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JP7061263B2 - 冷間工具材料および冷間工具の製造方法 - Google Patents

冷間工具材料および冷間工具の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プレス金型や鍛造金型、転造ダイス、金属刃物といった多種の冷間工具に最適な冷間工具材料と、それを用いた冷間工具の製造方法に関するものである。
冷間工具は、硬質の被加工材と接触しながら使用されるため、その接触に耐え得る硬さを備えている必要がある。そして、従来、冷間工具材料には、例えばJIS鋼種であるSKD10やSKD11系の合金工具鋼が用いられていた。また、更なる硬さ向上の要求に応えて、上記の合金工具鋼の成分組成を改良した合金工具鋼が提案されている(特許文献1)。これらの冷間工具材料に焼入れ焼戻しを行うことで、冷間工具の硬さを向上することができる。
国際公開第2017/158988号パンフレット
最近、被加工材に引張強度が1GPaを超える「超ハイテン」が多用され、それに伴って冷間工具への負荷も増大する傾向にある。このようなときに、上記の焼入れ温度を高くしたり、焼戻し温度を選択したりする等して、冷間工具の硬さを高く調整することができる。そして、冷間工具の硬さを、例えば、その冷間工具材料が達成できる「最高硬さ」まで調整することもあり得る。しかし、そのような場合、冷間工具の靱性が低下して、使用中の工具に欠けや割れが生じやすく、工具寿命が低下する。また、焼入れ温度を高めた場合には、その温度が汎用的な冷間工具材料の焼入れ温度(例えば、SKD10やSKD11の焼入れ温度は1000~1050℃前後である。)よりも高くなると、汎用的な冷間工具材料と同じバッチ式炉で同時に熱処理することができず、生産効率が悪い。
本発明の目的は、硬さが高く、かつ、そのときの靱性にも優れた冷間工具を作製することができる冷間工具材料を提供することである。また、上記の高い硬さを、汎用的な焼入れ温度で達成することが可能な冷間工具材料を提供することである。そして、この冷間工具材料を用いた冷間工具の製造方法を提供することである。
本発明は、質量%で、C:0.65%以上0.80%未満、Si:0.2~0.9%、Mn:0.1~1.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Cr:5.0~7.0%、MoおよびWは単独または複合で(Mo+1/2W):2.5~4.0%、V:0.10~0.30%、N:0.03%を超えて0.08%以下、Ni:0~1.0%、Nb:0~1.5%、残部がFeおよび不純物である成分組成を有し、
断面の組織に占める、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aの面積率が、1.0~3.0面積%であり、
上記の断面の組織の、炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、円相当径が0.1μmを超えて2.0μm以下の炭化物Bの個数密度が、6.0×10個/mm以上9.0×10個/mm未満であり、円相当径が0.1μmを超えて0.4μm以下の炭化物Cの個数密度が、5.0×10個/mm以上7.5×10個/mm未満である冷間工具材料である。
好ましくは、上記した炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、炭化物Bの個数に占める、炭化物Cの個数の割合が、75.0%以上である冷間工具材料である。
そして、本発明は、上記した本発明の冷間工具材料に、焼入れ温度が1000~1050℃の焼入れと、焼戻し温度が150~600℃の焼戻しを行って、硬さを58HRC以上に調整する冷間工具の製造方法である。
本発明によれば、硬さが高く、かつ、そのときの靱性にも優れた冷間工具を提供することができる。また、上記の高い硬さを、汎用的な焼入れ温度で達成することができる。
本発明例の冷間工具材料の断面組織の一例を示す光学顕微鏡写真である。 本発明例の冷間工具材料の断面組織中に分布する未固溶炭化物の一例を示す光学顕微鏡写真である。 比較例の冷間工具材料の断面組織中に分布する未固溶炭化物の一例を示す光学顕微鏡写真である。 本発明例の冷間工具材料の断面組織の一例において、円相当径が5.0μmを超える炭化物を含まない領域をEPMA(電子線マイクロアナライザー)で分析したときのC(炭素)の元素マッピング画像を示す図である。 図4を、炭化物を形成しているC量に基づいて二値化処理した画像を示す図である。 本発明例および比較例の冷間工具材料の断面組織の一例において、円相当径が5.0μmを超える炭化物を含まない領域の炭化物分布を、炭化物の円相当径の範囲毎(横軸)で纏めた炭化物の個数(縦軸)で示したグラフ図である。
