛けられたときの集電装置2の位置と、進行方向に向かってエアセクション13の手前の位置との間の位置関係を演算する。また、列車制御装置4は、ブレーキが掛けられたときの集電装置2の位置と、進行方向に向かってエアセクション13の奥の位置との間の位置関係を演算する。列車制御装置4は、これら2つの位置関係と、停止距離とによって、列車80が停車したときに、集電装置2がエアセクション13内で停止するおそれがあるか否かを判断することができる。
次に、本実施の形態に係る列車制御システム50の動作について説明する。図2は、本実施の形態に係る列車制御システム50の動作説明に使用するフローチャートである。図2のフローチャートによって、本実施の形態における架線等保護制御機能が実現される。
図2には、<処理1>、<処理2>、<処理3>及び<処理4>からなる4つの処理が示されている。これらの4つの処理は、列車制御装置4の制御下において、同時並行的に実行される。
<処理1>
列車制御装置4は、集電装置2がエアセクション13とエアセクション13の前後の区間とを含む第1の範囲内を第1の速度以下で進行する見込みであるか否かを判断する(ステップS1)。ここで言う集電装置2は、列車80における複数の集電装置2の個々を意味する。図1の例で言えば、集電装置2a,2bのそれぞれを指している。また、エアセクション13とエアセクション13の前後の区間とを含む第1の範囲とは、列車80の進行方向に向かってエアセクション13の手前の位置を基点として手前側に設定した第1の距離範囲の第1の区間と、進行方向に向かってエアセクション13の奥の位置を基点として奥側に設定した第2の距離範囲の第2の区間とを含む概念である。即ち、エアセクション13を含む第1の範囲は、エアセクション13の前後に、第1の区間と、第2の区間とを加えたものである。
集電装置2がエアセクション13とエアセクション13の前後の区間とを含む第1の範囲内を第1の速度以下で進行する見込みではないと判断された場合(ステップS1,No)、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
また、集電装置2がエアセクション13とエアセクション13の前後の区間とを含む第1の範囲内を第1の速度以下で進行する見込みであると判断される場合(ステップS1,Yes)、列車制御装置4は、当該集電装置2に接続された推進制御装置7及び補助電源装置8に対して停止指令を出力する(ステップS2)。これにより、推進制御装置7は、主電動機14の力行運転又は回生運転を停止する。また、補助電源装置8は、動作を停止する。これにより、集電装置2に流れる電流が低減される。ステップS2の処理を終えると、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
なお、補助電源装置8の動作時に流れる電流は、推進制御装置7の動作時に流れる電流に比べて小さい。従って、架線1及び集電装置2に与える影響は、推進制御装置7に比べて小さい。このため、補助電源装置8の運転は停止せずに継続させるとの判断をしてもよい。但し、夏季などにおいて、補助電源装置8の負荷が大きくなる場合には、補助電源装置8の運転を停止させることが好ましい。即ち、補助電源装置8の負荷の大小に応じて、補助電源装置8を停止させるか、補助電源装置8の運転を継続するかを判断してもよい。
上記の第1及び第2の距離範囲、第1の速度について補足する。第1及び第2の距離範囲は、数メートル又は十数メートル程度の範囲が想定される。実際には、第1及び第2の距離範囲は、集電装置2の位置とエアセクション13の位置との間の位置関係を認識する列車制御装置4の認識精度によって、設定すればよい。また、上記の第1の速度は、時速数キロメートル以下の極低速が想定される。この速度が高いほど、アーク熱及びジュール熱の発生箇所が速く移動することになるので、一か所に熱が集中することを回避することができ、架線1又は集電装置2の損傷を回避することが可能となる。従って、車両9の速度に基づいて、補助電源装置8を停止させるか、補助電源装置8の運転を継続するかを判断してもよい。
<処理2>
列車制御装置4は、集電装置2がエアセクション13内の位置で停止する見込みであるか否かを判断する(ステップS3)。集電装置2がエアセクション13内の位置で停止する見込みではないと判断された場合(ステップS3,No)、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
また、集電装置2がエアセクション13内の位置で停止する見込みであると判断された場合(ステップS3,Yes)、列車制御装置4は、当該集電装置2に接続された推進制御装置7及び補助電源装置8に対して停止指令を出力する(ステップS4)。これにより、推進制御装置7は、主電動機14の力行運転又は回生運転を停止する。また、補助電源装置8は、動作を停止する。これにより、集電装置2に流れる電流が低減される。
更に、列車制御装置4は、当該集電装置2を下降させる集電装置下降指令を出力する(ステップS5)。これにより集電装置2は、下降する。ステップS5の処理を終えると、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
エアセクション13内に集電装置2が停止した場合、アーク熱又はジュール熱の発生箇所が固定されてしまい、これらの熱が一か所に集中する。この場合、架線1又は集電装置2が損傷するおそれがある。一方、集電装置2を下降すれば、熱の集中を回避することができる。従って、集電装置2を下降する制御を行うことで、走行中の列車がエアセクション内に進入した際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる。
集電装置2がエアセクション13内に停止する見込みであるか否かは、前述したように、列車80が停止するまでの距離である停止距離と、集電装置2とエアセクション13との間の位置関係とによって判断することができる。この方法を用いれば、集電装置2を下降する前に推進制御装置7及び補助電源装置8を停止することができる。これにより、集電装置2の下降時には、推進制御装置7及び補助電源装置8に流れる電流をゼロにできる。このため、集電装置2の下降時において、集電装置2が架線1から離れる際に、集電装置2での電流遮断を回避できる。これにより、架線1又は集電装置2の損傷を、確実に抑止することができる。また、集電装置2がエアセクション13内に侵入する前に、集電装置2の下降を済ませることができる。これにより、走行中の列車がエアセクション内に進入した際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる。
<処理3>
列車制御装置4は、集電装置2がエアセクション13内の位置で停止中か否かを判断する(ステップS6)。集電装置2がエアセクション13内の位置で停止中ではないと判断された場合(ステップS6,No)、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
また、集電装置2がエアセクション13内の位置で停止中である場合(ステップS6,Yes)、当該集電装置2に接続された推進制御装置7及び補助電源装置8に対して停止指令を出力する(ステップS7)。これにより、推進制御装置7は、主電動機14の力行運転又は回生運転を停止する。また、補助電源装置8は、動作を停止する。これにより、集電装置2に流れる電流が低減される。
更に、列車制御装置4は、当該集電装置2を下降させる集電装置下降指令を出力する(ステップS8)。既に集電装置下降指令が出力されている場合には、集電装置下降指令の出力が継続される。これにより集電装置2は、下降した状態を維持する。ステップS8の処理を終えると、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
上記のように、集電装置2を下降する制御を行う又は継続することで、アーク熱又はジュール熱による熱の発生を回避することができる。これにより、走行中の列車がエアセクション内に進入した際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる。
<処理4>
列車制御装置4は、エアセクション13に進入した集電装置2がエアセクション13から離脱したか否かを判断する(ステップS9)。エアセクション13に進入した集電装置2がエアセクション13から離脱していないと判断された場合(ステップS9,No)、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
また、集電装置2がエアセクション13内から離脱していると判断された場合(ステップS9,Yes)、更に、列車制御装置4は、当該集電装置2が下降しているか否かを判断する(ステップS10)。当該集電装置2が下降していない場合、即ち当該集電装置2は上昇している場合(ステップS10,No)、ステップS12に移行する。
当該集電装置2が下降している場合(ステップS10,Yes)、列車制御装置4は、当該集電装置2に対して上昇指令を出力する(ステップS11)。これにより当該集電装置2は、上昇する。当該集電装置2が上昇して架線1に接触した場合、列車制御装置4は、当該集電装置2に接続された推進制御装置7及び補助電源装置8に対して停止指令を解除する(ステップS12)。これにより、当該集電装置2に接続された推進制御装置7は、主電動機14に対する力行運転又は回生運転を開始できる状態となる。また、当該集電装置2に接続された補助電源装置8は、補機への電力供給が可能な状態となる。ステップS12の処理を終えると、処理の先頭に戻って図2の処理フローを繰り返す。
以上の処理により、エアセクション13から離脱した集電装置2の車両9は、通常の機能を回復することができる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、列車制御装置は、列車の位置情報に基づいて集電装置の位置を把握し、複数の集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置の動作が第1の条件に該当する場合、当該第1の条件に該当する集電装置に接続された推進制御装置の動作を停止させる制御を行う。第1の条件の第1の例は、複数の集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置がエアセクションとエアセクションの前後の区間とを含む第1の範囲内を第1の速度以下で進行すると見込まれる場合である。これにより、走行中の列車がエアセクション内に進入する際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる。