本発明者は、焼入れ焼戻し後の硬さに影響を及ぼす、冷間工具材料の組織中の因子を調査した。その結果、冷間工具材料の組織中に存在する炭化物の中で、次の焼入れ時に基地中に固溶する“固溶炭化物”の分布状態が、焼入れ焼戻し時の硬さに大きく影響を及ぼしていることを知見した。そして、上記の固溶炭化物の分布状態を調整することで、焼入れ焼戻しのときの焼入れ温度を過剰に高めなくても、高い焼戻し硬さが得られることを見いだした。
そして、焼入れ焼戻し後の靭性については、冷間工具材料の組織中に存在する炭化物の中で、次の焼入れ時に基地中に固溶しない“未固溶炭化物”の存在が、それに影響を及ぼしていることを知見した。つまり、冷間工具材料に含まれる未固溶炭化物は、焼入れ焼戻し後の冷間工具の組織にも残って、これが冷間工具の表面付近での破壊の起点となる。そして、この破壊の起点となる作用は、特に、冷間工具の硬さが高いときに、敏感に生じやすい。よって、冷間工具の硬さが高いときに、上記の未固溶炭化物の量が多いと、冷間工具に早期の欠けや割れが生じるやすいことを見いだした。
以下に、本発明の各構成要件について説明する。
(1)<本発明の冷間工具材料は、質量%(以下、単に「%」と表記する。)で、C:0.65%以上0.80%未満、Si:0.2~0.9%、Mn:0.1~1.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Cr:5.0~7.0%、MoおよびWは単独または複合で(Mo+1/2W):2.5~4.0%、V:0.10~0.30%、N:0.03%を超えて0.08%以下、Ni:0~1.0%、Nb:0~1.5%、残部がFeおよび不純物である成分組成を有するものである。>
・C:0.65%以上0.80%未満
Cは、一部が基地中に固溶して基地に硬さを付与し、一部は炭化物を形成することで耐摩耗性や耐焼付き性を高める、冷間工具材料の基本元素である。また、侵入型原子として固溶したCは、CrなどのCと親和性の大きい置換型原子と共に含有した場合に、I(侵入型原子)-S(置換型原子)効果(溶質原子の引きずり抵抗として作用し、冷間工具を高強度化する効果)も期待される。但し、過度の含有は、未固溶炭化物の増加による靭性の低下を招く。よって、0.65%以上0.80%未満とする。好ましくは0.7%以上である。より好ましくは0.74%以上である。また、好ましくは0.79%以下である。より好ましくは0.78%以下である。
・Si:0.2~0.9%
Siは、製鋼時の脱酸剤であるが、多過ぎると焼入性が低下する。また、焼入れ焼戻し後の冷間工具の靱性が低下する。また、Siは、冷間工具材料の出発材料となる鋼塊の作製段階において、Mo、Cと結合して、硬質で粗大な炭化物(MC型炭化物)を形成しやすい。よって、0.9%以下とする。好ましくは0.8%以下、より好ましくは0.75%以下である。一方、Siには、工具組織中に固溶して、冷間工具の硬さを高める効果がある。よって、Siは、0.2%以上とする。好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.6%以上である。
・Mn:0.1~1.5%
Mnは、多過ぎると基地の粘さを上げて、材料の被削性を低下させる。よって、1.5%以下とする。好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.7%以下である。更に好ましくは0.5%以下である。
なお、Mnは、オーステナイト形成元素であり、焼入性を高める効果を有する。また、非金属介在物のMnSとして存在することで、被削性の向上に大きな効果がある。よって、Mnは、0.1%以上とする。好ましくは0.2%以上である。
・P:0.05%以下
Pは、通常、添加を行わなくても、各種の冷間工具材料に不可避的に含まれ得る元素である。そして、焼戻しなどの熱処理時に旧オーステナイト粒界に偏析して、粒界を脆化させる元素である。したがって、冷間工具の靭性を向上するためには、添加する場合も含めて、0.05%以下に規制する。好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
・S:0.05%以下
Sは、通常、添加を行わなくても、各種の冷間工具材料に不可避的に含まれ得る元素である。そして、冷間工具材料の作製に用いる素材の熱間加工性を劣化させて、熱間加工中に割れを生じさせる元素である。したがって、熱間加工性を向上するために、0.05%以下に規制する。好ましくは0.03%以下である。より好ましくは0.01%以下である。
なお、Sには、上記のMnと結合して、非金属介在物のMnSとして存在することで、被削性を向上する効果がある。この効果を得るためには、0.03%を超えて含有させてもよい。
・Cr:5.0~7.0%
Crは、焼入性を高める元素である。また、炭化物を形成して、冷間工具の耐摩耗性の向上に効果を有する元素である。そして、焼戻し軟化抵抗の向上にも寄与する、冷間工具材料の基本元素である。但し、過度の含有は、粗大な未固溶炭化物を形成して靱性の低下を招く。よって、Crは、5.0~7.0%とする。好ましくは5.5%以上であり、より好ましくは5.8%以上である。更に好ましくは6.0%以上であり、より更に好ましくは6.2%以上である。また、好ましくは6.9%以下であり、より好ましくは6.8%以下である。
・MoおよびWは単独または複合で(Mo+1/2W):2.5~4.0%
MoおよびWは、焼戻しにより微細炭化物を析出または凝集させて、冷間工具に強度を付与する元素である。MoおよびWは、単独または複合で含有させることができる。そして、この際の含有量は、WがMoの約2倍の原子量であることから、(Mo+1/2W)の式で定義されるMo当量で一緒に規定することができる(当然、いずれか一方のみの含有としても良いし、双方を共に含有することもできる)。そして、上記した効果を得るためには、(Mo+1/2W)の値で2.5%以上の含有量とする。好ましくは3.0%以上である。但し、多過ぎると被削性や靭性の低下を招くので、(Mo+1/2W)の値で4.0%以下とする。好ましくは3.6%以下である。より好ましくは3.5%以下である。
・V:0.10~0.30%
Vは、炭化物を形成して、基地の強化や耐摩耗性、焼戻し軟化抵抗を向上する効果を有する。そして、焼鈍組織中に分布したVの炭化物は、焼入れ加熱時のオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制する“ピン止め粒子”として働き、靭性の向上にも寄与する。これらの効果を得るために、Vは0.10%以上とする。好ましくは0.12%以上、より好ましくは0.15%以上である。
但し、Vは、多過ぎると被削性の低下を招く。そして、粗大な未固溶炭化物を形成して靱性の低下を招くことから、本発明にとって上限の管理が重要な元素である。そして、Vは0.30%以下とする。好ましくは0.28%以下である。より好ましくは0.25%以下である。
・N(窒素):0.03%を超えて0.08%以下
Nは、Cr、VなどのNと親和性の大きい置換型原子と共に添加した場合、微細な炭化物あるいは炭窒化物を析出させて、耐摩耗性や耐焼付き性を高める元素である。但し、過度の添加は、粗大な窒化物あるいは炭窒化物の増加による靭性の低下を招く。よって、Nは、0.03%を超えて0.08%以下とする。好ましくは0.035%以上である。より好ましくは0.04%以上である。また、好ましくは0.07%以下である。より好ましくは0.06%以下である。
本発明の冷間工具材料の成分組成は、上記した元素種を含み、残部をFeおよび不純物とした成分組成とすることができる。そして、上記した元素種の他には、選択的に、下記の元素種の含有も可能である。
・Ni:0~1.0%
Niは、基地の粘さを上げて被削性を低下させる元素である。よって、Niの含有量は1.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.3%未満である。この0.3%未満のNiは、本発明の冷間工具材料の成分組成がNiを不純物として含有する場合の、好ましい規制上限でもある。
一方、Niは、工具組織中のフェライトの生成を抑制する元素である。また、冷間工具材料に優れた焼入性を付与し、焼入れ時の冷却速度が緩やかな場合でもマルテンサイト主体の組織を形成して、靭性の低下を防ぐことのできる効果的元素である。さらに、基地の本質的な靭性も改善するので、Niは0%でも良いが、本発明では必要に応じて含有してもよい。含有する場合、上記した1.0%を上限として、0.1%以上の含有が好ましい。より好ましくは0.3%以上である。また、より好ましくは0.8%以下である。
・Nb:0~1.5%
Nbは、被削性の低下を招くので、1.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.9%以下、さらに好ましくは0.3%未満である。この0.3%未満のNbは、本発明の冷間工具材料の成分組成がNbを不純物として含有する場合の、好ましい規制上限でもある。
一方、Nbは、炭化物を形成し、基地の強化や耐摩耗性を向上する効果を有する。また、焼戻し軟化抵抗を高めるとともに、Vと同様、結晶粒の粗大化を抑制し、靭性の向上に寄与する効果を有する。よって、Nbは、0%でも良いが、必要に応じて含有してもよい。含有する場合、上記した1.5%を上限として、0.1%以上の含有が好ましい。より好ましくは0.3%以上である。また、より好ましくは、1.0%以下である。
Cu、Al、Ti、Ca、Mg、O(酸素)は、不可避的不純物として鋼中に残留する可能性のある元素である。本発明の冷間工具材料の成分組成において、これら元素はできるだけ低い方が好ましい。しかし一方で、これら元素は、介在物の形態制御や、その他の機械的特性、そして製造効率の向上といった付加的な作用効果を得るために、少量を含有してもよい。この場合、Cu≦0.25%、Al≦0.25%、Ti≦0.03%、Ca≦0.01%、Mg≦0.01%、O≦0.01%の範囲であれば十分に許容でき、本発明の好ましい規制上限である。