また、本実施の形態において、上記第1の条件の第2の例は、走行中の列車の停止が予測され、且つ、複数の集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置がエアセクションの位置で停止すると予測される場合である。この第2の例の場合、集電装置に接続された推進制御装置を停止させる制御を行った後、又は集電装置に接続された推進制御装置及び補助電源装置の双方の動作を停止させる制御を行った後に、集電装置を下降させる制御を行うことが好ましい。このような制御を行えば、集電装置がエアセクション内に侵入する前に、集電装置の下降を済ませることができる。これにより、走行中の列車がエアセクション内に進入した際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる。
また、本実施の形態において、上記第1の条件の第3の例は、複数の集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置がエアセクション内の位置で停止している場合である。この第3の例の場合、当該集電装置2を下降させる集電装置下降指令を出力する、もしくはその出力を継続する。このような制御を行えば、集電装置2は下降した状態を維持する。これにより、アーク熱又はジュール熱による熱の発生を回避できるので、走行中の列車がエアセクション内に進入した際に起こり得る不具合事象を確実に抑止することができる。
また、本実施の形態において、集電装置を手動で上昇させる集電装置上昇スイッチが設けられている場合、集電装置上昇スイッチから集電装置に出力される上昇指令信号をオフとする上昇禁止論理部を有していてもよい。集電装置が下降状態にあるときに、誤って運転士が集電装置上昇スイッチを操作してしまうことが想定される。このような場合でも、上昇禁止論理部によって、集電装置が上昇するのを防止することができる。これにより、操作ミスによる不具合事象の生起を未然に抑止することができる。
また、本実施の形態において、エアセクションに進入した集電装置がエアセクションから離脱した場合、列車制御装置は、集電装置を上昇させ、且つ、上昇させた集電装置に接続され、停止させていた推進制御装置、又は停止させていた推進制御装置及び補助電源装置を再起動する。これにより、当該集電装置に接続された推進制御装置は、主電動機に対する力行運転又は回生運転を開始できる状態となる。また、当該集電装置に接続された補助電源装置は、補機への電力供給が可能な状態となる。
次に、本実施の形態における列車制御装置4の機能を実現するためのハードウェア構成について、図3及び図4の図面を参照して説明する。図3は、本実施の形態における列車制御装置4の機能を実現するハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図4は、本実施の形態における列車制御装置4の機能を実現するハードウェア構成の他の例を示すブロック図である。
上述した列車制御装置4における架線等保護制御機能を実現する場合には、図3に示されるように、演算を行うプロセッサ300、プロセッサ300によって読みとられるプログラムが保存されるメモリ302、及び信号の入出力を行うインタフェース304を含む構成とすることができる。
プロセッサ300は、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、CPU(Central Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)といった演算手段であってもよい。また、メモリ302には、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)といった不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)を例示することができる。
メモリ302には、列車制御装置4における架線等保護制御機能を実行するプログラムが格納されている。プロセッサ300は、インタフェース304を介して必要な情報を授受し、メモリ302に格納されたプログラムをプロセッサ300が実行することにより、上述した集電装置動作回路3、集電装置上昇禁止論理部6、推進制御装置7及び補助電源装置8に対する制御を行うことができる。
また、図3に示すプロセッサ300及びメモリ302は、図4のように処理回路303に置き換えてもよい。処理回路303は、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
なお、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
例えば図1では、列車制御装置4を車両9に搭載しているが、この構成に限定されない。列車制御装置4は、情報のやり取りが可能な範囲であれば、必要に応じて、必要な場所に配置することができる。例えば地上側のシステムの構成要素として、地上に配置することも可能である。また、本実施の形態で説明した列車制御装置4の機能を、推進制御装置7又は補助電源装置8の機能の一部として、構成することも可能である。
また、本明細書では、列車を制御する列車制御システムについて説明しているが、列車への適用のみに限定されるものではなく、種々の関連分野への適用が可能であることも言うまでもない。
1,1a,1b 架線、2,2a,2b 集電装置、3,3a,3b 集電装置動作回路、4 列車制御装置、5 集電装置上昇スイッチ、6 集電装置上昇禁止論理部、7,7a,7b 推進制御装置、8,8a,8b 補助電源装置、9,9a,9b,9c 車両、10 変電所、11 レール、12a,12b 給電線、13 エアセクション、14,14a1,14a2,14a3,14a4,14b1,14b2,14b3,14b4 主電動機、50 列車制御システム、80 列車、100 鉄道システム、300 プロセッサ、302 メモリ、303 処理回路、304 インタフェース。

Claims (7)

  1. 集電装置を介して架線から供給される電力を受電して走行する鉄道車両の1両又は複数両が連結された列車を制御する列車制御システムであって、
    前記列車に推進力を付与する主電動機を制御する推進制御装置と、
    前記主電動機以外の機器に電力を供給する補助電源装置と、
    前記推進制御装置及び前記補助電源装置の起動及び停止を制御する列車制御装置と、
    を備え、
    前記列車制御装置は、前記列車の位置情報に基づいて前記集電装置の位置を把握すると共に、複数の前記集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置の動作が第1の条件に該当する場合、当該第1の条件に該当する集電装置に接続された推進制御装置の動作を停止させる制御を行い、
    前記第1の条件は、複数の前記集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置が前記架線のエアセクションと前記エアセクションの前後の区間とを含む第1の範囲内を第1の速度以下で進行すると見込まれる場合である
    ことを特徴とする列車制御システム。
  2. 集電装置を介して架線から供給される電力を受電して走行する鉄道車両の1両又は複数両が連結された列車を制御する列車制御システムであって、
    前記列車に推進力を付与する主電動機を制御する推進制御装置と、
    前記主電動機以外の機器に電力を供給する補助電源装置と、
    前記推進制御装置及び前記補助電源装置の起動及び停止を制御する列車制御装置と、
    を備え、
    前記列車制御装置は、前記列車の位置情報に基づいて前記集電装置の位置を把握すると共に、複数の前記集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置の動作が第1の条件に該当する場合、当該第1の条件に該当する集電装置に接続された推進制御装置の動作を停止させる制御を行い、
    前記第1の条件は、走行中の前記列車の停止が予測され、且つ、複数の前記集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置が前記架線のエアセクションの位置で停止すると予測される場合である
    ことを特徴とする列車制御システム。
  3. 集電装置を介して架線から供給される電力を受電して走行する鉄道車両の1両又は複数両が連結された列車を制御する列車制御システムであって、
    前記列車に推進力を付与する主電動機を制御する推進制御装置と、
    前記主電動機以外の機器に電力を供給する補助電源装置と、
    前記推進制御装置及び前記補助電源装置の起動及び停止を制御する列車制御装置と、
    を備え、
    前記列車制御装置は、前記列車の位置情報に基づいて前記集電装置の位置を把握すると共に、複数の前記集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置の動作が第1の条件に該当する場合、当該第1の条件に該当する集電装置に接続された推進制御装置の動作を停止させる制御を行い、
    前記第1の条件は、複数の前記集電装置のうちの少なくとも1つの集電装置が前記架線のエアセクション内の位置で停止している場合である
    ことを特徴とする列車制御システム。
  4. 前記列車制御装置は、前記第1の条件に該当する集電装置に接続された推進制御装置及び補助電源装置の双方の動作を停止させる制御を行う
    ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の列車制御システム。
  5. 前記列車制御装置は、前記集電装置に接続された前記推進制御装置を停止させる制御を行った後、又は前記集電装置に接続された前記推進制御装置及び前記補助電源装置の双方の動作を停止させる制御を行った後に、前記集電装置を下降させる制御を行う
    ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の列車制御システム。
  6. 前記集電装置を手動で上昇させる集電装置上昇スイッチが設けられている場合、
    前記集電装置を下降させる制御を行う際に前記列車制御装置から出力される下降指令に基づいて、前記集電装置上昇スイッチから前記集電装置に出力される上昇指令信号をオフとする上昇禁止論理部を有していることを特徴とする請求項5に記載の列車制御システム。
  7. 前記エアセクションに進入した前記集電装置が前記エアセクションから離脱した場合、
    前記列車制御装置は、前記集電装置を上昇させ、且つ、上昇させた前記集電装置に接続され、停止させていた前記推進制御装置、又は停止させていた前記推進制御装置及び前記補助電源装置を再起動する制御を行う
    ことを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の列車制御システム。
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