(2)<本発明の冷間工具材料は、その断面の組織に占める、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aの面積率が、1.0~3.0面積%のものである。>
冷間工具材料は、通常、鋼塊または鋼塊を分塊加工した鋼片でなる素材を出発材料として、これに様々な熱間加工や熱処理を行って所定の鋼材とし、この鋼材に焼鈍処理を施して、板形状やブロック形状に仕上げられる。このとき、上記の鋼塊は、一般的に、所定の成分組成に調整された溶鋼を鋳造して得られる。よって、鋼塊の鋳造組織中には、凝固開始時期の差異等に起因して(デンドライトの成長挙動に起因して)、大きな炭化物が集合した部位と、それに比して小さな炭化物が集合した部位(いわゆる、「負偏析」の部位)とが存在する。
このような鋼塊を熱間加工することで、上記の炭化物の集合は、熱間加工の延伸方向(つまり、材料の長さ方向)に延ばされて、かつ、その垂直方向(つまり、材料の厚さ方向)に圧縮される。そして、この熱間加工後の鋼材を焼鈍処理して得られた冷間工具材料の焼鈍組織において、上記の炭化物の分布様態は、大きな炭化物の集合でなる層と、小さな炭化物の集合でなる層とでなる、略縞状の様態となる(図1を参照)。図1において、濃色の基地中に確認される、専ら筋状に延びた“淡色の分散物”が炭化物である。
そして、上記の焼鈍組織において、大きな炭化物は、専ら“未固溶炭化物”として機能し、焼入れ時の基地中に固溶せず、焼入れ焼戻し後の組織中に残って、冷間工具の耐摩耗性の向上に寄与する。しかし、このような未固溶炭化物は、使用中の冷間工具に生じる引張方向の主応力に対して、その直交方向の長さの欠陥として作用することで、冷間工具の靱性の低下に直接的に影響する。そして、この直接的な影響は、冷間工具の基地の硬さが高いときに、その度合いが大きくなる。そこで、本発明では、焼入れ焼戻し前である冷間工具材料の断面の組織において、便宜上、円相当径が5.0μmを超える炭化物を未固溶炭化物として扱うことで、この大きな炭化物の量を適切に調整して付与すれば、硬さが高い冷間工具であっても、それの耐摩耗性を維持して、かつ、靱性の低下を抑制することができることを見いだした。
すなわち、本発明の冷間工具材料は、その断面の組織に占める、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aの面積率が、1.0~3.0面積%のものである。好ましくは1.3面積%以上であり、より好ましく1.5面積%以上である。さらに好ましく1.8面積%以上である。また、好ましくは2.8面積%以下であり、より好ましく2.6面積%以下である。さらに好ましく2.4面積%以下である。このような炭化物Aの分布形態は、上記の鋼塊を作製するときの鋳造工程等を操作することで、達成することが可能である。そして、このような炭化物Aの分布形態によって、冷間工具の硬さを高く調整したときであっても、その使用初期における欠けや割れの発生を抑制することができる。
(3)<本発明の冷間工具材料は、その断面の組織の、炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、円相当径が0.1μmを超えて2.0μm以下の炭化物Bの個数密度が、6.0×10個/mm以上9.0×10個/mm未満であり、円相当径が0.1μmを超えて0.4μm以下の炭化物Cの個数密度が、5.0×10個/mm以上7.5×10個/mm未満のものである。>
そして、上記の組織に含まれる炭化物には、上記の未固溶炭化物がある一方で、次工程の焼入れで基地中に固溶する“固溶炭化物”がある。そして、この固溶炭化物は、焼入れ焼戻し後の基地中の固溶炭素量を増やして、冷間工具の硬さを向上させる。そこで、本発明では、焼入れ焼戻し前の冷間工具材料の断面の組織において、便宜上、円相当径が5.0μm以下の炭化物を固溶炭化物として扱うことで、この円相当径の炭化物のみで構成される「縦90μm横90μm」の領域に注目した(例えば、図1中に示した実線による囲み部)。つまり、この「縦90μm横90μm」の領域が、上記の「小さな炭化物の集合でなる層」の領域に相当する。そして、この領域の炭化物分布が、本発明の「焼入れ温度を過剰に高めなくても、硬さが高い冷間工具を達成できる」という効果の確認に利用できることを見いだした。
本発明者は、焼入れ焼戻し後の冷間工具の硬さに及ぼす、円相当径が5.0μm以下の炭化物の影響を調べた。その結果、これらの炭化物の中でも、円相当径が更に小さい「2.0μm以下」の炭化物(以下、炭化物Bと表記する)は、より固溶しやすいことを知見した。そして、円相当径が「0.4μm以下」の極めて微細な炭化物(以下、炭化物Cと表記する)は、特に固溶しやすいことを知見した。そして、このような小さな炭化物は、上記の鋼塊を作製するときの鋳造工程等を操作することで、冷間工具材料の組織中に均一に分布させやすいことを見いだした。冷間工具材料の組織において、固溶しやすい炭化物が、しかも均一に分布していれば、焼入れ焼戻し後の冷間工具において、その組織中の固溶炭素量も、偏りなく、全体的に増やすことができる。その結果、焼入れ温度を過剰に上げなくても、高い硬さを達成することができる。
してみると、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aを含まない領域において、この領域に含まれる炭化物Bの個数を増やし、更には、この炭化物Bのうちでも、炭化物Cの個数を増やすことこそが、冷間工具材料の組織中における固溶炭化物の均一な分布に繋がって、かつ、焼入れ焼戻し後の冷間工具の組織中における固溶炭素量の偏りのない全体的な増加に繋がって、本発明の上記した効果の達成に効果的である。そして、本発明の場合、上記の炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、円相当径が0.1μmを超えて2.0μm以下の炭化物Bの個数密度が6.0×10個/mm以上であり、円相当径が0.1μmを超えて0.4μm以下の炭化物Cの個数密度が5.0×10個/mm以上である組織とすることで、本発明の上記した効果を達成することができる。なお、炭化物B、Cの大きさについて、その円相当径の下限値を0.1μmとしたのは、0.1μm以下の炭化物の特定が、計測上、正確性に欠け得るからである。
なお、炭化物Bの個数密度について、好ましくは6.3×10個/mm以上であり、より好ましくは6.5×10個/mm以上である。さらに好ましくは6.7×10個/mm以上である。また、炭化物Cの個数密度について、好ましくは5.3×10個/mm以上であり、より好ましくは5.5×10個/mm以上である。さらに好ましくは5.7×10個/mm以上であり、よりさらに好ましくは5.8×10個/mm以上である。
但し、焼入れ焼戻し前の冷間工具材料の断面の組織において、小さな炭化物(固溶炭化物)は、被削性を損なう点で、多すぎないことが効果的である。よって、本発明では、炭化物Bの個数密度の上限を、9.0×10個/mm未満とする。好ましくは8.5×10個/mm以下である。より好ましくは8.0×10個/mm以下である。また、炭化物Cの個数密度の上限を、7.5×10個/mm未満とする。好ましくは7.0×10個/mm以下である。より好ましくは6.5×10個/mm以下である。
炭化物Cの個数密度が、炭化物Bの個数密度を超えることはない。そして、後述する炭化物Bの個数に占める、炭化物Cの個数の割合が、95.0%以下となる関係が現実的である。
(4)<好ましくは、本発明の冷間工具材料は、上記した炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、炭化物Bの個数に占める、炭化物Cの個数の割合が、75.0%以上のものである。>
前述の(3)において、冷間工具材料の組織の、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aを含まない領域に分布させた微細な炭化物BおよびCは、これら炭化物のうちでも、より円相当径の小さい(つまり、より固溶しやすい)炭化物Cの個数が多いほど本発明の「焼入れ温度を過剰に高めなくても、硬さが高い冷間工具を達成できる」という効果の達成により有利である。そして、本発明の場合、炭化物Bの個数に占める、炭化物Cの個数の割合を、75.0%以上とすることが好ましい。そして、より好ましくは80.0%以上であり、さらに好ましくは85.0%以上である。また、この割合について、上限は特に要しないが、95.0%以下が現実的である。
炭化物Aの円相当径および面積率と、炭化物B、Cの円相当径および個数(個数密度)の測定手法の一例について説明しておく。
まず、冷間工具材料の断面組織を、例えば倍率200倍の光学顕微鏡で観察する。このとき、観察する断面は、冷間工具を構成することとなる冷間工具材料の中心部とすることができる。そして、観察する断面は、熱間加工の延伸方向(つまり、材料の長さ方向)に対して平行な断面であり、一具体的には、この平行な断面のうちで、TD方向(Transverse Direction;延伸直角方向)に垂直な断面(いわゆる、TD断面)である。このとき、冷間工具材料の形状が「円柱状」であるなら、上記のTD断面は、その円柱の軸心に対して平行な断面で定義される。そして、この断面において、例えば断面積が15mm×15mmの切断面をダイヤモンドスラリーとコロイダルシリカを用いて鏡面に研磨した断面とすることができる。図1(実施例で評価した本発明例の「冷間工具材料1」である。)は、本発明の冷間工具材料の一例について、上述の要領で得た断面組織の倍率200倍での光学顕微鏡写真である(視野面積0.58mm)。
・炭化物Aの円相当径および面積率
上記の断面組織を観察したとき、未固溶炭化物と基地との境界が明瞭になるように、10%ナイタールを用いて上記の断面を腐食する。そして、この腐食後の断面を倍率200倍の光学顕微鏡で観察して、上記の視野を20視野撮影する。図2は、腐食後の断面組織の光学顕微鏡写真である(未固溶炭化物は、白色の分布で示されている)。この組織写真を、既知の画像解析ソフト等によって画像処理することで、未固溶炭化物として、この断面組織中に観察される円相当径が5μmを超える炭化物Aを抽出する。そして、この炭化物Aの断面組織中に占める面積率を、20視野分の平均値として求めることができる。
・炭化物B、Cの円相当径および個数(個数密度)
まず、上記の断面組織から、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域を抽出する。このとき、円相当径が5.0μmを超えるような大きな炭化物は、光学顕微鏡の視野から容易に確認することができる(図1、2を参照)。そして、この確認した炭化物の円相当径は、既知の画像解析ソフト等によって求めることができる。
次に、上記にて抽出した縦90μm横90μmの領域(図1中に示した実線による囲み部)を、走査型電子顕微鏡(倍率3000倍)で観察し、この観察した視野をEPMAで分析して、C(炭素)の元素マッピング画像を得る。そして、このCの元素マッピング画像による分析結果に、炭化物を形成しているC量に基づいて、50カウント(cps)以上のCの検出強度を閾(しきい)値とした二値化処理を行い、断面組織の基地中に分布する炭化物を示した二値化画像を得る。
図4は、図1中に示した実線による囲み部の領域内について、上述の要領で得た、Cの元素マッピング画像である(視野面積30μm×30μm)。そして、図5は、図4を二値化処理して得た、上記の領域の炭化物分布を示す図である。図4、5において、Cおよび炭化物は、淡色の分布で示されている。
そして、「円相当径が5.0μmを超える炭化物Aを含まない」図5の炭化物分布から、各円相当径の炭化物B、Cを抽出して、この炭化物B、Cの個数、および、炭化物BとCとの存在割合を求めればよい。炭化物B、Cの円相当径や個数は、既知の画像解析ソフト等によって求めることができる。
本発明の冷間工具材料の場合、上述した縦90μm横90μmの「小さな炭化物の集合でなる層」の領域において、円相当径が2.0μm以下のような小さな炭化物は、略均一の個数密度で分布している(図5を参照)。よって、本発明の効果を確認するにおいて、上述した縦90μm横90μmの領域から採取する元素マッピング画像は、一画像であり、かつ、30μm×30μmの面積があれば十分である(画素数:530×530)。そして、この元素マッピング画像の採取位置は、上述した領域から任意に選択すればよい。そして、このような一連の測定作業を、上述した「縦90μm横90μm」の領域とは別の、少なくとも2つの「縦90μm横90μm」の領域でも行って(計3領域)、以上の3領域のそれぞれから採取された「30μm×30μm」の面積の元素マッピング画像による上記の数値の結果を合計すれば、本発明の「焼入れ温度を過剰に高めなくても、硬さが高い冷間工具を達成できる」という効果を確認するのに十分である。
本発明の冷間工具材料の組織を得るには、出発材料となる鋼塊の作製段階において、その鋳造工程の進行具合を適切に管理することが重要である。例えば、鋳型に注ぐ直前の「溶鋼の温度」の調整が大切である。つまり、小さな炭化物(炭化物B、C)の個数を増やしたい上では、上記の溶鋼の温度を低めに管理することで、鋳型内の各位置における凝固開始時期の差異による溶鋼の局部的な濃化を軽減して、デンドライトの成長に起因する炭化物の粗大化を抑えることができる。しかし、上記の溶鋼の温度を低くしすぎると、大きな炭化物(炭化物A)の量が減少する。そして、本発明においては、上記の溶鋼の温度を、例えば、冷間工具材料の(融点+130℃)の前後の温度範囲で管理することが、本発明の冷間工具材料の組織を得るのに効果的である。
そして、本発明の冷間工具材料の組織を得るには、その材料形状への熱間加工を終えた際の冷却過程を管理することも重要である。つまり、小さな炭化物(炭化物B、C)の個数を増やしたい上では、熱間加工を終えた素材(鋼材)を、その素材の温度が高い状態のままで次の焼鈍処理のための加熱工程に移るのではなくて、マルテンサイト変態が生じる温度(概ね300℃以下。好ましくは200℃以下)にまで“十分に”冷却して、その組織をマルテンサイト化させる作業が有効である。この十分な冷却によって、熱間加工中の組織に固溶した炭化物形成元素が、マルテンサイト変態時に微細な炭化物として析出する。この結果、焼鈍処理後の冷間工具材料の組織中において、上記した小さな炭化物の個数を増やすことができる。
(5)<本発明の冷間工具の製造方法は、上述した本発明の冷間工具材料に、焼入れ温度が1000~1050℃の焼入れと、焼戻し温度が150~600℃の焼戻しを行って、硬さを58HRC以上に調整するものである。>
冷間工具材料は、焼入れおよび焼戻しによって所定の硬さを有したマルテンサイト組織に調製されて、冷間工具の製品に整えられる。そして、冷間工具材料は、切削や穿孔といった各種の機械加工等によって、冷間工具の形状に整えられる。この機械加工のタイミングは、焼入れ焼戻し前の、材料の硬さが低い状態(つまり、焼鈍状態)で行うことが好ましい。さらに、この場合、焼入れ焼戻し後に仕上げの機械加工を行ってもよい。また、場合によっては、焼入れ焼戻しを行った後のプリハードン鋼の状態で、上記した仕上げの機械加工も合わせて、冷間工具の形状に機械加工してもよい。
そして、本発明の冷間工具材料の場合、上述した成分組成と金属組織とを満たすことによって、汎用的な冷間工具材料の焼入れ温度で、58HRC以上の焼入れ焼戻し硬さを得ることができる。そして、具体的には、焼入れ温度が1000~1050℃の焼入れと、焼戻し温度が150~600℃の焼戻しとによって、58HRC以上の硬さを有する冷間工具を提供することができる。上記の焼入れ温度について、好ましくは1015℃以上である。また、好ましくは1035℃以下である。上記の焼戻し温度について、好ましくは180℃以上である。また、好ましくは540℃以下である。そして、上記の硬さについて、60HRC以上、62HRC以上、果ては64HRC以上にも及ぶ硬さを達成することもできる。なお、上限は特に要しないが、66HRC程度が現実的である。
本発明の冷間工具材料の組織は、例えば、焼鈍組織である。焼鈍組織とは、焼鈍処理によって得られる組織のことであり、硬さが、例えば、ブリネル硬さで150~255HBW程度に軟化された組織である。好ましくは240HBW以下である。そして、この焼鈍組織に、Cと、Cr、Mo、W、V等とが結合してなる炭化物が含まれており、これら炭化物に、上記の未固溶炭化物と固溶炭化物とがある。
そして、本発明の冷間工具材料であれば、焼入れの際、従来の焼入れ炉を用いて、SKD10やSKD11といった汎用的な冷間工具材料と同じバッチで混載して熱処理を行なうことができるので、経済的であり、熱処理に要するリードタイムを抑制することもできる。そして、この汎用的な焼入れ温度で、焼入れ焼戻し硬さが高い冷間工具を得ることができ、かつ、その高い硬さでの靱性にも優れるので、冷間工具の使用初期における欠けや割れの発生を抑制することができる。
所定の成分組成に調整した溶鋼(融点:約1440℃、凝固完了温度:約1200℃)を鋳造して、表1の成分組成を有する素材1、2を準備した。このとき、鋳型への注湯前において、素材1、2の溶鋼の温度は1570℃に調整した。なお、素材1、2の鋳型への注湯後において、固相-液相の共存域(約240℃の域)の冷却時間は168分であった。素材1、2において、Cu、Al、Ti、Ca、Mg、Oは無添加であり(但し、Alは溶解工程における脱酸剤として添加した場合を含む。)、Cu≦0.25%、Al≦0.25%、Ti≦0.03%、Ca≦0.01%、Mg≦0.01%、O≦0.01%であった。
Figure 0007061263000001
次に、これらの素材を1160℃に加熱して熱間加工を行い、熱間加工を行った後に放冷して、素材1、2の順に対応した、表2に示す寸法の鋼材1、2を得た(表2において、その長さ方向が、熱間加工の延伸方向である)。なお、熱間加工を行った後の冷却において、素材1は170℃まで十分に冷却した。そして、これらの鋼材に860℃の焼鈍処理を行って、鋼材1、2の順に対応した、冷間工具材料1、2を作製した(硬さ229HBW)。
Figure 0007061263000002
冷間工具材料1、2の中心部の、熱間加工の延伸方向(つまり、材料の長さ方向)に対して平行なTD断面(冷間工具材料2については、その周面から中心軸に向かって直径/4だけ入った位置のTD断面)より、断面積が15mm×15mmの切断面を採取し、この切断面をダイヤモンドスラリーとコロイダルシリカを用いて鏡面に研磨した。
この研磨した断面組織を、10%ナイタールを用いて腐食した。そして、この腐食後の断面を倍率200倍の光学顕微鏡で観察して(視野面積0.58mm)、これを20視野撮影した。このうちの1視野について、図2、3に、冷間工具材料1、2の順で、その一例を示しておく。そして、この組織写真を画像処理することで、断面組織中に観察される円相当径が5μmを超える炭化物Aを抽出して、この炭化物Aの断面組織中に占める面積率を20視野分の平均値として求めた。なお、炭化物Aの円相当径や面積率を求めるための画像処理および解析には、アメリカ国立衛生研究所(NIH)が提供しているオープンソース画像処理ソフトウェアImageJ(http://imageJ.nih.gov/ij/)を用いた。結果を表3に示す。
次に、上記の研磨した断面組織から、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域を、それぞれ3領域抽出した。図1に、冷間工具材料1の、上記の領域の一例を示しておく(実線による囲み部)。そして、上記した個々の領域について、前述の要領に従って、円相当径が0.1μmを超えて2.0μm以下の炭化物Bの個数、円相当径が0.1μmを超えて0.4μm以下の炭化物Cの個数、および、炭化物Bの個数に占める炭化物Cの個数の割合を求めた。なお、炭化物B、Cの円相当径や個数を求めるための画像処理および解析にも、炭化物Aのときと同じ画像処理ソフトウェアを用いた。図4に、冷間工具材料1の、上記した領域内におけるCの元素マッピング画像を示しておく。図4の視野面積は30μm×30μmである。そして、その視野は、上記の縦90μm横90μmの領域を縦横3等分にして、9つの区画に分割したときの、その真ん中の区画のものである。そして、図5に、図4の元素マッピング画像を、50カウント(cps)のCの検出強度の閾値で二値化処理した画像を、示しておく。
そして、個々の領域における上記の30μm×30μmの区画で求めた炭化物A、Bの個数を、抽出した3領域で合計して、冷間工具材料1、2の炭化物A、Bの個数とし、これらの値から炭化物A、Bの個数密度、および、炭化物A、Bの個数割合を求めた。結果を表3に示す。また、図6には、抽出した3領域で合計して求めた上記の冷間工具材料1、2の炭化物の個数(縦軸)を、その炭化物の円相当径の範囲毎(横軸)に纏めてプロットした図を示す。冷間工具材料1、2で抽出した上記の領域には、「円相当径が5.0μmを超える炭化物」は含まれていなかった。
Figure 0007061263000003
断面組織を観察した後の冷間工具材料1、2に、1030℃からの焼入れと、500~560℃の焼戻しを行って、冷間工具材料1、2の順に対応した、マルテンサイト組織を有した冷間工具1、2を得た。そして、冷間工具1、2のそれぞれについて、焼戻し温度毎に、そのTD断面のロックウェル硬さ試験(Cスケール)を実施した。硬さは、各試料につき5点測定し、その平均値を求めた。その結果、全ての試料において、硬さは58HRC以上であった。そして、このうちの最高硬さは、冷間工具1が64.6HRC(焼戻し温度530℃)、冷間工具2が63.9HRC(焼戻し温度530℃)であった。
そして、それぞれの最高硬さを有した冷間工具1、2より、10Rシャルピー衝撃試験片を材料の長さ方向に採取して(つまり、材料の長さと直交する方向に衝撃が加わる)、衝撃試験を実施した。衝撃値は、各試料につき3点測定し、その平均値を求めた。上記の硬さ試験とシャルピー衝撃試験の結果を表4に示す。
本発明例である冷間工具1の最高硬さは、比較例である冷間工具2のそれに比べて、やや高くなっており、64HRCを超えていた。そして、そのときの冷間工具1のシャルピー衝撃値は、最高硬さが冷間工具2のそれよりも高かったにもかかわらず、冷間工具2のシャルピー衝撃値より大きかった。
Figure 0007061263000004

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.65%以上0.80%未満、Si:0.2~0.9%、Mn:0.1~1.5%、P:0.05%以下、S:0.05%以下、Cr:5.0~7.0%、MoおよびWは単独または複合で(Mo+1/2W):2.5~4.0%、V:0.10~0.30%、N:0.03%を超えて0.08%以下、Ni:0~1.0%、Nb:0~1.5%、残部がFeおよび不純物である成分組成を有し、
    断面の組織に占める、円相当径が5.0μmを超える炭化物Aの面積率が、1.0~3.0面積%であり、
    前記断面の組織の、前記炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、円相当径が0.1μmを超えて2.0μm以下の炭化物Bの個数密度が、6.0×10個/mm以上9.0×10個/mm未満であり、円相当径が0.1μmを超えて0.4μm以下の炭化物Cの個数密度が、5.0×10個/mm以上7.5×10個/mm未満であることを特徴とする冷間工具材料。
  2. 前記炭化物Aを含まない縦90μm横90μmの領域において、前記炭化物Bの個数に占める、前記炭化物Cの個数の割合が、75.0%以上であることを特徴とする請求項1に記載の冷間工具材料。
  3. 請求項1または2に記載の冷間工具材料に、焼入れ温度が1000~1050℃の焼入れと、焼戻し温度が150~600℃の焼戻しを行って、硬さを58HRC以上に調整することを特徴とする冷間工具の製造方法。
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